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特許7200061リンクアーム部材の製造装置及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】リンクアーム部材の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/21 20140101AFI20221226BHJP
【FI】
B23K26/21 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019133265
(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公開番号】P2021016877
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000142115
【氏名又は名称】株式会社協豊製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 勝喜
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-210830(JP,A)
【文献】特開2004-249348(JP,A)
【文献】特開2017-144474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンクアーム本体(3)に円筒形のスリーブ(4)が接合されてなるリンクアーム部材(2)の製造装置(1,101)であって、
上記リンクアーム本体を保持した状態で基準軸線(A)を中心に回転可能な回転テーブル(10)と、
上記回転テーブルとの間で相対移動可能な可動体(20)と、
上記回転テーブルに保持された上記リンクアーム本体に対する上記スリーブの位置決めを行う位置決め機構(30,130)と、
上記位置決め機構によって互いに位置決めされた上記リンクアーム本体と上記スリーブの外周縁部(5)との境界領域(6)に向けてレーザー光(L)を照射するレーザー照射部(40)と、
を備え、
上記位置決め機構は、
上記回転テーブルに上記基準軸線を通るように設けられた挿入軸部(12,112)と、
上記可動体に上記スリーブの筒穴(4a)に嵌合可能に設けられた嵌合軸部(21,121)と、
上記挿入軸部及び上記嵌合軸部のいずれか一方に設けられた係合凸部(31,131)と、
上記挿入軸部及び上記嵌合軸部のいずれか他方に設けられた係合凹部(32,132)と、
上記嵌合軸部が上記筒穴に挿入されるように上記可動体を上記基準軸線上で上記回転テーブルに対する押し付け方向(X1)に駆動可能な駆動部(36)と、
を有し、
上記リンクアーム本体に設けられている貫通穴(3a)に上記挿入軸部が挿入され且つ上記貫通穴と上記筒穴の位置合わせがなされた状態で、上記駆動部によって上記回転テーブルに対して上記可動体を上記押し付け方向に駆動して上記嵌合軸部を上記筒穴に挿入することによって、上記基準軸線上で上記嵌合軸部が上記筒穴に緊密に嵌合し且つ上記係合凸部が上記係合凹部に緊密に嵌合するように構成されている、リンクアーム部材の製造装置(1,101)。
【請求項2】
上記可動体は、上記嵌合軸部が上記筒穴に挿入された状態で、上記駆動部によって上記押し付け方向に付勢されることにより上記回転テーブルとともに上記基準軸線を中心に周方向(Z)に回転可能に構成されている、請求項1に記載の、リンクアーム部材の製造装置。
【請求項3】
上記嵌合軸部に上記係合凹部が設けられ、上記回転テーブルの上記挿入軸部に上記係合凸部が設けられており、上記係合凸部には、上記貫通穴に対する上記筒穴の位置合わせがなされるように上記スリーブを誘い込む誘い込み部(135)が設けられている、請求項1または2に記載の、リンクアーム部材の製造装置。
【請求項4】
上記スリーブの上記外周縁部には、面取り角度(θ)が実質的に45°であり且つ面取りエッジ長さ(B)が0.05mmから0.3mmまでの範囲に設定された面取り部(5a)が設けられており、
上記レーザー照射部は、上記面取り部におけるレーザースポット径(La)がφ0.2mmからφ1.0mmまでの範囲となるように上記レーザー光を上記面取り部に向けて照射するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の、リンクアーム部材の製造装置。
【請求項5】
リンクアーム本体(3)に円筒形のスリーブ(4)が接合されてなるリンクアーム部材(2)の製造方法であって、
基準軸線(A)を中心に回転可能な回転テーブル(10)に上記基準軸線を通るように設けられている挿入軸部(12,112)を上記リンクアーム本体に設けられている貫通穴(3a)に挿入することによって上記リンクアーム本体を保持する保持工程(S10)と、
上記保持工程で上記回転テーブルに保持された上記リンクアーム本体に対する上記スリーブの位置決めを行う位置決め工程(S20)と、
上記位置決め工程で互いに位置決めされた上記リンクアーム本体と上記スリーブの外周縁部(5)との境界領域(6)に向けてレーザー光(L)を照射しつつ、上記基準軸線(A)を中心に上記回転テーブルを周方向(Z)に回転させて上記レーザー光の照射位置を変更するレーザー溶接工程(S30)と、を有し、
上記位置決め工程には、上記リンクアーム本体の上記貫通穴と上記スリーブの筒穴(4a)とを位置合わせする第1ステップ(S21)と、上記回転テーブルに対して可動体(20)を上記基準軸線上で押し付け方向(X1)に駆動して上記可動体に設けられている嵌合軸部(21,121)を上記筒穴に挿入することによって、上記基準軸線上で上記嵌合軸部を上記筒穴に緊密に嵌合させ且つ上記挿入軸部及び上記嵌合軸部のいずれか一方に設けられた係合凸部(31,131)を上記挿入軸部及び上記嵌合軸部のいずれか他方に設けられた係合凹部(32,132)に緊密に嵌合させる第2ステップ(S22)と、が含まれている、リンクアーム部材の製造方法。
【請求項6】
上記位置決め工程には、上記第2ステップで上記嵌合軸部を上記筒穴に挿入した状態で、上記基準軸線を中心に上記回転テーブルとともに上記周方向に回転可能な上記可動体を上記基準軸線上で上記回転テーブルに対する押し付け方向(X1)へ付勢する第3ステップ(S23)が含まれている、請求項5に記載の、リンクアーム部材の製造方法。
【請求項7】
上記スリーブの上記外周縁部には、面取り角度(θ)が実質的に45°であり且つ面取りエッジ長さ(B)が0.05mmから0.3mmまでの範囲に設定された面取り部(5a)が設けられており、
上記レーザー溶接工程において、上記面取り部におけるレーザースポット径(La)がφ0.2mmからφ1.0mmまでの範囲となるように上記レーザー光を上記面取り部に向けて照射する、請求項5または6に記載の、リンクアーム部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンクアーム部材の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、自動変速機のシフトレバー装置が開示されている。このシフトレバー装置は、2つの車両部品を連結するリンク機構を構成する複数のリンクアームを備えている。
【0003】
また、この種の車両用のリンクアームとして、リンクアーム本体に円筒形のスリーブが接合されてなるリンクアーム部材が知られている。このリンクアーム部材において、スリーブは車両側の軸部との係合によってリンクアーム部材自体の取り付けに使用され、リンクアーム本体の両端部が車両部品に連結されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-183971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のリンクアーム部材を製造するための工法として、金属材料の塑性変形を利用してリンクアーム本体にスリーブを接合するカシメ加工や、アーク溶接、レーザー溶接などを使用することが考えられる。
【0006】
カシメ加工を使用する場合、スリーブの形状をリンクアーム本体の形状に合わせて複雑化する必要があり、スリーブの切削加工に要するコストが高くなるため、リンクアーム部材を低コストで量産化するのが難しいという問題がある。アーク溶接を使用する場合、溶接時の熱変形によって製品の寸法精度が低くなり、またワークの溶け落ちやスパッタの付着などによって外観品質が悪くなるため、高品質のリンクアーム部材を量産化するのが難しいという問題がある。レーザー溶接を使用する場合、レーザー光のスポット径が小さいため、リンクアーム本体とスリーブとの位置決め精度が低いときにはリンクアーム本体とスリーブを確実に接合することができないため、高品質のリンクアーム部材を量産化するのが難しいという問題がある。
【0007】
本発明者は、上記の各工法についての問題点を踏まえた上で、高品質のリンクアーム部材を低コストで量産化するための技術について鋭意検討した。その検討の結果、本発明者は、レーザー溶接においてリンクアーム本体とスリーブとの位置決め精度を高める技術を構築することによって、高品質のリンクアーム部材を量産化することに成功した。
【0008】
本発明は、高品質のリンクアーム部材をレーザー溶接によって量産化するのに有効な技術しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、
リンクアーム本体(3)に円筒形のスリーブ(4)が接合されてなるリンクアーム部材(2)の製造装置(1,101)であって、
上記リンクアーム本体を保持した状態で基準軸線(A)を中心に回転可能な回転テーブル(10)と、
上記回転テーブルとの間で相対移動可能な可動体(20)と、
上記回転テーブルに保持された上記リンクアーム本体に対する上記スリーブの位置決めを行う位置決め機構(30,130)と、
上記位置決め機構によって互いに位置決めされた上記リンクアーム本体と上記スリーブの外周縁部(5)との境界領域(6)に向けてレーザー光(L)を照射するレーザー照射部(40)と、
を備え、
上記位置決め機構は、
上記回転テーブルに上記基準軸線を通るように設けられた挿入軸部(12,112)と、
上記可動体に上記スリーブの筒穴(4a)に嵌合可能に設けられた嵌合軸部(21,121)と、
上記挿入軸部及び上記嵌合軸部のいずれか一方に設けられた係合凸部(31,131)と、
上記挿入軸部及び上記嵌合軸部のいずれか他方に設けられた係合凹部(32,132)と、
上記嵌合軸部が上記筒穴に挿入されるように上記可動体を上記基準軸線上で上記回転テーブルに対する押し付け方向(X1)に駆動可能な駆動部(36)と、
を有し、
上記リンクアーム本体に設けられている貫通穴(3a)に上記挿入軸部が挿入され且つ上記貫通穴と上記筒穴の位置合わせがなされた状態で、上記駆動部によって上記回転テーブルに対して上記可動体を上記押し付け方向に駆動して上記嵌合軸部を上記筒穴に挿入することによって、上記基準軸線上で上記嵌合軸部が上記筒穴に緊密に嵌合し且つ上記係合凸部が上記係合凹部に緊密に嵌合するように構成されている、リンクアーム部材の製造装置(1,101)、
にある。
【0010】
本発明の別の一態様は、
リンクアーム本体(3)に円筒形のスリーブ(4)が接合されてなるリンクアーム部材(2)の製造方法であって、
基準軸線(A)を中心に回転可能な回転テーブル(10)に上記基準軸線を通るように設けられている挿入軸部(12,112)を上記リンクアーム本体に設けられている貫通穴(3a)に挿入することによって上記リンクアーム本体を保持する保持工程(S10)と、
上記保持工程で上記回転テーブルに保持された上記リンクアーム本体に対する上記スリーブの位置決めを行う位置決め工程(S20)と、
上記位置決め工程で互いに位置決めされた上記リンクアーム本体と上記スリーブの外周縁部(5)との境界領域(6)に向けてレーザー光(L)を照射しつつ、上記基準軸線(A)を中心に上記回転テーブルを周方向(Z)に回転させて上記レーザー光の照射位置を変更するレーザー溶接工程(S30)と、を有し、
上記位置決め工程には、上記リンクアーム本体の上記貫通穴と上記スリーブの筒穴(4a)とを位置合わせする第1ステップ(S21)と、上記回転テーブルに対して可動体(20)を上記基準軸線上で押し付け方向(X1)に駆動して上記可動体に設けられている嵌合軸部(21,121)を上記筒穴に挿入することによって、上記基準軸線上で上記嵌合軸部を上記筒穴に緊密に嵌合させ且つ上記挿入軸部及び上記嵌合軸部のいずれか一方に設けられた係合凸部(31,131)を上記挿入軸部及び上記嵌合軸部のいずれか他方に設けられた係合凹部(32,132)に緊密に嵌合させる第2ステップ(S22)と、が含まれている、リンクアーム部材の製造方法、
にある。
【発明の効果】
【0011】
上記の各態様において、リンクアーム本体の貫通穴に回転テーブルの挿入軸部が挿入され且つ貫通穴とスリーブの筒穴の位置合わせがなされた状態で、回転テーブルに対して可動体を基準軸線上で押し付け方向へ駆動して嵌合軸部をスリーブの筒穴に挿入する。これにより、基準軸線上で嵌合軸部をスリーブの筒穴に緊密に嵌合させ且つ係合凸部を係合凹部に緊密に嵌合させることができる。この場合、可動体を基準軸線上で押し付け方向へ駆動させるのみで、リンクアーム本体に対するスリーブの位置決めを高い精度で行うことができる。
【0012】
そして、高い精度で位置決めされたリンクアーム本体とスリーブの外周縁部との境界領域に向けてレーザー光を照射することによって、レーザー光のスポット径が小さい場合でもリンクアーム本体とスリーブをレーザー溶接で確実に接合することができる。これにより、高品質のリンクアーム部材の量産化が可能になる。
【0013】
以上のごとく、上記の各態様によれば、高品質のリンクアーム部材をレーザー溶接によって量産化するのに有効な技術を提供することができる。
【0014】
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態1の、リンクアーム部材の製造装置の側面図。
図2図1中の回転テーブルの周辺の分解斜視図。
図3】実施形態1の、リンクアーム部材の製造方法のフローチャートを示す図。
図4図3中の位置決め工程のフローチャートを示す図。
図5図1の製造装置について図4中の第1ステップの実行時の様子を示す断面図。
図6図5のVI-VI線矢視断面図。
図7図1の製造装置について図4中の第2ステップの実行時の様子を示す断面図。
図8図7のVIII-VIII線矢視断面図。
図9図7のIX-IX線矢視断面図。
図10図1の製造装置について図3中のレーザー溶接工程の実行時の様子を示す断面図。
図11図10の部分拡大図。
図12】実施形態2の、リンクアーム部材の製造装置について回転テーブルの周辺の分解斜視図。
図13】実施形態2の製造装置について図5に対応した断面図。
図14図13のXIV-XIV線矢視断面図。
図15】実施形態2の製造装置について図7に対応した断面図。
図16図15のXVI-XVI線矢視断面図。
図17】実施形態2の製造装置について図10に対応した断面図。
図18図17の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述の態様の好ましい実施形態について説明する。
【0017】
上記の、リンクアーム部材の製造装置において、上記位置決め機構は、上記嵌合軸部が上記筒穴に挿入されるように上記可動体を上記基準軸線上で上記回転テーブルに対する押し付け方向に駆動可能な駆動部を有するのが好ましい。
【0018】
この製造装置によれば、可動体を基準軸線上で回転テーブルに対する押し付け方向に動かして嵌合軸部がスリーブの筒穴に挿入されるように駆動部を制御することによって、リンクアーム本体に対するスリーブの位置決めを迅速に行うことができる。
【0019】
上記の、リンクアーム部材の製造装置において、上記可動体は、上記嵌合軸部が上記筒穴に挿入された状態で、上記駆動部によって上記押し付け方向に付勢されることにより上記回転テーブルとともに上記基準軸線を中心に周方向に回転可能に構成されているのが好ましい。
【0020】
この製造装置によれば、回転テーブルの回転時にリンクアーム本体とスリーブとの間に生じる摺動抵抗に打ち勝つ押し付け力が得られるように駆動部を制御することによって、レーザー溶接の際にスリーブをリンクアーム本体と同期させて基準軸線を中心に周方向に一体回転させることができる。
【0021】
上記の、リンクアーム部材の製造装置において、上記嵌合軸部に上記係合凹部が設けられ、上記回転テーブルの上記挿入軸部に上記係合凸部が設けられており、上記係合凸部には、上記貫通穴に対する上記筒穴の位置合わせがなされるように上記スリーブを誘い込む誘い込み部が設けられているのが好ましい。
【0022】
この製造装置によれば、回転テーブル側の係合凸部は、可動体側の係合凹部と緊密に嵌合することによってリンクアーム本体に対するスリーブの位置決め機能を果たすが、この係合凸部に設けられた誘い込み部によるスリーブのガイド作用にしたがってリンクアーム本体の貫通穴に対するスリーブの筒穴の位置合わせを容易に行うことも可能になる。このため、回転テーブル側の係合凸部を、リンクアーム本体に対するスリーブの位置決めのための手段のみならず、リンクアーム本体の貫通穴に対するスリーブの筒穴の位置合わせのための手段として兼用することができる。従って、スリーブの供給をパーツフィーダーなどの装置を利用して行うことが可能になる。
【0023】
上記の、リンクアーム部材の製造装置において、上記スリーブの上記外周縁部には、面取り角度が実質的に45°であり且つ面取りエッジ長さが0.05mmから0.3mmまでの範囲に設定された面取り部が設けられており、
上記レーザー照射部は、上記面取り部におけるレーザースポット径がφ0.2mmからφ1.0mmまでの範囲となるように上記レーザー光を上記面取り部に向けて照射するように構成されているのが好ましい。
【0024】
この製造装置によれば、スリーブの面取り部の形状とレーザー照射部によるレーザースポット径とを適正に組合せてレーザー溶接を実行することによって、リンクアーム本体とスリーブを安定して接合することができる。また、溶接後のリンクアーム部材の変形を抑えることができ、残留応力による置き割れが生じにくいという効果が得られる。
【0025】
上記の、リンクアーム部材の製造方法において、上記位置決め工程には、上記第2ステップで上記嵌合軸部を上記筒穴に挿入した状態で、上記基準軸線を中心に上記回転テーブルとともに上記周方向に回転可能な上記可動体を上記基準軸線上で上記回転テーブルに対する押し付け方向へ付勢する第3ステップが含まれているのが好ましい。
【0026】
この製造方法によれば、可動体を基準軸線上で回転テーブルに対する押し付け方向へ付勢する第3ステップを加えることによって、回転テーブルの回転時にリンクアーム本体とスリーブとの間に生じる摺動抵抗に打ち勝つ押し付け力が得られる。これにより、スリーブをリンクアーム本体と同期させて基準軸線を中心に周方向に一体回転させることができる。
【0027】
上記の、リンクアーム部材の製造方法において、上記スリーブの上記外周縁部には、面取り角度が実質的に45°であり且つ面取りエッジ長さが0.05mmから0.3mmまでの範囲に設定された面取り部が設けられており、
上記レーザー溶接工程において、上記面取り部におけるレーザースポット径がφ0.2mmからφ1.0mmまでの範囲となるように上記レーザー光を上記面取り部に向けて照射するのが好ましい。
【0028】
この製造方法によれば、スリーブの面取り部の形状とレーザー照射部によるレーザースポット径とを適正に組合せてレーザー溶接を実行することによって、リンクアーム本体とスリーブを安定して接合することができる。また、溶接後のリンクアーム部材の変形を抑えることができ、残留応力による置き割れが生じにくいという効果が得られる。
【0029】
以下、リンクアーム部材の製造装置及び製造方法の具体的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
なお、この実施形態の説明のための図面において、特に断らない限り、リンクアーム部材の製造装置を構成する回転テーブルの軸方向を矢印Xで示し、回転テーブルの径方向を矢印Yで示し、回転テーブルの周方向を矢印Zで示すものとする。
【0031】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1の製造装置1は、リンクアーム部材2を製造するための装置であり、回転テーブル10と、可動体20と、位置決め機構30と、レーザー照射部40と、制御部50と、を備えている。
【0032】
リンクアーム部材2は、リンクアーム本体3と円筒形のスリーブ4とが接合されてなる部材である。このリンクアーム部材2は、「リンクレバー」或いは「アーム部材」とも称呼される。リンクアーム部材2は、2つの車両部品を連結するリンク機構を構成するのに使用される。
【0033】
リンクアーム部材2において、スリーブ4は車両側の軸部(図示省略)との係合によってリンクアーム部材2自体の取り付けに使用され、リンクアーム本体3の両端部が車両部品に連結されるようになっている。リンクアーム本体3とスリーブ4はいずれも金属材料からなり、レーザー照射部40による溶接によって互いに接合される。
【0034】
リンクアーム本体3は、プレート形状を有する。このリンクアーム本体3は、長手方向の中央部に設けられた貫通穴3aと、一端部に設けられた係合穴3bと、他端部に設けられた係合ピン3cと、を有する。貫通穴3aは、リンクアーム本体3がスリーブ4に接合された状態で、スリーブ4の筒内と連通するように構成されている。また、係合穴3bが1つの車両部品の軸部と係合し、係合ピン3cが別の車両部品の凹部と係合するように構成されている。
【0035】
なお、リンクアーム本体3の両端部の構造は、車両部品の形状に応じて適宜に変更可能である。例えば、リンクアーム本体3の一端部に係合穴3bに代わる係合ピンを設け、且つリンクアーム本体3の他端部に係合ピン3cに代わる係合穴を設けた構造や、リンクアーム本体3の一端部に係合穴3bに設け、且つリンクアーム本体3の他端部に係合ピン3cに代わる係合穴を設けた構造や、リンクアーム本体3の一端部に係合穴3bに代わる係合ピンを設け、且つリンクアーム本体3の他端部に係合ピン3cを設けた構造を採用することもできる。
【0036】
回転テーブル10は、円盤状のテーブルであり、ベースフレーム16に取付けられた電動モータ15の回転軸15aに直接的或いはギア機構を介して間接的に連結されている。このため、回転テーブル10は、リンクアーム本体3を保持した状態で仮想上の基準軸線Aである回転軸線を中心に電動モータ15の駆動力によって周方向Z(図2参照)に回転するように構成されている。また、この回転テーブル10は、その上面側にリンクアーム部材2のリンクアーム本体3を保持可能に構成されている。
【0037】
位置決め機構30は、回転テーブル10によって保持されたリンクアーム本体3に対するスリーブ4の位置決めを行うためのものである。この位置決め機構30は、回転テーブル10の後述の挿入軸部12と、可動体20の後述の嵌合軸部21と、可動体20を軸方向Xに沿った第1方向X1及び第2方向X2に駆動可能な駆動部としてのシリンダ装置36と、を有する。
【0038】
シリンダ装置36は、エア駆動式の装置である。このシリンダ装置36は、エア供給源37に接続されたシリンダチューブ36aと、シリンダチューブ36aの内部に軸方向Xにスライド可能に収容されたピストン36bと、ピストン36bに固定されたピストンロッド36cと、を有する。ピストンロッド36cは、エア供給源37からシリンダチューブ36aに供給されるエアによってピストン36bが受ける圧力を利用して、第1方向X1へ突出し或いは第2方向X2へ引っ込むように構成されている。
【0039】
可動体20は、回転テーブル10との間で軸方向Xに相対移動可能であり、しかもスライダー18に基準軸線Aを中心にベアリング機構(図示省略)を介して周方向Zに回転可能に支持されている。スライダー18は、シリンダ装置36のピストンロッド36cに連結されており、ベースフレーム16から立設した支柱17のガイドレール17aに沿って軸方向Xにスライド可能に構成されている。ガイドレール17aは、軸方向Xに沿って延びている。
【0040】
このため、可動体20は、ピストンロッド36cが第1方向X1へ突出することによって回転テーブル10の上方空間を第1方向X1へ下降する一方で、ピストンロッド36cが第2方向X2へ引っ込むことによって回転テーブル10の上方空間を第2方向X2へ上昇するように構成されている。また、可動体20は、周方向Zの荷重を受けることによって、基準軸線Aを中心に周方向Zに回転可能に構成されている。
【0041】
レーザー照射部40は、ベースフレーム16から立設した支柱19に取付けられている。このレーザー照射部40は、位置決め機構30によって回転テーブル10上で互いに位置決めされたリンクアーム本体3とスリーブ4の外周縁部との境界領域に向けてレーザー光Lを照射するためのものである。リンクアーム本体3及びスリーブ4の形状などに応じて、水平面に対するレーザー光Lの照射角度を45°~60°程度の範囲で適宜に設定するのが好ましい。
【0042】
レーザー光Lの照射は連続的であるか間欠的であるかは問わないが、一定のパルス幅で間欠的にレーザー光Lを発振するパルスレーザーの形態を採用するのが好ましい。パルスレーザーは、短い時間幅の中にエネルギーを集中させることによって高いピーク出力が得ることができるという利点がある。これにより、レーザー光Lを連続的に照射する場合に比べて、照射時間を抑えることでリンクアーム部材2であるワークに熱歪みが生じにくくなり、またレーザー照射部40を小型化するのに有効である。
【0043】
制御部50は、電動モータ15、エア供給源37及びレーザー照射部40のそれぞれを制御する機能を有し、制御盤(図示省略)に格納されている。
【0044】
図2に示されるように、回転テーブル10の上面側には、リンクアーム本体3の中央部を支持するための支持部11と、リンクアーム本体3の一端部を支持するための支持部13と、リンクアーム本体3の他端部を支持するための支持部14と、が設けられている。回転テーブル10の上面からの3つの支持部11,13,14のそれぞれの突出高さは、リンクアーム本体3の形状に応じて選択されるのが好ましい。
【0045】
支持部11の上部には、二面幅を有する挿入軸部12が基準軸線Aを通るように設けられている。挿入軸部12は、軸方向Xの高さがリンクアーム本体3の板厚を上回るように構成されている。また、挿入軸部12の水平面に沿った断面形状は、リンクアーム本体3において二面幅を有する貫通穴3aの開口形状と概ね同様であり、且つ貫通穴3aの開口形状を僅かに下回るように寸法設定されている。
【0046】
このため、支持部11の挿入軸部12がリンクアーム本体3の貫通穴3aに挿入された状態では、リンクアーム本体3の周方向Zの回転動作が規制される。また、挿入軸部12と貫通穴3aとの間に多少の隙間(遊び)が形成され、挿入軸部12と貫通穴3aが緊密に嵌合することがない。
【0047】
挿入軸部12には、基準軸線A上に延びるように形成された円形断面の係合凹部32が設けられている。支持部13の上部には、リンクアーム本体3の係合穴3bに挿入可能な係合軸部13aが設けられている。支持部14の上部には、リンクアーム本体3の係合ピン3cを挿入可能な係合穴14aが設けられている。
【0048】
スリーブ4は、円形断面を有する筒穴4aを有し、その筒穴4aの内径がリンクアーム本体3の貫通穴3aの開口寸法の最大値以上となるように構成されている。このため、回転テーブル10に保持されたリンクアーム本体3の上面にスリーブ4が基準軸線Aを通るように置かれると、リンクアーム本体3の貫通穴3aに挿入されている挿入軸部12は、スリーブ4の筒穴4aにも挿入される。
【0049】
可動体20は、スリーブ4の筒穴4aに嵌合可能な嵌合軸部21と、この嵌合軸部21に同軸状に設けられた係合凸部31と、を有する。
【0050】
嵌合軸部21は、円形断面を有し、その外径がスリーブ4の筒穴4aの内径に一致するように寸法設定されている。このため、嵌合軸部21は、スリーブ4の筒穴4aに挿入されることによって、筒穴4aに隙間なく緊密に嵌合するように構成されている。
【0051】
係合凸部31は、円形断面を有し、その外径が挿入軸部12の係合凹部32の内径に一致するように寸法設定されている。また、この係合凸部31は、シリンダ装置36の制御によって、基準軸線A上で第1方向X1へ或いは第2方向X2へ動くことができる。
【0052】
即ち、シリンダ装置36は、可動体20の嵌合軸部21がスリーブ4の筒穴4aに挿入されるように、可動体20を基準軸線A上で回転テーブル10に対する押し付け方向である第1方向X1に駆動可能に構成されている。このため、係合凸部31は、基準軸線A上で第1方向X1へ動いて挿入軸部12の係合凹部32に挿入されることによって、係合凹部32に隙間なく緊密に嵌合する。
【0053】
上述のように、位置決め機構30は、リンクアーム本体3の貫通穴3aに挿入軸部12が挿入され且つ貫通穴3aとスリーブ4の筒穴4aの位置合わせがなされた状態で、回転テーブル10に対して可動体20を動かして嵌合軸部21を筒穴4aに挿入することによって、基準軸線A上で嵌合軸部21が筒穴4aに緊密に嵌合し且つ係合凸部31が係合凹部32に緊密に嵌合するように構成されている。
【0054】
ここでいう「緊密に嵌合」とは、ガタツキが生じないように隙間のない状態で或いは隙間が僅かに生じる状態で嵌合することをいう。
【0055】
また、可動体20は、可動体20の嵌合軸部21がスリーブ4の筒穴4aに挿入された状態で、シリンダ装置36によって第1方向X1に付勢されることにより回転テーブル10とともに基準軸線Aを中心に周方向Zに回転可能に構成されている。
【0056】
次に、図3図11を参照しながら、実施形態1の、リンクアーム部材2の製造方法について説明する。
【0057】
この製造方法は、リンクアーム本体3に円筒形のスリーブ4が接合されてなるリンクアーム部材2の製造方法であって、図3に示されるように、3つの工程S10~S30を有する。なお、必要に応じて、別工程を追加したり、各工程を複数の工程に分割したりすることもできる。
【0058】
保持工程S10は、リンクアーム本体3を回転テーブル10によって保持するための工程である。この保持工程S10によれば、リンクアーム本体3は、貫通穴3aに支持部11の挿入軸部12が挿入され、係合穴3bに支持部13の係合軸部13aが挿入され、係合ピン3cが支持部14の係合穴14aに挿入されることによって、回転テーブル10に保持された保持状態となる。
【0059】
なお、この保持工程S10の作業は、典型的には、作業者がリンクアーム本体3を手指で把持することによって実行される。
【0060】
位置決め工程S20は、保持工程S10で回転テーブル10に保持されたリンクアーム本体3に対するスリーブ4の位置決めを行うための工程である。この位置決め工程S20によれば、回転テーブル10に保持されたリンクアーム本体3に対してスリーブ4が位置決めされる。
【0061】
レーザー溶接工程S30は、リンクアーム本体3とスリーブ4をレーザー溶接によって接合するための工程である。このレーザー溶接工程S30によれば、位置決め工程S20で互いに位置決めされたリンクアーム本体3とスリーブ4の外周縁部5との境界領域6に向けてレーザー光Lを照射しつつ、基準軸線Aを中心に回転テーブル10を周方向Zに回転させてレーザー光Lの照射位置を変更する。
【0062】
図4に示されるように、位置決め工程S20には、3つのステップS21,S22,S23が含まれている。第1ステップS21は、リンクアーム本体3の貫通穴3aとスリーブ4の筒穴4aとを位置合わせするステップである。第2ステップS22は、可動体20の嵌合軸部21をスリーブ4の筒穴4aに挿入するステップである。第3ステップS23は、可動体20を押し付け方向である第1方向X1へ付勢するステップである。
【0063】
上記の第1ステップS21によれば、図5及び図6に示されるように、スリーブ4の筒穴4aに回転テーブル10の挿入軸部12が挿入されるように、リンクアーム本体3に対するスリーブ4の位置合わせを行う。これにより、リンクアーム本体3の貫通穴3aとスリーブ4の筒穴4aとの位置合わせが可能になる。このとき、挿入軸部12の外周面とスリーブ4の内周面との間に隙間Gが形成された状態になる。この位置合わせの作業は、典型的には、作業者がスリーブ4を手指で把持することによって実行される。
【0064】
上記の第2ステップS22によれば、図7に示されるように、シリンダ装置36の制御によって、回転テーブル10に対して可動体20を基準軸線A上で第1方向X1に動かして、可動体20の嵌合軸部21をスリーブ4の筒穴4aに挿入する。
【0065】
これにより、図8に示されるように、基準軸線A上で可動体20の嵌合軸部21をスリーブ4の筒穴4aに緊密に嵌合させることができる。また、図9に示されるように、基準軸線A上で嵌合軸部21の係合凸部31を挿入軸部12の係合凹部32に緊密に嵌合させることができる。
【0066】
上記の第3ステップS23によれば、第2ステップS22で可動体20の嵌合軸部21をスリーブ4の筒穴4aに挿入した状態で、この可動体20がシリンダ装置36の制御によって基準軸線A上で第1方向X1に付勢される。これにより、スリーブ4をリンクアーム本体3に押し付ける押し付け力が得られる。
【0067】
このとき、回転テーブル10の回転時にリンクアーム本体3とスリーブ4との間に生じる摺動抵抗に打ち勝つ押し付け力が得られるようにシリンダ装置36を制御することによって、スリーブ4をリンクアーム本体3と同期させて基準軸線Aを中心に周方向Zに一体回転させることができる。
【0068】
上記のレーザー溶接工程S30によれば、図10に示されるように、位置決め工程S20において高い精度で位置決めされたリンクアーム本体3とスリーブ4を周方向Zに一体回転させながら、リンクアーム本体3とスリーブ4の外周縁部5との境界領域6に向けてレーザー光Lが照射される。
【0069】
図11に示されるように、スリーブ4の外周縁部5には、面取り部5aが設けられている。この面取り部5aは、面取り角度θが実質的に45°であり且つ面取りエッジ長さBが0.05mmから0.3mmまでの範囲に設定されているのが好ましい。
【0070】
また、レーザー照射部40は、面取り部5aにおけるレーザースポット径Laがφ0.2mmからφ1.0mmまでの範囲となるようにレーザー光Laを面取り部5aに向けて照射するように構成されているのが好ましい。レーザースポット径Laが大きくなり過ぎると溶接時の変形が大きくなるので好ましくない。
【0071】
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0072】
上記の製造装置1及び製造方法において、リンクアーム本体3の貫通穴3aに回転テーブル10の挿入軸部12が挿入され且つ貫通穴3aとスリーブ4の筒穴4aの位置合わせがなされた状態で、回転テーブル10に対して可動体20を基準軸線A上で第1方向X1へ駆動して嵌合軸部21をスリーブ4の筒穴4aに挿入する。これにより、基準軸線A上で嵌合軸部21をスリーブ4の筒穴4aに緊密に嵌合させ且つ係合凸部31を係合凹部32に緊密に嵌合させることができる。この場合、可動体20を基準軸線A上で第1方向X1へ駆動させるのみで、リンクアーム本体3に対するスリーブ4の位置決めを高い精度で行うことができる。
【0073】
そして、高い精度で位置決めされたリンクアーム本体3とスリーブ4の外周縁部5との境界領域6に向けてレーザー光Lを照射することによって、レーザー光Lのスポット径Laが小さい場合でもリンクアーム本体3とスリーブ4をレーザー溶接で確実に接合することができる。これにより、高品質のリンクアーム部材2の量産化が可能になる。
【0074】
従って、上述の実施形態1によれば、高品質のリンクアーム部材2をレーザー溶接によって量産化するのに有効な技術を提供することができる。
【0075】
また、上述の実施形態1によれば、可動体20を基準軸線A上で第1方向X1に動かして嵌合軸部21がスリーブ4の筒穴4aに挿入されるようにシリンダ装置36を制御することによって、リンクアーム本体3に対するスリーブ4の位置決めを迅速に行うことができる。
【0076】
また、上述の実施形態1によれば、回転テーブル10の回転時にリンクアーム本体3とスリーブ4との間に生じる摺動抵抗に打ち勝つ押し付け力が得られるようにシリンダ装置36を制御することによって、レーザー溶接の際にスリーブ4をリンクアーム本体3と同期させて基準軸線Aを中心に周方向Zに一体回転させることができる。
【0077】
また、上述の実施形態1によれば、スリーブ4の面取り部5aに形状とレーザー照射部40によるレーザースポット径Laとを適正に組合せてレーザー溶接を実行することによって、リンクアーム本体3とスリーブ4を安定して接合することができる。また、溶接後のリンクアーム部材2の変形を抑えることができ、残留応力による置き割れが生じにくいという効果が得られる。
【0078】
以下、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明を省略する。
【0079】
(実施形態2)
図12に示されるように、実施形態2の製造装置101は、位置決め機構130を構成する挿入軸部112と嵌合軸部121が、実施形態1の位置決め機構30のものと相違している。
【0080】
可動体20は、スリーブ4の筒穴4aに嵌合可能な嵌合軸部121を有し、この嵌合軸部121には、基準軸線A上に延びるように形成された円形断面の係合凹部132が設けられている。
【0081】
回転テーブル10は、基準軸線Aを通る挿入軸部112を有し、この挿入軸部112には、係合凸部131が設けられている。係合凸部131は、実施形態1の挿入軸部12(図2参照)から上方へ突出した部位であり、その外径が嵌合軸部121の係合凹部132の内径に一致するように寸法設定されている。
【0082】
回転テーブル10側の係合凸部131には、その先端側に向かうにつれて外径が漸減するようなテーパー形状の誘い込み部135が設けられている。本実施形態では、この誘い込み部135が軸方向Xの2箇所に設けられている。この誘い込み部135は、リンクアーム本体3の貫通穴3aに対するスリーブ4の筒穴4aの位置合わせがなされるようにスリーブ4を誘い込む機能を有する。
【0083】
位置決め機構130は、リンクアーム本体3の貫通穴3aに挿入軸部112が挿入され且つ貫通穴3aとスリーブ4の筒穴4aの位置合わせがなされた状態で、回転テーブル10に対して可動体20を動かして嵌合軸部121を筒穴4aに挿入することによって、基準軸線A上で嵌合軸部121が筒穴4aに緊密に嵌合し且つ係合凸部131が係合凹部132に緊密に嵌合するように構成されている。
【0084】
その他の構成については、実施形態1と同様である。
【0085】
実施形態2の製造方法は、実施形態1の場合と同様に、図3に示される3つの工程S10~S30にしたがって実行される。
【0086】
図4中の第1ステップS21に相当するステップによれば、図13及び図14に示されるように、スリーブ4の筒穴4aに回転テーブル10の挿入軸部12が挿入されるように、リンクアーム本体3に対するスリーブ4の位置合わせを行う。これにより、リンクアーム本体3の貫通穴3aとスリーブ4の筒穴4aとの位置合わせが可能になる。このとき、挿入軸部12の外周面とスリーブ4の内周面との間に隙間Gが形成された状態になる。
【0087】
ここで、本実施形態の位置決め機構130では、回転テーブル10の挿入軸部121側の係合凸部131に誘い込み部135が設けられており、この誘い込み部135によるスリーブ4のガイド作用にしたがってリンクアーム本体3の貫通穴3aに対するスリーブ4の筒穴4aの位置合わせが容易になる。このため、第1ステップS21の位置合わせの作業を、パーツフィーダーなどの装置(図示省略)を利用して自動的に実行することができる。勿論、この位置合わせの作業を、作業者がスリーブ4を手指で把持することによって実行することも可能である。
【0088】
図4中の第2ステップS22に相当するステップによれば、図15及び図16に示されるように、シリンダ装置36の制御によって、回転テーブル10に対して可動体20を基準軸線A上で第1方向X1に動かして、可動体20の嵌合軸部121をスリーブ4の筒穴4aに挿入する。
【0089】
これにより、基準軸線A上で可動体20の嵌合軸部121をスリーブ4の筒穴4aに緊密に嵌合させることができる。また、基準軸線A上で挿入軸部112の係合凸部131を嵌合軸部121の係合凹部132に緊密に嵌合させることができる。
【0090】
図4中の第3ステップS23に相当するステップによれば、可動体20の嵌合軸部121をスリーブ4の筒穴4aに挿入した状態で、この可動体20がシリンダ装置36の制御によって基準軸線A上で第1方向X1に付勢される。これにより、スリーブ4をリンクアーム本体3に押し付ける押し付け力が得られ、スリーブ4をリンクアーム本体3と同期させて基準軸線Aを中心に周方向Zに一体回転させることができる。
【0091】
次に、図3中のレーザー溶接工程S30に相当する工程によれば、図17に示されるように、高い精度で位置決めされたリンクアーム本体3とスリーブ4を周方向Zに一体回転させながら、リンクアーム本体3とスリーブ4の外周縁部5との境界領域6に向けてレーザー光Lが照射される。
【0092】
図18に示されるように、スリーブ4の外周縁部5の面取り部5aは、面取り角度θが実質的に45°であり且つ面取りエッジ長さBが0.05mmから0.3mmまでの範囲に設定されているのが好ましい。また、レーザー照射部40は、面取り部5aにおけるレーザースポット径Laがφ0.2mmからφ1.0mmまでの範囲となるように構成されているのが好ましい。
【0093】
一方で、面取り角度θ、エッジ長さB、レーザースポット径Laは上記の値や範囲のみに限定されるものではなく、ワークであるリンクアーム部材2の形状などの影響に応じて上記の値や範囲を適宜に変更してもよい。
【0094】
上述の実施形態2によれば、回転テーブル10側の係合凸部131は、可動体20側の係合凹部132と緊密に嵌合することによってリンクアーム本体3に対するスリーブ4の位置決め機能を果たすが、この係合凸部131に設けられた誘い込み部135を介してリンクアーム本体3の貫通穴3aに対するスリーブ4の筒穴4aの位置合わせを容易に行うことも可能になる。
【0095】
このため、回転テーブル10側の係合凸部131を、リンクアーム本体3に対するスリーブ4の位置決めのための手段のみならず、リンクアーム本体3の貫通穴3aに対するスリーブ4の筒穴4aの位置合わせのための手段として兼用することができる。
【0096】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0097】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上述の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0098】
上述の実施形態では、可動体20を動かすための駆動部としてエア駆動式のシリンダ装置36を使用する場合について例示したが、このシリンダ装置36に代えて、オイル駆動式のシリンダ装置や、電動モータ等のアクチュエータを使用することもできる。
【0099】
また、スライダー18に直接的に或いは間接的に連結された操作レバー等の操作部材を作業者が把持して操作することによって、スライダー18を可動体20とともに支柱17のガイドレール17aに沿って手動でスライドさせることができるような構造を採用することもできる。
【0100】
上述の実施形態では、2つの車両部品を連結するリンク機構を構成するリンクアーム部材2の製造技術について例示したが、この製造技術を、リンク機構以外の機能を有するアーム部材の製造技術に適用できることは勿論である。この場合、アーム部材のアーム本体は、少なくとも貫通穴3aに相当する部位を有するものであれば、係合穴3bに相当する部位と係合ピン3cに相当する部位の少なくとも一方を有していなくてもよい。このようなアーム部材もリンクアーム部材2に類似の形状を有するため「リンクアーム部材」として記載される部材の範疇に包含される。
【符号の説明】
【0101】
1,101 リンクアーム部材の製造装置
2 リンクアーム部材
3 リンクアーム本体
3a 貫通穴
4 スリーブ
4a 筒穴
5 外周縁部
5a 面取り部
6 境界領域
10 回転テーブル
12,112 挿入軸部
20 可動体
21,121 嵌合軸部
30,130 位置決め機構
31,131 係合凸部
32,132 係合凹部
36 シリンダ装置(駆動部)
40 レーザー照射部
135 誘い込み部
A 基準軸線
B 面取りエッジ長さ
L レーザー光
La レーザースポット径
S10 保持工程
S20 位置決め工程
S21 第1ステップ
S22 第2ステップ
S23 第3ステップ
S30 溶接工程
X1 第1方向(押し付け方向)
Z 周方向
θ 面取り角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18