(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】低温での温度変化を監視するための低温指標混合物、装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01K 11/06 20060101AFI20221226BHJP
C09B 67/42 20060101ALN20221226BHJP
【FI】
G01K11/06 C
C09B67/42 B
(21)【出願番号】P 2019553984
(86)(22)【出願日】2018-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2018057568
(87)【国際公開番号】W WO2018177968
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-01-26
(31)【優先権主張番号】102017003171.1
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】594102418
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer-Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
【住所又は居所原語表記】Hansastrasse 27c, D-80686 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100105360
【氏名又は名称】川上 光治
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】フューア,ギュンター,エール
(72)【発明者】
【氏名】ツィマーマン,ハイコ
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-167716(JP,A)
【文献】特表2008-542736(JP,A)
【文献】特開平6-50825(JP,A)
【文献】特開昭59-164929(JP,A)
【文献】特開2004-257828(JP,A)
【文献】特開2002-323386(JP,A)
【文献】国際公開第2007/128093(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 11/06-11/08
C09B 67/42-67/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-25℃乃至-160℃の温度範囲内の温度変化を表示し
および/または監視するための低温指標混合物であって、
オイルレッド、メチルレッド、ブリリアントグリーンおよびローダミンB、ニュートラルレッド、メチレンブルーからなる群から選択された少なくとも1種の染料、および
オクタン-1-オール、ノナン-1-オール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,2-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-2-オール、ペンタン-1,5-ジオール、ペンタン-1-オール、シクロペンタノール、ベンジルアルコールからなる群から選択された少なくとも1種のアルコール、
を含み、
前記混合物の融解温度は、1ml未満の体積において不動状態で測定して-25℃乃至-160℃
の温度範囲内にあるものである、
低温指標混合物。
【請求項2】
前記混合物の融解温度は-50℃乃至-150℃の温度範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載の低温指標混合物。
【請求項3】
前記アルコールが、プロパン-1,3-ジオール、プロパン-1,2-ジオールまたはブタン-2-オールであることを特徴とする、請求項1または2に記載の低温指標混合物。
【請求項4】
前記アルコール成分における前記染料の濃度が飽和濃度の10%未満であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の低温指標混合物。
【請求項5】
前記アルコール成分における前記染料の濃度が飽和濃度の1%未満であることを特徴とする、請求項4に記載の低温指標混合物。
【請求項6】
前記アルコール成分中の飽和濃度の10乃至100%の範囲の濃度の前記染料の溶液であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の低温指標混合物。
【請求項7】
ブタン-2-オール中の飽和濃度の10乃至100%の範囲の濃度のローダミンBの溶液であることを特徴とする、請求項6に記載の低温指標混合物。
【請求項8】
a)オクタン-1-オール、ノナン-1-オール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,2-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-2-オール、ペンタン-1,5-ジオール、ペンタン-1-オール、シクロペンタノール、ベンジルアルコールを含む群から選択された1種のアルコール、
b)成分a)の前記アルコールよりも低い融点を有する、オクタン-1-オール、ノナン-1-オール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,2-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-2-オール、ペンタン-1,5-ジオール、ペンタン-1-オール、シクロペンタノール、ベンジルアルコールを含む群から選択された1種のアルコール、
からなる異なる少なくとも2種のアルコール成分を含み、
成分a)と成分b)の混合比は、前記混合物の融解温度が-25℃乃至-160℃の温度範囲内にあるように設定されるものである
ことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の低温指標混合物。
【請求項9】
- 5乃至95体積%の混合比のオクタン-1-オールとブタン-2-オール、
- 5乃至95体積%の混合比のオクタン-1-オールとペンタン-1-オール、
- 5乃至95体積%の混合比のオクタン-1-オールとプロパン-1,2-ジオール、
- 5乃至95体積%の混合比のノナン-1-オールとブタン-2-オール、
- 5乃至95体積%の混合比のノナン-1-オールとプロパン-1,2-ジオール、
- 5乃至95体積%の混合比のノナン-1-オールとペンタン-1-オール、
- 5乃至95体積%の混合比のプロパン-1,2-ジオールとブタン-2-オール、
- 5乃至95体積%の混合比のプロパン-1,2-ジオールとプロパン-1,3-ジオール、
- 5乃至95体積%の混合比のプロパン-1,2-ジオールとブタン-1,2-ジオール、
- 5乃至95体積%の混合比のプロパン-1,3-ジオールとブタン-2-オール、
- 5乃至95体積%の混合比のプロパン-1,3-ジオールとブタン-1,2-ジオール、
- 5乃至95体積%の混合比のペンタン-1,5-ジオールとブタン-2-オール、
- 5乃至95体積%の混合比のベンジルアルコールとブタン-2-オール、
- 5乃至95体積%の混合比のペンタン-1-オールとブタン-2-オール、
- 5乃至95体積%の混合比のペンタン-1-オールとメタノール、
- 5乃至95体積%の混合比のシクロペンタノールとブタン-2-オール、
- 5乃至95体積%の混合比のシクロペンタノールとプロパン-1,2-ジオール、
- 5乃至95体積%の混合比のシクロペンタノールとペンタン-1-オール、
- 5乃至95体積%の混合比のシクロペンタノールとブタン-1,2-ジオール、
という成分a)とb)の複数の組合せの中の1つの組合せを含み、
ここで、前記混合比の示された値は、それぞれ、両成分の前記混合物中の前者の成分の比に関するものである
ことを特徴とする、請求項8に記載の低温指標混合物。
【請求項10】
成分a)およびb)が、プロパン-1,3-ジオール、プロパン-1,2-ジオールおよびブタン-2-オールの中から選択され、および/または、前記染料が、オイルレッド、メチルレッド、ブリリアントグリーンおよびローダミンBを含む群から選択されることを特徴とする、請求項8または9に記載の低温指標混合物。
【請求項11】
40乃至60体積%の混合比のプロパン-1,2-ジオールとブタン-2-オール、または30乃至70体積%の混合比のプロパン-1,2-ジオールとプロパン-1,3-ジオール、または30乃至70体積%の混合比のプロパン-1,3-ジオールとブタン-2-オールを含むことを特徴とする、請求項10に記載の低温指標混合物。
【請求項12】
前記融解温度より高い3乃至30℃の温度範囲の液体混合物が、10乃至10
6mPa*sの範囲の粘度を有することを特徴とする、請求項1乃至11のいずれかに記載の低温指標混合物。
【請求項13】
-25℃乃至-160℃の温度範囲内の温度変化を表示し
および/または監視するための、請求項1乃至12のいずれかに記載の指標混合物の使用。
【請求項14】
前記アルコール成分中の前記染料の濃度が、前記混合物の融点が染料を含まない前記混合物の融点よりも少なくとも10℃高くなるように高く設定されることを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記指標混合物は、
a)オクタン-1-オール、ノナン-1-オール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,2-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-2-オール、ペンタン-1,5-ジオール、ペンタン-1-オール、シクロペンタノール、ベンジルアルコールを含む群から選択された1種のアルコール、
b)成分a)の前記アルコールよりも低い融点を有する、オクタン-1-オール、ノナン-1-オール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,2-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-2-オール、ペンタン-1,5-ジオール、ペンタン-1-オール、シクロペンタノール、ベンジルアルコールを含む群から選択される1種のアルコール、
からなる異なる少なくとも2種のアルコール成分を含み、
成分a)と成分b)の混合比は、前記混合物の融解温度が-25℃乃至-160℃の温度範囲内にあるように設定されるものである
ことを特徴とする、請求項13または14に記載の使用。
【請求項16】
前記指標混合物は、請求項9または11に記載された成分a)とb)の複数の組合せの中の1つの組合せを含むものであることを特徴とする、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
成分a)およびb)は、プロパン-1,3-ジオール、プロパン-1,2-ジオールおよびブタン-2-オールから選択され、前記染料は、オイルレッド、メチルレッド、ブリリアントグリーンおよびローダミンBを含む群から選択されるものであることを特徴とする、請求項15または16に記載の使用。
【請求項18】
前記融解温度より高い3乃至30℃の温度範囲の前記液体混合物が10乃至10
6mPa*sの範囲の粘度を有することを特徴とする、請求項13乃至17のいずれかに記載の使用。
【請求項19】
前記指標混合物は、その融解温度が、超えたことを監視すべき所定の限界温度に対応するように、選択されるものであることを特徴とする、請求項13乃至18のいずれかに記載の使用。
【請求項20】
前記指標混合物は、前記融解した指標混合物の粘度が或る目標値を下回るときの温度が、超えたことを監視すべき所定の限界温度に対応するように、選択されるものであることを特徴とする、請求項13乃至18のいずれかに記載の使用。
【請求項21】
前記指標混合物は、前記融解した指標混合物の粘度が目標値10
4mPa*sを下回るときの温度が、超えたことを監視すべき所定の限界温度に対応するように、選択されるものであることを特徴とする、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
-25℃乃至-160℃の温度範囲内の温度変化を表示し
および/または監視するための装置であって、
少なくとも1つの閉鎖空間に、
a)請求項1乃至12のいずれかに記載の指標混合物で少なくとも部分的に満たされていた前記空間の第1の部分領域、
b)液体状態の前記指標混合物に対してアクセス可能な第2の部分領域であって、適用可能な場合に分離要素によって前記指標混合物から分離された吸収材料で少なくとも部分的に満たされた第2の部分領域、
c)適用可能な場合に、液体状態の前記指標混合物を前記吸収材料と接触させるために前記分離要素を突き破るための手段、および、適用可能な場合に、前記第1の部分領域に隣接しかつ前記第1の部分領域と前記第2の部分領域の間にまたは前記第1の部分領域に隣接する前記第2の部分領域の一部に位置するバリア、および、適用可能な場合に、前記バリアを突き破るための手段、
という構成要素を少なくとも含む、装置。
【請求項23】
凍結材料用の容器の前記カバーまたは基部または前記壁の一部を形成することを特徴とする、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
凍結保存された生体試料用の容器の前記カバーまたは基部または前記壁の一部を形成することを特徴とする、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記吸収材料が、セルロース材料、粒子状無機材料、例えばプラスタ、チョーク、多孔質膜、織物および編物、ナノポーラスおよびマイクロポーラス酸化アルミニウム層を含む群から選択されたものであることを特徴とする、請求項22乃至24のいずれかに記載の装置。
【請求項26】
-25℃乃至-160℃の温度範囲内の温度変化を表示し
および/または監視するための方法であって、
a)第1の部分領域および第2の部分領域を含む閉鎖空間の第1の部分領域に、請求項1乃至12のいずれかに記載の指標混合物を供給すること、
前記閉鎖空間は、適用可能な場合に、前記第1の部分領域と前記第2の部分領域の間に位置するまたは前記第1の部分領域に隣接する前記第2の部分領域の一部に位置する前記指標混合物に対する、前記第1の部分領域に隣接するバリアをも有するものであること、
b)前記指標混合物が凍結する前記温度範囲内の所望の温度で前記指標混合物を冷却保存すること、
c)適用可能な場合に、前記指標混合物の凍結後に、前記第1の部分領域と前記第2部分領域の間にあるまたは前記第1の部分領域に隣接する前記第2部分領域の一部にあるバリアを突き破らせること、
d)前記指標混合物の少なくとも一部が、前記指標混合物の少なくとも前記融解温度への温度の少なくとも一時的な上昇を示す前記第2の部分領域に位置するかどうかを確認すること
を少なくとも含む方法。
【請求項27】
-25℃乃至-160℃の温度範囲内の温度変化を表示し
および/または監視する方法であって、
a)吸収材料を含む、請求項22乃至25のいずれかに記載の装置を供給すること、
b)前記指標混合物が凍結する前記温度範囲内の所望の温度で前記装置を冷却保存すること、
c)前記指標混合物の凍結後に、前記指標混合物と前記吸収材料の間の分離要素を突き破ること、
d)前記指標混合物の少なくとも一部が、前記指標混合物の少なくとも前記融解温度への温度の少なくとも一時的な上昇を示すように、前記吸収材料によって吸収されたかどうかを確認すること、
を含む方法。
【請求項28】
前記装置はバリアおよび/または吸収材料を含み、また、前記閉鎖空間の前記第2の部分領域におけるまたは前記吸収材料における指標混合物の存在は、前記溶融した指標混合物が前記バリアを通過しまたは前記吸収材料によって吸収されるように、前記溶融した指標混合物の粘度が或る目標値を下回るときの前記溶融温度より高い温度まで前記指標混合物が少なくとも一時的に上昇したこと、を示すものであることを特徴とする、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記指標混合物は、その融解温度または、前記融解した指標混合物の粘度が或る目標値を下回るときの温度が、超えたことを監視すべき所定の限界温度に対応するように、選択されることを特徴とする、請求項26乃至28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記標示混合物は、前記融解温度におけるまたは超えたことを監視すべき前記融解温度より高い所定の限界温度におけるその粘度が、前記吸収材料による液体の吸収または前記吸収材料中の液体の輸送が可能になる範囲にあるように、選択されることを特徴とする、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記粘度が、10乃至1000mPa*sの範囲にあることを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に-20℃乃至-160℃の範囲の、低温での温度変化(Temperaturuebergangs:温度推移)を監視(モニタ)するのに適し監視するよう意図された指標混合物(指示混合物、インジケータ混合物)、並びに、そのような指標混合物が使用される温度監視のための装置および方法に関する。ここで、凍結保存された生体(生物)試料の温度監視が、特に関心の対象である。
【背景技術】
【0002】
細胞の低温保存(凍結保存)は、これまで、細胞が生理学的温度への加温後に再開できるように、細胞レベルで重要なプロセスを可逆的に(活力または生命力を維持しつつ)停止する唯一の可能性である。凍結保存は、最近数十年で大規模なバイオバンクによって展開されて、診療所、製薬会社、種の存続(保護)、環境保護または健康管理(ヘルスケア)に不可欠な要素になった。生体(生物)材料は、例えば、様々なサイズのチューブ(管)、ストロー(筒)およびバッグ(袋)のような、低温適合性のある試料容器(低温容器または極低温容器(Kryobehaeltern))に格納される。凍結保存の場合、格納された生体材料は、通常、-80℃未満の温度で、生体コレクション(収集物)の場合は-140℃未満乃至液体窒素温度の諸温度で、試料材料の活力を維持しつつ、凍結される。また、“凍結試料”(Kryoprobe)という用語は、以下では、凍結保存試料または凍結保存を意図した試料にも使用される。
【0003】
その試料は、国の資源および他の多くの物として、診療所での細胞療法、医薬品およびバイオテクノロジ製品の開発に使用されるので、試料の品質は決定的な重要性がある。保管時間は、数日から数十年までの多様性があり、長期保管の傾向がある。その試料は、冷却容器に保管され、通常は金属製の引出しおよびラックに置かれ、それらを用いると、試料は、新しい保管または取出しの場合に温度変動を受ける。生体貯蔵(細胞、細胞懸濁液、組織片)の場合、中断のない冷却連続性(チェーン)が重要な役割を果たすだけでなく、深冷処理段階での温度の大幅な上昇の回避も重要な役割を果たす。低温容器または極低温容器が、取り外し期間中に、-80℃乃至-20℃の温度まで加熱することは知られていないことではないので、それが依然凍結しているにもかかわらず、品質の低下が気付かないうちに生じ、それによって、試料の価値が低下するだけでなく、それが臨床分野で使用されるときに生命の脅威となる状況も生じ得る。試料が短時間だけ解凍されたとしても、凍結状態において、もはや元の条件と一致しなくなったことを確認することは不可能である。しかし、生体材料の解凍を特定するだけでなく、-160℃または-140℃乃至-20℃の範囲の限界温度を超過したことを記録することも、特に重要である。
【0004】
以下の記載でも詳細に説明されるように、適切な低温指標(インジケータ)混合物の開発および提供には、高温では発生しない特定の問題に対する解決策が必要であって、適度な温度(中温)用の指標混合物を開発するための既知の解決手段および戦略はこの範囲に適用できない。
【0005】
例えば、独国特許出願公開第69620217号T2は、臨界温度を下回ったことを、従って不所望な凍結プロセスの発生を、示すことになっている温度表示装置において使用するためのアルコールを含む組成物を開示している。臨界温度は、典型的に、約+5℃乃至-5℃の範囲にある(例えば、この刊行物の表1参照)。そこ(刊行物)に記載されているシステムは、関連する条件および温度での使用にはここ(本開示)では全く不適切であり、ここでの場合、試料は、典型的に、臨界温度よりはるかに低く冷却された状態で既に存在し、凍結状態の指標混合物の融解(溶融)は、臨界温度を超えたことを示している。その理由は、ここでのシステムの場合、最初の冷却工程の期間中にその表示が既に不可逆的に作動されていたからである。
【0006】
凍結保存された生体試料の温度監視用の有利な装置および方法は、例えば、独国特許出願第102016005070.5号、同第102016005075.6号、同第102016005076.4号、同第102016005077.2号、および同第102016005133.7号に記載されている。また、これらの文献は、指標物質の使用を開示しており、その融解温度は-20℃乃至-140℃の範囲にあり、様々な適切な指標物質が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第69620217号
【文献】独国特許出願公開第102016005070号
【文献】独国特許出願公開第102016005075号
【文献】独国特許出願公開第102016005076号
【文献】独国特許出願公開第102016005077号
【文献】独国特許出願公開第102016005133号
【発明の開示】
【0008】
発明者たちの他の詳細な研究によって、最適な指標物質を提供するために、以前は研究されずまたは僅かにかろうじて研究されたことがある或る範囲の要因を考慮する必要があること、が示された。
【0009】
適切な指標物質に重要な要件は、第1に、検出可能な状態変化の温度を、典型的には、限定されることなく、例えば融解または凍結のような相転移の温度を、或る範囲の小さい偏差で(逸脱で)再現可能に、選択または設定することが可能なことである。しかし、これらの温度はしばしば知られておらず、または理論的考察から直に明らかなものではない。
【0010】
例えば、多数種の炭化水素が、より小さな程度で、しかし他の有機流体も、かなりの熱ヒステリシスを示す。即ち、それらは、理論的な凍結温度よりも非常に遥かに低い温度で、一部は文献における表示に対して20℃乃至80℃差で、過冷却されて凍結させることができ、一方、それらは、化学表に示された融解温度で規定された形態では融解せず、むしろしばしばこれよりはるかに高い温度で融解する。従って、例えば、ポリエチレングリコールは、少量で凍結し-60℃で不動状態になるが、-20℃で再び解凍されまたは融解する。従って、小量における不動状態での実際の凍結温度および融解温度を確実に予測することはできないが、一般的に具体的な使用条件で経験的に決定する必要がある。
【0011】
第2の重要な点は、複数の成分の混合物を表す指標物質が、原則として、より広い範囲にわたってかなり正確に複数の成分の混合比で融点または凝固点を設定する可能性を提供することである。しかし、そのような混合物は複雑な相図を形成し、関連する相転移温度は一般的に経験的に決定する必要がある。
【0012】
多くの物質の場合の別の問題は、融点に達したときの粘度が高いことであり、それによって、使用される特定の検出方法しだいで、相転移の検出が困難または不可能になり得る。
【0013】
また、指標物質は、容器材料として最も頻繁に使用されるプラスチックとの適合性がなければならない、即ち、これらを溶解することもこれらの中に透過もしくは浸透しまたは侵入することもできない、ということも考慮に入れるべきである。さらに、生物医学的試料との潜在的な接触に起因して、それらは障害または故障の発生時に非毒性であるべきであり、長期間保存することができ、低コストで利用可能であるべきである。
【0014】
例えば、所望の状態変化の前および/または後に、指標物質の位置をより簡単に決定できるようにするために、指標物質が染料を含んでいる場合、この染料は、染色される物質との適合性がある必要があり、特に、可溶性であり、また意図した低い温度で高い染色能力を有する必要がある。
【0015】
従って、本発明の目的は、様々な設定要件を満たしおよび監視対象の所定の目標温度に対してそれぞれ最適化された指標物質を提供できるようにし、従って通常の技術の欠点を解消する、-20℃乃至-160℃の範囲内の低温での温度変化を表示しまたは監視するための改善された手段を実現することである。
【0016】
発明の概要
これらの目的は、本発明により、独立請求項の特徴を有する低温指標混合物並びに装置および方法によって、達成される。本発明の有利な実施形態および適用例は、従属請求項から明らかになり、以下の説明においてより詳細に説明する。
【0017】
発明の説明
多数種の潜在的な指標物質の広範な研究および試験(テスト)の結果として、実際には、比較的小さいグループの化合物のみが、特に上述の-0℃乃至-160℃の範囲の、低温に関して指標混合物の提供に最適であることが、確認された。
【0018】
また、この指標混合物は、典型的には、染料をも含んでいる。
【0019】
従って、本発明の第1の態様(観点)は、請求項1による、-20℃乃至乃至-160℃、特に-25℃乃至-160℃または-50℃乃至-150℃、の温度範囲内での温度変化を表示し(示し)/監視するための低温指標混合物に関する。その混合物は次の各成分を含んでいる。
少なくとも1種の染料;および
オクタン-1-オール(octan-1-ol)、ノナン-1-オール(nonan-1-ol)、プロパン-1,2-ジオール(propane-1,2-diol)、プロパン-1,3-ジオール(propane-1,3-diol)、ブタン-1,2-ジオール(butane-1,2-diol)、ブタン-1,3-ジオール(butane-1,3-diol)、ブタン-2-オール(butan-2-ol)、ペンタン-1,5-ジオール(pentane-1,5-diol)、ペンタン-1-オール(pentan-1-ol)、シクロペンタノール(cyclopentanol)、ベンジルアルコール(benzyl alcohol)を含む群から選択された少なくとも1種のアルコール。
ここで、その混合物の融解温度(Schmelztemperatur)は、-20℃乃至-160℃、特に-25℃乃至-160℃または-50℃乃至-150℃、の温度範囲内にある。
【0020】
この明細書における相転移温度(Phasenuebergangstemperaturen)の全ての詳細は、常圧(1013.25hPa)での温度に関する。
【0021】
次の表1は、特に適切なアルコール成分の化学表に列挙されている融点を示している。
これらの文献上の融点は、一般的に、より大きい体積(ml範囲)および動的(移動)状態(振動)で測定される。
【0022】
【0023】
以下の記載において、“融点”(Schmelzpunkt)および“指標混合物の融点”という用語は、“表の融解温度”と明示的に言及されない限り、それぞれ、特に1ml未満の体積において不動状態で、測定される典型的な使用状態での実際の融点に関する。
【0024】
少なくとも次の条件を満たす任意の染料は、原則として染料として適合する。
- 少量および低濃度(例えば、1体積%未満の範囲の飽和色溶液の添加で開始する、一般的に1000分の1(Promille:パーミル)の範囲または1000分の1未満(Subpromille:サブパーミル)の範囲)でも強力な染色能力。
- 耐霜性
- 発送期間中および関連する低温での耐光性
- 指標混合物の全ての成分での可溶性
- 凍結期間中での非分離性
- 指標混合物と接触するプラスチック材料との非反応性。
【0025】
染料(色素)は、好ましくは、トリフェニルメタン染料(triphenylmethane dyes)、ローダミン染料(rhodamine dyes)、特にキサンテン(xanthene)、アゾ染料(azo dyes)、並びにフェナジン(phenazine)およびフェノチアジン染料(phenothiazine dyes)を含む群から選択される。
【0026】
より具体的な実施形態では、その染料は、オイルレッド(oil red)、メチルレッド(methyl red)、ブリリアントグリーン(brilliant green)、ローダミンB(rhodamine B)、ニュートラルレッド(neutral red)、メチレンブルー(methylene blue)、または細胞学で細胞を染色するために使用される他の染料、を含む群から選択される。
【0027】
アルコール成分中の染料の濃度は、染料およびアルコールに応じて大きく異なり得る。
【0028】
一般的に、集中的な着色(発色)をした場合の濃度は、染料分子が、溶解しているアルコールの凍結および融解特性を変化させたり粘度を高めたりしないように、できるだけ低く保つべきである。染料濃度は、典型的には、10体積%未満の範囲、特に1%未満または0.1%未満、即ち百分率または1000分の1(パーミル)または1000分の1未満(サブパーミル)の範囲にある。
【0029】
しかし、本発明の特定の一実施形態によれば、アルコール成分中の充分高い濃度の染料を意図的に使用して、純粋なアルコールの融点を大幅に上回るように、得られた混合物の融点を上げるようにする。その混合物の融点は、染料を含まない混合物の融点よりも、例えば、少なくとも10℃、好ましくは少なくとも20℃または30~70℃、高くすることができる。
【0030】
染料濃度は、例えば、飽和濃度の10~100%、50~100%、70~100%、80~100%または90~100%であり得る。このようにして、指標混合物の融点を或る温度範囲に設定することができる。例えば、ブタン-2-オール中のローダミンBの飽和溶液は、融点約-60℃を有する(即ち、純粋なアルコールの融点より約60℃高い)。
【0031】
本発明による低温指標混合物の特に好ましい実施形態では、少なくとも1種のアルコールは、プロパン-1,3-ジオール、プロパン-1,2-ジオールまたはブタン-2-オールである。
【0032】
1,3-プロパンジオールと染料の組合せは、例えば、-30℃乃至-80℃(融解温度TS=-25℃)で保存される凍結材料用の指標混合物として、非常に適している。
【0033】
1,2-プロパンジオールと染料の組合せは、例えば、-80℃乃至-196℃(TS=-60℃)で保存される凍結材料用の指標混合物として、非常に適している。
【0034】
ブタン-2-オールと染料の組合せは、例えば、-140℃乃至-196℃(TS=-116℃)で保存される凍結物質の指標混合物として、非常に適している。
【0035】
これらの例のTS値は、実験室での完全な(絶対的な)安静時の1ml溶液で測定された。
【0036】
既に上述したように、複数の成分の混合物を表す指標物質は、原理上は、広い範囲にわたる複数の成分の混合比でかなり正確に融点または凝固点を設定する可能性を提供する。
【0037】
これは、一般的に、大幅に異なる融解温度を有する2種のアルコールを混合することにより、高用量の染料による場合よりも、良好に達成することができる。
【0038】
従って、本発明の一実施形態は、指標混合物が、次のような少なくとも2種の異なるアルコール成分を含むことを特徴とする。
a)オクタン-1-オール、ノナン-1-オール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,2-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-2-オール、ペンタン-1,5-ジオール、ペンタン-1-オール、シクロペンタノール、ベンジルアルコールを含む群から選択されるアルコール;
b)成分a)のアルコールよりも低い融点を有する、オクタン-1-オール、ノナン-1-オール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,2-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-2-オール、ペンタン-1,5-ジオール、ペンタン-1-オール、シクロペンタノール、ベンジルアルコールを含む群から選択されるアルコール。
ここで、成分a)およびb)の混合比は、混合物の融解温度が、-20℃乃至-160℃、特に-25℃乃至-160℃または-50℃乃至-150℃、の温度範囲内にあるように設定される。
【0039】
本発明のより具体的な実施形態は、低温指標混合物が、次のような成分a)およびb)の組合せのうちの1つの組合せを含むことを特徴とする。
- 5乃至95体積%の混合比のオクタン-1-オールとブタン-2-オール;
- 5乃至95体積%の混合比のオクタン-1-オールとペンタン-1-オール;
- 5乃至95体積%の混合比のオクタン-1-オールとプロパン-1,2-ジオール;
- 5乃至95体積%の混合比のノナン-1-オールとブタン-2-オール;
- 5乃至95体積%の混合比のノナン-1-オールとプロパン-1,2-ジオール;
- 5乃至95体積%の混合比のノナン-1-オールとペンタン-1-オール;
- 5乃至95体積%の混合比のプロパン-1,2-ジオールとブタン-2-オール;
- 5乃至95体積%の混合比のプロパン-1,2-ジオールとプロパン-1,3-ジオール;
- 5乃至95体積%の混合比のプロパン-1,2-ジオールとブタン-1,2-ジオール;
- 5乃至95体積%の混合比のプロパン-1,3-ジオールとブタン-2-オール;
- 5乃至95体積%の混合比のプロパン-1,3-ジオールとブタン-1,2-ジオール;
- 5乃至95体積%の混合比のペンタン-1,5-ジオールとブタン-2-オール;
- 5乃至95体積%の混合比のベンジルアルコールとブタン-2-オール;
- 5乃至95体積%の混合比のペンタン-1-オールとブタン-2-オール;
- 5乃至95体積%の混合比のペンタン-1-オールとメタノール;
- 5乃至95体積%の混合比のシクロペンタノールとブタン-2-オール;
- 5乃至95体積%の混合比のシクロペンタノールとプロパン-1,2-ジオール;
- 5乃至95体積%の混合比のシクロペンタノールとペンタン-1-オール;
- 5乃至95体積%の混合比のシクロペンタノールとブタン-1,2-ジオール。
ここで、混合比の示された値は、それぞれ、両成分の混合物中の前者の成分の比に関する。
【0040】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、この低温指標混合物の場合に、成分a)およびb)が、プロパン-1,3-ジオール、プロパン-1,2-ジオールおよびブタン-2-オールから選択され、および/または、染料が、オイルレッド、メチルレッド、ブリリアントグリーンおよびローダミンBを含む群から選択されることを特徴とする。
【0041】
特に好ましい実施形態では、本発明による低温指標混合物は、例えば、40乃至60体積%の混合比のプロパン-1,2-ジオールとブタン-2-オール(その結果、融解温度約-90℃が得られる)、30乃至70体積%の混合比のプロパン-1,2-ジオールとプロパン-1,3-ジオール、または30乃至70体積%の混合比のプロパン-1,3-ジオールとブタン-2-オール、を含んでいる。
【0042】
既に上述したように、融点に達すると、多くの物質は比較的高い粘度を有し、即ち、この温度では、それ(物質)は粘性または可塑性を有する傾向があり、容易に可動(移動可能)または輸送可能でない傾向がある。
【0043】
以下で説明するように、温度変化を検出するための方法および装置について、その方法および装置は、最初に不動状態の指標物質が、監視対象の限界温度を超えると、特に、“液体”になり、即ち可動になる、という事実に基づいており、従って、指標物質の実際の融解温度は、ばしばあまり重要ではなく(関連性は低く)、しかしむしろ、必要な液体輸送が生じ得る程度にまで融解物質の粘度が低下したときの融解温度より高い温度が重要である。
【0044】
この温度は、以下で閾値温度とも称され、典型的には、公称融解温度より高い、3~30℃または5~30℃の、例えば、3~10℃、3~20℃、5~10℃または5~20℃の、温度範囲にある。
【0045】
従って、本発明の別の好ましい実施形態では、低温指標混合物は、融解温度より高い3~30℃または5~30℃の温度範囲の液体混合物が、10乃至106mPa*s、 好ましくは10乃至104mPa*sまたは10乃至103mPa*s、の範囲の粘度を有することを特徴とする。
【0046】
本発明の第2の密接に関連する態様は、-20℃乃至-160℃、特に-25℃乃至-160℃または-50℃乃至-150℃、の温度範囲内の温度変化を表示しまたは監視するための上述の低温指標混合物の使用に関する。
【0047】
この使用には、例えば、-20℃乃至-160℃、特に-25℃乃至-160℃または-50℃乃至-150℃、の温度範囲内の温度変化を表示し/監視するための装置への上述の低温指標混合物の組込みが含まれる。
【0048】
従って、本発明の別の態様は、-20℃乃至-160℃、特に-25℃乃至-160℃または-50℃乃至-150℃、の温度範囲内の温度変化を表示しまたは監視するためのそのような装置に関する。
【0049】
本発明の一実施形態では、上述の低温での温度変化を表示しまたは監視するための装置は、少なくとも1つの閉鎖空間に少なくとも次のような構成要素を含んでいる。
a)上述の指標混合物で少なくとも部分的に満たされたその空間の第1の部分(サブ)領域;
b)液体状態の指標混合物に対してアクセス(接触)可能な第2の部分(サブ)領域;
c)適用可能な場合に、第1の部分領域に隣接する指標混合物用のバリア(Barriere:障壁)、および適用可能な場合に、そのバリアを突き破るための手段。
【0050】
開始温度において、例えば、凍結材料の、特に凍結保存された生体試料の、保存温度において、低温指標混合物は、不動であり、典型的には可塑性または固体の状態であり、排他的にこの装置における閉鎖空間の第1の部分領域に(のみ)ある。
【0051】
指標混合物の融解温度に対応する監視対象の限界温度、または液状化した指標混合物の粘度が充分な程度に低下したときの融解温度より高い閾値温度、を超えると、指標混合物は液体になりまたは可動になり、その空間における第1の部分領域から第2の部分領域に移動する。従って、指標混合物の少なくとも一部が後続の制御時間において第2の部分領域に位置する場合、暫定期間中に(しばらくの間に)限界温度を少なくとも短時間だけ超えた、と結論付けることができる。
【0052】
閉鎖空間は、任意に、指標混合物に対する第1の部分領域に隣接するバリア(障壁)を有する。このバリアは、特に第1の部分領域と第2の部分領域の間に、または第1の部分領域に隣接する第2の部分領域の一部に、配置することができる。
【0053】
これに関して簡単な本発明の直接的な実施形態では、そのバリアが、第1と第2の部分領域の間に配置されていて液体状態の指標混合物に対して透過的(浸透性)である分離要素であること、が実現される。従って、バリアは、指標物質に対して液体状態でのみ透過性があるが凍結状態では透過性がない分離層を第1と第2の部分領域の間に形成する。液体状態の指標混合物に対して透過性があるその分離要素は、例えば、多孔性分離壁、膜、フィルム、皮膚または毛細管系として、設計または具現化することができる。
【0054】
また、このバリアは、液体指標混合物を(第1の部分領域に)しっかりと密閉する容器の壁の少なくとも一部を表しまたは含む分離要素であり得る。このバリアまたはこの分離要素は、特に特定の限界温度を超えまたは下回るような、機械的手段または化学的または物理的刺激によって、所定の時点において突き破ることができる。
【0055】
有利な一実施形態では、この分離要素は、指標混合物の融解温度より低い保存温度まで装置を冷却すると、熱収縮の結果として少なくとも一点で破れるように構成されていて、指標混合物が第1の部分領域から第2の部分領域へと少なくとも1つの裂開点によって形成された開口部を通して液体の凝集状態で移動することができるようにされる。適切な保管の場合、指標混合物は凍結され、従って開口部が存在するにもかかわらず、第2の部分領域へと移動することができない。
【0056】
分離要素は、装置を保存温度に冷却する期間中に分離要素が破れる少なくとも1つの所定の破壊点を有することができる。この意味での所定の破壊点は、保存温度への冷却期間中に破れる分離要素の所与の点である。これには、開裂点の位置と大きさ(サイズ)が予め定められており、従って、指標混合物が液体の場合に、結果として指標混合物の流量(貫流速度)も有効になる(実効化される)、という利点がある。
【0057】
別の有利な変形例によれば、分離要素は、所望の時点において機械的に突き破られる。この目的のために、温度監視用の装置は作動部を有することができ、その作動部は、容器に対して移動可能に案内され、ここで開始位置と称する第1の位置から、ここで作動位置と称する第2の位置へと移動できる。作動位置への移動によって、作動部が、機械的圧力によって、特に容器が液体状態の指標混合物に対して透過的または浸透性であるように、少なくとも1点において、容器を、より正確には分離要素を、破壊するようにされる。従って、温度監視用の装置を所望の時点において作動できる機構が実現される。
【0058】
両変形例には、分離要素が初期状態において透過的または浸透性でないので、指標装置として機能するそのような装置を、室温で所望の長さの期間、完全に装着され充填された形態で保管できる、という利点がある。
【0059】
第1の部分領域に隣接するバリアであって、第1の部分領域と第2の部分領域の間にまたは第1の部分領域に隣接する第2の部分領域の一部に位置するバリア、の別の利点は、指標混合物を、液状化時にその空間の第2の部分領域に直ちに完全には移動しないようにバリアを構成することができ、むしろこれは遅延して実行され、従ってこれには所定の時間が必要である。従って、過去の融解温度を超える持続時間に対する測定値は、特定の時点において第2の部分領域に位置する指標混合物の量から導き出すことができる。
【0060】
液体輸送の遅延の達成は、例えば、バリアが、第2の部分領域に配置された材料であって、液体吸収構造、即ち吸収材料、を有する第1の部分領域に隣接する材料、を含むことによって、行うことができる。その材料は、多孔質の材料または媒体であり得る。その材料、例えば吸収性の塊は、例えば、ろ紙、例えば通常のキッチン・ロールのフィルタ(ろ紙)またはタバコのフィルタ(ろ紙)、コンパクトなセルロース・ディスク(円盤体)、例えばハンカチ・セルロース・ディスク、プラスタ(Gips:石膏)および/またはチョーク・ダスト、さらにナノポーラス(ナノ多孔性)またはマイクロポーラス(微孔性)料の層であり得る。これは、特性の観点で、例えば多孔質構造の変化(バリエーション)によって、毛細管力による液体の吸収を促進するように、影響を受け得る。しかし、それは、液体吸収に適したまたは液体吸収性の別の材料であってもよい。
【0061】
そのような第1の実施形態によれば、指標混合物は、最初に、固化状態で吸収材料の形態のバリアの隣に配置されまたはバリア上に位置するが、バリア内へと透過することはできない。液体の凝集状態で、従って指標混合物の上述の定義された溶融温度または閾値温度を超えた後で、第1の部分領域に位置する指標混合物は、液体吸収構造を有する第1の部分領域に隣接する材料内にゆっくりと拡散し、または毛細管力によって吸収される。この結果、その材料に指標混合物が透過する。この形態の指標混合物は、遅延形態で第2の部分領域内に移動する。その遅延の程度は、拡散の速度に応じて決まる。
【0062】
別の利点は、拡散前面(フロント)の位置が、指標物質が、従って収容空間内の試料が、許容されない温度範囲に晒された時間の尺度である、ことである。これは、拡散前面の位置を確認することによって、確認できる。拡散の速度は、実際、それ自体が温度に依存する粘度の関数でもある。しかし、それは、数分乃至数時間または数日間の推定を行うのに、しばしば充分である。
【0063】
従って、限界温度の超過とその温度を超えた持続時間の双方を検出することが可能である。
【0064】
(任意に、例えば、様々な閉鎖空間において)様々な融解温度を有するの幾つかの指標混合物と、結合または分岐する幾つかの拡散部(セクション)との組合せがさらに可能であり、従って、上述の温度を超える持続時間に関してより正確な時間表示(指示)を決定することができるようにされる。
【0065】
適用可能な場合に吸収材料を含むバリアを含む本発明によるシステム(例えば、先に記載したおよび後で記載する温度変化を表示し/監視するための装置)の表示温度は、次のように生成される。即ち、それは、数ml以上の体積の測定から生成されるまたは教育書籍およびテーブル・ブックで見出される指標混合物の融解温度ではなく、むしろ、その温度では、体積1ml未満、特に100μl未満または30μl未満、の混合溶液が、流動的になり、粘度、湿潤性および他の化学的特性は、指標混合物が次のようになる或る値に達する。
1.指標混合物が、吸収性媒体を湿らせ(濡らし)、吸収性媒体内に浸透もしくは透過しまたは侵入し、および/またはバリアを通して拡散する。
2.目立つまたは測定可能な染色が、システムにおいて外部から明らかである(認識可能である)。
【0066】
テーブル値の融解温度を有する理想的な事例は、温度がより低くなるにしたがって、より低い程度で発生する。逆に、指標混合物は、データシートに示されたまたはより大きい体積で測定された融解温度より高い温度で、静止系で少量で、液化する。-20℃乃至-160℃の、特に-25℃乃至-160℃または-50℃乃至-150℃の、上述の低い温度の場合、粘度は、しばしば指標混合物が吸収媒体内にまたは透過性バリアを通して移動できる実際の融解温度において、しばしば依然として高すぎる(>104mPa*s)。このようなことが生じて、指標混合物が以前に占有されていなかった体積中に視覚的または測定可能に透過または侵入しているときにだけ、そのシステムはその表示温度に到達したことがあることとなる。従って、システムの表示温度は、一般的に、実際の融解温度よりも数℃、例えば3または5℃、乃至最大30℃以上高く、指標混合物の表の融解温度(既知の場合)よりも最大50℃以上高い。
【0067】
特に好ましい一実施形態では、バリアは、上述の分離要素と吸収材料の双方を含んでいる。
【0068】
この実施形態の第1の有利な変形例の場合、第1の部分領域に隣接する吸収材料の表面は、分離要素としてのカバーを有する。そのカバーは、指標混合物の融解温度より低い保存温度まで装置を冷却したときに、指標混合物に対して非透過的であるカバーの第1の状態から、指標混合物に対して透過的であるカバーの第2の状態へと不可逆的に移行するよう構成されている。第1の状態では、カバーは液体の凝集状態においても指標混合物に対して非不透過的であり、即ち多孔性ではない。従って、カバーは分離層を形成する。カバーは、例えば、対応するように構成された膜、被覆層、皮膚またはフィルム等であり得、これは、保存温度まで冷却したときに収縮の結果としてのみ裂けるか、またはさもなくば、液体に対して透過的になっていて、液体の凝集状態の指標混合物が、少なくとも1つの裂け目によって形成された開口部を通して、または一般的に第1の部分領域から第2の部分領域への複数の通過点を通過することができるようにされる。
【0069】
このカバーに使用される材料は、温度の低下期間中に閉鎖空間を形成する材料より大きい程度で収縮し、その結果、液体指標混合物が吸収材料内にまたは液体吸収構造を有する材料内に透過または侵入できる複数の開口部を形成するものであることが、好ましい。適切に保管した場合、指標混合物は、凍結し、従って、開口部が存在するにもかかわらず、材料内にまたはその空間の第2の部分領域内に進入することができない。
【0070】
第2の有利な変形例の場合、分離要素は、第1の部分領域内の指標混合物を包囲し液体不透過性または不浸透性である容器の壁の少なくとも一部を表しまたは含むものであり、所望の時点で機械的に突き破られる。この目的のために、温度監視用の装置は作動部(Aktivierungsteil)を有することができ、その作動部は、分離要素に対して移動可能に案内され、ここで開始位置と称される第1の位置から、ここで作動位置と称される第2の位置へと移動できるものである。作動位置への移動によって、特に液体状態の指標混合物に対して透過的になるように、少なくとも1つの点において、作動部が機械的圧力によって分離要素を破壊することになる。従って、温度監視用の装置を所望の時点で作動できる機構が実現される。
【0071】
また、両方の変形例は、分離要素が初期状態で透過的または浸透性ではないので、指標装置として機能するそのような装置を、室温で所望の長さの期間において、完全に取り付けられ充填された形態で保管することができる、という利点を有する。
【0072】
従って、有利な一実施形態における低温での温度変化を表示しまたは監視するための本発明による装置は、少なくとも1つの閉鎖空間に少なくとも次のような構成要素を含んでいる。
a)上述のような指標混合物で少なくとも部分的に満た(充填)された、その空間の第1の部分領域;
b)適用可能な場合には、分離要素によって指標混合物から分離された吸収材料で少なくとも部分的に満たされた第2の部分領域;
c)適用可能な場合には、液体状態の指標混合物を吸収材料と接触させるために分離要素を突き破るための手段。
【0073】
吸収材料は、原則として特に制限されることなく、例えば、セルロース材料、粒子状無機材料、例えばプラスタ(石膏)、チョーク、多孔質膜、織物(布地)および編物(編布)、ナノポーラス(ナノ微小孔性)およびマイクロポーラス(微小孔性)の酸化アルミニウム層を含む群から選択することができる。
【0074】
最適な材料は、特に、特定の限界温度または閾値温度における液体指標混合物の粘度の関数として選択することができる。
【0075】
逆に、指標混合物は、超えたことを監視すべき融解温度または所定の限界温度において、その粘度が、吸収材料による良好な液体吸収または吸収材料中を通る良好な液体輸送を可能にする範囲内にあるように、選択することができる 。
【0076】
この粘度は、典型的には、10乃至104mPa*s、好ましくは10乃至103mPa*sの範囲にある。
【0077】
上述の指標混合物用の容器は、例えば、特に低コストで製造できるプラスチック・パッドとして具体化できる。また、容器は、ガラス球(ボール)として具現化することもでき、破壊の場合には可聴クラック・ノイズを、従って作動用の音響フィードバックを、生成する。
【0078】
そのような、温度変化を表示しまたは監視するための装置は、例えば、凍結材料用の、特に凍結保存された生体試料用の、容器の(好ましくは透明な)カバーまたは基部(ベース)または壁の各一部を形成するまたはこれを表すことができる。
【0079】
本発明の別の関連する態様は、-20℃乃至-160℃の、特に-25℃乃至-160℃または-50℃乃至-150℃の、温度範囲内の温度変化を表示し/監視する方法に関する。この場合、温度監視用の上述の低温指標混合物または上述の装置が、使用される。
【0080】
繰り返しを避けるために、低温指標混合物およびこれらを含む各装置に関する上述の実施形態、特にそれらの有利な実施形態の変形例も、方法に関して開示されていると見做されまたは請求の範囲に記載できるべきである。
【0081】
一実施形態では、-20℃乃至-160℃の温度範囲内の温度変化を表示し/監視するための本発明による方法は、少なくとも次のような工程を含んでいる。
a)第1の部分領域および第2の部分領域を含む閉鎖空間の第1の部分領域に上述のような指標混合物を供給する。ここで、閉鎖空間は、また、適用可能な場合に、特に第1の部分領域と第2の部分領域の間に配置できる、または第1の部分領域に隣接する第2の部分領域の一部に配置できる、指標混合物用の、第1の部分領域に隣接するバリアを有する。
b)指標混合物が凍結する上述の温度範囲内の所望の温度で指標混合物を冷却保存する。
c)適用可能な場合に、指標混合物の凍結後に、第1の部分領域と第2部分領域の間に位置する、または第1の部分領域に隣接する第2部分領域の一部に位置する、第1の部分領域に隣接するバリアを突き破らせる。
d)指標混合物の少なくとも一部が、指標混合物の少なくとも融解温度または少なくとも閾値温度への温度の少なくとも一時的な上昇を示す第2の部分領域に位置するかどうかを確認(検査)する。
【0082】
より具体的な実施形態では、-20℃乃至-160℃、特に-25℃乃至-160℃または-50℃乃至-150℃、の温度範囲内の温度変化を表示し/監視するための本発明による方法は、少なくとも次のような工程を含んでいる。
a)装置に関して上述した吸収材料を含む、特に請求項24~26のいずれかに記載の、上述の装置を供給する;
b)指標混合物が凍結する上述の温度範囲内の所望の温度で装置を冷却保管する;
c)指標混合物の凍結後に、指標混合物と吸収材料の間の分離要素を突き破らせる;
d)指標混合物の少なくとも融解温度または少なくとも閾値温度までの温度の少なくとも一時的な上昇を示すこととして、指標混合物の少なくとも一部が吸収材料に吸収されたかどうか、を確認する。
【0083】
本発明による方法の好ましい一実施形態では、指標混合物は、その融解温度、または融解した指標混合物の粘度が或る目標値を下回るときの温度が、超えたことを監視すべき所定の限界温度に対応するように、選択される。
【0084】
本発明による方法は、凍結材料の、好ましくは凍結保存された生体試料の、特に温度監視に使用することができる。
【0085】
従って、この方法によれば、この明細書に記載されているような、閉鎖空間の第1の部分領域に凍結状態の少なくとも1種(1つ)の指標混合物を含んでいる温度監視用の装置を提供することができる。その方法は、さらに、温度を監視し、温度監視用の装置の閉鎖空間の第2の部分領域に指標混合物が後の時点に位置するかどうかを確認(チェック)するための装置を含む(極)低温容器を冷蔵(冷却貯蔵)することを含んでいる。
【0086】
この場合、たとえ短い時間期間だけであっても、指標混合物の融解温度または閾値温度、従って監視対象の限界温度、を超えた、と結論付けることができる。
【0087】
従って、本発明の1つ特定の利点は、たとえ短い時間期間だけであっても、第2の部分領域に指標混合物が存在すると、(極)低温試料が定義可能な限界温度より高く加熱されたことが、直接示される、という事実にある。これは、視覚的(目視)検査によって、または対応して構成された測定装置によって技術的に自動化された形態で、試料を試料容器から取り出したりまたは解凍したりする必要なく、迅速に容易に確認できる。
【0088】
本方法の1つの有利な別の展開形態によれば、第2の部分領域内へと移動した指標混合物の量の測定値(尺度)および/または第1の部分領域に位置する指標混合物の量の測定値(尺度)を示す特性変数をさらに決定することができる。そのような変数は、試料が限界温度より高い温度で経過した持続時間の測定値(尺度)を示す。
【0089】
特性変数は、例えば、第1または第2の部分領域における指標混合物の量を示す値である。その変数は、第2の部分領域における指標混合物の充填レベル、または液体吸収構造を有する吸収材料における指標混合物が到達した拡散領域(セクション、ゾーン)/経路(コース)(Diffusionsstrecke)の長さ、とすることができる。
【0090】
本方法の1つの特に好ましい実施形態によれば、冷却期間中に液体の凝集状態の指標混合物に対してのみ透過可能になる分離要素またはカバーのいずれかを有する温度監視用の装置を使用して、その方法を実施する。既に上述した通り、第1と第2の部分領域の間に分離要素を配置することができ、その分離要素は、指標混合物の融解温度より低い保存温度までその装置を冷却したときに、少なくとも1つの裂け目によって形成された開口部を通して第1の部分領域から第2の部分領域へと液体の凝集状態の指標混合物が移動できるように、熱収縮に起因して少なくとも1つの点において破るよう構成される。
【0091】
また、説明した通り、第1の部分領域に隣接する吸収材料の表面は、分離要素としてカバー、例えば膜または被覆層を有することができ、そのカバーは、指標混合物の融解温度より低い保存温度までその装置を冷却したときに、指標混合物に対して非透過的または不浸透性であるカバーの第1の状態から指標混合物に対して透過的または浸透性であるカバーの第2の状態へと不可逆的に移行するよう構成されている。
【0092】
本方法の別の特に好ましい実施形態によれば、液体指標混合物が閉鎖空間の第2の部分領域にアクセスできる(通じる、接近する)ようにするために、上述の形態で機械的に突き破ることができる分離要素またはカバーのいずれかを有する温度監視用の装置を用いて、その方法が実行される。
【0093】
上述の本発明の好ましい実施形態および特徴は、互いに組み合せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図1】
図1には、温度変化を表示しまたは監視するための本発明による装置の非限定的で例示的な例が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0095】
図1は、温度監視用の装置の例示的な実施形態100を幾つかの断面図で示している。
図1Aは、この場合、温度監視用の装置が組み込まれている(極)低温管1のカバー101の分解図を示している。装置100は、生体試料6を収容する収容空間2を有する(極)低温管(クライオチューブ)1と、非活動(非作動)状態において分離要素によって吸収材料103から分離された指標混合物7を含むチャンバ(室)102を有するカバー101とを含んでいる。また、カバー101は、以下で、感温性または温度感受性(T感応性)カバーとも称される。
図1Bは、取付け状態のカバー101を示しており、
図1Cは、生体試料6を収容する収容空間2と、ネジ込み式T感応性カバー101とを有する販売準備が整った(極)低温管1を示している。
図1A乃至1Cは、未だ非活動状態にある装置100を示している。
【0096】
T感応性カバー101は、4つの部品(部分)、即ち、以下でネジ込み部品104と称されるネジ込み挿入部104と、以下で吸収材料103と称される液体吸収構造体103を有する挿入部と、凍結しない場合に、指標混合物7として染色液を含む例えばプラスチック・パッド105としてここで具体化された指標混合物7用の容器105と、プラスチック・キャップ106としてここで具体化された市販の(極)低温管1にねじ込むための基体106と、を含んでいる。
【0097】
装置100の非活動状態において、プラスチック・パッド105は、中に位置する指標混合物7用の不透過性シェル(半殻部)を形成する。このシェルは、非活性状態で、指標混合物7が吸収材料103と接触するのを防ぐバリアを形成する。プラスチック・パッドとしての実施形態には、非常に低コストで製造できるという利点がある。
【0098】
ネジ込み部104は、少なくとも一点において透明または半透明であるように具現化されて、吸収材料103の少なくとも一部がネジ込み部品104を通して上方から見えるようになっている。ネジ込み部品104は、例えば、この目的のために透明または半透明の材料から製造することができる。さらに、基体106は、この目的のために透明または半透明の材料から製造することができる。このようにして、吸収材料103の色状態が変化したかどうかを上から簡単な視覚的(目視)検査によって確認(検査)することが可能である。これは、染色された指標混合物7が吸収材料103内に透過して、その結果、それを染色した場合であり、これについて以下でさらに説明する。
【0099】
基体またはプラスチック・キャップ106は、H字形の断面を有し、その結果、2つの円筒状の空洞が形成される。上側空洞102は、指標物質7を含む容器105が配置される第1の部分領域102aと、吸収材料103が配置される第2の部分領域102bとを備えたチャンバ(室)を形成する。
【0100】
下側空洞は、(極)低温管1の上端部分を収容して、それを非透過的に閉鎖するようにする。(極)低温管1は、シール・リング107で密封される。係合部(嵌合部)4、例えば六角穴は、これを介してネジ込み部104を基体106にねじ込むことができるものであり、ネジ込み部103に配置されるものである。また、ネジ込み部104は、複数のブレード109を有し、そのブレードによってネジ込み部104もねじ込むことができる。ねじ込みの目的で、ネジ込み部104には、上側空洞102の側壁に設けられた基体106の対応する内側の雌ネジ106aに係合する外側の雄ネジ104aが設けられている。
【0101】
既に述べたように、
図1A乃至1Cは、未だ非活動状態にある装置100を示している。これは、染色された指標混合物が充填されたプラスチック・パッド105が破壊されず非透過的(不浸透性)であって、液体状態の指標混合物7が漏出し得ないこと、を意味する。液体形態の指標混合物7は、最初はプラスチック・パッド105の内側に配置されている。その上に位置する吸収材料103は、無傷のプラスチック・パッド105の結果として指標混合物7と接触しない。
【0102】
ネジ込み部104は、最初、半分だけねじ込まれている(非活動状態)。さらにそれをねじ込むために、例えば4分の1または2分の1回転すると、ネジ山103a(104a)、106aのプラスチック製の障害物(バリア)(Plastiksperre)を突き破らなければならない。従って、温度監視用の装置および/またはT感応性カバーが使用前に作動できないことが、保証される。それにもかかわらず、装置100または試料6の(極)低温保存の前に、これ(突破り)が仮に発生した場合、基体106に配置された吸収材料103は、染色され、従って使用されない可能性がある。非活動状態のカバー101の輸送および中間保管は、貿易および備蓄を促進する任意の所望の期間にわたって実行することができる。
【0103】
図10Dは、保存温度に達した後の装置の作動を示しており、この場合、保存温度は-140℃未満である。
【0104】
指標混合物7は、容器105内の保存温度で、もはや液体ではなく、むしろ既に固化されるように、選択される。凍結された指標混合物7の場合、ネジ込み部104をねじ込むことによって、その装置の作動が実行される。ネジ込み部104は、吸収材料103に面するその下側に、例えば突端部(先端部)または棘の形態の、突出する突起部108を有する。ネジ込み部104をねじ込むことによって、突起部108は、プラスチック・パッド105中に突き通されて、それを破壊する。その結果、吸収材料103は、染色された指標混合物7と直接接触するようになる。これ(混合物)は、吸収材料103中に引き込まれないように、保存温度で非常に粘性が高くまたは固体でさえある。また、依然進行中の熱衝撃でも、拡散には充分でない。
【0105】
次に、温度監視用の装置が、作動される(活動状態)。(極)低温保存期間中の指標混合物の混合物の混合物の融点を示す閾値温度を超えるとすぐに、凍結された指標混合物7は液体になる。閾値を超えるまで、温度が上昇するにつれて粘度が低下し、そこから、吸収材料103が、毛細管力によって液体を取り込み、従ってその色を呈する。このプロセスは不可逆的であり、即ち、その後で指標混合物7が再び凍結した後でも、吸収材料103の着色が維持される。従って、その後、視覚的(目視)検査のときに、吸収材料103が着色を有することが確認された場合、指標混合物の融解温度およびさらにその融解温度(のそれ)よりも僅かに高い温度をも超え、その温度では、指標混合物7は、粘性が出て、毛細管力によって吸収材料103中に取り込まれるようになった、と結論付けることができる。吸収材料103の種類および厚さによって、識別可能な着色がどのくらい迅速に生じるかが決定される。
【0106】
また、基体106内の吸収材料103および指標混合物7に適用されることは、生体試料6の温度にも適用される。従って、染色された吸収材料(例えば、赤)は、生体試料6も少なくとも一時的に上述の温度を超えたことを示す。また、このプロセスは、急速凍結が更新された時にも元に戻せないので、装置1は許容されない加熱に関する情報を保持する。
【0107】
本発明を特定の例示的な実施形態を参照して説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行い、代替物として均等物を使用できることは、当業者には明らかである。従って、本発明は、開示された例示的な実施形態に限定されるべきではなく、特許請求の範囲に含まれる全ての例示的な実施形態を含むべきである。特に、本発明は、参照された請求項と関係なく、従属請求項の構成および特徴の保護も請求する。