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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】土壌造粒物の耐水性向上方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/32 20060101AFI20221226BHJP
   A01N 65/08 20090101ALI20221226BHJP
   A01N 65/20 20090101ALI20221226BHJP
   A01N 65/34 20090101ALI20221226BHJP
   A01N 65/40 20090101ALI20221226BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
C09K17/32 H
A01N65/08
A01N65/20
A01N65/34
A01N65/40
A01P21/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019549296
(86)(22)【出願日】2018-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2018038519
(87)【国際公開番号】W WO2019078209
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2017200921
(32)【優先日】2017-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】田ノ上 明宏
(72)【発明者】
【氏名】丸野 裕司
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105918364(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107197883(CN,A)
【文献】特開2004-285033(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104798487(CN,A)
【文献】特開2013-116996(JP,A)
【文献】特開昭61-289820(JP,A)
【文献】特開2016-017000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 65/00
A01P 21/00
A01G 7/00
C09K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤシ科アブラヤシ属、マメ科マメ亜科、クルミ科、バラ科サクラ属、オリーブ連から選ばれる植物の種子殻成分〔以下、(a)成分という〕の1種以上の成分を含有する植物生育促進剤を用いて土壌を団粒化する、土壌造粒物の耐水性向上方法であって、
(a)成分が粒状物であり、
前記粒状物の平均粒径が1,000μm以下である、
土壌造粒物の耐水性向上方法。
【請求項2】
(a)成分が、パームヤシ硬質殻(PKS)、ピーチ種子殻、梅種子殻、プルーン種子殻、ピーナッツ種子殻、クルミ種子殻、スモモ種子殻及びオリーブ種子殻から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の土壌造粒物の耐水性向上方法。
【請求項3】
(a)成分が、パームヤシ硬質殻(PKS)である、請求項1に記載の土壌造粒物の耐水性向上方法。
【請求項4】
(a)成分が、リグニンを40質量%以上60質量%以下含有する、請求項1~3の何れか1項記載の土壌造粒物の耐水性向上方法。
【請求項5】
前記粒状物の平均粒径が0.1μm以上、200μm以下である、請求項1~4の何れか1項記載の土壌造粒物の耐水性向上方法。
【請求項6】
ヤシ科アブラヤシ属、マメ科マメ亜科、クルミ科、バラ科サクラ属、オリーブ連から選ばれる植物の種子殻成分〔以下、(a)成分という〕の1種以上の成分を含有する植物生育促進剤を用いる、土壌硬度低減方法であって、
(a)成分が粒状物であり、
前記粒状物の平均粒径が1,000μm以下である、
土壌硬度低減方法。
【請求項7】
(a)成分が、パームヤシ硬質殻(PKS)、ピーチ種子殻、梅種子殻、プルーン種子殻、ピーナッツ種子殻、クルミ種子殻、スモモ種子殻及びオリーブ種子殻から選ばれる1種以上である、請求項6に記載の土壌硬度低減方法。
【請求項8】
(a)成分が、パームヤシ硬質殻(PKS)である、請求項6に記載の土壌硬度低減方法。
【請求項9】
(a)成分が、リグニンを40質量%以上60質量%以下含有する、請求項6~8の何れか1項記載の土壌硬度低減方法。
【請求項10】
前記粒状物の平均粒径が0.1μm以上、200μm以下である、請求項6~9の何れか1項記載の土壌硬度低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物生育促進剤、及び植物の育成方法に関する。
【0002】
背景技術
植物が生長するには種々の栄養要素が必要であるが、そのいくつかの要素が不足すると植物の生育に支障を来すことが知られている。例えば、肥料三大要素として窒素は蛋白質の成分元素であり、リンは核酸やリン脂質の構成元素だけでなくエネルギー代謝や物質の合成・分解反応にも重要な役割を果たしており、また、カリウムは物質代謝や物質移動の生理作用がある。これら主要成分の不足により全般的に植物の生育は貧弱になる。カルシウムは、植物体及び細胞を構成する重要な成分であり、また代謝系のバランスを維持する為にも重要な働きをしているため、カルシウムが欠乏すると生理障害をおこす。その他にもMg、Fe、S、B、Mn、Cu、Zn、Mo、Cl、Si、Na等、植物には種々の栄養素が必要である。
【0003】
これら窒素、リン、カリウム等の栄養成分は元肥や追肥の形で施肥されたり、液体肥料を希釈して土壌灌注したり葉面散布で与えられたりしている。これらの肥料は、植物の生長に必要な不可欠のものであるが、ある程度の濃度以上に与えても、植物の生長性及び収量の向上には貢献できない。
【0004】
しかし、農作物の生長を促進し、単位面積当たりの収穫量を増やして増収をはかることは農業生産上重要な課題であり、そのために必要な種々の植物生長調節剤が開発利用されている。ジベレリンやオーキシン等に代表される植物生長調節剤は、発芽、発根、伸長、花成り、着果等生育、形態形成反応の調節のために用いられているが、これらの物質の作用は多面的かつ複雑であり、用途が限定されている。
【0005】
従来、農作物の生長促進につながると考えられる技術が種々提案されている。農作物を栽培する圃場では、土壌の性質は生産性などの観点で重要な因子であり、土壌の性質を改良して生産性を高める検討がなされている。その際、植物系材料を用いることも検討されている。
特開昭61-289820号公報には、椰子殻をその表皮と硬質内殻とが付着した状態で、不定形に破砕切断したものを大小別に選別区分して包装した土壌改良剤が記載されている。
特開平9-302340号公報には、椰子皮の繊維質を主成物とする土壌改良剤が記載されている。
特開平11-50052号公報には、ヤシ殻ダストに、ヤシ殻チップ及びヤシ殻繊維を混合した土壌膨軟化剤が記載されている。
特開2000-23560号公報には、培土として、ココヤシダスト、樹皮叩解物およびおがくずからなる群から選ばれてなる少なくとも1種の培土が記載されている。
特開2003-192484号公報には、ココヤシの実の中果皮を粉砕した粉砕物もしくはその発酵物などの有機質物質と、中和剤とを含有することを特徴とする植物の成長促進剤が記載されている。
【0006】
発明の概要
本発明は、植物に薬害等をもたらさず、農作物等の植物に対して優れた生育促進効果を示す植物生育促進剤を提供する。
【0007】
本発明は、ヤシ科アブラヤシ属、マメ科マメ亜科、クルミ科、バラ科サクラ属、オリーブ連から選ばれる植物の種子殻成分〔以下、(a)成分という〕の1種以上の成分を含有する、植物生育促進剤に関する。
【0008】
本発明は、パームヤシ硬質殻を含有する、植物生育促進剤を含む。
【0009】
また、本発明は、前記本発明の植物生育促進剤を含有する土壌で植物を栽培する、植物の育成方法に関する。
【0010】
本発明によれば、植物に薬害等をもたらさず、農作物等の植物に対して優れた生育促進効果を示す植物生育促進剤及びその製造方法、並びに植物の育成方法が提供される。本発明の植物生育促進剤を、例えば農作物に適用することで、収量を向上できる。
【0011】
発明を実施するための形態
<植物生育促進剤>
本発明の植物生育促進剤は、ヤシ科アブラヤシ属、マメ科マメ亜科、クルミ科、バラ科サクラ属、オリーブ連から選ばれる植物の種子殻成分〔(a)成分〕を含有する。(a)成分は、1種、又は2種以上、例えば2種を用いることができる。
【0012】
(a)成分でいう種子殻成分は、種子(胚珠)を保護する外殻である、さや、殻などとして知られているものであってよい。種子殻成分は、種子の成分が含まれていてもよい。
【0013】
ヤシ科アブラヤシ属の種子殻成分としては、パームヤシの種子殻成分が挙げられる。本明細書において、パームヤシ種子殻成分は、パームヤシ硬質殻と同義である。すなわち、ヤシ科アブラヤシ属の種子殻成分としては、パームヤシ硬質殻が挙げられる。
マメ科マメ亜科の種子殻成分としては、大豆、ササゲ、ピーナッツ、エンドウ、キマメ、ナタマメ、ゼオカルパマメ、タヌキマメ、ハッショウマメ等の植物の種子殻成分が挙げられる。
クルミ科の種子殻成分としては、オニグルミ、クルミ、サワグルミ、シナサワグルミ、シナノグルミ、ノグルミ、ペカン等の植物の種子殻成分が挙げられる。
バラ科サクラ属の種子殻成分としては、核果類として知られている植物の種子殻成分、例えば、ウメ、モモ、スモモ、アンズ、サクランボ、ナツメ、マンゴー、プルーン等の植物の種子殻成分が挙げられる。
オリーブ連(Subtribe Oleinae)の種子殻成分としては、オリーブ等、オリーブ属(Genus Olea)に属する植物の種子殻成分が挙げられる。
【0014】
(a)成分としては、パームヤシ硬質殻、ピーチ種子殻、梅種子殻、プルーン種子殻、ピーナッツ種子殻、クルミ種子殻、スモモ種子殻及びオリーブ種子殻から選ばれる1種以上の成分が、好ましく挙げられる。
パームヤシ硬質殻を含有する植物生育促進剤は、本発明の好ましい態様である。
【0015】
パームヤシ硬質殻は、例えば、パームヤシの実の果実と果仁から油を絞った後に残る殻として入手できる。以下、パームヤシ硬質殻をPKSという場合もある。
【0016】
ピーチ種子殻とは、例えば、ピーチの果実から果肉部と種の仁を取り除いた後に残る殻である。
梅種子殻とは、例えば、梅の果実から果肉部と種の仁を取り除いた後に残る殻である。
プルーン種子殻とは、例えば、プレーンの果実から果肉部と種の仁を取り除いた後に残る殻である。
ピーナッツ種子殻とは、例えば、ピーナッツの種子から実(豆)を取り除いた後に残る殻である。
クルミ種子殻とは、例えば、クルミの仮果から果肉部と種子(仁)を除いた後に残る殻(内果皮)である。
スモモ種子殻とは、例えば、スモモの果実から果肉部と種の仁を取り除いた後に残る殻である。
オリーブ種子殻とは、例えば、オリーブの果実から果実部(油分を含む)と種の仁を取り除いた後に残る殻である。
【0017】
(a)成分の種子殻成分は、果肉等の可食部や油脂原料などの有用部位を除去した殻であり、廃棄されるのが一般的である。
【0018】
本発明は、PKSなどの(a)成分が、土壌を改質し農作物などの植物の収量を向上させることを見出したものである。後述の比較例で示したように、植物系バイオマスとして知られている他の物質、例えばサトウキビバガスなどでは、土壌の改質効果による植物の収量の向上は認められず、PKSなどの(a)成分による効果は、本発明により見出された当業者には予想外の効果である。本発明の促進剤では、(a)成分、例えばPKSが土壌に化学的に作用した結果、土壌が改質されているものと推察される。
【0019】
(a)成分、例えばPKSは、リグニンを、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下含有する。パームヤシ硬質殻中のリグニン含有量は、クラーソン・リグニン法によって求める。すなわち、TAPPI公式分析法T222om-83に従って、酸不溶性リグニン率と酸可溶性リグニン率の和で全体のリグニン含有量を算出する。
【0020】
(a)成分、例えばPKSは、粉砕などにより粒状物とすることで、原体(未粉砕)のまま土壌に供給するよりも土壌に親和しやすくなるため、土壌を改質して植物のより健全な生育に貢献するものと推察される。そのため、本発明では、(a)成分、例えばPKSは粒状物であることが好ましい。すなわち、本発明の植物生育促進剤は、(a)成分、例えばPKSの粒状物を含有することが好ましい。以下、(a)成分の粒状物を粒状(a)成分という場合もある。粒状(a)成分がリグニンを前記範囲で含有してもよい。粒状(a)成分は(a)成分の粉砕物であってもよい。また、以下、PKSの粒状物をPKS粒状物という場合もある。PKS粒状物がリグニンを前記範囲で含有してもよい。PKS粒状物はPKSの粉砕物であってもよい。
【0021】
粒状(a)成分、例えばPKSの粒状物の平均粒径は、土壌粒状物の耐水性及び生育促進の観点から、好ましくは1,000μm以下、より好ましくは600μm以下、更に好ましくは500μm以下、より更に好ましくは350μm以下、より更に好ましくは250μm以下、より更に好ましくは200μm以下であり、そして、前記粒状物の生産性の観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1.0μm以上、更に好ましくは10μm以上であり、前記粒状物の取扱い性の観点から、更に好ましくは40μm以上、更に好ましくは80μm以上である。なお、粒状(a)成分、例えばPKS粒状物の平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA-950」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定する。
【0022】
粒状(a)成分、例えばPKS粒状物は、パームヤシ硬質殻を、粉砕機等、公知の粉砕手段で粉砕して得ることができる。(a)成分、例えばPKSの粉砕に用いられる粉砕機は、特に制限はなく、例えば、高圧圧縮ロールミルや、ロール回転ミル等のロールミル、リングローラーミル、ローラーレースミル又はボールレースミル等の竪型ローラーミル、転動ボールミル、振動ボールミル、振動ロッドミル、振動チューブミル、遊星ボールミル又は遠心流動化ミル等の容器駆動媒体ミル、塔式粉砕機、攪拌槽式ミル、流通槽式ミル又はアニュラー式ミル等の媒体攪拌式ミル、高速遠心ローラーミルやオングミル等の圧密せん断ミル、乳鉢、石臼、マスコロイダー、フレットミル、エッジランナーミル、ナイフミル、ピンミル、カッターミル等が挙げられる。
これらの中では、(a)成分、例えばPKSの粉砕効率、及び生産性の観点から、好ましくは、容器駆動式媒体ミル又は媒体攪拌式ミル、より好ましくは、容器駆動式媒体ミル、更に好ましくは、振動ボールミル、振動ロッドミル又は振動チューブミル等の振動ミル、更に好ましくは、振動ロッドミルである。
【0023】
粉砕方法としては、バッチ式、連続式のどちらでもよい。
粉砕に用いる装置及び/又は媒体の材質としては、特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、チッ化珪素、ガラス等が挙げられるが、セルロース含有原料の粉砕効率の観点から、鉄、ステンレス、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素が好ましく、更に工業的な利用の観点から、鉄又はステンレスがより好ましい。
【0024】
(a)成分、例えばPKSの粉砕効率の観点から、用いる装置が振動ミルであって、媒体がロッド又はボールであることが好ましい。
媒体がロッドの場合には、ロッドの外径は、効率的な粉砕の観点から、好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上、更に好ましくは20mm以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下、更に好ましくは40mm以下である。
媒体がボールの場合は、ボールの外径としては、効率的な粉砕の観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは1mm以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下である。
【0025】
媒体の充填率は、振動ミルの機種により好適な範囲が異なるが、効率的な粉砕の観点から、好ましくは10容量%以上、より好ましくは30容量%以上、更に好ましくは50容量%以上であり、そして好ましくは95容量%以下、より好ましくは90容量%以下、更に好ましくは70容量%以下である。ここで充填率とは、振動ミルの攪拌部の容器の容積に対する媒体の体積をいう。
粉砕の時間は、用いる粉砕機や使用するエネルギー量等によって変わるが、植物系バイオマスの微細化の観点から、通常1分以上、好ましくは3分以上であり、そして、植物系バイオマスの微細化の観点及び経済性の観点から、通常12時間以下、好ましくは3時間以下、より好ましくは1時間以下、更に好ましくは12分以下である。
【0026】
また、(a)成分、例えばPKSの粉砕効率向上、及び生産効率向上(生産時間の短縮)の観点から、(a)成分、例えばPKSを、塩基性化合物の存在下で粉砕処理することができる。当該処理後、好ましくは酸により中和する。
粉砕処理に用いられる塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、酸化ナトリウム、酸化カリウムなどのアルカリ金属酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属酸化物、硫化ナトリウム、硫化カリウムなどのアルカリ金属硫化物、硫化マグネシウム、硫化カルシウムなどのアルカリ土類金属硫化物、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムなどの水酸化四級アンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、酵素糖化率向上の観点から、好ましくは、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物であり、より好ましくは、アルカリ金属水酸化物、更に好ましくは、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。これらの塩基性化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
粉砕処理で用いられる塩基性化合物の量は、(a)成分、例えばPKS中のホロセルロースをすべてセルロースとして仮定した場合に、該セルロースを構成するアンヒドログルコース単位(以下「AGU」と称する場合がある。)1モルあたり、好ましくは0.01倍モル以上、より好ましくは0.05倍モル以上、更に好ましくは0.1倍モル以上であり、そして、塩基性化合物の中和及び/又は洗浄容易性の観点、及び塩基性化合物のコストの観点から、好ましくは10倍モル以下、より好ましくは8倍モル以下、更に好ましくは5倍モル以下、更に好ましくは1.5倍モル以下である。
【0028】
粉砕処理時の水分量は、(a)成分、例えばPKSの乾燥質量に対して好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、そして好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
粉砕処理時の水分量は、(a)成分、例えばPKSの乾燥質量に対する水分量を意味し、乾燥処理などにより(a)成分、例えばPKS、塩基性化合物に含まれる水分量を低減することや、粉砕処理時に水を添加して水分量を上げることなどにより、適宜調整することができる。
【0029】
粉砕処理後に得られる粒状(a)成分、例えばPKS粒状物の平均粒径は、好ましくは1,000μm以下、より好ましくは600μm以下、更に好ましくは350μm以下であり、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1.0μm以上であり、更に好ましくは10μm以上である。
【0030】
本発明により、(a)成分、例えばPKSを粉砕して粒状物を得る、粒状(a)成分、例えばPKS粒状物を含有する植物生育促進剤の製造方法が提供される。(a)成分、例えばPKSの粉砕は前記の通り行うことができる。また、粒状物の平均粒径も前記範囲とすることができる。
【0031】
(a)成分、例えばPKS、更に粒状(a)成分、例えばPKS粒状物は、水処理を施したものが好ましい。
水処理は、(a)成分、例えばPKSに、水を含む媒体(以下、水性媒体という)を接触させて行う。すなわち、水処理は、水接触処理である。水性媒体は、水又は水を含む媒体である。水性媒体のpHは、好ましくは6以上9以下、より好ましくは6以上8以下である。水性媒体の温度は、好ましくは25℃以上、より好ましくは35℃以上、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは45℃以下である。(a)成分、例えばPKSと水性媒体との接触時間は、好ましくは1時間以上48時間以下である。水性媒体の量は、(a)成分、例えばPKS100質量部に対して、200質量部以上2,000質量部以下が好ましい。
水処理の一例として、次の方法が挙げられる。粒状の(a)成分、例えば粒状のPKS 100質量部と、35℃~45℃の水、例えばイオン交換水200~2,000質量部とを混合して分散体とする。分散体の温度を保ちながら、1~48時間、静置または好ましくは撹拌する。静置または撹拌後、ろ過等によって水性媒体を除去して固形分である残渣を得、好ましくは固形分である残渣を乾燥して、水処理後の(a)成分、例えばPKSの粒状物を得る。
水処理は、(a)成分、例えばPKSと水性媒体とを混合すること、混合後、(a)成分、例えばPKSを水性媒体から分離すること、を含んでよい。
本発明により、(a)成分、例えばPKSを、水を含む媒体で処理する水処理工程を有する、植物生育促進剤の製造方法が提供される。水性媒体のpH、水性媒体の温度、(a)成分、例えばPKSと水性媒体との接触時間は前記の通りである。この製造方法は、前記水処理工程の後に、(a)成分、例えばPKSを水性媒体から分離する分離工程を有することが好ましい。
本発明の植物生育促進剤では、(a)成分、例えばPKSは、水処理物であってよい。すなわち、本発明の植物生育促進剤としては、(a)成分、例えばPKSの水処理物を含有する植物生育促進剤が挙げられる。(a)成分、例えばPKSの水処理物は、(a)成分、例えばPKSを前記のように水性媒体で処理した後の残渣として得られる。
【0032】
また、(a)成分、例えばPKS、更に粒状(a)成分、例えばPKS粒状物は、親水化などの処理を施したものであってもよい。(a)成分、例えばPKSの親水化粒状物は、粒状(a)成分、例えばPKS粒状物を、親水化処理、具体的には、アルカリ処理、熱水処理(前記水処理よりも高温での処理)、酸処理、溶媒処理、これらを組み合わせた処理をして得ることができる。例えば、本発明の植物生育促進剤として、パームヤシ硬質殻の親水化粒状物を含有する、植物生育促進剤が挙げられる。
【0033】
(a)成分、例えばPKS、更に粒状(a)成分、例えばPKS粒状物は、生育促進の観点から、水に対する接触角(以下、水接触角という場合もある)が、好ましくは50°以下、より好ましくは45°以下、更に好ましくは40°以下、より更に好ましくは35°以下、より更に好ましくは30°以下、より更に好ましくは25°以下、そして、好ましくは0°以上である。ここで、(a)成分、例えばPKSの水接触角は、以下の条件で測定されたものである。
〔(a)成分、例えばPKSの水接触角の測定方法〕
測定対象の(a)成分、例えばPKSを0.1~0.3g採取し、密度が1.3~1.7g/cmになるように圧力をかけて、平面を有する圧縮物、例えば、円柱、立方体、直方体のような形状を有する圧縮物としたものをサンプルとする。なお、測定対象の(a)成分、例えばPKSは適宜粉砕して粒状にしてもよく、また、粒状物の粒子が大きい場合や形状が不揃いの場合などは、粉砕して粒径や形状を調整した粉体とし、これを前記と同様に圧縮物としてサンプルとしてもよい。また、圧縮により粒状(a)成分、例えばPKS粒状物の粉体が細粒化されてもよい。
サンプル、例えば粒状(a)成分、更にPKS粒状物の圧縮物を、その平面が水平となるように設置し、前記平面に、20℃の純水を粒径5μmで滴下し、1秒後の接触角を測定する。接触角は、液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の固体表面に対する角度を求め、これを2倍することで求める(θ/2法)。測定は1つのサンプルにつき3回行い、その平均値として得た値を水接触角として採用する。
【0034】
本発明の植物生育促進剤は、粒状物であることが好ましい。粒状物の粒子は、粉末、ペレットなど、(a)成分、例えばPKSを含む成分から形成しやすい形態であればいずれでもよい。
【0035】
本発明の植物生育促進剤は、平均粒径が、好ましくは1,000μm以下、より好ましくは600μm以下、更に好ましくは350μm以下であり、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1.0μm以上であり、更に好ましくは10μm以上である。なお、本発明の植物生育促進剤の平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA-950」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定する。
【0036】
本発明の植物生育促進剤は、(a)成分、例えばPKSを、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下含有する。本発明の植物生育促進剤は、(a)成分、例えばPKS、更に粒状(a)成分、例えばPKS粒状物からなるものでもよい。また、本発明の植物生育促進剤は、(a)成分、例えばPKS以外の成分を含有することができる。
【0037】
本発明の植物生育促進剤は、任意の成分として、例えば、
(1)肥料成分、
(2)ゼオライト、バーミキュライト、ベントナイト、ソフトシリカ(珪酸塩白土)、パーライト、ピートモス、バーク堆肥等の鉱物粉末又は粘土成分又は他の土壌改良成分、
(3)ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等の高分子物質、
(4)キトオリゴ糖、キチン性化合物、フラボノイド、例えばイソフラボン、ルチン等のシグナル分子、
(5)アーバスキュラー菌根菌(arbuscular mycorrhizalfungus)等の真菌、
(6)バチルス(Bacillus)属細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌、アゾスピリラム(Azospirillum)属細菌、パエニバチルス(Paenibacillus)属細菌、バークホルデリア(Burkholderia)属細菌、セラチア(Seratia)属細菌、エンテロバクター(Enterobacter)属細菌、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属細菌、クルトバクテリウム(Curtobacterium)属細菌、マメ科共生根粒菌等の細菌、
(7)ソヤサポニン
などを含有することができる。
【0038】
上記成分のうち、(5)のアーバスキュラー菌根菌(arbuscularmycorrhizal fungus)の例としては、ギガスポラ(Giga-spora)属やグロムス(Glomus)属に属する真菌を挙げることが出来る。このうち、グロムス(Glomus)属真菌の例としては、グロムス・イントララジカス(Glomus intraradices)を挙げることができる。
【0039】
上記成分のうち、(6)のバチルス(Bacillus)属細菌の例としては、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillusamyloliquefaciens)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、或いはバチルス・チューリンゲンシス(Bacillusthuringiensis)を挙げることができる。シュードモナス(Pseudomonas)属細菌の例としては、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)或いはシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonasfluorescen)を挙げることができる。アゾスピリラム属細菌の例としては、アゾスピリラム・ブラジレンス(Azospirillumbrasilense)、アゾスピリラム・リポフェラム(Azospirillum lipoferum)、アゾスピリラム・ハロプレファランス(Azospirillum halopraeferans)、或いはアゾスピリラム・アマゾネンセ(Azospirillum amazonense)を挙げることができる。パエニバチルス(Paenibacillus)属細菌の例としては、パエニバチルス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)或いはパエニバチルス・マセランス(Paenibacillusmacerans)を挙げることができる。バークホルデリア(Burkholderia)属細菌の例としては、バークホルデリア・グラディオリ(Burkholderia gladioli)を挙げることができる。セラチア(Seratia)属細菌の例としては、セラチア・マルセセンス(Seratia marcescens)を挙げることができる。エンテロバクター(Enterobacter)属細菌の例としは、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)を挙げることができる。ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属細菌の例としては、ブレビバクテリウム・ヨーディナム(Brevibacterium iodinum)或いはブレビバクテリウム・ブレビス(Brevibacteriumbrevis)を挙げることができる。クルトバクテリウム(Curtobacterium)属細菌の例としては、クルトバクテリウム・フラカムファシエンス(Curtobacterium flaccumfaciens)を挙げることができる。マメ科共生根粒菌の例としては、リゾビウム(Rhizobium)属、ブラジリゾビウム(Bradyrhizobiu)属、或いはアゾリゾビウム(Azorhizobium)属に属する細菌が挙げることができる。ブラジリゾビウム(Bradyrhizobiu)属細菌の例としては、ブラジリゾビウム・ジアゾエフィシエンス(Bradyrhizobium diazoefficiens)、ブラジリゾビウム・ジャポニクム(Bradyrhizobium japonicum)、ブラジリゾビウム・エルカニ(Bradyrhizobiumelkanii)、或いはエンシファ・フレディ(Ensifer fredii)を挙げることができる。
【0040】
上記成分のうち、(7)のソヤサポニンの例としては、国際公開第2018/159393号の[0028]記載のものが挙げられる。
【0041】
本発明の植物生育促進剤は、(1)の肥料成分を、1質量%以上50質量%以下含有することができる。
本発明の植物生育促進剤は、(2)の鉱物粉末もしくは粘土成分もしくは他の土壌改良成分、又は(3)の高分子物質を、それぞれ、1質量%以上50質量%以下含有することができる。
本発明の植物生育促進剤は、(4)のシグナル分子を2.5×10-13質量%以上2.5×10-11質量%以下含有することができる。
本発明の植物生育促進剤は、(5)の真菌及び/又は(6)の細菌を、それぞれ、(a)成分、例えばPKS1gあたり10cfu(コロニー形成単位)以上10cfu以下含有することができる。ここで真菌の場合には、コロニー形成単位は胞子の個数を意味する。
本発明の植物生育促進剤は、(7)のソヤサポニンを、例えば、国際公開第2018/159393号の[0040]に記載の量で使用されるように含有する事が出来る。
【0042】
本発明の植物生育促進剤を土壌に添加する事によって、土壌中に存在する有用微生物、例えば、アーバスキュラー菌根真菌(arbuscular mycorrhizal fungus)、バチルス(Bacillus)属細菌やシュードモナス(Pseudomonas)属細菌、アゾスピリラム(Azospirillum)属細菌、パエニバチルス(Paenibacillus)属細菌、バークホルデリア(Burkholderia)属細菌、セラチア(Seratia)属細菌、エンテロバクター(Enterobacter)属細菌、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属細菌、クルトバクテリウム(Curtobacterium)属細菌等の植物生育促進細菌、及びマメ科共生根粒菌の活動性及び植物への着生量を向上させる事が出来ると期待される。また同様に、本発明の植物生育促進剤が含有するアーバスキュラー菌根真菌(arbuscularmycorrhizal fungus)、バチルス(Bacillus)属細菌やシュードモナス(Pseudomonas)属細菌、アゾスピリラム(Azospirillum)属細菌、パエニバチルス(Paenibacillus)属細菌、バークホルデリア(Burkholderia)属細菌、セラチア(Seratia)属細菌、エンテロバクター(Enterobacter)属細菌、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属細菌、クルトバクテリウム(Curtobacterium)属細菌等の植物生育促進細菌、又はマメ科共生根粒菌の活動性及び植物への着生量を向上させる事が出来ると期待される。
【0043】
本発明の植物生育促進剤は、作用部位への(a)成分、例えばPKSの付着及び浸透量増加の観点から、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、非イオン界面活性剤が好ましい。
本発明の植物生育促進剤が界面活性剤を含有する場合、(a)成分、例えばPKS100質量部に対し、界面活性剤を好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、そして、好ましくは1,900質量部以下、より好ましくは600質量部以下、更に好ましくは400質量部以下含有する。
【0044】
本発明の植物生育促進剤は、作用部位への(a)成分、例えばPKSの付着量増加の観点から、水溶性ポリマーを含有することができる。ここで、水溶性ポリマーについての「水溶性」とは、20℃の水100gに1g以上溶解することをいう。水溶性ポリマーとしては、天然、半合成及び合成ポリマーが何れも使用でき、その中でも多糖類系水溶性ポリマーが好ましい。多糖類系水溶性ポリマーの具体例としては、グアーガム、キサンタンガム、でんぷん、セルロース、タラガム、ローストビーンガム、カラギーナン、及びこれらの誘導体が挙げられる。本発明の植物生育促進剤が水溶性ポリマーを含有する場合、(a)成分、例えばPKS100質量部に対し、水溶性ポリマーを好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、そして、好ましくは1,900質量部以下、より好ましくは600質量部以下、更に好ましくは300質量部以下含有する。
【0045】
これらの他にも、例えば、本発明の植物生育促進剤中に肥料成分などを含有することができる。具体的には、ハイポニカ(協和株式会社)やハイポネックスなどの商品名で入手可能な肥料成分を、(a)成分、例えばPKS100質量部に対し、1質量部以上1,900質量部以下含有することができる。
【0046】
本発明の植物生育促進剤の形態は、通常は(a)成分、例えばPKS、好ましくは粒状(a)成分、例えばPKS粒状物を含む粒子状であるが、粒状(a)成分、例えばPKS粒状物の成形物、粒状(a)成分、例えばPKS粒状物と他の物品との複合物品などの形態とすることもできる。
【0047】
本発明の植物生育促進剤は、土壌に添加して用いられるものが好ましい。すなわち、本発明の植物生育促進剤は、土壌添加型植物生育促進剤が好ましい。本発明の植物生育促進剤の植物、例えば農作物への適用は、本発明の植物生育促進剤を含有する土壌で、植物、例えば農作物を栽培することで行うことができる。
【0048】
本発明の対象とする植物は、好ましくは農作物として利用される植物である。本発明の植物生育促進剤は、植物収量向上剤、更に農作物用収量向上剤として用いることができる。本発明の植物生育促進剤を適用できる植物としては、ウリ科、ナス科、バラ科、アオイ科、マメ科、イネ科、アブラナ科、ネギ科、ヒガンバナ科、キク科、ヒユ科、セリ科、ショウガ科、シソ科、サトイモ科、ヒルガオ科、ヤマノイモ科、ハス科等が挙げられる。具体的には、果菜類では、キュウリ、カボチャ、スイカ、メロン、トマト、ナス、ピーマン、イチゴ、オクラ、サヤインゲン、ソラマメ、エンドウ、エダマメ、トウモロコシ等が挙げられる。葉菜類では、ハクサイ、ツケナ類、チンゲンサイ、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、メキャベツ、タマネギ、ネギ、ニンニク、ラッキョウ、ニラ、アスパラガス、レタス、サラダナ、セルリー、ホウレンソウ、シュンギク、パセリ、ミツバ、セリ、ウド、ミョウガ、フキ、シソ等が挙げられる。根菜類としては、ダイコン、カブ、ゴボウ、ニンジン、ジャガイモ、サトイモ、サツマイモ、ヤマイモ、ショウガ、レンコン等が挙げられる。その他に、稲、麦類、花卉類等にも使用が可能であり、大規模で栽培される傾向にあるダイズ、エダマメ等の豆類等の穀物がより好ましい。
【0049】
<植物の育成方法>
本発明は、本発明の植物生育促進剤を含有する土壌で植物を栽培する、植物の育成方法を提供する。すなわち、(a)成分、例えばPKSを含有する土壌で植物を栽培する、植物の育成方法を提供する。本発明の植物の育成方法に用いる(a)成分、例えばPKSの好ましい態様は、本発明の植物生育促進剤と同じである。本発明の植物の育成方法を適用できる植物は、本発明の植物生育促進剤と同じである。また、本発明の植物の育成方法は、農作物の育成方法又は農作物の栽培方法であることが好ましい。
【0050】
本発明の植物の育成方法において、(a)成分、例えばPKSの適用時期、適用回数は、特に制限されない。(a)成分、例えばPKSは、播種前の土壌等へ添加して適用してもよい。(a)成分、例えばPKSは、播種、植え付け等の栽培開始から、収穫等の栽培終了までの何れかの期間で、植物の生長の度合いに応じて適宜適用してもよい。
【0051】
また、本発明の植物の育成方法では、(a)成分、例えばPKSを、植物を栽培する土壌に添加して植物に適用する。土壌に添加する時期としては、播種前が好ましい。
【0052】
本発明では、土壌への本発明の(a)成分、例えばPKSの添加は、土壌に粒状(a)成分、例えばPKS粒状物を混合する、土壌に粒状(a)成分、例えばPKS粒状物を散布する、などの方法で行うことができる。
圃場において(a)成分、例えばPKSを土壌に添加する具体的な方法としては、耕運機などに散布機を併用し、(a)成分、例えばPKS粒状物を散布しながら耕す方法が挙げられる。
【0053】
本発明では、植物を栽培する土壌100質量部あたり、本発明の植物生育促進剤を、更には(a)成分、例えばPKSを、好ましくは0.0001質量部以上、より好ましくは0.001質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下、より更に好ましくは2.0質量部以下、より更に好ましくは1.0質量部以下、より更に好ましくは0.5質量部以下添加する。すなわち、本発明では、本発明の植物生育促進剤を、更には(a)成分、例えばPKSを、好ましくは0.0001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下、より更に好ましくは2.0質量部以下、より更に好ましくは1.0質量部以下、より更に好ましくは0.5質量部以下含有する土壌で植物を栽培する。
【0054】
本発明の植物の育成方法で本発明の植物生育促進剤を、更には(a)成分、例えばPKSを、例えば散布により、土壌に添加する場合、土壌10aあたり、本発明の植物生育促進剤を、更には(a)成分、例えばPKSを好ましくは0.2kg以上、より好ましくは2kg以上、更に好ましくは20kg以上、そして、好ましくは20,000kg以下、より好ましくは5,000kg以下、更に好ましくは2,000kg、より更に好ましくは1,000kg以下、より更に好ましくは500kg以下添加する。本発明の植物生育促進剤を、更には(a)成分、例えばPKSを散布する場合も、土壌100質量部あたりの添加量が前記範囲となっていてもよい。
【0055】
<本発明のその他の態様>
本発明は、ヤシ科アブラヤシ属、マメ科マメ亜科、クルミ科、バラ科サクラ属、オリーブ連から選ばれる植物の種子殻成分〔以下、(a)成分という〕の1種以上の成分を含有する、土壌団粒化剤に関する。
また、本発明は、(a)成分から選ばれる1種以上の成分を含有する土壌団粒化剤を、土壌と混合する、土壌の団粒化方法に関する。
また、本発明は、(a)成分から選ばれる1種以上の成分を含有する、土壌団粒化剤を、土壌と混合する、土壌造粒物の製造方法に関する。
本発明の土壌団粒化剤、土壌の団粒化方法及び土壌造粒物の製造方法において、(a)成分から選ばれる1種以上の成分は前記の(a)成分である。本発明の土壌団粒化剤、土壌の団粒化方法及び土壌造粒物の製造方法において、(a)成分の具体例及び好ましい態様などは、それぞれ、本発明の植物生育促進剤、植物生育促進剤の製造方法及び植物の育成方法と同じである。また、本発明の植物生育促進剤、植物生育促進剤の製造方法及び植物の育成方法で述べた事項は、本発明の土壌団粒化剤、土壌の団粒化方法及び土壌造粒物の製造方法に適用することができる。
【0056】
本発明は、ヤシ科アブラヤシ属、マメ科マメ亜科、クルミ科、バラ科サクラ属、オリーブ連から選ばれる植物の種子殻成分〔以下、(a)成分という〕の1種以上の成分の、植物生育促進剤としての使用に関する。
また、本発明は、(a)成分から選ばれる1種以上の成分の、植物生育促のための使用に関する。
また、本発明は、(a)成分から選ばれる1種以上の成分の、土壌団粒化剤としての使用に関する。
また、本発明は、(a)成分から選ばれる1種以上の成分の、土壌の団粒化のための使用に関する。
本発明のこれらの使用において、(a)成分から選ばれる1種以上の成分は前記の(a)成分である。本発明のこれらの使用において、(a)成分の具体例及び好ましい態様などは、本発明の植物生育促進剤、植物生育促進剤の製造方法及び植物の育成方法と同じである。また、本発明の植物生育促進剤、植物生育促進剤の製造方法及び植物の育成方法で述べた事項は、本発明のこれらの使用に適用することができる。
【0057】
実施例
本発明の植物生育促進剤を以下のように製造した。
<製造例1>
パームヤシ硬質殻(PKS)(株式会社省電舎)(パームカーネルシェル、含水率2.3%、リグニン含有量48.8質量%)をミニスピードミル『MS-05』(ラボネクト株式会社製)中に投入し、20秒間粉砕を5回行った。得られた粉砕物を篩い分けし、500μm径の金型篩を通過し、355μm径の金型篩に残ったものを植物生育促進剤の本発明品1とした。本発明品1の平均粒径、水接触角を前記の方法で測定した。結果を表1に示した。
【0058】
<製造例2>
製造例1と同様に、ただし、355μm径の金型篩を通過し、100μm径の金型篩に残ったものを植物生育促進剤の本発明品2aとした。
また、製造例1と同様に、ただし、355μm径の金型篩を通過し、75μm径の金型篩に残ったものを植物生育促進剤の本発明品2bとした。
また、製造例1と同様に、ただし、150μm径の金型篩を通過し、75μm径の金型篩に残ったものを植物生育促進剤の本発明品2cとした。
また、製造例1と同様に、ただし、75μm径の金型篩を通過したものを植物生育促進剤の本発明品2dとした。
本発明品2a、2b、2c、2dの平均粒径、水接触角を前記の方法で測定した。結果を表1に示した。
【0059】
<製造例3>
製造例2で得た本発明品2aに対し、水処理を行った。本発明品2a 100質量部とイオン交換水900質量部とを、ガラス瓶内で混合してスラリーを得た。得られたスラリーを40℃で、24時間スターラーで撹拌した後、G4ガラスフィルターで吸引ろ過を行い、更に、イオン交換水2,000質量部を加えて洗浄し、残渣を得た。得られた残渣を25℃で真空乾燥し、含水率1.4質量%の粒状物を得、これを本発明品3とした。本発明品3の平均粒径、水接触角を前記の方法で測定した。結果を表1に示した。
【0060】
<製造例4~10>
ピーチ種子殻、プルーン種子殻、オリーブ種子殻、ウメ種子殻、ピーナッツ種子殻、クルミ種子殻又はスモモ種子殻に関しても各果物から種を取り出し、種子殻を使用して、製造例1と同様に、ただし、150μm径の金型篩を通過し、75μm径の金型篩に残ったものを植物生育促進剤の本発明品4~10とした。本発明品4~10の平均粒径、水接触角を前記の方法で測定した。結果を表1に示した。
【0061】
比較の植物生育促進剤1~2を下記のように製造した。
<比較製造例1>
製造例1と同様に、ただし、原料を表1記載のように変更して、植物生育促進剤の比較品1~2を製造した。比較品1~2の平均粒径、水接触角を前記の方法で測定した。結果を表1に示した。
【0062】
<評価>
(1)土壌造粒物の耐水性評価
表1の植物生育促進剤と土壌とを混合して出来た、混合造粒物の耐水性について評価した。
土壌として、佐賀県の田土(沖積土)を採取したものを目開き2mmの篩に通し、粗大な粒子や石、礫を除いたものを使用した。
土壌を100mLポリカップに投入し、表1の植物生育促進剤を土壌100質量部に対して表1の添加量となるように投入した。さらに土壌に対して30質量%となるように水を投入し、手動で約3分間撹拌後、得られた土壌造粒物の中から直径1~3mmのものを土壌造粒サンプルとした。得られた土壌造粒サンプルを高さ5cmまで水を張ったディスポガラス試験管(13mm×100mm、IWAKI社製)内に投入し、土壌造粒物が崩壊するまでの時間を測定した。測定は各試験、反復数5回とし、その平均値を表1に示した。なお、表中、添加量は、土壌100質量部に対する質量部である(以下同様)。
【0063】
(2)ダイズの生育試験
表2の植物生育促進剤を土壌に添加してダイズに適用した場合の、ダイズの生長促進効果について評価した。
土壌として、荒木田土(コーナン商株式会社より購入)を目開き2mmの篩に通し、粗大な粒子や石、礫を除いたものを使用した。
土壌を電動ミキサー〔ドラム容量63L、『SS100-63』(株式会社シンセイ)〕に投入し、表2の植物生育促進剤を土壌100質量部に対して0.1質量部となるように投入した。さらに土壌に対して20質量%となるように水を投入し、約5分間撹拌後、得られた混合物を土壌サンプルとした。土壌サンプルを育苗用ポリエチレン製ポット(直径12cm)に投入し、10aあたりN/P/K=6kg/6kg/6kgとなるように施肥を行い、別途、子葉展開期まで揃えて生育させたダイズ(品種フクユタカ、岩倉種苗)を本ポットに植え替えた。植え替え後、約3週間後にダイズ苗を取出して水洗し、地下部の乾燥質量を測定した。反復数は8個とし、その平均値を求めた。各平均値は、それぞれの対照の値を100とする相対値で表2に示した。なお、対照は、植物生育促進剤を用いずに実施したもの(表2では比較例2-1)である。表2の相対値が大きいことは、収穫までの生育性が良好であることを意味し、作物の収量増加が期待される。
【0064】
(3)土壌硬化度の測定
土壌として、荒木田土(コーナン商株式会社より購入)を目開き2mmの篩に通し、粗大な粒子や石、礫を除いたものを使用した。
土壌を電動ミキサー〔ドラム容量63L、『SS100-63』(株式会社シンセイ)〕に投入し、表2の植物生育促進剤を土壌100質量部に対して0.1質量部となるように投入した。さらに土壌に対して20質量%となるように水を投入し、約5分間撹拌後、得られた混合物を土壌サンプルとした。
土壌サンプル(900g)を育苗用ポリエチレン製ポット(直径12cm)に投入した。本ポットを屋外に放置し、天水及び2日ごとにガーデンマスター噴霧機(KOSHIN製)を用いて500L/aの水を散布した。3週間後、本土壌サンプルの硬度を測定した。土壌サンプルの硬度測定は、山中式土壌硬度計(株式会社藤原製作所:標準型土壌硬度計No.351)を用いて行った。
前記土壌硬度計の取扱説明書に従い、土壌硬度計の先端コーンを鍔と土壌サンプルの表面が当たるまで差し込み、ゆっくりと引き抜いた。その際の目盛の指数(mm)を読み取り、次式にて支持力強度(kg/cm)に換算した。支持力強度を土壌硬度として反復5回の平均値を表2に示した。
P=〔100X〕/〔0.7952(40-X)
P:支持力強度(kg/cm
X:指数(mm)
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】