(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】コンクリート締固め位置計測システム、コンクリート締固め位置計測方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/06 20060101AFI20221226BHJP
【FI】
E04G21/06
(21)【出願番号】P 2018232903
(22)【出願日】2018-12-12
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】宇野 昌利
(72)【発明者】
【氏名】根本 浩史
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕司
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193681(JP,A)
【文献】特開2014-074297(JP,A)
【文献】特開2015-048684(JP,A)
【文献】実開昭63-078653(JP,U)
【文献】特開2014-198991(JP,A)
【文献】特開2016-121499(JP,A)
【文献】特開平08-232475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/06
E04G 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイブレータ装置によってコンクリートの締固めを行う作業者に装着される装着具からの反射光に基づいて当該装着具の位置を測定する位置測定部と、
前記バイブレータ装置と前記装着具との位置関係を検出する位置関係検出部と、
前記測定された位置と前記検出された位置関係と前記バイブレータ装置における振動部の位置に基づいて、前記バイブレータ装置によって締固めが行われた位置を求める締固め位置算出部と
、
前記バイブレータ装置の長手方向に沿って間隔を空けて設けられる複数の傾斜センサと、
前記傾斜センサのそれぞれからの検出結果に基づいて、前記バイブレータ装置の姿勢を検出する姿勢検出部と、を有し、
前記締固め位置算出部は、前記測定された位置と前記検出された前記バイブレータ装置の姿勢と前記バイブレータ装置における振動部の位置に基づいて、前記バイブレータ装置によって締固めが行われた位置を求め、
前記締固め位置算出部は、前記検出されたバイブレータ装置の姿勢に基づいて、前記傾斜センサによって検出された角度が所定の角度以上に曲げられた部位を検出することで、前記バイブレータ装置における前記作業者によって把持された位置を検出する
コンクリート締固め位置計測システム。
【請求項2】
前記バイブレータ装置の長手方向に沿って間隔を空けて設けられる複数の識別情報記憶部と、
前記装着具に設けられ所定の距離内に近接する識別情報記憶部から識別情報を読み出す読取部と、を有し、
前記位置関係検出部は、
前記読み出された識別情報に基づいて、当該識別情報が付与された識別情報記憶部が設けられた前記バイブレータ装置における位置を検出することで、前記作業者によって把持された位置を検出し、
前記締固め位置算出部は、前記測定された位置と前記作業者によって把持された位置と前記バイブレータ装置における振動部の位置に基づいて、前記締固めが行われた位置を求める
請求項1記載のコンクリート締固め位置計測システム。
【請求項3】
前記バイブレータ装置は、長手方向に沿って複数の関節部が設けられる長尺状のフレキシブルホース部を有しており、当該関節部が曲がることで、当該フレキシブルホース部の姿勢を変更可能である
請求項1または請求項2に記載のコンクリート締固め位置計測システム。
【請求項4】
前記バイブレータ装置の先端部に設けられ、当該バイブレータ装置の先端側
を湾曲するように姿勢を変更することが可能な駆動部
を有する請求項1
または請求項
2に記載のコンクリート締固め位置計測システム。
【請求項5】
位置測定部が、バイブレータ装置によってコンクリートの締固めを行う作業者の腕部に装着される装着具からの反射光に基づいて当該装着具の位置を測定し、
位置関係検出部が、前記バイブレータ装置と前記装着具との位置関係を検出し、
締固め位置算出部が、前記測定された位置と前記検出された位置関係と前記バイブレータ装置における振動部の位置に基づいて、前記バイブレータ装置によって締固めが行われた位置を求め
、
姿勢検出部が、前記バイブレータ装置の長手方向に沿って間隔を空けて設けられる複数の傾斜センサのそれぞれからの検出結果に基づいて、前記バイブレータ装置の姿勢を検出し、
前記締固め位置算出部は、前記測定された位置と前記検出された前記バイブレータ装置の姿勢と前記バイブレータ装置における振動部の位置に基づいて、前記バイブレータ装置によって締固めが行われた位置を求め、
前記締固め位置算出部は、前記検出されたバイブレータ装置の姿勢に基づいて、前記傾斜センサによって検出された角度が所定の角度以上に曲げられた部位を検出することで、前記バイブレータ装置における前記作業者によって把持された位置を検出する
コンクリート締固め位置計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート締固め位置計測システム、コンクリート締固め位置計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート施工工事では、コンクリートの打設を行った後、締固めを行う。締固めの作業では、特許文献1に示されるように、バイブレータをコンクリート中に挿入して、コンクリートに振動を与える。バイブレータとしては、ホースの先端に振動部を有するものが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、締固めにおいてバイブレータの先端やホースを移動させる作業は、人手による作業であるため、平面的な位置管理、深さ管理などが定性的に行われている。このため、締固め作業が行われていない箇所が残っている場合には、ジャンカと呼ばれるセメントと砂利の分離等の不具合が発生する要因となっている。そのため、締固めが行われた箇所を把握できることが望ましい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、コンクリートの締固めが行われた箇所を把握することができるコンクリート締固め位置計測システム、コンクリート締固め位置計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、バイブレータ装置によってコンクリートの締固めを行う作業者に装着される装着具からの反射光に基づいて当該装着具の位置を測定する位置測定部と、前記バイブレータ装置と前記装着具との位置関係を検出する位置関係検出部と、前記測定された位置と前記検出された位置関係と前記バイブレータ装置における振動部の位置に基づいて、前記バイブレータ装置によって締固めが行われた位置を求める締固め位置算出部と、前記バイブレータ装置の長手方向に沿って間隔を空けて設けられる複数の傾斜センサと、前記傾斜センサのそれぞれからの検出結果に基づいて、前記バイブレータ装置の姿勢を検出する姿勢検出部と、を有し、前記締固め位置算出部は、前記測定された位置と前記検出された前記バイブレータ装置の姿勢と前記バイブレータ装置における振動部の位置に基づいて、前記バイブレータ装置によって締固めが行われた位置を求め、前記締固め位置算出部は、前記検出されたバイブレータ装置の姿勢に基づいて、前記傾斜センサによって検出された角度が所定の角度以上に曲げられた部位を検出することで、前記バイブレータ装置における前記作業者によって把持された位置を検出する。
【0007】
また、本発明は、位置測定部が、バイブレータ装置によってコンクリートの締固めを行う作業者の腕部に装着される装着具からの反射光に基づいて当該装着具の位置を測定し、位置関係検出部が、前記バイブレータ装置と前記装着具との位置関係を検出し、締固め位置算出部が、前記測定された位置と前記検出された位置関係と前記バイブレータ装置における振動部の位置に基づいて、前記バイブレータ装置によって締固めが行われた位置を求め、姿勢検出部が、前記バイブレータ装置の長手方向に沿って間隔を空けて設けられる複数の傾斜センサのそれぞれからの検出結果に基づいて、前記バイブレータ装置の姿勢を検出し、前記締固め位置算出部は、前記測定された位置と前記検出された前記バイブレータ装置の姿勢と前記バイブレータ装置における振動部の位置に基づいて、前記バイブレータ装置によって締固めが行われた位置を求め、前記締固め位置算出部は、前記検出されたバイブレータ装置の姿勢に基づいて、前記傾斜センサによって検出された角度が所定の角度以上に曲げられた部位を検出することで、前記バイブレータ装置における前記作業者によって把持された位置を検出する。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、この発明によれば、作業員の腕部に装着される装着具の位置と、バイブレータ装置と装着具との位置と、バイブレータ装置における振動部の位置との関係に基づいて、バイブレータ装置によって締固めが行われた位置を求めるようにした。これにより、バイブレータ装置によって締固めた位置を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態によるコンクリート締固め位置計測システム1の構成を示す概略ブロック図である。
【
図2】制御装置30の機能を説明する概略ブロック図である。
【
図3】第2の実施形態によるコンクリート締固め位置計測システム1aの構成を示す概略ブロック図である。
【
図4】制御装置30aの機能を説明する概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態によるコンクリート締固め位置計測システムについて図面を参照して説明する。
図1は、この発明の第1の実施形態によるコンクリート締固め位置計測システム1の構成を示す概略ブロック図である。
【0011】
図1において、施工領域10は、コンクリートを打設する対象の領域である。この施工領域10のうち、打設されたコンクリート10aを対象としてコンクリートの締固め工事が実施される。施工領域10は、この図において深さ方向についてのみ図示されているが、平面方向にも存在する。施工領域10の周囲には、例えば3台のトータルステーション11a、11b、11cが配置されている。トータルステーション11a、11b、11cの設置位置(基準点)はGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星12を用いて計測されている。トータルステーション11a、11b、11cの設置位置は、締固めの位置を管理するための基準点となる。
【0012】
作業員15は、バイブレータ装置20を使用してコンクリートの締固め作業を行う。作業員15は、バイブレータ装置20を把持し、バイブレータ装置20の先端部に設けられた振動部22を下方に向け、締固めを行うコンクリート内に挿入して振動部22をコンクリート内に挿入して締固め作業を行う。
【0013】
また、作業員15の上肢のいずれかの位置には、装着具16が装着される。この装着具16は、例えば手袋であり、反射プリズム、ミラー等の反射体と、RFID(radio frequency identifier)タグに記憶された識別情報を読み出すリーダ部とが取り付けられている。この装着具16は、手首、前腕、上腕のいずれかの位置にベルト等で装着されてもよい。
装着具16に設けられた反射体は、各トータルステーション11a、11b、11cからの光波のターゲットとなる。各トータルステーション11a、11b、11cからの光波は、装着具16の反射体で反射され、各トータルステーション11a、11b、11cで受信される。これにより、反射体の位置が測量される。反射体の位置が測量されることで、装着具16が装着された作業員15の部位の位置を測量することができる。特に、装着具16が手袋である場合には、作業員15が把持しているフレキシブルホース部21の位置を把握することができる。装着具16が手首、前腕、上腕等の位置に装着される場合には、装着された位置に対する手の相対位置を予め定めておくことで、作業員15が把持するフレキシブルホース部21の座標位置を推定するようにしてもよい。この例では、切梁等の障害物もあるため、3台のトータルステーション11a、11b、11cを設置し、補完して位置情報を把握するようにしている。
【0014】
バイブレータ装置20は、長尺状の形状をしており、フレキシブルホース部21の先端部に振動部22が設けられている。フレキシブルホース部21は、ある程度の柔軟性があり作業員15の操作に応じて湾曲できる程度の可撓性を有する。このフレキシブルホース部21の内周側には、外部の電源供給装置から振動部22に駆動電力を供給するケーブルが収容されている。
フレキシブルホース部21には、図示されていないが、振動部22の動作をオン/オフするスイッチが設けられている。このスイッチのオン/オフの状態は、フレキシブルホース部21内に通されたケーブルを介して制御装置30において取得可能になっている。
フレキシブルホース部21には、バイブレータ装置20(フレキシブルホース部21)の長手方向に沿って間隔を空けて複数の識別情報記憶部23(23a、23b、・・・)が設けられる。この識別情報記憶部23の一例としては、RFID(radio frequency identifier)タグである。この識別情報記憶部は、自身の識別情報記憶部を識別する識別情報が記憶されている。また、フレキシブルホース部21において識別情報記憶部23が設けられた位置と、識別情報とを対応づけて外部の制御装置30に予め記憶しておくことで、識別情報を基に、フレキシブルホース部21のどの位置であるかを把握できるようになっている。
振動部22は、振動することでコンクリートに振動を与えることで締固めを行う。振動部22の内部にはモータが設けられており、モータの回転により回転振動を発生する。
【0015】
制御装置30は、各トータルステーション11a、11b、11cから、装着具16の反射体の位置情報を取得する。そして、制御装置30は、装着具16の反射体の位置情報から、振動部22の三次元位置情報(x方向、y方向、z方向)を算出する。
【0016】
図2は、制御装置30の機能を説明する概略ブロック図である。制御装置30は、位置測定部31、識別情報取得部32、駆動情報取得部33、位置関係検出部34、締固め位置算出部35、締固め位置記憶部36を有する。
位置測定部31は、装着具16からの反射光に基づいて当該装着具16の位置を測定する。この測定は、上述したように、トータルステーション11a、11b、11cを用い、装着具16の反射体の三次元座標(x方向、y方向、z方向)における位置の測量が行われる。位置測定部31は、各トータルステーション11a、11b、11cからの測定結果を取得することで、装着具16の位置を測定することができる。
識別情報取得部32は、装着具16のリーダ部によって読み取られた識別情報を取得する。リーダ部は、自身の位置から所定の範囲内に近接するRFIDタグから識別情報を読み出し、制御装置30に識別情報を無線によって送信する。識別情報取得部32は、この識別を無線によって受信する。
【0017】
駆動情報取得部33は、バイブレータ装置20のケーブルを介して、振動部22がオンであるか否かの駆動状態を表す駆動情報を取得する。例えば、制御装置30には、バイブレータ装置20のケーブルの振動部22が接続された端部とは反対側の端部が接続されており、バイブレータ装置20に対する作業員15のオン/オフ操作に応じて、制御装置30から駆動電力が振動部22に供給される。駆動情報取得部33は、このオン/オフの操作信号を駆動情報として取得してもよいし、駆動電力が振動部22に供給されたか否かを表す情報を制御装置30の電力供給部から取得してもよい。また、駆動情報取得部33は、現在時刻を計時する計時機能を有しており、駆動情報を取得したときの時刻を得ることで、オン/オフの駆動状態とそのときの時刻とを対応づけて後段に出力することができる。
【0018】
位置関係検出部34は、バイブレータ装置と装着具との位置関係を検出する。例えば、位置関係検出部34は、識別情報取得部32によって取得された識別情報に基づいて、当該識別情報が付与されたRFIDタグが設けられたバイブレータ装置20のフレキシブルホース部21における位置を検出することで、作業者15によって把持された位置を検出する。
位置関係検出部34は、フレキシブルホース部21において識別情報記憶部23が設けられた位置と、識別情報とを対応づけたタグ位置情報を記憶しており、検出された識別情報に対応するフレキシブルホース部21における位置を特定する。ここで特定される位置は、例えば、フレキシブルホース部21に対して振動部22が取り付けられたフレキシブルホース部21の端部を基準にしたフレキシブルホース部21における長手方向の位置である。位置関係検出部34は、この特定された位置を作業員15によって把持された位置として検出する。
【0019】
締固め位置算出部35は、位置測定部31によって測定された位置と位置関係検出部034によって検出された位置関係とバイブレータ装置における振動部22の位置に基づいて、バイブレータ装置20によって締固めが行われた位置を求める。
締固め位置算出部35は、位置測定部31によって得られた装着具16の三次元座標上における位置情報と、フレキシブルホース部21における作業者15によって把持された位置とを対応付けすることで、作業員15によって把持されたフレキシブルホース部21の位置についての、三次元座標上の位置を得る。
また、締固め位置算出部35は、識別情報と振動部22までの距離とを対応づけた距離情報を記憶しており、位置関係検出部34から得られる識別情報を用いることで、その識別情報に対応する振動部22までの距離を得ることができる。
【0020】
締固め位置算出部35は、作業員15によって把持されたフレキシブルホース部21の位置についての三次元座標上の位置と、識別情報に対応する振動部22までの距離とに基づいて、振動部22の三次元座標上の位置を算出する。ここでは、締固め位置算出部35は、作業員15によって把持されたフレキシブルホース部21の位置についての三次元座標上の位置から、識別情報に対応する振動部22までの距離の分だけ、深さ方向における下方向(鉛直方向における下方向)における三次元座標上の位置を求める。例えば、作業員15によって把持されたフレキシブルホース部21の位置についての三次元座標上の位置におけるZ方向(鉛直方向)における座標の位置を識別情報に対応する振動部22までの距離を引くこと、Z方向における下方向の位置を求める。ここでは、作業員15は、一般に、バイブレータ装置20を把持して締固めを行う水平方向の位置まで移動し、その位置において、フレキシブルホース部21を湾曲させつつ振動部22を下方に向かって垂下させるようにしてコンクリートの上面からコンクリート内に挿入する。そのため、振動部22の三次元座標上の位置について、水平方向における位置は、装着具16の位置を測定することで把握でき、鉛直方向における位置は、装着具16の位置を基準としてバイブレータ装置20が把持された位置から振動部22までの距離を求めることで、振動部22の三次元座標上における位置を求めることができる。フレキシブルホース部21の可撓性にもよるが、振動部22は、作業員15によって把持されたフレキシブルホース部21上の位置からほぼ鉛直方向に垂下するような可撓性を有するものを利用することが、測定精度を向上させる観点から好ましい。
【0021】
締固め位置算出部35は、得られた振動部22の三次元座標上における位置を締固め位置記憶部36に記憶する。ここでは、締固め位置算出部35は、振動部22の三次元座標上における位置を、振動情報取得部33によって得られた駆動情報とともに締固め位置記憶部36に記憶する。
締固め位置記憶部36は、振動部22の三次元座標上における位置と振動部22の駆動情報とを記憶する。締固め位置記憶部36に記憶された情報は、外部の端末装置に出力したり、表示装置に出力したり、印刷装置で印刷することによる出力を行うことができる。この締固め位置記憶部36に記憶された情報を出力することで、作業員15や工事現場に関係する作業者等は、コンクリートの締固め作業が行われた平面的な位置や深さを定量的に管理・把握することができる。
【0022】
次に、上述したコンクリート締固め位置計測システム1の第2の実施形態について説明する。
図3は、第2の実施形態によるコンクリート締固め位置計測システム1aの構成を示す概略ブロック図である。第2の実施形態においては、第1の実施形態におけるコンクリート締固め位置計測システム1の構成と共通する部分については説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
第1の実施形態において、バイブレータ装置20には、フレキシブルホース部21の先端側から所定の間隔を空けて複数の識別情報記憶部23が設けられている場合について説明したが、第2の実施形態においては、識別情報記憶部23の代わりに複数の傾斜センサ24(24a、24b、・・・・)が設けられる。ここではフレキシブルホース部21には長手方向に沿って所定の間隔で関節部が設けられており、この関節部が曲がることで、フレキシブルホース部21の姿勢を変えることができる。傾斜センサ24は、この関節部に設けられ、関節が曲げられた角度を検出する。
【0023】
また、フレキシブルホース部21において先端部(例えば、フレキシブルホース部21に対して振動部22が取り付けられた接続部近傍)には駆動部25が設けられる。駆動部25は、コントロールユニットからの操作指示に応じてフレキシブルホース部21の先端側を湾曲させることで、フレキシブルホース部21の長手方向における中心軸に対して直交するいずれかの方向に振動部22の向き(姿勢)を変えることができる。例えば、駆動部25は、ワイヤーが接続されており、ワイヤーのもう一方の端部がコントロールユニット内のモータに連結されており、コントロールユニットに対して入力される操作内容に応じてモータを駆動させることで、ワイヤーを牽引することで、所望の方向に湾曲操作が可能となっている。コントロールユニットは、作業員15によって操作される。駆動部25は、作業員15から入力されるコントロールユニットへの操作内容に応じて駆動することで、フレキシブルホース部21の先端側を湾曲させることで、振動部22の向きを三次元的に自由自在に操作することができる。このような駆動のさせ方としては、例えば、工業用内視鏡(あるいは胃カメラ等)の先端部の向きを変更する駆動装置を用いるようにしてもよい。
【0024】
このように、振動部22の向きを任意の向きに操作することができるため、振動部22を鉄筋の隙間を縫うようにして移動させることが可能となり、コンクリート内における所望の位置を締固めすることが可能となる。
このように、バイブレータ装置20において、識別情報記憶部23が設けられていないため、装着具16aにリーダ部を設ける必要がない。
【0025】
傾斜センサ24(24a、24b、・・・)は、フレキシブルホース部21を湾曲させるための関節となる部位に設けられ、その関節部の両端側の相対位置を検出する。また、傾斜センサ24には、それぞれを識別する識別番号が付与されており、傾斜センサ24の検出結果は、その識別情報とともに制御装置30aに対して無線によって出力される。
【0026】
次に、
図4は、制御装置30aの機能を説明する概略ブロック図である。制御装置30aは、傾斜センサ測定結果取得部32a、姿勢検出部34aを有しており、第1の実施形態と共通する部分については同じ符号を付し、その説明を省略する。
傾斜センサ測定結果取得部32aは、各傾斜センサ24から検出結果を取得する。
姿勢検出部34aは、傾斜センサ測定結果取得部32aによって得られた各傾斜センサ24からの検出結果に基づいて、バイブレータ装置20の姿勢を検出する。姿勢検出部34aは、各傾斜センサ24の検出結果を参照し、相対的に振動部22の位置を特定する。例えば、姿勢検出部34aは、各傾斜センサ24からの検出結果の組み合わせから、フレキシブルホース部21の姿勢を特定することで、フレキシブルホース部21の先端部に取り付けられた振動部22の姿勢及び位置を特定することができる。また、例えば、各傾斜センサ24からの検出結果の組み合わせとフレキシブルホース部21の姿勢とを予め把握しておき、各傾斜センサ24からの検出結果の組み合わせとフレキシブルホース部21の姿勢(あるいは振動部22の姿勢・位置)の関係をメモリ領域に記憶しておく。そして姿勢検出部34aは、各傾斜センサ24からの検出結果が得られると、このメモリ領域を参照し、フレキシブルホース部21(あるいは振動部22の姿勢・位置)を示す情報を読み出すことで、振動部22の位置を特定する。
【0027】
締固め位置算出部35aは、位置測定部31によって測定された位置と姿勢検出部34aによって検出されたバイブレータ装置の姿勢とバイブレータ装置における振動部の位置に基づいて、バイブレータ装置によって締固めが行われた位置を求める。ここで、締固め位置算出部35aは、検出されたバイブレータ装置の姿勢に基づいて、傾斜センサによって検出された角度が所定の角度以上に曲げられた部位を検出することで、バイブレータ装置20における作業者15によって把持された位置を検出することができる。例えば、バイブレータ装置20によってコンクリートの締固めが行われる際には、作業員15は、一般に、バイブレータ装置20を把持して施工現場内を水平方向に移動し、施工領域10の近傍まで移動し、その位置において、フレキシブルホース部21を湾曲させつつ振動部22を下方に向かって垂下させるようにしてコンクリートの上面からコンクリート内に挿入する。そのため、フレキシブルホース部21において作業員15が把持している部位においては、90°程度の角度で湾曲されることが多く、かつ、把持された部位から振動部22までの間においてフレキシブルホース部21は、多少の湾曲はあるものの、90°程度まで湾曲されることがなく垂下される。そのため、締固め位置算出部35aは、傾斜センサによって検出された角度が所定の角度以上に曲げられた部位を検出することで、その部位を作業員15によって把持された位置であることを検出する。フレキシブルホース部21において、湾曲していない状態における関節の角度を0°とした場合、所定の角度としては、例えば、60°程度から120°程度までの間のいずれかの角度を適用するようにしてもよい。ここで振動部22がコンクリート内に挿入されある程度の深さまで垂下されると、振動部22あるいはフレキシブルホース部21の一部が鉄筋や施工領域10の内周側の壁に当接する等してコンクリート内において湾曲する場合がある。その場合、一般に、90°程度まで湾曲される場合もあり得るが、仮に90°程度に湾曲した場合であっても、作業員15が把持している位置が検出された後に、その把持している部位よりも振動部22側において90°程度の湾曲が検出された場合には、作業員15が把持しているとして最初に検出された位置を引き続き作業員15が把持している位置として検出するようにしてもよい。
【0028】
締固め位置算出部35aは、位置測定部31によって得られた装着具16aの三次元座標上における位置情報と、姿勢検出部34aによって検出されたフレキシブルホース部21における作業者15によって把持された位置とを対応付けすることで、作業員15によって把持されたフレキシブルホース部21の位置についての、三次元座標上の位置を得る。
また、締固め位置算出部35aは、作業員15に把持された部位に最も近い位置にある傾斜センサ24に割り当てられている識別情報と振動部22までの距離とを対応づけた距離情報を記憶しており、姿勢検出部34aによって検出された作業員15によって把持された位置に最も近い位置にある傾斜センサ24を特定し、その傾斜センサ24の識別情報に応じた振動部22までの距離を得る。
これにより、締固め位置算出部35aは、作業員15によって把持されたフレキシブルホース部21の位置についての三次元座標上の位置と、識別情報に対応する振動部22までの距離とに基づいて、振動部22の三次元座標上の位置を算出する。
【0029】
なお、第2の実施形態において、フレキシブルホース部21に駆動部25が設けられる場合について説明したが、フレキシブルホース部21に駆動部25が設けられていなくてもよい。この場合、フレキシブルホース部21に傾斜センサ24を所定の間隔(例えば10cm程度毎)を空けて複数設置し、隣接する傾斜センサ24からの位置情報の差分を取得するようにしてもよい。例えば、マシンガイダンスのバックホウのアーム形状を検出する技術を用い、作業員15が把持する部位から順次計算することで、振動部22の位置を検知することができる。多段傾斜計の技術を用いて振動部22の位置を検出するようにしてもよい。
【0030】
以上説明したように、上述した第1及び第2の実施形態によれば、装着具16(装着具16a)の位置をトータルステーションを用いて測定し、その装着具16(装着具16a)の位置から振動部22までの位置を検出することで、振動部22の位置を検出するようにした。これにより、コンクリートの締固めを行った場所を特定し、把握することができる。さらに、バイブレータ装置20による締固め作業の進捗状況を定量的に管理していくことも可能となる。
【0031】
また、本実施形態では、バイブレータ装置20の位置をトータルステーション11a、11b、11cで測量している。バイブレータ装置20にGPS(global positioning system)端末を設けて位置を計測しても良いが、バイブレータ装置20にGPS端末を設けたとしても、施工現場の環境によっては、遮蔽物等が周囲にあると、GPS電波を受信できない場合もあり得る。そこで、第1及び第2の実施形態のように、トータルステーションを用いることで、GPS電波を受信できない環境であっても位置を測定することができる。
【0032】
上述した実施形態における制御装置30、制御装置30aをコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0033】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1,1a…コンクリート締固め位置計測システム、10…施工領域、10a…コンクリート、11a,11b、11c…トータルステーション、15…作業員、16,16a…装着具、20…バイブレータ装置、21…フレキシブルホース部、22…振動部、23a,23b…識別情報記憶部、24a,24b…傾斜センサ、25…駆動部、30,30a…制御装置、31…位置測定部、32…識別情報記憶部、32a…傾斜センサ測定結果取得部、33…駆動情報取得部、34…位置関係検出部、34a…姿勢検出部、35…締固め位置算出部、35a…締固め位置記憶部、36…締固め位置記憶部