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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】容器入り液体柔軟剤物品
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/328 20060101AFI20221226BHJP
   D06M 13/463 20060101ALI20221226BHJP
   D06M 13/148 20060101ALI20221226BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20221226BHJP
   D06M 13/165 20060101ALI20221226BHJP
   D06M 13/419 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
D06M13/328
D06M13/463
D06M13/148
D06M15/53
D06M13/165
D06M13/419
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019024529
(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公開番号】P2020133013
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】森高 峰穂
(72)【発明者】
【氏名】藤井 志子
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-043863(JP,A)
【文献】特開2009-298957(JP,A)
【文献】特開昭56-038397(JP,A)
【文献】特開2005-112362(JP,A)
【文献】特開2002-201488(JP,A)
【文献】特開2020-084392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D1/00-19/00
D06M10/00-16/00
19/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体柔軟剤組成物を容器に充填してなる液体柔軟剤物品であって、
液体柔軟剤組成物が、(A)下記一般式(A1)で表される第3級アミン化合物、その酸塩、及び前記第3級アミン化合物の4級化物から選ばれる1種以上の化合物〔以下、(A)成分という〕、(B)炭素数2以上4以下の2価又は3価の水溶性多価アルコール〔以下、(B)成分という〕、(C)非イオン性界面活性剤〔以下、(C)成分という〕、並びに水を含有し、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量との質量比(A)/(B)が0.1以上10以下である液体柔軟剤組成物であり、
容器が、開口面積1.0mm以上15mm以下の吐出口を備えた容器である、
液体柔軟剤物品。
〔R1a-C(=O)-O-(C2pO)-C2qN(R2a3-m (A1)
〔式中、R1aは炭素数11以上23以下の炭化水素基であり、R2aは炭素数1以上3以下の炭化水素基及びHO-(C2pO)-C2q基から選ばれる基であり、mは1以上3以下の数であり、p及びqは2又は3の数であり、rは0以上5以下の数である。同一分子内にR1a、R2a、HO-(C2pO)-C2q基、p、q、rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。〕
【請求項2】
液体柔軟剤組成物が、(A)成分を1質量%以上20質量%以下、(B)成分を1質量%以上30質量%以下、(C)成分を0.1質量%以上10質量%以下含有する、請求項1に記載の液体柔軟剤物品。
【請求項3】
(C)成分が、下記一般式(C1)で表される非イオン性界面活性剤である、請求項1又は2に記載の液体柔軟剤物品。
1c-O-(EO)mc(AO)nc-H (C1)
〔式中、R1cは炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基、EOはエチレンオキシ基、AOはプロピレンオキシ基及びブチレンオキシ基から選ばれる一種以上のアルキレンオキシ基であり、EO及びAOはブロック又はランダムであってもよく、mcは平均付加モル数を示す5以上100以下の数であり、ncは平均付加モル数を示す0以上5以下の数であり、nc>0の時は、mc>nc+5である。〕
【請求項4】
容器がポンプ式ディスペンサー容器である、請求項1~3の何れか一項に記載の液体柔軟剤物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器入り液体柔軟剤物品に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の柔軟剤に用いられる基材として、環境中に排出されても速やかに分解し、環境への負荷を低減することを目的に分子内エステル基を有する陽イオン性界面活性剤が主たる柔軟基剤として使用されている。エステル基が水中で加水分解し易いことは周知であり、液体柔軟剤組成物中でエステル基を有する柔軟基剤が加水分解すると、貯蔵安定性の品質が悪化し易いことも周知である。
【0003】
これまでに、柔軟剤組成物の貯蔵安定性に関する技術が種々検討されている。例えば、特許文献1には、凍結融解条件下で安定な布地柔軟化組成物が開示されている。特許文献2には、加水分解を抑制し、高い柔軟性付与効果を有する液体柔軟剤組成物が開示されている。
【0004】
近年、消費者の簡便嗜好の高まりから、より使いやすい形態の柔軟剤物品が求められている。例えば、環境意識の高まりにより、柔軟剤組成物は袋状の容器に充填された詰め替え品を購入し、それをボトルに詰替えて使用することが一般的となってきている。特許文献3には、光暴露時の安定性に優れた袋詰め柔軟剤物品が開示されている。
【0005】
また、柔軟剤計量時の簡便性を高める観点から、ポンプ式ディスペンサー容器での使用が望まれる。例えば、特許文献4には、ポンプ容器に充填してなる柔軟剤物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-540859号公報
【文献】特開2016-121423号公報
【文献】特開2015-48552号公報
【文献】国際公開第2011/147752号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポンプ式ディスペンサー容器等の吐出口の狭い容器に適用可能な柔軟剤を開発するにあたり、内容物である柔軟剤の安定性や柔軟性能以外に新たな課題が生じる。例えば、内部の柔軟剤が速やかに吐出できる必要がある。また、吐出口が狭いため、使用を繰り返すと、柔軟基剤が吐出口付近で固化ないしゲル化しやすくなる。このような吐出口での固化ないしゲル化は、吐出性を著しく低下させる原因になるだけなく、液を吐出する際の押し圧の増加、液を吐出する際のコントロール性の低下等が起こる事によって、消費者に大きなストレスを感じさせることになる。従って、吐出口付近での固化やゲル化を抑制して、どのタイミングで使用しても常に一定の使用感が得られることが望まれる。このような課題は、スクイズすることで吐出するような、吐出口が狭い他の容器についても同様に生じ得る。
【0008】
前記した特許文献1~3は、貯蔵安定性などの課題を解決するものであり、ポンプ式ディスペンサー容器等の吐出口の狭い容器での使用やその場合の課題については特段の言及がない。また、特許文献4の先行技術は、ポンプ容器の吐出口付近での柔軟基剤の固化を抑制し、吐出性を保つことに対しては十分ではない。
【0009】
本発明は、柔軟性付与効果に優れ、使用者がどのタイミングで使用しても常に変わらない使用感が得られる液体柔軟剤物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記問題について検討を行ったところ、特定の第3級アミン化合物等と特定の水溶性多価アルコールと非イオン性界面活性剤とを所定条件で含有する液体柔軟剤組成物を、特定の吐出口面積を持つ容器に充填することにより、長期使用時などの吐出性が一定であり、使用者がどのタイミングで使用しても常に変わらない使用感が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち本発明は、液体柔軟剤組成物を容器に充填してなる液体柔軟剤物品であって、
液体柔軟剤組成物が、(A)下記一般式(A1)で表される第3級アミン化合物、その酸塩、及び前記第3級アミン化合物の4級化物から選ばれる1種以上の化合物〔以下、(A)成分という〕、(B)炭素数2以上4以下の2価又は3価の水溶性多価アルコール〔以下、(B)成分という〕、(C)非イオン性界面活性剤〔以下、(C)成分という〕、並びに水を含有し、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量との質量比(A)/(B)が0.1以上10以下である液体柔軟剤組成物であり、
容器が、開口面積1.0mm以上15mm以下の吐出口を備えた容器である、
液体柔軟剤物品に関する。
〔R1a-C(=O)-O-(C2pO)-C2qN(R2a3-m (A1)
〔式中、R1aは炭素数11以上23以下の炭化水素基であり、R2aは炭素数1以上3以下の炭化水素基及びHO-(C2pO)-C2q基から選ばれる基であり、mは1以上3以下の数であり、p及びqは2又は3の数であり、rは0以上5以下の数である。同一分子内にR1a、R2a、HO-(C2pO)-C2q基、p、q、rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。〕
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、柔軟性付与効果に優れ、使用者がどのタイミングで使用しても常に変わらない使用感が得られる液体柔軟剤物品が提供される。例えば、本発明により、柔軟性付与効果に優れ、長期使用時の吐出性に優れた液体柔軟剤組成物をポンプ式ディスペンサー容器等の吐出口の狭い容器に充填してなる液体柔軟剤物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[液体柔軟剤組成物]
本発明に係る液体柔軟剤組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び水を含有し、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量との質量比(A)/(B)が0.1以上10以下である液体柔軟剤組成物(以下、本発明の液体柔軟剤組成物という場合もある)である。
【0014】
<(A)成分>
(A)成分は、下記一般式(A1)で表される第3級アミン化合物、その酸塩、及び前記第3級アミン化合物の4級化物から選ばれる1種以上の化合物である。以下、下記一般式(A1)で表される第3級アミン化合物及びその酸塩を(a1)成分、前記一般式(A1)で表される第3級アミン化合物の4級化物を(a2)成分という。
〔R1a-C(=O)-O-(C2pO)-C2qN(R2a3-m (A1)
〔式中、R1aは炭素数11以上23以下の炭化水素基であり、R2aは炭素数1以上3以下の炭化水素基及びHO-(C2pO)-C2q基から選ばれる基であり、mは1以上3以下の数であり、p及びqは2又は3の数であり、rは0以上5以下の数である。同一分子内にR1a、R2a、HO-(C2pO)-C2q基、p、q、rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。〕
【0015】
一般式(A1)中のR1aは、繊維製品の柔軟化の観点から、炭素数13以上21以下の非環式の炭化水素基が好ましい。R1aの炭化水素基の具体例は、直鎖または分岐鎖のアルキル基、アルケニル基が挙げられ、直鎖がより好ましい。具体的には、炭素数13以上21以下の直鎖または分岐鎖、好ましくは直鎖のアルキル基及び炭素数13以上21以下の直鎖または分岐鎖、好ましくは直鎖のアルケニル基から選ばれる基が挙げられる。
【0016】
乳濁型の形態が望まれる場合の液体柔軟剤組成物の製造容易性の観点から、一般式(A1)のR1aは、炭素数11以上23以上のアルキル基及び炭素数11以上23以下アルケニル基から選ばれる基が好ましい。より好ましくは、炭素数13以上21以下のアルキル基及び炭素数13以上21以下のアルケニル基から選ばれる基である。また、R1aがアルキル基及びアルケニル基であることが好ましい。また、(A)成分が混合物である場合、1つの混合物中に、R1aとして、アルキル基とアルケニル基の両方の基を有していてもよく、一方の基のみを有していてもよい。アルキル基とアルケニル基の割合は原料となる脂肪酸または脂肪酸エステルの組成によって構成され、水素添加などにより調整してもよい。
【0017】
一般式(A1)中のR1aにおいて、アルケニル基に含まれる不飽和基はシス体とトランス体が存在する。シス体とトランス体比の具体例は、モル比でシス体/トランス体=30/70以上99/1以下のものが挙げられる。アルケニル基の入手性の観点から、シス体/トランス体=50/50以上97/3以下が好ましい。本発明において、シス体とトランス体の比はH-NMRの積分比で算出することができる。
【0018】
一般式(A1)において、p及びqは、それぞれ、2又は3の数である。処理した布吸水性保持の観点から、pは2の数が好ましい。(A)成分の製造の容易性の観点から、qは2の数が好ましい。
一般式(A1)において、rは、繊維製品の柔軟化の点から、0以上2以下の数が好ましく、0がより好ましい。
【0019】
(a1)成分は一般式(A1)で表される第3級アミン化合物及びその酸塩である。第3級アミン化合物は、液体柔軟剤組成物のpHにより、一部又は全てが酸塩の状態で組成物中に存在していても良い。
【0020】
第3級アミン化合物の酸塩で存在する場合の酸としては、無機酸又は有機酸が挙げられる。無機酸の具体例としては、塩酸、硫酸が使用できる。有機酸の具体例としては、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸、炭素数1以上10以下の1価又は多価のカルボン酸、又は炭素数1以上20以下の1価又は多価のスルホン酸が挙げられる。より具体的にはメチル硫酸、エチル硫酸、p-トルエンスルホン酸、(o-、m-、p-)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、グリコール酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸が挙げられる。
【0021】
(a1)成分である一般式(A1)で表されるアミン化合物を得る製造方法は特に制限されないが、例えば、下記一般式(A1-1)で表わされるアルカノールアミン化合物と脂肪酸とのエステル化反応、又は一般式(A1-1)で表わされるアルカノールアミン化合物と脂肪酸エステルとのエステル交換反応によって得ることができる。脂肪酸としては、パーム核油由来、ヤシ油由来、牛脂、菜種油、ひまわり油由来などの脂肪酸を用いることができ、脂肪酸比率を調整したものであってもよく、由来の違う脂肪酸を併用して用いてもよい。
【0022】
〔HO-(C2pO)-C2qN(R3a3-n (A1-1)
〔式中、R3aは炭素数1以上、3以下の炭化水素基から選ばれる基であり、nは1以上、3以下の数、p、q、rは、前記一般式(A1)と同じ意味を表す。〕
【0023】
エステル化反応の例としては、例えば、特表2000-510171号公報の8~9頁目に記載されている方法を適用することができる。
【0024】
エステル交換反応の例としては、例えば、特開平7-138211号公報の段落〔0013〕~段落〔0016〕に記載の方法を適用することができる。
【0025】
(a2)成分である前記一般式(A1)で表される第3級アミン化合物の4級化物は、一般式(A1)で表される第3級アミン化合物とアルキル化剤とを用いた4級化反応により得ることができる。
【0026】
アルキル化剤は、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等が挙げられ、塩化メチル、ジメチル硫酸及びジエチル硫酸から選ばれる一種以上を用いることが好ましい。すなわち、(a2)成分として、一般式(A1)で表される第3級アミン化合物を、塩化メチル、ジメチル硫酸及びジエチル硫酸から選ばれる1種以上のアルキル化剤で4級化した4級化物が挙げられる。
【0027】
4級化反応の例としては、例えば、特開平7-138211号公報の〔0017〕~〔0023〕に記載の方法や、特開平11-106366号公報に記載の製造方法を適用することができる。
【0028】
(A)成分は、1種類の化合物でも良く、2種類以上の化合物の混合物であっても良い。
【0029】
(A)成分が2種類以上の化合物の混合物である場合、一般式(A1)のmの数平均の数は1.2以上2.5以下の混合物を用いることができる。繊維製品の柔軟化の観点から、mの数平均の数は、1.3以上、更に1.4以上が好ましく、そして、2.0以下、更に1.9以下が好ましい。
【0030】
前記mの数平均の数を満たす混合物を得る上で、その原料となる一般式(A1-1)の化合物は異なる構造の化合物を混合したものを用いてもよい。また、一般式(A1-1)のnが3の化合物を脂肪酸や脂肪酸エステルと反応させてmの数平均の数が前記範囲の混合物を得ることも好ましい。
【0031】
本発明では、(A)成分として、(a1)成分と(a2)成分の両方を含有することができる。この場合、(a1)成分/(a2)成分の質量比は、3/97以上、更に5/95以上が好ましく、そして、40/60以下、更に35/65以下が好ましい。また、本発明では、(A)成分として、(a1)成分と(a2)成分とを含む混合物を用いることが好ましい。混合物中の(a1)成分と(a2)成分の割合は混合物中のアミン価から求めることができる。
【0032】
本発明では、例えば次のようにして得られた(A)成分を用いることが好ましい。
すなわち、一般式(A1)で示される化合物として、メチルジエタノールアミン[前記一般式(A1-1)中、R3aがメチル基であって、n=2、q=2、r=0で示される化合物である]及びトリエタノールアミン[前記一般式(A1-1)中、n=3、q=2、r=0で示される化合物である]から選ばれるアルカノールアミン(a0-1)〔以下、(a0-1)成分という〕と、炭素数12以上24以下の脂肪酸又はその低級アルキル(アルキル基の炭素数1以下3以下、好ましくはメチル)エステル(a0-2)とを、〔(a0-1)中の水酸基のモル数/(a0-2)のモル数〕=1/1以上1/0.5以下の比率で反応させて得られるエステル結合を有する第3級アミン化合物(a1)〔(a1)成分〕を、塩化メチル、ジメチル硫酸及びジエチル硫酸から選ばれるアルキル化剤によって4級化反応させることで得られる、(a1)成分と(a2)成分とを含む混合物〔以下、混合物(a)という〕である。(a0-1)成分は、トリエタノールアミンが好ましい。また、アルキル化剤は、ジメチル硫酸が好ましい。
【0033】
混合物(a)は、(a1)成分と(a2)成分とを、(a1)成分/(a2)成分=3/97以上、更に5/95以上、そして、40/60以下、更に35/65以下の質量比で含有することが好ましい。また、混合物(a)は、(a1)成分である第3級アミン化合物及びその塩及び(a2)成分である4級化物の合計が、混合物(a)から低級アルコール及び水などの揮発性成分を除いた固形分(但し、常温で液体の化合物も含む)中の、80質量%以上、更には90質量%以上を占めることが好ましい。
【0034】
(A)成分は、合成上、未反応の脂肪酸、未反応のアルカノールアミン、脂肪酸メチルエステル及びその4級化物等の不純物を含んだ混合物として入手されるが、経済的な観点と本発明の課題解決において、本発明の柔軟剤組成物にはそれら不純物を含有する混合物を(A)成分の原料として配合してもかまわない。
【0035】
さらに混合物(a)は、一般式(A1)で示される第3級アミン化合物、その酸塩、及び前記第3級アミン化合物の4級化物のいずれであって、式中のmが1である化合物、mが2である化合物及びmが3であるエステル化の数が異なる化合物を含有する混合物であることが好ましい。その場合、一般式(A1)で示される第3級アミン化合物の4級化物である(a2)成分として、(a2)成分の全量中、mが1であるモノエステル体の4級化物の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下である。また、(a2)成分の全量中、mが2であるジエステル体の4級化物の含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。また、(a2)成分の全量中、mが3であるトリエステル体の4級化物の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。また、一般式(A1)で示される第3級アミン化合物及びその酸塩である(a1)成分として、(a1)成分の全量中、mが1であるモノエステル体の第3級アミン化合物及びその酸塩の含有量は、好ましくは0質量%以上、そして、好ましくは5質量%以下である。また、(a1)成分の全量中、mが2であるジエステル体の第3級アミン化合物及びその酸塩の含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。また、(a1)成分の全量中、mが3であるトリエステル体の第3級アミン化合物及びその酸塩の含有量は、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。また(a1)/(a2)比は前記した比率であることが好ましい。
【0036】
<(B)成分>
本発明の(B)成分は、炭素数2以上4以下の2価又は3価の水溶性多価アルコールである。(B)成分は、溶剤として機能するものであってよい。本発明でいう水溶性多価アルコールとは、20℃の水に対して混和性の多価アルコールをいう。
【0037】
本発明では、(B)を用いることにより、柔軟剤付与効果を維持したまま、液体柔軟剤組成物の容器の吐出口付近での固化を抑制し、長期使用時の吐出性を保つことができる。
本発明の(B)成分の分子量は、吐出性を保つ観点から、好ましくは50以上、より好ましくは55以上、更に好ましくは60以上であり、そして、好ましくは150以下、より好ましくは120以下、更に好ましくは110以下である。
【0038】
本発明の(B)成分の融点は、吐出性を保つ観点から、好ましくは30℃以下、より好ましくは25℃以下、更に好ましくは20℃以下である。
本発明の(B)成分の沸点は、吐出性を保つ観点から、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上、更に好ましくは250℃以上である。
【0039】
本発明の(B)成分のlogP値は、吐出性を保つ観点から、好ましくは-1以下、より好ましくは-1.2以下、更に好ましくは-1.5以下である。
ここで、「logP値」とは、化合物の1-オクタノール/水の分配係数の対数値であり、1-オクタノールと水の2液相の溶媒系に化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡において、それぞれの溶媒中での溶質の平衡濃度の比を意味し、底10に対する対数「logP」の形で一般的に示される。すなわち、logP値は親油性(疎水性)の指標であり、この値が大きいほど疎水的であり、値が小さいほど親水的である。
logP値については、例えば、Daylight Chemical Information Systems, Inc.(DaylightCIS)等から入手し得るデータベースに多くの化合物のlogP値が掲載されていて参照することができる。また、実測のlogP値がない場合には、プログラム“CLOGP”(Daylight CIS)等で計算することができ、中でも、プログラム“CLOGP”により計算することが、信頼性も高く好適である。
プログラム“CLOGP”においては、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される「計算logP(ClogP)」の値が、logPの実測値がある場合にはそれと共に出力される。フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している(A.Leo,Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C.Hansch, P.G.Sammens, J.B.Taylor andC.A.Ramsden,Eds., p.295, Pergamon Press, 1990)。このClogP値は現在最も一般的で信頼できる推定値であるため、化合物の選択に際してlogPの実測値がない場合に、ClogP値を代わりに用いることが好適である。本発明においては、logPの実測値、又はプログラム“CLOGP”により計算したClogP値のいずれを用いてもよい。
【0040】
本発明の(B)成分としては、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール等が挙げられる。容器の吐出口付近での(A)成分の固化を抑制し、吐出性を保つ観点から、(B)成分としては、好ましくは、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリンから選ばれる1種以上であり、より好ましくは、エチレングリコール、グリセリンから選ばれる1種以上である。
【0041】
本発明の液体柔軟剤組成物は、吐出性を高める観点から、(B)成分として、エチレングリコール(以下、(B1)成分という)及びグリセリン(以下、(B2)成分という)から選ばれる1種以上を含有することが好ましく、(B2)を含有することがより好ましく、(B1)成分と(B2)成分の両方を含有することが更により好ましい。
本発明において、(B1)成分と(B2)成分の両方を含有する場合、(B1)成分の含有量と(B2)成分の含有量との質量比(B1)/(B2)は、吐出性を高める観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、更により好ましく0.8以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは5以下である。
(B)成分中、(B1)成分と(B2)成分の合計含有量の割合は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下であり、100質量%であってよい。
【0042】
<(C)成分>
本発明では、(A)成分の吐出性を向上させる観点から、(C)成分として非イオン性界面活性剤を用いる。非イオン性界面活性剤としては、炭素数8以上18以下の炭化水素基を少なくとも1つ有し、オキシアルキレン基が平均2モル以上100モル以下付加したポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0043】
本発明の(C)成分としては、(A)成分の吐出性改善効果を向上させる観点から、下記一般式(C1)で表される非イオン性界面活性剤が好ましい。
1c-O-(EO)mc(AO)nc-H (C1)
〔式中、R1cは炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基、EOはエチレンオキシ基、AOはプロピレンオキシ基及びブチレンオキシ基から選ばれる一種以上のアルキレンオキシ基であり、EO及びAOはブロック又はランダムであってもよく、mcは平均付加モル数を示す5以上100以下の数であり、ncは平均付加モル数を示す0以上5以下の数であり、nc>0の時は、mc>nc+5である。〕
【0044】
一般式(C1)中、R1cは炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基であり、吐出性の観点から、好ましくは炭素数10以上16以下のアルキル基又はアルケニル基である。
一般式(C1)中、EOはエチレンオキシ基であり、AOはプロピレンオキシ基及びブチレンオキシ基の少なくとも何れかであり、好ましくはプロピレンオキシ基である。
一般式(C1)中、mcは平均付加モル数を示す5以上100以下の数であり、吐出性の観点から、好ましくは7以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上、そして、好ましくは80以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは35以下である。
またncは平均付加モル数を示す0以上5以下の数であって、nc>0の時はmc>nc+5である。ncは好ましくは0以上3以下の数、より好ましくは0である。
【0045】
<組成、任意成分等>
本発明の液体柔軟剤組成物は、吐出性を高める観点から、(A)成分を、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15量%以下、更に好ましくは12質量%以下含有する。
【0046】
本発明の液体柔軟剤組成物は、吐出性を保つ観点から、(B)成分を、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、より更に好ましくは3質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下含有する。
【0047】
本発明の液体柔軟剤組成物は、吐出性の観点から、(C)成分を、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下含有する。
【0048】
本発明の液体柔軟剤組成物において、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量との質量比(A)/(B)は、吐出性を高める観点から、0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上であり、そして、10以下、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下である。
【0049】
本発明の液体柔軟剤組成物において、(A)成分の含有量と(C)成分の含有量との質量比(A)/(C)は、吐出性を高める観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは0.5以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下、より更に好ましくは5以下である。
【0050】
本発明の液体柔軟剤組成物において、(B)成分の含有量と(C)成分の含有量との質量比(B)/(C)は、吐出性を高める観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上、より更に好ましくは0.7以上、より更に好ましくは1.0以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下、より更に好ましくは5以下である。
【0051】
本発明の液体柔軟剤組成物は水を含有する。水は、脱イオン水、脱イオン水に次亜塩素酸塩を少量配合した滅菌した水、水道水等を用いることができる。本発明の液体柔軟剤組成物において、水の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。
【0052】
本発明の液体柔軟剤組成物は、更に以下に示す成分を含有することが好ましい。
〔(D)成分:酸剤〕
本発明の液体柔軟剤組成物は、組成物のpHを調整する観点から、(D)成分として酸剤を含有することができる。
酸剤としては、無機酸及び有機酸が挙げられ、無機酸の具体例としては、塩酸、及び硫酸が挙げられる。有機酸の具体例としては、炭素数1以上10以下の1価又は多価のカルボン酸、又は炭素数1以上20以下の1価又は多価のスルホン酸、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸が挙げられる。より具体的には、メチル硫酸、エチル硫酸、p-トルエンスルホン酸、(o-、m-、p-)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、グリコール酸、エチレンジアミン4酢酸、クエン酸、安息香酸、及びサリチル酸が挙げられる。
これらの中でも、無機酸であれば塩酸が好ましく、有機酸であれば炭素数1以上10以下の1価又は多価のカルボン酸が好ましく、クエン酸がより好ましい。
本発明の液体柔軟剤組成物が酸剤を含有する場合、その含有量は、(A)成分の種類や量によって適宜調整することができ、pHが前記範囲になる範囲であって、保存安定性を損なわない程度が好ましい。
【0053】
〔(E)成分:香料化合物〕
本発明では、(E)成分として、香料化合物を含有してもよい。
本発明の(E)成分として用いることができる香料化合物に特に制限はない。(E)成分として用いることができる香料化合物としては、例えば「香料と調香の基礎知識、中島基貴編著、産業図書株式会社発行、2005年4月20日 第4刷」に記載の香料化合物や特許文献等を通じて柔軟剤に配合することが知られている香料化合物の他に、香料メーカーが独自に調製した香料成分又は調香した香料組成物を使用することができる。
【0054】
例えば、β-イオノン(3.7)、γ-ウンデカラクトン(3.8)、γ-ノナラクトン(2.8)、γ-メチルイオノン(4.0)、アンブロキサン(5.3)、イソEスーパー(4.7)、エチルバニリン(1.8)、エチレンブラッシレート(4.6)、オイゲノール(3.0)、カシュメラン(IFF社製)(4.0)、クマリン(1.5)、ゲラニオール(2.4)、酢酸o,t-ブチルシクロヘキシル(4.1)、酢酸シトロネリル(4.2)、酢酸ジメチルベンジルカルビニル(2.8)、サンダルマイソールコア(3.9)、ジヒドロジャスモン酸メチル(2.4)、ジヒドロミルセノール(3.0)、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド(2.9)、ジャバノール(ジボダン製)(4.7)、ネロリンヤラヤラ(3.2)、ハバノライド(フィルメニッヒ製)(6.2)、フルーテート(花王株式会社)(3.4)、ペオニル(ジボダン製)(4.0)、ヘキシルシンナミックアルデヒド(4.8)、ヘリオトロピン(1.1)、メチルβ-ナフチルケトン(2.8)、メチルアンスラニレート(2.0)、ラズベリーケトン(1.1)、リモネン(4.4)、及びリリアール(3.9)を挙げることができる。なお()内の数値はlogP値である。(E)成分のlogp値は(B)成分と同じ意味である。
【0055】
なお、本発明では、香料化合物の希釈剤や保留剤を含有してもよい。希釈剤及び保留剤としては、ジプロピレングリコール、パルミチン酸イソプロピルエステル、ジエチルフタレート、ペンジルベンゾエート、流動パラフィン、イソパラフィン、及び油脂等を挙げることができる。
希釈剤及び保留剤を用いる場合、(E)成分と希釈剤及び保留剤との合計に対する希釈剤及び保留剤の量は、好ましくは0質量%以上20質量%以下である。
【0056】
本発明の液体柔軟剤組成物が(E)成分を含有する場合、その含有量は、組成物中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、そして、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下である。なお、液体柔軟剤組成物中の(E)成分は、製品に合わせてその含有量を調整することができる。
【0057】
〔その他の成分〕
本発明の液体柔軟剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、更に、(A)成分及び(C)成分以外の界面活性剤、(B)成分以外の溶剤、塩化カルシウム等の無機塩、エチレンジアミン4酢酸塩及びメチルグリシン二酢酸塩等のキレート剤、BHT等の酸化防止剤、消泡剤、防腐剤、染料、顔料、紫外線吸収剤等の他の成分を添加することができる。
【0058】
〔物性等〕
本発明の液体柔軟剤組成物の30℃におけるpHは、吐出性を高める観点から、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは、2.7以上、より更に好ましくは2.9以上、そして、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.8以下、更に好ましくは4.5以下、より更に好ましくは4.2以下、より更に好ましくは4.0以下である。pHは、「JIS K 3362;2008の項目8.3に従って30℃において測定する。pHは、アルカリ剤や前述の酸剤等のpH調整剤により調整することができる。
【0059】
本発明の液体柔軟剤組成物の30℃における粘度は、吐出性を高める観点から、好ましくは5mPa・s以上、より好ましくは8mPa・s以上、更に好ましくは10mPa・s以上、そして、好ましくは150mPa・s以下、より好ましくは130mPa・s以下、更に好ましくは100mPa・s以下、より更に好ましくは80mPa・s以下、より更に好ましくは50mPa・s以下である。液体柔軟剤組成物の粘度は、B型粘度計を用いて、No.1~No.3ローターのいずれかのローターを用い、60r/minで、測定開始から1分後の指示値である。液体柔軟剤組成物は30±1℃に調温して測定する。粘度計の測定領域が2つのローターで得られた場合であって、換算した粘度が異なる場合は、ローター番号の小さい方のデータを採用する。
【0060】
〔液体柔軟剤組成物の製造方法〕
本発明の液体柔軟剤組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び水を配合してなる液体柔軟剤組成物であって、(A)成分の配合量と(B)成分の配合量との質量比(A)/(B)が0.1以上10以下である、液体柔軟剤組成物である。
また本発明の液体柔軟剤組成物の製造方法は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び水を混合する、液体柔軟剤組成物の製造方法であって、(A)成分の混合量と(B)成分の混合量との質量比(A)/(B)が0.1以上10以下である、液体柔軟剤組成物の製造方法である。
本発明の液体柔軟剤組成物の製造方法は、本発明の液体柔軟剤組成物で述べた事項を適宜適用することができる。(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び任意成分は、本発明の液体柔軟剤組成物で述べたものと同じであり、本発明の液体柔軟剤組成物に記載の各成分の含有量は、混合量に置き換えて本発明の液体柔軟剤組成物の製造方法に適用される。
【0061】
[液体柔軟剤物品]
本発明の液体柔軟剤物品は、前記本発明の液体柔軟剤組成物を特定開口面積の吐出口を有する容器に充填してなるものであり、このような容器に組成物を充填することにより、転倒による液体の流出を抑制するだけなく、例えばポンプ式ディスペンサー容器を用いる場合、ポンプのストロークと吐出量との関係から、簡便に柔軟剤を計量することができる。
【0062】
<容器>
本発明に係る容器は、開口面積が1.0mm以上15mm以下である吐出口を備えた容器である。本発明において、吐出口の開口面積とは、例えば、容器に充填された内容物が、容器から外部に吐出される際に最後に通過する吐出口の開口面積であってよい。容器としては、例えば特開2002-201488号公報に開示の口径を有する吐出口を備えた容器を使用することができる。また、容器は、前記開口面積を有する吐出器が装着された容器を用いることもできる。吐出器としては、例えば特開2009-120234号公報記載の吐出器を使用することができる。また、特表2012-505951の〔0066〕~〔0073〕に記載のポンプ容器において、吐出口の開口面積が1.0mm以上15mm以下のものを用いる事が出来る。本発明の課題を解決できる観点から、吐出口の開口面積は、1.0mm以上であり、好ましくは2.0mm以上であり、より好ましくは3.0mm以上であり、そして、15mm以下であり、好ましくは13mm以下であり、より好ましくは12mm以下である。本発明に係る容器としては、例えばポンプ容器、プッシュプル容器、スクイズ容器等が挙げられる。ポンプ容器、更にポンプ式ディスペンサー容器が使い勝手から好ましい。
【0063】
本発明の液体柔軟剤物品は、繊維製品用として好適であり、繊維製品としては、衣料、布帛、寝具、タオル等が挙げられる。
【0064】
本発明の液体柔軟剤物品を繊維製品に適用する場合は、容器から必要量を吐出させて従来の柔軟剤と同様に使用することができる。例えば、洗濯における濯ぎの際に、所定量を濯ぎ水に吐出させて使用することができる。また、洗濯機の柔軟剤投入口に、所定量を吐出させて使用することができる。
【0065】
本発明の衣料の処理方法は、本発明の液体柔軟剤物品から吐出させた液体柔軟剤組成物を、好ましくは衣料の質量に対して0.1質量%から3質量%となるように、水浴中で衣料と接触させる。この方法により衣料の柔らかな風合いを効果的に達成することができる。衣料の質量に対する液体柔軟剤組成物の量が0.1質量%以上であると、前記液体柔軟剤組成物を用いることによる効果が十分に得られ、3質量%以下であると、効果と経済性とのバランスがよいものとなる。本発明の衣料の処理方法では、衣料の質量に対する(A)成分の量は、衣料の柔らかな風合いを付与する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、そして、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0066】
前記液体柔軟剤組成物を溶解させる水の量は、一般的に浴比で決めることができる。なお、本明細書において「浴比」とは、衣料の質量と液体柔軟剤組成物を含有する水の容量の比、[水の容量(リットル)]/[衣料の質量(kg)]をいう。洗濯機等を用いて液体柔軟剤組成物を溶解させた水を撹拌しながら衣料と液体柔軟剤組成物とを接触させる場合には、衣料同士の擦れを少なくし、毛羽・毛玉の発生を抑制する観点から、浴比は好ましくは10以上、より好ましくは15以上、更に好ましくは17以上、そして、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下である。
【実施例
【0067】
実施例で使用した成分を以下に示す。
<(A)成分>
(A-1):下記合成例a-1で製造された反応混合物(a-1)に含まれる4級アンモニウム塩化合物(エステル化反応物の4級化物)及び第3級アミン化合物(エステル化反応物)
〔合成例a-1:(a-1)の製造〕
トリエタノールアミンとRCOOHで表される脂肪酸(組成は後述の通り)を、反応モル比(脂肪酸/トリエタノールアミン)が1.65/1で、エステル化反応させ、一般式(A1)で表される第3級アミン化合物であって、R1aが前記脂肪酸のRであり、R2aがHO-(C2pO)-C2q基であり、rが0、qが2であって、mが1、2又は3である第3級アミン化合物を含むエステル化反応物を得た。
エステル化反応物中には、未反応の脂肪酸が5質量%含まれていた。エステル化反応物中の第3級アミン化合物のアミン基(置換アミノ基)に対して、メチル基が0.96等量となるように、ジメチル硫酸で4級化反応を行った後、エタノールを添加することで複数の化合物を含む反応混合物(a-1)を得た。
得られた反応混合物(a-1)をHPLC法で各成分の組成比を分析した。一般式(A1)の第3級アミン化合物及びその4級化物は、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した。得られた反応混合物(a-1)は、一般式(A1)で示される第3級アミンの4級化物75質量%、エタノール10質量%、一般式(A1)で示される4級化されなかった第3級アミン化合物(メチル硫酸塩として)12質量%、未反応脂肪酸2%、微量のトリエタノールアミンのジメチル硫酸4級化物及びその他未反応トリエタノールアミン等の微量成分を含むものであった。
【0068】
なお、反応混合物(a-1)に含まれる一般式(A1)で示される第3級アミンの4級化物(すなわち(a2)成分)のうち、R1aがROOHのR由来の直鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、R2aがHO-(C2pO)-C2q基であり、rが0、qが2であって、mが1である第3級アミン化合物のジメチル硫酸4級化物の割合は28質量%、同様にmが2である第3級アミン化合物のジメチル硫酸4級化物の割合は56質量%、同様にmが3である第3級アミン化合物のジメチル硫酸4級化物の割合は16質量%であった。反応混合物(a-1)に含まれる一般式(A1)で示される4級化されなかった第3級アミン化合物(すなわち(a1)成分)のうち、R1aがROOHのR由来の直鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、R2aがHO-(C2pO)-C2q基であり、rが0、qが2であって、mが1である第3級アミン化合物の割合は実質0質量%、同様にmが2である第3級アミン化合物の割合は10質量%、同様にmが3である第3級アミン化合物の割合は90質量%であった。
【0069】
また、(a-1)を製造するための反応に用いたRCOOHの組成を以下に示す。
パルミチン酸:45質量%
ステアリン酸:25質量%
オレイン酸:27質量%
リノール酸: 3質量%
前記組成は、原料に使用した脂肪酸をガスクロマトグラフィーで組成分析し、各脂肪酸の面積%を質量%とみなした。
なお、表の組成物の調製には反応混合物(a-1)を用い、表中の質量%は、(A)成分相当の成分の含有量に基づいて換算した値を示している。
【0070】
<(B)成分>
(B-1):エチレングリコール(分子量:62、融点:-12℃、沸点:198℃、ClogP値:-1.4)
(B-2):グリセリン(分子量:92、融点:18℃、沸点:290℃、ClogP値:-1.8)
(B-3):プロピレングリコール(分子量:76、融点:-59℃、沸点:188℃、ClogP値:-0.9)
【0071】
<(B’)成分((B)成分の比較成分)>
(B’-1):エタノール(分子量:46、融点:-114℃、沸点:78℃、ClogP値:-0.3)
(B’-2):ジプロピレングリコール(分子量:134、融点:-40℃、沸点:232℃、ClogP値:-0.7)
【0072】
<(C)成分>
(C-1):ポリオキシエチレン(オキシエチレン基の平均付加モル数29)ラウリルエーテル、一般式(C1)中、R1cが炭素数12のアルキル基、mcが29、ncが0の化合物
【0073】
<(E)成分>
(E-1):表1記載の香料
【0074】
【表1】
【0075】
〔実施例1~9及び比較例1~4〕
(1)液体柔軟剤組成物の製造
表2に示す配合組成となるように各成分を混合することにより、液体柔軟剤組成物を調製した。具体的には、以下の通りである。なお、表中の組成の質量%は、有効分の質量%である。また、表2では、便宜的に(B’)成分を(B)成分として質量比を示した。
【0076】
300mLビーカーに、液体柔軟剤組成物のできあがり量が200gとなるのに必要な量の80質量%に相当する量のイオン交換水と、(B)成分、(C)成分、キレート剤、及び防腐剤とを入れ、ウォーターバスを用いてイオン交換水の温度を60±2℃に調温した。(C)成分がイオン交換水中に均一に溶解するように、必要に応じて撹拌羽根を用いて撹拌することにより混合液を得た。なお、撹拌羽根としては、直径が5mmの撹拌棒の回転中心軸を基準として、長辺が90度方向になるように配置された撹拌羽根であって、羽根の数3枚、羽根の長辺/短辺=3cm/1.5cm、回転面に対して45度の角度で羽根が設置されたものを用いた。
【0077】
60±2℃の温度に調温した混合液を、前記撹拌羽根で撹拌(300r/m)した。これに、65℃で加熱溶解させた(A)成分を反応混合物(a-1)で3分間掛けて投入し投入終了後、15分間撹拌した。次に、5℃のウォーターバスを用いて、混合液の温度が30±2℃になるまで冷却した。これに(E)成分を投入し、5分間撹拌した。更に、できあがり質量(200g)となるようにイオン交換水を加え、5分間撹拌して液体柔軟剤組成物を得た。なお組成物のpHは塩酸又は水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH3.3に合わせた。
【0078】
<柔軟性の評価>
あらかじめ、非イオン性界面活性剤(ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物(平均付加モル数8)を用いて、市販の木綿タオル(武井タオル製、TW-220)24枚を、日立全自動洗濯機NW-6CYの洗濯工程を5回繰り返した(非イオン性界面活性剤使用量4.5g、標準コース、水量45L、水温20℃、洗浄時間10分、ため濯ぎ2回)。その後、25℃、45%RHの条件下で1日間乾燥した。
National製電気バケツ式洗濯機(MiniMini、NA-35)に、20℃に温調した市水を4.5L注水し、前処理した木綿タオル2枚を投入し、1分間撹拌した。撹拌後、表2記載の液体柔軟剤組成物を木綿タオル1.5kg当たり10gとなる量にて投入し、5分間撹拌した。その後、二層式洗濯機(TOSHIBA VH-52G(H))の脱水槽にて3分間脱水し、25℃、45%RHの条件下で1日間乾燥した。また、液体柔軟剤組成物を投入せずに市水のみを用いて上記と同様に処理した木綿タオルを基準タオルとした。
評価の熟練者5名によって、表2記載の液体柔軟剤組成物で処理した木綿タオルの柔軟性を下記の方法にて評価した。得られた木綿タオルを基準タオルと比較し、下記の基準で点数づけし、平均点を算出した。
〔評価基準〕
0 :基準タオルよりも明らかに柔らかい
1.0:基準タオルよりも柔らかい
2.0:基準タオルよりもやや柔らかい
3.0:基準タオルと同等の柔らかさ
【0079】
<吐出性の評価>
本発明は、ポンプ式ディスペンサー容器等の吐出口の狭い容器の吐出口付近での液体柔軟剤組成物の固化による吐出性の低下が課題である。そこで、表2記載の液体柔軟剤組成物の吐出性を下記の方法にて評価した。
開口面積1.0mmのマイクロピペット用チップD5000(ギルソン社製)をステンレス製試験管立てに立て、前述した製造方法で得られた液体柔軟剤組成物1mLをチップの上部から内壁に沿わせるように注入した。液体柔軟剤組成物はチップの吐出口から流れ出るが、全部流れ出ず少量の液体柔軟剤組成物がチップ先端に残留した。チップを動かさないように保ったまま、チップにマイクロピペット(ピペットマンP5000L、ギルソン社製)をセットし、残留した液を流すように空うちを3回行った後、25℃、45%RHにて1日間乾燥した。この操作を10回繰り返した。吐出性は、1回目と10回目の液の流れやすさを比較し、下記の基準で点数づけした。評価は5回行い平均点を算出した。
0 :10回目は、1回目と同様に流れやすかった
1.0:10回目は、1回目よりもやや流れにくかった
2.0:10回目は、1回目よりも流れにくかった
3.0:10回目は、1回目よりも明らかに流れにくかった
【0080】
【表2】
【0081】
<液体柔軟剤物品の評価>
表2の実施例1記載の液体柔軟剤組成物を下記のポンプ付ディスペンサー容器に充填し、液体柔軟剤物品を調製した。得られた液体柔軟剤物品を用いて、下記の方法にて吐出性の評価を行った。なお、評価に用いた容器は以下の通りである。
容器:ポンプ付ディスペンサー容器(吐出口面積=7mm)(大澤ワックス(株)製)
得られた液体柔軟剤物品のポンプを押し、5回吐出させた後、25℃、45%RHにて1日間静置させた。この操作を10回繰り返し、液の吐出しやすさを評価した。結果、回数を重ねても吐出性は低下せず、10回目も1回目と同じくらい液が吐出しやすかった。
また表2の実施例7の液体柔軟剤組成物を用いて同様の評価を行ったところ、実施例1の組成物と同様に、吐出性は低下せず、10回目も1回目と同じくらい液が吐出しやすかった。