IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プロメガ コーポレイションの特許一覧

特許7200102エネルギー受容体に係留されたセレンテラジン類縁体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】エネルギー受容体に係留されたセレンテラジン類縁体
(51)【国際特許分類】
   C07D 519/00 20060101AFI20221226BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20221226BHJP
   G01N 33/532 20060101ALI20221226BHJP
   C12Q 1/66 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
C07D519/00 301
C07D519/00 CSP
A61K49/00
G01N33/532 B
C12Q1/66
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019523623
(86)(22)【出願日】2017-11-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 US2017059495
(87)【国際公開番号】W WO2018085367
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2020-11-02
(31)【優先権主張番号】62/415,671
(32)【優先日】2016-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593089149
【氏名又は名称】プロメガ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Promega Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】ホール メアリー
(72)【発明者】
【氏名】カークランド トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マクライト トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シャクミン アントン
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー ジョエル アール
(72)【発明者】
【氏名】ウッド キース ヴイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ ウェンフイ
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-534261(JP,A)
【文献】国際公開第2014/093677(WO,A1)
【文献】星野笑美 等,第73回分析化学討論会講演要旨集,2013年,第139頁
【文献】Photochem. Photobiol. Sci., 2016年4月,Vol.15, No.4,p.466-480
【文献】Angew. Chem. Int. Ed., 2013年,Vol.52,p.1175-1179,Supporting Information p.1-7,DOI: 10.1002/anie.201205151
【文献】Photochem. Photobiol. Sci., 2015年,p.1-8,DOI: 10.1039/c5pp00400d
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 519/00
A61K 49/00
G01N 33/532
C12Q 1/66
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
(I)
〔式(I)中、
1
であり;
2は、存在せず
1は、0又はハロゲン置換基で任意選択的に置換されたフェニルであり;
1は、
または
であり;
1は、
または
であり;
ある〕
またはその互変異性体または薬学的に許容できる塩。
【請求項2】
(I-c)または式(I-d)
(I-c)、
(I-d)
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
TAK-0043またはTAK-0052

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の化合物を含む、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)アッセイのためのキット。
【請求項5】
試料中の酵素を検出する方法であって、
(a)前記試料を請求項1~のいずれか1項に記載の化合物と接触させること;及び
(b)前記試料における発光を検出すること
を含む、前記方法。
【請求項6】
試料における発光を検出する方法であって、
(a)試料を請求項1~のいずれか1項に記載の化合物と接触させること;
(b)前記試料中にセレンテラジン利用ルシフェラーゼが存在していない場合に前記試料をセレンテラジン利用ルシフェラーゼと接触させること;及び
(c)発光を検出すること
を含み、
前記試料が任意選択的に生細胞またはセレンテラジン利用ルシフェラーゼを含有する、前記方法。
【請求項7】
非ヒト遺伝子導入動物における発光を検出する方法であって、
(a)請求項1~のいずれか1項に記載の化合物を非ヒト遺伝子導入動物に投与すること;及び
発光を検出すること
を含み、前記非ヒト遺伝子導入動物がセレンテラジン利用ルシフェラーゼを発現する、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年11月1日に出願された米国仮特許出願第62/415,671号に基づく優先権を主張するものであり、参照によりその内容全体を本明細書に援用する。
【0002】
技術分野
本開示は、セレンテラジン類縁体、セレンテラジン類縁体を作る方法、及びルシフェラーゼに基づくアッセイにおいてセレンテラジン類縁体を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
生物発光アッセイは、細胞生理学、特に遺伝子発現に関連するプロセスの研究において広く用いられている。とりわけ、ルシフェラーゼレポーター酵素はこの分野では極めて価値のあるツールであり、今日まで、生物発光アッセイに有用となり得る小さくて環境非感受性であるルシフェラーゼを得るために熱心なタンパク質操作がなされてきた。全細胞バイオセンサー測定、高処理量スクリーニングによる創薬ならびに、生細胞でのタンパク質-タンパク質相互作用、アポトーシス及び細胞生存能を試験するのを可能にするものでもある生体内イメージングを可能にする、効率的なルシフェラーゼレポーターが多く存在している。セレンテラジン及びセレンテラジン類縁体を基質として使用するルシフェラーゼは、それらの輝度及び全細胞適用の許容性ゆえに、最も広く使用されている系の1つである。しかしながら、これらの反応は本質的に系の固有放射波長によって制限を受ける。
【発明の概要】
【0004】
既知の多くのセレンテラジン類縁体は欠陥を有するが、これによって、それらのルシフェラーゼ基質としての有効性、及びルシフェラーゼに基づく発光アッセイでの有用性が制限される。生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)アッセイの場合、ルシフェラーゼ反応の性能はアッセイ系中の基質の放射波長によって制限されることがある。基質の活性も、基質の構造及び特性に対する酵素の活性部位の許容性によって影響を受けることがある。したがって、向上した特性を有するセレンテラジン類縁体が必要とされている。
【0005】
開示される化合物は、セレンテラジン類縁体コア、共有結合鎖リンカー、及びエネルギー受容体を含み得る。セレンテラジン類縁体コアはルシフェラーゼに当該酵素の結合部位にて結合し得る。共有結合鎖は、エネルギー受容体が酵素結合セレンテラジン類縁体コアの近傍に位置するように、酵素の結合ポケットから延出し得る。このように、開示される化合物は、ルシフェラーゼ基質コアがエネルギー受容体に共有結合的に係留されているという点で、従来のルシフェラーゼ基質に比べて構造が独特である。それにもかかわらず、開示される化合物は予想外なことに、生物発光を放射するルシフェラーゼ基質活性を維持し、それと同時に、共有結合的に繋げられているセレンテラジン類縁体コアとエネルギー受容体との近接ゆえにBRETが起きるのを可能にする。
【0006】
一態様では、式(I)
(I)
の化合物、またはその互変異性体もしくは薬学的に許容できる塩を開示し、式(I)中、
1
であり;
2は、存在しないかまたは、アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、-OH及び-NH2からなる群から選択される置換基であり;
1は、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環またはシクロアルキルであり;
1は、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはヘテロアルキルであり;
1は、エネルギー受容体であり;
qは、0、1または2であり;
上記アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環及びシクロアルキルは、出現毎に独立して、置換型または無置換型である。
【0007】
さらに、化合物を作る方法、化合物を含むキット、及びルシフェラーゼに基づく発光アッセイにおいて化合物をルシフェラーゼ基質として使用する方法を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一例としてのセレンテラジン類縁体TAK-0043を示す。青色で表されているのはセレンテラジンであり、赤色で表されているのは一例としての受容体(この場合はNCT色素)であり、緑色で表されているのは、セレンテラジンがNanoLuc(登録商標)ポケットに入り込むこと及びNCT色素が依然として共有結合的に取り付けられていながらもポケットの外側に残ることを可能にするリンカーである。
図2】A~Dは、NanoGlo(登録商標)緩衝液中の様々な濃度のTAK-0043及び酵素のスペクトルプロファイルを示す。TAK-0043及び使用した酵素のどの濃度においても放射波長は、放射光子の95%超がNCT色素放射にシフトし、618nmで最大となることを示している。Aは、1uMのNanoLuc(登録商標)及び1uMのNanoLuc-HaloTag融合酵素を使用したときの10uMのTAK-0043のスペクトルプロファイルを示す。Bは、460nmでのセレンテラジン放射のピークがほとんど見えないことを示す。Cは、1uMのNanoLuc(登録商標)及び1uMのNanoLuc-HaloTag融合酵素を使用したときの1uMのTAK-0043のスペクトルプロファイルを示す。Dは、3.3uMのNanoLuc(登録商標)及び3.3uMのNanoLuc-HaloTag融合酵素を使用したときの1uMのTAK-0043のスペクトルプロファイルを示す。
図3A】フリマジン及びTAK-0052のスペクトルプロファイルを示す。フリマジン及びTAK-0052をNanoGlo(登録商標)緩衝液で50uMの濃度に希釈した。NanoLuc(登録商標)をTBS+0.01%BSAで2μM及び0.2nMの濃度に希釈した。3反復で2μMのNanoLuc(登録商標)試料50μlを50μlのTAK-0052と合わせ、0.2nMの溶液50μlを3反復でフリマジン溶液50μlと合わせた。Tecan-M1000で3nm波長増分を測定することによってスペクトルプロファイルを得た。
図3B】基質滴定の代表的な結果を示す。フリマジン及びTAK-0052を、NanoGlo(登録商標)緩衝液で100μMに、またはTBS+0.01%BSAで50μMに希釈した。各緩衝液タイプについて出発濃度から2倍段階希釈液を調製した。その後、50μlの各基質滴定を、TBS+0.01%BSAで4ng/mlに希釈したNanoLuc(登録商標)ルシフェラーゼ50μlに添加した。試料を3分間インキュベートし、その後、GloMax(登録商標)-Multi+発光光度計を使用して発光を測定した。
図3C】自家発光の代表的な結果を示す。フリマジン及びTAK-0052を、NanoGlo(登録商標)緩衝液で100μMに、またはTBS+0.01%BSAで50μMに希釈した。50μlの各基質緩衝液合剤を50μlのTBS+0.01%BSAに添加した。試料を3分間インキュベートし、その後、GloMax(登録商標)-Multi+発光光度計を使用して発光を測定した。
図4】TAK-0043の生物発光活性を示す。精製NanoLuc(登録商標)酵素(Promega E499a)及び精製NanoLuc-Halotag融合酵素の2μMの濃度から始まる希釈系列をOptiMEM+0.1%FBSで調製した。各酵素の3倍段階希釈液(700μL中300μL)をOptiMEM+0.1%FBSで調製した。TAK-0043をNanoGlo(登録商標)緩衝液で20μMの濃度に希釈した。TAK-0043を含んでいるNanoGlo(登録商標)緩衝液50μLと、50μLの各酵素希釈液とを合わせた。試料を室温で3分間インキュベートし、その後、GloMax(登録商標)-Multi+発光光度計で読み取った。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書では、セレンテラジン類縁体を含む化合物を開示する。開示される化合物は、セレンテラジン類縁体コア、共有結合鎖リンカー、及びエネルギー受容体を含み得る。セレンテラジン類縁体コアはルシフェラーゼに当該酵素の結合部位にて結合し得る。共有結合鎖は、エネルギー受容体が酵素結合セレンテラジン類縁体コアの近傍に位置するように、酵素の結合ポケットから延出し得る。エネルギー受容体は、効率的なBRETを経ることが可能であり得る。このように、従来のルシフェラーゼ基質からすると、開示される化合物は、ルシフェラーゼ基質コアがエネルギー受容体に共有結合的に係留されているという点で構造が独特である。開示される化合物は予想外なことに、生物発光を放射するルシフェラーゼ基質活性を維持し、それと同時に、共有結合的に繋げられているセレンテラジン類縁体コアとエネルギー受容体との近接ゆえにBRETを起こさせる。
【0010】
開示される化合物は、セレンテラジンを利用して発光を生じさせるタンパク質、例えば、限定されないが、様々な海洋生物にみられるルシフェラーゼ及び発光タンパク質、例えば、刺胞動物ルシフェラーゼ(例えばRenillaルシフェラーゼ)、クラゲのルシフェラーゼ(例えばAequoreaクラゲからのエクオリン)及び十脚類ルシフェラーゼ(例えば、Oplophorus gracilirostrisのルシフェラーゼ複合体)の有用な基質となり得る。開示されるセレンテラジン類縁体は、安定なリンカーによって様々なエネルギー受容体に係留され得る。受容体は、励起されたセレンテラジンからエネルギーを効率的に受け取ってより長い波長で放射することができ、こうしてセレンテラジン/ルシフェラーゼ反応によって生じる放射の波長をシフトさせることができる。セレンテラジンに比べて、係留セレンテラジン類縁体は、取り付けられたエネルギー受容体基の放射波長へとシフトしている放射波長を生成する。係留セレンテラジンは、系から放射される光の波長を調節するために様々なエネルギー受容体に係留されていてよい。
【0011】
本明細書ではさらに、開示される化合物を作る方法を開示する。記載されている方法論は、様々なエネルギー受容体に係留されているセレンテラジンの入手を可能にするものであり、容易に入手できる多様な出発材料を利用して穏やかな条件下で実施されることができる。開示される合成方法論は予想外なことに、セレンテラジン類縁体に基づく生物発光技術において様々な新しい用途及び進歩を提供する。
【0012】
1.定義
特に明記しない限り、本明細書中で使用する全ての科学技術用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。齟齬がある場合には、定義を含めて本書が優先されることとする。好ましい方法及び材料を以下に記載しているが、本明細書に記載されているものと同様または等価な方法及び材料を本発明の実施または試験に使用することはできる。本明細書中で言及する全ての刊行物、特許出願、特許及びその他の参考文献は、参照によりそれらの全体が援用される。本明細書中で開示される材料、方法及び実施例は単に例示であるに過ぎず、限定することを意図していない。
【0013】
「含む(comprise)」、「含む(include)」、「有している」、「有する」、「できる」、「含有する」という用語、及びそれらの変化形は、本明細書中で使用される場合、さらなる行為または構造の可能性を除外しないオープンエンド形式の移行句、用語または単語であることが意図される。単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に別段の規定をしているのでない限り、複数形の意味を含む。本開示は、本明細書において提供される実施形態または要素を「含む」、それ「からなる」及びそれ「から本質的になる」他の実施形態をも、明示的に記しているか否かにかかわらず企図している。
【0014】
量に関して使用される「約」という修飾語は、示されている値を包含し、文脈によって規定される意味を有する(例えば、それは少なくとも、特定の量の測定に関連する誤差の度合いを含む)。「約」という修飾語はさらに、2つの端点の絶対値によって画定される範囲を開示しているとみなされるべきである。例えば、「約2~約4」という表現は、「2~4」の範囲も開示している。「約」という用語は、指定された数のプラスまたはマイナス10%を指し得る。例えば、「約10%」は9~11%の範囲を表し得、「約1」は0.9~1.1を意味し得る。「約」のその他の意味は、四捨五入など、文脈から明らかであり得、よって例えば「約1」が0.5~1.4を意味することもある。
【0015】
具体的な官能基及び化学用語の定義は以下により詳しく記載されている。本開示の目的のために、化学元素は、Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed.の見返しにあるCAS方式の元素周期表に従って特定し、具体的な官能基は、概してその中で記載されているように定義する。さらに、有機化学の一般原理ならびに具体的な官能性部分及び反応性についてはOrganic Chemistry,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito,1999、Smith and March March’s Advanced Organic Chemistry,5th Edition,John Wiley &Sons,Inc.,New York,2001、Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers,Inc.,New York,1989、Carruthers,Some Modern Methods of Organic Synthesis,3rd Edition,Cambridge University Press,Cambridge,1987に記載されており、参照によりその各々の内容全体を本明細書に援用する。
【0016】
本明細書中で使用する「アルコキシ」という用語は、酸素原子を介して親分子部分に付いている本明細書で定義されるアルキル基を指す。アルコキシの代表例としては、限定されないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2-プロポキシ、ブトキシ及びtert-ブトキシが挙げられる。
【0017】
本明細書中で使用する「アルキル」という用語は、1~10個の炭素原子を含有する直鎖状または分岐状の飽和炭化水素鎖を意味する。「低級アルキル」または「C1-6-アルキル」という用語は、1~6個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖炭化水素を意味する。「C1-C3-アルキル」という用語は、1~3個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖炭化水素を意味する。アルキルの代表例としては、限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、及びn-デシルが挙げられる。
【0018】
本明細書中で使用する「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を伴って2~10個の炭素原子を含有する炭化水素鎖を意味する。アルケニル基は置換型または無置換型であり得る。例えば、アルケニル基がフェニルなどのアリール基で置換されていてもよい。
【0019】
本明細書中で使用する「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を伴って2~10個の炭素原子を含有する炭化水素鎖を意味する。アルキニル基は置換型または無置換型であり得る。例えば、アルキニル基がフェニルなどのアリール基で置換されていてもよい。
【0020】
本明細書中で使用する「アルコキシアルキル」という用語は、本明細書で定義されるアルキル基を介して親分子部分に付いている本明細書で定義されるアルコキシ基を指す。
【0021】
本明細書中で使用する「アルキレン」という用語は、炭素原子1~10個、例えば炭素原子2~5個の直鎖または分岐鎖炭化水素から誘導される二価の基を指す。アルキレンの代表例としては、限定されないが、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、及び-CH2CH2CH2CH2CH2-が挙げられる。
【0022】
本明細書中で使用する「アリール」という用語は、フェニル基または、二環式アリール縮合環系もしくは三環式アリール縮合環系を指す。二環式縮合環系の例は、親分子部分に付いておりかつフェニル基と縮合しているフェニル基である。三環式縮合環系の例は、親分子部分に付いておりかつ他の2つのフェニル基と縮合しているフェニル基である。二環式アリールの代表例としては、限定されないが、ナフチルが挙げられる。三環式アリールの代表例としては、限定されないが、アントラセニルが挙げられる。単環式、二環式及び三環式アリールは、環の中に含有される任意の炭素原子を介して親分子部分に連結され、また、無置換型であってもよいし、置換型であってもよい。
【0023】
本明細書中で使用する「シクロアルキル」という用語は、3~10個の炭素原子及び0個のヘテロ原子を含有する、及び場合によっては1個または2個の二重結合を含有する、炭素環系を指す。シクロアルキルの代表例としては、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル及びシクロデシルが挙げられる。
【0024】
本明細書中で使用する「シクロアルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有し、好ましくは環1個あたり5~10個の炭素原子を有する、非芳香族性の単環式または多環式環系を意味する。単環式シクロアルケニル環の例としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニルまたはシクロヘプテニルが挙げられる。
【0025】
本明細書中で使用する「フルオロアルキル」という用語は、本明細書で定義されるアルキル基であって、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは8つの水素原子がフッ素で置き換えられているものを意味する。フルオロアルキルの代表例としては、限定されないが、2-フルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、及びトリフルオロプロピル、例えば3,3,3-トリフルオロプロピルが挙げられる。
【0026】
本明細書中で使用する「アルコキシフルオロアルキル」という用語は、本明細書で定義されるフルオロアルキル基を介して親分子部分に付いている本明細書で定義されるアルコキシ基を指す。
【0027】
本明細書中で使用する「フルオロアルコキシ」という用語は、本明細書で定義される少なくとも1つのフルオロアルキル基が酸素原子を介して親分子部分に付いていることを意味する。フルオロアルキルオキシの代表例としては、限定されないが、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ及び2,2,2-トリフルオロエトキシが挙げられる。
【0028】
本明細書中で使用する「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、Cl、Br、IまたはFを意味する。
【0029】
本明細書中で使用する「ハロアルキル」という用語は、本明細書で定義されるアルキル基であって、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは8つの水素原子がハロゲンで置き換えられていることを意味する。
【0030】
本明細書中で使用する「ハロアルコキシ」という用語は、本明細書で定義される少なくとも1つのハロアルキル基が酸素原子を介して親分子部分に付いていることを意味する。
【0031】
本明細書中で使用する「ヘテロアルキル」という用語は、本明細書で定義されるアルキル基であって、炭素原子の1つ以上が、S、Si、O、P及びNから選択されるヘテロ原子で置き換えられているものを意味する。ヘテロ原子は酸化されていてもよい。ヘテロアルキルの代表例としては、限定されないが、アルキルエーテル、第二級及び第三級アルキルアミン、アミド、ならびにアルキルスルフィドが挙げられる。
【0032】
本明細書中で使用する「ヘテロアリール」という用語は、芳香族単環、または芳香族二環系、または芳香族三環系を指す。芳香族単環は、独立してN、O及びSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、独立してO、S及びNから選択される1つ、2つ、3つまたは4つのヘテロ原子)を含有する5または6員環である。5員環の芳香族単環は2つの二重結合を有し、6員環の芳香族単環は3つの二重結合を有する。二環式ヘテロアリール基の例は、親分子部分に付いておりかつ、本明細書で定義される単環式シクロアルキル基、本明細書で定義される単環式アリール基、本明細書で定義される単環式ヘテロアリール基または本明細書で定義される単環式ヘテロ環と縮合している、単環式ヘテロアリール環である。三環式ヘテロアリール基の例は、親分子部分に付いておりかつ、本明細書で定義される単環式シクロアルキル基、本明細書で定義される単環式アリール基、本明細書で定義される単環式ヘテロアリール基または本明細書で定義される単環式ヘテロ環のうちの2つと縮合している、単環式ヘテロアリール環である。単環式ヘテロアリールの代表例としては、限定されないが、ピリジニル(ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル、ピリジン-4-イルを含む)、ピリミジニル、ピラジニル、チエニル、フリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル及び2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジニルが挙げられる。二環式ヘテロアリールの代表例としては、限定されないが、クロメニル、ベンゾチエニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾトリアゾリル、キノリニル、チエノピロリル、チエノチエニル、イミダゾチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、インドリル、キノリニル、イミダゾピリジン、ベンゾオキサジアゾリル及びベンゾピラゾリルが挙げられる。三環式ヘテロアリールの代表例としては、限定されないが、ジベンゾフラニル及びジベンゾチエニルが挙げられる。単環式、二環式及び三環式ヘテロアリールは、環の中に含有される任意の炭素原子または任意の窒素原子を介して親分子部分に連結され、また、無置換型であってもよいし、置換型であってもよい。
【0033】
本明細書中で使用する「ヘテロ環」または「ヘテロ環式」という用語は、単環式ヘテロ環、二環式ヘテロ環または三環式ヘテロ環を意味する。単環式ヘテロ環は、独立してO、N及びSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する3、4、5、6、7または8員環である。3または4員環は、0または1個の二重結合ならびに、O、N及びSからなる群から選択される1個のヘテロ原子を含有する。5員環は、0または1個の二重結合ならびに、O、N及びSからなる群から選択される1、2または3個のヘテロ原子を含有する。6員環は、0、1または2個の二重結合ならびに、O、N及びSからなる群から選択される1、2または3個のヘテロ原子を含有する。7及び8員環は、0、1、2または3個の二重結合ならびに、O、N及びSからなる群から選択される1、2または3個のヘテロ原子を含有する。単環式ヘテロ環の代表例としては、限定されないが、アゼチジニル、アゼパニル、アジリジニル、ジアゼパニル、1,3-ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、1,3-ジチオラニル、1,3-ジチアニル、1,3-ジメチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オキサジアゾリニル、オキサジアゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、オキサタニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピロリニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロチエニル、チアジアゾリニル、チアジアゾリジニル、1,2-チアジナニル、1,3-チアジナニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、チオモルホリニル、1,1-ジオキシドチオモルホリニル(チオモルホリンスルホン)、チオピラニル及びトリチアニルが挙げられる。二環式ヘテロ環は、フェニル基と縮合している単環式ヘテロ環、もしくは単環式シクロアルキルと縮合している単環式ヘテロ環、もしくは単環式シクロアルケニルと縮合している単環式ヘテロ環、もしくは単環式ヘテロ環と縮合している単環式ヘテロ環、もしくはスピロヘテロ環基あるいは、環の2つの非隣接原子同士が炭素原子1個、2個、3個もしくは4個のアルキレン架橋または炭素原子2個、3個もしくは4個のアルケニレン架橋によって繋げられている架橋型単環式ヘテロ環系である。二環式ヘテロ環の代表例としては、限定されないが、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、クロマニル、2,3-ジヒドロベンゾフラニル、2,3-ジヒドロベンゾチエニル、2,3-ジヒドロイソキノリン、2-アザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル、アザビシクロ[2.2.1]ヘプチル(2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イルを含む)、2,3-ジヒドロ-1H-インドリル、イソインドリニル、オクタヒドロシクロペンタ[c]ピロリル、オクタヒドロピロロピリジニル、及びテトラヒドロイソキノリニルが挙げられる。三環式ヘテロ環の例は、フェニル基と縮合している二環式ヘテロ環、もしくは単環式シクロアルキルと縮合している二環式ヘテロ環、もしくは単環式シクロアルケニルと縮合している二環式ヘテロ環、もしくは単環式ヘテロ環と縮合している二環式ヘテロ環または、二環式環の2つの非隣接原子同士が炭素原子1個、2個、3個もしくは4個のアルキレン架橋または炭素原子2個、3個もしくは4個のアルケニレン架橋によって繋げられている二環式ヘテロ環である。三環式ヘテロ環の例としては、限定されないが、オクタヒドロ-2,5-エポキシペンタレン、ヘキサヒドロ-2H-2,5-メタノシクロペンタ[b]フラン、ヘキサヒドロ-1H-1,4-メタノシクロペンタ[c]フラン、アザ-アダマンタン(1-アザトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン)、及びオキサ-アダマンタン(2-オキサトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン)が挙げられる。単環式、二環式及び三環式ヘテロ環は、環の中に含有される任意の炭素原子または任意の窒素原子を介して親分子部分に連結され、また、無置換型であってもよいし、置換型であってもよい。
【0034】
本明細書中で使用する「ヒドロキシル」という用語は、-OH基を意味する。
【0035】
いくつかの事例では、ヒドロカルビル置換基(例えばアルキルまたはシクロアルキル)の炭素原子の数を「Cx-Cy-」という接頭辞で表し、式中、xは置換基の炭素原子の最小数であり、yは最大数である。したがって、例えば、「C1-C3-アルキル」は、1~3個の炭素原子を含有するアルキル置換基を指す。
【0036】
「置換基」という用語は、アリール、ヘテロアリール、フェニルまたはピリジニル基上でその基の任意の原子を「置換している」基を指す。任意の原子が置換されていてよい。
【0037】
「置換している」という用語は、1つ以上の非水素置換基でさらに置換されていてもよい基を指す。置換基としては、限定されないが例えば、ハロゲン、=O、=S、シアノ、ニトロ、フルオロアルキル、アルコキシフルオロアルキル、フルオロアルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキレン、アリールオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアルキル、アリールアミノ、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、スルフィニル、-COOH、ケトン、アミド、カルバメート及びアシルが挙げられる。
【0038】
本明細書に記載の化合物のために基及びその置換基は、選択及び置換の結果として安定な化合物、例えば自発的に転移、環化、脱離などによる変換を受けないものが得られるように、原子及び置換基の許容価数に応じて選択され得る。
【0039】
「生物発光」または「発光」という用語は、酵素と光を発生させる基質との反応の結果として生じる光を指し得る。そのような酵素(生物発光酵素)の例としては、Oplophorusルシフェラーゼ、例えば、Oplophorus gracilirostris、ホタルルシフェラーゼ、例えば、Photinus pyralisまたはPhoturis pennsylvanica、コメツキムシルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、ウミホタルルシフェラーゼ、エクオリン発光タンパク質、オベリン発光タンパク質などが挙げられる。
【0040】
「セレンテラジン基質」という用語は、ルシフェラーゼ(例えば海洋性ルシフェラーゼ)などの多様な生物発光タンパク質によって作用された場合に発光するレポーター分子の部類を指す。セレンテラジン基質はセレンテラジンならびに、その類縁体及び誘導体を含む。
【0041】
「エネルギー受容体」または「受容体分子」という用語は、任意の小分子(例えば発色団)、巨大分子(例えば、自家蛍光タンパク質、フィコビリタンパク質、ナノ粒子、表面など)、または容易に検出することができる信号をエネルギー吸収(例えば共鳴エネルギー移動)に応答して生成する分子複合体を指す。特定の実施形態では、エネルギー受容体は蛍光団またはその他の検出可能な発色団である。好適な蛍光団としては、限定されないが例えば、キサンテン誘導体(例えば、フルオレセイン、ローダミン、オレゴングリーン、エオジン、テキサスレッドなど)、シアニン誘導体(例えば、シアニン、インドカルボシアニン、オキサカルボシアニン、チアカルボシアニン、メロシアニンなど)、ナフタレン誘導体(例えば、ダンシル及びプロダン誘導体)、オキサジアゾール誘導体(例えば、ピリジルオキサゾール、ニトロベンゾオキサジアゾール、ベンゾオキサジアゾールなど)、ピレン誘導体(例えばカスケードブルー)、オキサジン誘導体(例えば、ナイルレッド、ナイルブルー、クレシルバイオレット、オキサジン170など)、アクリジン誘導体(例えば、プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリジンイエローなど)、アリールメチン誘導体(例えば、オーラミン、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーンなど)、テトラピロール誘導体(例えば、ポルフィン、フタロシアニン、ビリルビンなど)、CF色素(Biotium)、BODIPY(Invitrogen)、ALEXA FLuoR(Invitrogen)、DYLIGHT FLUOR(Thermo Scientific、Pierce)、ATTO及びTRACY(Sigma Aldrich)、FluoProbes(Interchim)、DY及びMEGASTOKES(Dyomics)、SULFO CY色素(CYANDYE、LLC)、SETAU AND SQUARE DYES(SETA BioMedicals)、QUASAR及びCAL FLUOR色素(Biosearch Technologies)、SURELIGHT DYES(APC、RPE、PerCP、フィコビリソーム)(Columbia Biosciences)、APC、APCXL、RPE、BPE(Phyco-Biotech)、自家蛍光タンパク質(例えば、YFP、RFP、mCherry、mKate)、量子ドットナノ結晶などが挙げられる。好適な蛍光団としては、例えば、Lavis et al.,Bright Building Blocks for Chemical Biology,ACS Chem.Biol.,2014,9,855-866に記載されているものが挙げられる。好適な蛍光団としてはまた、例えば、The Molecular Probes Handbook-A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies,11th Edition(2010),ThermoFisher Scientificに記載されているものも挙げられる。いくつかの実施形態では、蛍光団はローダミン類縁体(例えば、カルボキシローダミン類縁体)である。特定の実施形態では、エネルギー受容体には、限定されないが、小分子蛍光色素、例えば、NCT、消光剤、蛍光粒子、例えば量子ドット、発光性金属錯体及びその他の既知のエネルギー受容体が含まれる。
【0042】
本明細書中で使用する場合、「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フッ素ラジカル、塩素ラジカル、臭素ラジカルまたはヨウ素ラジカルを指す。
【0043】
本明細書において交換可能に使用される「発光酵素」、「生物発光酵素」または「ルシフェラーゼ」という用語は、生物発光に用いられる酸化性酵素であって、基質を与えられた場合に光を生成及び放射する当該酵素の部類を指す。ルシフェラーゼは、ルシフェラーゼ基質を用いる、天然型、組換えまたは突然変異体のルシフェラーゼであり得る。ルシフェラーゼ基質は、ルシフェリン、ルシフェリン誘導体もしくは類縁体、プレルシフェリン誘導体もしくは類縁体、セレンテラジン、またはセレンテラジン誘導体もしくは類縁体であり得る。天然型である場合の発光酵素は、当業者によって生物から簡単に得られ得る。発光酵素が天然型のものであるか、または組換えもしくは突然変異体の発光酵素、例えば天然型発光酵素のルシフェラーゼ-セレンテラジンもしくはルシフェラーゼ-ルシフェリン反応の活性を保持しているものである場合にはそれは、発光酵素をコードする核酸を発現するように形質転換された細菌、酵母、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞などの培養物から容易に得ることができる。さらに、組換えまたは突然変異体の発光酵素は、ルシフェラーゼをコードする核酸を使用して試験管内無細胞系から誘導することができる。好適な発光酵素としては、例えば、生物発光性十脚類に由来するルシフェラーゼ、例えばOplophoroideaに由来するもの(例えば、Oplophorus由来ルシフェラーゼ)、甲虫ルシフェラーゼ(例えば、Photinus pyralis、Photuris pennsylvanicaなど)、海洋生物、例えば刺胞動物(例えば、Renillaルシフェラーゼ)、Aristeidae、Solenoceridae、Luciferidae、Sergestidae、Pasipheidae及びThalassocarididae十脚目ファミリー、カイアシルシフェラーゼ、例えば、Gaussiaルシフェラーゼ、例えばGaussia princepsルシフェラーゼ、Metridiaルシフェラーゼ、例えばMetridia longa及びMetridia pacificaルシフェラーゼ、Vargulaルシフェラーゼ、例えばVargula hilgendorfiiルシフェラーゼ、Pleuromamma xiphiasルシフェラーゼ、ならびに発光タンパク質、例えばエクオリン、ならびにそれらの変異型、組換体及び突然変異体が挙げられる。
【0044】
「発光反応混合物」は、発光酵素が光信号すなわち発光を生じさせることを可能にするであろう材料を含有する。混合物はさらに、酵素、例えばルシフェラーゼ酵素すなわちルシフェラーゼを含有し得る。発光信号を発生させるのに必要とされる材料ならびに特定の濃度及び/または量は、使用する発光酵素及び実施しようとするアッセイの種類によって様々であろう。反応系を適切なpHに維持するための緩衝剤、酵素活性を維持するのに役立つPRIONEXまたはウシ血清アルブミン(BSA)などの添加剤、還元剤、界面活性剤などを含めた他の材料が溶液に添加されることが多いであろう。
【0045】
本明細書中で使用する場合、「Oplophorusルシフェラーゼ」及び「Oplophorus由来ルシフェラーゼ」という用語は交換可能に使用され、深海エビOplophorus gracilirostrisから分泌されるルシフェラーゼ(例えば配列番号1)を指し、その野生型、変異型及び突然変異体を含む。例えば、好適なOplophorusルシフェラーゼ変異型は米国特許第8,557,970号及び第8,669,103号に記載されており、参照によりその各々の全体を本明細書に援用する。例示的なOplophorus由来ルシフェラーゼとしては、例えば、配列番号2のもの(本明細書では交換可能に「NanoLuc」、「Nluc」、「Nlucルシフェラーゼ」及び「Nluc酵素」とも呼ぶ)が挙げられる。
【0046】
本明細書中で使用する場合、「レポーター部分」という用語は、検出可能な信号を適切な条件下で直接的または間接的に発生させる部分を指し得る。レポーター部分の例としては、限定されないが、蛍光団、発光分子、色素、放射性標識、及びルシフェラーゼなどの酵素の基質が挙げられる。いくつかの実施形態では、レポーター部分は、例えばレポーター部分が酵素の基質である場合に、検出可能な信号を間接的に発生させ得る。酵素と基質との反応はその後に検出可能な信号、例えば蛍光または発光を生じさせる。本明細書中で使用する場合、「生物発光レポーター部分」という用語は、ルシフェラーゼにとっての基質である部分を指し得る。例えば、生物発光レポーター部分は、ルシフェリン、ルシフェリン誘導体、例えば、プレルシフェリン、アミノルシフェリン、キノリルルシフェリン、ナフチルルシフェリン、フルオロルシフェリン、クロロルシフェリン、ルシフェリン誘導体の前駆体、セレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体もしくは類縁体、例えばフリマジンであり得る。発生する発光信号は発光光度計を使用して検出され得る。本明細書中で使用する場合、「蛍光レポーター部分」という用語は、蛍光を発する部分を指し得る。例えば、蛍光レポーター部分は蛍光団、例えば、クマリン、ローダミン110(R110)、フルオレセイン、DDAO(7-ヒドロキシ-9H-(1,3-ジクロロ-9,9-ジメチルアクリジン-2-オン))、レソルフィン、クレシルバイオレット、シリルキサンテンまたはカルボピロニンであり得る。蛍光は蛍光光度計を使用して検出され得る。
【0047】
数値範囲を列挙する場合、その間に存在する同程度の精度の各数は明示的に企図される。例えば、6~9の範囲の場合、6及び9の他に7及び8の数が企図され、6.0~7.0の範囲の場合、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9及び7.0の数が明示的に企図される。
【0048】
2.化合物
一態様では、式(I):
(I)
の化合物、またはその互変異性体もしくは薬学的に許容できる塩が開示され、式(I)中、
1
であり;
2は、存在しないかまたは、アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、-OH及び-NH2からなる群から選択される置換基であり;
1は、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環またはシクロアルキルであり;
1は、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはヘテロアルキルであり;
1は、エネルギー受容体であり;
qは、0、1または2であり;
上記アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環及びシクロアルキルは、出現毎に独立して、置換型または無置換型である。
【0049】
特定の実施形態では、A1はアリール、ヘテロアリール、ヘテロ環またはシクロアルキルであり、上記アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環及びシクロアルキルは独立して0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の、各々独立してハロゲン、=O、=S、シアノ、ニトロ、フルオロアルキル、アルコキシフルオロアルキル、フルオロアルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキレン、アリールオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアルキル、アリールアミノ、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、スルフィニル、-COOH、ケトン、アミド、カルバメート、シリル、置換型シリル、t-ブチルジメチルシリル、アルキルスルファニル、スルファニル及びアシルからなる群から選択される置換基で置換されている。
【0050】
特定の実施形態では、A1は、任意選択的に置換されたフェニルである。特定の実施形態では、A1は、0、1、2、3または4個の、各々独立してハロゲン、=O、=S、シアノ、ニトロ、フルオロアルキル、アルコキシフルオロアルキル、フルオロアルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキレン、アリールオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアルキル、アリールアミノ、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、スルフィニル、-COOH、ケトン、アミド、カルバメート、シリル、置換型シリル、t-ブチルジメチルシリル、アルキルスルファニル、スルファニル及びアシルからなる群から選択される置換基で任意選択的に置換された、フェニルである。特定の実施形態では、A1は、0、1、2、3または4個の置換基で任意選択的に置換されたフェニルであり、各置換基は独立してハロゲンである。
【0051】
特定の実施形態では、A1は、任意選択的に置換されたフリルである。特定の実施形態では、A1は、0、1、2、3または4個の、各々独立してハロゲン、=O、=S、シアノ、ニトロ、フルオロアルキル、アルコキシフルオロアルキル、フルオロアルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキレン、アリールオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアルキル、アリールアミノ、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、スルフィニル、-COOH、ケトン、アミド、カルバメート、シリル、置換型シリル、t-ブチルジメチルシリル、アルキルスルファニル、スルファニル及びアシルからなる群から選択される置換基で任意選択的に置換された、フリルである。
【0052】
特定の実施形態では、T1は、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはヘテロアルキル(すなわち、1つ以上の炭素原子がヘテロ原子またはヘテロ原子基で置き換えられているもの)であり、上記アルキル、アルケニル、アルキニル及びヘテロアルキルは独立して0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の、各々独立してハロゲン、=O、=S、シアノ、ニトロ、フルオロアルキル、アルコキシフルオロアルキル、フルオロアルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキレン、アリールオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアルキル、アリールアミノ、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、スルフィニル、-COOH、ケトン、アミド、カルバメート、シリル、置換型シリル、t-ブチルジメチルシリル、アルキルスルファニル、スルファニル及びアシルからなる群から選択される置換基で置換されている。
【0053】
特定の実施形態では、T1は、C1-C30-アルキル、C2-C30-アルケニル、C2-C30-アルキニル、またはC1-C30-ヘテロアルキル(すなわち、1つ以上の炭素原子がヘテロ原子またはヘテロ原子基で置き換えられているもの)であり、上記C1-C30-アルキル、C2-C30-アルケニル、C2-C30-アルキニル、及びC1-C30-ヘテロアルキルは独立して0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の、各々独立してハロゲン、=O、=S、シアノ、ニトロ、フルオロアルキル、アルコキシフルオロアルキル、フルオロアルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキレン、アリールオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアルキル、アリールアミノ、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、スルフィニル、-COOH、ケトン、アミド、カルバメート、シリル、置換型シリル、t-ブチルジメチルシリル、アルキルスルファニル、スルファニル及びアシルからなる群から選択される置換基で置換されている。
【0054】
特定の実施形態では、T1は、任意選択的に置換されたヘテロアルキルである。
【0055】
特定の実施形態では、T1は、-(O-CR1a1b-CR1a1bm-Q-、または-O-(CR1a1bn-Q-であり、式中、
mは1~30であり;
nは1~30であり;
Qは、出現毎に独立して、-NH-CO-、-CO-NH-、-CO-O-、-O-CO-、または-O-CO-NH-であり;
1a及びR1bは、出現毎に独立して水素またはC1-C4アルキルである。
【0056】
特定の実施形態では、T1は、式:
または
の基である。
【0057】
特定の実施形態では、T1は、式:
の基である。
【0058】
特定の実施形態では、R2は存在しない。特定の実施形態では、R2は、-OH、または-NH2である。
【0059】
特定の実施形態では、エネルギー受容体E1は、蛍光色素、消光剤、蛍光粒子(例えば量子ドット)、発光性金属錯体、上記のいずれかの組み合わせ、または上記のいずれかの類縁体である。特定の実施形態では、エネルギー受容体E1は、蛍光色素、例えば、Non-ChloroTOM(NCT)、Atto色素(例えば、Atto665、Atto610及びAtto680)、フルオレセインまたはローダミン色素(例えばオレゴングリーンまたはテトラメチルローダミン)である。特定の実施形態では、エネルギー受容体E1は蛍光性Non-ChloroTOM(NCT)色素である。好適なエネルギー受容体には、例えば、ローダミン、シリルローダミン及びシアニンも含まれる。
【0060】
特定の実施形態では、エネルギー受容体は式:
または
を有する。
【0061】
特定の実施形態では、エネルギー受容体は式:
を有する。
【0062】
特定の実施形態では、qは0である。特定の実施形態では、qは1である。特定の実施形態では、qは2である。
【0063】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は式(I-a):
(I-a)
を有し、式(I-a)中、R3は、存在しないかまたはハロゲンである。
【0064】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は式(I-a1)、(I-a2)または(I-a3)を有し、式中、E1は色素、例えば蛍光色素である。
【0065】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は式(I-a1)、(I-a2)または(I-a3)を有し、式中、E1は蛍光色素、例えばNCTまたはAtto655である。
【0066】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は式(I-a1)または(I-a2)を有し、式中、E1は蛍光色素、例えば蛍光性NCT色素である。

【0067】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は式(I-b):
(I-b)
を有し、式(I-b)中、nは、1~30から選択される整数である。特定の実施形態では、nは、6~12から選択される整数、例えば、6、8、10または12である。特定の実施形態では、nは6または8である。特定の実施形態では、nは6である。特定の実施形態では、nは8である。
【0068】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は式(I-c)または式(I-d):

(I-c)、
(I-d)
を有する。
【0069】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は、

、または
である。
【0070】
特定の実施形態では、式(I)の化合物はTAK-0043:
である。
【0071】
化合物名は、CHEMDRAW(登録商標)ULTRA v.12.0の一部としてのStruct=Name命名アルゴリズムを用いることによって与えられた。
【0072】
化合物は、不斉またはキラル中心が存在する立体異性体として存在することがある。立体異性体はキラル炭素原子の周りの置換基の配置によって「R」または「S」である。本明細書中で使用する「R」及び「S」という用語は、IUPAC 1974 Recommendations for Section E,Fundamental Stereochemistry,in Pure Appl.Chem.,1976,45:13-30において定義されている配置である。本開示は、様々な立体異性体及びその混合物を企図しており、これらは本発明の範囲に具体的に含まれている。立体異性体は、エナンチオマー及びジアステレオマーならびに、エナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物を含む。化合物の個々の立体異性体は、不斉もしくはキラル中心を含有する市販の出発物質から合成的に調製され得るかまたは、ラセミ混合物の調製及びその後の当業者によく知られている分割方法によって調製され得る。分割方法の例は、(1)Furniss,Hannaford,Smith,and Tatchell,“Vogel’s Textbook of Practical Organic Chemistry”,5th edition(1989),Longman Scientific &Technical,Essex CM20 2JE,Englandに記載されているように、エナンチオマーの混合物をキラル助剤と結合させ、得られたジアステレオマーの混合物を再結晶もしくはクロマトグラフィーで分離し、場合によっては助剤から光学的に純粋な生成物を遊離させること、または(2)光学エナンチオマーの混合物をキラルクロマトグラフィーカラムで直接分離すること、または(3)分別再結晶法である。
【0073】
化合物が互変異性形態及び幾何異性体を保有していることがあり、これらも本発明の一態様を構成する、ということは理解されるべきである。
【0074】
本開示はさらに、通常天然に見つかる原子量または質量数とは異なる原子量または質量数を有する原子で1つ以上の原子が置き換えられているという事実以外は式(I)に挙げたものと同一である同位体標識化合物も含む。本発明の化合物が含むのに適する同位体の例は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素及び塩素、例えば、限定されないがそれぞれ、2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F及び36Clである。より重い同位体、例えば重水素すなわち2Hによる置換は、代謝安定性がより高いことの結果として得られる特定の治療的利点、例えば、生体内半減期の延長または要求投薬量の低減を生むことができ、それゆえ、ある状況において好ましい場合がある。化合物は、受容体の分布を決定するための医療イメージング及び陽電子放射断層撮影(PET)試験のために、陽電子放射性同位体を組み込んでいてもよい。式(I)の化合物に組み込むことができる好適な陽電子放射性同位体は、11C、13N、15O及び18Fである。式(I)の同位体標識化合物は通常、当業者に知られている従来技術によって、または同位体非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用して別記の実施例に記載されているものに類似したプロセスによって、調製することができる。
【0075】
A.式(I)の化合物の特性
式(I)の化合物はルシフェラーゼの基質となって発光を生じさせ得る。「発光」とは、適切な条件下、例えばセレンテラジン類縁体などの好適な基質の存在下でのルシフェラーゼの光出力を指す。光出力は、セレンテラジン基質を添加してすぐに開始され得るものである発光反応の開始時の光出力(時として「T=0」発光または「閃光」と呼ばれる)の瞬間的または準瞬間的な大きさとして測定され得る。様々な実施形態において発光反応は溶液中で行われる。他の実施形態では、発光反応は固体担体上で行われる。溶液は、例えば原核生物または真核生物の発現系中の細胞からの溶解物を含有し得る。他の実施形態では、発現が無細胞系中で起こるかまたはルシフェラーゼタンパク質が細胞外媒体中に分泌され、後者では、溶解物を生成させる必要がない。いくつかの実施形態では、発光タンパク質を含有する反応チャンバ(例えば、96ウェルプレートなどのマルチウェルプレートのウェル)の中に適切な材料、例えば、セレンテラジン類縁体、緩衝剤などを注入することによって反応が開始される。さらに他の実施形態では、ルシフェラーゼ及び/またはセレンテラジン類縁体(例えば、式(I)の化合物)を宿主内に導入し、全生物またはその細胞、組織、外植片もしくは抽出物を含み得るものである宿主またはその一部に対して発光の測定がなされる。反応チャンバは、例えば発光光度計または光電子倍増管を使用して光出力を測定することができる読み取り装置の中に配置され得る。光出力または発光は、例えば同じ反応チャンバにおいて数秒、数分、数時間などの期間にわたって経時的に測定されてもよい。光出力または発光は、時間平均、信号減衰の半減期、一定期間にわたる信号の総和、またはピーク出力として報告され得る。発光は相対発光単位(RLU)で測定され得る。
【0076】
式(I)の化合物は、セレンテラジンまたは既知のセレンテラジン類縁体に対して1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上または100以上のRLUを有し得る。
【0077】
生物発光アッセイでは、式(I)の化合物は、それが放射した光子の80%以上、85%以上、90%以上または95%以上をエネルギー受容体の放射波長にシフトさせることができる。例えば、エネルギー受容体は500~800nmの放射波長を有し得る。
【0078】
「生体適合性」とは、(例えば原核生物または真核生物の)細胞のセレンテラジン類縁体(例えば式(I)の化合物)に対する許容性を指す。セレンテラジン類縁体の生体適合性は、それが宿主細胞に引き起こすストレスに関係している。
【0079】
セレンテラジン類縁体(例えば式(I)の化合物)の向上した生体適合性は、細胞生存能及び/または細胞の成長速度を測定することによって決定され得る。例えば、セレンテラジン類縁体の向上した生体適合性は、天然または既知のセレンテラジンと比較してセレンテラジン類縁体に曝露された細胞のルシフェラーゼ発現の非存在下での細胞生存能を測定してセレンテラジン類縁体が細胞に対してどのくらいの適合性及び/または毒性を有するかを決定することによって決定され得る。
【0080】
詳しくは、向上した生体適合性は、細胞生存能分析(例えば、CELLTITER-GLO(登録商標)Luminescent Cell Viabilityアッセイを用いるもの)、アポトーシスアッセイ(例えばCASPASE-GLO(登録商標)アッセイ技術を用いるもの)、または当技術分野で知られている別の方法を用いて決定され得る。細胞生存能またはアポトーシスに対する式(I)の化合物の影響は、細胞生存能またはアポトーシスに対する天然または既知のセレンテラジン類縁体の影響と比較され得る。
【0081】
向上した生体適合性はまた、セレンテラジン類縁体(例えば式(I)の化合物)の細胞成長または遺伝子発現に対する影響を測定することによって決定してもよい。例えば、式(I)の化合物の向上した生体適合性は、天然または既知のセレンテラジンに曝露されたかまたはセレンテラジンに曝露されていない細胞と比較して式(I)の化合物に曝露された細胞試料において一定期間後の細胞数を測定するかまたはストレス応答遺伝子の発現を判定することによって決定され得る。細胞成長または遺伝子発現に対する式(I)の化合物の影響は、天然または既知のセレンテラジンと比較され得る。
【0082】
B.式(I)の化合物の合成
式(I)の化合物は、合成プロセスによって、または代謝プロセスによって調製され得る。代謝プロセスによる化合物の調製は、ヒトまたは動物の体内で(生体内で)起こるもの、または試験管内で起こるプロセスを含む。好適な合成方法としては、例えば、米国シリアル番号62/295,363において2016年2月15日に出願されたShakhmin et al.の「COELENTERAZINE ANALOGUES」(代理人整理番号016026-9574)開示されているものが挙げられ得、参照によりその全体を本明細書に援用する。
【0083】
式(I)の化合物は、特に断らない限りR1及びqは概要の節で明記したとおりの意味を有するが、スキーム1に示すように合成され得る。
【0084】
以下のスキームの記載で使用されている略語は、無水酢酸を表すAc2O;カルボニルジイミダゾールを表すCDI;メタノールを表すMeOH;1,1,3,3-テトラメチルグアニジンを表すTMG;及びトリフルオロ酢酸を意味するTFAである。
スキーム1.式(I)の化合物の合成
【0085】
スキーム1は、中間体A及びBから式(I)の化合物への変換を例示しており、この場合、qは1である。中間体A及びBは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンで処理され得、アルデヒドvによるHorner-Wadsworth-Emmonsオレフィン化を受け得、ここで、R1は概要の中で定義したとおりであり、そして、中間体viが得られ得る。中間体viは還元されて式(I)の化合物を与え得る。
【0086】
各個々のステップに最適な反応条件及び反応時間は、採用する特定反応物質及び使用する反応物質に存在している置換基に応じて様々であり得る。具体的な手順は実施例の節で提供する。反応の後処理は従来の方法、例えば、残渣から溶媒を除去することならびに、限定されないが晶析、蒸留、抽出、粉砕及びクロマトグラフィーなどの当技術分野で一般的に知られている方法論に従ってさらに精製することによって、行うことができる。特に記載されていない限り、出発物質及び試薬は、市販されているか、化学文献に記載されている方法を用いて市販の材料から当業者によって調製されることができるかのどちらかである。出発物質は、市販されていない場合には、標準的有機化学技術、既知構造に類似した化合物の合成と同様の技術、または上記スキームもしくは合成実施例の節に記載の手順と同様の技術から選択される手順によって調製することができる。
【0087】
反応条件の適切な操作、合成経路の試薬及び配列、反応条件に適合し得ない任意の化学官能性の保護、及び方法の反応シーケンスの適切な時点での脱保護を含めた慣例的実験作業は本発明の範囲に含まれる。好適な保護基ならびに、そのような保護基を使用して種々の置換基を保護及び脱保護する方法は当業者によく知られており、その例は、PGM Wuts and TW Greene,in Greene’s book titled Protective Groups in Organic Synthesis(4th ed.),John Wiley &Sons,NY(2006)に見つけることができ、参照によりその全体を本明細書に援用する。本発明の化合物の合成は、上記合成スキーム及び具体的な実施例に記載されているものと同様の方法によって成し遂げることができる。
【0088】
本開示の化合物の光学活性形態が必要とされる場合、それは、(例えば適切な反応ステップの不斉誘導によって調製される)光学活性出発材料を使用して本明細書に記載の手順の1つを行うことによって、または標準的手順(例えば、クロマトグラフィー分離、再結晶または酵素的分割)を用いる化合物もしくは中間体の立体異性体の混合物の分割によって、得ることができる。
【0089】
同様に、化合物の純粋な幾何異性体が必要とされる場合、それは、純粋な幾何異性体を出発材料として使用して上記手順の1つを行うことによって、またはクロマトグラフィー分離などの標準的手順を用いて化合物もしくは中間体の幾何異性体の混合物の分割によって得ることができる。
【0090】
カルボキシル基と、適切な塩基、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムもしくはアルミニウムなどの金属カチオンの水酸化物、炭酸塩もしくは炭酸水素塩、または有機第一級、第二級もしくは第三級アミノとの反応によって、開示化合物の最終的な単離及び精製の間に塩基付加塩が調製され得る。第4級アミン塩、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N-ジベンジルフェネチルアミン、1-エフェナミン及びN,N’-ジベンジルエチレンジアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジンなどに由来するものを調製することができる。
【0091】
記載されている合成スキーム及び具体的な実施例が例示的なものであり、別記の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲を限定しているとみなされるべきでないということは認識することができる。合成方法及び具体的な実施例の代替形態、変化形態及び均等物は請求項の範囲内に含まれる。
【0092】
3.使用方法及びキット
本開示の化合物は、ルシフェラーゼ基質、例えばセレンテラジン類縁体を使用してきたいかなる方法においても使用され得る。例えば、それらは、セレンテラジンの類縁体を採用して試料中の1つ以上の分子、例えば酵素、酵素反応の補助因子、酵素基質、酵素阻害物質、酵素活性化因子もしくはOHラジカル、または1つ以上の条件、例えばレドックス条件を検出する生物発光法において使用されてもよい。試料には、動物(例えば脊椎動物)、植物、真菌、生理学的流体(例えば、血液、血漿、尿、粘液分泌物)、細胞、細胞溶解物、細胞上清、または細胞の精製画分(例えば細胞レベル未満の画分)が含まれ得る。そのような分子の存在、量、スペクトル分布、放射動態または固有活性が検出または定量され得る。分子は、多相溶液(例えば、エマルジョンまたは懸濁液)を含めた溶液中で、または固体担体(例えば、粒子、毛細管、またはアッセイ容器)上で、検出または定量され得る。
【0093】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は、ルシフェラーゼ酵素との反応の結果として発生した発光の放射スペクトルを調整するために使用され得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、BRETを受ける受容体分子に安定な共有結合リンカーによって係留されていてもよく、その結果、反応の放射スペクトルは受容体分子の固有放射波長へとシフトし得る。エネルギー受容体には、限定されないが、小分子蛍光色素、例えばNCT、消光剤、蛍光粒子、例えば量子ドット、発光性金属錯体、及びその他任意の既知のエネルギー受容体が含まれる。
【0094】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は、小分子を定量するために使用され得る。いくつかの実施形態では、セレンテラジン(例えば、天然または既知のセレンテラジンまたは式(I)の化合物)を特定の生物化学的活性、例えばアポトーシスまたは薬物代謝のプローブとして使用することができる。いくつかの実施形態では、セレンテラジン濃度は、関心対象の特定酵素によって作用を受けることができる「プロセレンテラジン」または「プロ基質」によって、特定の酵素活性と関連付けられる。いくつかの実施形態では、プロセレンテラジンは、ルシフェラーゼと組み合わせられた場合に発光を直接支援することはできないが関心対象の特定酵素による触媒的プロセシングによってセレンテラジンに変換されることができる分子である。いくつかの実施形態では、当該手法を酵素、例えば、薬物代謝に使用されるもの、例えば、シトクロムP450酵素、モノアミン酸化酵素及びグルタチオンS転移酵素;ならびにアポトーシスに使用されるもの、例えばカスパーゼのために用いることができる。例えば、開裂可能な基、例えば6’-O-メチルを含有するようにセレンテラジン(例えば、天然または既知のセレンテラジンまたは式(I)の化合物)を改変することができる。いくつかの実施形態では、特定のシトクロムP450酵素と共にインキュベートされた場合に6’O-メチルが開裂し、プロセレンテラジンがセレンテラジンに変換され、それをルシフェラーゼで検出することができる。いくつかの実施形態では、プロセレンテラジンと、発光を支援するのに必要な他の成分、例えばルシフェラーゼなどの発光タンパク質とを組み合わせて単一の試薬及び均質なアッセイを提供することができる。例えば、試薬を試料に添加する場合、プロセレンテラジンがセレンテラジンに変換される時に発光が生じる。様々な実施形態では、プロセレンテラジンからのセレンテラジンの生成に関連付けられることができる他の酵素、小分子または他の細胞プロセスのために同様のアッセイを開発することができる。
【0095】
特定の実施形態では、生細胞において発光を検出するために式(I)の化合物を使用することができる。いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼを細胞内で(レポーターなどとして)発現させることができ、そして細胞をセレンテラジン(例えば式(I)の化合物)で処理することができるが、このセレンテラジンが培養下の細胞を透過し、ルシフェラーゼと反応し、発光を生じさせることになる。式(I)の化合物は、細胞透過性であることに加えて、細胞生存能の見地から天然セレンテラジンに匹敵する生体適合性を示す。いくつかの実施形態では、天然セレンテラジンの培地中での安定性を増大させることが知られている化学修飾を含有する式(I)の化合物を合成してより堅牢な生細胞ルシフェラーゼに基づくレポーターアッセイのために使用することができる。さらに他の実施形態では、ルシフェラーゼ及び式(I)の化合物を含有する試料(細胞、組織、動物などを含む)は、様々な顕微鏡観察法及びイメージング技術を用いて検査され得る。さらに他の実施形態では、生細胞レポーター系の一部として細胞内に分泌性ルシフェラーゼを発現させる。
【0096】
特定の実施形態では、本明細書において開示される式(I)の化合物はキットの一部として提供され得る。いくつかの実施形態では、キットは、1つ以上の(ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたはその両方の形態の)ルシフェラーゼと、セレンテラジンとを、好適な試薬、及び本明細書で開示するようなアッセイをユーザーが実施することを可能にする説明書と一緒に含み得る。セレンテラジンは、天然のもの、既知のもの、または本明細書において開示される式(I)の化合物のいずれかであり得る。キットはさらに、1つ以上の緩衝剤、例えば本明細書において開示されるものを含んでいてもよい。
【実施例
【0097】
4.実施例
実施例1.一般的合成
方法Iのための一般的手順:20mLバイアルの中に2-((3-ベンジル-5-フェニルピラジン-2-イル)アミノ)-2-(ジエトキシホスホリル)酢酸メチル(A)(1当量)、アルデヒド(v)(1.1当量)、及び12mLのメタノールを入れる。その溶液に1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(3当量)を添加する。反応混合物を室温で最大転化率に達するまで(2~6時間)撹拌する。反応の進行はLCMSによって追跡評価する。混合物を水中に注ぎ入れ、酢酸エチルで抽出し、MgSO4で乾燥させる。乾燥剤を濾別し、減圧下で溶媒を濃縮する。ジクロロメタンを溶離液として使用して残渣をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーに供する。対応する一般構造viのデヒドロセレンテラジンが単離され、さらなる精製なしで次のステップに使用される。
【0098】
デヒドロセレンテラジンviを25mLのジクロロメタン及び10mLのメタノールの中に溶解させ、0℃に冷却する。この溶液にNaBH4(3当量)を添加し、反応混合物を0℃で30分間撹拌する。反応混合物を50mLの0.1MのHClで失活させ、ジクロロメタンで抽出し、MgSO4で乾燥させる。乾燥剤を濾過によって除去し、減圧下で溶媒を濃縮し、ジクロロメタン/メタノールを溶離液として使用してシリカゲルで残渣を精製する。目標とするセレンテラジン類縁体が単離され、高真空で乾燥される。
【0099】
実施例2.TAK-0043の合成
TAK-0043は、以下に記載するとおりに調製した。
【0100】
実施例2A.tert-ブチル(6-(3-ホルミルフェノキシ)ヘキシル)カルバメート
【0101】
NaH(0.2g)のDMF(40mL)懸濁液に3-ヒドロキシベンズアルデヒド(0.5g)を添加した。2時間撹拌した後、N-Boc-6-ブロモヘキシルアミン(1.2g)を添加し、反応系を一晩撹拌した。その後、反応系を水とEtOAcとに分画し、相分離させ、有機相を水及び塩水で洗浄し、乾燥させ、濃縮した。得られた褐色油をシリカゲルクロマトグラフィーによってヘプタン中のEtOAcの勾配で精製して表題化合物を褐色油として得た(0.8g、61%)。1H NMR(300MHz,DMSO-d6) δ=9.95(s,1H),7.52-7.45(m,2H),7.40-7.39(m,1H),7.28-7.23(m,1H),6.74(t,J=5.5,1H),4.01(t,J=6.5,2H),2.89(q,J=7.4,2H),1.75-1.66(m,2H),1.44-1.22(m,15H);;ESI-MS(m/z) [M+H](C18H27NO4)実測322。
【0102】
実施例2B.tert-ブチル(6-(3-((8-ベンジル-3-オキソ-6-フェニル-3,7-ジヒドロイミダゾ[1,2-a]ピラジン-2-イル)メチル)フェノキシ)ヘキシル)カルバメート
【0103】
2-((3-ベンジル-5-フェニルピラジン-2-イル)アミノ)-2-(ジエトキシホスホリル)酢酸ベンジル(U.S.Ser.No.62/295,363に開示されている方法に従って調製したもの、0.3g)のMeOH(15mL)溶液に、tert-ブチル(6-(3-ホルミルフェノキシ)ヘキシル)カルバメート(0.2g)及びテトラメチルグアニジン(0.9mL)を添加した。反応系を20分間撹拌し、その後、EtOAcと水とに分画した。相分離させ、有機相を塩水で洗浄し、乾燥させ、そして濃縮した。得られた赤色固体をシリカゲルによってCH2Cl2中のMeOHの勾配で精製して、部分的に精製されたデヒドロセレンテラジンが赤色固体として得られたが、これをさらなる精製なしで続けて使用した。この赤色固体をCH2Cl2/MeOH(1/1、5mL)に溶解させ、過剰のNaBH4で処理した。30分間撹拌した後、溶液を水で失活させ、CH2Cl2で抽出し、乾燥させ、そして濃縮した。得られたセレンテラジンをシリカゲルでCH2Cl2中のMeOHの勾配で精製して表題化合物(0.15g、45%)を橙色油として得た。1H NMR(300MHz,CD2Cl2) δ=7.48-7.45(m,4H),7.31-7.22(m,9H),7.06(br s,1H),6.86(br s,2H),6.62(br s,1H),4.69(s,2H),4.40(s,2H),4.08(s,2H),3.81(br s,2H),3.00(q,J=6.4,2H),1.66(s,2H),1.45-1.27(m,20H)。
【0104】
実施例2C.2-(3-((6-アミノヘキシル)オキシ)ベンジル)-8-ベンジル-6-フェニルイミダゾ[1,2-a]ピラジン-3(7H)-オン
【0105】
tert-ブチル(6-(3-((8-ベンジル-3-オキソ-6-フェニル-3,7-ジヒドロイミダゾ[1,2-a]ピラジン-2-イル)メチル)フェノキシ)ヘキシル)カルバメート(0.14g)のCH2Cl2(15mL)溶液にTFA(1mL)を添加した。橙色溶液を1時間撹拌し、その後、トルエンを添加し、溶液を濃縮して表題化合物を琥珀色ガラス状物質(0.09g、80%)として得た。ESI MS(m/z) [M+H](C323442) 実測値507.2。
【0106】
実施例2D.TAK-0043
【0107】
2-(3-((6-アミノヘキシル)オキシ)ベンジル)-8-ベンジル-6-フェニルイミダゾ[1,2-a]ピラジン-3(7H)-オン(5mg)のMeOH(1mL)溶液に、NCT-テトラフルオロフェニルエステル(5mg)及びコリジン(10μL)を添加した。青色溶液を3日間撹拌し、その後、希薄TFA水で反応系を失活させ、得られた溶液を、移動相としてACNを使用する分取HPLCによって精製した。表題化合物が青色固体(0.5mg、5%)として単離された。TOF-HRMS(m/z) [M+](C676666) 実測値1051.5135。
実施例3.色素結合化合物の合成
【0108】
実施例3A.tert-ブチル(6-(2-フルオロ-4-ホルミルフェノキシ)ヘキシル)カルバメート(JRW-0797)
【0109】
3-フルオロ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド(200mg、1.43mmol)のアセトニトリル(20mL)溶液に、tert-ブチル(6-ブロモヘキシル)カルバメート(400mg、1.43mmol)及び炭酸セシウム(558mg、1.71mmol)を添加し、18時間75℃に加熱した。反応混合物を酢酸エチル及び水で希釈した。有機相をNaHCO3(飽和)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮して暗褐色油(470mg、粗生成物)を得た。ESI-MS(m/z) [M+H](C1826FNO4) 実測値340。
【0110】
実施例3B.tert-ブチル(Z)-(6-(4-((8-ベンジル-3-オキソ-6-フェニルイミダゾ[1,2-a]ピラジン-2(3H)-イリデン)メチル)-2-フルオロフェノキシ)ヘキシル)カルバメート(JRW-0798)
【0111】
2-((3-ベンジル-5-フェニルピラジン-2-イル)アミノ)-2-(ジエトキシホスホリル)酢酸メチル(200mg、0.43mmol)及びtert-ブチル(6-(2-フルオロ-4-ホルミルフェノキシ)ヘキシル)カルバメート(216mg、0.64mmol)のメタノール(5mL)溶液に、テトラメチルグアニジン(147mg、1.3mmol)を添加した。混合物を30分間撹拌した。反応系をジクロロメタンで希釈し、弱酸性水(HCl)中に注ぎ入れた。相分離させ、水相をジクロロメタンで抽出した。有機相を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。粗生成物をクロマトグラフ(DCM/MeOH)に供して黒色固体(250mg、粗生成物)を得た。
【0112】
実施例3C.tert-ブチル(6-(4-((8-ベンジル-3-オキソ-6-フェニル-3,7-ジヒドロイミダゾ[1,2-a]ピラジン-2-イル)メチル)-2-フルオロフェノキシ)ヘキシル)カルバメート(JRW-0799)
【0113】
tert-ブチル(Z)-(6-(4-((8-ベンジル-3-オキソ-6-フェニルイミダゾ[1,2-a]ピラジン-2(3H)-イリデン)メチル)-2-フルオロフェノキシ)ヘキシル)カルバメート(250mg、0.40mmol)のメタノール/ジクロロメタン(1:1、10mL)溶液を0℃に冷やした。水素化ホウ素ナトリウム(75mg、2.0mmol)を添加した。反応系を30分間撹拌した。反応系をジクロロメタンで希釈し、弱酸性水(HCl)中に注ぎ入れた。相分離させ、水相をジクロロメタンで抽出した。有機相を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。粗生成物をクロマトグラフ(DCM/MeOH)に供して橙色固体(108mg、2ステップを経て40%)を得た。ESI-MS(m/z) [M+H](C3741FN44) 実測値625。
【0114】
実施例3D.2-(4-((6-アミノヘキシル)オキシ)-3-フルオロベンジル)-8-ベンジル-6-フェニルイミダゾ[1,2-a]ピラジン-3(7H)-オン(JRW-0801)
【0115】
tert-ブチル-(6-(4-((8-ベンジル-3-オキソ-6-フェニル-3,7-ジヒドロイミダゾ[1,2-a]ピラジン-2-イル)メチル)-2-フルオロフェノキシ)ヘキシル)カルバメート(108mg、0.17mmol)をジクロロメタン(10mL)中に溶解させた溶液に、トリフルオロ酢酸(1mL)を添加した。混合物を1時間撹拌した。反応系をトルエンで希釈し、濃縮した。追加のトルエンを添加して再び濃縮(2X)して赤色泡状物を得た。粗生成物をメタノールに溶解させ、セライトを添加した。懸濁液を濃縮して粉体をクロマトグラフ(DCM/MeOH)に供して赤橙色泡状物(110mg、定量的)を得た。1H NMR(300MHz,CD3OD) δ7.81-7.58(m,3H),7.56-7.37(m,5H),7.35-7.19(m,3H),7.16-6.93(m,3H),4.42(s,2H),4.10(s,2H),4.01(t,J=6.2,2H),2.99-2.85(m,2H),1.92-1.39(m,8H);ESI-MS(m/z) [M+H](C3233FN42) 実測値525;HPLC 99.3%(AUC),TR 4.12分;UV(MeOH) λ433nm,ε6091。
【0116】
実施例3E.色素結合化合物
【0117】
上に描写されるNCT複合セレンテラジンの合成は、NCT-TFP及び実施例3Dからのアミンを使用してTAK-0043の合成(上記)に類似した方法で行うことができる。同様に、他のアミン反応性色素種を実施例3Dからのアミンに連結して類似したセレンテラジン色素複合体を生成することができる。
【0118】
実施例3F.(1-(4-((6-(4-((8-ベンジル-3-オキソ-6-フェニル-3,7-ジヒドロイミダゾ[1,2-a]ピラジン-2-イル)メチル)-2-フルオロフェノキシ)ヘキシル)アミノ)-4-オキソブチル)-11-エチル-2,2-ジメチル-3,4,8,9,10,11-ヘキサヒドロ-2H-ジピリド[3,2-b:2’,3’-i]フェノキサジン-1-イウム-4-イル)メタンスルホネート(TAK-0052)
【0119】
2-(4-((6-アミノヘキシル)オキシ)-3-フルオロベンジル)-8-ベンジル-6-フェニルイミダゾ[1,2-a]ピラジン-3(7H)-オン(3mg、0.006mmol)及びAtto655SE(3.5mg、0.006mmol)のCH2Cl2/EtOH(4mL)溶液に、コリジン(0.1mL)を添加した。混合物を3時間撹拌した。反応系を希薄TFA水で失活させ、得られた溶液を、移動相としてACNを使用する分取HPLCによって精製した。表題化合物が青色固体(5mg、85%)として単離された。TOF-HRMS(m/z) [M+](C5964FN77S) 実測値1034.4633。
実施例4.色素結合化合物の合成
【0120】
実施例4A.tert-ブチル(8-(2-フルオロ-4-ホルミルフェノキシ)オクチル)カルバメート(JRW-0898)
【0121】
ステップ1.tert-ブチル(8-ヒドロキシオクチル)カルバメート(JRW-0896)
【0122】
8-アミノオクタン-1-オール(1.0g、6.9mmol)のTHF(20mL)溶液に炭酸水素ナトリウム(飽和溶液、10mL)及び二炭酸ジ-tert-ブチル(1.8g、8.3mmol)を添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌し、その後、酢酸エチル及び水で希釈した。相分離させ、水相を酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。粗生成物をクロマトグラフ(DCM/MeOH)に供して白色固体(1.6g、94%)を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3) δ4.51(s,1H),3.66(t,J=6.6Hz,2H),3.18-3.08(m,2H),1.66-1.53(m,2H),1.46(s,11H),1.43-1.26(m,8H)。
【0123】
ステップ2.tert-ブチル(8-(2-フルオロ-4-ホルミルフェノキシ)オクチル)カルバメート(JRW-0898)
【0124】
3-フルオロ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド(0.91g、6.5mmol)のTHF(20mL)溶液に、tert-ブチル(8-ヒドロキシオクチル)カルバメート(1.60g、6.5mmol)、トリフェニルホスフィン(1.88g、7.2mmol)及び2-(イソブチリルオキシ)ジアゼン-1-カルボン酸イソプロピル(1.45g、7.2mmol)を滴加した。反応系を室温で7時間撹拌し、その後、酢酸エチル及び水で希釈した。相分離させ、水相を酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。粗生成物は白色固体(2.1g)であった。1H NMR(400MHz,CDCl3) δ9.87(d,J=2.1Hz,1H),7.69-7.56(m,2H),7.07(t,J=8.1Hz,1H),4.52(s,1H),4.13(t,J=6.5Hz,2H),3.18-3.07(m,2H),1.94-1.76(m,2H),1.57-1.42(m,13H),1.42-1.30(m,6H)。
【0125】
実施例4B.tert-ブチル(Z)-(8-(4-((8-ベンジル-3-オキソ-6-フェニルイミダゾ[1,2-a]ピラジン-2(3H)-イリデン)メチル)-2-フルオロフェノキシ)オクチル)カルバメート(TAK-0055)
【0126】
2-((3-ベンジル-5-フェニルピラジン-2-イル)アミノ)-2-(ジエトキシホスホリル)酢酸メチル(230mg、0.49mmol)及びtert-ブチル(8-(2-フルオロ-4-ホルミルフェノキシ)オクチル)カルバメート(200mg、0.54mmol)のメタノール(10mL)溶液に、テトラメチルグアニジン(170mg、1.5mmol)を添加した。混合物を30分間撹拌した。反応系をジクロロメタンで希釈し、弱酸性水(HCl)中に注ぎ入れた。相分離させ、水相をジクロロメタンで抽出した。有機相を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。粗生成物をクロマトグラフ(DCM/MeOH)に供して赤色固体(360mg、粗生成物)を得た。
【0127】
実施例4C.tert-ブチル(8-(4-((8-ベンジル-3-オキソ-6-フェニル-3,7-ジヒドロイミダゾ[1,2-a]ピラジン-2-イル)メチル)-2-フルオロフェノキシ)オクチル)カルバメート(TAK-0056)
【0128】
tert-ブチル(Z)-(8-(4-((8-ベンジル-3-オキソ-6-フェニルイミダゾ[1,2-a]ピラジン-2(3H)-イリデン)メチル)-2-フルオロフェノキシ)オクチル)カルバメート(310mg、0.48mmol)のメタノール/ジクロロメタン(1:1、20mL)溶液を0℃に冷やした。水素化ホウ素ナトリウム(90mg、2.4mmol)を添加した。反応系を50分間撹拌した。反応系をジクロロメタンで希釈し、弱酸性水(HCl)中に注ぎ入れた。相分離させ、水相をジクロロメタンで抽出した。有機相を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。粗生成物をクロマトグラフ(DCM/MeOH)に供して橙色固体(280mg、2ステップを経て95%)を得た。ESI-MS(m/z) [M+H](C3945FN44) 実測値652。
【0129】
実施例4D.2-(4-((8-アミノオクチル)オキシ)-3-フルオロベンジル)-8-ベンジル-6-フェニルイミダゾ[1,2-a]ピラジン-3(7H)-オン(TAK-0057)
【0130】
tert-ブチル(6-(4-((8-ベンジル-3-オキソ-6-フェニル-3,7-ジヒドロイミダゾ[1,2-a]ピラジン-2-イル)メチル)-2-フルオロフェノキシ)オクチル)カルバメート(280mg、0.43mmol)をジクロロメタン(15mL)に溶解させた溶液に、トリフルオロ酢酸(1mL)を添加した。混合物を1時間撹拌した。反応系をトルエンで希釈し、濃縮した。追加のトルエンを添加して再び濃縮(2X)して褐色ゴム状物を得た。粗生成物をアセトニトリルに溶解させ、得られた溶液を、移動相としてACNを使用する分取HPLCによって精製した。生成物が黄色固体(170mg、71%)として単離された。1H NMR(400MHz,CD3OD) δ7.88(s,1H),7.71-7.68(m,2H),7.51-7.42(m,5H),7.32(t,J=7.3Hz,2H),7.25(t,J=7.3Hz,1H),7.13-7.05(m,2H),6.98(t,J=8.4Hz,1H),4.47(s,2H),4.14(s,2H),4.00(t,J=5.8Hz,2H),2.92(t,J=8.0Hz,2H),1.81-1.74(m,2H),1.70-1.62(m,2H),1.54-1.47(m,2H),1.43-1.40(m,6H);13C NMR(100MHz,CD3OD) δ153.6,151.2,145.7,145.6,136.3,132.5,131.2,129.4,128.8,128.5,128.4,126.9,126.6,126.5,124.2,116.0,115.8,114.6,108.2,68.9,39.3,34.3,31.2,28.9,28.8,28.7,27.2,26.0,25.6;ESI-MS(m/z) [M+H](C3437FN42) 実測値553,HRMS 実測値553.2954。
【0131】
実施例4E.(1-(4-((8-(4-((8-ベンジル-3-オキソ-6-フェニル-3,7-ジヒドロイミダゾ[1,2-a]ピラジン-2-イル)メチル)-2-フルオロフェニル)オクチル)アミノ)-4-オキソブチル)-11-エチル-2,2-ジメチル-3,4,8,9,10,11-ヘキサヒドロ-2H-ジピリド[3,2-b:2’,3’-i]フェノキサジン-1-イウム-4-イル)メタンスルホネート
【0132】
上に描写されるAtto655複合セレンテラジンの合成は、Atto655SE及び実施例4Dからのアミンを使用してTAK-0043の合成(上記)に類似した方法で行うことができる。同様に、他のアミン反応性色素種を実施例4Dからのアミンに連結して類似したセレンテラジン色素複合体を生成することができる。例示的な色素には、他のAtto色素、例えばAtto610及びAtto680、ならびにフルオレセイン及びローダミン色素、例えばオレゴングリーンまたはテトラメチルローダミンも含まれる。
【0133】
実施例5.TAK-0043及びTAK-0052のスペクトル特性
セレンテラジン/ルシフェラーゼ反応において放射スペクトルをシフトさせることができる潜在的セレンテラジン類縁体としてTAK-0043を試験した。精製NanoLuc(登録商標)酵素(Promega E499a)及びNanoLuc-Halotag融合タンパク質酵素の2μMから始まる希釈系列をOptiMEM+0.1%FBSで調製した。2μMの酵素希釈液50ulと、50μlの、NanoGlo(登録商標)緩衝液中2μM及び20μMのTAK-0043とを3反復で合わせた。3nm増分を用いてTecan-M1000でこれらの試料を速やかに読み取ってスペクトルプロファイルを得た。3つのスペクトル読取結果の平均を図2A~2Cに報告する。OptiMEM+0.1%FBS中6.6μMのNanoLuc(登録商標)酵素50μl及びNanoLuc-Halotag融合タンパク質酵素と、50μlの、NanoGlo(登録商標)緩衝液中2μMのTAK-0043とを3反復で合わせることによって、別のスペクトル測定を完了した。この試料も、3nM増分を用いてTecan M-1000で読み取った。結果を図2Dに示す。TAK-0043及び使用した酵素のどの濃度においても放射波長は、放射光子の95%超がNCT放射にシフトし、618nmで最大となることを示している。460nmにあるセレンテラジン放射のピークはほとんど見えない。
【0134】
セレンテラジン/ルシフェラーゼ反応において放射スペクトルをシフトさせることができる潜在的セレンテラジン類縁体としてTAK-0052を試験した。フリマジン及びTAK-0052をNanoGlo(登録商標)緩衝液で50uMの濃度に希釈した。NanoLuc(登録商標)酵素をTBS+0.01%BSAで2μM及び0.2nMの濃度に希釈した。3反復で2μMのNanoLuc(登録商標)試料50μlを50μlのTAK-0052を合わせ、0.2nMの溶液50μlを3反復でフリマジン溶液50μlと合わせた。Tecan-M1000で3nm波長増分を測定することによってスペクトルプロファイルを得た。結果を図3Aに示す。
【0135】
基質滴定:フリマジン及びTAK-0052を、NanoGlo(登録商標)緩衝液で100μMに、またはTBS+0.01%BSAで50μMに希釈した。各緩衝液タイプについて出発濃度から2倍段階希釈液を調製した。その後、50μlの各基質滴定を、TBS+0.01%BSAで4ng/mlに希釈したNanoLuc(登録商標)ルシフェラーゼ50μlに添加した。試料を3分間インキュベートし、その後、GloMax(登録商標)-Multi+発光光度計を使用して発光を測定した。結果を図3Bに示す。
【0136】
自家発光:フリマジン及びTAK-0052を、NanoGlo(登録商標)緩衝液で100μMに、またはTBS+0.01%BSAで50μMに希釈した。50μlの各基質緩衝液合剤を50μlのTBS+0.01%BSAに添加した。試料を3分間インキュベートし、その後、GloMax(登録商標)-Multi+発光光度計を使用して発光を測定した。結果を図3Cに示す。
【0137】
実施例6.発光特性
発光アッセイ手順:精製NanoLuc(登録商標)(Promega E499a)及び精製NanoLuc-Halotag融合体の2μMの濃度から始まる希釈系列をOptiMEM+0.1%FBSで調製した。各酵素の3倍段階希釈液(700μL中300μL)をOptiMEM+0.1%FBSで調製した。TAK-0043をNanoGlo(登録商標)緩衝液で20μMの濃度に希釈した。TAK-0043を含んでいるNanoGlo(登録商標)緩衝液50μLと、50μLの各酵素希釈液とを合わせた。試料を室温で3分間インキュベートし、その後、GloMax(登録商標)-Multi+発光光度計で読み取った。結果を図4に示す。
【0138】
実施例7.細胞透過性及び生物発光活性
細胞培養:HeLa及びHEK293細胞は、0.3mg/mlのグルタミン、100IU/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、及び10%のウシ胎仔血清を含有するDMEM中で、5%CO2中で37℃で維持した。ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、Opti-MEM、ペニシリン/ストレプトマイシン、及びトリプシン-EDTAはLife Technologies(Carlsbad)から購入する。ウシ胎仔血清(FBS)はHyClone(GE Healthcare)から購入する。マイクロタイタープレートはCorningから購入した。
【0139】
細胞に基づくルシフェラーゼアッセイ:CMVプロモーターの制御下でNANOLUC(登録商標)ルシフェラーゼを安定的に発現するHEK293細胞を含んでいる100μlの成長培地(10%のFBSが補給されたDMEM)を、白いTC処理済み96ウェルプレートのウェルの中にウェル1個あたり10000細胞の密度で播種し、24時間インキュベートした。その後、示されている基質を12.5μMで含有する100μlのOptiMEMで、成長培地を置き換えた。発光信号は、GLOMAX(登録商標)Discoverマルチモード検出プレートリーダー(Promega)を使用して基質添加後すぐに分析した。
【0140】
細胞生存能アッセイ:HEK293またはHeLa細胞を含んでいる100μlの成長培地(10%のFBSが補給されたDMEM)を、白いTC処理済み96ウェルプレートのウェルの中にウェル1個あたり10,000細胞の密度で播種し、24時間インキュベートした。その後、示されている化合物の段階希釈液を含有する100μlのOptiMEMで、成長培地を置き換えた。次いで、24時間にわたるインキュベートの後に、CELLTITER(登録商標)Green細胞生存能アッセイ(Promega)を製造者の指示に従って使用して細胞生存能を測定した。発光測定は全て、GLOMAX(登録商標)Discoverマルチモード検出プレートリーダー(Promega)で実施した。
【0141】
上記の詳細な説明及びそれに付随する実施例が単に例示的なものであるに過ぎず、別記の特許請求の範囲及びその均等物によってのみ規定されるものである本発明の範囲に対する限定とみなされるべきでない、ということは理解される。
【0142】
当業者には、開示されている実施形態に対する様々な変更及び改変が明らかであろう。そのような変更及び改変は、限定されないが本発明の化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、組成物、製剤または使用方法に関するものを含めて、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなくなされ得る。

本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕式(I)の化合物
(I)
〔式(I)中、
1
であり;
2 は、存在しないかまたは、アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、-OH及び-NH 2 からなる群から選択される置換基であり;
1 は、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環またはシクロアルキルであり;
1 は、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはヘテロアルキルであり;
1 は、エネルギー受容体であり;
qは、0、1または2であり;
前記アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環及びシクロアルキルは、出現毎に独立して、置換型または無置換型である〕
またはその互変異性体もしくは薬学的に許容できる塩。
〔2〕A 1 がアリール、ヘテロアリール、ヘテロ環またはシクロアルキルであり、
前記アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環及びシクロアルキルが独立して
0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の、各々独立してハロゲン、=O、=S、シアノ、ニトロ、フルオロアルキル、アルコキシフルオロアルキル、フルオロアルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキレン、アリールオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアルキル、アリールアミノ、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、スルフィニル、-COOH、ケトン、アミド、カルバメート、シリル、置換型シリル、t-ブチルジメチルシリル、アルキルスルファニル、スルファニル及びアシルからなる群から選択される置換基
で置換されている、前記〔1〕に記載の化合物。
〔3〕A 1 が、
0、1、2、3または4個の、各々独立してハロゲン、=O、=S、シアノ、ニトロ、フルオロアルキル、アルコキシフルオロアルキル、フルオロアルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキレン、アリールオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアルキル、アリールアミノ、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、スルフィニル、-COOH、ケトン、アミド、カルバメート、シリル、置換型シリル、t-ブチルジメチルシリル、アルキルスルファニル、スルファニル及びアシルからなる群から選択される置換基
で任意選択的に置換されたフェニルである、前記〔1〕または前記〔2〕に記載の化合物。
〔4〕A 1 が、0、1、2、3または4個の置換基で任意選択的に置換されたフェニルであり、各置換基が独立してハロゲンである、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔5〕T 1 が、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはヘテロアルキルであり、
前記アルキル、アルケニル、アルキニル及びヘテロアルキルが独立して
0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の、各々独立してハロゲン、=O、=S、シアノ、ニトロ、フルオロアルキル、アルコキシフルオロアルキル、フルオロアルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキレン、アリールオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアルキル、アリールアミノ、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、スルフィニル、-COOH、ケトン、アミド、カルバメート、シリル、置換型シリル、t-ブチルジメチルシリル、アルキルスルファニル、スルファニル及びアシルからなる群から選択される置換基
で置換されている、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔6〕T 1 がヘテロアルキルである、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔7〕T 1 が、
-(O-CR 1a 1b -CR 1a 1b m -Q-、または
-O-(CR 1a 1b n -Q-
であり、式中、
mが1~30であり;
nが1~30であり;
Qが、出現毎に独立して、-NH-CO-、-CO-NH-、-CO-O-、-O-CO-、または-O-CO-NH-であり;
1a 及びR 1b が、出現毎に独立して水素またはC 1 -C 4 アルキルである、
前記〔1〕に記載の化合物。
〔8〕T 1 が、
または
である、前記〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔9〕R 2 が存在しない、前記〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔10〕前記エネルギー受容体が、蛍光色素、消光剤、蛍光粒子(例えば量子ドット)、発光性金属錯体、前記のいずれかの組み合わせ、または前記のいずれかの類縁体である、前記〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔11〕前記エネルギー受容体が蛍光性Non-ChloroTOM(NCT)色素である、前記〔1〕~〔10〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔12〕前記エネルギー受容体が式:
または
を有する、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔13〕式(I-a)
(I-a)
〔式(I-a)中、R 3 は、存在しないかまたはハロゲンである〕
を有する、前記〔1〕に記載の化合物。
〔14〕式(I-b)
(I-b)
〔式(I-b)中、nは、1~30から選択される整数である〕
を有する、前記〔1〕に記載の化合物。
〔15〕nが6または8である、前記〔14〕に記載の化合物。
〔16〕式(I-c)または式(I-d)
(I-c)、
(I-d)
を有する、前記〔1〕に記載の化合物。
〔17〕TAK-0043またはTAK-0052

である、前記〔1〕に記載の化合物。
〔18〕前記〔1〕~〔17〕のいずれか1項に記載の化合物を含む、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)系。
〔19〕試料中の酵素を検出する方法であって、
(a)前記試料を前記〔1〕~〔17〕のいずれか1項に記載の化合物と接触させること;及び
(b)前記試料における発光を検出すること
を含む、前記方法。
〔20〕試料における発光を検出する方法であって、
(a)試料を前記〔1〕~〔17〕のいずれか1項に記載の化合物と接触させること;
(b)前記試料中にセレンテラジン利用ルシフェラーゼが存在していない場合に前記試料をセレンテラジン利用ルシフェラーゼと接触させること;及び
(c)発光を検出すること
を含む、前記方法。
〔21〕前記試料が生細胞を含有する、前記〔20〕に記載の方法。
〔22〕前記試料がセレンテラジン利用ルシフェラーゼを含有する、前記〔20〕に記載の方法。
〔23〕遺伝子導入動物における発光を検出する方法であって、
(a)前記〔1〕~〔17〕のいずれか1項に記載の化合物を遺伝子導入動物に投与すること;及び
発光を検出すること
を含み、前記遺伝子導入動物がセレンテラジン利用ルシフェラーゼを発現する、前記方法。
図1
図2-1】
図2-2】
図3A
図3B
図3C
図4
【配列表】
0007200102000001.app