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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】療法において有用なヘテロ芳香族化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20221226BHJP
   A61K 31/5025 20060101ALI20221226BHJP
   A61K 31/53 20060101ALI20221226BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221226BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20221226BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221226BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221226BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20221226BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20221226BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221226BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20221226BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221226BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20221226BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20221226BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
C07D487/04 142
A61K31/5025
A61K31/53
A61P29/00
A61P31/00
A61P35/00
A61P9/00
A61P3/10
A61P1/12
A61P17/00
A61P11/00
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P31/12
C07D487/04 144
C07D487/04 141
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019554725
(86)(22)【出願日】2018-04-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2018058522
(87)【国際公開番号】W WO2018185120
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】17165082.3
(32)【優先日】2017-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517102282
【氏名又は名称】キュロヴィル・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】ベストマン,ヤコブ
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-503830(JP,A)
【文献】国際公開第2016/206999(WO,A1)
【文献】特表2014-513137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/04
A61K 31/5025
A61K 31/53
A61P 29/00
A61P 31/00
A61P 35/00
A61P 9/00
A61P 3/10
A61P 1/12
A61P 17/00
A61P 11/00
A61P 25/00
A61P 25/16
A61P 25/28
A61P 31/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、
Xは、CHまたはNであり;
Yは、Nであり、かつZは、Cであり;またはYは、Cであり、かつZは、Nであり;
N、YおよびZを含有する5員環は、ヘテロ芳香環であり;
環Aは、フェニルまたは独立してN、OおよびSから選択される1個以上のヘテロ原子を有する5員もしくは6員ヘテロアリールであり;
mは、0、1または2であり;
それぞれのRは、独立してハロゲン、C1~C6アルキル、RO、RS(O)、RS(O)N(R)、RNC(O)、RC(O)N(R)、R10C(O)、R1112NおよびR1314NS(O)から選択され、かつ
mが2である場合、環Aの隣接する原子に結合した2つのRは、それらが結合している原子と一緒に5員または6員のヘテロ環式または炭素環式環を形成していることができ;
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12およびR13の各々は、独立してHおよびC1~C6アルキルから選択され;
14は、H、C1~C6アルキル、R15C(O)およびR16OC(O)から選択され;
15およびR16は、独立してHおよびC1~C6アルキルから選択され;そして
あらゆるアルキルは、場合により1個以上のハロゲンによって置換されていてもよい]の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
XがCHである、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
YがNであり、かつZがCである、請求項1または2に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
YがCであり、かつZがNである、請求項1または2に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
XがNである、請求項1または3に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩。
【請求項6】
環Aが5員または6員ヘテロアリールである、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩。
【請求項7】
環Aがフェニルまたは6員ヘテロアリールである、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩。
【請求項8】
部分
【化2】
が、式(IIa)の部分:
【化3】
であり、式中、WおよびWが、独立してN、CHおよびCRから選択される、請求項7に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩。
【請求項9】
がNであり、かつWがCRである;またはWがCHであり、かつWがCRである;またはWがCHであり、かつWがNである、請求項8に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩。
【請求項10】
がNであり、かつWがCRである;またはWがCHであり、かつWがNである、請求項9に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩。
【請求項11】
以下の化合物:
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-(ピリジン-4-イルメチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-((6-メチルピリジン-3-イル)メチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-N-(4-メトキシベンジル)-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
N-(4-クロロベンジル)-3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-(4-(メチルスルホニル)ベンジル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
4-(((3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル)アミノ)メチル)ベンゼンスルホンアミド、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-N-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-(チオフェン-2-イルメチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
N-(4-(((3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル)アミノ)メチル)フェニル)メタンスルホンアミド,
8-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,7-ジメチル-N-(ピリジン-4-イルメチル)ピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン-4-アミン、
8-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-N-(4-メトキシベンジル)-2,7-ジメチルピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン-4-アミン、
8-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,7-ジメチル-N-((6-メチルピリジン-3-イル)メチル)ピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン-4-アミン、
4-(((8-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,7-ジメチルピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン-4-イル)アミノ)メチル)ベンゼンスルホンアミド、
N-(4-クロロベンジル)-8-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,7-ジメチルピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン-4-アミン、
8-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,7-ジメチル-N-(4-(メチルスルホニル)ベンジル)ピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン-4-アミン、
N-(4-(((8-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,7-ジメチルピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン-4-イル)アミノ)メチル)フェニル)メタンスルホンアミド、
8-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,7-ジメチル-N-(チオフェン-2-イルメチル)ピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン-4-アミン、
8-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-N-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-2,7-ジメチルピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン-4-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,6-ジメチル-N-(ピリジン-4-イルメチル)イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-8-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,6-ジメチル-N-((6-メチルピリジン-3-イル)メチル)イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-8-アミン、
N-(4-クロロベンジル)-3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-8-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-N-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-8-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,6-ジメチル-N-(チオフェン-2-イルメチル)イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-8-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-N-(4-メトキシベンジル)-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-8-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-((6-トリフルオロメチルピリジン-3-イル)メチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
N-(ベンジル)-3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
N-(4-フルオロベンジル)-3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミンおよび
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,6-ジメチル-N-(4-(メチルスルホニル)ベンジル)イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-8-アミン;
から選択される請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物であって、膵炎、灰白髄炎、脳炎、髄膜炎、敗血症、癌、麻痺、心臓疾患、糖尿病、風邪、手足口病、ヘルパンギーナ、胸膜痛、下痢、粘膜皮膚病変、呼吸器疾患、結膜炎、筋炎、慢性疲労症候群、神経精神疾患、神経変性疾患、および炎症性の病気から選択される障害の処置における使用のための医薬組成物。
【請求項13】
ウイルス感染症の処置における使用のための、請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物。
【請求項14】
該ウイルス感染症が、ピコルナウイルス感染症である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
障害された、または異常なオートファジーに関連する疾患の処置における使用のための、請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物。
【請求項16】
膵炎、灰白髄炎、脳炎、髄膜炎、敗血症、癌、麻痺、心臓疾患、糖尿病、風邪、手足口病、ヘルパンギーナ、胸膜痛、下痢、粘膜皮膚病変、呼吸器疾患、結膜炎、筋炎、慢性疲労症候群、神経精神疾患、神経変性疾患、および炎症性の病気から選択される障害の処置のための医薬品の製造における、請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩の使用。
【請求項17】
ウイルス感染症の処置のための医薬品の製造における、請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩の使用。
【請求項18】
ウイルス感染症が、ピコルナウイルスの感染症である、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
障害された、または異常なオートファジーに関連する疾患の処置のための医薬品の製造における、請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、療法、特にウイルス病、より詳細にはピコルナウイルス、例えばエンテロウイルスにより引き起こされるウイルス病の処置において有用性を有する新規化合物に関する。本発明はまた、髄膜炎、手足口病、ヘルパンギーナ、呼吸器疾患、脳炎および心筋炎のような疾患(それらだけでなく糖尿病、癌、神経変性疾患、例えばアルツハイマー病および筋萎縮性側索硬化症も含む)の処置に関する有用性を有する新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン誘導体は、鎮痛剤、ベンゾジアゼピン受容体アンタゴニスト、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、血管新生阻害剤、抗炎症剤、ニューロペプチドY受容体アンタゴニスト、COX2-阻害剤およびコルチコトロピン放出ホルモン受容体I型アンタゴニストとして、そしてCHK1阻害剤として記載されている(例えば、Mayo et al (Adv. Synth. Catal. 2003, 345, 620-624); Tellew et al (Bioorg. Med. Chem. Lett. 2010, 20, 7259-7264); Chen et al (Bioorg. Med. Chem. Lett. 2004, 14, 3669-3673); Labroli et al (Bioorg. Med. Chem. Lett. 2011, 21, 471-474); Griffith et al (Bioorg. Med. Chem. Lett. 2011, 21, 2641-2645); Gilligan et al, (J. Med. Chem. 2009, 52, 3073-3083); He et al. (米国特許第6,313,124 B1号);およびWren et al. (国際公開第2010/086040号)、Catalano et al (Tetrahedron Lett. 2015, 56, 6077-6079))。ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン骨格は、ホスファチジルイノシトール4-キナーゼ(PI4K)阻害剤においても記載されている。Biancoら(PLoS Pathogens, 2012, 8(3), 1-17)およびLaMarcheら(Antimicr. Agents and Chemother. 2012, 56(10), 5149-5156)は、PI4KがC型肝炎ウイルス(HCV)の複製に重要であることを示しており、Yangら(J. Biol. Chem. 2012, 287(11), 8547-8467)は、コロナウイルスに関して同じことを示している。Gudmundssonら(Bioorg. Med. Chem. Lett. 2009, 19, 5689-5692)は、ヘルペスウイルスに対して強力な活性を有するいくつかの3-アリールピラゾロ[1,5-a]ピリミジン類を開示している。Hwangら(Bioorg. Med. Chem. Lett. 2012, 22, 7297-7301)は、抗HCV作用を有するPI4K阻害剤としての3-アリールピラゾロ[1,5-a]ピリミジン類を記載している。国際公開第2015/110491号において、いくつかのさらなるピラゾロ[1,5-a]ピリミジン誘導体が抗ウイルス活性を有するPI4KIIIβ阻害剤として記載されている。
【0003】
ピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン誘導体は、潜在的な抗不安薬および抗うつ薬であり得るコルチコトロピン放出因子受容体-1(CRF1)アンタゴニストとして記載されている(例えばGilligan et al (J. Med. Chem. 2009, 52, 3073-3083)を参照)。ペクサセルフォント(Pexacerfont)は、Bristol-Myers Squibbにより開発された臨床的に試験されたピラゾロ[1,5-a]トリアジン-4-アミン薬であり、CRF-1アンタゴニストとして作用する。ピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン骨格はまた、様々な疾患の処置に有用なサイクリン依存性キナーゼ阻害剤(国際公開第2013/128029号)、カゼインキナーゼ阻害剤およびDYRK1Aキナーゼ阻害剤(国際公開第2010/103486号)中に存在することが記載されている。その骨格は、さらにカンナビノイド1受容体アンタゴニスト中に存在することが記載されている(J. Pharm. Exp. Ther. (2010), 335(1), 103-113)。ピラゾロ[1,5-a]トリアジン-4-アミン類は、Mejdrova et al (J. Med. Chem., 2015, 58 (9), 3767-3793)においておよびMejdrova et al (J. Med. Chem., 2017, 60 (1), 100-118)において抗ウイルス効力を有するPI4KIIIβ阻害剤として記載されている。国際公開第2016/206999号において、いくつかのさらなるピラゾロ[1,5-a]トリアジン誘導体が、抗ウイルス活性を有するPI4KIIIβ阻害剤として記載されている。
【0004】
イミダゾ[1,2-b]ピリダジン誘導体は、Mps1キナーゼ阻害剤として記載されている(Kusakabe, J. Med. Chem. 2015, 58, 1760-1775)。同様の骨格が、ホスファチジルイノシトール 4-キナーゼ(PI4K)阻害剤中に存在することが記載されており((McLeod et al (ACS Med. Chem. Lett. 2013, 4(7), 585-589)およびvan der Schaar et al (Antimicrobial Agents Chemother. 2013, 57(10), 4971-4981))、PI4Kの阻害剤は、強力な抗ウイルス薬であることが示されている(Bianco et al, PLoS Pathogens, 2012, 8(3), 1-17; LaMarche et al, Antimicr. Agents and Chemother. 2012, 56(10), 5149-5156; Decor et al, Bioorg. Med. Chem. Lett. 2013, 23, 3841-7)。
【0005】
Decorら(Bioorg. Med. Chem. Lett. 2013, 23, 3841-7)は、PI4Kがエンテロウイルスの複製に重要であることも示している。しかし、彼らは、PI4K阻害剤(非3-アリールピラゾロ[1,5-a]ピリミジン類)および3-アリールピラゾロ[1,5-a]ピリミジン 3-(3,4-ジメトキシフェニル)-2,5-ジメチル-N-(2-モルホリノエチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン(T-00127-HEV1と呼ばれる)がマウスにおいてインビボで試験された際に死亡を誘発することも示しており、それは、PI4Kを阻害することの安全性に疑問を生じさせた。Salaら(Bioorg. Med. Chem. Lett. 2016, 26(11), 2706-12)は、PI4KIIIβ阻害剤T-00127-HEV1に基づくいくつかの類似体を公開している。著者らは、その化合物の中心環中に修飾を有するいくつかの類似体を作製した。
【0006】
オートファジーは、ストレス時に栄養素を作り出すために、そして細胞質中の損傷した細胞小器官または微生物をリサイクルするための機序として使用される、細胞における恒常的分解のプロセスである(Karanasios et al, 2016, Autophagy at the cell, tissue and organismal level (Springer))。多くの病原体は、宿主のオートファジー経路と相互作用し、正常なオートファジーを損ない得る。Laiら(Viruses, 2016, 8(32), 1-13)は、ウイルスがウイルス複製に利益を与え、宿主から出るためにオートファジー機序を破壊する(subvert)こと、およびPI4KIIIβの阻害はオートファジープロセスへの作用を有し、従ってウイルス複製を阻害するであろうことを記載している。Sridharら(EMBO J. 2013,32, 324-339)は、PI4KIIIβがオートファジーにおける重要な因子であることを記載しており、そして多くの疾患、例えば神経変性疾患および神経精神疾患、癌、心臓疾患、炎症性疾患ならびに糖尿病が、障害された、または異常なオートファジーによって引き起こされるかまたはそれに関連すると信じられている(Polajnar et al J. Cell. Mol. Med. 2014, 9(18). 1705-1711; Levine et al, Cell, 2008, 132(1), 27-42; Barlow, et al, DNA Cell. Biol, 2015, 34(4), 252-260)。いずれかの理論に束縛されるわけでは一切ないが、本発明の化合物は、障害されたかまたは異常なオートファジーによって引き起こされるかまたはそれに関連する疾患の処置のために用いられることもできるであろうと信じられる。
【0007】
新規の療法的に有効な化合物、例えば抗ウイルス剤に関する必要性が、依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第6,313,124 B1号
【文献】国際公開第2010/086040号
【文献】国際公開第2015/110491号
【文献】国際公開第2013/128029号
【文献】国際公開第2010/103486号
【文献】国際公開第2016/206999号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Mayo et al (Adv. Synth. Catal. 2003, 345, 620-624)
【文献】Tellew et al (Bioorg. Med. Chem. Lett. 2010, 20, 7259-7264)
【文献】Chen et al (Bioorg. Med. Chem. Lett. 2004, 14, 3669-3673)
【文献】Labroli et al (Bioorg. Med. Chem. Lett. 2011, 21, 471-474)
【文献】Griffith et al (Bioorg. Med. Chem. Lett. 2011, 21, 2641-2645)
【文献】Gilligan et al, (J. Med. Chem. 2009, 52, 3073-3083)
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【発明の概要】
【0010】
第1側面は、式(I)の化合物:
【0011】
【化1】
【0012】
またはその薬学的に許容可能な塩であり、式中、
Xは、CHまたはNであり;
Yは、Nであり、かつZは、Cであり;またはYは、Cであり、かつZは、Nであり;
N、YおよびZを含有する5員環は、ヘテロ芳香環であり;
環Aは、フェニルまたは独立してN、OおよびSから選択される1個以上、例えば1または2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員ヘテロアリールであり;
mは、0、1または2であり;
それぞれのRは、独立してハロゲン、C1~C6アルキル、RO、RS(O)、RS(O)N(R)、RNC(O)、RC(O)N(R)、R10C(O)、R1112NおよびR1314NS(O)から選択され、かつ
mが2である場合、環Aの隣接する原子に結合した2つのRは、それらが結合している原子と一緒に5員または6員のヘテロ環式または炭素環式環を形成していることができ;
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12およびR13の各々は、独立してHおよびC1~C6アルキルから選択され;
14は、H、C1~C6アルキル、R15C(O)およびR16OC(O)から選択され;
15およびR16は、独立してHおよびC1~C6アルキルから選択され;そして
あらゆるアルキルは、場合により1個以上のハロゲンによって置換されていてもよい。
【0013】
さらなる側面は、ピコルナウイルス複製の阻害剤としての使用のための式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩である。
さらなる側面は、ピコルナウイルスの細胞病原性作用の阻害剤としての使用のための式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0014】
さらなる側面は、ホスファチジルイノシトール 4-キナーゼIIIβの阻害剤としての使用のための式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩である。
さらなる側面は、オートファジーを調節するための使用のための式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0015】
さらなる側面は、療法における使用のための式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩である。
さらに別の側面は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含み、場合により薬学的に許容可能な賦形剤を含んでいてもよい医薬組成物である。
【0016】
さらなる側面は、ウイルス感染症の処置における使用のための式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩である。
さらなる側面は、本明細書中で言及されるような疾患の処置における使用のための、細胞における障害されたオートファジーを改善する、または異常なオートファジーを調節することができる式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0017】
さらなる側面は、障害された、または異常なオートファジーに関連する疾患の処置における使用のための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩である。
さらなる側面は、障害されたオートファジーに関連する疾患の処置における使用のための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0018】
さらなる側面は、異常なオートファジーに関連する疾患の処置における使用のための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩である。
“異常なオートファジー”により、例えばウイルスの複製および放出を有利にするオートファジーが意味される。
【0019】
“障害されたオートファジー”により、細胞において正常未満で機能するオートファジーが意味される。
本発明に従って処置され得る、障害された、または異常なオートファジーに関連する疾患は、例えば神経変性疾患および神経精神疾患、癌、心臓疾患、炎症性疾患および糖尿病、例えば本明細書において言及される疾患から選択され得る。
【0020】
さらなる側面は、非エンベロープ一本鎖(+)RNAウイルス感染症の処置における使用のための式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩である。
さらに別の側面は、膵炎、灰白髄炎、脳炎、髄膜炎、敗血症、癌、例えば乳癌、前立腺癌、卵巣癌および結腸直腸癌、麻痺、心臓疾患、例えば心筋炎、糖尿病、風邪、手足口病、ヘルパンギーナ、胸膜痛、下痢、粘膜皮膚病変、呼吸器疾患、結膜炎、筋炎、慢性疲労症候群、神経精神疾患ならびに神経変性疾患、例えば多発性硬化症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病およびハンチントン病、または炎症性の病気の処置における使用のための式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0021】
さらなる側面は、本明細書で言及された障害または疾患の処置のための医薬品の製造における式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用である。
さらなる側面は、療法上有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩のそれを必要とする哺乳類への投与による本明細書で言及された障害または疾患の処置のための方法である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、感染時の2つの異なるウイルスの細胞に対する濃度における、本発明の6種類の異なる化合物の添加によるコクサッキーB3 Nancy株に誘導される細胞変性作用の阻害の用量応答を示す棒グラフである。
図2図2は、50mg/kgの用量での本発明の6種類の異なる化合物の投与後の異なる時点でラットから抽出された血液の試料中の本発明の化合物のng/mlとして表された薬物動態プロフィールを示すグラフである。
図3図3は、実施例8の異なる用量での処置後のコクサッキーB3、Nancy株感染SJLマウスにおける膵炎スコアリングを示すグラフである。0=異常なし。1=外分泌膵臓におけるわずかな炎症および/または単一細胞の病巣。2=外分泌膵臓における中等度の炎症および/または壊死を伴ういくつかの病巣。3=外分泌膵臓における重度の炎症および/または大きな壊死領域。
図4図4は、Dako 5-D8/1モノクローナルマウス抗体を用いた免疫組織化学に基づく異なる用量の実施例8での処置後のコクサッキーB3、Nancy株感染SJLマウスにおけるウイルス力価スコアリングを示すグラフである。スコア4は、最も高いウイルス力価を示し、スコア0は、感染がないことを示す。
図5図5は、異なる用量の実施例8での処置後のコクサッキーB3、Nancy株感染SJLマウスにおけるウイルス力価のPCR検出からのCt値を示すグラフである。
図6図6は、それぞれ実施例2、8および20に関する50mg/kg/日の固定用量での処置後のコクサッキーB3、Nancy株感染SJLマウスにおける平均膵炎スコアリングからの結果ならびにウイルス力価のPCR検出からの平均Ct値を示す棒グラフである。処置を受けていないコクサッキーB3、Nancy株感染SJLマウスが、対照として使用された。
【発明を実施するための形態】
【0023】
“薬学的に許容可能な”は、一般に安全、非毒性であり生物学的にも他の点でも望ましくない点がない医薬組成物の調製において有用であることを意味し、獣医学的使用ならびにヒトの医薬的使用にも有用であることを含む。
【0024】
“処置”は、本明細書において用いられる際、名前を挙げられた障害もしくは病気の予防または一度障害が確立された後の障害の改善もしくは排除(すなわち治癒)を含む。
“有効量”は、処置される対象に療法的作用を与える化合物の量を指す。療法的作用は、客観的(すなわち、ある試験またはマーカーによって測定可能、例えば、処置された対象からの生物学的試料において測定可能なウイルス力価がない)または主観的(すなわち、対象が作用の徴候を与えるか、または作用を感じる)であり得る。
【0025】
別途記載されるかまたは示されない限り、用語“C1~C6アルキル”は、1~6個の炭素原子を有する直鎖または分枝状アルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、t-ブチルならびに直鎖および分枝鎖のペンチルおよびヘキシルを意味する。
【0026】
別途記載されるかまたは示されない限り、用語“ハロゲン”(または“ハロ”)は、フッ素(F)、塩素(Cl)、または臭素(Br)を指す。
RO型の部分は、式:
【0027】
【化2】
【0028】
の部分である。
RR’NC(O)型の部分は、式:
【0029】
【化3】
【0030】
の部分である。
RC(O)N(R’)型の部分は、式:
【0031】
【化4】
【0032】
の部分である。
RS(O)型の部分は、式:
【0033】
【化5】
【0034】
の部分である。
RS(O)N(R’)型の部分は、式:
【0035】
【化6】
【0036】
の部分である。
RR’NS(O)型の部分は、式:
【0037】
【化7】
【0038】
の部分である。
RR’N型の部分は、式:
【0039】
【化8】
【0040】
の部分である。
RC(O)型の部分は、式:
【0041】
【化9】
【0042】
の部分である。
ROC(O)型の部分は、式:
【0043】
【化10】
【0044】
の部分である。
用語“ヘテロシクリル”(または“ヘテロ環式環”)は、環中に炭素原子だけでなく少なくとも1個の他の原子、例えば窒素(N)、硫黄(S)および酸素(O)から選択される原子も含有する飽和または不飽和、芳香族または非芳香族の環式部分を指す。芳香族である場合、ヘテロシクリルは、“ヘテロアリール”とも呼ばれることができ、それは、少なくとも1個の環ヘテロ原子を含有する芳香環、例えばフリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピリジル、ピロリル、ピラゾリル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、チエニル、チアジアゾリル、チアゾリル、トリアゾリルおよびテトラゾリルを含有する芳香環を指す。
【0045】
用語“芳香族”は、本明細書で用いられる際、芳香族特性を有する不飽和環状部分を指し、一方で用語“非芳香族”は、本明細書で用いられる際、飽和であることも不飽和であることもできる、例えば多不飽和であることもできるが芳香族特徴を有しない環状部分を指す。
【0046】
用語“ベンジル”は、式CCH-、すなわち
【0047】
【化11】
【0048】
の部分を指す。
用語“ピリジル”(またはピリジニル)は、式:
【0049】
【化12】
【0050】
の部分を指す。
用語“3-ピリジル”(または“ピリジン-3-イル”)は、式:
【0051】
【化13】
【0052】
の部分を指す。
6位において部分R1で置換された3-ピリジル(例えば、6-メチル-3-ピリジル)は、式:
【0053】
【化14】
【0054】
の化合物である。
用語“4-ピリジル”(またはピリジン-4-イル)は、式:
【0055】
【化15】
【0056】
の部分を指す。
用語“チエニル”は、式:
【0057】
【化16】
【0058】
の部分を指す。
用語“2-チエニル”は、式:
【0059】
【化17】
【0060】
の部分を指す。
用語“フリル”は、式:
【0061】
【化18】
【0062】
の部分を指す。
用語“2-フリル”は、式:
【0063】
【化19】
【0064】
の部分を指す。
“非エンベロープ一本鎖(+)RNAウイルス感染症”は、非エンベロープ一本鎖(+)RNAウイルスによる感染症を指す。“非エンベロープウイルス”は、ウイルスエンベロープを欠くウイルスである。“一本鎖(+)RNAウイルス”は、一本鎖RNAでありそのRNAがウイルスに感染した細胞によってすぐにウイルスタンパク質に翻訳され得る遺伝物質を有するウイルスである。
【0065】
用語”哺乳類”は、ヒトまたはあらゆる哺乳動物、例えば霊長類、家畜、ペット動物または実験動物を指す。そのような動物の例は、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット等である。好ましくは、哺乳類は、ヒトである。しかし、ある態様において、哺乳類は、動物、例えば家畜、例えば牛、ヒツジ、ヤギ、ウマまたはブタである。一部の他の態様において、動物は、ペット、例えばイヌ、ネコまたはウサギである。
【0066】
用語”賦形剤”は、薬剤の投与を助けることが薬学の当業者に知られているような薬学的に許容可能な化学物質を指す。それは、医薬組成物の調製において有用であり、一般に安全であり、非毒性であり、生物学的にも他の点でも望ましくない点がない化合物であり、獣医学的使用ならびにヒトの医薬的使用に許容可能な賦形剤を含む。典型的な賦形剤は、結合剤、界面活性剤、希釈剤、崩壊剤、抗付着剤および潤滑剤を含む。
【0067】
本明細書で定義されている式(I)の化合物において、Xは、NまたはCHであり;かつYは、Nであり、かつZは、Cであり、またはYは、Cであり、かつZは、Nである。ある態様において、Xは、CHであり、Yは、Nであり、かつZは、Cであり;またはXは、CHであり、Yは、Cであり、かつZは、Nであり;またはXは、Nであり、Yは、Nであり、かつZは、Cである。ある態様において、Xは、CHであり、Yは、Nであり、かつZは、Cであり;またはXは、CHであり、Yは、Cであり、かつZは、Nである。ある態様において、Xは、CHであり、Yは、Cであり、かつZは、Nであり;またはXは、Nであり、Yは、Nであり、かつZは、Cである。ある態様において、Xは、CHであり、Yは、Nであり、かつZは、Cであり;またはXは、Nであり、Yは、Nであり、かつZは、Cである。
【0068】
ある態様において、Xは、CHであり、すなわち、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物:
【0069】
【化20】
【0070】
であり、式中、m、R、環A、YおよびZは、本明細書で定義されている通りである。
ある態様において、Xは、Nであり、すなわち、式(I)の化合物は、式(Ib)の化合物:
【0071】
【化21】
【0072】
であり、式中、m、R、環A、YおよびZは、本明細書で定義されている通りである。
ある態様において、Yは、Cであり、かつZは、Nであり、すなわち、式(I)の化合物は、式(Ic)の化合物:
【0073】
【化22】
【0074】
であり、式中、m、R、環AおよびXは、本明細書で定義されている通りである。
ある態様において、Yは、Nであり、かつZは、Cであり、すなわち、式(I)の化合物は、式(Id)の化合物:
【0075】
【化23】
【0076】
であり、式中、m、R、環AおよびXは、本明細書で定義されている通りである。
式(Ia)の化合物のある態様において、Yは、Cであり、かつZは、Nであり、すなわち、その化合物は、式(Ie):
【0077】
【化24】
【0078】
により表わされることができ、式中、m、Rおよび環Aは、本明細書で定義されている通りである。
式(Ia)の化合物の一部の他の態様において、Yは、Nであり、Zは、Cであり、すなわち、その化合物は、式(If):
【0079】
【化25】
【0080】
により表わされることができ、式中、m、Rおよび環Aは、本明細書で定義されている通りである。
式(Ib)の化合物の一部の他の態様において、Yは、Nであり、Zは、Cであり、すなわち、その化合物は、式(Ig):
【0081】
【化26】
【0082】
により表わされることができ、式中、m、Rおよび環Aは、本明細書で定義されている通りである。
式(Ib)の化合物の一部の他の態様において、Yは、Cであり、かつZは、Nであり、すなわち、その化合物は、式(Ih):
【0083】
【化27】
【0084】
により表わされることができ、式中、m、Rおよび環Aは、本明細書で定義されている通りである。
式(I)の化合物の一部の他の態様において、Xは、YがNでありかつZがCである場合のみNである。
【0085】
式(I)の化合物において、環Aは、フェニルまたはO、S、およびNから選択される1個以上のヘテロ原子を有する5員もしくは6員ヘテロアリールである。ある態様において、環Aは、5員または6員ヘテロアリールである。一部の他の態様において、環Aは、フェニルまたは6員ヘテロアリールである。さらに他の態様において、環Aは、フェニルである。さらに他の態様において、環Aは、フェニルまたは5員ヘテロアリールである。ある態様において、環Aは、5員ヘテロアリールである。一部の他の態様において、環Aは、6員ヘテロアリールである。
【0086】
環Aが5員または6員ヘテロアリールである場合、前記のヘテロアリールは、N、OおよびSから選択される1個以上のヘテロ原子を含有する。例えば、前記のヘテロアリールは、1、2、3または4個のヘテロ原子を含有することができる。ある態様において、前記のヘテロアリールは、1、2または3個のヘテロ原子を含有する。一部の他の態様において、前記のヘテロアリールは、N、OおよびSから選択される1または2個のヘテロ原子を含有する。さらに他の態様において、前記のヘテロアリールは、N、OおよびSから選択される1個のヘテロ原子を含有する。
【0087】
環Aがヘテロアリールである場合、それぞれのヘテロ原子は、独立してN、OおよびSから選択される。ある態様において、それぞれのヘテロ原子は、独立してNおよびOから選択される。さらに他の態様において、それぞれのヘテロ原子は、独立してNおよびSから選択される。ある特定の態様において、少なくとも1個のヘテロ原子は、Nであり、例えば、それぞれのヘテロ原子が、Nである。ある態様において、ヘテロアリールは、1個のヘテロ原子を含有し、それは、Nである。一部の他の態様において、ヘテロアリールは、1個のヘテロ原子を含有し、それは、Oである。一部の他の態様において、ヘテロアリールは、1個のヘテロ原子を含有し、それは、Sである。
【0088】
ある態様において、環Aが5員ヘテロアリールである場合、前記のヘテロアリールは、OおよびSから選択される1個のヘテロ原子を含み、場合により1個以上の窒素原子、例えば1~3個のN、または1もしくは2個のN、例えば1個のNを含有していてもよい。ある態様において、前記のヘテロアリールは、チエニルまたはフリル、例えば、2-チエニルまたは2-フリルである。ある態様において、環Aが5員ヘテロアリールである場合、前記のヘテロアリールは、より詳細にはチエニル、例えば2-チエニルである。
【0089】
ある態様において、環Aが6員ヘテロアリールである場合、前記のヘテロアリールのそれぞれのヘテロ原子は、Nである。例えば、ある態様において、環Aが6員ヘテロアリールである場合、前記のヘテロアリールは、ピリジル、例えば3-ピリジルまたは4-ピリジルである。
【0090】
ある態様において、環Aが5員または6員ヘテロアリールである場合、前記のヘテロアリールは、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル(thizaolyl)、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニルおよびピリダジニルから選択される。
【0091】
式(I)の化合物は、式(II)の部分:
【0092】
【化28】
【0093】
を含む。
ある態様において、環Aがフェニルまたは6員ヘテロアリールである場合、式(II)の部分は、より詳細には式(IIa)の部分:
【0094】
【化29】
【0095】
であり、式中、WおよびWは、独立してN、CHおよびCRから選択される。そのような態様において、式(I)の化合物は、式(Ij):
【0096】
【化30】
【0097】
により表わされることができ、式中、W、W、X、YおよびZは、本明細書で定義されている通りである。
ある態様において、WおよびWの一方は、Nとは異なる。ある態様において、WおよびWの少なくとも一方は、Nである。ある態様において、WおよびWの少なくとも一方は、CHとは異なる。ある態様において、WおよびWの少なくとも一方は、CRとは異なる。ある態様において、WおよびWは、互いに異なり、すなわち、WおよびWが両方ともNであることはなく、両方ともCHであることはなく、両方ともCRであることはない。
【0098】
式(Ij)の化合物のある特定の態様において、Wは、N、CHまたはCRであり、かつWは、NまたはCRである。一部の他の特定の態様において、Wは、CHまたはCRであり、かつWは、NまたはCRである。一部の他の特定の態様において、Wは、NまたはCHであり、かつWは、N、CHまたはCRである。これらの態様の一部において、WおよびWの少なくとも一方は、CHとは異なる。式(Ij)の化合物のさらに他の態様において、WまたはWのどちらかがNであり、他方は、CHおよびCRから選択される。これらの態様の一部において、Wは、Nであり、かつWは、CRであり;またはWは、CHであり、かつWは、Nである。
【0099】
一部のさらなる態様において、Wは、CHであり、すなわち、式(Ij)の化合物は、式(Ik):
【0100】
【化31】
【0101】
により表わされることができ、式中、W、X、YおよびZは、本明細書で定義されている通りである。
式(Ik)の化合物のある態様において、Wは、NまたはCRであり、例えば、Wは、Nである。式(Ik)の化合物の一部の他の態様において、Wは、CHまたはCRであり、例えば、Wは、CRである。
【0102】
式(Ij)の化合物の一部の他の特定の態様において、Wは、CRであり、すなわち、式(Ij)の化合物は、式(Im):
【0103】
【化32】
【0104】
により表わされることができ、式中、R、W、X、YおよびZは、本明細書で定義されている通りである。
式(Im)の化合物のある態様において、W1は、NまたはCHであり、例えば、W1は、Nである。
【0105】
一部のさらなる態様において、式(II)の部分:
【0106】
【化33】
【0107】
は、5員ヘテロアリールを含む部分、例えば非置換(mが0である)5員ヘテロアリールおよび本明細書で定義されている式(IIa)の環から選択され;例えば、非置換2-チエニル、およびWがCHであり、かつWがCRである、またはWがCHであり、かつWがNである、またはWがNであり、かつWがCRである式(IIa)の環から選択される。一部のさらなる態様において、式(II)の部分は、非置換2-チエニル、およびWがCHであり、かつWがNである、またはWがNであり、かつWがCRである式(IIa)の環から選択される。
【0108】
式(I)の化合物において、mは、環A上の置換基の数を示す整数である。整数mは、0、1または2であり、すなわち、環Aは、非置換である(mが0である)ことができ、または1または2個の部分R1により置換されている(mが1または2である)ことができる。ある態様において、mは、0または1である。一部の他の態様において、mは、0である。さらに他の態様において、mは、1または2、特に1である。
【0109】
ある態様において、環Aがフェニルである場合、mは、0とは異なる。従って、ある態様において、環Aがフェニルである場合、mは、1または2であり、環Aが5または6員ヘテロアリールである場合、mは、0、1または2である。一部の他の態様において、環Aがフェニルである場合、mは、1であり、環Aが5員または6員ヘテロアリールである場合、mは、0または1である。さらに他の態様において、環Aがフェニルである場合、mは、1であり、環Aが5員または6員ヘテロアリールである場合、mは、0である。一部のさらなる態様において、環Aがフェニルである場合、mは、1であり、環Aが5員ヘテロアリールである場合、mは、0であり、環Aが6員ヘテロアリールである場合、mは、0または1である。
【0110】
ある態様において、環Aは、フェニルであり、かつmは、0とは異なる。ある態様において、環Aは、フェニルであり、かつmは、1もしくは2であり、または環Aは、5もしくは6員ヘテロアリールであり、かつmは、0、1もしくは2である。一部の他の態様において、環Aは、フェニルであり、かつmは、1であり、または環Aは、5員もしくは6員ヘテロアリールであり、かつmは、0もしくは1である。さらに他の態様において、環Aは、フェニルであり、かつmは、1であり、または環Aは、5員もしくは6員ヘテロアリールであり、かつmは、0である。一部のさらなる態様において、環Aは、フェニルであり、かつmは、1であり、または環Aは、5員ヘテロアリールであり、かつmは、0であり、または環Aは、6員ヘテロアリールであり、かつmは、0もしくは1である。
【0111】
ある態様において、環Aは、フェニルであり、かつmは、0、1または2、特に1または2である。ある態様において、環Aは、フェニルであり、かつmは、1である。
ある態様において、環Aは、5員または6員ヘテロアリールであり、かつmは、0または1である。ある態様において、環Aは、5員または6員ヘテロアリールであり、かつmは、0である。ある態様において、環Aは、5員ヘテロアリールであり、かつmは、0である。ある態様において、環Aは、6員ヘテロアリールであり、かつmは、0または1である。ある態様において、環Aは、6員ヘテロアリールであり、かつmは、1である。ある態様において、環Aは、6員ヘテロアリールであり、かつmは、0である。
【0112】
式(I)の化合物において、それぞれの部分R1は、独立してハロゲン、C1~C6アルキル、RO、RS(O)、RS(O)N(R)、RNC(O)、RC(O)N(R)、R10C(O)、R1112NおよびR1314NS(O)から選択され;mが2である場合、環Aの隣接する原子に結合した2個のRは、それらが結合している原子と一緒に5または6員ヘテロ環式または炭素環式環を形成していることができる。ある態様において、それぞれのRは、独立してハロゲン、C1~C6アルキル、RO、RS(O)、RS(O)N(R)、RNC(O)、RC(O)N(R)、R10C(O)、R1112N、およびR1314NS(O)から選択される。
【0113】
ある態様において、それぞれのRは、独立してハロゲン、C1~C6アルキル、RO、RS(O)、RS(O)N(R)、RC(O)N(R)、R10C(O)、R1112NおよびR1314NS(O)から選択される。
【0114】
ある態様において、それぞれのRは、独立してハロゲン、C1~C6アルキル、RO、RS(O)、RS(O)N(R)、RNC(O)、R10C(O)、R1112NおよびR1314NS(O)から選択される。
【0115】
ある態様において、それぞれのRは、独立してハロゲン、C1~C6アルキル、RO、RS(O)、RS(O)N(R)、RNC(O)、RC(O)N(R)、R1112NおよびR1314NS(O)から選択される。
【0116】
ある態様において、それぞれのRは、独立してハロゲン、C1~C6アルキル、RO、RS(O)、RS(O)N(R)、RNC(O)、RC(O)N(R)、R10C(O)およびR1314NS(O)から選択される。
【0117】
ある態様において、それぞれのRは、独立してハロゲン、C1~C6アルキル、RO、RS(O)、RS(O)N(R)およびR1314NS(O)から選択される。ある態様において、それぞれのRは、独立してハロゲン、C1~C6アルキルおよびROから選択される。
【0118】
ある態様において、それぞれのRは、独立してRO、RS(O)、RS(O)N(R)およびR1314NS(O)から選択される。ある態様において、それぞれのRは、独立してRS(O)、RS(O)N(R)およびR1314NS(O)から選択される。
【0119】
一部のさらなる態様において、それぞれのRは、独立してC1~C6アルキル、RO、RS(O)、RS(O)N(R)、RNC(O)、RC(O)N(R)、R10C(O)、R1112NおよびR1314NS(O)から;特にC1~C6アルキル、RO、RS(O)、RS(O)N(R)およびR1314NS(O)から;またはC1~C6アルキル、ROおよびRS(O)から選択される。
【0120】
一部のさらなる態様において、それぞれのRは、独立してハロゲン、C1~C6アルキル、ROおよびRS(O)から選択される。
部分R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R15およびR16の各々は、存在する場合、独立してHおよびC1~C6アルキルから、例えばHおよびC1~C4アルキルから、またはHおよびC1~C3アルキルから、またはH、メチルおよびエチルから、特にHおよびメチルから選択される。
【0121】
ある態様において、部分R、R、R、R、R10、R15およびR16の各々は、存在する場合、独立してC1~C6アルキルから、例えばC1~C4アルキルから、またはC1~C3アルキルから、またはメチルおよびエチルから選択され、例えばメチルであり;かつ部分R、R、R、R、R11、R12およびR13の各々は、存在する場合、独立してHおよびC1~C6アルキルから、例えばHおよびC1~C4アルキルから、またはHおよびC1~C3アルキルから、またはH、メチルおよびエチルから、またはHおよびメチルから選択され、特にHである。
【0122】
ある態様において、部分R、R、R、R、R10、R15およびR16の各々は、存在する場合、独立してC1~C3アルキルから選択され;かつ部分R、R6、、R、R11、R12およびR13の各々は、存在する場合、独立してHおよびC1~C3アルキルから選択される。
【0123】
ある態様において、部分R、R、R、R、R10、R15およびR16の各々は、存在する場合、独立してメチルおよびエチルから選択され;かつ部分R、R6、、R、R11、R12およびR13の各々は、存在する場合、独立してH、メチルおよびエチルから選択される。
【0124】
ある特定の態様において、部分R、R、R、R、R10、R15およびR16の各々は、存在する場合、メチルであり;かつ部分R、R6、、R、R11、R12およびR13の各々は、存在する場合、Hである。
【0125】
部分R14は、H、C1~C6アルキル、R15C(O)およびR16OC(O)から選択される。ある態様において、R14は、HもしくはC1~C6アルキル、例えばHもしくはC1~C4アルキル;またはHもしくはC1~C3アルキル;またはH、メチルもしくはエチル;特にHもしくはメチルであり;例えば、R14は、Hである。一部の他の態様において、R14は、H、R15C(O)およびR16OC(O)から、例えばHおよびR15C(O)から選択され、例えば、R14は、R15C(O)である。さらに他の態様において、R14は、C1~C6アルキル、R15C(O)およびR16OC(O)から;例えば、R15C(O)およびR16OC(O)から選択され、例えば、R14は、R16OC(O)である。一部のさらなる態様において、R14は、C1~C6アルキル、例えばC1~C4アルキル;またはC1~C3アルキル;例えばメチルもしくはエチル;特にメチルである。
【0126】
がC1~C6アルキルである場合、前記のアルキルは、より詳細にはC1~C4アルキル、またはC1~C3アルキル、またはC1~C2アルキル、例えばメチルであることができる。
【0127】
がハロゲンである場合、前記のハロゲンは、例えばF、ClもしくはBr;またはFもしくはCl;特にClであることができる。ある態様において、Rは、ClまたはBrである。
【0128】
ある特定の態様において、それぞれのRは、独立してF、Cl、CH、CF、CHO、CHS(O)、CHS(O)NHおよびNHS(O)から;またはCl、CH、CHO、CHS(O)、CHS(O)NHおよびNHS(O)から;例えば、CH、CHO、CHS(O)、CHS(O)NHおよびNHS(O)から;またはCH、CHOおよびCHS(O)から選択される。
【0129】
式(I)の化合物において、あらゆるアルキルは、場合により1個以上のハロゲン原子によって置換されていることができる。ある態様において、いずれかのアルキルが1個以上のハロゲンにより置換されている場合、そのハロゲンは、フルオロ(F)である。ある態様において、ハロゲン置換は、いずれのアルキル上にも存在しない。
【0130】
式(I)の化合物へのあらゆる言及は、別途示されない限り、または文脈から明らかでない限り、暗に式(Ia)~(Im)において図説されるようなそのような化合物の態様のいずれかの化合物への言及でもあることは、特筆されるべきである。さらに、相互に排他的でない限り、そして本明細書で図説されていてもいなくても、式(Ia)~(Im)によって図説される態様のあらゆる組合せは、式(I)の範囲内であることが意図されている。例えば、ある態様において、式(Ia)の化合物は、式(Ic)の化合物、すなわち式(Ie)によって図説される化合物でもある。一部の他の態様において、式(Ia)の化合物は、式(Id)の化合物、すなわち式(If)によって図説される化合物でもある。
【0131】
同様に、ある態様において、式(Ia)の化合物は、式(Ij)の化合物でもある。ある態様において、式(Ib)の化合物は、式(Ij)の化合物でもある。ある態様において、式(Ic)の化合物は、式(Ij)の化合物でもある。ある態様において、式(Id)の化合物は、式(Ij)の化合物でもある。
【0132】
式(I)の化合物のある態様において、Xは、CHであり、Yは、Nであり、かつZは、Cであり、またはXは、CHであり、Yは、Cであり、かつZは、Nであり;またはXは、Nであり、かつYは、Nであり、かつZは、Cであり;かつ環Aは、フェニル、チエニルまたはピリジルであり、例えば環Aは、フェニル、2-チエニル、3-ピリジルまたは4-ピリジルである。これらの態様の一部において、環Aがフェニルである場合、mは、1であり、環Aがチエニルまたはピリジルである場合、mは、0または1であり;例えば、環Aがフェニルである場合、mは、1であり;環Aがチエニルである場合、mは、0であり;そして環Aがピリジルである場合、mは、0または1である。これらの態様の一部において、Rは、ハロゲン、C1~C6アルキル、RO、RS(O)、RS(O)N(R)またはR1314NS(O)であり;R、R、R、R、R13およびR14の各々は、独立してHおよびC1~C6アルキルから選択され;例えばHおよびC1~C3アルキルから選択され、かつあらゆるアルキルは、場合により1個以上のハロゲンにより置換されていてもよい。
【0133】
式(I)の化合物の一部の特定の態様において、
Xは、CHであり、Yは、Nであり、かつZは、Cであり;またはXは、CHであり、Yは、Cであり、かつZは、Nであり;またはXは、Nであり、Yは、Nであり、かつZは、Cであり;
環Aは、フェニルまたは1個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員ヘテロアリールであり、ヘテロ原子は、N、OおよびSから選択され;
mは、0または1であり;
それぞれのRは、独立してハロゲン、C1~C6アルキル、RO、RS(O)、RS(O)N(R)、RNC(O)、RC(O)N(R)、R10C(O)、R1112NおよびR1314NS(O)から選択され;
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12およびR13の各々は、独立してHおよびC1~C6アルキルから選択され;
14は、H、C1~C6アルキル、R15C(O)およびR16OC(O)から選択され、
15およびR16は、独立してHおよびC1~C6アルキルから選択され;かつ
あらゆるアルキルは、場合により1個以上のハロゲンによって置換されていてもよい。
【0134】
式(I)の化合物の一部の他の特定の態様において、
Xは、CHであり、Yは、Nであり、かつZはCであり;またはXは、CHであり、Yは、Cであり、かつZは、Nであり;またはXは、Nであり、Yは、Nであり、かつZは、Cであり;
環Aは、フェニルまたは1個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員ヘテロアリールであり、そのヘテロ原子は、N、OおよびSから選択され;
mは、0または1であり;
それぞれのR1は、独立してハロゲン、C1~C6アルキル、RO、RS(O)、RS(O)N(R)およびR1314NS(O)から選択され;
、R、R、R、R13およびR14の各々は、独立してHおよびC1~C6アルキルから選択され;
かつあらゆるアルキルは、場合により1個以上のハロゲンによって置換されていてもよい。
【0135】
式(I)の化合物の一部の他の特定の態様において、
Xは、CHであり、Yは、Nであり、かつZはCであり;またはXは、CHであり、Yは、Cであり、かつZは、Nであり;またはXは、Nであり、Yは、Nであり、かつZは、Cであり;
環Aは、フェニル、2-チエニル、3-ピリジルまたは4-ピリジルであり;
mは、0または1であり;
それぞれのRは、独立してハロゲン、C1~C6アルキル、RO、RS(O)、RS(O)N(R)およびR1314NS(O)から選択され;
、R、R、R、R13およびR14の各々は、独立してHおよびC1~C6アルキルから選択され;
かつあらゆるアルキルは、場合により1個以上のハロゲンによって置換されていてもよい。
【0136】
式(I)の化合物の一部の他の特定の態様において、
Xは、CHであり、Yは、Nであり、かつZは、Cであり;またはXは、CHであり、Yは、Cであり、かつZは、Nであり;またはXは、Nであり、Yは、Nであり、かつZは、Cであり;
環Aは、フェニル、2-チエニル、3-ピリジルまたは4-ピリジルであり;
mは、0または1であり;
それぞれのRは、独立してハロゲン、C1~C3アルキル、RO、RS(O)、RS(O)N(R)およびR1314NS(O)から選択され;
、R、R、R、R13およびR14の各々は、独立してHおよびC1~C3アルキルから選択され;
かつあらゆるアルキルは、場合により1個以上のハロゲンによって置換されていてもよい。
【0137】
上記の特定の態様の一部において、Xは、CHであり、Yは、Nであり、かつZは、Cである。上記の特定の態様の一部の他のものにおいて、Xは、CHであり、Yは、Cであり、かつZは、Nである。上記の特定の態様のさらに他のものにおいて、Xは、Nであり、Yは、Nであり、かつZは、Cである。
【0138】
上記の特定の態様の一部において、環Aがフェニルである場合、mは、0とは異なる。
上記の特定の態様の一部の他のものにおいて、あらゆるアルキルが場合により1個以上のハロゲンによって置換されていてもよい場合、前記のハロゲンは、Fである。
【0139】
上記の特定の態様の一部の他のものにおいて、環Aは、5員または6員ヘテロアリールである。これらの態様の一部において、環Aは、チエニル、例えば2-チエニルである。これらの態様の一部の他のものにおいて、環Aは、本明細書で定義される式(IIa)の環であり、ここで、WおよびWのうちの少なくとも一方は、Nである。
【0140】
上記の特定の態様の一部の他のものにおいて、環Aは、フェニルまたは6員ヘテロアリールである。
ある態様において、化合物は、式(Id)の化合物であり、より詳細には式(Ig)の化合物であり、環Aは、5員または6員ヘテロアリールであり、かつmは、0または1である。
【0141】
これらの態様の一部において、化合物は、式(Ig)の化合物であり、環Aは、5員または6員ヘテロアリールであり、かつmは、0である。これらの態様の一部において、化合物は、式(Ig)の化合物であり、環Aは、5員ヘテロアリールであり、かつmは、0である。
【0142】
これらの態様の一部の他のものにおいて、化合物は、式(Ig)の化合物であり、環Aは、6員ヘテロアリールであり、かつmは、0または1である。これらの態様の一部において、化合物は、式(Ig)の化合物であり、環Aは、6員ヘテロアリールであり、かつmは、0である。
【0143】
ある態様において、化合物は、式(Ib)の化合物であり、環Aは、5員または6員のヘテロアリールであり、かつmは、0または1である。これらの態様の一部において、化合物は、式(Ib)の化合物であり、環Aは、5員または6員ヘテロアリールであり、かつmは、0である。これらの態様の一部において、化合物は、式(Ib)の化合物であり、環Aは、5員ヘテロアリールであり、かつmは、0である。例えば、ある態様において、化合物は、式(Ib)の化合物であり、環Aは、4-ピリジルまたは2-チエニルであり、かつmは、0である。ある態様において、化合物は、式(Id)の化合物であり、環Aは、4-ピリジルまたは2-チエニルであり、かつmは、0である。これらの態様の一部において、化合物は、式(Ig)の化合物であり、環Aは、4-ピリジルまたは2-チエニルであり、かつmは、0である。
【0144】
一部の他の態様において、化合物は、式(Ib)、(Id)または(Ig)の化合物であり、環Aは、ピリジルまたはチエニルであり、かつmは、0または1である。これらの態様の一部において、化合物は、式(Ig)の化合物である。
【0145】
上記の態様の一部において、環Aがチエニルである場合、mは、0である。
式(I)の化合物のある態様において、環Aは、4-ピリジルもしくは2-チエニルであり、かつmは、0であり;または環Aは、フェニル、3-ピリジルもしくは4-ピリジルであり、かつmは、1である。
【0146】
ある態様において、式(II):
【0147】
【化34】
【0148】
の部分は、以下:
【0149】
【化35】
【0150】
から選択される部分であり、式中、Rは、本明細書で定義された通りであり、例えばRは、ハロゲン、C1~C6アルキル、RO、RS(O)、RS(O)N(R)およびR1314NS(O)から選択される。
【0151】
ある態様において、式(II)の部分は、フェニル、4-メトキシフェニル、4-フルオロフェニル、4-クロロフェニル、4-メチルスルホニルフェニル、4-スルファモイルフェニル、4-(メチルスルホンアミド)フェニル、ピリジン-4-イル、6-メチルピリジン-3-イル、6-トリフルオロメチルピリジン-3-イル、6-メトキシピリジン-3-イルおよび2-チエニルから選択される。一部のさらなる態様において、式(II)の部分は、4-メトキシフェニル、4-クロロフェニル、4-メチルスルホニルフェニル、4-スルファモイルフェニル、4-(メチルスルホンアミド)フェニル、ピリジン-4-イル、6-メチルピリジン-3-イル、6-メトキシピリジン-3-イルおよび2-チエニルから選択される。
【0152】
一部のさらなる態様において、
Xは、CHまたはNであり;
Yは、Nであり、かつZは、Cであり;またはYは、Cであり、かつZは、Nであり;
環Aは、フェニル、3-ピリジル、4-ピリジルまたは2-チエニルであり
mは、0または1であり;
それぞれのRは、独立してC1~C6アルキル、ROおよびRS(O)から選択され;
およびRの各々は、独立してC1~C6アルキルから選択され;かつ
あらゆるアルキルは、場合により1個以上のハロゲン、例えば1個以上のFによって置換されていてもよい。
【0153】
さらに他の態様において、
Xは、CHまたはNであり;
Yは、Nであり、かつZは、Cであり;またはYは、Cであり、かつZは、Nであり;
環Aは、フェニル、3-ピリジル、4-ピリジルまたは2-チエニルであり、
mは、0または1であり;
それぞれのRは、独立してC1~C3アルキル、ROおよびRS(O)から選択され;
およびRの各々は、独立してC1~C3アルキルから選択され;かつ
あらゆるアルキルは、場合により1個以上のハロゲン、例えば1個以上のFによって置換されていてもよい。
【0154】
さらに他の態様において、
Xは、CHまたはNであり;
Yは、Nであり、かつZは、Cであり;またはYは、Cであり、かつZは、Nであり;
環Aは、3-ピリジル、4-ピリジル、または2-チエニルであり、
mは、0または1であり;例えば、環Aが4-ピリジルまたは2-チエニルである場合、mは、0であり、環Aが3-ピリジルである場合、mは、1であり;
それぞれのRは、独立してC1~C3アルキル、ROおよびRS(O)から選択され;
およびRの各々は、独立してC1~C3アルキルから選択され;かつ
あらゆるアルキルは、場合により1個以上のハロゲン、例えば、1個以上のFによって置換されていてもよい。
【0155】
一部のさらなる態様において、例えば、式(Ij)のある態様において、
Xは、CHまたはNであり;
Yは、Nであり、かつZは、Cであり;またはYは、Cであり、かつZは、Nであり;
環Aは、フェニル、3-ピリジルまたは4-ピリジルであり;
mは、0または1であり;例えば、環Aが4-ピリジルである場合、mは、0であり、環Aがフェニルまたは3-ピリジルである場合、mは、1であり;
それぞれのRは、独立してC1~C6アルキル、ROおよびRS(O)から選択され;
およびRの各々は、独立して、C1~C6アルキルから選択され;かつ
あらゆるアルキルは、場合により1個以上のハロゲン、例えば、1個以上のFによって置換されていてもよい。
【0156】
さらに他の態様において、例えば式(Ij)の一部の態様において、
Xは、CHまたはNであり;
Yは、Nであり、かつZは、Cであり;またはYは、Cであり、かつZは、Nであり;
環Aは、3-ピリジルまたは4-ピリジルであり;
mは、0または1であり;例えば、環Aが4-ピリジルである場合、mは、0であり、環Aが3-ピリジルである場合、mは、1であり;
それぞれのRは、独立してC1~C3アルキル、ROおよびRS(O)から選択され;
およびRの各々は、独立してC1~C6アルキルから選択され;かつ
あらゆるアルキルは、場合により1個以上のハロゲン、例えば1個以上のFによって置換されていてもよい。
【0157】
さらに他の態様において、
Xは、CHまたはNであり;
Yは、Nであり、かつZは、Cであり;またはYは、Cであり、かつZは、Nであり;
環Aは、フェニル、3-ピリジル、4-ピリジルまたは2-チエニルであり;
mは、0または1であり;
各々のRは、独立してメチル、CHOおよびCHS(O)から選択され;かつあらゆるメチルは、場合により1個以上のFによって置換されていてもよい。
【0158】
さらに他の態様において、
Xは、CHまたはNであり;
Yは、Nであり、かつZは、Cであり;またはYは、Cであり、かつZは、Nであり;
環Aは、フェニル、3-ピリジル、4-ピリジルまたは2-チエニルであり;
mは、0または1であり;
各々のRは、独立してメチル、CHOおよびCHS(O)から選択され;かつあらゆるメチルは、場合により1個以上のFによって置換されていてもよい。
【0159】
さらに他の態様において、
Xは、CHまたはNであり;
Yは、Nであり、かつZは、Cであり;またはYは、Cであり、かつZは、Nであり;
環Aは、3-ピリジル、4-ピリジルまたは2-チエニルであり;
mは、0または1であり;
各々のRは、独立してメチル、CHOおよびCHS(O)から選択され;かつあらゆるメチルは、場合により1個以上のFによって置換されていてもよい。
【0160】
さらに他の態様において、Xは、CHまたはNであり;
Yは、Nであり、かつZは、Cであり;またはYは、Cであり、かつZは、Nであり;
環Aは、3-ピリジルまたは4-ピリジルであり;
mは、0または1であり;
各々のRは、独立してメチル、CHOおよびCHS(O)から選択され;かつあらゆるメチルは、場合により1個以上のFによって置換されていてもよい。
【0161】
これらの態様の一部において、環Aが3-ピリジル、4-ピリジルまたはフェニルである場合、部分(II)は、式(IIa)の部分である。
ある態様において、環Aが3-ピリジルである場合、mは、1または2であり、かつ1個のRが、ピリジル環上の6位に結合している。
【0162】
さらに他の態様において、式(II)の部分は、5員非置換ヘテロアリール、例えばチエニルまたはフリル、特にチエニルである。さらに他の態様において、式(II)の部分は、2-チエニルまたは2-フリル、特に2-チエニルである。これらの態様の一部において、式(I)の化合物は、式(Id)の化合物である。
【0163】
式(I)の化合物は、適切な薬学的に許容可能な塩に変換されることもできる。化合物の薬学的に許容可能な塩という用語は、本明細書で定義されるように薬学的に許容可能であり、かつ親化合物の所望の薬理学的活性を有する塩を指す。薬学的に許容可能な塩は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸と共に形成される酸付加塩;または有機酸、例えば酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸(camphorsulfonic acid)、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸(hydroxynaphtoic acid)、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2-ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸等と共に形成される酸付加塩を含む。
【0164】
酸付加塩の調製において、好ましくは、適切に療法的に許容可能な塩を形成するような酸が、用いられる。そのような酸の例は、ハロゲン化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、脂肪族、脂環式、芳香族またはヘテロ環式カルボン酸またはスルホン酸類、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、ピルビン酸、p-ヒドロキシ安息香酸、エンボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ハロゲンベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸である。
【0165】
キラル原子が化学構造中に存在する場合はいつでも、別途銘記されない限り、そのキラル原子と関係する全ての立体異性体が構造に包含されることが、意図されている。カーン・インゴルド・プレローグRS表記系を用いて、あらゆる不斉原子は、(R)または(S)立体配置で存在することができ、かつ化合物は、その立体異性体の混合物、例えばラセミ混合物、または1つの立体異性体のみとして存在することができ、それぞれが、本発明の範囲内である。
【0166】
本発明は、少なくとも1種類の式(I)の化合物、もしくは個々の異性体、異性体のラセミもしくは非ラセミ混合物、またはそれらの薬学的に許容可能な塩を、少なくとも1種類の薬学的に許容可能な賦形剤、例えばキャリヤーと一緒に含み、場合により他の療法および/または予防成分と一緒に含んでいてもよい医薬組成物を含む。
【0167】
本発明に従う医薬組成物は、局所(topical)(局所(local))または全身投与のため、例えば経腸投与、例えば直腸もしくは経口投与のため、または哺乳類(特にヒト)への非経口投与のためのものであることができ、療法上有効量の本発明に従う化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として、薬学的に許容可能な賦形剤、例えば薬学的に許容可能なキャリヤーと一緒に含む。有効成分の療法上有効量は、本明細書で定義された通りであり、例えば哺乳類の種、体重、年齢、個体の状態、個体の薬物動態データ、処置されるべき疾患および投与方式に依存する。
【0168】
経腸、例えば経口投与のために、本発明の化合物は、多種多様な剤形で配合されることができる。医薬組成物および剤形は、本発明の化合物(単数または複数)またはその薬学的に許容可能な塩(類)を有効成分として含むことができる。薬学的に許容可能なキャリヤーは、固体または液体のどちらであることもできる。固体形態の製剤は、散剤、錠剤、丸剤、トローチ剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤および分散性顆粒剤を含む。固体キャリヤーは、希釈剤、香味剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル封入(encapsulating)材料の役目も果たすことができる1種類以上の物質であることができる。散剤において、キャリヤーは、一般に微細に分割された固体であり、それは、微細に分割された有効構成要素との混合物である。錠剤において、有効構成要素は、一般に必要な結合能力を有するキャリヤーと適切な割合で混合され、所望の形状および大きさに圧縮される。適切なキャリヤーは、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖類、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点蝋剤、ココアバター等を含むが、それらに限定されない。有効化合物の配合物は、キャリヤーとしてのカプセル封入材料を含むことができ、有効構成要素(キャリヤーを伴なうかまたは伴なわない)がキャリヤーにより取り囲まれ、それが有効構成要素と会合しているカプセルを提供する。
【0169】
経口投与に適した他の形態は、エマルジョン、シロップ、エリキシル、水溶液、水性懸濁液または使用直前に液体形態の製剤に変換されることが意図されている固体形態の製剤を含む液体形態製剤を含む。エマルジョンは、溶液中、例えばプロピレングリコール水溶液中で調製されることができ、または乳化剤、例えばレシチン、ソルビタンモノオレエートもしくはアラビアゴムを含有することができる。水溶液は、有効構成要素を水中で溶解させ、適切な着色剤、香料、安定化剤および増粘剤を添加することにより調製されることができる。水性懸濁液は、微細に分割された有効構成要素を粘性材料、例えば天然または合成ガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび他の周知の懸濁剤と共に水中で分散させることにより調製されることができる。固体形態の製剤は、溶液、懸濁液およびエマルジョンを含み、有効構成要素に加えて着色剤、香料、安定化剤、緩衝剤、人工および天然の甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤等を含有することができる。
【0170】
直腸投与のための典型的な組成物は、例えば適切な非刺激性賦形剤、例えばココアバター、合成グリセリドエステル類またはポリエチレングリコール類を含有することができる坐剤を含み、それは、常温では固体であるが、直腸腔中で液化および/または溶解して薬物を放出する。
【0171】
本発明の化合物は、非経口的に、例えば、吸入、注射または注入により、例えば静脈内、動脈内、骨内、筋肉内、脳内、脳室内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、病変内、頭蓋内、皮内および皮下注射または注入により投与させられることもできる。従って、非経口投与に関して、本発明の医薬組成物は、例えば無菌の水性または油性懸濁液として、無菌の注射可能または注入可能な製剤の形態であることができる。この懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤(例えばTween 80)および懸濁化剤を用いて、当該技術で既知の技法に従って配合されることができる。無菌の注射可能または注入可能な製剤は、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の無菌の注射可能または注入可能な溶液または懸濁液であることもできる。例えば、医薬組成物は、1,3-ブタンジオール中の溶液であることができる。本発明の組成物において用いられることができる許容可能なビヒクルおよび溶媒の他の例は、マンニトール、水、リンガー溶液および等張塩化ナトリウム溶液を含むが、それらに限定されない。加えて、無菌の不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として従来法で用いられている。この目的には、合成モノまたはジグリセリドを含むあらゆる無刺激性不揮発性油が、用いられることができる。脂肪酸、例えばオレイン酸およびそのグリセリド誘導体は、天然の薬学的に許容可能な油、例えばオリーブ油またはヒマシ油と同様に、特にそれらのポリオキシエチル化版において注射剤の調製において有用である。これらの油溶液または懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤を含有することもできる。
【0172】
非経口使用のための溶液は、適切な安定化剤および必要であれば緩衝物質を含有することもできる。適切な安定化剤は、抗酸化剤、例えば重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸(単独または組み合わせの両方)、クエン酸およびその塩ならびにEDTAナトリウムを含む。非経口溶液は、保存剤、例えば塩化ベンザルコニウム、メチルまたはプロピルパラベンおよびクロロブタノールも含有することができる。
【0173】
吸入または経鼻投与に関して、適切な医薬配合物は、例えば直径約10μm以下の平均サイズを有する粒子、エアロゾル、粉末、ミストまたは液滴としてのものである。例えば、吸入用組成物は、ベンジルアルコールもしくは他の適切な保存剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン類および/または当該技術で知られている他の可溶化剤もしくは分散剤を利用して、生理食塩水中の溶液として調製されることができる。
【0174】
本発明の医薬組成物は、局所的に皮膚に、または粘膜に投与されることもできる。局所適用に関して、医薬組成物は、例えばローション、ゲル、ペースト、チンキ、経皮パッチまたは経粘膜送達のためのゲルであることができる。
【0175】
組成物は、キャリヤー中に懸濁または溶解された有効成分を含有する適切な軟膏として配合されることもできる。本発明の化合物の局所投与用キャリアーは、鉱油、液体石油、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋剤および水を含むが、それらに限定されない。
【0176】
あるいは、医薬組成物は、キャリヤー中に懸濁または溶解された有効化合物を含有する適切なローションまたはクリームとして配合されることができる。適切なキャリヤーは、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステル蝋剤、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水を含むが、それらに限定されない。
【0177】
本発明の医薬組成物は、直腸坐剤配合物により、または適当な浣腸配合物中で下部腸管に局所適用されることもできる。
適切な医薬賦形剤、例えばキャリヤーおよび医薬剤形を調製する方法が、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company(薬物配合の技術分野における標準的な参照文献)において記載されている。医薬組成物は、少なくとも1種類の薬学的に許容可能な賦形剤と一緒に、おおよそ1%~おおよそ95%、好ましくはおおよそ20%~おおよそ90%の本発明の化合物を含むことができる。
【0178】
一般に、本発明の化合物は、同様の有用性を果たす薬剤に関する許容される投与方式のいずれかにより療法上有効量で投与されるであろう。適切な1日量は、典型的には処置されるべき疾患の重症度、患者の年齢および相対的健康状態、使用される化合物の効力、投与の経路および形態ならびに投与が向けられる適応症等のような多数の要因に依存して1~1000mg、例えば1~500mgまたは1~50mgの範囲の式(I)の化合物または同等の量のその薬学的に許容可能な塩である。そのような疾患を処置する当業者は、過度の実験操作なしに、そして個人的知識および本出願の開示に頼って、所与の疾患に関する本発明の化合物の療法上有効量を確認することができるであろう。本発明の化合物は、経腸または非経口投与に適した医薬配合物を含む医薬配合物として投与されることができる。好ましい投与様式は、一般に苦痛の程度に応じて調節されることができる好都合な毎日の投与計画を用いる経口である。
【0179】
本発明の化合物は、哺乳類におけるRNAウイルス感染によって引き起こされる疾患、例えば非エンベロープ一本鎖(+)RNAウイルス感染、特にピコルナウイルス、すなわちピコルナウイルス科に属するウイルスによって引き起こされる疾患の処置に有用であるものとして意図されている。ある態様において、ピコルナウイルスは、エンテロウイルス、ライノウイルス、ヘパトウイルス、カルジオウイルス、アフトウイルス、ポリオウイルス、パレコウイルス、エルボウイルス、コブウイルス、テッショウウイルス、コクサッキーウイルスから選択され;例えば、エンテロウイルス、ライノウイルス、ヘパトウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルスから選択される。一部の態様において、式(I)の化合物が獣医学的使用に関して意図されている場合、ウイルスは、アフトウイルスおよびテッショウウイルスから選択され得る。
【0180】
ウイルス感染に関連する、それにより引き起こされる、または他の点でそれと関係すると考えられる疾患、例えばピコルナウイルスによる疾患は、例えば膵炎、灰白髄炎、脳炎、髄膜炎、敗血症、癌、例えば乳癌、前立腺癌、卵巣癌および結腸直腸癌、麻痺、心筋炎、糖尿病、風邪、手足口病、ヘルパンギーナ、胸膜痛、下痢、粘膜皮膚病変、呼吸器疾患、結膜炎、筋炎および慢性疲労症候群ならびに神経変性疾患、例えば多発性硬化症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病およびハンチントン病である。
【0181】
本発明の化合物はさらに、障害された、および/または異常なオートファジーによって引き起こされる疾患の処置に有用であるものとして意図されている。障害された、または異常なオートファジーに関連すると考えられている疾患は、例えば癌、心臓疾患、糖尿病、炎症性疾患、神経精神疾患ならびに神経変性疾患、例えば多発性硬化症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病およびハンチントン病である。
【0182】
本発明の化合物は、PI4キナーゼ阻害剤であり、従ってそれは、PI4キナーゼの阻害が有益であると考えられる様々な病気、例えば膵炎、灰白髄炎、脳炎、髄膜炎、敗血症、癌、例えば乳癌、前立腺癌、卵巣癌および結腸直腸癌、麻痺、心臓疾患、例えば心筋炎、糖尿病、風邪、手足口病、ヘルパンギーナ、胸膜痛、下痢、粘膜皮膚病変、呼吸器疾患、結膜炎、筋炎、慢性疲労症候群、神経精神疾患、神経変性疾患、例えば多発性硬化症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病およびハンチントン病ならびに炎症性の病気から選択される病気の処置において有用性を有することができるものと考えられる。
【0183】
従って、本発明は、上記で言及された疾患のいずれかの処置における使用のための式(I)の化合物;上記で言及された疾患のいずれかの処置における使用のための医薬組成物;上記で言及された疾患のいずれかの処置のための医薬品の製造における式(I)の化合物の使用;および上記で言及された疾患のいずれかの処置の方法であって、そのような処置を必要とする動物またはヒトに式(I)の化合物を投与することによる方法を含む。好ましくは、式(I)の化合物は、ヒト患者の処置のために使用される。しかし、ある態様において、式(I)の化合物は、動物(すなわち、非ヒト患者)、例えば本明細書において言及された動物の処置のために使用される。
【0184】
本発明の化合物は、当業者により、化学合成の分野内の当業者の知識を用いて、本明細書において以下に続くであろう説明的な限定的でない実施例を考慮して、そして分野内の文献を参照することにより調製されることができる。
【実施例
【0185】
本発明の化合物は、本明細書において以下で記載される一般手順1~3に従うことにより合成された。それらの構造式および化学名が、表1において与えられている。
【0186】
【表1-1】
【0187】
【表1-2】
【0188】
【表1-3】
【0189】
【表1-4】
【0190】
【表1-5】
【0191】
一般手順:
反応は、別途特筆されない限り、アルゴンまたは窒素の陽圧下で、火炎乾燥され密封された管またはオーブン乾燥されたガラス製品中で実施された。空気および水分に感受性の液体および溶液は、注射器を介して移された。ジエチルエーテル(EtO)およびテトラヒドロフラン(THF)が、ナトリウム/ベンゾフェノン-ケチルから蒸留された。ジクロロメタン(CHCl)が、水素化カルシウムから蒸留された。他の全ての化学物質は、商業的供給業者から得られ、別途特筆されない限り、それ以上精製せずに用いられた。モレキュラーシーブは、350℃で活性化され、使用直前に粉砕され、次いで真空下で火炎乾燥された。反応は、0.25mmのE.Merckプレコートシリカゲルプレートを用いた薄層クロマトグラフィー(TLC)によってモニターされた。有機溶液は、50℃未満でのロータリーエバポレーションにより濃縮された。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、60~120および230~400メッシュのシリカゲルを用いて実施された。収率は、別途特筆されない限り、クロマトグラフィー的および分光学的に純粋な化合物を参照する。Hおよび13Cスペクトルは、Bruker AVANCE III HD 400MHz分光計で記録された。化学シフトは、テトラメチルシランからの低磁場への百万分率(δスケール)で表現され、NMR溶媒中の残留共鳴が参照される(CHClH NMRに関してδ7.26、13C NMRに関してδ77.16)。LC-MSは、chemstationおよびBruker daltonicsソフトウェアを備えたAgilent XCT Ion Trap上で実施された。
【0192】
本明細書において以下で記載される一般手順1~3の文脈において、用語RNHは、一般式(III)
【0193】
【化36】
【0194】
のアミンを指し、式中、m、Rおよび環Aは、本明細書において記載された通りである。
一般手順1~3において用いられるテトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-1H-インダゾールは、次の反応スキーム:
【0195】
【化37】
【0196】
において図説されている下記の2工程手順により合成された。
工程1
1-(5-ブロモ-2-フルオロ-フェニル)-エタノン(10.0g、0.046mol)のピリジン(50mL)中における撹拌溶液に、メチルヒドラジン(2.7mL、0.050mol)を室温で添加した。得られた反応塊(reaction mass)を100℃で16時間撹拌した。揮発性物質の完全な蒸発後に得られた粗生成物を、水(50mL)で希釈し、酢酸エチル(100mL×2)で抽出した。有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮すると、生成物が淡黄色固体として得られた。粗生成物をシリカゲル(230~400)カラムクロマトグラフィー(ヘキサン中15%酢酸エチル)により精製すると、5-ブロモ-1,3-ジメチル-1H-インダゾールが淡黄色の油(5.4g、52.4%)として得られた。
【0197】
工程2
5-ブロモ-1,3-ジメチル-1H-インダゾール(5.4g,0.023mol)および4,4,5,5,4’,4’,5’,5’-オクタメチル-[2,2’]ビ[[1,3,2]ジオキサボロラニル](7.3g.0.0287mol)のジオキサン(54mL,10V)中における撹拌溶液に、酢酸カリウム(7.05g,0.0719mol)およびテトラキスパラジウム(1.38g,0.0011mol)を室温下で添加した。結果として生じた反応塊を、100℃で3時間の期間をかけて撹拌した。反応をTLCによりモニターした。反応塊を酢酸エチル(200mL)で希釈し、セライトパッドを通して濾過した。有機層を水(500mL)、ブライン(250mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲル(230~400)カラムクロマトグラフィー(ヘキサン中15%酢酸エチル)により精製すると、テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-1H-インダゾールが灰白色固体(5.2g、80%)として得られた。
【0198】
一般手順1:イミダゾピリダジン誘導体の合成(スキーム1)
【0199】
【化38】
【0200】
工程1
6-メチル-ピリダジン-3-イルアミン、A(2.0g、0.018mol)のアセトニトリル(60mL、30V)中における溶液に、N-ブロモスクシンアミド(3.92g、0.022mol)を室温下で添加した。反応塊を室温で2時間撹拌した。反応をTLCによりモニターした。揮発性物質を蒸発させて得られた粗製の反応塊を、シリカゲル(60~120)カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中3%メタノール)により精製すると、4-ブロモ-6-メチル-ピリダジン-3-イルアミン、B(0.6g、30%)が暗褐色固体として得られた。
【0201】
工程2
B(0.6g、3.1mmol)のエタノール(6mL、10V)中における溶液に、クロロアセトン(0.4mL、4.4mmol)を室温下で添加した。得られた反応塊を還流温度で16時間撹拌した。反応をTLCによりモニターした。揮発性物質を蒸発させて得られた粗製の反応塊を飽和重炭酸ナトリウムで塩基性化し、ジクロロメタン(100mL)で抽出した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲル(230~400)カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中1.5%メタノール)により精製すると、8-ブロモ-2,6-ジメチル-イミダゾ[1,2-b]ピリダジン、C(0.15g、20%)が淡黄色固体として得られた。
【0202】
工程3
密閉管中のアルゴン雰囲気下におけるトルエン(10mL、30V)中のC(0.33g、1.4mmol)およびアミンRNH(0.0027mol、1.3当量)の溶液に、炭酸セシウム(1.0g、2.9mmol)およびBINAP(46mg、0.07mmol)を室温で添加した。結果として得られた反応塊を5分間脱気し、酢酸パラジウム(17mg、0.07mmol)を添加し、撹拌を100℃で16時間の期間の間継続した。結果として得られた反応塊を酢酸エチル(100mL)で希釈し、セライトパッドを通して濾過した。酢酸エチル層を水(50mL)およびブライン(50mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲル(230~400)カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中3%メタノール)により精製すると、化合物Dが得られた。
【0203】
工程4
化合物D(1.0当量)のアセトニトリル(10mL、10V)中における撹拌溶液に、氷温下でN-ヨードスクシンアミド(0.9当量)を添加した。得られた反応塊を氷温で10分間の期間をかけて撹拌した。反応をTLCによりモニターした。揮発性物質を蒸発させて得られた粗生成物をシリカゲル(230~400)カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中3%メタノール)により精製すると、化合物Eが得られた。
【0204】
工程5
化合物E(1.0当量)および1,3-ジメチル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-1H-インダゾール(1.3当量)のジオキサン:水(6mL,30V)中における撹拌溶液に、炭酸カリウム(2.5当量)およびPdCl(dppf)DCM(0.1当量)を室温下で添加した。結果として得られた反応塊を90℃で6時間の期間をかけて撹拌した。反応をTLCによりモニターした。反応塊を酢酸エチル(200mL)で希釈し、セライトパッドを通して濾過した。有機層を水(100mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲル(230~400)カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中6%メタノール)により精製すると、式(Ie)の化合物が得られた。
【0205】
実施例1~7の化合物を、式(III)の適切なアミン類を用いて、一般手順1に従うことにより合成した。実施例1~7の化合物の分析データが、表2において示されている。
【0206】
【表2】
【0207】
一般手順2:ピラゾロピリミジン誘導体の合成(スキーム2)
【0208】
【化39】
【0209】
工程1
5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミン、F(7.0g、0.0720mol)および3-オキソ-酪酸エチルエステル(11.26mL、0.0804mol)のジオキサン(70mL、10 V)中における撹拌溶液に、酢酸(2.1mL、0.3V)を室温下で添加した。結果として得られた反応塊を室温で16時間撹拌した。反応をTLCによりモニターした。出発物質の完全な消費後、反応塊を濾過し、得られた残留物をジエチルエーテル(70mL)中で懸濁させ、濾過した。生成物を高真空下で乾燥させると、2,5-ジメチル-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-オール、Gが白色固体として得られた(8.2g、69.7%)。
【0210】
工程2
化合物G(4.0g、0.0245mol)のアセトニトリル(40mL、10 V)中における撹拌懸濁液に、オキシ塩化リン(4.7mL、0.049mol)を室温で添加した。結果として得られた反応塊を、90℃で16時間の期間をかけて撹拌した。出発物質の消費をTLCによりモニターした。反応塊を氷冷水(50mL)に添加し、飽和重炭酸ナトリウム溶液で塩基性化し、酢酸エチル(200mL×2)で抽出した。有機性物質を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲル(230~400)カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中3%メタノール)により精製すると、7-クロロ-2,5-ジメチル-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン、Hが灰白色固体(3.0g、68%)として得られた。
【0211】
工程3
化合物H(1.5g、0.008mol)のアセトニトリル(15mL、10V)中における撹拌懸濁液に、氷温下でN-ヨードスクシンイミド(N-iodo succinamide)(1.85g、0.008mol)を添加した。結果として得られた反応塊を氷温で10分間の期間をかけて撹拌した。反応をTLCによりモニターした。粗製の反応塊を濃縮し、シリカゲル(230~400)カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中3%メタノール)により精製すると、7-クロロ-3-ヨード-2,5-ジメチル-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン、Iが灰白色固体(2.3g、92%)として得られた。
【0212】
工程4
化合物I(0.6g、1.9mmol)のエタノール(12mL、20V)中における撹拌溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.72mL、3.9mmol)およびアミンRNH(1.3当量)を室温で添加した。反応塊を70℃で16時間撹拌した。出発物質の消費をTLCによりモニターした。揮発物の完全な蒸発後、粗生成物を酢酸エチル(200mL)で希釈し、水(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲル(230~400)カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中3%メタノール)により精製すると、化合物Jが得られた。
【0213】
工程5
化合物J(1.0当量)および1,3-ジメチル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-1H-インダゾール(1.3当量)のジオキサン:水(10mL,20V)中における撹拌溶液に、室温下で炭酸カリウム(2.5当量)およびPdCl(dppf)DCM(0.1当量)を添加した。得られた反応塊を90℃で16時間の期間をかけて撹拌した。反応をTLCによりモニターした。反応塊を酢酸エチル(200mL)で希釈し、セライトパッドを通して濾過した。有機層を水(100mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。粗生成物をシリカゲル(230~400)カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中6%メタノール)により精製すると、式(If)の化合物が得られた。
【0214】
実施例8~19の化合物を、式(III)の適切なアミン類を用いて、一般手順2に従うことにより合成した。
実施例8~19の化合物の分析データが、表3において示されている。
【0215】
【表3-1】
【0216】
【表3-2】
【0217】
一般手順3:ピラゾロトリアジン誘導体の合成(スキーム3)
【0218】
【化40】
【0219】
工程1
5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミン、F(2.0g、0.02mol)のアセトニトリル(50mL、25V)中における懸濁液を、反応塊がpH9~10を示すまで、ジイソプロピルエチルアミンで塩基性化した。反応混合物に、エチルアセトアミデート塩酸塩(3.8g、0.03mol)を窒素雰囲気下で室温において添加し、混合物を15分間撹拌し、その後、反応塊を再びジイソプロピルエチルアミンで塩基性化した(pH9~10)。酢酸(1.13mL、0.02mol)を懸濁液に添加し、16時間撹拌した。反応をTLCによりモニターした。完了後、反応塊をジエチルエーテル(25mL)で希釈し、固体を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄した。濾過した固体を高真空下で50~55℃において乾燥させると、純粋なN-(5-メチル-2H-ピラゾール-3-イル)-アセトアミジン、N(2.4g、72%)が白色固体として得られた。
【0220】
工程2
窒素雰囲気下のナトリウム金属(2.74g、0.12mol)のエタノール(23mL、30V)中における溶液に、N(3.3g、0.02mol)およびジエチルカーボネート(23mL、0.2mol)を室温で添加した。得られた反応塊を16時間還流した。反応の進行をTLCによりモニターした。完了後、反応塊を室温に冷却し、結果として得られた塊を減圧下で50~55℃において濃縮してエタノールを除去した。揮発性物質を蒸発させて得られた粗生成物を水で希釈し、酢酸で酸性化した(pH:4~5)。水層をジクロロメタン(400mL×3)で抽出し、有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。固体生成物を最低限の体積のアセトニトリルで洗浄し、濾過し、乾燥させると、純粋な2,7-ジメチル-3H-ピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン-4-オン、L(1.6g、40%)が灰白色固体として得られた。
【0221】
工程3
化合物L(1.0g、0.006mol)のアセトニトリル(10mL、10V)中における撹拌溶液に、氷温下でN-ブロモスクシンイミド(N-bromo succinamide)(1.3g、0.007mol)を添加した。結果として得られた反応塊を氷温で1時間の期間をかけて撹拌した。反応をTLCによりモニターした。形成された沈殿をブフナー漏斗を通して濾過し、最低限の量のアセトニトリルで洗浄し、乾燥させると、8-ブロモ-2,7-ジメチル-3H-ピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン-4-オン、M(0.7g、50%)が白色固体として得られた。
【0222】
工程4
化合物M(0.2g、0.8mmol)のトルエン(5mL、25V)中における溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(0.3mL、1.6mmol)およびオキシ塩化リン(2.0mL、0.02mol)を室温で添加した。得られた反応塊を還流温度で16時間撹拌した。揮発性物質を蒸発させて得られた粗生成物をトルエン(10mL×2)でストリップし、得られた8-ブロモ-4-クロロ-2,7-ジメチル-ピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン、Nを、それ以上の精製および特性付けなしで次の工程に進めた。
【0223】
工程5
揮発性物質の蒸発により得られた粗製の化合物N(0.2g、0.7mmol)をTHF(5mL、25 V)中で溶解させた。ジイソプロピルエチルアミン(0.3mL、1.5mmol)およびアミンRNH(1.2当量)を氷温で添加し、結果として得られた反応塊を室温で1時間撹拌した。反応をTLCによりモニターした。反応塊をジクロロメタン(100mL)で希釈し、水(50mL×2)およびブライン溶液(50mL×2)で洗浄した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲル(230~400)カラムクロマトグラフィー(ヘキサン中10%酢酸エチル)により精製すると、化合物O(120mg、43%)が得られた。
【0224】
工程6
化合物O(1.0当量)および1,3-ジメチル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-1H-インダゾール(1.3当量)のジオキサン:水(14mL,20V)中における撹拌溶液に、炭酸カリウム(2.5当量)およびPdCl(dppf)DCM(0.1当量)を室温で添加した。結果として得られた反応塊を90℃で6時間撹拌した。反応をTLCによりモニターした。反応塊を酢酸エチル(200mL)で希釈し、セライトパッドを通して濾過した。有機層を水(100mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。粗生成物をシリカゲル(230~400)カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中6%メタノール)により精製すると、式(Ig)の化合物が得られた。
【0225】
実施例20~28の化合物を、式(III)の適切なアミン類を用いて、一般手順3に従うことにより合成した。分析データが、表4において示されている。
【0226】
【表4-1】
【0227】
【表4-2】
【0228】
本発明の化合物を調製するために用いられるアミン類RNHは、商業的に入手可能であるか、または当業者によって容易に合成され得る。実施例1~28の各々において用いられるアミン類が、表5において示されている。
【0229】
【表5】
【0230】
本明細書において上記で定義された一般式(Ih)の化合物は、例えばMaechling S., et al, J. Comb. Chem. 2010, 12, 818-821における教示に従うことにより調製されることができる。
【0231】
生物学的アッセイ
哺乳類細胞培養におけるインビトロアッセイ
本発明の化合物の抗ウイルス活性は、哺乳類細胞培養においてウイルスがウイルス性細胞変性作用(CPE)を引き起こすのを防ぐ化合物の能力に基づいて評価された。インキュベーション時間、細胞株、細胞密度およびウイルス力価はアッセイごとに異なっていたが、一般的な手順は以下の通りであった:
細胞を、96ウェル平底プレート上で、適切な培地中でおおよそ90%コンフルエンス(20,000~90,000細胞/ウェル)まで培養した。ウイルスの力価は、細胞に対する組織培養感染量(TCID50)の標準的な方法により決定された。簡潔には、細胞に50μlのウイルス懸濁液を用いて感染させ、培地中で10倍希釈した。プレートを5% COと共に37℃で3~7日間インキュベートし、細胞をCPEに関して毎日検査した。CPEを決定した後、プレートをグラム・クリスタルバイオレット溶液で染色し、光学密度を540nmにおいて読み取った。95%より高いCPEをもたらす最高のウイルス希釈度をアッセイにおいて用いた。0.1nM~1μMの最終濃度の物質およびウイルスを細胞に添加し、使用するウイルスおよび細胞株に応じて3~7日間インキュベートした。対照として、未感染細胞およびウイルス(物質なし)に感染した細胞を各プレートに含めた。感染対照に関するCPEを決定した後、細胞をクリスタルバイオレットで染色し、光学密度を540nmにおいて読み取った。阻害能力を、非感染および感染対照との比較による%として計算した。
【0232】
コクサッキーB3 Nancy株に誘導される細胞変性作用の阻害の用量応答を、本発明の6種類の異なる化合物、すなわち実施例2、3、8、20および25を用いて測定した。試験は、1(高)および0.1(低)感染多重度(MOI)で行われた。その結果が、図1において示されている。
【0233】
表6は、異なるエンテロウイルスに対する本発明の化合物の阻害能力を示す。EV6:エンテロウイルス6;EV30:エンテロウイルス30;EV68:エンテロウイルス68;EV71:エンテロウイルス71;B1:コクサッキーB1ウイルス;B2:コクサッキーB2ウイルス;B3:コクサッキーB3ウイルス;B4:コクサッキーB4ウイルス;B5:コクサッキーB5ウイルス;ポリオ1:ポリオウイルスSabin1。
【0234】
【表6-1】
【0235】
【表6-2】
【0236】
表6において、符号は、以下の意味を有する:
+ IC50 < 1μM
++ IC50 < 100nM
+++ IC50 < 10nM
4+ IC50 < 1nM
5+ IC50 < 0.1nM
添加時間アッセイ
アッセイは、物質が接種の1時間前(-1時間)、接種時(0時間)および接種の2時間後(+2時間)、6時間後(+6時間)または24時間後(+24時間)に添加されたことを除いて、上記の“哺乳類細胞培養におけるインビトロアッセイ”と同様に実施された。ウイルスEV71が、試験のために高力価で用いられた。表7は、実施例7および実施例20に関するデータを示す。データは、薬物の添加時間は重要ではなく、複製が速すぎない限り、化合物は効率的な方法で細胞変性作用を阻害することができたことを示している。
【0237】
【表7】
【0238】
ホスファチジルイノシトールキナーゼ阻害アッセイ
ADPがATPに変換され、それがUltra-Glo(商標)ルシフェラーゼにより光に変換されるキナーゼ反応から形成されたADPを測定する発光キナーゼアッセイであるADP-Glo(商標)キナーゼアッセイを用いて、PI4キナーゼの阻害を研究した。アッセイは、2工程で実施され;最初に、キナーゼ反応の後、等量のADP-Glo(商標)試薬を添加してキナーゼ反応を終了させ、残っているATPを枯渇させる。第2工程において、キナーゼ検出試薬を添加し、それは、同時にADPをATPに変換し、新たに合成されたATPが共役したルシフェラーゼ/ルシフェリン反応を用いて測定されることを可能にする。生成される発光シグナルは、キナーゼの活性に比例する。PI3キナーゼの阻害を、あらゆるATP/ADP依存性標的により誘導されるホスホトランスフェラーゼ活性を同定して特徴付けるための普遍的な方法であるHTRF(均一時間分解蛍光)アッセイを用いて研究した。ADPの形成は、Eu3+クリプテートで標識された特異的モノクローナル抗体により検出され、リン酸化された基質の量と直接相関していた。表8は、IC50値(μM)として表される本発明の一部の化合物対異なるキナーゼに関する試験結果を示している。
【0239】
【表8】
【0240】
オスのSprague Dawleyラットにおける薬物動態
一晩絶食させた動物に、推奨ビヒクル0.4%(v/v)Tween80+2%(v/v)グリセロールおよび15% w/v HPβCD中の試験化合物を、50mg/kg体重の用量で10mL/kg体重の投与体積で経口経路により投与した。軽度のイソフルラン麻酔下で、血液試料を、投与後の次の24時間の間に、抗凝固剤(KEDTA-2mg/mL血液)を含有する予めラベルを貼ったチューブの中に採取した。採取した血液試料を4000rpm、4oCで10分間遠心分離し、血漿を分離し、分析まで-80oCで保存した。分析は、本発明の化合物が良好な~優秀な生物学的利用能で経口的に利用可能であることを示した。試験データが、表9において、そして図2において示されている。
【0241】
【表9】
【0242】
ヒトおよびラット肝ミクロソームにおける代謝安定性
代謝安定性を、ヒト(HLM)またはラット(RLM)肝ミクロソームを用いて研究した。アッセイの最終組成物は、DMSOの最終濃度が0.1%であるようにDMSOストックから調製された5μMの試験項目および参照項目(ジクロフェナクまたはイミプラミン)、0.125mg/mLミクロソームタンパク質および補因子(5.0mM G-6-P、0.06U/mL G-6-PDH、2.0mM MgCl、1.0mM NADP)を含んでいた。試験項目および参照項目を、補因子と共に、または補因子なしで、ヒトまたはラット肝ミクロソームと共にインキュベートした。反応混合物(100μL)を指定された期間で除去し、停止溶液の添加により反応を停止させた。試料を内部標準の存在下で抽出し、LC-MS/MSを用いて分析した。指定されたインキュベーション期間後に残存する試験/参照項目のパーセントを、時間0分におけるピーク面積比に関して計算した。結果が、表10において示されている。
【0243】
急速平衡透析法によるヒトおよびラット血漿タンパク質結合
8,000ダルトンの分子量カットオフを有する透析膜を含むRapid Equilibrium Dialysis(RED)デバイスを用いることにより、血漿タンパク質結合研究を実施した。各透析インサートは、2つのチャンバーを含んでいる。赤色チャンバーは、血漿用であり、一方で白色チャンバーは、緩衝液用であった。試験項目および参照項目(ワルファリンおよびプロプラノロール)のヒトおよびラット血漿(pHを7.40に調整した)試料を、5mM DMSOストック(最終DMSO濃度は0.1%であった)を用いて、5μMの必要とされる試験濃度で調製した。300μLの血漿試料を試料チャンバー中に添加した。500μLの緩衝液を緩衝液チャンバー中に添加した。REDデバイスを接着フィルムで密封した後、インキュベーションを37℃において300rpmで振盪しながら4時間行った。インキュベーション後、50μLの分割量を各ウェル(血漿および緩衝液側)から取り出し、そしてマトリックス効果を無効にするために等量の反対側のマトリックスで希釈した。標本に対して液液抽出/タンパク質沈殿法により内部標準の存在下で試料抽出を行った。抽出後、試料をラベルを貼ったオートサンプラーバイアルに移し、LC-MS/MS分析に提出した。結果が、表10において示されている。
【0244】
【表10】
【0245】
ラットにおける7日間毒性試験
類似体および薬物動態データを用いた以前の毒性試験に基づいて、Sprague Dawleyラットに7日間連続で強制経口投与により経口投与した場合の本発明の一部の代表的な化合物、すなわち実施例8および実施例12それぞれの毒性特徴に関する情報をもたらすために反復投与毒性および毒性動態試験を実施した。試験に関する試験計画は、7日間の毒性試験に関する最新のICHガイドラインによるものであり、実施例8および実施例12の観察されない有害作用レベル(NOAEL)は、試験された用量レベルおよび使用された実験条件下で7日間連続してSprague Dawleyラットに1日1回経口投与した場合、それぞれ60mg/kg体重/日および50mg/kg体重/日と決定された。
【0246】
CVB3誘発膵炎マウスモデル
本発明の化合物を、van der Schaar et al (Antimicrob. Agents Chemother. 2013, 57(10):4971-4981)によって記載されたように、CVB3誘導膵炎マウスモデルにおいて試験した。動物(SJLマウス)に、0.3mLのコクサッキーB3(ナンシー株)ウィルス(対数TCID50=8)を腹腔内感染させた。動物を感染の2時間前に処置し、次いで3日間1日1回処置した。動物を安楽死させ、組織病理学による膵炎評価のためならびに免疫組織化学およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるウイルス力価決定のために器官を収集した。膵臓を、感染および非感染対照動物から、ならびに4つの異なる投与量の実施例8で処置した動物から得て、器官のHE染色スライドを調製し、研究し、そして炎症および壊死の徴候に関して以下のような0~3の尺度で採点した:0=異常なし。1=外分泌膵臓におけるわずかな炎症および/または単一細胞病巣。2=外分泌膵臓における中程度の炎症および/または壊死を伴う数個の病巣。3=外分泌膵臓における重篤な炎症および/または大きな壊死領域(図3)。器官中のウイルス力価を、Dako 5-D8/1モノクローナルマウス抗体を用いる免疫組織化学によって決定し、そして力価を0~4の尺度で記録し、ここで、0は無感染を示し、4は最も高い決定されたウイルス力価に相当する(図4)。ウイルス力価のPCR検出からのCt値を決定した(図5)。Ct値がより高いほど、ウイルス力価はより低い。データは、非常に良好な用量応答を示している。対応する試験を、実施例2、8および20に関しても50mg/kg/日の投与量で実施し、膵炎採点およびCt値を決定した(図6)。
本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[1]式(I)の化合物:
【化41-1】
またはその薬学的に許容可能な塩であって、式中、
Xは、CHまたはNであり;
Yは、Nであり、かつZは、Cであり;またはYは、Cであり、かつZは、Nであり;
N、YおよびZを含有する5員環は、ヘテロ芳香環であり;
環Aは、フェニルまたは独立してN、OおよびSから選択される1個以上のヘテロ原子を有する5員もしくは6員ヘテロアリールであり;
mは、0、1または2であり;
それぞれのR は、独立してハロゲン、C1~C6アルキル、R O、R S(O) 、R S(O) N(R )、R NC(O)、R C(O)N(R )、R 10 C(O)、R 11 12 NおよびR 13 14 NS(O) から選択され、かつ
mが2である場合、環Aの隣接する原子に結合した2つのR は、それらが結合している原子と一緒に5員または6員のヘテロ環式または炭素環式環を形成していることができ;
、R 、R 、R 、R 、R 、R 、R 、R 10 、R 11 、R 12 およびR 13 の各々は、独立してHおよびC1~C6アルキルから選択され;
14 は、H、C1~C6アルキル、R 15 C(O)およびR 16 OC(O)から選択され;
15 およびR 16 は、独立してHおよびC1~C6アルキルから選択され;そして
あらゆるアルキルは、場合により1個以上のハロゲンによって置換されていてもよい。
[2][1]に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩であって、XがCHである化合物または薬学的に許容可能な塩。
[3][1]または[2]に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩であって、YがNであり、かつZがCである化合物または薬学的に許容可能な塩。
[4][1]または[2]に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩であって、YがCであり、かつZがNである化合物または薬学的に許容可能な塩。
[5][1]または[3]に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩であって、XがNである化合物または薬学的に許容可能な塩。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容可能な塩であって、環Aが5員または6員ヘテロアリールである化合物または薬学的に許容可能な塩。
[7][1]~[5]のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容可能な塩であって、環Aがフェニルまたは6員ヘテロアリールである化合物または薬学的に許容可能な塩。
[8][7]に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩であって、部分
【化41-2】
が、式(IIa)の部分:
【化41-3】
であり、式中、W およびW が、独立してN、CHおよびCR から選択される、化合物または薬学的に許容可能な塩。
[9][8]に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩であって、W がNであり、かつW がCR である;またはW がCHであり、かつW がCR である;またはW がCHであり、かつW がNである、化合物または薬学的に許容可能な塩。
[10][9]に記載の化合物または薬学的に許容可能な塩であって、W がNであり、かつW がCR である;またはW がCHであり、かつW がNである、化合物または薬学的に許容可能な塩。
[11]以下の化合物:
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-(ピリジン-4-イルメチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-((6-メチルピリジン-3-イル)メチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-N-(4-メトキシベンジル)-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
N-(4-クロロベンジル)-3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-(4-(メチルスルホニル)ベンジル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
4-(((3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル)アミノ)メチル)ベンゼンスルホンアミド、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-N-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-(チオフェン-2-イルメチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
N-(4-(((3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル)アミノ)メチル)フェニル)メタンスルホンアミド,
8-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,7-ジメチル-N-(ピリジン-4-イルメチル)ピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン-4-アミン、
8-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-N-(4-メトキシベンジル)-2,7-ジメチルピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン-4-アミン、
8-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,7-ジメチル-N-((6-メチルピリジン-3-イル)メチル)ピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン-4-アミン、
4-(((8-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,7-ジメチルピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン-4-イル)アミノ)メチル)ベンゼンスルホンアミド、
N-(4-クロロベンジル)-8-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,7-ジメチルピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン-4-アミン、
8-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,7-ジメチル-N-(4-(メチルスルホニル)ベンジル)ピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン-4-アミン、
N-(4-(((8-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,7-ジメチルピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン-4-イル)アミノ)メチル)フェニル)メタンスルホンアミド、
8-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,7-ジメチル-N-(チオフェン-2-イルメチル)ピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン-4-アミン、
8-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-N-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-2,7-ジメチルピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン-4-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,6-ジメチル-N-(ピリジン-4-イルメチル)イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-8-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,6-ジメチル-N-((6-メチルピリジン-3-イル)メチル)イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-8-アミン、
N-(4-クロロベンジル)-3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-8-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-N-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-8-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,6-ジメチル-N-(チオフェン-2-イルメチル)イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-8-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-N-(4-メトキシベンジル)-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-8-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-((6-トリフルオロメチルピリジン-3-イル)メチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
N-(ベンジル)-3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
N-(4-フルオロベンジル)-3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミンおよび
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,6-ジメチル-N-(4-(メチルスルホニル)ベンジル)イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-8-アミン;
から選択される[1]に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
[12]療法における使用のための[1]~[11]のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容可能な塩。
[13][1]~[11]のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容可能な塩を含み、場合により薬学的に許容可能な賦形剤を含んでいてもよい医薬組成物。
[14][1]~[11]のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容可能な塩であって、膵炎、灰白髄炎、脳炎、髄膜炎、敗血症、癌、例えば乳癌、前立腺癌、卵巣癌および結腸直腸癌、麻痺、心臓疾患、例えば心筋炎、糖尿病、風邪、手足口病、ヘルパンギーナ、胸膜痛、下痢、粘膜皮膚病変、呼吸器疾患、結膜炎、筋炎、慢性疲労症候群、神経精神疾患、神経変性疾患、例えば多発性硬化症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病およびハンチントン病ならびに炎症性の病気から選択される障害の処置における使用のための化合物または薬学的に許容可能な塩。
[15]ウイルス感染症の処置における使用のための[1]~[11]のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容可能な塩。
[16][15]に記載の使用のための化合物または薬学的に許容可能な塩であって、該ウイルス感染症が、ピコルナウイルス感染症である使用のための化合物または薬学的に許容可能な塩。
[17]障害された、または異常なオートファジーに関連する疾患の処置における使用のための[1]~[11]のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容可能な塩。
[18][1]~[11]のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容可能な塩の使用であって、膵炎、灰白髄炎、脳炎、髄膜炎、敗血症、癌、例えば乳癌、前立腺癌、卵巣癌および結腸直腸癌、麻痺、心臓疾患、例えば心筋炎、糖尿病、風邪、手足口病、ヘルパンギーナ、胸膜痛、下痢、粘膜皮膚病変、呼吸器疾患、結膜炎、筋炎、慢性疲労症候群、神経精神疾患、神経変性疾患、例えば多発性硬化症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病およびハンチントン病ならびに炎症性の病気から選択される障害の処置のための医薬品の製造における使用。
[19]ウイルス感染症の処置のための医薬品の製造における、[1]~[11]のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容可能な塩の使用。
[20]障害された、または異常なオートファジーに関連する疾患の処置のための医薬品の製造における、[1]~[11]のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容可能な塩の使用。
[21]膵炎、灰白髄炎、脳炎、髄膜炎、敗血症、癌、例えば乳癌、前立腺癌、卵巣癌および結腸直腸癌、麻痺、心臓疾患、例えば心筋炎、糖尿病、風邪、手足口病、ヘルパンギーナ、胸膜痛、下痢、粘膜皮膚病変、呼吸器疾患、結膜炎、筋炎、慢性疲労症候群、神経精神疾患、神経変性疾患、例えば多発性硬化症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病およびハンチントン病ならびに炎症性の病気から選択される障害の処置のための方法であって、有効量の[1]~[11]のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容可能な塩をそのような処置を必要とする哺乳類に投与することを含む方法。
[22]哺乳類におけるウイルス感染症の処置のための方法であって、有効量の[1]~[11]のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容可能な塩を該哺乳類に投与することを含む方法。
[23]哺乳類における障害された、または異常なオートファジーに関連する疾患の処置のための方法であって、有効量の[1]~[11]のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容可能な塩を該哺乳類に投与することを含む方法。
図1
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図5
図6