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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】耐火集成材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20221226BHJP
   E04C 3/36 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
E04B1/94 P
E04B1/94 R
E04C3/36
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018240105
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020101021
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】広田 正之
(72)【発明者】
【氏名】水落 秀木
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-135643(JP,A)
【文献】特開2015-129431(JP,A)
【文献】特開2012-052325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E04C 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重を支持する集成材からなる芯材と、
芯材の外側に設けられる燃え止まり層と、
燃え止まり層の外側に設けられる防水層と、
防水層の外表面に沿って所定の間隔で設けられる縦胴縁および横胴縁と、
縦胴縁および横胴縁を介して防水層の外側に設けられる仕上げ材とを備え
縦胴縁および横胴縁は木材からなり、横胴縁は通気用の穴があいており、
防水層と仕上げ材の間には、縦胴縁および横胴縁の厚さに相当する空気層が部分的に形成されることを特徴とする耐火集成材。
【請求項2】
燃え止まり層は、芯材の外側に設けられ、吸熱性および断熱性を有する無機質材料からなる第2燃え止まり層と、第2燃え止まり層の外側に設けられ、加熱により増厚して断熱性を発現するシート状の第1燃え止まり層とを有することを特徴とする請求項1に記載の耐火集成材。
【請求項3】
防水層は、防水シートからなることを特徴とする請求項1または2に記載の耐火集成材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火集成材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材は一般に、多くの長所を持っている。主なものとして、調湿性、衝撃安全性、断熱性、心身不調の低減、香りによるリラックス効果、子供たちの情緒安定性の向上等があげられる。また、鉄骨といった既存の部材と比較し、COの削減にも効果があり、有効利用が急務となっている。特に、間伐材などから製造した単板を利用した集成材は、構造的な性能も一様になり易く、比較的安定した供給も可能であり、活用が一段と増すものと考えられる。
【0003】
一方、こうした集成材をはじめとする木材の最大の弱点が燃えてしまうことである。このため、準耐火構造の壁・床・柱・梁等の木造部材は、燃え代分を見込んで燃え代設計が行われている。
【0004】
さらに、1時間やそれ以上の耐火の性能が必要な耐火構造では、燃え止まることが要求されるため、基準が一段と厳しいものになる。このため、火災に面していない芯材部分の温度上昇を抑えるためにも、部材の厚みを増す方法は有効となるが、その分、大きくなる部材は、コスト高、重量増、室の有効面積の低減を誘発する方向にあった。これに対し、本出願人は、例えば特許文献1に示すような耐火集成材を既に提案している。
【0005】
特許文献1の耐火集成材は、図4に示すように、荷重を支持する集成材からなる芯材1と、芯材1の外側に設けられ、吸熱性および断熱性を有する無機質材料からなる第2燃え止まり層2と、第2燃え止まり層2の外側に設けられ、加熱により増厚して断熱性を発現するシート状の第1燃え止まり層3と、第1燃え止まり層3の外側に設けられる仕上げ材4とを備えるものである。
【0006】
燃え止まり層が、第1燃え止まり層3と第2燃え止まり層2とによる機能・材料の異なる2層からなり、従来のものよりもこれらの層厚を薄くしても、火災時の断熱性を確保することができ、例えば、少なくとも1時間や2時間の耐火の性能を確保可能である。また、燃え止まり層全体の厚さを薄くできるので、同じ断面積の芯材を有する耐火仕様の部材において、部材全体の断面積を小さくできる。このため、特許文献1の耐火集成材によれば、所定の耐火性能を有しつつ、部材のスリム化を図ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6414670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1に記載の耐火集成材は、柱・梁の屋内用の木造部材として好適であるが、これを屋外に設置する場合、耐火集成材への雨水の浸入を防止するため、その外側に防水処理が必要となる。そこで、本発明者は、上記の特許文献1の耐火集成材の内側に防水層を形成することによって、屋外仕様の耐火集成材の構造を考案した。
【0009】
一般的に、この耐火集成材を屋外仕様とする場合は、図5に示すような構造が考えられる。この構造は、芯材1と、芯材の外側に設けた第2燃え止まり層2と、第1燃え止まり層3と、下地用の木材5と、木材5の外側に設けた防水層6と、防水層6の外側に設けた仕上げ用の化粧材7とを備える。化粧材7は、木材からなり、防水層6の外側に木質感を付与するために設けられる。防水層6は、下地用の木材5の外側に設けた防水シート6Aからなる。防水シート6Aの外側には木製の胴縁8が設けられており、仕上げ用の化粧材7は、胴縁8の外側に設けられる。防水シート6Aと仕上げ用の化粧材7の間には空気層9が部分的に形成される。
【0010】
しかし、上記の屋外仕様の耐火集成材は、木材5を備えるため、製作にかかる材料コストと工数が増大するおそれがある。このため、コストと製作工数を低減することのできる屋外仕様の耐火集成材が求められていた。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、コストと製作工数を低減することのできる屋外仕様の耐火集成材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る耐火集成材は、荷重を支持する集成材からなる芯材と、芯材の外側に設けられる燃え止まり層と、燃え止まり層の外側に設けられる防水層と、防水層の外側に設けられる仕上げ材とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る他の耐火集成材は、上述した発明において、燃え止まり層は、芯材の外側に設けられ、吸熱性および断熱性を有する無機質材料からなる第2燃え止まり層と、第2燃え止まり層の外側に設けられ、加熱により増厚して断熱性を発現するシート状の第1燃え止まり層とを有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る他の耐火集成材は、上述した発明において、防水層は、防水シートからなることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る他の耐火集成材は、上述した発明において、仕上げ材は、防水層の外側に設けた胴縁の外側に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る耐火集成材によれば、荷重を支持する集成材からなる芯材と、芯材の外側に設けられる燃え止まり層と、燃え止まり層の外側に設けられる防水層と、防水層の外側に設けられる仕上げ材とを備える。ここで、化粧材に相当するものは防水層の外側に設けられる仕上げ材のみとなる。したがって、本発明によれば、二重の化粧材を備える耐火集成材に比べて、コストと製作工数を低減することができるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る他の耐火集成材によれば、燃え止まり層は、芯材の外側に設けられ、吸熱性および断熱性を有する無機質材料からなる第2燃え止まり層と、第2燃え止まり層の外側に設けられ、加熱により増厚して断熱性を発現するシート状の第1燃え止まり層とを有するので、所定の耐火性能と第1燃え止まり層に浸水させない防水性能を有しつつ、部材のスリム化が図られた耐火集成材を提供することができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係る他の耐火集成材によれば、防水層は、防水シートからなるので、優れた防水性能を有し、部材のスリム化が図られた耐火集成材を提供することができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明に係る他の耐火集成材によれば、仕上げ材は、防水層の外側に設けた胴縁の外側に設けられるので、より優れた防水性能を有し、部材のスリム化が図られた耐火集成材を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に係る耐火集成材の実施の形態を示す概略断面図であり、(1)は燃え止まり層が2層構造の場合、(2)は燃え止まり層が1層構造の場合である。
図2図2は、耐火性能試験の試験体および芯材表面温度の測定位置を示す図であり、(1)は平断面図、(2)は側断面図である。
図3図3は、各部の芯材表面温度の時間変化を示す図である。
図4図4は、従来の特許文献1の耐火集成材を示す断面図である。
図5図5は、屋外仕様の耐火集成材の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る耐火集成材の実施の形態について、燃え止まり層が第2燃え止まり層と第1燃え止まり層の2層構造の場合を例にとり、図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0022】
図1(1)に示すように、本実施の形態に係る耐火集成材10は、芯材12と、第2燃え止まり層14と、第1燃え止まり層16と、防水層18と、仕上げ材20とを備えるものであり、例えば屋外の柱として使用される。
【0023】
芯材12は、荷重を支持する集成材(木材)からなり、例えば、スギやカラマツなどの一般的な集成材で構成することができる。
【0024】
第2燃え止まり層14は、耐火性を有する被覆層であり、芯材12の外側に設けられ、吸熱性および断熱性を有する無機質材料からなるものである。この第2燃え止まり層14は、火災時においては、外側の第1燃え止まり層16と、隣接する内側の芯材12への熱の伝達を防止し、芯材12を炭化や燃焼させない機能を持っており、芯材12への熱伝導を抑制する作用を発揮する。第2燃え止まり層14をなす無機質材料としては、強化石膏ボード、石膏ボード、ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)等のボード状の材料を用いることができる。また、その厚さは、用途に応じて適宜調整可能である。厚くすると、熱伝導を抑制する効果は向上する。これらのボードは、重ねて所定の厚さにしてもよい。ここで、強化石膏ボード、石膏ボード、ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)等の材料は、極めて安価に入手できるとともに、高い断熱性と吸熱性とを有することから、第2燃え止まり層14として好適である。
【0025】
芯材12に対する第2燃え止まり層14の取り付け方法は、例えば、ステープルなどの固定部材で芯材12に打ち付ける方法、接着剤や両面テープなどを介して接着する方法、これらを併用する方法などを挙げることができるが、本発明はこれらに限るものではない。
【0026】
第1燃え止まり層16は、耐火性を有する被覆層であり、第2燃え止まり層14の外側に設けられ、加熱により増厚して断熱性を発現するシート状のものである。この第1燃え止まり層16は、火災時においては、その断熱性により隣接する内側の第2燃え止まり層14への燃焼の進行を遅らせる機能を持ち、第2燃え止まり層14への熱伝導を抑制する作用を発揮する。この第1燃え止まり層16としては、熱を受けると発泡して著しく厚みを増し、断熱性を発現する耐火シートや耐火フィルムなどの材料を用いることができる。また、その厚さは、第2燃え止まり層14の厚さに応じて適宜調整可能であるが、例えば、1mm~12mm程度とするのが好ましく、1.5mm~6mm程度とするのがより好ましい。
【0027】
第2燃え止まり層14に対する第1燃え止まり層16の取り付け方法は、例えば、ステープルなどの固定部材で第2燃え止まり層14に打ち付ける方法、接着剤や両面テープなどを介して接着する方法、これらを併用する方法などを挙げることができるが、本発明はこれらに限るものではない。
【0028】
このように、上記の燃え止まり層14、16は、耐火性を有する被覆層ということができ、外側の被覆層(第1燃え止まり層16に相当)は内側の被覆層への燃焼の進行を遅らせる機能を持っている。また、内側の被覆層(第2燃え止まり層14に相当)は、外側の被覆層と併せ、芯材12への熱の伝達を防止し、芯材12を炭化や燃焼させない機能を持つものである。
【0029】
防水層18は、第1燃え止まり層16の外側に設けられる防水性を有する被覆層であり、防水性のシート状の防水シート18Aからなる。この防水シート18Aは、第1燃え止まり層16が水に弱く、濡れることにより所定の耐火性能を発揮できなくなる場合に備えて設けられる。防水シート18Aによりその内側の第1燃え止まり層16に浸水させないことで、結果として、第1燃え止まり層16に所定の耐火性能を発揮させることが可能となる。なお、第1燃え止まり層16が浸水しなければその内側の第2燃え止まり層14や芯材12も浸水することはない。
【0030】
防水シート18Aは、例えばアスファルトフェルトなどの防水性を有する周知のシートあるいは防水紙で構成することができるが、本発明はこれに限るものではない。また、防水シート18Aの厚さは、特に限定しないが、薄型(例えば0.2mm~3mm程度)であることが部材のスリム化を図る上で望ましい。また、防水シート18Aは、単層シートで構成してもよいし、複数枚のシートを積層して構成してもよい。
【0031】
第1燃え止まり層16の外側に対する防水シート18Aの取り付け方法は、例えば、ステープルなどの固定部材で第1燃え止まり層16に打ち付ける方法、ブチルゴムのような自己融着性を有する材料や木工用ボンド等の接着剤、両面テープなどを介して接着する方法、これらを併用する方法などを挙げることができるが、本発明はこれらに限るものではない。
【0032】
仕上げ材20は、木材からなり、防水層18の外側に木質感を付与するために設けられる。具体的には、この仕上げ材20は、防水層18をなす防水シート18Aの外表面(または、防水シート18Aの外表面に固定された胴縁22の外表面)に設けられる。したがって、耐火集成材10の外表面20Aは、この仕上げ材20によって木質感や木目調の外観を呈している。
【0033】
仕上げ材20は、木材や集成材等の木質材料であることが望ましいが、クロス材等の建築用仕上げ材、化粧材、防火薬剤を含浸や浸透させた木質材料、木材を用いてもよい。仕上げ材20の厚さは、例えば3mm~36mm程度とすることが好ましいが、もちろん、これよりも薄くして、燃え代としてほとんど機能しないように構成しても構わない。
【0034】
胴縁22は、所定厚さ(例えば厚さ15mm以上)の木材からなり、防水シート18Aの外表面に沿って所定の間隔で設けられる。なお、胴縁22は省略することもできる。省略する場合は、仕上げ材20は防水シート18Aの外表面に配置される。また、図1(1)では、防水シート18Aの隅角部に沿って断面視でL字状に設けた胴縁22を図示しているが、胴縁はこれに限るものではない。例えば、図1(1)の断面に垂直な方向に延びる縦胴縁、断面に沿う方向に延びる横胴縁を、それぞれ所定の間隔で設けてもよい。高さ方向の中間に横胴縁を設けなくてもよい。横胴縁は通気用の穴があいているのが好ましい。仕上げ材20を、こうした胴縁を介して防水シート18Aの外側に設ける場合は、防水シート18Aと仕上げ材20の間には、胴縁の厚さに相当する空気層24が部分的に形成される。
【0035】
胴縁を設けた場合に形成される空気層24により、通気性が高まり、また、湿気等も除去され、仕上げ材20は良好な状態に長く保たれる。さらに、仕上げ材20の交換が容易になるとともに、防水シート18Aのメンテナンスも容易になる。こうした防水シート18Aや燃え止まり層16、14により、仕上げ材20は、屋外に設ける場合に考慮する寸法安定性、防蟻性、防朽性(防腐性)、耐候性、溶脱防止性、止水性とともに、防炎性、難燃性、準不燃性、不燃性といった防火性等の性能を単独に、また組み合わせて持つ多様なものを使用することができる。
【0036】
防水シート18Aに対する胴縁の取り付け方法は、例えば、ステープルや釘などの固定部材で防水シート18Aを貫通して芯材12に打ち付ける方法、ブチルゴムのような自己融着性を有する材料や木工用ボンド等の接着剤、両面テープなどを介して防水シート18Aに接着する方法、これらを併用する方法などを挙げることができるが、本発明はこれらに限るものではない。横胴縁と縦胴縁で構成する場合には、横胴縁と縦胴縁をステープル等の連結部材で連結してもよい。
【0037】
また、胴縁に対する仕上げ材20の取り付け方法は、例えば、ステープル、釘やねじなどの固定部材で胴縁に打ち付ける方法、ブチルゴムのような自己融着性を有する材料や木工用ボンド等の接着剤、両面テープなどを介して胴縁に接着する方法、これらを併用する方法などを挙げることができるが、本発明はこれらに限るものではない。
【0038】
このように、本実施の形態の耐火集成材10によれば、化粧材に相当するものは防水層18の外側に一重に設けられる仕上げ材20のみとなる。したがって、本実施の形態によれば、二重の化粧材を備える耐火集成材に比べて、コストと製作工数を低減することができる。
【0039】
また、燃え止まり層が、第2燃え止まり層14と第1燃え止まり層16とによる機能・材料の異なる2層からなり、従来のものよりもこれらの層厚を薄くしても、火災時の断熱性を確保することができ、例えば、少なくとも1時間耐火や2時間耐火の性能を確保可能である。また、燃え止まり層全体の厚さを薄くできるので、同じ断面積の芯材を有する耐火仕様の部材において、部材全体の断面積を小さくできる。したがって、本実施の形態によれば、所定の耐火性能、防水性能を有しつつ、部材のスリム化が図られた屋外仕様の耐火集成材を提供することができる。
【0040】
さらに、本実施の形態によれば、耐火集成材の断面積に占める芯材による木材部分の面積を大きくすることができるので、同じ断面積の耐火仕様の部材において、特に構造上重要な芯材部分に木材を多く使用できる。しかも、本実施の形態の耐火集成材は、現場で加工が可能であるとともに、施工性が良く、木質感が損なわれない。この耐火集成材を用いれば、木造架構の自由度を高めることができる。また、第2燃え止まり層14として、低コストで調達可能な強化石膏ボード、石膏ボード、ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)等を使用できるため、製作コストを安価に抑えることができる。したがって、本実施の形態によれば、部材のスリム化を図ることができて、コスト高、重量増、構造材の断面積、室の有効面積の低減といった問題を解決することが可能である。
【0041】
なお、上記の実施の形態では、柱を想定した場合の耐火集成材の構成について説明したが、梁についても同様に計画することができる。また、この耐火集成材の柱・梁を屋外に面する部分に設ける場合は、屋外面を本仕様として、屋内面を従来の屋内仕様として組み合わせることができる。この耐火集成材を、例えば鉄筋コンクリート製スラブや防火壁等に接する形態で使用する場合、すなわち屋外の梁や壁付き柱として使用する場合には、床スラブまたは壁である構造部材に接する部分の燃え止まり層14、16、防水層18、仕上げ材20は省略することもできる。
【0042】
また、上記の実施の形態では、燃え止まり層が第1燃え止まり層14、第2燃え止まり層16の2層からなる場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、燃え止まり層は1層構造であってもよい。このようにしても上記と同様の作用効果を奏することが可能である。この場合の耐火集成材としては、例えば図1(2)に示すように、芯材12の外側に設けられる燃え止まり層15と、燃え止まり層15の外側に設けられる防水層18と、防水層18の外側に設けられる仕上げ材20とを備えたもので構成することができる。
【0043】
また、上記の実施の形態では、防水層18と仕上げ材20との間に胴縁(胴縁22)を設けた場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、上述したように胴縁を省略した構造であってもよい。このようにしても上記と同様の作用効果を奏することが可能である。
【0044】
[耐火性能の検証]
次に、一例として、本発明に係る耐火集成材の耐火性能の実験による検証について説明する。
【0045】
本検証は、柱の実大試験体を用いて標準加熱試験を行い、1時間の耐火性能を確認したものである。試験体を炉内に入れて加熱し、加熱開始後60分において加熱停止し、その後3時間以上放置し、かつ芯材の表面温度がピークに達したことを確認するまで芯材の表面温度の時間変化を測定した。
【0046】
図2に、試験に使用した実大試験体と、芯材表面温度の測定位置を示す。この図に示すように、試験体は、本発明の実施例に対応するものであり、芯材12、第2燃え止まり層14、第1燃え止まり層16、防水層18、仕上げ材20、胴縁22を備えている。
【0047】
芯材12には、スギ集成材を用い、第2燃え止まり層14には、強化石膏ボード(ここでは厚さ15mm)2枚を接合したものを用いた。第1燃え止まり層16には、発泡系耐火シート(ここでは厚さ2mm)を用いた。防水層18(防水シート18A)には、アスファルトフェルト430(厚さ0.6mm)2枚を接合したものを用いた。横胴縁22A、縦胴縁22Bには、スギ製材(厚さ15mm、幅45mm)を用いた。仕上げ材20には、スギ製材(厚さ15mm)を用いた。仕上げ材20の外表面20Aには、ウレタン樹脂系塗料を塗装した。
【0048】
また、横胴縁22A、縦胴縁22Bの連結部材26としてステープルを用いた。防水シート18Aの留め付け材28としてステープルを用いた。被覆材の留め付け材30としてステープルを用いた。被覆材の留め付け接着剤32として酢酸ビニル樹脂系接着剤を用いた。横胴縁22A、縦胴縁22Bの留め付け接着剤34として酢酸ビニル樹脂系接着剤を用いた。横胴縁22Aの留め付け材36としてフロアー釘を用いた。仕上げ材20の留め付け接着剤38として酢酸ビニル樹脂系接着剤を用いた。仕上げ材20の留め付け材40としてステープルを用いた。
【0049】
芯材表面温度の測定位置は、符号TC(数字)で示した位置とした。この位置に熱電対を設置して測定を行った。
【0050】
図3に、各部の芯材表面温度の測定結果を示す。図3(1)は試験体の上段隅角部、(2)は上段側面部(横胴縁なし)、(3)は中段隅角部、(4)は中段側面部(横胴縁上端から30mm上)、(5)は下段隅角部、(6)は下段側面部(横胴縁部)である。図3(5)、(6)に示すように、芯材表面の最高温度は、隅角部で約174℃、側面部で約136℃であった。試験終了後の芯材12に変色・炭化は見られなかった。
【0051】
したがって、本実施例の耐火集成材は、少なくとも1時間耐火性能を確保可能であることがわかる。また、燃え止まり層14、16全体の厚さを薄くできるので、同じ断面積の芯材12を有する耐火仕様の部材において、部材全体の断面積を小さくできる。また、本実施例の耐火集成材は防水層18も備えている。このため、本実施例の耐火集成材によれば、所定の耐火性能、防水性能を有しつつ、部材のスリム化を図ることが可能である。また、本実施例の耐火集成材は、化粧材に相当するものは防水層18の外側に設けられる仕上げ材20のみとなるので、図5のような木材5を備える耐火集成材に比べて、コストと製作工数を低減することができる。
【0052】
以上説明したように、本発明に係る耐火集成材によれば、荷重を支持する集成材からなる芯材と、芯材の外側に設けられる燃え止まり層と、燃え止まり層の外側に設けられる防水層と、防水層の外側に設けられる仕上げ材とを備える。ここで、化粧材に相当するものは防水層の外側に設けられる仕上げ材のみとなる。したがって、本発明によれば、二重の化粧材を備える耐火集成材に比べて、コストと製作工数を低減することができる。
【0053】
また、本発明に係る他の耐火集成材によれば、燃え止まり層は、芯材の外側に設けられ、吸熱性および断熱性を有する無機質材料からなる第2燃え止まり層と、第2燃え止まり層の外側に設けられ、加熱により増厚して断熱性を発現するシート状の第1燃え止まり層とを有するので、所定の耐火性能と第1燃え止まり層に浸水させない防水性能を有しつつ、部材のスリム化が図られた耐火集成材を提供することができる。
【0054】
また、本発明に係る他の耐火集成材によれば、防水層は、防水シートからなるので、優れた防水性能を有し、部材のスリム化が図られた耐火集成材を提供することができる。
【0055】
また、本発明に係る他の耐火集成材によれば、仕上げ材は、防水層の外側に設けた胴縁の外側に設けられるので、より優れた防水性能を有し、部材のスリム化が図られた耐火集成材を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明に係る耐火集成材は、荷重を支持するための集成材からなる芯材と、この芯材の外側に設けられる燃え止まり層と、防水層とを備える屋外仕様の耐火集成材に有用であり、特に、コストと製作工数を低減するのに適している。
【符号の説明】
【0057】
10 耐火集成材
12 芯材
14 第2燃え止まり層(燃え止まり層)
15 燃え止まり層
16 第1燃え止まり層(燃え止まり層)
18 防水層
18A 防水シート
20 仕上げ材
20A 外表面
22 胴縁
24 空気層
図1
図2
図3
図4
図5