(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20221226BHJP
【FI】
B60C19/00 J
(21)【出願番号】P 2020008714
(22)【出願日】2020-01-22
(62)【分割の表示】P 2018213621の分割
【原出願日】2018-11-14
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】細見 和正
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-505088(JP,A)
【文献】特開平07-137510(JP,A)
【文献】特開平05-169931(JP,A)
【文献】特開2008-305218(JP,A)
【文献】特開2000-108621(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0264898(US,A1)
【文献】米国特許第08977422(US,B1)
【文献】特開2009-167010(JP,A)
【文献】特表2017-531825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードコアの周辺領域に配置された
、タイヤの内腔側から通信可能な
タイヤ欠損時トレーサビリティ用RFIDタグと、
前記タイヤをリムに装着したときに
、ビードコアの周辺領域外に配置された、前記タイヤの外部から通信可能な通常時用RFIDタグと、を備え、
前記ビードコアの周辺領域は、ビードコアの断面高さL1を基準としたときに、前記断面高さL1をタイヤ径方向外側に20%広げた範囲L2のタイヤ径方向外側端の位置よりも、タイヤ径方向内側の領域である、タイヤ。
【請求項2】
一方のビードコアから他方のビードコアに延び、前記ビードコア周りで折り返されたカーカスプライと、前記ビードコア周りで前記カーカスプライを覆うように配設されたチェーハーと、を備え、前記カーカスプライと前記チェーハーの間に、前記
タイヤ欠損時トレーサビリティ用RFIDタグが配置されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
一方のビードコアから他方のビードコアに延び、前記ビードコア周りで折り返されたカーカスプライと、前記ビードコア周りで前記カーカスプライを覆うように配設されたチェーハーと、前記カーカスプライのタイヤ内腔側に配置されたインナーライナーと、を備え、前記カーカスプライの一部の領域において、前記チェーハーと、前記インナーライナーとが積層されており、前記チェーハーと前記インナーライナーの間に、前記
タイヤ欠損時トレーサビリティ用RFIDタグが配置されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記
タイヤ欠損時トレーサビリティ用RFIDタグは、前記ビードコアのタイヤ幅方向内側に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が埋設されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム構造体内にRFIDタグ等の電子部品を埋設したタイヤが知られている。このようなタイヤは、タイヤに埋設されたRFIDタグと、外部機器としてのリーダとが通信を行うことにより、タイヤの製造管理、使用履歴管理等を行うことができる。
例えば特許文献1には、識別素子を有する電気部品と組み合わされたパッチを、インナーライナーに近接した部分に配置したタイヤが開示されている。また、電気部品を、カーカスとサイドウォールの間や、カーカスとトレッド部分の間に配置することもできることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される技術によれば、識別素子を用いて、タイヤの在庫管理や監視を行うことができる。
しかしながら、特許文献1に示される技術においては、タイヤが破損して大きく欠損し、タイヤのゴム構造体と共に識別素子を紛失するような状況においては、タイヤの市場末期までのトレーサビリティを行うことができなくなる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、タイヤが破損した場合においても、市場末期までのトレーサビリティを行うことが可能なタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明のタイヤ(例えば、タイヤ1)は、ビードコア(例えば、ビードコア21)の周辺領域に、少なくともタイヤの内腔側から通信可能なトレーサビリティ用RFIDタグ(例えば、トレーサビリティ用RFIDタグ50)が配置されている。
【0007】
(2)(1)のタイヤにおいて、前記トレーサビリティ用RFIDタグは、前記タイヤをリム(例えば、リム60)に装着したときに前記タイヤの外部から通信できない位置に配置されていてもよい。
【0008】
(3)(1)または(2)のタイヤは、前記タイヤをリムに装着したときに前記タイヤの外部から通信可能な通常時用RFIDタグ(例えば、通常時用RFIDタグ40)をさらに備えていてもよい。
【0009】
(4)(1)~(3)のタイヤは、一方のビードコア(例えば、ビードコア21)から他方のビードコアに延び、前記ビードコア周りで折り返されたカーカスプライ(例えば、カーカスプライ23)と、前記ビードコア周りで前記カーカスプライを覆うように配設されたチェーハー(例えば、チェーハー31)と、を備え、前記カーカスプライと前記チェーハーの間に、前記トレーサビリティ用RFIDタグが配置されていてもよい。
【0010】
(5)(1)~(3)のタイヤは、一方のビードコアから他方のビードコアに延び、前記ビードコア周りで折り返されたカーカスプライと、前記ビードコア周りで前記カーカスプライを覆うように配設されたチェーハーと、前記カーカスプライのタイヤ内腔側に配置されたインナーライナー(例えば、インナーライナー29)と、を備え、前記カーカスプライの一部の領域において、前記チェーハーと、前記インナーライナーとが積層されており、前記チェーハーと前記インナーライナーの間に、前記トレーサビリティ用RFIDタグが配置されていてもよい。
【0011】
(6)(1)~(5)のタイヤにおいて、前記トレーサビリティ用RFIDタグは、前記ビードコアのタイヤ幅方向内側に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、タイヤが破損した場合においても、市場末期までのトレーサビリティを行うことが可能なタイヤを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るタイヤの部分拡大断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の変形例に係るタイヤのタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
【
図4】本発明の第1実施形態の変形例に係るタイヤの部分拡大断面図である。
【
図5A】本発明の第2実施形態に係るタイヤにおける、保護部材によって保護された、RFIDタグを示す図である。
【
図6】スプリングアンテナ内にゴムを充填しない場合における、RFIDタグをゴムシートで挟み込む前の断面を示す図である。
【
図7】スプリングアンテナ内にゴムを充填しない場合における、RFIDタグをゴムシートで挟み込んだ後の断面を示す図である。
【
図8】スプリングアンテナ内にゴムを充填しない場合における、RFIDタグをゴムシートで挟み込んだ後の断面を示す図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係るタイヤにおける、スプリングアンテナ内にゴムを充填する前のRFIDタグを示す図である。
【
図10】本発明の第3実施形態に係るタイヤにおける、スプリングアンテナ内にゴムを充填した後のRFIDタグを示す図である。
【
図11】本発明の第3実施形態に係るタイヤにおける、ゴムシートで挟み込まれる前のRFIDタグを示す図である。
【
図12】本発明の第3実施形態に係るタイヤにおける、ゴムシートで挟み込まれたRFIDタグを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。タイヤ1の基本的な構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっているため、ここでは、右半分の断面図を示す。図中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸に直交する面で、かつタイヤ幅方向中心に位置する面である。
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、
図1の断面図における紙面左右方向である。
図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示されている。
そして、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、
図1においては、紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、
図1においては、紙面右側である。
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、
図1における紙面上下方向である。
図1においては、タイヤ径方向Yとして図示されている。
そして、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、
図1においては、紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、
図1においては、紙面下側である。
図2~4についても同様である。
【0015】
タイヤ1は、例えば乗用車用のタイヤであり、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード11と、路面との接地面を形成するトレッド12と、一対のビード11とトレッド12との間を延びる一対のサイドウォール13とを備える。
【0016】
ビード11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤを複数回巻いて形成した環状のビードコア21と、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出している、先端先細り形状のビードフィラー22とを備える。ビードコア21は、空気が充填されたタイヤ1を、ホイールのリム60に固定する役目を果たす部材である。ビードフィラー22は、ビード周辺部の剛性を高め、高い操縦性および安定性を確保するために設けられている部材であり、例えば周囲のゴム部材よりもモジュラスの高いゴムにより構成される。
【0017】
タイヤ1の内部には、タイヤ1の骨格となるプライを構成するカーカスプライ23が埋設されている。カーカスプライ23は、一方のビードコア21から他方のビードコア21に延びている。すなわち、一対のビードコア21間を、一対のサイドウォール13およびトレッド12を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。
図1に示されるように、カーカスプライ23は、一方のビードコア21から他方のビードコア21に延び、トレッド12とビード11との間を延在するプライ本体24と、ビードコア21の周りで折り返されているプライ折り返し部25とを備える。本実施形態においては、プライ折り返し部25は、プライ本体24に重ね合わされている。
カーカスプライ23は、タイヤ幅方向に延びる複数のプライコードにより構成されている。また、複数のプライコードは、タイヤ周方向に並んで配列されている。
このプライコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されており、ゴムにより被覆されている。
【0018】
トレッド12において、カーカスプライ23のタイヤ径方向外側には、スチールベルト26が設けられている。スチールベルト26は、ゴムで被覆された複数のスチールコードにより構成されている。スチールベルト26を設けることにより、タイヤ1の剛性が確保され、トレッド12と路面の接地状態が良くなる。本実施形態においては、2層のスチールベルト261、262が設けられているが、積層されるスチールベルト26の枚数はこれに限らない。
【0019】
スチールベルト26のタイヤ径方向外側には、ベルト補強層としてのキャッププライ27が設けられている。キャッププライ27は、ポリアミド繊維等の絶縁性の有機繊維層により構成されており、ゴムにより被覆されている。キャッププライ27を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。本実施形態においては、キャッププライ27のタイヤ幅方向外側端27Aは、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aよりもタイヤ幅方向外側に延出している。
【0020】
キャッププライ27のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム28が設けられている。トレッドゴム28の外表面には、図示しないトレッドパターンが設けられており、この外表面が、路面と接触する接地面となる。
【0021】
ビード11、サイドウォール13、トレッド12において、カーカスプライ23のタイヤ内腔側には、タイヤ1の内壁面を構成するゴム層としてのインナーライナー29が設けられている。インナーライナー29は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0022】
サイドウォール13において、カーカスプライ23のタイヤ幅方向外側には、タイヤ1の外壁面を構成するサイドウォールゴム30が設けられている。このサイドウォールゴム30は、タイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0023】
ここで、
図1に示されるように、サイドウォールゴム30は、トレッド12に向かって延出している。一方、トレッドゴム28は、サイドウォール13に向かって延出している。その結果、カーカスプライ23の一部領域のタイヤ外表面側において、トレッドゴム28と、サイドウォールゴム30とが積層された状態となっている。より詳細には、サイドウォールゴム30とトレッドゴム28が共に存在する領域、すなわちサイドウォール13とトレッド12の移行領域において、カーカスプライ23のタイヤ外表面側に、サイドウォールゴム30と、トレッドゴム28とが、順に積層された状態となっている。
【0024】
ビードコア21周りでカーカスプライ23を覆うように、チェーハー31が設けられている。より詳細には、ビードコア21周辺のカーカスプライ23のタイヤ幅方向内側、タイヤ径方向内側、タイヤ幅方向外側を覆うように、チェーハー31が設けられている。チェーハー31の一端側は、カーカスプライ23のプライ本体24とインナーライナー29との間に挟まれるように配置されている。チェーハー31の他端側は、カーカスプライ23のプライ折り返し部25とリムストリップゴム32との間に挟まれるように配置されている。チェーハー31は、例えば繊維を練り込んだゴムや、モジュラスの高いゴムにより構成されており、タイヤ1を構成する構成部材の中で、比較的強度が高い。例えば、インナーライナー29やサイドウォールゴム30よりも強度が高い。
プライ折り返し部25およびチェーハー31のタイヤ幅方向外側に配置されているリムストリップゴム32は、ホイールにタイヤ1が装着される際に、そのタイヤ幅方向外側が、ホイールのリム60と接触するゴム部材である。このリムストリップゴム32のタイヤ径方向外側は、サイドウォールゴム30に連接している。
【0025】
本実施形態のタイヤ1には、タイヤ1をリム60に装着したときに外部から通信可能な通常時用RFIDタグ40と、タイヤ1が破損して大きく欠損するような場合においても、市場末期までのトレーサビリティを行うことを可能とするための、トレーサビリティ用RFIDタグ50が埋設されている。
【0026】
RFIDタグ40、50は、RFIDチップと、外部機器と通信を行うためのアンテナとを備えた、パッシブ型のトランスポンダであり、外部機器としての図示しないリーダとの間で無線通信を行う。アンテナとしては、コイル状のスプリングアンテナ、板状のアンテナ、棒状の各種のアンテナが用いられる。例えば、フレキシブル基板に対して所定のパターンをプリントすることによって形成したアンテナであってもよい。RFIDチップ内の記憶部には、製造番号、部品番号等の識別情報が格納されている。なお、通常時用RFIDタグ40と、トレーサビリティ用RFIDタグ50は、同じ種類のRFIDタグであってもよいし、通信性能等の異なるRFIDタグであってもよい。
【0027】
図1に示されるように、通常時用RFIDタグ40は、サイドウォールゴム30とトレッドゴム28の間に埋設されている。この位置は、通信品質を考慮すると、通常時用RFIDタグ40の埋設位置として好適である。すなわち、通常時用RFIDタグ40を、サイドウォール13とトレッド12の移行領域に埋設することで、通常時用RFIDタグ40を、通信に対して悪影響をおよぼす可能性のある、金属製のビードコア21から十分離れた位置に配置することができる。ここで、ビードコア21は、金属製のビードワイヤを積層巻回して環状に形成されていることから、通信に対して悪影響をおよぼす可能性が特に高い金属部材である。よって、ビードコア21の周辺領域にRFIDタグを配置すると、長距離の通信が困難となる。
【0028】
また、
図1に示されるように、キャッププライ27のタイヤ幅方向外側端27Aを、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aよりもタイヤ幅方向外側に延出させた上で、通常時用RFIDタグ40を、キャッププライ27のタイヤ幅方向外側端27Aよりもタイヤ外表面側に配置して、通常時用RFIDタグ40を、金属製のスチールベルト26から確実に離間させる構成を採用してもよい。
【0029】
そして、通信品質を考慮すれば、通常時用RFIDタグ40は、できるだけタイヤ1の外表面に近い部分に配置することが好ましい。仮に、通常時用RFIDタグ40をカーカスプライ23の内腔側に配置すると、タイヤ1の外表面からの離れるため、通信品質が落ちる。よって、通常時用RFIDタグ40は、カーカスプライ23のタイヤ外表面側に配置されることが好ましい。
また、カーカスプライ23のタイヤ外表面側のゴム層の方が、インナーライナー29よりもゴム層に厚みがあるため、加硫時において、通常時用RFIDタグ40がゴム層内に埋設された状態を維持しやすい。
これらの点を考慮すると、サイドウォールゴム30とトレッドゴム28との間は、通常時用RFIDタグ40の埋設位置として好適である。
【0030】
本実施形態のタイヤ1には、タイヤ1をリム60に装着したときに外部から通信可能な通常時用RFIDタグ40に加えて、例えばタイヤが破損して大きく欠損した場合においても、市場末期までのトレーサビリティを行うことを可能とするための、トレーサビリティ用RFIDタグ50が埋設されている。
【0031】
図2は、
図1のタイヤ1における、トレーサビリティ用RFIDタグ50の埋設部周辺を示す拡大断面図である。
図1、2に示されるように、トレーサビリティ用RFIDタグ50は、ビードコア21の周辺領域に配置されている。本実施形態においては、トレーサビリティ用RFIDタグ50は、ビードコア21のタイヤ幅方向内側であって、カーカスプライ23とチェーハー31の間に配置されている。より詳細には、トレーサビリティ用RFIDタグ50は、タイヤ径方向において、ビードコア21の断面高さL1(
図2に示されるタイヤ幅方向断面視における、ビードコア21のタイヤ径方向断面高さL1)の範囲内に配置されている。
このように、トレーサビリティ用RFIDタグ50を金属製のビードコアの周辺領域に配置すれば、タイヤが破損して大きく欠損した場合、例えば、トレッド12や、サイドウォール13が大きく欠損した場合であっても、トレーサビリティ用RFIDタグ50はビードコア21と共に残存するため、市場末期までのトレーサビリティを行うことが可能となる。
【0032】
そして、このトレーサビリティ用RFIDタグ50を、少なくとも、出荷前などのホイール未装着時と、市場末期のタイヤ破損時において通信するためのものとして位置づける場合は、このトレーサビリティ用RFIDタグ50は、少なくともタイヤ1の内腔側から通信可能となっていればよい。ホイール未装着時や、市場末期のタイヤ破損時は、タイヤ1の内腔側からリーダをアクセスすることができるからである。このようなトレーサビリティ用RFIDタグ50は、タイヤ欠損時トレーサビリティ用RFIDタグとして用いることができる。
【0033】
付言すると、トレーサビリティ用RFIDタグ50は、タイヤ1をリム60に装着した状態において、タイヤ1の外部からは通信できない位置に配置されていてもよい。トレーサビリティ用RFIDタグ50のアンテナを含む通信部の通信機能を適切に設定し、かつトレーサビリティ用RFIDタグ50を金属製のビードコア21の周辺領域に配置することで、このような状態とすることができる。これにより、例えば通常時用RFIDタグ40と、トレーサビリティ用RFIDタグ50の使用周波数帯域が同じ周波数帯域であったとしても、通常使用時において、すなわちタイヤ1がリム60に装着されている場合において、通常時用RFIDタグ40の信号に、トレーサビリティ用RFIDタグ50の信号が混入することがない。
【0034】
また、トレーサビリティ用RFIDタグ50のアンテナを含む通信部として、必要以上に長距離の通信が可能な高コストの通信部を採用する必要が無くなる。すなわち、トレーサビリティ用RFIDタグ50として、通常時用RFIDタグ40よりも通信性能の低い、小型のRFIDタグを用いることもできる。この場合、RFIDタグ単体の機能(タイヤ1に組み付ける前の機能)として、トレーサビリティ用RFIDタグ50の通信部が有する通信可能距離は、通常時用RFIDタグ40の通信部が有する通信可能距離よりも短くてもよい。例えば、トレーサビリティ用RFIDタグ50のアンテナとして、通常時用RFIDタグ40のアンテナとは異なるアンテナを採用してもよい。より具体的には、通常時用RFIDタグ40のアンテナとして、通信性および柔軟性を考慮して、コイル状のスプリングアンテナを採用し、トレーサビリティ用RFIDタグ50のアンテナとして、小型化を考慮して、基板にアンテナパターンをプリントすることによって形成したプリントアンテナを採用してもよい。
また、異なる通信部を採用して、トレーサビリティ用RFIDタグ50と通常時用RFIDタグ40の使用周波数帯域を異ならせてもよい。
【0035】
なお、トレーサビリティ用RFIDタグ50のアンテナは、ビードコア21に接触しないように配置されることが好ましい。本実施形態に示されるように、カーカスプライ23とチェーハー31の間にトレーサビリティ用RFIDタグ50を配置することで、アンテナとビードコア21の接触を確実に防ぐことができる。また、トレーサビリティ用RFIDタグ50のアンテナは、使用周波数帯域において、ビードコア21と電磁界結合しない位置に設けることが好ましい。
但し、通信品質は低下するものの、アンテナとビードコア21が接触している構成や、電磁界結合している構成を採用することも可能である。
【0036】
なお、トレーサビリティ用RFIDタグ50は、タイヤ1をリム60に装着したときにおいて、金属製のリム60とは反対側の位置となる、ビードコア21のタイヤ幅方向内側に配置されることが好ましい。この位置であれば、リム60により強く押圧されることがないため、RFIDタグの配置位置としてより適切である。
【0037】
但し、トレーサビリティ用RFIDタグ50を、ビードコア21のタイヤ径方向内側や、ビードコア21のタイヤ幅方向外側に配置してもよい。例えば、ビードコア21のタイヤ径方向内側における、カーカスプライ23とチェーハー31の間や、ビードコア21のタイヤ幅方向外側における、カーカスプライ23とチェーハー31の間に配置してもよい。
【0038】
なお、本実施形態によれば、トレーサビリティ用RFIDタグ50は、金属製のビードコア21の周辺領域に配置され、かつ強度の高い部材の間に配置されているため、具体的には、インナーライナー29やサイドウォールゴム30よりも強度やモジュラスが高いチェーハー31と、繊維コードを有するカーカスプライ23の間に配置されているため、タイヤ1の市場末期まで確実に保護される。
【0039】
なお、通常時用RFIDタグ40の配置位置については、サイドウォールゴム30とトレッドゴム28との間に限らない。通信品質を考慮すると、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aと、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aの間の領域に配置されていることが好ましいが、少なくとも、トレーサビリティ用RFIDタグ50よりも通信しやすい位置に配置されていればよい。例えばカーカスプライ23のタイヤ外表面側の所望の位置や、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aの周辺領域などに配置されていてもよい。
【0040】
なお、RFIDタグ40、50のうち、通常使用時において通信を行う通常時用RFIDタグ40のみ、センサ機能を有するものや、タイヤ1に配置されたセンサからのセンサ情報を保存可能なものとしてもよい。この場合、トレーサビリティ用RFIDタグ50は、少なくとも識別情報を記憶し、市場末期においても識別情報を送信できるものとする。
但し、トレーサビリティ用RFIDタグ50を、センサ機能を有するものや、タイヤ1に配置されたセンサからのセンサ情報を保存可能なものとしてもよい。また、トレーサビリティ用RFIDタグ50の記憶部に、通常時用RFIDタグ40の記憶部に保存されている情報のうち、一部の情報のみを選択的に記憶させる態様としてもよい。この場合は、トレーサビリティ用RFIDタグ50の記憶部には、識別情報に加えて、タイヤ1を解析する上で特に重要なセンサ情報などが保存される。
【0041】
ここで、RFIDタグ40、50は、タイヤ1の製造工程において、加硫工程の前に取り付けられている。本実施形態においては、通常時用RFIDタグ40を、トレッドゴム28またはサイドウォールゴム30に取り付ける。また、トレーサビリティ用RFIDタグ50を、カーカスプライ23またはチェーハー31に取り付ける。
このとき、トレッドゴム28、サイドウォールゴム30、カーカスプライ23の被覆ゴム、チェーハー31といったゴム部材は加硫前の生ゴムの状態であるため、その粘着性を利用して、RFIDタグ40、50をゴム部材に貼り付けてもよい。あるいは、粘着性が低い場合などにおいては、接着剤等を用いて貼り付けてもよい。RFIDタグ40、50を貼り付けた後、RFIDタグ40、50を各ゴム部材によって挟み込む。その後、RFIDタグ40、50を含む各ゴム部材が組み付けられた生タイヤを、加硫工程において加硫し、タイヤ1を製造する。
【0042】
このように、本実施形態においては、タイヤ製造時において、生ゴム状態のゴム部材にRFIDタグ40、50を貼り付けることができ、また、異なる部材間にRFIDタグ40、50を配置することができるため、タイヤ1の製造工程におけるRFIDタグ40、50の組み付け作業が容易である。
【0043】
なお、タイヤ1に埋設するRFIDタグ40、50は、後述する
図5においてRFIDタグ40として示されるように、アンテナを含めると、長手方向を有することが多い。このようなRFIDタグ40、50は、その長手方向が、タイヤ1の周方向に対して接線の方向、すなわち
図1~2の断面図において紙面に直交する方向となるように、タイヤ1に埋設することが好ましい。このように埋設することで、タイヤ1が変形したときにおいても、RFIDタグ40、50に応力がかかりにくい。
【0044】
なお、RFIDタグ40、50は、ゴムシート等の保護部材により被覆された状態で、異なる部材間に挟んでもよいが、保護部材で被覆することなく、異なる部材間に挟んでもよい。
【0045】
図3は、本実施形態の変形例におけるタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
図4は、
図3のタイヤ1における、トレーサビリティ用RFIDタグ50の埋設部周辺を示す拡大断面図である。
本変形例においても、トレーサビリティ用RFIDタグ50は、ビードコア21の周辺領域に配置されているが、その詳細な配置位置が異なる。本変形例においては、トレーサビリティ用RFIDタグ50は、チェーハー31とインナーライナー29の間に配置されている。
【0046】
この場合であっても、トレーサビリティ用RFIDタグ50は、ビードコア21の周辺領域に配置されているため、
図1、2の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、本実施形態によれば、よりタイヤ内腔面に近い位置にトレーサビリティ用RFIDタグ50が配置されているため、リーダをタイヤ内腔側からアクセスした場合において、通信が容易である。また、チェーハー31が繊維コードを有していない構成の場合、トレーサビリティ用RFIDタグ50をカーカスプライ23に直接配置しない構成であるため、トレーサビリティ用RFIDタグ50のアンテナが繊維コードに引っかかり、加硫時において、アンテナが伸ばされるといった問題も発生しない。
また、本実施形態に示されるように、トレーサビリティ用RFIDタグ50を、チェーハー31とインナーライナー29との間に配置することで、確実にビードコア21のタイヤ幅方向内側に配置することができる。
【0047】
そして、本変形例においては、トレーサビリティ用RFIDタグ50は、タイヤ径方向において、ビードコア21の断面高さL1(
図4に示されるタイヤ幅方向断面視における、ビードコア21のタイヤ径方向断面高さL1)の範囲内に、少なくとも一部が含まれるように配置されている。このような位置であっても、金属製のビードコア21に近接した周辺領域であるため、トレッド12や、サイドウォール13が大きく欠損した場合であっても、トレーサビリティ用RFIDタグ50はビードコア21と共に残存する。よって、市場末期までのトレーサビリティを行うことが可能となる。
【0048】
なお、トレーサビリティ用RFIDタグ50は、ビードコア21の断面高さL1を基準としたときに、このL1をタイヤ径方向外側に20%広げた範囲L2(
図2、4に示されるL2)のタイヤ径方向外側端の位置Y1(
図2、4に示されるY1)よりも、タイヤ径方向内側の領域に配置されることが好ましい。例えば、ビードコア21のタイヤ径方向内側におけるカーカスプライ23とチェーハー31の間や、ビードコア21のタイヤ幅方向外側におけるカーカスプライ23とチェーハー31の間や、チェーハー31とリムストリップゴム32の間であって、位置Y1よりもタイヤ径方向内側の領域に、トレーサビリティ用RFIDタグ50が配置されていてもよい。この領域は、金属製のビードコア21に近接した周辺領域であり、トレッド12や、サイドウォール13が大きく欠損した場合であっても、トレーサビリティ用RFIDタグ50はビードコア21と共に残存する可能性が極めて高い。よって、市場末期までのトレーサビリティを行うことが可能となる。
【0049】
本実施形態のタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0050】
(1)本実施形態に係るタイヤ1は、ビードコア21の周辺領域に、少なくともタイヤ1の内腔側から通信可能なトレーサビリティ用RFIDタグ50が配置されている。
これにより、タイヤが破損した場合においても、市場末期までのトレーサビリティを行うことが可能となる。
【0051】
(2)本実施形態に係るタイヤ1は、トレーサビリティ用RFIDタグ50が、タイヤ1をリム60に装着したときにタイヤ1の外部から通信できない位置に配置されている。
これにより、トレーサビリティ用RFIDタグ50のアンテナを含む通信部として、必要以上に長距離の通信が可能な高コストの通信部を採用する必要が無くなる。また、例えば通常時用RFIDタグ40と、トレーサビリティ用RFIDタグ50の使用周波数帯域が同じ周波数帯域であったとしても、通常使用時において、通常時用RFIDタグ40の信号に、トレーサビリティ用RFIDタグ50の信号が混入することがない。
【0052】
(3)前記タイヤ1を前記リムに装着したときに前記タイヤ1の外部から通信可能な通常時用RFIDタグをさらに備えている。
通常時用RFIDタグ40とは別に、トレーサビリティ用RFIDタグ50を備えていることにより、トレーサビリティ用RFIDタグ50を、通信距離の確保が困難なビードコア21の周辺領域に配置することができる。
【0053】
(4)一方のビードコア21から他方のビードコア21に延び、ビードコア21周りで折り返されたカーカスプライ23と、ビードコア21周りでカーカスプライ23を覆うように配設されたチェーハー31と、を備え、カーカスプライ23とチェーハー31の間に、トレーサビリティ用RFIDタグ50が配置されている。
これにより、トレーサビリティ用RFIDタグ50が、金属製のビードコア21の周辺領域に配置され、かつ強度の高い部材であるカーカスプライ23とチェーハー31の間に配置されるため、タイヤ1の市場末期まで、トレーサビリティ用RFIDタグ50が確実に保護される。
【0054】
(5)一方のビードコア21から他方のビードコア21に延び、ビードコア21周りで折り返されたカーカスプライ23と、ビードコア21周りでカーカスプライ23を覆うように配設されたチェーハー31と、カーカスプライ23のタイヤ内腔側に配置されたインナーライナー29と、を備え、カーカスプライ23の一部の領域において、チェーハー31と、インナーライナー29とが積層されており、チェーハー31とインナーライナー29の間に、トレーサビリティ用RFIDタグ50が配置されている。
これにより、トレーサビリティ用RFIDタグ50が、ビードコア21のタイヤ幅方向内側であって、タイヤ内腔面に近い位置に配置されるため、タイヤ内腔側からの通信が容易となる。
【0055】
(6)トレーサビリティ用RFIDタグ50は、ビードコア21のタイヤ幅方向内側に配置されている。
これにより、タイヤ内腔側からの通信が容易となる。また、トレーサビリティ用RFIDタグ50が、リム60により強く押圧されることもない。
【0056】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るタイヤ1について、
図5A~5Cを参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。
本実施形態においては、RFIDタグ40、50は、ゴムシートにより構成される保護部材43によって被覆されている。RFIDタグ40、50のいずれについても、ゴムシートにより被覆される態様、タイヤ1内に埋設される方向は同じであるため、以下は、通常時用RFIDタグ40を用いて説明する。
【0057】
図5Aは、ゴムシートにより構成される保護部材43によって被覆された、RFIDタグ40を示す図である。
図5Aでは、RFIDタグ40は後述するゴムシート431に覆われて隠れている。
図5Bは
図5Aのb-b断面図、
図5Cは
図5Aのc-c断面図である。
本実施形態においては、
図5A~5Cに示されるように、RFIDタグ40は保護部材43により被覆されている。
【0058】
RFIDタグ40は、RFIDチップ41と、外部機器と通信を行うためのアンテナ42とを備えている。アンテナ42としては、コイル状のスプリングアンテナ、板状のアンテナ、棒状の各種のアンテナが用いられる。例えば、フレキシブル基板に対して所定のパターンをプリントすることによって形成したアンテナであってもよい。通信性および柔軟性を考慮すると、コイル状のスプリングアンテナが最も好ましい。但し、トレーサビリティ用RFIDタグ50のように、通信距離が短くても良い場合や、剛性の高い金属製のビードコアの周辺領域に配置される場合は、基板にパターンをプリントすることによって形成したアンテナ等を用いることもできる。アンテナは、使用する周波数帯域等に応じて、最適化されたアンテナ長さに設定されている。
【0059】
保護部材43は、RFIDタグ40を挟み込んで保護する2枚のゴムシート431、432により構成されている。
【0060】
保護部材43は、例えば所定のモジュラスのゴムにより構成されている。
ここで、モジュラスは、JIS K6251:2010の「3.7 所定伸び引張り応力(stress at a given elongation),S」に準拠して測定された、23℃の雰囲気下における100%伸長モジュラス(M100)を指す。
【0061】
保護部材43に採用するゴムとしては、少なくともサイドウォールゴム30よりもモジュラスが高いゴムを用いる。
【0062】
例えば、保護部材43に用いられるゴムとしては、サイドウォールゴム30のモジュラスを基準として、その1.1倍~2倍のモジュラスのゴムを用いることがより好ましい。
また、保護部材43に採用するゴムとして、サイドウォールゴム30よりもモジュラスが高いゴムを用いることにより、RFIDタグ40、保護部材43、サイドウォールゴム30の順に剛性が段階的に変化するため、タイヤ1が変形した場合において、RFIDタグ40埋設部においてゴム構造体内に過度な応力が発生することを防ぐことができる。
【0063】
また、保護部材43を、短繊維フィラー混合ゴムにより構成してもよい。短繊維フィラーとしては、例えば、アラミド短繊維やセルロース短繊維といった有機短繊維、アルミナ短繊維等のセラミックス短繊維やガラス短繊維といった無機短繊維のような、絶縁性の短繊維を用いることができる。ゴムにこのような短繊維フィラーを混合することにより、ゴムの強度を高めることができる。
また、保護部材43として、加硫後の状態のゴムシートを用いてもよい。加硫後の状態のゴムシートは、生ゴムのように塑性変形しないため、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
【0064】
また、保護部材43として、ポリエステル繊維やポリアミド繊維等による有機繊維層を設けてもよい。2枚のゴムシート431、432に、有機繊維層を埋設することも可能である。
【0065】
このように、保護部材43を、2枚のゴムシート431、432によって構成すれば、保護部材43を含むRFIDタグ40を薄く形成できるので、タイヤ1に埋設する上で好適である。また、加硫前のタイヤ1の構成部材にRFIDタグ40を組み付けるときにおいて、ゴムシート431、432によって被覆されたRFIDタグ40は、非常に簡便に装着することができる。
例えば、加硫前の各ゴム部材の所望の位置に、ゴムシート431、432によって被覆されたRFIDタグ40を、生ゴムの粘着性を利用して適切に貼り付けることができる。また、ゴムシート431、432も加硫前の生ゴムとすることにより、ゴムシート431、432自身の粘着性も用いて、より簡便に貼り付けることができる。
【0066】
但し、保護部材43は、2枚のゴムシート431、432によって構成される態様に限らず、種々の態様を採用することができる。例えば、保護部材を構成するゴムシートは、RFIDタグ40の少なくとも一部を覆っていれば、製造工程における作業性の向上や応力緩和などの効果が得られる。
また、例えば、RFIDタグ40の全周に亘って1枚のゴムシートを巻き付ける構成や、RFIDタグ40の全周に亘って、粘度の高いポッティング剤の態様の保護部材を付着させた構成であってもよい。このような構成であっても、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
【0067】
なお、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40は、その長手方向が、タイヤ1の周方向に対して接線の方向、すなわち
図1~4の断面図において紙面に直交する方向となるように、タイヤ1に埋設されている。製造工程においては、ゴムシート431、432のいずれか一方の一面が、加硫前のタイヤ1の構成部材に貼り付けられる。
【0068】
このような態様とすることで、タイヤ1が変形したときにおいても、RFIDタグ40に応力がかかりにくい。また、製造工程において、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40、50を取り付ける作業が簡便となる。
【0069】
本実施形態に係るタイヤ1によれば、上記(1)~(6)に加えて以下の効果を奏する。
【0070】
(7)本実施形態においては、RFIDタグ40、50が、ゴムシート431、432により被覆されている。
これにより、製造工程における作業性が向上する。また、RFIDタグ40、50にかかる応力を緩和する効果などが得られる。
【0071】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係るタイヤ1について、
図6~12を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第2実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。
本実施形態は、RFIDタグ40、50のアンテナが、コイル状のスプリングアンテナである場合に特に好適な実施形態である。
なお、コイル状のスプリングアンテナを採用した場合、RFIDタグ40、50のいずれであっても以下の工程は変わらない。よって、以下は、通常時用RFIDタグ40を用いて説明する。
【0072】
本実施形態のRFIDタグ40は、アンテナとして、通信性および柔軟性の高いコイル状のスプリングアンテナ421が用いられている。スプリングアンテナ421は、使用する周波数帯域等に応じて、最適化されたアンテナ長さに設定されている。
【0073】
本実施形態においては、保護部材43を構成する2枚のゴムシート431、432でRFIDタグ40を挟み込む前に、スプリングアンテナ421内にゴムを配置する。より好ましくは、空気がなるべく残らないように、スプリングアンテナ内にゴムを充填する。
図6~12を用いて、その工程およびその工程を採用する理由を説明する。
【0074】
まず、
図6~
図8を用いて、参考例として、スプリングアンテナ421内にゴムを充填しない場合における、RFIDタグ40周辺の状態について説明する。
図6は、RFIDタグ40をゴムシート431、432で挟み込む前の、スプリングアンテナ421、ゴムシート431、432の断面を示す図である。
図7は、RFIDタグ40をゴムシート431、432で挟み込んだ後の、スプリングアンテナ421、ゴムシート431、432の断面を示す図である。
【0075】
図7に示されるように、この参考例においては、スプリングアンテナ421内に予めゴムが充填されていないため、ゴムシート431、432で挟み込んだ後において、スプリングアンテナ421内に空気45がある程度残ってしまう場合がある。このように空気が残ってしまうと、ゴムシート431、432とスプリングアンテナ421との一体性が不十分となり、タイヤ1が変形したときに、ゴムの動きにスプリングアンテナ421が追従せず、スプリングアンテナ421を有するRFIDタグ40が破損するおそれがある。
【0076】
なお、ここではゴムシート431、432として、加硫前の生ゴムを使用している。よって、ゴムシート431、432を両側から押しつけることにより、
図7に示されるように、スプリングアンテナ内にゴムシート431、432がある程度はめり込んでいる。しかしながら、スプリングアンテナ内が完全に埋まるまでゴムシート431、432をめり込ませるためには、非常に多くの時間と手間がかかる。
【0077】
そして、仮に時間をかけてスプリングアンテナ内が埋まるまでゴムシート431、432をめり込ませた場合であっても、
図8に示されるように、スプリングアンテナ421の外周部と、ゴムシート431、432の外表面との距離Lが非常に短くなる。また、その距離Lを安定させることは困難であり、局所的に薄い部分が発生し得る。よって、ゴムシート431、432によるRFIDタグ40の保護が不十分となり、加硫時において、ゴムシート431、432が破損する可能性がある。
【0078】
そこで、本実施形態においては、
図9~12に示されるように、ゴムシート431、432でRFIDタグ40を挟み込む前に、スプリングアンテナ421内にゴムを配置する。より好ましくは、空気がなるべく残らないように、スプリングアンテナ内にゴムを充填する。なお、
図9~12の右側に示す図は、スプリングアンテナ421およびその周囲の横断面を示す図である。
【0079】
図9は、スプリングアンテナ421内にゴム46を充填する前の状態を示す図、
図10は、スプリングアンテナ421内にゴム46を充填した後の状態を示す図である。
ゴム46は、スプリングアンテナ421の外周面と略同じ外径となるように埋め込まれる。そして、スプリングアンテナ421の外周面からゴム46がはみ出ている場合には、その部分を拭き取って除去することが好ましい。すなわち、ゴム46の外周面は、スプリングアンテナ421の外周面と略同一面となるように成形されることが好ましい。
なお、スプリングアンテナ421内にゴム46を充填すると共に、スプリングアンテナ421の外周をゴム46で薄く包み込んでもよい。一方、スプリングアンテナ421をゴム46によって厚く包み込んでしまうと、スプリングアンテナ421の柔軟性が損なわれる上に、RFIDタグ40を挟み込んだ後のゴムシート431、432により形成される幅方向の寸法が大きくなってしまうため、好ましくない。
なお、スプリングアンテナ421の内周面と略同じ外径となるように、ゴム46を埋め込んでもよい。ゴム46の外周部は、スプリングアンテナ421の内周面~外周面の範囲内に位置していることが望ましい。
【0080】
ここで、スプリングアンテナ421の柔軟性を確保するために、ゴム46としては、柔軟性を有するゴムを用いる。但し、作業性等を考慮して、ゴム46として、ゴムシート431、432よりも高いモジュラスのゴムを用いることが好ましい。
なお、スプリングアンテナ421内に配置するゴム46としては、好ましくは未加硫のゴムを用いる。ゴム46、ゴムシート431、432を未加硫のゴムとし、同時に加硫することにより、ゴム46、ゴムシート431、432、スプリングアンテナ421の一体性が高まる。また、ゴム46、ゴムシート431、432は、同種のゴムとすることがより好ましい。
なお、スプリングアンテナ421の柔軟性を重視して、ゴム46として、ゴムシート431、432よりも低いモジュラスのゴムを用いてもよい。また、略同一のモジュラスのゴム、同じ材質のゴムを用いてもよい。
なお、スプリングアンテナ421内に配置するゴム46として、加硫後のゴムを用いてもよい。また、ゴム系接着剤、ゴム系充填剤などを用いることも可能である。柔軟性を確保しつつ、スプリングアンテナ421内に空気をなるべく残らないようにすることを考慮して、各種のゴム系材料を採用することができる。
ゴム46の配置作業としては、各種の方法が採用可能であるが、例えば、注射器を用いてスプリングアンテナ421内にゴムを注入することも可能である。この場合、注射器を用いて、設定された適切な量のゴム46を充填してもよい。また、ゴム46を多めに充填後、スプリングアンテナ421の外周からはみ出た部分を拭き取ってもよい。
【0081】
図11は、スプリングアンテナ421にゴム46が充填されたRFIDタグ40を、ゴムシート431、432で挟み込む前の状態を示す図、
図12は、ゴムシート431、432で挟み込んだ後の状態を示す図である。
【0082】
図12に示されるように、本実施形態によれば、スプリングアンテナ421内に予めゴム46が充填されていたため、ゴムシート431、432の間に空気溜まりが存在していない。よって、空気溜まりを気にしなくてもよいため、ゴムシート431、432でRFIDタグ40を挟み込む工程も簡便となる。
また、スプリングアンテナ421内にゴム46が配置されていることにより、スプリングアンテナ421、ゴム46、ゴムシート431、432の一体性が高まり、タイヤ1が変形したときに、ゴムの動きにスプリングアンテナ421が追従する。よって、スプリングアンテナ421を有するRFIDタグ40の耐久性も向上する。
【0083】
また、本実施形態によれば、スプリングアンテナ421の外周部と、ゴムシート431、432の外表面との距離Lが安定する。すなわち、この距離Lとして、ゴムシート431、432の肉厚に近い距離が概ね確保される。よって、RFIDタグ40は、ゴムシート431、432によって十分保護される。
【0084】
本実施形態においてゴムシート431、432で挟み込まれたRFIDタグ40、50は、タイヤ1のゴム部材に配設され、その後生タイヤは加硫される。
【0085】
本実施形態に係るタイヤ1によれば、上記(1)~(7)に加えて以下の効果を奏する。
【0086】
(8)本実施形態においては、通信機能を有する電子部品としてのRFIDタグ40、50のスプリングアンテナ421内にゴム46を配置する工程と、ゴム46が配置されたスプリングアンテナ421を有するRFIDタグ40、50を、ゴムシート431、432で挟み込む工程と、ゴムシート431、432で挟み込まれたRFIDタグ40、50を、タイヤ1に配設する配設工程と、を備える。
これにより、スプリングアンテナ421内に空気が残ってしまうことがない。また、空気溜まりを気にしなくてもよいため、ゴムシート431、432でRFIDタグ40、50を挟み込む作業も簡便となる。
また、スプリングアンテナ421の外周部と、ゴムシート431、432の外表面との距離Lが安定するため、RFIDタグ40、50は、ゴムシート431、432によって十分保護される。本実施形態のタイヤように、RFIDタグ40、50がトレッドゴム28とサイドウォールゴム30との間、インナーライナー29とチェーハー31との間、チェーハー31とカーカスプライ23との間などに埋設されている態様の場合、すなわち、タイヤ1の外表面に近い部分に埋設されている場合、このような空気溜まり対策、保護強化対応は特に有効である。
【0087】
なお、本発明のタイヤは、乗用車、ライトトラック、トラック、バス等の各種タイヤとして採用することができるが、特に乗用車用のタイヤとして好適である。
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1…タイヤ
11…ビード
12…トレッド
13…サイドウォール
21…ビードコア
22…ビードフィラー
23…カーカスプライ
24…プライ本体
25…プライ折り返し部
26…スチールベルト
27…キャッププライ
28…トレッドゴム
29…インナーライナー
30…サイドウォールゴム
31…チェーハー
32…リムストリップゴム
40…通常時用RFIDタグ
41…RFIDチップ
42…アンテナ
43…保護部材
431、432…ゴムシート
46…ゴム
50…トレーサビリティ用RFIDタグ
60…リム