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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】鎮静装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/01 20060101AFI20221226BHJP
【FI】
A61M16/01 F
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019520481
(86)(22)【出願日】2017-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2017065318
(87)【国際公開番号】W WO2017220698
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】16175577.2
(32)【優先日】2016-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518452814
【氏名又は名称】セダナ メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ファーレル,ロン
(72)【発明者】
【氏名】キャリー,ポーリック
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/087244(WO,A1)
【文献】特表2001-503656(JP,A)
【文献】米国特許第04422939(US,A)
【文献】特表2007-508892(JP,A)
【文献】"AnaConDa(R) Reflection Filter: Bench and Patient Evaluation of Safty and Volatile Anesthetic Conservation",Anesthesia&Analgesia,2007年01月,Vol.104, No.1,pp.130-134
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/01-16/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
30ml~70mlの内部容積を有するハウジング(2)であって、
人工呼吸器チャンバハウジング(12)と、前記人工呼吸器チャンバハウジング(12)内に人工呼吸器チャンバ(3)を有する気化器チャンバハウジング(13)と、前記人工呼吸器チャンバ(3)と連通し、前記気化器チャンバハウジング(13)内に結合され並置された気化器チャンバ(4)とを有し、
前記人工呼吸器チャンバ(3)は人工呼吸器(50)に接続するための入口ポート(7)を有し、
前記気化器チャンバ(4)は患者呼吸管(54)に接続するための出口ポート(8)を有する、
ハウジング(2)と、
前記人工呼吸器チャンバ(3)と前記気化器チャンバ(4)との間に取り付けられたフィルタ(5)であって、前記人工呼吸器チャンバ(3)と前記気化器チャンバ(4)との間に共通のガス透過性仕切壁を形成するフィルタ(5)と、
前記気化器チャンバ(4)内に取り付けられた気化器(10)と
を含む沈静装置(1、60)であって、
前記入口ポート(7)は前記人工呼吸器チャンバ(3)のある側に取り付けられ、前記人工呼吸器チャンバ(3)内の前記フィルタ(5)の表面(16)全体に空気を向けるように配置され、前記人工呼吸器チャンバ(3)内に取り付けられた空気偏向傾斜部(18)が提供され、前記偏向傾斜部(18)は前記入口ポート(7)に結合されかつ前記入口ポート(7)に隣接し、前記偏向傾斜部(18)は前記入口ポート(7)に対して角度を付けられ、それにより前記入口ポート(7)からの流入空気を前記フィルタ(5)の表面(16)全体に向け、
前記空気偏向傾斜部(18)が前記人工呼吸器チャンバ(3)の長さの20%~35%にわたり延在し
細長い空気分配フィン(61)が、前記人工呼吸器チャンバ(3)内に前記人工呼吸器チャンバハウジング(12)の外壁(20)の内面上で取り付けられ、前記細長い空気分配フィン(61)が、前記外壁(20)に対して垂直であり、前記傾斜部(18)の内側端部において前記入口ポート(7)と整列して前記外壁(20)の中央に配置されかつ前記傾斜部(18)から離れる方に延びる、鎮静装置(1、60)。
【請求項2】
前記気化器チャンバハウジング(13)が、前記気化器(10)が中に取り付けられる細長いチャネルを形成する凹状外壁部分を備えた底壁(22)を有し、前記気化器(10)は細長い多孔質ロッド(10)を備え、前記気化器チャンバ(4)内の気化器取付け支持体(30、31)が、前記細長いチャネル内の前記気化器ロッド(10)を、前記凹状外壁部分から離間されかつ前記気化器チャンバ(4)の前記出口ポート(8)と整列した状態で支持する、請求項1に記載の鎮静装置(1、60)。
【請求項3】
前記出口ポート(8)が前記気化器チャンバハウジング(13)の前記底壁(22)の周囲に延在する側壁(26)に取り付けられ、前記出口ポート(8)が、前記気化器チャンバ(4)内の前記フィルタ(5)の表面(17)全体から空気を引くように配置される、請求項1または2に記載の鎮静装置(1、60)。
【請求項4】
前記入口ポート(7)および前記出口ポート(8)が実質的に平行であり、前記ハウジング(2)の反対側の端部に配置される、請求項1~のいずれか一項に記載の鎮静装置(1、60)。
【請求項5】
前記空気偏向傾斜部(18)の出口端部の幅が前記人工呼吸器チャンバ(3)の最大幅の50%~75%である、請求項1~のいずれか一項に記載の鎮静装置(1、60)。
【請求項6】
前記空気分配フィン(61)が、前記入口ポート(7)に面する尖った前縁部(72)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の鎮静装置(1、60)。
【請求項7】
前記ハウジング(2)が卵形である、請求項1~のいずれか一項に記載の鎮静装置(1、60)。
【請求項8】
前記ハウジングが楕円形である、請求項1~のいずれか一項に記載の鎮静装置。
【請求項9】
前記ハウジングが円形である、請求項1~のいずれか一項に記載の鎮静装置。
【請求項10】
前記ハウジング(2)の内面が滑らかである、請求項1~のいずれか一項に記載の鎮静装置(1、60)。
【請求項11】
前記ハウジング(2)が50mlの内部容積を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の鎮静装置(1、60)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鎮静装置に関し、特に、揮発性ガス形態の鎮静剤を取り扱うことができる鎮静剤送達のための鎮静装置に関する。
【背景技術】
【0002】
揮発性麻酔薬は、全身麻酔で使用するために実証された強力な薬剤である。全身麻酔は、揮発性または静脈内麻酔薬を投与することによって全身に痛みを感じない無意識の状態を誘導する。揮発性麻酔薬の投与には通常麻酔機械が必要である。麻酔機械の開発は、費用を削減し、廃ガスが環境に与える悪影響を最小限に抑えるために、高価な揮発性薬剤の消費を最小限に抑える必要性に重点を置いていた。麻酔機械は、使用済みガスを二酸化炭素吸収装置に通し、その後患者に戻して再循環させる循環システムの原理に基づいて機能する。したがって、最初の入力の後、所望の麻酔レベルを維持するために新しい麻酔ガスはほとんど必要とされない。
【0003】
麻酔機械は、高額な設備投資と、かなりの持続的なランニングコストとを必要とし、病院予算に圧力をかける可能性がある。さらに近代的な麻酔機械は、機器および二酸化炭素吸収装置が正しく設定され動作することを保証するために特別に訓練された要員を必要とする。
【0004】
医療費を削減するために、ますます多くの患者が外来患者としてまたは通院して手術を受けている、すなわち、病院で一泊する必要のない手術を受けており、その病院は一般に個人または小規模な相互関係によって運営されている。麻酔機械に必要な高資本コストおよび技術的支援は、そのような小規模運営者にとってはひどく高額なものであり、したがって、そのような用途に揮発性麻酔薬を使用することは困難である。
【0005】
集中治療室(ICU)では、機械的に換気される患者は、必要な鎮静および痛み緩和レベルを達成するために、静脈内薬剤を用いて伝統的に鎮静されてきた。多くの医師はICUで揮発性の鎮静剤を使用することを好むだろう。なぜなら、それは、静脈内薬剤の使用よりも、特にある種の患者の症状に関して、多くの利点があるからである。機械的に換気される患者のための代替鎮静法としてのICUにおける揮発性鎮静剤の使用は、ほぼ30年間臨床研究の対象となっている。このような結果は、揮発性鎮静剤は従来の薬剤より多くの利点を有するが、便利かつ効率的な送達方法がないため、揮発性物質の使用は勢いづくことはなかったことを示している。
【0006】
ICUにおける麻酔機械の使用は、高い資本コストと、特別に訓練された要員の必要性のためにひどく高額になる。加えて、麻酔機械と連動する人工呼吸器構成要素は、集中治療患者用の適切な機能を有していない。麻酔機械の代替は、大量の高価な麻酔剤を使用して大気中に直接廃棄物を排出するオープンフローシステムである。
【0007】
国際公開第97/14465号パンフレットは、使用中に鎮静剤を吸収および脱着するための吸収フィルタを用いて患者に鎮静剤を供給するための鎮静装置を開示している。この装置は、人工呼吸器と患者との間の空気流路に取り付けるためのハウジングを含む。ハウジング内に配置された気化器は、人工呼吸器と患者との間で装置を通って送達される空気流中に鎮静剤を放出する。吸収フィルタは、患者によって吐き出された余分な鎮静剤を吸収するためにハウジング内に取り付けられ、鎮痛剤を保存するために患者が次の呼吸をするときに回収した鎮静剤を空気流に戻す。フィルタは、使用中に空気流がフィルタを完全に通過する位置と空気流がフィルタをバイパスする位置との間でハウジング内で移動することができる。
【0008】
吸入鎮静剤の投与中に鎮静剤を回収するための様々な他の装置が、国際公開第97/36628号パンフレット、国際公開第98/20926号パンフレット、国際公開第05/037357号パンフレット、EP0972534号、国際公開第88/07876号パンフレットおよび米国特許出願公開第2009/0050148号明細書に開示されている。
【0009】
患者と人工呼吸器に接続された呼吸回路のYピースとの間に何らかの装置を挿入することは、患者の呼吸に2つの厄介な問題を、すなわちデッドスペースの増加および装置全体の圧力降下をもたらす。この装置は、デッドスペースと呼ばれる各呼吸サイクルで除去する必要がある二酸化炭素を含む空気の全体体積を増加させる。呼吸管に挿入された何らかの装置は、このデッドスペースを増加させ、呼吸するたびに患者が吸入する二酸化炭素の量を増加させる。一回換気量と呼ばれる患者によって吸入され吐き出される空気の量がデッドスペースを十分に超えない場合、患者は換気回路から十分な二酸化炭素を除去することができず、二酸化炭素の濃度は空気流の中で上昇し、最終的に血液の中で上昇する。これは、呼吸および代謝の困難な状態につながる。一回換気量が比較的大きい患者では、このような装置からの二酸化炭素の除去は、通常問題を生じない。しかしながら、より小柄な成人、肺機能が低下した患者、および子供など、より小さな一回換気量の患者に関して、二酸化炭素の十分な除去は、積極的な換気を実施することなく達成するのが難しい場合がある。このような患者にとっては、鎮静装置の体積を最小にすることによってデッドスペースを低減することが望ましいであろう。一般に、集中治療室の患者は重病であり、デッドスペースを低減することにより呼吸抵抗を低減することは常に有益であると言えるかもしれない。
【0010】
既存の装置を単純に小型化しても、使用中に装置全体で容認できない圧力降下が生じるので、この問題に対する解決策は得られない。わずかな圧力低下でさえ、一部の患者にとって呼吸を非常に困難にする恐れがある。圧力降下は、患者がピーク空気流量を必要とするとき、すなわち患者がほとんどの空気を必要とし装置が空気流に対して最も抵抗するときにしばしば最大になる。カーボンフィルターの反射効率も低下する可能性があり、したがってより多くの鎮静剤が必要となり、これは望ましくない。
【0011】
本発明は、これらの問題を克服することに向けられている。
【発明の概要】
【0012】
本発明によれば、鎮静装置であって、
30ml~110mlの内部容積を有するハウジングであって、
人工呼吸器チャンバと、人工呼吸器チャンバと連通する結合され並置された気化器チャンバとを有し、
人工呼吸器チャンバは人工呼吸器に接続するための入口ポートを有し、
気化器チャンバは患者呼吸管に接続するための出口ポートを有する
ハウジングと、
人工呼吸器チャンバと気化器チャンバとの間に配置されたフィルタであって、人工呼吸器チャンバと気化器チャンバとの間に共通のガス透過性仕切壁を形成するフィルタと、
気化器チャンバ内に取り付けられた気化器と
を含む沈静装置が提供される。
【0013】
特に好ましい実施形態において、入口ポートは人工呼吸器チャンバのある側に取り付けられ、人工呼吸器チャンバ内のフィルタの表面全体に空気を向けるように配置され、人工呼吸器チャンバ内に取り付けられた偏向傾斜部が提供され、偏向傾斜部は入口ポートに結合されかつ入口ポートに隣接し、偏向傾斜部は入口ポートを横切って延在しかつ入口ポートから離間され、偏向傾斜部は入口ポートに対して角度を付けられかつ入口ポートから外方へ広がり、それにより入口ポートからの流入空気を入口ポートから内方へフィルタの方へ向け、および入口ポートから外方へフィルタの表面全体に向ける。
【0014】
別の実施形態において、細長い空気分配フィンが、傾斜部の内側端部において入口ポートと整列した状態でおよび傾斜部から離れる方に延びる状態で、人工呼吸器チャンバ内に人工呼吸器チャンバの外壁に取り付けられる。
【0015】
別の実施形態において、気化器チャンバは、気化器が中に取り付けられる細長いチャネルを形成する凹状外壁部分を有し、気化器は細長い多孔質ロッドを備え、気化器チャンバ内の気化器取付け支持体が、細長いチャネル内の気化器ロッドを、凹状外壁部分から離間されかつ気化器チャンバの出口ポートと整列した状態で支持する。
【0016】
本発明の1つの実施形態において、空気分配マニホルドが、流入空気をフィルタの表面全体に向けるために入口ポートに取り付けられる。
【0017】
別の実施形態において、湾曲した傾斜部が、流入空気をフィルタ全体に向けるために空気分配マニホルドの出口に設けられる。
【0018】
別の実施形態において、入口ポートは人工呼吸器チャンバのある側に取り付けられ、人工呼吸器チャンバ内のフィルタの表面全体に空気を向けるように配置される。
【0019】
別の実施形態において、出口ポートは気化器チャンバのある側に取り付けられ、出口ポートは、気化器チャンバ内のフィルタの表面全体から空気を引くように配置される。
【0020】
別の実施形態において、入口ポートおよび出口ポートは実質的に平行であり、すなわち、入口ポートおよび出口ポートの軸が実質的に平行であり、入口ポートおよび出口ポートはハウジングの反対側の端部に配置される。
【0021】
別の実施形態において、空気分配マニホルドは、人工呼吸器チャンバの長さの20%~35%にわたり延在する。
【0022】
別の実施形態において、空気分配マニホルドは、人工呼吸器チャンバの長さの約25%にわたり延在する。
【0023】
別の実施形態において、空気分配マニホルドの出口端部の幅は、人工呼吸器チャンバの最大幅の50%~75%である。
【0024】
別の実施形態において、空気分配マニホルドの出口端部の幅は、人工呼吸器チャンバの最大幅の約65%である。
【0025】
別の実施形態において、人工呼吸器チャンバは、空気分配マニホルドから外方に広がる。
【0026】
別の実施形態において、気化器チャンバは、凹状すなわちボウル状の輪郭を有する。
【0027】
別の実施形態において、気化器チャンバは、フィルタから外方に延在する側壁であって、その外側端部に凹状外壁部分を備える側壁を有する。
【0028】
別の実施形態において、側壁は気化器チャンバの両端部間でテーパ状であり、出口ポートは気化器チャンバの広い方の端部に取り付けられる。
【0029】
別の実施形態において、気化器取付け支持体が、気化器チャンバの両端部に設けられる。
【0030】
別の実施形態において、該気化器取付け支持体の一方は、出口ポートに取り付けられる。
【0031】
別の実施形態において、1つまたは複数のフィルタ支持ポストが気化器チャンバ内に取り付けられ、取付け支持体の間に配置され、フィルタ支持ポストは凹状外壁部分から外方へ突出する。
【0032】
別の実施形態において、フィルタ保持グリルが、人工呼吸器チャンバ内に、フィルタの表面に対して取り付けられ、少なくとも1つのスペーサ要素が、人工呼吸器チャンバの外壁から外方へ延在し、それによりグリルと係合し、グリルを外壁から離れる方へ、フィルタの表面に対して付勢する。
【0033】
別の実施形態において、スペーサ要素は、複数の離間されたスペーサポストを備える。
【0034】
別の実施形態において、各スペーサポストは、入口ポートに面する尖った前縁部を有する。
【0035】
別の実施形態において、空気分配フィンは、入口ポートに面する尖った前縁部を有する。
【0036】
別の実施形態において、ハウジングは卵形である。あるいは、ハウジングは楕円形または円形であってもよい。
【0037】
別の実施形態において、入口ポートはハウジングの狭い端部に配置され、出口ポートはハウジングの広い端部に配置される。
【0038】
別の実施形態において、ハウジングの内面は滑らかである、または高度に研磨されている。
【0039】
別の実施形態において、ハウジングは、約50mlの内部容積を有する。
【0040】
本発明は、添付図面を参照する、例として与えられているに過ぎないそのいくつかの実施形態の以下の記載によって、より明確に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明による鎮静装置の斜視図である。
図2】鎮静装置の断面斜視図である。
図3】装置の一部を形成する人工呼吸器チャンバハウジングの斜視図である。
図4】装置の一部を形成する気化器チャンバハウジングの斜視図である。
図5図3のV-Vに沿った断面図である。
図6図3のVI-VIに沿った断面図である。
図7図4のVII-VIIに沿った断面図である。
図8図4のVIII-VIIIに沿った断面図である。
図9】使用中の鎮静装置を示す立面図である。
図10】本発明の第2の実施形態による別の鎮静装置の断面図である。
図11】本発明の鎮静装置と共に使用するためのフィルタ保持グリルの斜視図である。
図12】本発明による鎮静装置の一部を形成する人工呼吸器チャンバハウジングの斜視図である。
図13】本発明による鎮静装置の一部を形成する気化器チャンバハウジングの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図面を、最初に図1~9を参照すると、麻酔剤の送達および再循環のための参照番号1で全体的に示される本発明による鎮静装置が示されている。鎮静装置1はハウジング2を有し、その内部に人工呼吸器チャンバ3と、結合された気化器チャンバ4とが設けられており、それらは重なり合い、該チャンバ3、4の間に取り付けられ、チャンバ3、4間の共通のガス透過性仕切壁を形成するフィルタ5によって分離される。使用時に患者の人工呼吸器50(図9)に接続するために、人工呼吸器チャンバ3の一端でハウジング2の頂部に入口ポート7が設けられる。気化器チャンバ4の出口ポート8は、呼吸管54を介して患者に接続することができる。この場合、入口ポート7および出口ポート8は、実質的に平行であり、ハウジング2の長手方向の中心線に沿ってハウジング2の両端部に配置されていることに留意されたい。気化器10が、使用中に気化器チャンバ4に揮発性の鎮静剤を供給するために気化器チャンバ4内に取り付けられる。
【0043】
ハウジング2は、30ml~110mlの内部容積を有し、好都合にプラスチック材料で作られてもよく、互いにスナップ嵌めする2つの部分、すなわち人工呼吸器チャンバハウジング12および気化器チャンバハウジング13で提供される。ハウジング2は、図3および図4に最もよく示されているように全体的に卵形であるが、楕円形または円形などの他の形状も可能であり得る。入口ポート7は、ハウジング2の狭い端部に位置し、出口ポート8は、ハウジング2の広い端部に取り付けられることに留意されたい。
【0044】
特に図2および図3を参照すると、空気偏向傾斜部18が、入口ポート7で人工呼吸器チャンバ3内に取り付けられ、流入空気をフィルタ5の上面16全体に向ける。空気偏向傾斜部18は、入口ポート7に関連付けられ、それに隣接して取り付けられ、入口ポート7を横切って延び、そこから離間している。空気偏向傾斜部18は、図2に示すように、入口ポート7に対して角度を付けられ、入口ポート7の頂部から下方に延び、傾斜部18の各側19において入口ポート7から外側に広がり、流入空気を入口ポート7からフィルタ5に向かって内方に導き、および、フィルタ5の上面16全体に入口ポート7から外方に向ける。すなわち、人工呼吸器から入口ポート7を介して送達される流入空気は、入口ポート7から下方かつ外方に導かれ、フィルタ5の上面16全体に分配される。
【0045】
この空気偏向傾斜部18は、人工呼吸器チャンバ3の全長の20%~35%にわたって延在し、好ましくは人工呼吸器チャンバ3の長さの約25%にわたって延在する。空気偏向傾斜部18の出口端部の幅W(図3)は、人工呼吸器チャンバ3の最大幅の50%~75%であることが好ましい。
【0046】
空気偏向傾斜部18は、人工呼吸器チャンバ3全体にわたって滑らかな空気の分配を提供するように湾曲していることにも留意されたい。空気偏向傾斜部18は、流入空気が広がり、人工呼吸器チャンバ3の内面を移動することを促進する。空気は、人工呼吸器チャンバ3の全体にわたって、およびフィルタ5の上面16全体に均一に分配される。
【0047】
鎮静装置1を通る空気の円滑な流れを提供するために、湾曲した傾斜部18の形状は、ハウジング2の内部容積に応じて変化する。一般に、傾斜部18の湾曲は内部容積に反比例する。つまり、内部容積が減少すると傾斜部曲率がより顕著になる。図5は、平均曲率の傾斜部18を示し、また、40ml容積のハウジング2の場合のより顕著な傾斜部曲率18aと、110ml容積のハウジング2の場合のより浅い傾斜部曲率18bとを示している。
【0048】
さらに、人工呼吸器チャンバ3は、空気偏向傾斜部18の外方に広がっている。空気偏向傾斜部18の構成および人工呼吸器チャンバ3の形状は、入口ポート7を介してフィルタ5の上面16全体に送り込まれる空気の均一で滑らかな送達を促進するようなものである。
【0049】
人工呼吸器チャンバハウジング12は、人工呼吸器チャンバハウジング13と相補的に相互係合するための下方に垂れた周辺スカート21を有する頂部壁20を有する。人工呼吸器チャンバハウジング13上の相補的な形状部とスナップ係合し、2つのチャンバハウジング12、13を一緒に分離可能に固定するために、適切な形状部がスカート21の内面に設けられる。あるいは、ハウジング部分12、13は、例えば接着または溶接などの他の方法で一緒に固定することができる。
【0050】
ここで特に図2および図4を参照すると、気化器チャンバハウジング13は、同じくプラスチック材料製であり、気化器10が中に取り付けられる気化器チャンバ4の出口ポート8と整列した細長い中央チャネル24を形成する凹状の外壁部分23を備えたボウル状の底壁22を含む。直立した側壁26が、底壁22の周囲に延在している。側壁26の頂部で、直立した周辺スカート27が、2つのハウジングチャンバ12、13を共に固定するように、人工呼吸器チャンバハウジング12上の関連するスカート21と協働する。スカート21の底縁部は、スカート27の底部の横方向に突出したフランジまたはリップ28に着座する。フランジ28は、任意選択的に接着のための谷を組み込むことができる。側壁26は、気化器チャンバ4の両端部間でテーパ状になっており、出口ポート8は、気化器チャンバ4の広い端部で側壁26に取り付けられていることに留意されたい。
【0051】
気化器チャンバ4の床を形成する底壁22の中央チャネル24は、気化器取付け支持体30、31によって中央チャネル24の側壁から離間して保持された気化器10の周りに空気を誘導するように湾曲している。底壁22の凹みは、小さい内部容積ではより緩くて開かれているが、より大きな内部容積ではより狭くより鋭い。図8は、平均曲率の底壁22と、40ml容積のハウジング2の底壁22aのより緩やかな曲率と、110ml容積のハウジング2の底壁22bのより狭い曲率とを示す。
【0052】
気化器取付け支持体30、31は、気化器チャンバ4の両端部に設けられ、出口ポート8に取り付けられた第1の取付け支持体30と、気化器チャンバ4の反対側の端部の側壁26に取り付けられた第2の取付け支持体31とを備える。間隔を置いて配置された一対のフィルタ支持ポスト33が、チャネル24内で底壁22から外方に突出している取付け支持体30、31の間に配置されている。これらのフィルタ支持ポスト33は、気化器チャンバ4を通って流れる空気の乱流を最小限にするために、気化器チャンバ4の長手方向軸と整列した矩形断面またはより好ましくは円形もしくは楕円形断面を有し得る。
【0053】
サンプリングポート35が、出口ポート8を形成する管36の半径方向外側に突出している。使用時、これは、サンプリングライン37によってガスモニタ38(図9)に接続することができ、それにより揮発性鎮静剤の濃度を測定し、気化器10を介した気化器チャンバ4への新しい鎮静剤の添加を制御するために使用することができる。
【0054】
気化器10は、取付け支持体30、31の間に延在する細長い多孔質ポリマーロッドを含む。加熱要素または振動要素などの様々な他のタイプの気化器を代替的に設けることができる。鎮静剤送達ライン40は、気化器10をシリンジまたはポンプを用いて鎮静剤リザーバ41(図9)に接続する。リザーバ41からの鎮静剤は、気化器10によって気化され、出口ポート8を通って患者に送達される前に、気化器チャンバ4内の空気と結合する。リザーバ41から気化器10に鎮静剤物質を送達するために、シリンジまたはポンプまたは他の送達手段などの任意の適切な手段を設けることができる。
【0055】
フィルタ5は、抗菌および抗ウイルスフィルタに接合されたまたは接合されていない吸収性炭素フェルトフィルタを含む。炭素フェルトフィルタは、揮発性鎮静剤を吐き出す間に吸収し、吸い込む間に送ることができる、したがって、鎮静剤を循環することができる。炭素フェルトは、臨床的に有意な濃度の二酸化炭素を反射することなく、最も一般的な人工呼吸器パラメータで、吐き出された揮発性薬剤を反射することができる。炭素フェルトは熱および水分も反射する。
【0056】
フィルタ5は、鎮静装置1に出入りする空気がフィルタ5の上面16および底面17全体に流れるように、入口ポート7および出口ポート8の中心軸に実質的に平行であることに留意されたい。フィルタ5上の活性炭素は、熱、水分および揮発性鎮静剤を患者に反射し戻すように機能する。抗細菌フィルタおよび抗ウイルスフィルタは、人工呼吸器回路を病原性汚染から保護する働きをする。
【0057】
図9は、人工呼吸器50と患者51との間に取り付けられた使用中の鎮静装置1を示す。鎮静装置1の入口ポート7は、管52を介して人工呼吸器50と接続する。出口ポート8は呼吸管54を介して患者51と接続する。人工呼吸器50から送達された新鮮な空気は、入口7を通って人工呼吸器チャンバ3に入る。流入空気は、入口ポート7を通って送達される細い管状の空気流から、人工呼吸器チャンバ3全体に滑らかに流れる幅広い平坦な空気流に変換する。空気は人工呼吸器チャンバ3全体におよびフィルタ5の上面16全体に均一に分散される。空気はフィルタ5を通って気化器チャンバ4に流れ込む。気化器10に注入された揮発性鎮静剤は、呼吸管54を介して患者51に送達するために出口ポート8を介して気化器チャンバ4を出る前に新鮮な空気と混合する。
【0058】
空気の少量のサンプルが外部ガスモニタ38による測定のためにサンプルポート35を介して抽出される。外部ガスモニタ38によって測定される鎮静剤の濃度は、循環された鎮静剤を補うために新しい鎮静剤が気化器チャンバ4にポンプ送給される速度を報告するために使用することができる。患者51によって吐き出され、過剰な鎮静ガスと混合された空気が、気化器チャンバ4に再び入る。この空気/鎮静剤混合物は、鎮静剤が吸収されるフィルタ5を通って上昇し、吐き出された空気が装置から排出される。次の吸込みの際、新鮮な空気は、フィルタ5を通って人工呼吸器チャンバ3から気化器チャンバ4へと通過するときにフィルタ5から回収された鎮静剤を引き出し、患者が呼吸するときにそれを再使用し、それにより鎮静剤を反射し保存する。
【0059】
ここで図10を参照すると、参照番号60で全体的に示される本発明による別の鎮静装置が示されている。これは先に記載した鎮静装置と概ね同様のものであり、同様の部分には同じ参照番号が付されている。この場合、細長い空気分配フィン61が、人工呼吸器チャンバハウジング12の外側または上壁20の内面上で人工呼吸器チャンバ3内に取り付けられる。フィン61は、上壁20に対して垂直であり、傾斜部18の内側端部で入口ポート7と整列した状態で上壁20の中心に配置され、傾斜部18から離れる方に延びる。フィン61は、入口ポート7に面する尖った前縁62を有する。フィン61は、フィルタ5の表面16全体に広がる流入空気の均一な分配を促す。
【0060】
ここで図11を参照すると、本発明の鎮静装置と共に使用するための参照番号65で全体的に示されるフィルタ保持グリルが示されている。グリル65は、一対の離間した同心の卵形リング、すなわち、内側リング66および外側リング67を有し、それらは、外側リング67の外側に突出する、外側に延びる離間されたアーム69を有する軸方向背骨68に取り付けられている。図10を参照すると、グリル65は、人工呼吸器チャンバ3内にフィルタ5の上面16に対して取り付けられ、各アーム69の外側端部70および背骨68は気化器チャンバ4の直立スカート27の内面に係合する。フィン61は中心軸方向背骨68に係合し、グリル65をフィルタ5の上面16に押し付けて、フィルタ5の上方に空気流空間を維持する、すなわちフィルタ5を人工呼吸器チャンバ3の外側または上壁20から離して保持する。したがって、この場合、フィン61は、グリル65のためのスペーサ要素としても機能する。好ましくは、後述するように(図12)、複数の離間したスペーサポストが、人工呼吸器チャンバ3の上壁20の内面から下方に突出し、グリル65の内側リング66に係合し、フィルタ5を上壁20から等しく離間した状態に保持する。
【0061】
ここで図12を参照すると、本発明による別の人工呼吸器チャンバハウジング70が示されている。前に記載された部分と同様の部分には同じ参照番号が付されている。この場合、中央空気分配フィン61が上壁20の内面71から内方に突出する。空気分配フィンの前縁72および後縁73は尖っている。また、複数の離間されたスペーサポスト75が、上壁20の内面71から内向きに突出し、フィン61の両側に列状に配置され、グリル65の内側リング66と係合可能であり、グリル65を上壁20の内面71から等しく離間された状態に維持する。各スペーサポスト75は、入口ポート7に面した尖った前縁76を有し、好ましくは反対側のすなわち後縁77も尖っている。
【0062】
図13は、本発明による別の気化器チャンバハウジング80を示す。先に記載した部分と同様の部分には同じ参照番号が付されている。この場合、複数の離間されたスペーサポスト81が、底壁22から内向きに突出して、フィルタ5を底壁22から離した状態に保持する。これらのスペーサポスト81は、気化器チャンバを通る空気流の方向に面する尖った縁部を有し、中央チャネル24の両側に列状に配置されている。
【0063】
第2グリル65が、フィルタ5を底壁22から離した状態に保持するために気化器チャンバ4内でフィルタ5の下面17に対して取り付けるために設けられ、および支持ポスト33およびスペーサポスト81によってフィルタ5に係合され押し付けられるように設けられる。
【0064】
有利なことに、本発明の鎮静装置は、圧力低下および鎮静剤反射効率の変化を最小限に抑えながら、理想的には30ml~110mlの間、好ましくは30ml~70mlの範囲内の内部容積の範囲にわたって効果的に機能する。
【0065】
記載された実施形態では、入口ポートおよび出口ポートはハウジングの両側に配置され、これは好ましい配置であるが、入口ポートおよび出口ポートの他の配置も可能である。いずれの配置を使用するにしても、フィルタ5の表面全体にわたる空気の円滑な流れを提供することが望ましい。
【0066】
与えられた例では卵形ハウジングが示されているが、例えば楕円形ハウジングなど、ハウジングの他の形状も可能である。卵形ハウジングが使用される場合、入口ポートは、ハウジングの狭い端部または広い端部のいずれかに設けられてもよく、同様に、出口ポートは、ハウジングの狭い端部または広い端部のいずれかに配置されてよい。
【0067】
フィルタおよび入口ポートおよび出口ポートは、実施形態において平行であるが、入口ポートおよび/または出口ポートは、フィルタの表面全体にわたる円滑な空気の送達が維持されるならば、いくらか斜めにされてもよい。
【0068】
本発明による鎮静装置は、揮発性鎮静剤を患者に安全かつ費用効果的に送達することができる患者と人工呼吸器との間の人工呼吸器回路に挿入できる装置を提供することが理解されよう。本発明の鎮静システムは、揮発性鎮静剤を麻酔機械のように効率的に、しかしその何分の1かの費用で、送達、保存、および反射する。鎮静装置の効率性は鎮静剤の無駄が最小限であることも意味し、発生するあらゆる廃棄分を適切な捕捉ユニットに容易に誘導することができる。好都合なことに、本発明の鎮静装置は、比較的穏当なコストでICUおよび他の環境での揮発性鎮静剤の使用を可能にする。
【0069】
本明細書に記載の様々な実施形態の特徴は、本発明による鎮静装置において組み合わせることができることが理解されよう。
【0070】
本明細書において、「含む(comprise)、含む(comprises)、含んだ(comprised)、および含む(comprising)」という用語、またはそのいずれかの変形、および「含む(include)、含む(includes)、含んだ(included)、および含む(including)」という用語、およびそのいずれかの変形は、全体的に交換可能であると考えられ、それらはすべてもっとも広範な可能な解釈を与えられるべきであり、その逆の場合には逆のことが起こる。
【0071】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、上述の実施形態は添付の特許請求の範囲内で構成および細部の両方を変更することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13