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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】透析液用容器
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20221226BHJP
【FI】
A61M1/16 177
A61M1/16 179
A61M1/16 173
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019562946
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2018045549
(87)【国際公開番号】W WO2019131119
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】P 2017249135
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】二村 寛
(72)【発明者】
【氏名】藤原 真人
(72)【発明者】
【氏名】横山 喬剛
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-509451(JP,A)
【文献】特表2013-514099(JP,A)
【文献】特表2002-537916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の第1袋体を備える透析液用容器であって、
前記透析液用容器は、
第1粉状薬剤を含み、当該第1粉状薬剤と水とを混合するための混合領域を第2内部の下端部に有する可撓性の第2袋体を備え、
前記第2袋体は、前記第2袋体内の上端から前記混合領域に向かって延在し、前記第2袋体の外部と第2内部とを連通する連通管と、前記第1袋体の第1内部に連通する第1フィルタと、を有し、
前記第2内部と前記第1内部とが前記第1フィルタを介して連通し、
前記連通管は、一端部が透析回路に接続自在であり、他端部が前記混合領域に配置される
ことを特徴とする透析液用容器。
【請求項2】
可撓性の第1袋体を備える透析液用容器であって、
前記透析液用容器は、
第1粉状薬剤を含み、当該第1粉状薬剤と水とを混合するための混合領域を第2内部の下端部に有する第2袋体であって、少なくとも一部が可撓性を有さない材料により形成される第2袋体を備え、
前記第2袋体は、前記第2袋体内の上端から前記混合領域に向かって延在し、前記第2袋体の外部と第2内部とを連通する連通管と、前記第1袋体の第1内部に連通する第1フィルタと、を有し、
前記第2内部と前記第1内部とが前記第1フィルタを介して連通し、
前記連通管は、一端部が透析回路に接続自在であり、他端部が前記混合領域に配置される
ことを特徴とする透析液用容器。
【請求項3】
前記第2袋体は、単一の前記連通管を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の透析液用容器。
【請求項4】
前記第2袋体は、前記第2内部における下端部に、最下端が前記第1フィルタの最外径部に隣接するように前記第2内部の空間を狭める狭隘部を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の透析液用容器。
【請求項5】
前記連通管は、他端部のノズル開口が前記第1フィルタに向くように配置される
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の透析液用容器。
【請求項6】
前記第1フィルタは頂部を有し、上側に凸の立体的な曲面を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の透析液用容器。
【請求項7】
前記透析液用容器は、可撓性の第3袋体を備え、
前記第3袋体は、前記第1袋体に連通する第2フィルタを有し、
前記第1フィルタは、前記第3袋体の第3内部を介して前記第1袋体の前記第1内部に連通する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の透析液用容器。
【請求項8】
前記第1袋体は、前記第2袋体及び前記第3袋体を囲繞する
ことを特徴とする請求項7に記載の透析液用容器。
【請求項9】
前記第1袋体は、前記第2袋体を囲繞する
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の透析液用容器。
【請求項10】
前記第2袋体は、前記第1袋体の外部に設けられ、
前記第1袋体の前記第1内部に一端が延在し、他端が前記第1フィルタに連通する接続管を更に備える
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の透析液用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、透析液用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透析療法に用いる透析液を作製するシステムとして、薬剤が溶解した溶液とRO水とを連続的に混合して透析液を作製する連続方式や、薬剤とRO水とを容器に供給して薬剤とRO水とを混合するバッチ処理をすることで透析液を作製するバッチ方式がある。
また、薬剤をあらかじめ容器に収容しておき、この容器にRO水を供給して薬剤とRO水とを混合することで透析液を作製するプレパック方式がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2005-512616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の連続方式は、使用する薬剤の種類に応じた数の、あらかじめ薬剤が溶解した溶液を貯留する容器を必要とするので、容器が装置に固定されて比較的大きな空間を占めるとともに、あらかじめ薬剤が溶解した溶液を作製したり、溶液とRO水とを正確に混合して希釈するためのポンプを制御したりする必要があった。
バッチ方式は、使用する薬剤の種類に応じた数の薬剤を貯留する容器及びバッチ処理の容器を必要とするので、容器が装置に固定されて比較的大きな空間を占めるとともに、バッチ処理に伴う労力を要していた。
プレパック方式は、薬剤があらかじめ収容された容器内で薬剤をRO水に確実に溶解させるために、RO水を循環させる等して連続的に供給し続ける動作や、容器を揺すったり、容器内で撹拌したり、容器内に供給するRO水の流量を高めたりする等の労力を要していた。
そこで、本開示は、透析液を作製する労力を抑制できる透析液用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一局面によれば、透析液用容器は、可撓性の第1袋体を備える透析液用容器であって、前記透析液用容器は、第1粉状薬剤と水とを混合するための混合領域を第2内部の下端部に有する可撓性の第2袋体を備え、前記第2袋体は、前記第2袋体の外部と第2内部とを連通する連通管と、前記第1袋体の第1内部に連通する第1フィルタと、を有し、前記連通管は、一端部が透析回路に接続自在であり、他端部が前記混合領域に配置される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、透析液を作製する労力を抑制できる透析液用容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態による第1粉状薬剤及び第2粉状薬剤が封入された状態の透析液用容器を示す正面図である。
図2】第1袋体を示す正面図である。
図3】第2袋体及び第3袋体を示す正面図である。
図4】第1実施形態による透析液用容器の組立図である。
図5】第2袋体内における水RO及び第1粉状薬剤の流れを説明する詳細図である。
図6】作製された透析液が収容された状態の透析液用容器を示す斜視図である。
図7】第2実施形態による透析液用容器を示す正面図である。
図8】第2実施形態による透析液用容器の組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら各実施形態について詳細に説明する。
【0009】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して一の実施形態(第1実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号が付される。
なお、以下では、第1粉状薬剤1が封入された第2袋体20と、第2粉状薬剤2が封入された第3袋体30とが、第1袋体10に囲繞された透析液用容器100に係る実施形態について説明するが、これに限らず、第2粉状薬剤2が封入された第3袋体30を備えないものであってもよい。また、第2袋体20又は第3袋体30は、それぞれの内部(第2内部及び第3内部)の収容空間が直接的又は間接的に第1袋体10の第1内部に連通していれば、第1袋体10に囲繞されていなくてもよい(後出の第2実施形態参照)。
【0010】
図1は、第1粉状薬剤1及び第2粉状薬剤2が封入された状態の透析液用容器100を示す正面図である。図2は、第1袋体10を示す正面図である。図3は、第2袋体20及び第3袋体30を示す正面図である。図4は、透析液用容器100の組立図である。図5は、第2袋体20内における水RO及び第1粉状薬剤1の流れを説明する詳細図である。図6は、作製された透析液Wが収容された状態の透析液用容器100を示す斜視図である。
【0011】
図1及び図6に示すように、本実施形態に係る透析液用容器100は、透析液Wの作製に用いられる。透析液用容器100によって作製された透析液Wは、ダイアライザを含む透析液供給装置の透析回路(不図示)に供給される。透析液用容器100は、透析の1時間当たりに通常要する約15リットルの容量を有する。なお、透析回路には、透析液用容器100に対する水ROの注入と透析液Wの排出を切り替え可能な切替弁が設けられている。
【0012】
透析液用容器100は、可撓性の第1袋体10と、第1粉状薬剤1と水ROとを混合するための混合領域Mを第2内部(第2袋体20の収容空間であるチャンバ)の下端部に有する可撓性の第2袋体20とを備える。
【0013】
ここで、透析液用容器100は、図1における上下が、重力方向となるような姿勢で設置される。例えば、透析液用容器100は、水ROが注入される直前の状態又は水ROが注入された後の状態において、第1袋体10における上端部の左右に設けられた、例えば支持孔が形成された支持部11が吊り部材(不図示)によって吊り支持される。なお、透析液用容器100は、水ROが注入されると水圧によって第1袋体10が膨らんで全体が樽状(図6参照)となって安定するので、このような場合は、支持部11を利用することなく、直接的に、透析液用容器100の底部を床等の平らな場所の上に載置してもよい。
【0014】
水ROは、通常、透析療法で用いられる逆浸透膜処理を施して不純物が取り除かれた水であり、いわゆるRO(Reverse Osmosis)水である。
【0015】
第1袋体10は、透析液Wを貯留できる第1内部を有する。第1袋体10は、流通過程や保管時における利便性や、設置された空間の制限に依存することなく透析液Wを貯留した状態でも自由に変形できることを考慮して、柔軟で折り曲げ及び折り畳みが可能な可撓性のものである。このように、第1袋体10は、可撓性のものであるので、例えば図1及び図2おいて2点鎖線で示す位置Zで三つ折りをして畳むことでコンパクトにでき、複数重ねられても、省スペースで輸送及び保管できる。
【0016】
第1袋体10は、作製された透析液Wを貯留するものであるため、透析液Wによる内圧に耐えうる程度の強度と剛性を有する。第1袋体10は、耐水性があり、塩化ナトリウム水溶液等の電解質水溶液や炭酸水素ナトリウム水溶液等の炭酸水素塩水溶液に対する耐薬品性があり、内容物を確認できるようにするため透明又は半透明であることが好ましい。第1袋体10の材質としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)やポリエチレン(PE)等が用いられる。
【0017】
第1袋体10は、第2袋体20を囲繞している。これにより、第2袋体20の第1フィルタ22を通じて第2袋体20の第2内部から流出した透析液Wを、第1袋体10の第1内部で貯留できる。
【0018】
また、図1及び図6に示すように、第1袋体10は、第2袋体20及び第3袋体30を囲繞してもよい。これにより、水ROに第1粉状薬剤1が溶解した溶解液は、第2袋体20の第1フィルタ22を通じて第2袋体20の第2内部から第3袋体30の第3内部へ流出し、第2粉状薬剤2を溶解して透析液Wとなり、その透析液Wを第1袋体10の第1内部で貯留できる。
【0019】
第2袋体20は、あらかじめ第1粉状薬剤1を第2内部に封入した状態で用いられる。
第2袋体20は、第2袋体20の外部と第2内部とを連通する連通管21と、第1袋体10に連通する第1フィルタ22と、を有する。第2袋体20は、第1袋体10と同様に、設置された空間の制限に依存することなく透析液Wを貯留した状態でも自由に変形できることを考慮して、柔軟で折り曲げ及び折り畳みが可能な可撓性のものである。
【0020】
また、第2袋体20は、第1袋体10と同様に、耐水性があり、塩化ナトリウム水溶液等の電解質水溶液や炭酸水素ナトリウム水溶液等の炭酸水素塩水溶液に対する耐薬品性があり、内容物を確認できるようにするため透明又は半透明であることが好ましい。第2袋体20の材質としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)やポリエチレン(PE)等が用いられる。
【0021】
また、第2袋体20は、封入された第1粉状薬剤1と接するので、透析剤として通常用いられる、塩化ナトリウム等の電解質塩や炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩に対する耐薬品性があることが好ましい。
【0022】
連通管21は、一端部21aが透析回路(不図示)に接続自在であり、他端部21bが混合領域M(図1及び図5において2点鎖線で囲まれた領域)に配置される。連通管21の一端部21aは、透析回路に連通する開口を除き、第2袋体20の第2内部に水密的に取り付けられる。なお、他端部21bは、連通管21を伝って第2袋体20の第2内部に噴出する水ROの流速を高くするため、内腔を先細り形状とさせてもよい。
【0023】
このように、第1粉状薬剤1及び連通管21の他端部21bとが、共に、第2袋体20における第2内部の下端部にある混合領域Mに配置されるので、連通管21を伝って外部から第2袋体20の第2内部に流れる水ROは、第1粉状薬剤1が重力の作用によってとどまっている混合領域Mに吐出されて第1粉状薬剤1に直接作用し、混合領域Mにおいて第1粉状薬剤1を巻き込んだ噴流を発生させ、第1粉状薬剤1を溶解する。よって、連通管21を伝って水ROを第2袋体20の第2内部に流す、位置、速度及び圧力等による流体エネルギ以外のエネルギを外部から特に与えることなく、透析液Wを作製する労力(エネルギ)を抑制できる。
【0024】
なお、本実施形態においては、連通管21は鉛直方向に沿っており、連通管21の一端部21aが鉛直方向の上部に配置され、他端部21bが鉛直方向下部に配置されているが、一端部21aの配置はこれに限らず、他端部21bが混合領域Mに配置されていれば、一端部21aは、例えば、他端部21bの真横に配置されてもよい。連通管21の一端部21aが他端部21bより鉛直方向の上部に配置されていると、位置エネルギが高まる分、水ROの流体エネルギを高められる。
【0025】
第2袋体20は、単一の連通管21を有する。これにより、水ROの注入口となる連通管21の一端部21aが一箇所となるので、透析回路からの接続対象を探索することなく水ROを注入できる。また、第2袋体20は、単一の連通管21を有するので、透析回路への接続や取り外しの作業がし易い。透析回路に設けられた切替弁によって流れの方向を切り替えるだけで、単一の連通管21を水ROの注入用及び透析液Wの排出用として兼ねることができる。
【0026】
また、第2袋体20の第1フィルタ22は、混合領域Mに配置される。第1フィルタ22は、第1粉状薬剤1が水ROに溶解した溶液は通すが、第1粉状薬剤1のままでは通さない機能を備えるものであり、例えば、第1粉状薬剤1の粒径より目開き又は孔径の小さいメッシュである。
第1フィルタ22は、混合領域Mに配置されるので、第1粉状薬剤1が水ROに溶解した透析液Wの一部を直ちに第1フィルタ22を通過させることができる。
【0027】
第2袋体20は、第2内部における下端部に、最下端が第1フィルタ22の最外径部に隣接するように第2内部の空間を狭める狭隘部Tを有する。すなわち、狭隘部Tの最下端は、第1フィルタ22の最外径部と略同じ内寸法となっている。なお、第3袋体30の狭隘部Tについても同様である。これにより、第2内部における最下端となる第1フィルタ22の周囲に、第1粉状薬剤1が滞留し易い角隅部がなくなる。そして、連通管21の他端部21bから噴出された水ROの流れは、第1粉状薬剤1を巻き込みながら狭隘部Tに衝突し、上方及び下方に分かれ、上方に向かう成分が大きくなる。よって、第2内部において、連通管21の他端部21bから噴出された水ROの流れが滞ることなく、第2内部に堆積された第1粉状薬剤1を効果的に巻き上げることができ、第1粉状薬剤1を水ROに効率良く溶解させることができる(図5参照)。
なお、狭隘部Tは、図5に示すような、下方に行くに連れて第2内部の空間を狭めていく直線的な傾斜部が互いに向き合ったテーパ形状に限らず、最下端が第1フィルタ22の最外径部に隣接していれば、内側に凸の曲線部が互いに向き合った形状であってよく、上部がテーパ形状であって下部が重力方向に沿うストレート形状であるように、テーパ形状とストレート形状を組み合わせた形状であってもよい。
【0028】
図5に示すように、第1フィルタ22は、中央に開口22vを有し、周囲22rが第2袋体20に対して水密的に取り付けられたベース部22bと、ベース部22bから立設する脚部22sと、脚部22sに支持される頂部22tと、ベース部22b、脚部22s及び頂部22tとの間に設けられたフィルタ部22fと、を備える。
【0029】
フィルタ部22fは、例えば、円錐の一部の曲面形状となっている。そして、第1フィルタ22は、全体が略円錐形状となっており、上側に凸の立体的な形状となっている。このように、第1フィルタ22は、頂部22tを有するので、噴出した水ROの流れは、頂部22tに衝突した後、上下左右の多方向に分かれる。よって、特に、混合領域Mにおいて、水ROの流れを満遍なく行き届かせることができ、第1粉状薬剤1を効率良く溶解できる。また、第1フィルタ22は、上側に凸の立体的な曲面を有しているので、限られた空間の中でフィルタ部22fの面積をできるだけ大きくすることができ、第1粉状薬剤1が水ROに溶解した溶解液を、効率的に第1袋体10の第1内部又は第3袋体30の第3内部に通すことができる。第2フィルタ31についても同様である。
なお、第1フィルタ22の形状は、上側に凸の立体的な曲面に限らず、噴出した水ROの流れを、上下左右の多方向に分ける形であればよい。
第1フィルタ22及び第2フィルタ31は、例えば、ポリエステルやナイロン等の合成繊維製の袋状フィルタであってよく、支柱間にメッシュ(網目)を有する鐘形成形型のフィルタであってもよい。
なお、第1フィルタ22及び第2フィルタ31は、このような形状に限らず、例えば、開口22vを被う、平面形状のフィルタ部22fを備えるものであってもよい。
【0030】
また、連通管21は、他端部21bのノズル開口が頂部22tに向くように配置されることが最も望ましい。これにより、連通管21における他端部21bのノズル開口から噴出された水ROを、頂部22tにより確実に衝突させることができ、噴出した水ROの流れを、上下左右の多方向に分けることができる。
【0031】
ところで、透析液用容器100は、可撓性の第3袋体30を更に備えてもよい。
第3袋体30は、あらかじめ第2粉状薬剤2を第3内部(第3袋体30の収容空間であるチャンバ)に封入した状態で用いられる。これにより、第1粉状薬剤1とは異なる種類の第2粉状薬剤2を、乾燥した状態で互いが接することなく隔離して安定した状態で保管できる。また、水ROを透析液用容器100に注入するだけで、異なる種類の粉状薬剤が溶解した透析液Wを作製できる。
【0032】
第3袋体30は、第1袋体10及び第2袋体20と同様に、設置された空間の制限に依存することなく透析液Wを貯留した状態でも自由に変形できることを考慮して、柔軟で折り曲げ及び折り畳みが可能な可撓性のものである。
【0033】
また、第3袋体30は、第1袋体10及び第2袋体20と同様に、耐水性があり、塩化ナトリウム水溶液等の電解質水溶液や炭酸水素ナトリウム水溶液等の炭酸水素塩水溶液に対する耐薬品性があり、内容物を確認できるようにするため透明又は半透明であることが好ましい。第3袋体30の材質としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)やポリエチレン(PE)等が用いられる。
また、第3袋体30は、封入された第2粉状薬剤2と接するので、透析剤として通常用いられる、塩化ナトリウム等の電解質塩や炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩に対する耐薬品性があることが好ましい。
【0034】
第3袋体30は、第3袋体30の第3内部が第2袋体20に設けられた第1フィルタ22を介して第2袋体20の第2内部と連通するように配置される。なお、本実施形態においては、図1及び図3等に示すように、第2袋体20と第3袋体30が一体となっているが、これに限らず、第2袋体20とは独立した第3袋体30を、第2袋体20の第1フィルタ22を被って囲むように配置してもよい。これにより、第2袋体20の第2内部で作製された第1粉状薬剤1と水ROとの溶解液は、第1フィルタ22を通って第3袋体30の第3内部に至り、第2粉状薬剤2と混ざり合って、第1粉状薬剤1と第2粉状薬剤2とが溶解した透析液Wとなる。
【0035】
また、第3袋体30は、第1袋体10に連通する第2フィルタ31を有する。第2フィルタ31は、第2袋体20の第1フィルタ22と同様に、第2粉状薬剤2が水ROに溶解した溶液は通すが、第2粉状薬剤2のままでは通さない機能を備えるものであり、例えば、第2粉状薬剤2の粒径より目開き又は孔径の小さいメッシュである。
【0036】
このように、第3袋体30は、第2フィルタ31を介して、第3袋体30の第3内部が第1袋体10の第1内部と連通するように配置されるので、第2粉状薬剤2が溶解した透析液Wを、第1袋体10に貯留することができる。
【0037】
次に、本実施形態に係る透析液用容器100を用いた透析液Wの作製方法及び作製する際の作用を、図1及び図5を用いて説明する。なお、ここでは、第2袋体20にあらかじめ封入された第1粉状薬剤1と、第3袋体30にあらかじめ封入された第2粉状薬剤2とが溶解された透析液Wの作製方法及び作製する際の作用について説明する。
【0038】
(1)まず、図1に示すように、第1フィルタ22を介して第2内部と第3内部とが連通した、第2袋体20と第3袋体30とが一体となったものを、第1袋体10の第1内部に水密的に囲繞し、いわゆる二重袋の状態とする。
【0039】
(2)第2袋体20の第2内部に、第1粉状薬剤1を封入しておく。第3袋体30の第3内部に、第2粉状薬剤2を封入しておく。
【0040】
(3)第1袋体10に設けられた支持部11を利用して吊り部材(不図示)によって吊り支持して、図1における上下方向が鉛直方向となるように、透析液用容器100の姿勢を保持しておく。なお、透析液用容器100は可撓性のものであり、透析液Wが充填されていくと、図6に示すように樽型に変形して安定していくので、透析液用容器100の姿勢を保持できれば、吊り支持に限らず、例えば、透析液用容器100を直接的に床等に載置することで支持してもよい。
【0041】
(4)連通管21の一端部21aから第2袋体20の第2内部へ向けて水ROを注入する。
【0042】
(5)すると、連通管21の他端部21bから噴出した水ROは、第1フィルタ22の頂部22tに衝突し、上下方向及び横方向の多方向に拡散するように分流する。そして、分流した水ROは、狭隘部Tや第1フィルタ22等に対して衝突を繰り返しながら、渦流を含む複雑な流れとなり、特に、混合領域Mに堆積した第1粉状薬剤1を巻き込み、溶解する。水ROの注入を続けると、水ROは、さらに、上部にある第1粉状薬剤1を巻き上げながら溶解する。ここで、第1粉状薬剤1を溶解した溶解液は、第1フィルタ22のフィルタ部22fを通過し、開口22vを経て、第3袋体30の第3内部に流れる(図1参照)。
【0043】
(6)第3内部に流れた溶解液は、第2粉状薬剤2を溶解し、第2フィルタ31のフィルタ部31fを通過し、開口31vを経て、第1袋体10の第1内部に流れ(図1参照)、透析液Wとして貯留される(図6参照)。
【0044】
このように、透析液用容器100は、第1粉状薬剤1と水ROとを混合するための混合領域Mを第2内部の下端部に有する可撓性の第2袋体20を備え、水ROを注入するための連通管21の他端部21bが混合領域Mに配置されるので、混合領域Mに第1粉状薬剤1が巻き込まれた水ROの噴流を発生させることができ、水ROに溶解しにくい炭酸水素ナトリウム等であっても、連通管21から水ROを注入するだけで、簡単に透析液Wを作製できる。また、複数の異なる種類の薬剤を溶解した透析液Wであっても、水ROを注入するだけで、簡単に作製できる。
【0045】
次に、本実施形態に係る透析液用容器100の製造方法について、図1から図4を用いて説明する。なお、ここでは、第1粉状薬剤1及び第2粉状薬剤2が、それぞれ、第2袋体20及び第3袋体30にあらかじめ封入され、第2袋体20及び第3袋体30が第1袋体10に囲繞された透析液用容器100の製造方法について説明する。
【0046】
(1)まず、第2袋体20及び第3袋体30を形成する。
第2袋体20及び第3袋体30は、図4に示すように、まず、略長方形でシート状である表材20Aと、同様に略長方形でシート状である裏材20Bとを、重ね合わせる。
次に、図3に示すように、左辺S3、右辺S4、第2内部と第3内部との境界S5及び狭隘部Tにおいて、表材20Aと裏材20Bとを互いに融着するか、あるいは、シール材又は接着剤等のシール材を介することにより水密的にシールする。すなわち、第2袋体20及び第3袋体30を、境界S5で仕切られて、上辺S1と下辺S2とが開放された状態にする。
続いて、第2袋体20の第2内部に第1粉状薬剤1を、第3袋体30の第3内部に第2粉状薬剤を充填する。
【0047】
なお、融着等の適宜の手段により表材20Aと裏材20Bとが水密的に一体化された部分は、図1から図3において同じ模様でハッチングされている。
【0048】
(2)次に、第1袋体10を形成する。
第1袋体10は、図4に示すように、第2袋体20及び第3袋体30を構成する表材20A及び裏材20Bよりも大きな面積を有する、略長方形でシート状である表材12と、同様の形状の裏材13と、左材14と、右材15と、を有する。
【0049】
そして、左材14は中央を中心に右側を折り返し、右材15は中央を中心に左側を折り返した状態で、表材12と裏材13との間に、左材14及び右材15を、それぞれが左側及び右側に配置されるように挟み込み、表材12と裏材13とを重ね合わせる。この際、先の工程で形成した第2袋体20及び第3袋体30も、表材12と裏材13との間に挟み込む。この際、連通管21の一端部21aは第1袋体10の外部に露出するようにする。
【0050】
そして、表材12と裏材13とを重ね合わせた状態で、表材12と左材14及び右材15との間の第1袋体10における左端部分及び右端部分、裏材13と左材14及び右材15との間の第1袋体10における左端部分及び右端部分、表材12と裏材13との間の第1袋体10における上辺部分及び下辺部分を、それぞれ融着等の適宜の手段により水密的に一体化する。
【0051】
さらに、補強のため、第1袋体10における四隅部のそれぞれにおいて、表材12と左材14及び右材15との間、並びに、裏材13と左材14及び右材15との間を、それぞれ融着等の適宜の手段により水密的に一体化する。
【0052】
なお、融着等の適宜の手段により表材12と裏材13とが水密的に一体化された部分は、図2において同じ模様でハッチングされている。
【0053】
このようにして、透析液用容器100は、シート状の定型の素材から、簡単に製造できる。また、このように製造された透析液用容器100は、例えば、図1において2点鎖線Zで示されている位置で折り返して畳むことができ、コンパクトな形状になるので、複数の透析液用容器100を畳んだ状態で重ねて収納したり、運搬したりでき、省スペースで、しかも、取り扱いがし易い。
【0054】
透析液用容器100によれば、可撓性の第1袋体10を備える透析液用容器100であって、透析液用容器100は、第1粉状薬剤1と水ROとを混合するための混合領域Mを第2内部の下端部に有する可撓性の第2袋体20を備え、第2袋体20は、第2袋体20の外部と第2内部とを連通する連通管21と、第1袋体10の第1内部に連通する第1フィルタ22と、を有し、連通管21は、一端部21aが透析回路に接続自在であり、他端部21bが混合領域Mに配置されるので、連通管21を伝って第2袋体20の第2内部に流れる水ROの流体エネルギ以外のエネルギを外部から特に与えなくても、混合領域Mに第1粉状薬剤1を巻き上げる噴流を発生させて溶解の効率を高めることができ、透析液Wを作製する労力(エネルギ)を抑制できる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態による透析液用容器100Aについて説明する。
図7は、第2実施形態による透析液用容器100Aを示す正面図であり、第1粉状薬剤1及び第2粉状薬剤2が封入された状態を示す。第2実施形態による透析液用容器100Aの組立図である。
第2実施形態による透析液用容器100Aは、上述した第1実施形態による透析液用容器100に対して、第1袋体10が第1袋体10Aで置換され、第2袋体20及び第3袋体30が、第1袋体10Aの外部に設けられる点が主に異なる。以下の説明及び図7において、上述した第1実施形態で説明した構成要素と同一であってよい構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する場合がある。
第1袋体10Aは、任意の容量を有するが、例えば、透析の1時間当たりに通常要する約15リットルの容量を有する。第1袋体10Aは、上述した第1実施形態による第1袋体10に対して、支持部11が省略されている点が異なる。ただし、第1袋体10Aは、支持部11を有してもよい。
なお、1つの第1袋体10Aは、上述した第1実施形態による第1袋体10と同様、略長方形でシート状である表材12と、同様の形状の裏材13と、左材14と、右材15(図4参照)とを貼り合わせることで形成されてもよいが、好ましくは、1つの袋状の素材(図8の素材16参照)により形成される。この場合、第1袋体10Aの簡略化(製造コストの低減)を図ることができる。なお、第1袋体10Aの上辺部分は、第2接続管60が通過する箇所を除いて、融着等の適宜の手段により水密的に一体化(シール)される。なお、融着等の適宜の手段により水密的に一体化された部分は、図7において、図2と同じ模様でハッチングされている。
第1袋体10Aは、上述した第1実施形態による第1袋体10と同様、可撓性を有するので、任意の態様で折り畳むことができる。例えば、図7において2点鎖線Zで示されている位置で折り返して畳むことができ、コンパクトな形状になるので、透析液用容器100Aは、可搬性が良好で、搬送時や保管時等において嵩張らず、省スペース化を図ることができる。
本実施形態の第2袋体20及び第3袋体30は、構造自体は上述した第1実施形態と同じであるが、第1袋体10Aの外部に設けられる点が、上述した第1実施形態による第2袋体20及び第3袋体30と異なる。
また、本実施形態では、第3袋体30の下側には、バッファ室40が設けられる。バッファ室40は、第3袋体30の内部から第2フィルタ31を介して下方に流出する溶解液(第1粉状薬剤1及び第2粉状薬剤2が溶解した水RO)を一時的に溜める機能を有する。バッファ室40は、第2フィルタ31の開口31vを封止する態様で設けられる。従って、第2フィルタ31を介して下方に流出する溶解液が、透析液用容器100Aの外部に漏れ出ることは防止される。
【0056】
バッファ室40は、第2袋体20及び第3袋体30を形成するための表材20Aと裏材20B(図8参照)のような表材及び裏材(図示せず)を用いて形成されてもよい。バッファ室40は、第3袋体30を形成する要領で形成できる。ただし、バッファ室40は、狭隘部Tを有する必要はないため、より簡易に形成できる。なお、変形例では、バッファ室40にも、狭隘部Tが形成されてもよい。
なお、図7に示す例では、バッファ室40は、第2袋体20及び第3袋体30と同じ幅の袋体であるが、第2袋体20及び第3袋体30よりも小さい幅の袋体であってもよいし、形状等は任意である。
【0057】
なお、第2フィルタ31の開口31vには、水ROが導入されていない状態での第2粉状薬剤2の落下(バッファ室40への移動)を防止するための隔膜(図示せず)に覆われてもよい。この場合、隔膜は、水ROが導入される際の圧力で破れる特性を有する。なお、かかる隔膜は、第1フィルタ22の開口22vに対して設けられてもよい。
【0058】
バッファ室40の下部には、第1接続管50の上端が接続される。バッファ室40の下辺部は、第1接続管50が通過する箇所を除いて、融着等の適宜の手段により水密的に一体化(シール)される。なお、バッファ室40の下部には、第1接続管50の上端に代えて、第1接続管50の上端が接続可能な継手部が水密的に一体化されてもよい。
【0059】
第1接続管50は、上述のように上端がバッファ室40の下部に接続されるとともに、下端が第1袋体10A内の第2接続管60の上端61に接続される。なお、第2接続管60の上端61は、上述の連通管21の一端部21aのように、継手部として機能してよい。この場合、第2接続管60の上端61に、第1接続管50の下端を嵌め込むことで、第1接続管50と第2接続管60とを接続できる。
【0060】
第1接続管50は、好ましくは、可撓性があり、ゴムや、可撓性を与える樹脂(例えば、ポリ塩化ビニルやシリコーン)等のような材料により形成される。この場合、第1袋体10Aに第2袋体20及び第3袋体30が接続された状態の透析液用容器100Aは、嵩張らず、可搬性等が良好となる。また、第2接続管60は、硬質の樹脂のような非可撓性の材料により形成されてもよいし、ゴムや、可撓性を与える樹脂等のような材料により形成されてもよい。
【0061】
なお、変形例では、第1接続管50及び第2接続管60は、1つの管路部材により実現されてもよい。あるいは、第1接続管50及び第2接続管60は、3つ以上の管路部材により実現されてもよい。また、第1接続管50及び第2接続管60の間の接続箇所は、任意であり、上述したような第1袋体10Aの上部に限られない。例えば、第2接続管60の上端61を、第1袋体10Aの外部まで延在させて、第1袋体10Aの外部で、第1接続管50の下端が接続されてもよい。
【0062】
また、第1接続管50及び第2接続管60の間の接続は、取り外し不能な態様の接続(例えば圧入)であってもよいし、取り外し可能な態様の接続であってもよい。
【0063】
第2接続管60は、上述のように上端が第1接続管50に接続されるとともに、下端が第1袋体10Aの第1内部に開口する。第2接続管60の下端は、好ましくは、第1袋体10Aの第1内部の底部付近に位置する。この場合、第1袋体10Aの第1内部に形成される透析液W(作製された透析液W)の略全部を、第2接続管60、第1接続管50、第3袋体30、第2袋体20、及び連通管21を介して、第1袋体10Aの外部の透析回路へと排出できる。すなわち、作製された透析液Wの利用効率を高めることができる。
【0064】
このような本実施形態に係る透析液用容器100Aによれば、上述した透析液用容器100とは異なり、第1袋体10A内に第2袋体20等を収容する必要がないので、第1袋体10Aを袋状の素材により容易に製造できる。この結果、製造コストの低減を図ることができる。
なお、上述した透析液用容器100Aでは、バッファ室40が可撓性の素材(第2袋体20及び第3袋体30を形成する素材)で形成されるが、これに限られない。例えば、バッファ室40は、第2フィルタ31の下部に水密的に装着可能な樹脂製の部材により形成されてもよい。あるいは、バッファ室40は、第2フィルタ31と一体的に成形されてもよい。
なお、本実施形態においては、第1接続管50及び第2接続管60は、協動して、第1袋体10Aの第1内部に一端が延在し、他端が第1フィルタ22に連通する接続管の一例を形成する。なお、この場合、第1接続管50の他端が、第3袋体30を介して第1フィルタ22に連通している。
【0065】
次に、本実施形態に係る透析液用容器100Aを用いた透析液Wの作製方法及び作製する際の作用を、概説する。
(1)まず、上述した透析液用容器100の場合と同様、第2袋体20の第2内部に第1粉状薬剤1を封入しかつ第3袋体30の第3内部に第2粉状薬剤2を封入してある透析液用容器100Aを所定の姿勢でセットする。例えば、第2袋体20及び第3袋体30を直立な姿勢でセットし、第1袋体10Aを第2袋体20及び第3袋体30よりも下方の位置にセットする。
(2)次いで、連通管21の一端部21aから第2袋体20の第2内部へ向けて水ROを注入する。
(3)すると、上述した透析液用容器100の場合と同様、連通管21の他端部21bから噴出した水ROは、第1フィルタ22の頂部22t(図5参照)に衝突し、上下方向及び横方向の多方向に拡散するように分流する。そして、分流した水ROは、狭隘部Tや第1フィルタ22等に対して衝突を繰り返しながら、渦流を含む複雑な流れとなり、特に、混合領域Mに堆積した第1粉状薬剤1を巻き込み、溶解する。水ROの注入を続けると、水ROは、さらに、上部にある第1粉状薬剤1を巻き上げながら溶解する。ここで、第1粉状薬剤1を溶解した溶解液は、第1フィルタ22のフィルタ部22fを通過し、開口22vを経て、第3袋体30の第3内部に流れる。
(4)第3内部に流れた溶解液は、第2粉状薬剤2を溶解し、第2フィルタ31のフィルタ部31fを通過し、開口31vを経て、第1接続管50及び第2接続管60を通って、第1袋体10Aの第1内部に流れ(図7参照)、透析液Wとして貯留される。
【0066】
このように、透析液用容器100Aは、第1粉状薬剤1と水ROとを混合するための混合領域Mを第2内部の下端部に有する可撓性の第2袋体20を備え、水ROを注入するための連通管21の他端部21bが混合領域Mに配置されるので、混合領域Mに第1粉状薬剤1が巻き込まれた水ROの噴流を発生させることができ、水ROに溶解しにくい炭酸水素ナトリウム等であっても、連通管21から水ROを注入するだけで、簡単に透析液Wを作製できる。また、複数の異なる種類の薬剤を溶解した透析液Wであっても、水ROを注入するだけで、簡単に作製できる。
なお、その後、透析回路に設けられた切替弁によって流れの方向を切り替えると、第1袋体10Aの第1内部に形成される透析液W(作製された透析液W)を利用できる。この場合、第1袋体10Aの第1内部の透析液Wは、第2接続管60、第1接続管50、第3袋体30、第2袋体20、及び連通管21を介して、第1袋体10Aの外部の透析回路へと排出される。なお、変形例では、第1袋体10Aの第1内部に透析液Wが形成されると、第1袋体10Aは、第2袋体20及び第3袋体30から切り離されてもよい。すなわち、第2接続管60と第1接続管50とが非接続状態とされてもよい。この場合、透析回路は、第1袋体10Aからの第2接続管60の上端61に接続することで、同様に、第1袋体10Aの第1内部の透析液Wを利用できる。
【0067】
本実施形態に係る透析液用容器100Aの製造方法については、例えば、以下の通りであってよい。
(1)まず、上述した第1実施形態の場合と同様、第2袋体20及び第3袋体30を形成する。
続いて、上述した第1実施形態の場合と同様、第2袋体20の第2内部に第1粉状薬剤1を、第3袋体30の第3内部に第2粉状薬剤2を充填する。
続いて、融着等により、バッファ室40を形成するとともに、第2袋体20及び第3袋体30に連通管21、第1フィルタ22、及び第2フィルタ31を一体化する。なお、第1フィルタ22については、第1粉状薬剤1を充填する前に一体化されてもよい。
(2)次に、第2接続管60を備える第1袋体10Aを形成する。なお、変形例では、第2袋体20及び第3袋体30の形成前に、第1袋体10Aを形成してもよい。
具体的には、第1袋体10Aは、例えば容量が約15リットルの袋状の素材16(上側のみが開口した素材)に、第2接続管60を入れ、素材16の上辺部を融着等する。この際、第2接続管60の上端61は第1袋体10Aの外部に露出するようにする。このようにして、第2接続管60を備える第1袋体10Aを形成できる。
【0068】
なお、本実施形態では、第1袋体10Aは、袋状の素材16により形成できるので、補強のための溶着等は必要性は低い。従って、補強のための溶着等を省略する場合は、第1袋体10Aの製造コストの更なる低減を図ることができる。ただし、本実施形態においても、必要に応じて、補強のための溶着等が実施されてもよい。
【0069】
このようにして、透析液用容器100Aは、シート状の定型の素材及び袋状の素材等から、簡単に製造できる。また、本実施形態の場合、上述した第1実施形態の場合とは異なり、第2袋体20及び第3袋体30が、第1袋体10Aの外部に設けられるので、それぞれを独立して製造できる。従って、透析液用容器100Aは、製造しやすいものとなり、製造コストの低減を図ることができる。また、このように製造された透析液用容器100Aは、例えば、図7において2点鎖線Zで示されている位置で折り返して畳むことができ、コンパクトな形状になるので、複数の透析液用容器100Aを畳んだ状態で重ねて収納したり、運搬したりでき、省スペースで、しかも、取り扱いがし易い。
【0070】
以上、各実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施形態の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0071】
例えば、上述した実施形態では、可撓性の第2袋体20及び可撓性の第3袋体30が使用されているが、これに限られない。例えば、第2袋体20及び/又は第3袋体30は、一部又は全体が非可撓性であってもよい。例えば、第2袋体20及び第3袋体30は、樹脂により形成されてもよい。この場合、第2袋体20は、混合領域Mを形成する部位だけが樹脂により形成され、他の部位が可撓性の材料により形成されてもよい。この場合、樹脂の部位と、可撓性材料の部位とは、溶着等により結合されてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 第1粉状薬剤
2 第2粉状薬剤
10、10A 第1袋体
11 支持部
12 表材
13 裏材
14 左材
15 右材
16 袋状の素材
20 第2袋体
20A 表材
20B 裏材
21 連通管
21a 一端部
21b 他端部
22 第1フィルタ
22b ベース部
22f フィルタ部
22r 周囲
22s 脚部
22t 頂部
22v 開口
30 第3袋体
31 第2フィルタ
31f フィルタ部
31v 開口
50 第1接続管
60 第2接続管
100、100A 透析液用容器
M 混合領域
PE ポリエチレン
PET ポリエチレンテレフタラート
RO 水
S1 上辺
S2 下辺
S3 左辺
S4 右辺
S5 境界
T 狭隘部
W 透析液
Z 位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8