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特許7200075車両用樹脂モジュール及び車両用樹脂モジュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】車両用樹脂モジュール及び車両用樹脂モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20221226BHJP
   B29C 65/52 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C65/52
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019175063
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021049727
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】市川 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】久米 廷志
(72)【発明者】
【氏名】和田 宗浩
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-075333(JP,A)
【文献】特開平06-246774(JP,A)
【文献】特開2015-108573(JP,A)
【文献】特開平09-226469(JP,A)
【文献】特開2017-047542(JP,A)
【文献】特開平01-281907(JP,A)
【文献】特開平11-115800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の強度部材に設けられた装着孔に、外力が及ぼされる取付部材が該装着孔への内挿状態で組み付けられた車両用樹脂モジュールにおいて、
前記取付部材が、前記装着孔の内周面に当接して覆う内挿状態で配される筒状部を有するアウタ金具を備えていると共に、該アウタ金具には該筒状部の外周側に突出する外周突部が設けられており、
前記強度部材が、該アウタ金具の該外周突部を該装着孔の周壁の内部へ差し入れるようにして埋入された構造のインサート成形品とされていると共に、
該アウタ金具の該筒状部の外周面と該外周突部の埋入された部分の表面が該強度部材に対して接着剤によって直接に固着されている車両用樹脂モジュール。
【請求項2】
合成樹脂製の前記強度部材には金属製の補強部材が固着されており、該補強部材に対して前記アウタ金具の前記外周突部が前記装着孔の中心軸方向で重なっている請求項1に記載の車両用樹脂モジュール。
【請求項3】
前記補強部材は、前記装着孔の周壁部分に位置する周壁補強部と、該装着孔の周壁部分から外周側に広がるプレート状補強部とを、一体的に備えている請求項2に記載の車両用樹脂モジュール。
【請求項4】
前記補強部材は、前記装着孔の内周面から外周側に離隔して配置されており、該補強部材と前記アウタ金具の前記筒状部との間には、前記強度部材を構成する合成樹脂からなる軸直角方向の中間樹脂層が介在している請求項2又は3に記載の車両用樹脂モジュール。
【請求項5】
前記補強部材は、前記装着孔の内周面に露出しており、該補強部材と前記アウタ金具の前記筒状部とが当接している請求項2又は3に記載の車両用樹脂モジュール。
【請求項6】
前記補強部材と前記外周突部とが前記装着孔の中心軸方向で離隔しており、該補強部材と該外周突部との間には、前記強度部材を構成する合成樹脂からなる軸方向の中間樹脂層が介在している請求項2~5の何れか一項に記載の車両用樹脂モジュール。
【請求項7】
前記アウタ金具の前記外周突部と前記補強部材との少なくとも一方は、前記装着孔の周方向の全周に亘って連続して設けられている請求項2~6の何れか一項に記載の車両用樹脂モジュール。
【請求項8】
合成樹脂製の強度部材に設けられた装着孔に、外力が及ぼされる取付部材が該装着孔への内挿状態で組み付けられた車両用樹脂モジュールを製造するに際して、
前記取付部材において、前記装着孔の内周面に当接して覆う内挿状態で配される筒状部と該筒状部の外周側に突出する外周突部を有するアウタ金具を採用して、
前記強度部材の成形型の成形キャビティ内へ該アウタ金具をインサートし、
該アウタ金具の該筒状部において該装着孔の内周面を覆う外周面及び該外周突部において該装着孔の周壁の内部へ埋入される部分の表面に接着剤を付着せしめた状態で該成形キャビティ内へ樹脂材料を充填してインサート成形することにより、
該強度部材の成形と同時に、該アウタ金具の該筒状部の外周面を該強度部材の該装着孔の内周面に対して接着すると共に、該アウタ金具の該外周突部を該装着孔の周壁の内部へ差し入れるようにして埋入させて接着する車両用樹脂モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記強度部材の内部に埋設される補強部材の外周面に接着剤が付着された状態で、該補強部材が前記アウタ金具と共に該強度部材の前記成形キャビティ内にセットされることで、該強度部材の成形と同時に該補強部材が該強度部材に接着される請求項8に記載の車両用樹脂モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製の強度部材に取付部材が組み付けられた樹脂モジュールに係り、特に車両に適用される車両用樹脂モジュール及び車両用樹脂モジュールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用の強度部材としては、一般に鉄や合金などの金属が採用されている。例えば、サスペンション部材やサブフレーム等の構造材の他、各種ブラケットや補強部材などがあり、これらの強度部材は、外部から及ぼされる力に対抗して形状を保つ強度を要求される。
【0003】
一方、近年では、軽量化や低コスト化等の観点から、合成樹脂製の強度部材の採用が検討されており、例えば特開2019-64511号公報(特許文献1)において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-64511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、合成樹脂と金属では基本的な物性が異なることから、例えば他の部材に取り付けられるジョイント等の取付部材を強度部材に組み付けて車両用の樹脂モジュールを構成する場合に、強度部材に対する取付部材の固定強度を長期間に亘って確保することが難しい場合もあった。
【0006】
例えば、強度部材に装着孔を設けて、かかる装着孔に対して取付部材のアウタ金具を圧入等で固定して組み付ける場合には、合成樹脂製とされた装着孔の周壁部分のクリープ特性や熱へたり等に起因して、取付部材のアウタ金具の固定強度が低下してしまうおそれもあった。このような問題に対処するために、装着孔の周壁の部材厚さを大きくしたり、装着孔の周壁部分だけ樹脂材料を異ならせたりすることも考えられるが、強度部材の大型化や製造の煩雑化などの新たな問題を避け難い。
【0007】
本発明の解決課題は、合成樹脂製の強度部材の装着孔へ組み付けられた取付部材の固定強度を長期間に亘って安定して確保することのできる、新規な車両用樹脂モジュール及び車両用樹脂モジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0009】
第一の態様は、合成樹脂製の強度部材に設けられた装着孔に、外力が及ぼされる取付部材が該装着孔の内周面への内挿状態で組み付けられた車両用樹脂モジュールにおいて、前記取付部材が、前記装着孔の内周面に当接して覆う内挿状態で配される筒状部を有するアウタ金具を備えていると共に、該アウタ金具には該筒状部の外周側に突出する外周突部が設けられており、前記強度部材が、該アウタ金具の該外周突部を該装着孔の周壁の内部へ差し入れるようにして埋入された構造のインサート成形品とされていると共に、該アウタ金具の該筒状部の外周面と該外周突部の埋入された部分の表面が該強度部材に対して接着剤によって直接に固着されているものである。
【0010】
本態様の車両用樹脂モジュールによれば、アウタ金具の外周突部が装着孔の周壁内部へ埋入されることで、アウタ金具が強度部材に対して機械的に固定される。また、アウタ金具の外周突部と筒状部の外周面とが強度部材に対して接着剤により直接に固着されていることで、インサート成形品からなる樹脂モジュールにおいて金属と合成樹脂との界面における隙間が防止されて、強度部材におけるアウタ金具の保持力も向上され得る。これらにより、インサート成形品における成形時の熱収縮などに起因するアウタ金具と強度部材との間の隙間の発生による品質ばらつき等も防止されると共に、強度部材へのアウタ金具の組付部位における固定強度と耐久性の確保が実現されて、軸方向や軸直角方向だけでなく、こじり方向やねじり方向等の各方向において優れた固定強度が長期間に亘って、且つ高い信頼性をもって発揮され得る。
【0011】
第二の態様は、前記第一の態様に係る車両用樹脂モジュールにおいて、合成樹脂製の前記強度部材には金属製の補強部材が固着されており、該補強部材に対して前記アウタ金具の前記外周突部が前記装着孔の中心軸方向で重なっているものである。
【0012】
本態様の車両用樹脂モジュールによれば、装着孔から取付部材が抜け出す方向(装着孔の中心軸方向)で重なる補強部材とアウタ金具の外周突部が何れも金属製とされていることから、例えば取付部材に対して装着孔から脱落する方向の外力が及ぼされる場合にも、高い抜け抗力が得られて、強度部材に対する取付部材の固定強度が向上され得る。
【0013】
第三の態様は、前記第二の態様に係る車両用樹脂モジュールにおいて、前記補強部材は、前記装着孔の周壁部分に位置する周壁補強部と、該装着孔の周壁部分から外周側に広がるプレート状補強部とを、一体的に備えているものである。
【0014】
本態様の車両用樹脂モジュールによれば、アウタ金具の外周突部に対して軸方向に対向位置する周壁補強部について、強度部材への固着強度や強度部材による保持力を、プレート状補強部によって広い範囲にわたって担わせて向上させることが可能になり、補強部材による荷重強度や耐久性等の向上が図られ得る。
【0015】
第四の態様は、前記第二又は第三の態様に係る車両用樹脂モジュールにおいて、前記補強部材は、前記装着孔の内周面から外周側に離隔して配置されており、該補強部材と前記アウタ金具の前記筒状部との間には、前記強度部材を構成する合成樹脂からなる軸直角方向の中間樹脂層が介在しているものである。
【0016】
本態様の車両用樹脂モジュールによれば、補強部材により装着孔からの取付部材の抜け抗力が向上されることに加えて、軸直角方向の中間樹脂層により取付部材(アウタ金具)と強度部材との接着面積の向上も図られ得る。また、補強部材とアウタ金具との間に介在される合成樹脂層によって、補強部材とアウタ金具との組付面において要求される寸法精度の緩和も図られ得る。
【0017】
第五の態様は、前記第二又は第三の態様に係る車両用樹脂モジュールにおいて、前記補強部材は、前記装着孔の内周面に露出しており、該補強部材と前記アウタ金具の前記筒状部とが当接しているものである。
【0018】
本態様の車両用樹脂モジュールによれば、補強部材により装着孔からの取付部材の抜け抗力が向上されることに加えて、強度部材におけるアウタ金具の当接面の全体が合成樹脂とされる場合に比して、例えばアウタ金具が金属製の補強部材に対してメタル(金属)同士の当接状態で組み付けられることによる耐強度特性の向上も図られ得る。
【0019】
第六の態様は、前記第二~第五の何れか一つの態様に係る車両用樹脂モジュールにおいて、前記補強部材と前記外周突部とが前記装着孔の中心軸方向で離隔しており、該補強部材と該外周突部との間には、前記強度部材を構成する合成樹脂からなる軸方向の中間樹脂層が介在しているものである。
【0020】
本態様の車両用樹脂モジュールによれば、補強部材とアウタ金具の外周突部との軸方向間に樹脂が介在されることで、両部材に要求される寸法精度の緩和を図りつつ、外部入力に伴う中間樹脂層における剪断応力の発生を抑えることで、耐荷重性能の確保も可能になる。
【0021】
第七の態様は、前記第二~第六の何れか一つの態様に係る車両用樹脂モジュールにおいて、前記アウタ金具の前記外周突部と前記補強部材との少なくとも一方は、前記装着孔の周方向の全周に亘って連続して設けられているものである。
【0022】
本態様の車両用樹脂モジュールによれば、アウタ金具と補強部材との周方向の相対的な位置にかかわらずに外周突部と補強部材との軸方向での対向面積が安定して確保されて、補強部材による軸方向の抜け効力の向上効果が安定して発揮され得る。
【0023】
第八の態様は、合成樹脂製の強度部材に設けられた装着孔に、外力が及ぼされる取付部材が該装着孔への内挿状態で組み付けられた車両用樹脂モジュールを製造するに際して、前記取付部材において、前記装着孔の内周面に当接して覆う内挿状態で配される筒状部と該筒状部の外周側に突出する外周突部を有するアウタ金具を採用して、前記強度部材の成形型の成形キャビティ内へ該アウタ金具をインサートし、該アウタ金具の該筒状部において該装着孔の内周面を覆う外周面及び該外周突部において該装着孔の周壁の内部へ埋入される部分の表面に接着剤を付着せしめた状態で該成形キャビティ内へ樹脂材料を充填してインサート成形することにより、該強度部材の成形と同時に、該アウタ金具の該筒状部の外周面を該強度部材の該装着孔の内周面に対して接着すると共に、該アウタ金具の該外周突部を該装着孔の周壁の内部へ差し入れるようにして埋入させて接着する車両用樹脂モジュールの製造方法である。
【0024】
本態様の車両用樹脂モジュールの製造方法によれば、アウタ金具の表面に接着剤を付着せしめた状態下でインサート成形を行うことで、強度部材の成形と同時に、アウタ金具と強度部材とが接着され得る。これにより、強度部材の成形時の熱収縮などに伴う強度部材とアウタ金具との隙間の発生が防止されて、強度部材による取付部材の固定強度ひいては耐荷重性能や耐久性のばらつきなどが抑えられ得る。
【0025】
第九の態様は、前記第八の態様に係る車両用樹脂モジュールの製造方法において、前記強度部材の内部に埋設される補強部材の外周面に接着剤が付着された状態で、該補強部材が前記アウタ金具と共に該強度部材の前記成形キャビティ内にセットされることで、該強度部材の成形と同時に該補強部材が該強度部材に接着されるものである。
【0026】
本態様の車両用樹脂モジュールの製造方法によれば、強度部材と補強部材との界面に対して接着剤層を確実に且つ安定して設けて両部材を接着することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明及び本発明方法に係る車両用樹脂モジュールによれば、強度部材と取付部材との固定強度が安定して確保され得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第一の実施形態としての車両用樹脂モジュールを示す斜視図
図2図1に示された車両用樹脂モジュールの平面図
図3図1に示された車両用樹脂モジュールの要部を拡大して示す縦断面図
図4図1に示された車両用樹脂モジュールを構成する補強部材を示す斜視図
図5図1に示された車両用樹脂モジュールの製造方法の具体的な一例を説明するための説明図
図6】本発明の第二の実施形態としての車両用樹脂モジュールの要部を拡大して示す縦断面図であって、図3に対応する図
図7】本発明の第三の実施形態としての車両用樹脂モジュールの要部を拡大して示す縦断面図であって、図3に対応する図
図8】本発明に係る車両用樹脂モジュールの別の態様を示す正面図
図9図8に示された車両用樹脂モジュールの平面図
図10図8におけるX-X断面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0030】
先ず、図1,2には、本発明の第一の実施形態としての車両用樹脂モジュール10が示されている。本実施形態の車両用樹脂モジュール10は、強度部材としてのサスペンションアーム12に、外力が及ぼされる取付部材13が組み付けられて構成されている。なお、以下の説明において、上下方向とは、図2中の紙面直交方向をいうが、車両への装着状態における車両用樹脂モジュール10(サスペンションアーム12)の向きとは必ずしも一致するものではない。
【0031】
より詳細には、サスペンションアーム12は、自動車のサスペンション機構に用いられる部材であり、全体として平面視が略L字形のアーム部材とされている。サスペンションアーム12の材質としては、従来公知の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等の硬質の合成樹脂が採用され得るが、耐久性や耐荷重性に加えて後述する金属との接着性等を考慮すると、熱可塑性樹脂が好ましい。また、サスペンションアーム12は、必要に応じて炭素繊維強化樹脂(CFRP)やガラス繊維強化樹脂(GFRP)等の短繊維や長繊維等によって繊維補強され得る。なお、本実施形態のサスペンションアーム12は、後述するように、取付部材13と補強部材42とを備えるインサート成形品として形成されている。
【0032】
さらに、サスペンションアーム12には、上下方向に貫通する装着孔14が形成されており、本実施形態では、三つの装着孔14(第一の装着孔14a、第二の装着孔14b、第三の装着孔14c)が設けられている。
【0033】
すなわち、本実施形態のサスペンションアーム12は、三つの装着孔14a,14b,14cのそれぞれを構成する三つの筒状の周壁16(第一の周壁16a、第二の周壁16b、第三の周壁16c)を備えており、第一の周壁16aと第二の周壁16b、及び第一の周壁16aと第三の周壁16cとが、それぞれ連結部18,18で連結されている。なお、各周壁16a,16b,16cの内周面には、内周側に開口する嵌合凹部19が形成されており、本実施形態では、各嵌合凹部19が、周方向の全周に亘って連続して設けられている。特に、本実施形態では、各嵌合凹部19が、各周壁16a,16b,16cの上端部分の内周面に設けられている。
【0034】
なお、サスペンションアーム12の上面及び/又は下面には、肉抜用の凹部20や貫通孔22が形成されてもよい。
【0035】
そして、サスペンションアーム12の装着孔14には、外力が及ぼされる取付部材13が組み付けられている。本実施形態では、三つの取付部材13(第一及び第二の防振装置13a,13b、及びボールジョイント13c)が設けられており、第一及び第二の装着孔14a,14bに対して、それぞれ第一及び第二の防振装置13a,13bが組み付けられていると共に、第三の装着孔14cに対して、ボールジョイント13cが組み付けられている。なお、第一の防振装置13aと第二の防振装置13bは、略同様の構造とされていることから、以下で第一の防振装置13aについて説明すると共に、第二の防振装置13bについての説明を省略する。
【0036】
ここで、図3において、第一の防振装置13aの装着部分における縦断面図を示す。図3に示されているように、第一の防振装置13aは、それぞれ上下方向に延びる、筒状部26を有する大径のアウタ金具28と、略筒状又は略ロッド状のインナ金具30とを備えている。これらアウタ金具28とインナ金具30とは、径方向(上下方向と直交する方向)で相互に離隔して略同軸的に内外挿されている。そして、アウタ金具28とインナ金具30との径方向間には略筒状のゴム弾性体32が配設されており、ゴム弾性体32の外周面がアウタ金具28の内周面に加硫接着されていると共に、ゴム弾性体32の内周面がインナ金具30の外周面に加硫接着されている。本実施形態では、ゴム弾性体32が、アウタ金具28とインナ金具30とを備える一体加硫成形品として形成されている。
【0037】
なお、アウタ金具28の筒状部26には、外周側に突出する外周突部34が設けられており、本実施形態では、筒状部26の上端において、外周突部34が、周方向の全周に亘って連続して設けられている。
【0038】
また、ボールジョイント13cは、例えば略有底筒状とされたアウタ金具(図示せず)と、当該アウタ金具に内挿されるボールスタッド36を備えている。ボールスタッド36の上端はねじ部とされていると共に、下端には球状体が設けられており、かかる球状体がアウタ金具内に配設されることで、ボールスタッド36が回動又は揺動可能とされている。なお、アウタ金具の上端はゴムカバー38で閉塞されていると共に、ボールスタッド36がゴムカバー38を貫通して上方に突出している。また、アウタ金具における筒状部には、外周側に突出する外周突部が、例えば第一の防振装置13aにおける外周突部34と同様に、周方向の全周に亘って連続して設けられている。なお、第三の装着孔14cが、下方開口部が底壁により閉塞された有底筒状とされる場合、ボールジョイント13cを構成するアウタ金具は、例えば第一の防振装置13aのアウタ金具28と同様に上下方向で貫通する形状であってもよい。
【0039】
かかる取付部材13を構成するアウタ金具28の材質としては、鉄やアルミニウム合金等の金属が採用され得るが、後述する合成樹脂製の強度部材(サスペンションアーム12)との接着性等を考慮すると、アルミニウム合金が好ましい。
【0040】
そして、第一及び第二の防振装置13a,13b、ボールジョイント13cが、第一、第二、第三の装着孔14a,14b,14cに内挿状態で配されていると共に、各取付部材13a,13b,13cの外周突部34が、各装着孔14a,14b,14cの嵌合凹部19に入り込んでいる。即ち、取付部材13のアウタ金具28から外周側に突出する外周突部34が、装着孔14の周壁16の内部へ差し入れられるように埋入されている。
【0041】
さらに、各取付部材13a,13b,13cのアウタ金具28における筒状部26の外周面(表面)と各周壁16a,16b,16cの内周面とが相互に当接して直接固着されていると共に、各取付部材13a,13b,13cの外周突部34における外面(表面)と、各周壁16a,16b,16cにおける嵌合凹部19の内面とが相互に当接して直接固着されている。そして、これらの当接面間には接着剤40による接着層が設けられており、当該接着剤40によって各取付部材13a,13b,13cのアウタ金具28と各周壁16a,16b,16cとが相互に固着されている。なお、接着剤(接着層)40の厚さ寸法は実質的に無視できるほど小さいことから、図3中では、接着剤(接着層)40を、厚さ寸法を略0として図示している。
【0042】
また、金属からなるアウタ金具28と合成樹脂からなる各周壁16a,16b,16cとを接着する接着剤40としては、例えばダイセル・エボニック株式会社製「ベスタメルト(登録商標) Hylink」等が採用され得る。
【0043】
なお、本実施形態では、サスペンションアーム12に、図4に示される如き補強部材42が埋設状態で固着されている。特に、本実施形態では、サスペンションアーム12の略全体に亘って補強部材42が埋設されており、サスペンションアーム12と同様の略L字形状とされている。この補強部材42において、サスペンションアーム12における第一、第二、第三の装着孔14a,14b,14cと対応する位置には、上下方向で貫通する第一の挿通孔44a、第二の挿通孔44b、第三の挿通孔44cが形成されている。そして、第一、第二、第三の挿通孔44a,44b,44cのそれぞれに、第一の防振装置13a、第二の防振装置13b、ボールジョイント13cが挿通されて、第一、第二、第三の装着孔14a,14b,14cに組み付けられている。なお、補強部材42において、第一、第二、第三の挿通孔44a,44b,44cの形成位置以外の部分には、肉抜用の凹部や貫通孔46が形成されてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、第一、第二、第三の挿通孔44a,44b,44cのそれぞれの開口周縁部において、下方に突出するバーリング状の第一、第二、第三の筒状補強部48a,48b,48cが形成されている。これら筒状補強部48a,48b,48cは、第一、第二、第三の装着孔14a,14b,14cを構成する第一、第二、第三の周壁16a,16b,16cに埋設されており、各装着孔14a,14b,14cの周壁部分を補強する周壁補強部が、各筒状補強部48a,48b,48cにより構成されている。
【0045】
なお、本実施形態では、補強部材42が、各装着孔14a,14b,14cの内周面から外周側に離隔して配置されている。要するに、各筒状補強部48a,48b,48cの内周面が、各周壁16a,16b,16cの内周面、即ちアウタ金具28における筒状部26の外周面よりも外周側に位置しており、各筒状補強部48a,48b,48cとアウタ金具28における筒状部26との径方向間には隙間が形成されている。そして、これら筒状補強部48a,48b,48cと筒状部26との径方向間の隙間には、各周壁16a,16b,16cを構成する合成樹脂が回り込んで充填されている。これにより、補強部材42とアウタ金具28の筒状部26との間には、軸直角方向の中間樹脂層50が介在しており、本実施形態では、当該中間樹脂層50が略環状とされている。
【0046】
また、本実施形態では、アウタ金具28から外周側に突出する外周突部34と、アウタ金具28の筒状部26よりも外周側に位置する各筒状補強部48a,48b,48cとが、上下方向(各装着孔14a,14b,14cの中心軸方向)で隙間を隔てて対向している。これにより、外周突部34と各筒状補強部48a,48b,48cとの上下方向間の隙間には、各周壁16a,16b,16cを構成する合成樹脂の一部が位置している。即ち、補強部材42とアウタ金具28の外周突部34との間には、軸方向の中間樹脂層52が介在しており、本実施形態では、当該中間樹脂層52が略環状とされている。
【0047】
そして、第一の筒状補強部48aと第二の筒状補強部48b、及び第一の筒状補強部48aと第三の筒状補強部48cとが、略プレート状に広がるプレート状補強部54,54で連結されており、サスペンションアーム12が、第一、第二、第三の筒状補強部(周壁補強部)48a,48b,48cとプレート状補強部54,54とを一体的に備えている。これにより、サスペンションアーム12における連結部18,18が、プレート状補強部54,54で補強されている。即ち、補強部材42におけるプレート状補強部54,54は、各装着孔14a,14b,14cの周壁部分(各周壁16a,16b,16c)に設けられる各筒状補強部48a,48b,48cから外周側に広がっている。
【0048】
なお、補強部材42の外周縁部には、部分的に上下方向寸法が大きくされることで剛性が向上された高剛性部56が形成されてもよい。
【0049】
かかる補強部材42の材質としては、鉄やアルミニウム合金等の金属が採用され得るが、後述する強度部材(サスペンションアーム12)との接着性等を考慮すると、アルミニウム合金が好ましい。
【0050】
また、本実施形態では、補強部材42の表面が、略全面に亘ってサスペンションアーム12に当接していると共に、これらの当接面間に接着剤58による接着層が設けられており、補強部材42が、略全面に亘ってサスペンションアーム12に接着されている。なお、図3中では、接着剤(接着層)58を、厚さ寸法を略0として図示する。当該接着剤58の材質は、サスペンションアーム12とアウタ金具28との間に設けられる接着剤40の材質と同様のものが採用され得るが、異なっていてもよい。
【0051】
以下、本実施形態の車両用樹脂モジュール10の製造方法の具体的な一例を、図5を示して説明するが、車両用樹脂モジュール10の製造方法は限定されるものではない。なお、図5では、第一の防振装置13aの装着部分を示して説明するが、第二の防振装置13bやボールジョイント13cについても同様であることから、これらについては説明を省略する。
【0052】
先ず、アウタ金具28とインナ金具30とを備えるゴム弾性体32(第一の防振装置13a)を、一体加硫成形品として形成する。また、例えば金属素板等にプレス加工を施す等して、図4の形状の補強部材42を形成する。その後、外周突部34を含むアウタ金具28の表面に接着剤40を付着させると共に、補強部材42の表面に接着剤58を付着させる。なお、図5では、接着剤40,58を灰色で示すと共に、接着剤40,58の厚さ寸法を誇張して示す。また、接着剤の付着手段は限定されるものではなく、従来公知の付着、塗布、塗膜、被覆、被膜等の手段が採用され得る。
【0053】
そして、接着剤40が付着されたゴム弾性体32の一体加硫成形品及び接着剤58が付着された補強部材42を、サスペンションアーム12の成形型60の成形キャビティ62内に配置(インサート)する。即ち、下型66にゴム弾性体32の一体加硫成形品と補強部材42とを載置して、これらの上から上型64を重ね合わせることで、上下型64,66の対向間に成形キャビティ62が形成されると共に、当該成形キャビティ62内にゴム弾性体32の一体加硫成形品と補強部材42が配置される。なお、アウタ金具28及び/又は補強部材42への接着剤40,58の付着は、ゴム弾性体32の一体加硫成形品及び/又は補強部材42が、下型66に固定された後に行われてもよい。また、本実施形態では、成形型60が、上型64と下型66とから構成されているが、三つ以上の型から構成されてもよい。
【0054】
続いて、かかる成形キャビティ62内にサスペンションアーム12の樹脂材料を充填して、成形(インサート成形)する。これにより、サスペンションアーム12の成形と同時に、サスペンションアーム12とアウタ金具28、及びサスペンションアーム12と補強部材42とを接着剤40,58によって直接に接着する。具体的には、第一の装着孔14aの第一の周壁16aが形成されると同時に、第一の周壁16aの内周面がアウタ金具28における筒状部26の外周面(表面)に直接に接着されると共に、補強部材42の外表面の略全面が、サスペンションアーム12に対して埋設された状態で直接に接着される。この結果、本実施形態のサスペンションアーム12は、各取付部材13a,13b,13cと補強部材42とを備えるインサート成形品として形成されている。
【0055】
また、本実施形態では、アウタ金具28の外周突部34が成形キャビティ62内に突出するようにされており、サスペンションアーム12の樹脂材料が外周突部34の上方まで回り込むようになっている。これにより、サスペンションアーム12が成形されることで、外周突部34を覆うように嵌合凹部19が形成されて、換言すれば、アウタ金具28の外周突部34が第一の装着孔14aの第一の周壁16aの内部へ差し入れるように埋入せしめられる。そして、サスペンションアーム12の成形と同時に外周突部34の外面(表面)と嵌合凹部19の内面とが接着剤40の硬化や反応等を経て形成された接着層を介して接着される。
【0056】
その後、成形型60から脱型させることで、本実施形態の車両用樹脂モジュール10が製造され得る。
【0057】
かかる車両用樹脂モジュール10は、例えば第一及び第二の防振装置13a,13bのインナ金具30に車両ボデー側の部材が固定されると共に、ボールジョイント13cがキャリアを介して車輪に取り付けられることで、車両のサスペンション部材であるロアアームとして利用される。
【0058】
このようにして製造された本実施形態の車両用樹脂モジュール10では、アウタ金具28の表面に接着剤40が付着された状態でサスペンションアーム12が成形されることで、サスペンションアーム12の形成と同時にアウタ金具28の表面が接着される。これにより、サスペンションアーム12の形成時に収縮した場合にも、サスペンションアーム12とアウタ金具28との間に隙間が発生することが防止され得る。この結果、サスペンションアーム12とアウタ金具28とがより強固に接着されると共に、外周突部34の嵌合凹部19(周壁16の内部)への機械的な係止と相俟って、装着孔14からの取付部材13の脱落が効果的に防止され得る。
【0059】
特に、本実施形態では、サスペンションアーム12に対して補強部材42が埋設状態で固定されており、補強部材42の表面に接着剤58が付着された状態でサスペンションアーム12が成形されることで、サスペンションアーム12の形成と同時に補強部材42の表面が接着される。これにより、サスペンションアーム12の形成時に、サスペンションアーム12と補強部材42との間に隙間が発生することが回避されて、サスペンションアーム12から補強部材42が脱落したりサスペンションアーム12内で補強部材42ががたつくことが効果的に防止され得る。
【0060】
そして、アウタ金具28の外周突部34と補強部材42における第一、第二、第三の筒状補強部48a,48b,48cとが上下方向で対向することで、装着孔14からの取付部材13の脱落方向(上下方向)の荷重が、何れも金属製とされたアウタ金具28と補強部材42との一方で受けられる。これにより、装着孔14からの取付部材13の脱落が更に効果的に防止され得る。
【0061】
特に、本実施形態では、これら外周突部34と第一、第二、第三の筒状補強部48a,48b,48cが何れも周方向の全周に亘って連続して設けられていることから、成形キャビティ62内に補強部材42を配置(インサート)する際に、外周突部34と第一、第二、第三の筒状補強部48a,48b,48cとを周方向で位置合わせする操作が省かれ得る。
【0062】
また、本実施形態では、アウタ金具28の外周突部34と補強部材42における第一、第二、第三の筒状補強部48a,48b,48cとの上下方向間に軸方向の中間樹脂層52が設けられており、当該中間樹脂層52が接着剤40によってアウタ金具28の筒状部26に接着されることから、例えば外周突部34と第一、第二、第三の筒状補強部48a,48b,48c(又はプレート状補強部54)とが直接当接する場合に比べて、周壁16とアウタ金具28との接着面積を大きく確保することも可能となる。
【0063】
さらに、本実施形態では、補強部材42における第一、第二、第三の筒状補強部48a,48b,48cとアウタ金具28の筒状部26との径方向間に軸直角方向の中間樹脂層50が設けられており、当該中間樹脂層50が接着剤40を介してアウタ金具28の筒状部26に接着されることから、周壁16とアウタ金具28との接着面積を更に大きく確保することも可能となる。
【0064】
更にまた、本実施形態では、補強部材42が、第一、第二、第三の筒状補強部48a,48b,48cとプレート状補強部54,54とを一体的に備えていることから、部品点数の削減が図られると共に、成形キャビティ62内への補強部材42の配置(インサート)が容易となる。
【0065】
次に、図6には、本発明の第二の実施形態としての車両用樹脂モジュール70が示されている。本実施形態の車両用樹脂モジュール70は、前記第一の実施形態の車両用樹脂モジュール10と同様の構造であることから、相違点についてのみ以下に説明する。即ち、前記第一の実施形態では、アウタ金具28の筒状部26と補強部材42における第一の筒状補強部48aとの径方向間に軸直角方向の中間樹脂層50が設けられていたが、本実施形態では、筒状部26と第一の筒状補強部48aとが当接しており、軸直角方向の中間樹脂層(50)が設けられていない。なお、以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一の部材及び部位には、図中に、前記実施形態と同一の符号を付すことにより、詳細な説明を省略する。また、図6では、第一の防振装置13aの装着部分を示して説明するが、第二の防振装置13bやボールジョイント13cについても同様であることから、これらについては説明を省略する。
【0066】
従って、本実施形態では、補強部材42の第一の筒状補強部48aの内周面が、第一の装着孔14aにおける第一の周壁16aの内周面に露出しており、アウタ金具28の筒状部26と第一の筒状補強部48aとが当接して、第一の防振装置13aが補強部材42によっても支持されるようになっている。特に、本実施形態では、第一の筒状補強部48aの内径寸法が、アウタ金具28の筒状部26における外径寸法と略等しいか僅かに小さくされており、成形型60の成形キャビティ62にゴム弾性体32の一体加硫成形品及び補強部材42を配置(インサート)するに際して、アウタ金具28が、第一の筒状補強部48aに対して圧入されるようになっている。
【0067】
以上の如き構造とされた本実施形態の車両用樹脂モジュール70についても、前記実施形態と同様の効果が発揮され得る。特に、本実施形態では、取付部材13が、外周突部34の嵌合凹部19への係止構造と、接着剤40による接着効果に加えて、補強部材42によっても支持されることから、装着孔14からの取付部材13の脱落が、より効果的に防止され得る。
【0068】
次に、図7には、本発明の第三の実施形態としての車両用樹脂モジュール80が示されている。本実施形態の車両用樹脂モジュール80も、前記第一の実施形態の車両用樹脂モジュール10と同様の構造であることから、相違点についてのみ以下に説明する。また、図7では、第一の防振装置13aの装着部分を示して説明するが、第二の防振装置13bやボールジョイント13cについても同様であることから、これらについては説明を省略する。
【0069】
即ち、本実施形態では、前記第一及び第二の実施形態と比較して、補強部材(42)が設けられていない。かかる構造とされた本実施形態の車両用樹脂モジュール80においても、アウタ金具28の外周突部34が、第一の装着孔14aの第一の周壁16aに差し入れられていると共に、アウタ金具28と第一の周壁16aとの当接面が直接に接着剤40で接着されることで、前記第一及び第二の実施形態と同様の効果が発揮され得る。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0071】
例えば、前記実施形態では、合成樹脂製の強度部材が、略L字形のサスペンションアーム12とされていたが、略A字形や略I字形のアーム等やロッド等であってもよく、トルクロッドや図8~10に示されるブラケット90であってもよい。即ち、本態様では、ブラケット90に設けられた装着孔92に取付部材としての防振装置94が組み付けられており、車両用樹脂モジュールとしてのエンジンマウント96が構成されている。防振装置94は、アウタ金具98を含んでおり、当該アウタ金具98において装着孔92の中心軸方向(図10中の左右方向)の中間部分には、外周側に突出する外周突部100が設けられている。この外周突部100が装着孔92の周壁102の内部へ差し入れるようにして埋入されていると共に、アウタ金具98と周壁102との当接面間には接着剤104が介在しており、当該接着剤104によりアウタ金具98と周壁102とが接着されている。かかる構造とされたエンジンマウント96においても、前記実施形態と同様の効果が発揮され得る。
【0072】
また、装着孔に組み付けられる取付部材は、前記実施形態に記載の第一及び第二の防振装置13a,13bとボールジョイント13cに限定されるものではなく、公知の各種の防振装置やジョイントの他、例えばベアリングや植設ボルト、ボルト挿通固定用のスリーブ等、外力が及ぼされるものであればよい。
【0073】
なお、前記実施形態のサスペンションアーム12には、三つの装着孔14(第一、第二、第三の装着孔14a,14b,14c)が設けられており、これらの装着孔14に組み付けられる取付部材13が何れも外周突部34を有するアウタ金具28を備えていたが、装着孔の数は限定されるものではなく、一つであっても複数であってもよい。装着孔が複数の場合、装着孔に組み付けられる複数の取付部材のうち、少なくとも一つが外周突部を有するアウタ金具を備えて、装着孔の周壁に固着されればよく、その他の取付部材は従来公知の構造であってもよい。
【0074】
さらに、補強部材は、前記実施形態に記載の形状に限定されない。例えば、補強部材が、周壁補強部(第一、第二、第三の筒状補強部48a,48b,48c)を備えておらず、プレート状補強部の端部がアウタ金具に設けられた外周突部と上下方向で重なるようになっていてもよい。或いは、補強部材がプレート状補強部を備えておらず、一つ又は複数の周壁補強部が、装着孔の周壁部分において独立して設けられてもよい。なお、前記第一及び第二の実施形態では、周壁補強部(第一、第二、第三の筒状補強部48a,48b,48c)が下方へ突出するバーリング形状とされていたが、かかる態様に限定されるものではなく、周壁補強部は、プレート状補強部と略同一平面的に広がる環状の部分とされてもよい。
【0075】
更にまた、前記第一及び第二の実施形態では、外周突部34と第一、第二、第三の筒状補強部48a,48b,48cとの間に軸方向の中間樹脂層52が設けられていたが、かかる軸方向の中間樹脂層は設けられなくてもよい。尤も、軸方向の中間樹脂層を設けることで、強度部材と装着孔の周壁との接着面積が確保されるだけでなく、特に前記実施形態のように外周突部34がアウタ金具28の上端に設けられる場合には、アウタ金具28の下方への突出が効果的に抑えられる。なお、外周突部は、アウタ金具の上端に設けられる態様に限定されず、アウタ金具の上下方向中間部分や下端部分に設けられてもよい。その際、補強部材は、前記第一及び第二の実施形態のように外周突部よりも下方にあってもよいし、外周突部よりも上方にあってもよい。
【0076】
また、前記第一及び第二の実施形態では、外周突部34と周壁補強部(第一、第二、第三の筒状補強部48a,48b,48c)が、それぞれ周方向の全周に亘って連続していたが、それぞれ例えば半周の周方向長さをもって形成されてもよい。その場合、外周突部と周壁補強部とは、上下方向で周方向の全長に亘って重なる必要はなく、周方向の一部分が重なっていることが好適である。なお、外周突部は、筒状部からの外周側への突出寸法が周方向で略一定とされる必要はなく、外周側への突出寸法が周方向で異ならされてもよい。また、外周突部に対して更に軸方向に突出する突部を設けてもよい。
【0077】
更にまた、前記第一及び第二の実施形態では、サスペンションアーム12の略全体に亘って補強部材42が埋設状態とされていたが、補強部材は、例えば、強度部材の上面又は下面に固着されてもよい。その場合、前記第一の実施形態で説明した製造方法のように、強度部材の成形と同時に補強部材が接着されてもよいが、強度部材と補強部材を別体で形成して後固着してもよい。尤も、略埋設状態でインサート成形される場合、隙間の発生は大きな問題にならないことが多く、補強部材と強度部材とは必ずしも接着されなくてもよい。
【0078】
なお、前記第一の実施形態で説明した製造方法では、サスペンションアーム12の成形型60の成形キャビティ62にゴム弾性体32の一体加硫成形品(第一の防振装置13a)がインサートされた状態で、サスペンションアーム12がインサート成形されていたが、アウタ金具のみがインサートされた状態でサスペンションアームがインサート成形されてもよい。そして、その後、アウタ金具の内周面に、例えばインナ金具を備えるゴム弾性体が固着されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 車両用樹脂モジュール
12 サスペンションアーム(強度部材)
13 取付部材
13a 第一の防振装置(取付部材)
13b 第二の防振装置(取付部材)
13c ボールジョイント(取付部材)
14 装着孔
14a 第一の装着孔
14b 第二の装着孔
14c 第三の装着孔
16 周壁
16a 第一の周壁
16b 第二の周壁
16c 第三の周壁
18 連結部
19 嵌合凹部
20 凹部
22 貫通孔
26 筒状部
28 アウタ金具
30 インナ金具
32 ゴム弾性体
34 外周突部
36 ボールスタッド
38 ゴムカバー
40 接着剤
42 補強部材
44a 第一の挿通孔
44b 第二の挿通孔
44c 第三の挿通孔
46 貫通孔
48a 第一の筒状補強部(周壁補強部)
48b 第二の筒状補強部(周壁補強部)
48c 第三の筒状補強部(周壁補強部)
50 軸直角方向の中間樹脂層
52 軸方向の中間樹脂層
54 プレート状補強部
56 高剛性部
58 接着剤
60 成形型
62 成形キャビティ
64 上型
66 下型
70 車両用樹脂モジュール
80 車両用樹脂モジュール
90 ブラケット(強度部材)
92 装着孔
94 防振装置
96 エンジンマウント(車両用樹脂モジュール)
98 アウタ金具
100 外周突部
102 周壁
104 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10