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7200164シャフト炉の監視方法、シャフト炉の監視装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】シャフト炉の監視方法、シャフト炉の監視装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F27B 1/28 20060101AFI20221226BHJP
   B22D 45/00 20060101ALI20221226BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20221226BHJP
   F27D 3/00 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
F27B1/28
B22D45/00 B
F27D21/00 N
F27D21/00 Z
F27D3/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020061076
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021162169
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】500483219
【氏名又は名称】パンパシフィック・カッパー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110722
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100213540
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵庭
(72)【発明者】
【氏名】今村 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】原 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】土屋 岳
(72)【発明者】
【氏名】阿部 由歩
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-291490(JP,A)
【文献】特開平04-017632(JP,A)
【文献】特開平04-083162(JP,A)
【文献】特開2009-019787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 1/00-1/28
F27D 3/00
F27D 21/00
C22B 1/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内の電気銅の積層レベルが所定範囲に収まるようにシャフト炉の装入口から適宜に電気銅を装入すると共に、前記炉内の温度が所定範囲に収まるようにバーナの風量を適宜に調節しながら、前記シャフト炉から出湯した溶銅を保持炉で貯留しつつ連続鋳造ラインへ安定的に供給する連続溶融ラインに適用されるシャフト炉の監視方法であって、
前記保持炉で貯留する溶銅レベルの下降速度を検知する手順と、
前記バーナの風量の総和の上昇速度を検知する手順と、
前記電気銅が前記シャフト炉へ装入される時間間隔を検知する手順と、
前記下降速度、前記上昇速度及び前記時間間隔に基づいて、前記シャフト炉内で前記電気銅の棚吊りが発生しているか否かの判定を行う手順と、
を含み、
前記判定を行う手順では、
前記棚吊りが発生していると判定するための条件に、前記下降速度が所定速度を超過するという第1条件と、前記上昇速度が所定速度を超過するという第2条件と、前記時間間隔が所定時間間隔を超過するという第3条件とを満たすことを含める
ことを特徴とするシャフト炉の監視方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシャフト炉の監視方法において、
前記判定を行う手順では、
前記棚吊りが発生していると判定するための条件に、前記シャフト炉内に設けられた複数の温度計の検出する温度が全て所定温度を上回るという第4条件を満たすことを追加する
ことを特徴とするシャフト炉の監視方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシャフト炉の監視方法において、
前記棚吊りが発生していると判定した場合に所定の警報を発する手順を更に含む
ことを特徴とするシャフト炉の監視方法。
【請求項4】
請求項1に記載のシャフト炉の監視方法に適用されるシャフト炉の監視装置であって、
前記保持炉で貯留する溶銅レベルの下降速度に係る情報を取得する手段と、
前記バーナの風量の総和の上昇速度に係る情報を取得する手段と、
前記電気銅が前記シャフト炉へ装入される時間間隔に係る情報を取得する手段と、
前記下降速度、前記上昇速度及び前記時間間隔に基づいて、前記シャフト炉内で前記電気銅の棚吊りが発生しているか否かの判定を行う手段と、
を備え、
前記判定を行う手段は、
前記棚吊りが発生していると判定するための条件に、前記下降速度が所定速度を超過するという第1条件と、前記上昇速度が所定速度を超過するという第2条件と、前記時間間隔が所定時間間隔を超過するという第3条件とを満たすことを含める
ことを特徴とするシャフト炉の監視装置。
【請求項5】
請求項4に記載のシャフト炉の監視装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、
前記保持炉で貯留する溶銅レベルの下降速度に係る情報を取得する手順と、
前記バーナの風量の総和の上昇速度に係る情報を取得する手順と、
前記電気銅が前記シャフト炉へ装入される時間間隔に係る情報を取得する手順と、
前記下降速度、前記上昇速度及び前記時間間隔に基づいて、前記シャフト炉内で前記電気銅の棚吊りが発生しているか否かの判定を行う手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記判定を行う手順では、
前記棚吊りが発生していると判定するための条件に、前記下降速度が所定速度を超過するという第1条件と、前記上昇速度が所定速度を超過するという第2条件と、前記時間間隔が所定時間間隔を超過するという第3条件とを満たすことを含める
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気銅の連続溶融ラインに配置されたシャフト炉の操業状態を監視するシャフト炉の監視方法、シャフト炉の監視装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
銅の連続溶融・連続鋳造ライン等に用いられるシャフト炉は、その炉体が筒状をしていることから燃焼効率が良いというメリットがある(特許文献1,2,3等を参照)。通常、台車やコンベアで搬送されてくる電気銅は、シャフト炉の所定高さに位置する装入口から逐次に装入され、シャフト炉の炉底寄りに設けられた複数系統のバーナによって溶融される。溶融された銅(溶銅)は、シャフト炉の底部に到達すると、炉壁に設けられた横穴(出湯口)から炉外へ出湯し、保持炉の炉壁に設けられた流入口へ流入する。そして、保持炉の反対側の炉壁に設けられた出湯口からオーバーフローした溶銅がタンディッシュを介して鋳型へ注入される。この保持炉には、シャフト炉から溶銅が出湯される速度とタンディッシュへ溶銅が注入される速度との差を吸収する機能(バッファ機能)がある。
【0003】
ここで、特許文献1には、保持炉内の溶銅量及び溶銅温度をシャフト炉及び保持炉のバーナ制御へフィードバックする溶銅の製造方法が開示されており、特許文献2には、燃焼状態の映像信号をパターン認識し、これをバーナの燃焼圧制御装置へフィードバックする自動制御溶解炉が開示されている。また、特許文献3には、シャフト炉内に異なる種類の銅又は銅合金材料を層状に装入積載して炉下部で連続的に漸次溶解し、その溶湯を出湯口から取り出して種類ごとの保持炉へ分配する銅合金の溶解方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平3-264626号公報
【文献】特開平1-234530号公報
【文献】特許昭61-246139
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、銅の連続溶融・連続鋳造ラインの操業を継続すると、シャフト炉で発生するスラグ量が次第に多くなり、レンガの流出も目立つようになる。その原因としては、シャフト炉内に装入された電気銅がスムーズに炉底に向かって落下できずに途中で停滞する「棚吊り」の発生が考えられる。この棚吊りが発生すると、バーナの位置にまで原料が落下していない状態で燃焼が行われるので、いわゆる空焚きの状態となってシャフト炉の炉壁(レンガ)が損傷し、剥離したレンガが溶湯に混入してスラグの発生量も増加するからである。
【0006】
従来は、例えばシャフト炉から出湯される溶銅の量が減少した場合に、棚吊りが発生している可能性を想定し、バーナの風量を増やして棚吊りが解消されるまで保持炉内溶銅量の減少を抑制するという対処をしていた。しかしながら、シャフト炉から出湯される溶銅の量は、棚吊り以外の要因でも変化し得るので、実際には棚吊りが発生しているにもかかわらず風量を増やすのが遅れてしまい溶銅の供給量低下への対応が遅れるという事態も生じていたと考えられる。
【0007】
そこで、本発明は上記の課題に鑑み、連続溶融ラインに配置されたシャフト炉に棚吊りが発したか否かを高い精度で検出することが可能なシャフト炉の監視方法、シャフト炉の監視装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため請求項1に記載の本発明は、炉内の電気銅の積層レベルが所定範囲に収まるようにシャフト炉の装入口から適宜に電気銅を装入すると共に、前記炉内の温度が所定範囲に収まるようにバーナの風量を適宜に調節しながら、前記シャフト炉から出湯した溶銅を保持炉で貯留しつつ連続鋳造ラインへ安定的に供給する連続溶融ラインに適用されるシャフト炉の監視方法であって、前記保持炉が貯留する溶銅レベルの下降速度を検知する手順と、前記バーナの風量の総和の上昇速度を検知する手順と、前記電気銅が前記シャフト炉へ装入される時間間隔を検知する手順と、前記下降速度、前記上昇速度及び前記時間間隔に基づいて、前記シャフト炉内で前記電気銅の棚吊りが発生しているか否かの判定を行う手順とを含み、前記判定を行う手順では、前記棚吊りが発生していると判定するための条件に、前記下降速度が所定速度を超過するという第1条件と、前記上昇速度が所定速度を超過するという第2条件と、前記時間間隔が所定時間間隔を超過するという第3条件とを満たすことを含める、ことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するため請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のシャフト炉の監視方法において、前記判定を行う手順では、前記棚吊りが発生していると判定するための条件に、前記シャフト炉内に設けられた複数の温度計の検出する温度が全て所定温度を上回るという第4条件を満たすことを追加する、ことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するため請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載のシャフト炉の監視方法において、前記棚吊りが発生していると判定した場合に所定の警報を発する手順を更に含むことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するため請求項4に記載の本発明は、請求項1に記載のシャフト炉の監視方法に適用されるシャフト炉の監視装置であって、前記保持炉で貯留する溶銅レベルの下降速度に係る情報を取得する手段と、前記バーナの風量の総和の上昇速度に係る情報を取得する手段と、前記電気銅が前記シャフト炉へ装入される時間間隔に係る情報を取得する手段と、前記下降速度、前記上昇速度及び前記時間間隔に基づいて、前記シャフト炉内で前記電気銅の棚吊りが発生しているか否かの判定を行う手段とを備え、前記判定を行う手段は、前記棚吊りが発生していると判定するための条件に、前記下降速度が所定速度を超過するという第1条件と、前記上昇速度が所定速度を超過するという第2条件と、前記時間間隔が所定時間間隔を超過するという第3条件とを満たすことを含める、ことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するため請求項5に記載の本発明は、請求項4に記載のシャフト炉の監視装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記保持炉で貯留する溶銅レベルの下降速度に係る情報を取得する手順と、前記バーナの風量の総和の上昇速度に係る情報を取得する手順と、前記電気銅が前記シャフト炉へ装入される時間間隔に係る情報を取得する手順と、前記下降速度、前記上昇速度及び前記時間間隔に基づいて、前記シャフト炉内で前記電気銅の棚吊りが発生しているか否かの判定を行う手順とをコンピュータに実行させ、前記判定を行う手順では、前記棚吊りが発生していると判定するための条件に、前記下降速度が所定速度を超過するという第1条件と、前記上昇速度が所定速度を超過するという第2条件と、前記時間間隔が所定時間間隔を超過するという第3条件とを満たすことを含める、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るシャフト炉の監視方法、シャフト炉の監視装置又はプログラムによれば、(1)保持炉が貯留する溶銅レベルの下降速度と、(2)バーナの風量の総和の上昇速度と、(2)電気銅が前記シャフト炉へ装入される時間間隔との3つのパラメータに基づいて電気銅の棚吊りの発生の有無を判定するので、このうち1又は2つのみに基づく場合と比較して高精度である。具体的には、棚吊り発生後にバーナの風量を抑えて棚吊りの解消を待つという適切な対応をすることが可能であり、また、棚吊りが発生していないにもかかわらず誤ってバーナの風量を抑えてしまい連続溶融の効率が著しく低下するという不都合を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に係るシャフト炉の監視方法、シャフト炉の監視装置及びプログラムが適用される連続溶融ラインの一実施形態を示す概略図である。
図2図2は、棚吊りが発生していないときにおけるシャフト炉の状態を説明する説明図である。
図3図3は、棚吊りが発生しているときにおけるシャフト炉の状態を説明する説明図である。
図4図4(A)は、保持炉が保持している溶銅の量の時間変化を示すグラフ、図4(B)はバーナの風量の総和の時間変化を示すグラフ、図4(C)はシャフト炉に対する電気銅の装入量の時間変化を示すグラフである。
図5図5は、棚吊りの発生の有無を判定する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るシャフト炉の監視方法、シャフト炉の監視装置及びプログラムが適用される連続溶融ラインの一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
1.連続溶融ラインの概要
図1は、本発明に係るシャフト炉の監視方法、シャフト炉の監視装置及びプログラムが適用される連続溶融ラインの一実施形態を示す概略図、図2は、棚吊りが発生していないときにおけるシャフト炉の状態を説明する説明図、図3は、棚吊りが発生しているときにおけるシャフト炉の状態を説明する説明図である。図1図3に示すとおり、連続溶融ライン1は、連続鋳造ライン2の上流側に位置しており、搬送部10と、シャフト炉11と、ラウンダ18と、保持炉12と、キャストラウンダ19と、監視装置17とを備える。このうち監視装置17の配置先は管理室などである。
【0017】
1-1.搬送部
搬送部10は、電気銅200を搬送し、シャフト炉11の所定の高さに位置する装入口11Aからシャフト炉11の内部へ装入するコンベア又は台車と、シャフト炉11の内部に配置された例えば光学式のレベルセンサ14とを有している。このレベルセンサ14は、シャフト炉11の内部に積層された電気銅200の最も上部の高さ(積層レベル)が所定の下限レベルを下回るか否かを示す信号を不図示の検出器へ出力する。この検出器は、電気銅200の積層レベルが下限レベルを下回る場合に電気銅200が装入可能である旨を光や音などで運転員100Aへ通知すると共に、積層レベルが下限レベルを上回る場合に電気銅200が装入不可能である旨を運転員100Aへ通知する。運転員100Aは、電気銅200を装入可能である場合にコンベア又は台車を操作して電気銅200を装入口11Aから装入し、それ以外の場合には装入口11Aに対する電気銅200の装入を行わずに待機する。但し、運転員100Aは、装入口11Aから一度に装入される電気銅200の枚数を適切な枚数に適宜に選定することにより、シャフト炉11内の積層レベルが装入口11Aの高さを超えないようにしている。つまり、運転員100Aは、シャフト炉11内の電気銅200の積層レベルが下限レベルから装入口11Aの高さに至る適正範囲(所定範囲)に収まるよう適宜に電気銅200を装入する。
【0018】
1-2.シャフト炉
シャフト炉11は、その装入口11Aから装入された電気銅200を1200℃程度の溶融温度で溶融し、溶融した溶銅を出湯する。例えば、シャフト炉11のサイズは、例えば高さ約10m、内径約2mで、シャフト炉11の容量は約50tであり、1時間当たり約20トンの溶銅を出湯する。図2又は図3に示すとおり、シャフト炉11の炉底寄りには、複数のバーナ15a,15a,…が複数段(例えば、下段から順番にA段、B段、C段の3段とする。)に亘って設けられている。
A段、B段、C段には、それぞれ複数のバーナ15aが適当な配置間隔で配置されている。これら各段の複数のバーナ15a,15a,…が所定の燃料(LPG)にエア(酸素)を混合して燃焼させると、バーナ15a,15a,…から炎が噴射されるのでシャフト炉11の炉内が加熱され、炉内に積層されている電気銅200の温度が上昇して溶融する。そして、溶融した銅(溶銅300)は、重力を受けてシャフト炉11の底部に到達すると、シャフト炉11の炉底近傍に設けられた横穴(出湯口11B)から炉外へ出湯し、ラウンダ18を介して保持炉12へ向かう。
【0019】
ここで、シャフト炉11の内部においてバーナ15aが設けられたエリアには、複数の温度計が適当な位置関係で設けられており、複数のバーナ15a,15a,…の噴射口近傍の温度をそれぞれ計測することができるようになっている。また、複数の温度計の出力は不図示の検出器へ入力され、温度計が検出した温度は検出器によって可視化される。
【0020】
そして、運転員100B又は不図示の制御装置は、複数の温度計が個別に検出する温度を参照し、それらの温度がそれぞれ所定の上限温度(1200℃)を超えないように、複数のバーナ15a,15a,…に供給されるエアの風量を個別に調節する。このように、本実施形態の連続溶融ライン1では、複数の温度計が個別に検出する温度に応じて、シャフト炉11の炉内各部の温度が所定範囲(1200℃以下)に収まるように、シャフト炉11の炉底寄りに位置する複数のバーナ15a,15a,…の風量が適宜に調節される。なお、個々のバーナ15aのエア風量の調節は、バーナ15aに接続されたエア配管内のバルブ(不図示)などを介して行われ、エア圧力を確保するためにブロワ15も併せて調節される。
【0021】
1-3.保持炉
保持炉12は、シャフト炉11の炉底近傍の出湯口1Bから出湯した溶銅300を貯留し、シャフト炉11から溶銅300が出湯される速度と、溶銅300がタンディッシュ13に注入される速度との差を吸収する。保持炉12の容量は約30t、保持炉12のサイズは、例えば、長さ約3m、内径約2mである。具体的には、保持炉12の一方の炉壁の所定高さには流入口12Aが設けられ、他方の炉壁には出湯口12Bが設けられており、流入口12Aの高さよりも出湯口12Bの高さの方が低く設定されている。そして、保持炉12に貯留される溶銅300の湯面レベルが所定レベル(出湯口12Bの高さ)に達している場合には出湯口12Bから溶銅300が安定した速度(ほぼ一定の速度)で流出(オーバーフロー)し、キャストラウンダ19を介してタンディッシュ13へ流入する。一方、溶銅300の湯面レベルが所定レベル(出湯口12Bの高さ)に達していない場合には出湯口12Bから溶銅300が流出(オーバーフロー)しない。
【0022】
また、保持炉12には、保持炉12に貯留された溶銅300の湯面レベルを算出する炉体傾転角度検出器による湯面レベル計16設けられており、湯面レベル計16の出力は不図示の検出器へ与えられる。この検出器は、湯面レベル計16が検出する湯面レベルが所定の上限レベルを超えた場合に、その旨を光や音などで運転員100Cへ通知する。運転員100Cは、当該通知によって湯面レベルが所定の上限レベルを超えたことを認識すると、シャフト炉11の燃焼エア風量を抑制することにより、シャフト炉11から保持炉12への溶銅300の流入を一時的に抑制する。
【0023】
1-4.タンディッシュ
そして、保持炉12の出湯口12Bから流出(オーバーフロー)した溶銅300は、キャストラウンダ19を介して連続鋳造ライン2のタンディッシュ13へ流入する。タンディッシュ13へ流入した溶銅300は、タンディッシュ13の底部に設けられた複数の出湯口から落下して所定速度で鋳型へ注入される。
したがって、シャフト炉11から出湯した溶銅300は、保持炉12へ貯留されつつ連続鋳造ライン2へ安定的に供給される。
なお、以上の連続溶融ライン1においては、保持炉12にもバーナ(不図示)が設けられており、その炉内温度は貯留中の溶銅300の温度が低下しないよう適切に制御されるものとする。また、ラウンダ18,キャストラウンダ19などの温度も溶銅300の温度が低下しないよう適切に制御されるものとする。
【0024】
1-5.監視装置の構成
監視装置17は、プログラムやデータを記憶する記憶部、プログラムを実行するプロセッサ、マウスやキーボードやボタン等の入力器、モニタやスピーカなどの出力器を備えたコンピュータである。この監視装置17は、連続溶融ライン1の操業中に当該プログラムを実行し、保持炉12が貯留する溶銅レベル(湯面レベル)に係るデータと、連続溶融ライン1の操業中に複数のバーナ15aへ供給される風量に係るデータと、搬送部10がシャフト炉11へ電気銅200を装入したタイミングに係るデータとを収集(取得)して記憶部へ蓄積する。例えば、監視装置17は、溶銅レベル(湯面レベル)に係るデータを湯面レベル計16から所定のサンプリング間隔で収集し、風量に係るデータをブロワ15から所定のサンプリング間隔で収集し、装入タイミングに係るデータをレベルセンサ14から所定のサンプリング間隔で収集する。なお、これらデータのサンプリング間隔は、例えば、1秒~1時間の所定間隔に設定される。
【0025】
1-6.監視装置の動作
図4(A)は保持炉が保持している溶銅の量の時間変化を示すグラフ、図4(B)はバーナの風量の総和の時間変化を示すグラフ、図4(C)はシャフト炉に対する電気銅の装入量の時間変化を示すグラフである。
図4に点線枠で囲った時期には、保持炉12に貯留されている溶銅の量が急激に減少し(図4(A)の実線矢印)、バーナの風量の総和が急激に上昇し(図4(B)の実線矢印)、且つ、シャフト炉11に電気銅200が装入される時間間隔が拡大している(図4(C)の実線矢印)ことから、この時期に棚吊り(図3)が発生していたものと判断される。
【0026】
一方、保持炉12に貯留されている溶銅の量が急激に減少した場合であっても、バーナの風量の総和が安定している場合や、電気銅200の装入時間間隔が安定しているような場合には、棚吊りが発生していないと判断する。もちろん、保持炉12に貯留されている溶銅の量が安定している場合にも、棚吊りは発生していない。
【0027】
図5は、棚吊りの発生の有無を判定する処理のフローチャートである。図5に示すとおり、本実施形態の監視装置17は、記憶部に蓄積されたデータに基づいて、保持炉12が貯留する溶銅レベル(湯面レベル)の下降速度を算出(検知)する手順(S1)と、複数のバーナ15aの風量総和の上昇速度を算出(検知)する手順(S2)と、シャフト炉11へ電気銅200が装入される時間間隔(すなわち装入不可能期間の長さ)を算出(検知)する手順(S3)とを実行する。例えば、監視装置17は、溶銅レベルの下降速度として30分前から現時点までの下降速度(mm/分)を算出し、風量総和の上昇速度として30分前から現時点までの上昇速度(Nm3/h/分)を算出し、電気銅200装入の時間間隔として30分前から現時点までの平均的な時間間隔(分)を算出する。なお、この算出に用いるデータの範囲が長すぎると、棚吊りを見過ごす可能性が高まり、その反対にデータの範囲が短すぎると、ノイズの影響で誤検出する可能性が高まるので、データの範囲は適切に設定されることが望ましい。
【0028】
続いて、監視装置17は、保持炉12における溶銅レベルの下降速度、バーナ15aの風量総和の上昇速度、及び電気銅200の装入の時間間隔に基づいて、シャフト炉11内で電気銅200の棚吊りが発生しているか否かの判定を行う手順を実行する。例えば、監視装置17は、保持炉12が貯留する溶銅レベルの下降速度が所定速度(0.5t/分)を超過するという第1条件(S11Y)と、バーナ15aの風量総和の上昇速度が所定速度(100Nm3/h/分)を超過するという第2条件(S12Y)と、シャフト炉11へ電気銅200が装入される時間間隔が所定時間間隔(20分)を超過するという第3条件(S13Y)との全てが満たされた場合に棚吊り(図3)が発生していると判定して出力部より所定の警報を発報する(S15)。一方、第1条件(S11Y)、第2条件(S12Y)及び第3条件(S13Y)の少なくとも1つが満たされない場合には、棚吊りが発生していない(図2)と判定して警報を発報しない(S14)。更に、監視装置17は、以上のステップS1~S15の処理を十分に短い時間間隔で(例えば1分ごとに)繰り返し実行する。
【0029】
なお、出力器が発報する所定の警報は、音、振動、光、画像、又はこれらの組み合わせによって構成される。この警報に促された運転員100A,100Bは、例えば、シャフト炉11に対する電気銅200の装入を控えると共に、全てのバーナ15aの風量を棚吊り解消用の所定値に抑え、この状態を一定以上の時間に亘って継続することにより、棚吊りの解消を図る。
【0030】
2.実施形態の効果
以上説明したとおり、本実施形態に係るシャフト炉の監視方法、シャフト炉の監視装置又はプログラムによれば、(1)保持炉12が貯留する溶銅レベルの下降速度と、(2)バーナ15aの風量の総和の上昇速度と、(2)電気銅200がシャフト炉11へ装入される時間間隔との3つのパラメータ全てに基づいて電気銅200の棚吊りの発生の有無を判定するので、このうち1又は2つのみに基づく場合と比較して高精度である。具体的には、棚吊り発生直後に運転員100Bがバーナ15aの風量を抑えて棚吊りの解消を待つという適切な対応をすることが可能であり、また、棚吊りが発生していないにもかかわらず運転員100Bが誤ってバーナ15aの風量を抑えてしまい連続溶融の効率が著しく低下するという不都合を確実に回避することができる。
【0031】
3.変形例
3-1.フローチャートについて
なお、図5のフローチャートのステップの順序は機能が損なわれない範囲内で入れ替えが可能である。例えば、ステップS1~S3の順序は入れ替え可能であり、ステップS11~S13の順序は入れ替えが可能である。
【0032】
3-2.手順の自動化について
また、上述した実施形態においては、運転員100A,100B,100Cが手動で行った手順の一部又は全部を自動化してもよい。例えば、シャフト炉11に対する電気銅200の装入、バーナ15aの風量調節、保持炉12の傾転の少なくとも1つの手順を自動化してもよい。また、監視装置17が自動で行った手順の少なくとも一部を運転員100A,100B,100Cが手動で行ってもよい。例えば、監視装置17が自動で収集したデータの少なくとも一部は運転員100A,100B,100Cが手動で入力してもよい。
【0033】
3-3.温度パラメータの併用について
上述した実施形態では、棚吊りの発生の有無を検出するために、溶銅レベル(1)、風量総和(2)、装入の時間間隔(3)という3つのパラメータを用いたが、複数の温度計が検出する温度(4)というパラメータを併用してもよい。例えば、監視装置17は、上述した第1条件、第2条件、第3条件の全てが満たされた場合(図5のS11,S12,S13の全てYES)であっても、複数の温度計の検出する温度が全て所定温度(1000℃)を上回るという第4条件が満たされない場合には棚吊りが発生していないと判定してもよい。つまり、監視装置17は、第1条件、第2条件、第3条件、第4条件の全てが満たされた場合に棚吊りが発生したと判定し、第1条件、第2条件、第3条件、第4条件のうち少なくとも1つの条件が満たされない場合に棚吊りが発生していないと判定してもよい。
【0034】
3-4.その他
本発明は各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、上記の実施形態では、溶銅レベル(1)、風量総和(2)、装入の時間間隔(3)という3つのパラメータを用いたが、シャフト炉内の温度(4)に係るパラメータのみを使用して(簡易的に)棚吊り検知を行うことも可能である。例えば、第4条件が満たされた場合に棚吊りが発生していると判定し、第4条件が満たされない場合に棚吊りが発生していないと判定してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 連続溶融ライン
10 搬送部
11 シャフト炉
11A 装入口
11B 出湯口
12 保持炉
12A 流入口
12B 出湯口
14 レベルセンサ
15 ブロワ
15a バーナ
16 湯面レベル計
17 監視装置
18 ラウンダ
19 キャストラウンダ
100A 運転員
100B 運転員
100C 運転員
200 電気銅
300 溶銅

図1
図2
図3
図4
図5