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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】計測システムおよび計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/89 20200101AFI20221226BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
G01S17/89
B64C39/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020175564
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2022066942
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 準
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0193214(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0218232(US,A1)
【文献】特許第6591131(JP,B1)
【文献】米国特許第03992707(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102004050682(DE,A1)
【文献】国際公開第2019/013151(WO,A1)
【文献】特開2008-203123(JP,A)
【文献】MORSDORF, Felix 外5名,“UAV-based LiDAR acquisition for the derivation of high-resolution forest and ground information”,THE LEADING EDGE,2017年07月01日,Volume 36, Number 7,Pages 566-570,<URL: https://doi.org/10.1190/tle36070566.1 >
【文献】“RIEGL VUX(R)-1UAV”,INTERNETARCHIVE [online],2016年12月05日,6 Pages,<URL: https://web.archive.org/web/20161205113028/http://www.riegl-japan.co.jp/product/pdf_1/DataSheet_VUX-1UAV_2016-06-01.pdf >
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - G01S 7/51
G01S 17/00 - G01S 17/95
G01C 1/00 - G01C 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライダー(LiDAR)センサが設けられた無人航空機を飛行させて計測対象エリアの計測を行う計測システムであって、
無人航空機と、
前記無人航空機に設けられたライダーセンサと、
前記無人航空機の飛行を制御する制御装置と、
を備え、
前記ライダーセンサは、回転軸が一軸のライダーセンサであり、
鉛直方向から見た平面視において、前記無人航空機の機体進行方向を第1方向とし、前記第1方向に垂直な方向を第2方向としたとき、
前記ライダーセンサを用いた前記計測対象エリアの計測中、前記無人航空機は、前記ライダーセンサの前記回転軸が前記第1方向よりも前記第2方向に近い方向を向いた状態で飛行し、
前記計測対象エリアの計測中、前記ライダーセンサの前記回転軸は、前記第2方向を向いている、計測システム。
【請求項2】
前記計測対象エリアは、地表面から複数の樹木が立ち上がる森林を含む、請求項に記載の計測システム。
【請求項3】
前記地表面は斜面を含み、
前記計測対象エリアの計測中、前記制御装置は、前記無人航空機を前記斜面に沿って上昇または下降させる、請求項に記載の計測システム。
【請求項4】
前記計測対象エリアの計測中、前記制御装置は、複数の等高線を横切る第1経路セグメントに沿って前記無人航空機を飛行させる、請求項に記載の計測システム。
【請求項5】
前記計測対象エリアの計測中、前記制御装置は、前記ライダーセンサの前記回転軸が等高線に沿った方向を向いた状態で前記無人航空機を飛行させる、請求項またはに記載の計測システム。
【請求項6】
前記計測対象エリアの計測を行うときに前記無人航空機を飛行させる飛行経路は、前記平面視において、前記第1経路セグメントと交差する第2経路セグメントを含む、請求項に記載の計測システム。
【請求項7】
前記計測対象エリアの計測を行うときに前記無人航空機を飛行させる飛行経路は、格子状の飛行経路を含む、請求項1からのいずれかに記載の計測システム。
【請求項8】
ライダー(LiDAR)センサが設けられた無人航空機を飛行させて計測対象エリアの計測を行う計測システムであって、
無人航空機と、
前記無人航空機に設けられたライダーセンサと、
前記無人航空機の飛行を制御する制御装置と、
を備え、
鉛直方向から見た平面視において、前記無人航空機の機体進行方向を第1方向とし、前記第1方向に垂直な方向を第2方向としたとき、
前記ライダーセンサを用いた前記計測対象エリアの計測中、前記無人航空機は、前記ライダーセンサの回転軸が前記第1方向よりも前記第2方向に近い方向を向いた状態で飛行し、
前記ライダーセンサに加えて第2ライダーセンサが前記無人航空機に設けられており、
前記平面視において、前記第2ライダーセンサの回転軸は、前記ライダーセンサの前記回転軸とは異なる方向を向いている、計測システム。
【請求項9】
前記計測対象エリアの計測中、前記平面視において、
前記第2ライダーセンサの前記回転軸は、前記第1方向よりも前記第2方向に近い方向を向いており、
前記機体進行方向を前方向としたとき、前記ライダーセンサの前記回転軸は左斜め前方から右斜め後方に臨んでおり、前記第2ライダーセンサの前記回転軸は右斜め前方から左斜め後方に臨んでいる、請求項に記載の計測システム。
【請求項10】
前記計測対象エリアの計測中、前記平面視において、前記第2ライダーセンサの前記回転軸は、前記第2方向よりも前記第1方向に近い方向を向いている、請求項に記載の計測システム。
【請求項11】
前記無人航空機は、内燃機関を動力源とする無人ヘリコプターまたは無人マルチコプターである、請求項1から10のいずれかに記載の計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機を利用して計測対象エリアの計測を行う技術等に関する。
【背景技術】
【0002】
森林資源の管理および利用を行うために森林計測が行われている。森林計測は、様々な方法により行うことができる。例えば特許文献1は、上空からカメラで森林を撮影し、得られた画像から画像処理によって樹冠円を抽出する方法を開示する。特許文献2は、上空から波長の異なるレーダ波をそれぞれ森林に照射して、樹木の最上部からの反射波および地面からの反射波から算出されるそれぞれの高さの差分から樹木の高さを求める方法を開示する。特許文献3は、航空機にレーザ測距装置を搭載し、レーザ測距装置を用いて、樹木等を含めた地上の三次元データを取得する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-66050号公報
【文献】特開平9-184880号公報
【文献】特開2016-70708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上空からレーザ測距装置を用いて森林計測を行うと、森林上部表面(樹冠上面)のデータである点群データは得られる。しかしながら、樹木の葉等によってレーザ光が遮られるため、幹のデータを取得することは困難である。そのため計測結果から、最も太い幹である主幹の本数を推定する必要があった。
【0005】
特許文献3は、人間が森林内にレーザ測距装置等の装置を持ち込み、三次元の点群データをさらに取得し、上空からの計測によって得られた点群データと、地上での計測によって得られた点群データとを融合させることに言及する。しかしながら、2種類の点群データを取得することは非常に手間がかかる。
【0006】
無人航空機を用いて森林等の計測対象エリアを計測することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある実施形態に係る計測システムは、ライダー(LiDAR)センサが設けられた無人航空機を飛行させて計測対象エリアの計測を行う計測システムであって、無人航空機と、前記無人航空機に設けられたライダーセンサと、前記無人航空機の飛行を制御する制御装置とを備え、鉛直方向から見た平面視において、前記無人航空機の機体進行方向を第1方向とし、前記第1方向に垂直な方向を第2方向としたとき、前記ライダーセンサを用いた前記計測対象エリアの計測中、前記無人航空機は、前記ライダーセンサの回転軸が前記第1方向よりも前記第2方向に近い方向を向いた状態で飛行する。
【0008】
ライダーセンサを用いた計測対象エリアの計測中、ライダーセンサの回転軸が第1方向よりも第2方向に近い方向を向いた状態で無人航空機は飛行する。ライダーセンサは回転していることから、無人航空機が進行する過程で、機体進行方向に沿ったエリアに、レーザパルスを密に照射することができる。これにより、例えば、ライダーセンサから複数のレーザパルスが同時に出射される形態においては、機体進行方向に沿ったエリア内の同一の物体に、様々な角度からレーザパルスを密に照射できる。その結果、機体進行方向に沿ったエリアの詳細な3次元点群データを取得できる。さらに、ライダーセンサを回転させることにより、例えば、森林を構成する樹木に対し、様々な角度からレーザパルスを照射することができる。
【0009】
飛行経路に含まれる一つの経路セグメントの飛行において、機体進行方向に沿ったエリアに繰り返しレーザパルスを照射することができる。これにより、その一つの経路セグメントの飛行において高密度の3次元点群データを取得することができる。
【0010】
一つの経路セグメントの飛行においてライダーセンサでスキャンしたエリアを、別の経路セグメントの飛行において再度詳細にスキャンしなくても、そのエリアの高密度の3次元点群データを取得することができる。
【0011】
計測対象エリア内の同一の物体に対して、連続的にレーザパルスを照射することができる。これにより、例えば樹木の上空を飛行しながら計測するとき、樹木に接近しながら計測して得られる点群データと、その樹木から遠ざかりながら計測して得られる点群データとの間の、地理座標系上の位置ずれを小さくすることができる。
【0012】
ある実施形態において、前記ライダーセンサは、前記回転軸が前記無人航空機の機体の前後方向よりも左右方向に近い方向に向けられていてもよい。
【0013】
機体の前後方向が機体進行方向を向くという無人航空機の通常の飛行姿勢において、ライダーセンサの回転軸を第1方向よりも第2方向に近い方向に向かせることができる。
【0014】
ある実施形態において、前記ライダーセンサを用いた前記計測対象エリアの計測中、前記制御装置は、前記ライダーセンサの前記回転軸が前記第1方向よりも前記第2方向に近い方向を向くように、前記無人航空機を飛行させてもよい。
【0015】
ライダーセンサの回転軸が無人航空機の機体の前後方向よりも左右方向に近い方向を向いていない場合においても、その回転軸を第2方向に近い方向に向けた状態で無人航空機を飛行させることができる。
【0016】
ある実施形態において、前記計測対象エリアの計測中、前記ライダーセンサの前記回転軸は、前記第2方向を向いていてもよい。
【0017】
無人航空機が進行する過程で、機体進行方向に沿ったエリアに対してレーザパルスをより密に照射できる。これにより、機体進行方向に沿ったエリアのより詳細な3次元点群データを取得することができる。さらに、ライダーセンサを回転させることにより、例えば、森林を構成する樹木に対し、様々な角度からレーザパルスを照射することができる。
【0018】
ある実施形態において、前記計測対象エリアの計測中、前記平面視において、前記ライダーセンサの前記回転軸は、前記第2方向に対して傾いていてもよい。
【0019】
ライダーセンサが地上に形成するレーザパルスの照射位置を第2方向に拡げて分布させることができる。スキャンラインが1本のライダーセンサを用いる場合、回転軸が第2方向に一致していると、照射位置は第1方向に平行な直線上に位置する。レーザパルスの照射位置を第2方向に拡げることにより、照射漏れ領域を低減できる。
【0020】
ある実施形態において、前記ライダーセンサは、前記回転軸に対して所定の角度を有する方向にレーザパルスを出射し、前記レーザパルスを出射する方向を前記回転軸の周りに回転させてもよい。
【0021】
スキャンラインが1本のライダーセンサを用いる場合、地上に形成されるレーザパルスの照射位置が1本のライン上に並ぶが、第2方向に幅を有するエリアをスキャンすることができる。
【0022】
ある実施形態において、前記計測対象エリアは、地表面から複数の樹木が立ち上がる森林を含んでもよい。
【0023】
森林に様々な角度からレーザパルスを照射することができ、レーザパルスは樹木の樹冠だけでなく、樹木の幹、下層植生および地表面等にも到達し、反射される。これにより、樹冠点群だけでなく幹点群、下層植生点群および地表面点群を含む3次元点群データを得ることができる。
【0024】
ある実施形態において、前記地表面は斜面を含み、前記計測対象エリアの計測中、前記制御装置は、前記無人航空機を前記斜面に沿って上昇または下降させてもよい。
【0025】
斜面に広がる森林に対して、斜め上方向からだけではなく、横方向からレーザパルスを照射したり、斜め下方向からレーザパルスを照射したりすることができる。レーザパルスは樹木の樹冠だけでなく、樹木の幹、下層植生および地表面等にも到達し、反射される。これにより、樹冠点群だけでなく幹点群、下層植生点群および地表面点群を含む3次元点群データを得ることができる。
【0026】
ある実施形態において、前記計測対象エリアの計測中、前記制御装置は、複数の等高線を横切る第1経路セグメントに沿って前記無人航空機を飛行させてもよい。
【0027】
複数の等高線を横切るように斜面に沿って無人航空機を飛行させることより、斜面に広がる森林に対して、斜め上方向からだけではなく、横方向からレーザパルスを照射したり、斜め下方向からレーザパルスを照射したりすることができる。
【0028】
ある実施形態において、前記計測対象エリアの計測中、前記制御装置は、前記ライダーセンサの前記回転軸が等高線に沿った方向を向いた状態で前記無人航空機を飛行させてもよい。
【0029】
ライダーセンサの回転軸が等高線に沿った方向を向いた状態で斜面に沿って無人航空機が飛行することより、斜面に広がる森林に対して、斜め上方向からだけではなく、横方向からレーザパルスを照射したり、斜め下方向からレーザパルスを照射したりすることができる。
【0030】
ある実施形態において、前記計測対象エリアの計測を行うときに前記無人航空機を飛行させる飛行経路は、前記平面視において、前記第1経路セグメントと交差する第2経路セグメントを含んでもよい。
【0031】
互いに交差する複数の経路セグメントを飛行することにより、計測対象エリアに複数の方位からレーザパルスを照射することができ、計測対象エリアの詳細な3次元点群データを取得することができる。
【0032】
ある実施形態において、前記計測対象エリアの計測を行うときに前記無人航空機を飛行させる飛行経路は、格子状の飛行経路を含んでもよい。
【0033】
格子状の飛行経路を飛行することにより、計測対象エリアに複数の方位からレーザパルスを照射することができ、計測対象エリアの詳細な3次元点群データを取得することができる。
【0034】
ある実施形態において、前記ライダーセンサに加えて第2ライダーセンサが前記無人航空機に設けられており、前記平面視において、前記第2ライダーセンサの回転軸は、前記ライダーセンサの前記回転軸とは異なる方向を向いていてもよい。
【0035】
回転軸が互いに異なる方向を向いている二つのライダーセンサからレーザパルスを出射させることにより、より広い範囲に多くのレーザパルスを照射することができる。
【0036】
ある実施形態において、前記計測対象エリアの計測中、前記平面視において、前記第2ライダーセンサの前記回転軸は、前記第1方向よりも前記第2方向に近い方向を向いており、前記機体進行方向を前方向としたとき、前記ライダーセンサの前記回転軸は左斜め前方から右斜め後方に臨んでおり、前記第2ライダーセンサの前記回転軸は右斜め前方から左斜め後方に臨んでいてもよい。
【0037】
機体進行方向に沿ったエリアにより多くのレーザパルスを照射することができる。また、二つのライダーセンサが互いに異なる方向にレーザパルスを出射することにより、一方のライダーセンサから多くのレーザパルスを照射することが難しいエリアを、他方のライダーセンサで補完することができる。
【0038】
ある実施形態において、前記計測対象エリアの計測中、前記平面視において、前記第2ライダーセンサの前記回転軸は、前記第2方向よりも前記第1方向に近い方向を向いていてもよい。
【0039】
機体進行方向に対する横方向にも広い範囲にわたってレーザパルスを照射することができる。
【0040】
ある実施形態において、前記無人航空機は、内燃機関を動力源とする無人ヘリコプターまたは無人マルチコプターであってもよい。
【0041】
バッテリから供給される電力で動作する電動モータを動力源とする場合は、航続距離が短いため、計測対象エリアが狭くなってしまう。一方、内燃機関を動力源とする場合は、航続距離が長いため、十分な計測対象エリアを確保することができる。
【0042】
本発明のある実施形態に係る計測対象エリアの計測を行うは、ライダー(LiDAR)センサが設けられた無人航空機を飛行させて計測対象エリアの計測を行う方法であって、前記無人航空機の飛行経路を設定すること、設定された前記飛行経路に沿って前記無人航空機を飛行させること、鉛直方向から見た平面視において、前記無人航空機の機体進行方向を第1方向とし、前記第1方向に垂直な方向を第2方向としたとき、前記ライダーセンサの回転軸が前記第1方向よりも前記第2方向に近い方向を向いた状態で、前記計測対象エリアを前記ライダーセンサでスキャンさせることを実行する。
【0043】
ライダーセンサを用いた計測対象エリアの計測中、ライダーセンサの回転軸が第1方向よりも第2方向に近い方向を向いた状態で無人航空機は飛行する。ライダーセンサは回転していることから、無人航空機が進行する過程で、機体進行方向に沿ったエリアに、レーザパルスを密に照射することができる。これにより、例えば、ライダーセンサから複数のレーザパルスが同時に出射される形態においては、機体進行方向に沿ったエリア内の同一の物体に、様々な角度からレーザパルスを密に照射できる。その結果、機体進行方向に沿ったエリアの詳細な3次元点群データを取得できる。さらに、ライダーセンサを回転させることにより、例えば、森林を構成する樹木に対し、様々な角度からレーザパルスを照射することができる。
【0044】
飛行経路に含まれる一つの経路セグメントの飛行において、機体進行方向に沿ったエリアに繰り返しレーザパルスを照射することができる。これにより、その一つの経路セグメントの飛行において高密度の3次元点群データを取得することができる。
【0045】
一つの経路セグメントの飛行においてライダーセンサでスキャンしたエリアを、別の経路セグメントの飛行において再度詳細にスキャンしなくても、そのエリアの高密度の3次元点群データを取得することができる。
【0046】
計測対象エリア内の同一の物体に対して、連続的にレーザパルスを照射することができる。これにより、例えば樹木の上空を飛行しながら計測するとき、樹木に接近しながら計測して得られる点群データと、その樹木から遠ざかりながら計測して得られる点群データとの間の、地理座標系上の位置ずれを小さくすることができる。
【0047】
ある実施形態において、前記飛行経路は複数の経路セグメントを含み、前記方法は、前記複数の経路セグメントそれぞれを飛行中に前記ライダーセンサから出力されたセンサーデータを組み合わせて3次元点群データを生成すること、をさらに実行してもよい。
【0048】
一つの経路セグメントの飛行においてライダーセンサでスキャンしたエリアを、別の経路セグメントの飛行において再度詳細にスキャンしなくても、そのエリアの高密度の3次元点群データを取得することができる。このため、計測対象エリアの高密度の3次元点群データを取得することができる。
【0049】
ある実施形態において、前記計測対象エリアは斜面の森林を含み、前記無人航空機の飛行経路を設定するステップは、前記対象エリア内の等高線データを参照し、複数の等高線を横切る経路セグメントを含む飛行経路を設定することを含んでもよい。
【0050】
複数の等高線を横切るように斜面に沿って無人航空機を飛行させることより、斜面に広がる森林に対して、斜め上方向からだけではなく、横方向からレーザパルスを照射したり、斜め下方向からレーザパルスを照射したりすることができる。レーザパルスは樹木の樹冠だけでなく、樹木の幹、下層植生および地表面等にも到達し、反射される。これにより、樹冠点群だけでなく幹点群、下層植生点群および地表面点群を含む3次元点群データを得ることができる。
【発明の効果】
【0051】
鉛直方向から見た平面視において、無人航空機の機体進行方向を第1方向とし、第1方向に垂直な方向を第2方向としたとき、ライダーセンサを用いた計測対象エリアの計測中、ライダーセンサの回転軸が第1方向よりも第2方向に近い方向を向いた状態で無人航空機は飛行する。ライダーセンサは回転していることから、無人航空機が進行する過程で、機体進行方向に沿ったエリアに、レーザパルスを密に照射することができる。これにより、例えば、ライダーセンサから複数のレーザパルスが同時に出射される形態においては、機体進行方向に沿ったエリア内の同一の物体に、様々な角度からレーザパルスを密に照射できる。その結果、機体進行方向に沿ったエリアの詳細な3次元点群データを取得できる。さらに、ライダーセンサを回転させることにより、例えば、森林を構成する樹木に対し、様々な角度からレーザパルスを照射することができる。
【0052】
飛行経路に含まれる一つの経路セグメントの飛行において、機体進行方向に沿ったエリアに繰り返しレーザパルスを照射することができる。これにより、その一つの経路セグメントの飛行において高密度の3次元点群データを取得することができる。
【0053】
一つの経路セグメントの飛行においてライダーセンサでスキャンしたエリアを、別の経路セグメントの飛行において再度詳細にスキャンしなくても、そのエリアの高密度の3次元点群データを取得することができる。
【0054】
計測対象エリア内の同一の物体に対して、連続的にレーザパルスを照射することができる。これにより、例えば樹木の上空を飛行しながら計測するとき、樹木に接近しながら計測して得られる点群データと、その樹木から遠ざかりながら計測して得られる点群データとの間の、地理座標系上の位置ずれを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明の実施形態に係る無人ヘリコプター1が森林計測を行っている図である。
図2】本発明の実施形態に係るLiDARセンサ20が設けられた無人ヘリコプター1の外観側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る無人ヘリコプター1の正面図である。
図4】本発明の実施形態に係る飛行制御ボックス15のハードウェア構成例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係るLiDARセンサ20の回転軸21が臨む方向を説明する図である。
図6】本発明の実施形態に係るLiDARセンサ20から同時に出射されるN個のレーザパルス22を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る進行する無人ヘリコプター1から出射されるレーザパルス22を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係るLiDARセンサ20の回転軸21が臨む方向を説明する図である。
図9】本発明の実施形態に係る進行する無人ヘリコプター1から出射されるレーザパルス22を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る計測対象エリア50の計測を行う無人ヘリコプター1を、無人ヘリコプター1の左右方向から見たときの図である。
図11】LiDARセンサ20の回転軸21を機体進行方向に向けた状態で飛行し、森林計測する態様を説明する図である。
図12】本発明の実施形態に係る森林計測であって、斜面から立ち上がる樹木にレーザパルス22を照射することを説明する図である。
図13】本発明の実施形態に係る無人ヘリコプター1とタブレットコンピュータ70とを含む計測システム100を示す図である。
図14】本発明の実施形態に係る無人ヘリコプター1と基地局操縦装置80とを含む計測システム100を示す図である。
図15】本発明の実施形態に係るタブレットコンピュータ70のハードウェア構成例を示す図である。
図16】本発明の実施形態に係る飛行経路の設定処理の手順を示すフローチャートである。
図17】本発明の実施形態に係る飛行経路が設定された無人ヘリコプター1の飛行動作の手順を示すフローチャートである。
図18】本発明の実施形態に係る飛行経路60の一例を示す図である。
図19】本発明の実施形態に係るスキャンラインが一本のLiDARセンサ20の回転軸21が臨む方向を説明する図である。
図20】(a)、(b)および(c)は、本発明の実施形態に係るスキャンラインが一本のLiDARセンサ20から出射されたレーザパルス22が平面上に形成するレーザスポット24を示す図である。
図21】本発明の実施形態に係る進行する無人ヘリコプター1から出射されるレーザパルス22によって平面上に形成されるレーザスポット24を示す図である。
図22】本発明の実施形態に係る回転軸21が機体の前後方向を向いている無人ヘリコプター1を示す図である。
図23】本発明の実施形態に係る複数のLiDARセンサが設けられた無人ヘリコプター1の正面図である。
図24】本発明の実施形態に係るLiDARセンサ20、40の回転軸21、41が臨む方向を説明する図である。
図25】本発明の実施形態に係るLiDARセンサ20、40から出射されるレーザパルス22、42を示す図である。
図26】本発明の実施形態に係る進行する無人ヘリコプター1から出射されるレーザパルス22、42を示す図である。
図27】本発明の実施形態に係るLiDARセンサ20、40の回転軸21、41が臨む方向を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
森林資源の管理および利用を行うためには、いわゆる「森林計測」を行うことが重要である。この「森林計測」には、森林の構造の調査、森林の材積の推定、一定期間における森林の変化量の把握等が含まれ得る。従来の森林計測のような、林木の一本一本を計測し、得られたデータから様々な集計・分析を行っていくことは非常に人手と時間がかかる。そこで、無人航空機にレーザ測距装置(LiDARセンサ)を搭載し、LiDARセンサを用いて空中から森林計測を行うことが進められている。
【0057】
本開示の実施形態を説明する前に、本明細書において使用する用語の定義を説明する。
【0058】
<用語>
本明細書では、LiDARセンサを用いて上空から森林をスキャンし、スキャンデータを取得すること自体を「森林計測」に含む。スキャンデータは、典型的には、スキャンごとに取得される点群(point cloud)を構成する各点の位置座標によって表現され得る。スキャンごとに取得される点の位置座標は、無人航空機とともに移動するローカル座標系によって規定される。このようなローカル座標系は、移動体座標系またはセンサ座標系と呼ばれ得る。一般的には、「森林計測」は、ローカル座標系で表現された各反射点の位置を地理座標系に変換することを含む。「森林計測」はさらに、地理座標系への変換後に、森林の構造を解析すること、森林および樹木の形を視覚的に表示すること、森林内の樹木の種類ごとの存在比率を求めること、森林の容積密度を求めること等を含み得る。
【0059】
「無人航空機」(UAV;Unmanned aerial vehicle)は、操縦者としての人が搭乗しない航空機であり、ドローンと呼ばれることもある。航空機は回転翼機および固定翼機を含み得る。回転翼を有する無人航空機の一例は、無人ヘリコプターまたは無人マルチコプターである。回転翼はエンジン(内燃機関)によって回転してもよいし、電動モータによって回転してもよい。無人航空機の飛行は、コンピュータプログラムによる自律飛行、一部を自動化する半自律飛行、無線を用いた人による遠隔操作による飛行のいずれであってもよい。無人航空機は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を援用して、現在位置を三次元的に測定し、その位置を修正しながら飛行することが可能である。以下に説明する例示的な実施形態においては、「無人航空機」は「無人ヘリコプター」である。
【0060】
「無人」の用語は、航空機の操縦のために人が搭乗する必要がないことを意味しており、無人航空機が操縦者でない人を運搬することは除外しない。
【0061】
「等高線」とは、地図上で、土地の起伏を正確に表すために、標準海面から等しい高さの点を結んだ曲線を言う。日本では、東京湾の平均海面を標準海面(0m)として高さが測量されている。標準海面からの高さは「標高」と呼ばれる。例えば、日本の地図では、縮尺によって標高差10mごとに主曲線が引かれ、50mごとに計曲線が引かれている。しかしながら本明細書において「等高線」は、標準海面から等しい高さの点を結んだ曲線であればよく、地図に掲載されていない曲線も含む。例えば、標高563mの高さの点を結んだ曲線も等高線であり得る。
【0062】
さらに本明細書では、「等高線」は、実際の地形上で、標準海面から等しい高さの位置を結んだ仮想的な曲線を含む。ここでいう「標準海面から等しい高さ」は厳密でなくてよい。例えば、「標準海面から等しい高さ」の±30メートルの範囲に入る高さの位置を結んだ仮想的な曲線も等高線であり得る。
【0063】
「絶対高度」とは、地表面または水面から航空機までの距離をいい、「AGL」(Above Ground Level)とも表現され得る。航空機が山岳地を飛行しているときは,山岳の地表面から航空機までの垂直距離が「絶対高度」になる。「絶対高度」は、一般には電波高度計を用いて測定された値であるが、本明細書ではLiDAR(ライダー)センサを用いて測定された値も絶対高度として採用することを含む。また本明細書では、「絶対高度」は例えば、数値表層モデルまたはDSM(Digital Surface Model)で表現される表層からの距離も含む。つまり、絶対高度Hメートル、というときは、地表面から計測した距離がHメートルであってもよいし、樹冠の表層から計測した距離がHメートであってもよい。
【0064】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による計測対象エリアの計測の実施形態を説明する。
【0065】
図1は、計測対象エリア50の計測を行う無人ヘリコプター1を示している。図1に示す例では、山の斜面52に広がる森林54を計測対象エリア50とし、無人ヘリコプター1を用いて森林計測を行っている。森林54では地表面から複数の樹木が立ち上がっている。計測対象エリア50としての森林54は、斜面の森林(斜面林)に限定されず、平坦地の森林であってもよい。計測対象エリア50は森林に限定されず、例えば市街地等であってもよい。以下の例示的な実施形態の説明では、計測対象エリア50が森林54になっている。
【0066】
図2は、LiDARセンサ(ライダーセンサ)20が設けられた無人ヘリコプター1の外観側面図である。図3は、無人ヘリコプター1の正面図である。
【0067】
LiDARセンサ20はレーザビームのパルス(以下「レーザパルス」と略記する。)22を、出射方向を変えながら次々と出射し、出射時刻と各レーザパルスの反射パルスを取得した時刻との時間差から各反射点の位置までの距離を計測することができる。「反射点」は、森林54を構成する各樹木の樹冠および幹、斜面および平坦地等の地表面であり得る。
【0068】
LiDARセンサ20は、任意の方法により、飛行体から森林までの距離を計測し得る。LiDARセンサ20の計測方法としては、例えば機械回転方式、MEMS方式、フェーズドアレイ方式がある。これらの測定方法は、それぞれレーザパルスを出射する方法(スキャンの方法)が異なっている。例えば、機械回転方式のLiDARセンサは、レーザパルスの出射およびレーザパルスの反射光の検出を行う筒状のヘッドを回転させて、回転軸の周囲360度全方位の計測対象物をスキャンする。MEMS方式のLiDARセンサは、MEMSミラーを用いてレーザパルスの出射方向を揺動させ、揺動軸を中心とした所定の角度範囲内の計測対象物をスキャンする。フェーズドアレイ方式のLiDARセンサは、光の位相を制御して光の出射方向を揺動させ、揺動軸を中心とした所定の角度範囲内の計測対象物をスキャンする。
【0069】
無人ヘリコプター1は、メインボディ2およびテールボディ3を有する機体4を備えている。機体4の前方側の下部には、ブラケット25を介してLiDARセンサ20が取り付けられている。メインボディ2の上部にはメインロータ5が設けられ、テールボディ3の後部にテールロータ6が設けられている。メインボディ2の前部にはラジエータ7が設けられている。メインボディ2の後部には飛行制御ボックス15が設けられている。メインボディ2内には、内燃機関であるエンジン8および発電装置9が設けられている。また、メインボディ2内には、いずれも図示しない吸気系、メインロータ軸、燃料タンクが収容されている。エンジン8が発生させた回転はメインロータ5およびテールロータ6に伝達され、メインロータ5およびテールロータ6が回転することにより無人ヘリコプター1は飛行する。
【0070】
メインボディ2の後部上側にはコントロールパネル10が設けられ、後部下側に表示灯11が設けられる。コントロールパネル10は、飛行前のチェックポイントやセルフチェック結果等を表示する。コントロールパネル10の表示は地上局でも確認できる。表示灯11は、GNSS制御の状態や機体の異常警告等の表示を行う。メインボディ2の中央部下側には、着陸時に機体4を支える脚であるスキッド12が設けられている。
【0071】
図4は、飛行制御ボックス(制御装置)15のハードウェア構成例を示している。飛行制御ボックス15は、GPSモジュール15a、加速度センサ15b、気圧センサ15c、地磁気センサ15d、超音波センサ15e、通信回路15f、信号処理回路15g、記憶装置15jを収容する。記憶装置15jは、ROM15h、RAM15i等を含む。各構成要素は、例えば配線または内部バス15kを介して相互にデータを送受信し得る。なお、GPSモジュール15aを初めとする各種のセンサを設ける位置は、常に飛行制御ボックス15内である必要はない。例えばGPS衛星からの信号を取得しやすくするため、GPSモジュール15aをテールボディ3上部に設けてもよい。
【0072】
飛行制御ボックス15は、GNSSモジュールの一例としてGPSモジュール15aを備える。GPSモジュール15aは、GPS(Global Positioning System)を用いて現在位置および飛行速度等の飛行データを取得する。GPSモジュール15aの数は1個であってもよいし、複数(例えば2個)であってもよい。加速度センサ15bは、X軸、Y軸およびZ軸の各方向の加速度を検出する三軸加速度センサである。加速度センサ15bが六軸加速度センサであれば、さらに無人ヘリコプター1のロール加速度、ピッチ角速度およびヨー加速度を検出可能である。なお、加速度センサ15bは、一軸加速度センサまたは二軸加速度センサを複数有し、これら一軸加速度センサまたは二軸加速度センサにより座標系XYZの各方向を検出する構成であってもよい。気圧センサ15cは気圧を検出する。検出された気圧から現在の標高を知ることができる。なお気圧と標高との関係式は公知であるから、本明細書では説明は省略する。地磁気センサ15dは無人ヘリコプター1の現在の方位を検出する。超音波センサ15eは、低空飛行時の絶対高度の検出に用いられる。加速度センサ15bおよび地磁気センサ15dの各々から出力されるデータ(機体データ)を利用することにより、無人ヘリコプター1の現在の姿勢を判断することができる。飛行データおよび機体データは、信号処理回路15gに提供される。
【0073】
通信回路15fは、Bluetooth(登録商標)および/またはWi-Fi(登録商標)規格に準拠した無線通信を行う通信回路を有する。通信回路15fはさらに、携帯電話回線または人工衛星を経由する回線を利用した無線通信を行ってもよい。通信回路15fは、飛行前においては飛行経路のデータを受信し、飛行時には無線によって地上と必要な通信を行う。なお本実施形態では、飛行経路のデータは、無人ヘリコプター1が飛行すべき経路の座標および絶対高度の各データを含む。
【0074】
記憶装置15jは、信号処理回路15gの動作を制御するコンピュータプログラムを記憶している。記憶装置15jは、無人ヘリコプター1の飛行の制御および後述する森林計測の制御を信号処理回路15gに実行させるためのコンピュータプログラムを記憶し得る。そのようなコンピュータプログラムは、それが記録された記録媒体(半導体メモリ、光ディスク等)から無人ヘリコプター1にインストールしてもよいし、インターネット等の電気通信回線を介してダウンロードしてもよい。また、無線通信を介してそのようなコンピュータプログラムを無人ヘリコプター1にインストールしてもよい。このようなコンピュータプログラムは、パッケージソフトウェアとして販売され得る。
【0075】
信号処理回路15gは、記憶装置15jに記憶された制御プログラムを実行して無人ヘリコプター1を飛行させる。より具体的には信号処理回路15gは、上述した飛行データ、機体データ、エンジン回転数やスロットル開度などの運転状態データ等を監視しながら、予め用意された飛行経路に沿って無人ヘリコプター1を飛行させる。
【0076】
図4に示す例では、飛行制御ボックス15は、LiDARセンサ20と接続されている。LiDARセンサ20は、スキャン結果(時刻データ、方角データおよび距離データ等の組)を飛行制御ボックス15に出力する。GPSモジュール15aから出力される無人ヘリコプター1の飛行位置を示す位置データと、LiDARセンサ20から出力されるスキャン結果とを用いて、例えば地理座標系で表現された計測対象物の位置を算出することができる。
【0077】
なお、LiDARセンサ20は、飛行制御ボックス15と接続されていなくてもよい。例えば、GPSモジュール15aが飛行制御ボックス15とは独立して無人ヘリコプター1に設けられ、そのGPSモジュール15aから飛行制御ボックス15およびLiDARセンサ20のそれぞれに位置データが出力されてもよい。この場合、LiDARセンサ20のスキャン結果は、LiDARセンサ20内の記憶装置(図示せず)に記憶してもよい。また、GPSモジュール15aが出力した位置データと、LiDARセンサ20のスキャン結果とを用いた計測対象物の位置の算出を、LiDARセンサ20内の信号処理回路(図示せず)が行う場合は、その算出結果をLiDARセンサ20内の記憶装置に記憶してもよい。飛行制御ボックス15とLiDARセンサ20とで電源が共有されてもよい。
【0078】
なお、無人ヘリコプター1の飛行および運用を管理するオペレータは、飛行状態を目視しながら、予め用意した飛行経路に沿って無人ヘリコプター1を飛行させることもできる。テールボディ3(図2)の後端部には、リモコン操縦機からの指令信号を受信するリモコン受信アンテナ13が設けられている。
【0079】
図2および図3を参照して、LiDARセンサ20は、例えば近赤外線のレーザパルス22を出射(放射)し、当該レーザパルス22の反射光を検出することにより、反射点までの距離を測定する光学機器である。
【0080】
例示的な実施形態ではLiDARセンサ20は機械回転方式であり、レーザパルス22の出射およびレーザパルス22の反射光の検出を行うヘッド23は、回転軸21を中心として回転する。ヘッド23が回転することで、360度全方位をスキャンすることができる。本実施形態では、LiDARセンサ20のスキャン可能範囲のうち無人ヘリコプター1の機体4等に遮られる範囲は計測結果に反映しない。記載の便宜上、図2では360度全方位に放射されるレーザパルス22のうちの一部のみを示している。本明細書では、LiDARセンサ20のヘッド23の回転を“LiDARセンサ20の回転”と表現する場合がある。
【0081】
LiDARセンサ20のヘッド23は、回転することにより出射口の方向を変化させ、所定角度ピッチα(rad)ごとに同時に複数個のレーザパルス22を出射する。図3では、一例として、LiDARセンサ20の回転軸21が通るある平面に沿って同時に出射されるN個のレーザパルス22を示している。記載の便宜上、パルス状ではなくビーム状でレーザパルス22を記載している。なお、「同時」は厳密に同じ時刻である必要はなく、概ね同じ時刻であることも含む。Nの値は任意であり、例えば、12、16、32または64であるが、Nはこれらの値に限定されない。LiDARセンサ20のヘッド23には、例えばN個のレーザ光源が並べられており、N個のレーザパルス22の出射口からレーザパルス22が出射される。レーザ光源は例えばレーザダイオードであるがこれに限定されない。
【0082】
図2を参照しながら、ある1つの出射口から出射されるレーザパルス22を説明する。LiDARセンサ20のヘッド23は、回転することにより出射口の方向を変化させ、所定角度ピッチα(rad)ごとにレーザパルス22を出射し、森林で反射した各レーザパルス22の反射光を検出する。これにより、当該所定角度ピッチαごとの方向における反射点までの距離のデータを得ることができる。1つの出射口についてLiDARセンサ20の単位時間当たりのパルスの出射回数をM、単位時間当たりの回転数をRとするとき、所定角度ピッチαはα(rad)=2・π・R/Mによって求められる。
【0083】
N個の出射口からN個のレーザパルス22を同時に出射する場合、LiDARセンサ20は、所定角度ピッチαごとにN個のレーザパルス22を同時に出射する。
【0084】
所定角度ピッチαは固定値であってもよいし、可変値であってもよい。単位時間当たりの出射回数M、および単位時間当たりの回転数Rもまた、固定値であってもよいし、可変値であってもよい。
【0085】
同じ角度方向に同時に出射されるレーザパルスの個数をNとする(図3)。例示的な実施形態では、M・N=60万(個/秒)、R=10(回転/秒)、N=16のとき、所定角度ピッチαは約0.0017(rad)、約0.096度である。ただし計算の簡単化のため、スキャン範囲は360度であるとした。
【0086】
LiDARセンサ20としては、上述したようなレーザパルスの出射方向を揺動させ、揺動軸を中心とした所定の角度範囲内の計測対象物をスキャンするLiDARセンサが用いられてもよい。本明細書では、LiDARセンサ20の“回転”および“回転軸”は、このような“揺動”および“揺動軸”も含むとする。レーザパルスの出射方向を揺動させる場合の回転角度範囲は例えば180度以下であるが、それに限定されない。
【0087】
次に、例示的な実施形態におけるLiDARセンサ20の回転軸21が臨む方向を説明する。
【0088】
図5は、LiDARセンサ20の回転軸21が臨む方向を説明する図である。図5は、鉛直方向33から見た平面視における無人ヘリコプター1を示している。鉛直方向33から見た平面視において、無人ヘリコプター1の機体進行方向を第1方向31とし、第1方向31に垂直な方向を第2方向32とする。例示的な実施形態において、LiDARセンサ20を用いた計測対象エリア50の計測中、無人ヘリコプター1は、LiDARセンサ20の回転軸21が第1方向31よりも第2方向32に近い方向を向いた状態で飛行する。回転軸21が臨む方向である回転軸方向21aと第2方向32とがなす角度θは、例えば0度から30度であるが、これに限定されない。一例として、角度θは5度から30度である。また別の例として、角度θは20度から30度である。
【0089】
図5に示すように、LiDARセンサ20は、回転軸21が無人ヘリコプター1の機体4の前後方向よりも左右方向に近い方向に向けられていてもよい。機体4の前後方向が機体進行方向(第1方向31)を向くという無人ヘリコプター1の通常の飛行姿勢において、LiDARセンサ20の回転軸21を第1方向31よりも第2方向32に近い方向に向かせることができる。
【0090】
図6は、LiDARセンサ20から同時に出射されるN個のレーザパルス22を示す図である。図2および図3を参照しながら説明したように、回転するLiDARセンサ20のヘッド23は、所定角度ピッチαごとにN個のレーザパルス22を同時に出射する。図6は、所定角度ピッチαごとに出射されるレーザパルス22のうちの、鉛直方向33に垂直な平面方向に沿って出射されるN個のレーザパルス22を示している。
【0091】
図7は、進行する無人ヘリコプター1から出射されるレーザパルス22を示す図である。記載の便宜上、図7では、所定角度ピッチαごとに出射されるレーザパルス22のうちの、鉛直方向33に垂直な平面方向に沿って出射されるレーザパルス22を示している。LiDARセンサ20が一回転する間に無人ヘリコプター1が飛行する飛行距離をJで表している。
【0092】
無人ヘリコプター1が距離J進む間にLiDARセンサ20は一回転し、所定角度ピッチαごとにN個のレーザパルス22を出射する。レーザパルス22が出射される回転角度のそれぞれにおいては、無人ヘリコプター1が距離Jだけ進むごとにN個のレーザパルス22が同時に出射される。このように、無人ヘリコプター1が進行する過程で、機体進行方向(第1方向31)に沿ったエリアに、レーザパルス22を密に照射することができる。機体進行方向31に沿ったエリア内の同一の物体(樹木等)に、様々な角度からレーザパルス22を密に照射することができ、機体進行方向31に沿ったエリアの詳細な3次元点群データを取得することができる。
【0093】
図8は、LiDARセンサ20を用いた計測対象エリア50の計測中、LiDARセンサ20の回転軸21が第2方向32を向いている形態を示す図である。図6と同様に、図8は、所定角度ピッチαごとに出射されるレーザパルス22のうちの、鉛直方向33に垂直な平面方向に沿って出射されるN個のレーザパルス22を示している。なお、回転軸21が厳密に第2方向32を向いている必要はなく、概ね第2方向32を向いていればよい。
【0094】
図9は、LiDARセンサ20の回転軸21が第2方向32を向いている形態において、進行する無人ヘリコプター1から出射されるレーザパルス22を示す図である。記載の便宜上、図9では、所定角度ピッチαごとに出射されるレーザパルス22のうちの、鉛直方向33に垂直な平面方向に沿って出射されるレーザパルス22を示している。
【0095】
図7を参照しながら説明したように、無人ヘリコプター1が距離J進む間にLiDARセンサ20は一回転し、所定角度ピッチαごとにN個のレーザパルス22を出射する。レーザパルス22が出射される回転角度のそれぞれにおいては、無人ヘリコプター1が距離Jだけ進むごとにN個のレーザパルス22が同時に出射される。回転軸21が第2方向32を向いている形態においても、無人ヘリコプター1が進行する過程で、機体進行方向31に沿ったエリアに、レーザパルス22を密に照射することができる。機体進行方向31に沿ったエリア内の同一の物体に、様々な角度からレーザパルス22を密に照射することができ、機体進行方向31に沿ったエリアの詳細な3次元点群データを取得することができる。
【0096】
後述するように計測対象エリア50の計測を行うための飛行経路には多数の経路セグメントが含まれ得る。飛行経路に含まれる一つの経路セグメントの飛行において、機体進行方向31に沿ったエリアに繰り返しレーザパルス22を照射することができる。これにより、その一つの経路セグメントの飛行において高密度の3次元点群データを取得することができる。
【0097】
一つの経路セグメントの飛行においてLiDARセンサ20でスキャンしたエリアを、別の経路セグメントの飛行において再度詳細にスキャンしなくても、そのエリアにおける高密度の3次元点群データを取得することができる。
【0098】
図10は、計測対象エリア50の計測を行う無人ヘリコプター1の側面図である。
【0099】
上述したように、LiDARセンサ20は、所定角度ピッチαごとにレーザパルス22を出射する。説明の便宜上、図10は、それらのレーザパルス22のうちの一部のみを示している。具体的には、図10は、LiDARセンサ20から前方斜め下方向、真下方向、後方斜め下方向にそれぞれ出射されるレーザパルス22を示している。
【0100】
本実施形態では、図10に示すように、樹木56等の計測対象物に対して、接近しながらのレーザパルス22の照射を行った後、引き続いて、遠ざかりながらのレーザパルス22の照射が行われる。無人ヘリコプター1が進行する過程で、計測対象物に対して連続的にレーザパルス22が照射される。特定の計測対象物に対する複数回の計測が連続的に行われるために、それぞれの計測で得られる点群データ間の地理座標系上の位置ずれを小さくすることができる。
【0101】
図11は、比較例として、LiDARセンサ20の回転軸21を機体進行方向に向けた状態での計測を示している。無人ヘリコプター1の飛行経路66は、経路セグメント66aおよび66bを含んでいる。
【0102】
無人ヘリコプター1は、経路セグメント66aに沿って進行する過程で、例えば特定の樹木57の計測を行う。計測対象エリアはある程度の広さがあるため、無人ヘリコプター1は、樹木57の計測を行った後も、経路セグメント66aに沿った飛行を継続して別の計測対象物の計測を行う。経路セグメント66aの端部に達した無人ヘリコプター1は折り返し、次に、経路セグメント66bに沿って進行する。経路セグメント66aと経路セグメント66bとの間には所定の距離があけられている。無人ヘリコプター1は、経路セグメント66bに沿って進行する過程で、樹木57の計測を再び行う。経路セグメント66aを進行しながら計測して得られる点群データと、経路セグメント66bを進行しながら計測して得られる点群データとを組み合わせることで、高密度の3次元点群データを取得することができる。
【0103】
しかし、経路セグメント66aを進行しながら樹木57を計測してから、経路セグメント66bを進行しながら樹木57の計測を行うまでの間に、無人ヘリコプター1は、比較的長い距離を飛行しているため、その間の累積誤差が点群データの座標のずれとして現れ得る。
【0104】
例えば、GNSSと慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)とを組み合わせて、無人ヘリコプター1の位置を検出する方法がある。無人ヘリコプター1の位置を高精度に検出しようとした場合、基準点に固定したGNSS(基準局)と無人ヘリコプター1に設けられたGNSSとを用いて、搬送波位相を利用した干渉測位を行うことが考えられる。しかし、山間部では、急斜面および背の高い樹木等によって人工衛星からの電波が遮られやすく、GNSSのみを用いて安定して位置を検出することは難しい場合がある。GNSSが使用できない期間は、IMUを用いて位置を推定し、飛行を継続する。しかし、IMUを用いて検出する座標には累積誤差が発生し、累積誤差は飛行距離に比例して大きくなる。
【0105】
このため、樹木57を計測した後、比較的長い距離を飛行してから樹木57を再度計測した場合、点群データ間の地理座標系上の位置ずれが大きくなる場合がある。この位置ずれは、例えば、樹木の幹の直径を求めるときの誤差の原因になる。
【0106】
一方、図10を参照しながら上述したように、本実施形態では、特定の樹木56に連続的にレーザパルス22を照射することができる。比較的短い距離の飛行の間に、特定の樹木56に接近しながらの計測と、その樹木56に遠ざかりながらの計測が行われる。特定の樹木56に接近しながら計測して得られる点群データと、その樹木56から遠ざかりながら計測して得られる点群データとの間の、地理座標系上の位置ずれを小さくすることができる。
【0107】
図2に示したように、本実施形態のLiDARセンサ20は前方向および前方斜め上方向にもレーザパルス22を出射可能である。このため、計測対象エリア50に対して斜め上方向からだけではなく、横方向からレーザパルス22を照射したり、斜め下方向からレーザパルス22を照射したりすることができる。
【0108】
図12は、森林計測を行う無人ヘリコプター1を示す図である。図12に示す例では、森林54は斜面52に広がっている。無人ヘリコプター1は、斜面52に沿って上昇または下降しながら、計測対象エリアである森林54の計測を行う。
【0109】
斜面52に広がる森林54に対して、斜め上方向からだけではなく、横方向からレーザパルス22を照射したり、斜め下方向からレーザパルス22を照射したりすることができる。横方向からのレーザパルス22の照射では、基本的に日光を受けるために水平に生えている葉の間をレーザパルス22が通りやすくなる。レーザパルス22は樹木56の樹冠56aだけでなく、樹木56の幹56b、下層植生58および地表面59等にも到達し、反射される。これにより、樹冠点群だけでなく幹点群、下層植生点群および地表面点群を含む3次元点群データを得ることができる。
【0110】
次に、森林計測において無人ヘリコプター1を飛行させる飛行経路の設定方法を説明する。無人ヘリコプター1は、設定された飛行経路に沿って飛行するよう、プログラミングされている。
【0111】
オペレータは、タブレットコンピュータ、基地局操縦装置等のコンピュータ装置を利用して、飛行経路を設定し得る。本明細書では、無人ヘリコプター1と、そのようなコンピュータ装置とを合わせて「計測システム」と呼ぶ。
【0112】
図13は、無人ヘリコプター1とタブレットコンピュータ70とを含む計測システム100の一例を示している。図14は、無人ヘリコプター1と基地局操縦装置80とを含む計測システム100の一例を示している。タブレットコンピュータ70および基地局操縦装置80はいずれも、内蔵された、または外付けの記憶装置を有しており、当該記憶装置に地図データ90を記憶している。タブレットコンピュータ70および基地局操縦装置80は、地図データ90をディスプレイに表示してオペレータから飛行経路60の指定を受け付ける。タブレットコンピュータ70はタッチスクリーンパネルを有しており、オペレータからのタッチ操作により、無人ヘリコプター1を飛行させるべき飛行経路の指定、および絶対高度の指定を受け付ける。なお、本実施形態による基地局操縦装置80はノート型PCであり、かつタブレットコンピュータ70と同様のタッチ操作に対応しているとする。
【0113】
以下、図13に示すタブレットコンピュータ70を例示して説明する。タブレットコンピュータ70の基本的な構成と基地局操縦装置80の基本的な構成とは概ね同じである。よって、下記の説明は基地局操縦装置80の説明として読み替えることができる。
【0114】
図15は、タブレットコンピュータ70のハードウェア構成例を示している。
【0115】
タブレットコンピュータ70は、CPU71と、メモリ72と、通信回路73と、画像処理回路74と、ディスプレイ75と、タッチスクリーンパネル76と、通信バス77とを有する。CPU71、メモリ72、通信回路73、画像処理回路74およびタッチスクリーンパネル76は通信バス77で接続されており、通信バス77を介して相互にデータを授受することが可能である。
【0116】
CPU71は、タブレットコンピュータ70の動作を制御する信号処理回路(コンピュータ)である。典型的にはCPU71は半導体集積回路である。CPU71を単に「処理回路」と呼ぶこともある。
【0117】
メモリ72は、CPU71の動作を制御するコンピュータプログラムを記憶している。メモリ72は、森林計測の制御をCPU71に実行させるためのコンピュータプログラムを記憶し得る。メモリ72は、無人ヘリコプター1の飛行の制御をCPU71に実行させるためのコンピュータプログラムを記憶していてもよい。上述したコンピュータプログラムと同様に、そのようなコンピュータプログラムは、それが記録された記録媒体からタブレットコンピュータ70へインストールしてもよいし、インターネット等の電気通信回線を介してダウンロードしてもよい。また、無線通信を介してそのようなコンピュータプログラムをタブレットコンピュータ70へインストールしてもよい。このようなコンピュータプログラムは、パッケージソフトウェアとして販売され得る。
【0118】
メモリ72は、CPU71が実行するコンピュータプログラムを記憶する揮発性の記憶装置(例えばRAM)、および、地図データ90を記憶する不揮発性の記憶装置(例えばフラッシュメモリ)であり得る。RAMは、CPU71が演算を行う際のワークメモリとしても利用され得る。コンピュータプログラムは、フラッシュメモリに格納されていてもよい。CPU71は、タブレットコンピュータ70の起動時にフラッシュメモリからコンピュータプログラムを読み出してRAMに展開し、実行する。
【0119】
通信回路73は、たとえば、Bluetooth(登録商標)および/またはWi-Fi(登録商標)規格に準拠した無線通信を行う無線通信回路である。無人ヘリコプター1の通信回路15fと同様、本明細書では、タブレットコンピュータ70は、Bluetooth(登録商標)規格および/またはWi-Fi規格に準拠した無線通信を行い、1対1で無人ヘリコプター1と通信する。通信回路73は、無人ヘリコプター1に送信すべきデータを、通信バス77を介してCPU71から受信する。また通信回路73は、無人ヘリコプター1から受信したデータ(例えばLiDARセンサ20の計測結果)を、通信バス77を介してCPU71および/またはメモリ72に送信する。
【0120】
画像処理回路74は、CPU71の指示に従い、ディスプレイ(表示装置)75に表示する画像を生成する。たとえば画像処理回路74は、地図データ90を利用して計測対象エリア50の画像を表示し、タッチスクリーンパネル76を介して受け付けたオペレータのタッチ操作に応じて、ディスプレイ75上に飛行経路60を描画する。
【0121】
タッチスクリーンパネル76は、指やペンなどで行われたオペレータのタッチを検出することができる。検出方式として、静電式、抵抗膜式、光学式、超音波方式、電磁式などが知られている。たとえば、静電容量方式のタッチスクリーンパネル76の場合、タッチスクリーンパネル76は、特定の位置における静電容量の変化を検出し、当該変化に関するデータを、通信バス77を介してCPU71に送信する。CPU71は、送られてきたデータに基づいて、オペレータによるタッチの有無を判断する。「変化に関するデータ」の例は、静電容量が変化した位置および変化した時間長のデータである。
【0122】
本実施形態では、タッチスクリーンパネル76はディスプレイ75に重畳して設けられている。オペレータは、ディスプレイ75に表示された計測対象エリア50の画像を見ながら、所望のタッチ操作を行う。CPU71は、タッチスクリーンパネル76から出力された検出位置のデータが、ディスプレイ75に表示されている画像のどの位置を示しているかを判定する。なお、タッチスクリーンパネル76に代えて、またはタッチスクリーンパネル76とともに、マウス、キーボード、ジョイスティック、マイク等の他の入力装置を有していてもよい。
【0123】
以下、計測システム100のタブレットコンピュータ70を利用した飛行経路の設定方法と、設定された飛行経路に沿った無人ヘリコプター1の飛行方法を説明する。
【0124】
図16は、例示的な実施形態による飛行経路の設定処理の手順を示すフローチャートである。図16に示す手順は、タブレットコンピュータ70または基地局操縦装置80のCPU71(図15)の制御により実行される。なお、複数の計測対象エリアが選択され得る場合には、そのうちの一つが予め指定されているとする。
【0125】
ステップS2において、CPU71はその計測対象エリアに関する地図データを取得する。
【0126】
ステップS4において、CPU71はタッチスクリーンパネル76を介して飛行経路60の指定を受け付ける。飛行経路60の指定方法は種々考えられる。例えば、タブレットコンピュータ70には、計測対象エリア50、計測対象エリア50の等高線62、CPU71が演算した飛行経路60が表示される。例えば、CPU71は、等高線データを参照し、複数の等高線62を横切る経路セグメントを含む飛行経路60を演算して表示する。オペレータは、タッチ操作等の入力操作により飛行経路60に含まれる各経路セグメントの位置、経路セグメントの本数および経路セグメント間の距離等を調整することができる。
【0127】
ステップS6において、CPU71は飛行経路60の設定が完了したか否かを判定する。例えばCPU71は、飛行経路60の設定を完了したことを示す入力をオペレータから受け付けるまでは、飛行経路60の設定が完了していないとして、ステップS4およびS6の処理を繰り返す。一方、飛行経路60の設定を完了したことを示す入力を受け付けると、CPU71は飛行経路60の設定が完了したと判定し、ステップS8に進む。ステップS8において、CPU71はタッチスクリーンパネル76を介して絶対高度の指定を受け付ける。図13には、絶対高度の数値を増加させる「+」ボタンと減少させる「-」ボタンとが表示されている。なお、ソフトウェアキーボードを表示させて数値を直接入力できるようにしてもよいし、ダイヤルまたはスライダ等のGUIを利用して入力できるようにしてもよい。
【0128】
以上の処理により、無人ヘリコプター1の飛行経路60が設定される。飛行経路60を示すデータは、例えば無線でタブレットコンピュータ70の通信回路73から送信され、無人ヘリコプター1の通信回路15f(図4)によって受信される。無人ヘリコプター1の信号処理回路15g(図4)は、受信したデータをRAM15iに格納する。その後、森林計測を実行する。
【0129】
図17は、飛行経路が設定された無人ヘリコプター1の飛行動作の手順を示すフローチャートである。図15に示す手順は、無人ヘリコプター1の信号処理回路15gの制御により実行される。
【0130】
ステップS10において、無人ヘリコプター1の信号処理回路15gは、GPSモジュール15a等を利用して自己位置を取得しながら、森林計測の開始位置まで無人ヘリコプター1を飛行させる。なお、ここで言う「開始位置」は、飛行経路60上の森林計測を開始する位置の経度および緯度に加え、絶対高度も含む。森林計測の開始位置に到達すると、ステップS12において、信号処理回路15gはLiDARセンサ20を用いた森林計測を開始する。
【0131】
ステップS14において、信号処理回路15gは、設定された飛行経路60に沿って、かつ、設定された絶対高度で無人ヘリコプター1を飛行させる。
【0132】
ステップS16において、信号処理回路15gは、森林計測が終了したか否かを判定する。具体的には信号処理回路15gは、予め設定された飛行経路60に沿った飛行が完了したか否かを判定する。森林計測が終了するまでステップS14およびステップS16の処理を繰り返す。
【0133】
森林計測が終了すると、無人ヘリコプター1は、例えば自律飛行を行って帰還する。
【0134】
飛行経路60に含まれる複数の経路セグメントのそれぞれを飛行中にLiDARセンサ20から出力されたセンサーデータを組み合わせることで、高密度の3次元点群データを生成することができる。高密度の3次元点群データを生成する処理は、タブレットコンピュータ70が実行してもよいし、他の任意のコンピュータが実行してもよい。
【0135】
図18は、飛行経路60の一例を示す図である。
【0136】
図18では複数の等高線62を破線で示している。飛行経路60は、複数の等高線62を横切る複数の経路セグメントを含む。その複数の経路セグメントには、第1経路セグメント60aおよび第2経路セグメント60bが含まれる。
【0137】
無人ヘリコプター1の信号処理回路15g(図4)は、複数の等高線62を横切る経路セグメントに沿って無人ヘリコプター1を飛行させる。計測対象エリア50の計測中、信号処理回路15gは、LiDARセンサ20の回転軸21が等高線62に沿った方向を向いた状態で無人ヘリコプター1を飛行させる。図12および図18を参照して、複数の等高線62を横切るように斜面52に沿って無人ヘリコプター1を飛行させることより、斜面52に広がる森林54に対して、斜め上方向からだけではなく、横方向からレーザパルス22を照射したり、斜め下方向からレーザパルス22を照射したりすることができる。
【0138】
一本の経路セグメントは、鉛直方向33から見た平面視において、他のいくつかの経路セグメントと交差する。例えば、平面視において、第1経路セグメント60aは第2経路セグメント60bと交差している。互いに交差する複数の経路セグメントを飛行することにより、計測対象エリア50に複数の方位からレーザパルス22を照射することができ、計測対象エリア50の詳細な3次元点群データを取得することができる。
【0139】
このような、経路セグメント同士が交差する飛行経路60は、格子状の飛行経路となっている。格子状の飛行経路60を飛行することにより、計測対象エリア50に複数の方位からレーザパルス22を照射することができ、計測対象エリア50の詳細な3次元点群データを取得することができる。
【0140】
次に、スキャンラインが一本のLiDARセンサ20が無人ヘリコプター1に設けられた形態について説明する。
【0141】
上述したLiDARセンサ20はスキャンラインが複数本あり、所定角度ピッチαごとに複数のレーザパルス22を同時に出射していた。本発明の実施形態において、所定角度ピッチαごとに1個のレーザパルス22を出射する、スキャンラインが一本のLiDARセンサ20を用いることも可能である。そのようなLiDARセンサ20では、レーザパルス22の出力を大きくすることで、測定可能距離を長くすることができる。
【0142】
図19は、スキャンラインが一本のLiDARセンサ20の回転軸21が臨む方向を説明する図である。図19は、鉛直方向33から見た平面視における無人ヘリコプター1を示している。
【0143】
LiDARセンサ20を用いた計測対象エリア50の計測中、LiDARセンサ20の回転軸21を第2方向32に対して傾ける。例示的な実施形態において、回転軸方向21aと第2方向32とがなす角度θは20度から40度であるが、これに限定されない。例えば、角度θは20度から30度であってもよい。
【0144】
LiDARセンサ20は、回転軸21に対して所定の角度を有する方向にレーザパルス22を出射する。例えば、図19に示すように、LiDARセンサ20は、回転軸21に対して直角の方向にレーザパルス22を出射する。LiDARセンサ20は、レーザパルス22を出射する方向を回転軸21の周りに回転させる。
【0145】
図20は、スキャンラインが一本のLiDARセンサ20から出射されたレーザパルス22が計測対象エリア50に形成するレーザスポット24を示す図である。スキャンラインが1本のLiDARセンサ20を用いる場合、計測対象エリア50に形成されるレーザスポット24は1本のライン上に並ぶ。
【0146】
図20(a)は、回転軸方向21aが第2方向32に一致している形態において、LiDARセンサ20が一回転する間に平面上に形成されるレーザスポット24を示している。回転軸方向21aが第2方向32に一致している場合、レーザスポット24は、機体進行方向(第1方向31)に平行な直線上に並ぶ。
【0147】
図20(b)は、図19に示したように回転軸方向21aが第2方向32に対して傾いている形態において、LiDARセンサ20が一回転する間に平面上に形成されるレーザスポット24を示している。回転軸方向21aが第2方向32に対して傾いている場合、レーザスポット24は、機体進行方向31に対して傾いた直線上に並ぶ。
【0148】
図20(c)は、二個の直線上に並ぶレーザスポット24の群を示す図である。無人ヘリコプター1が距離J進む間にLiDARセンサ20は一回転し、直線上に並ぶレーザスポット24の群が二つ形成される。
【0149】
図21は、回転軸方向21aが第2方向32に対して傾いている形態において、進行する無人ヘリコプター1から出射されるレーザパルス22によって平面上に形成されるレーザスポット24を示す図である。無人ヘリコプター1が距離Jだけ進むごとに、直線上に並ぶレーザスポット24の群が形成され、全体としてレーザスポット24を第2方向32に拡げて分布させることができる。すなわち、第2方向32に幅を有するエリアをスキャンすることができる。
【0150】
このように、LiDARセンサ20の回転軸21を第2方向32に対して傾けることで、スキャンラインが一本のLiDARセンサ20を用いた場合でも、レーザパルス22の照射位置を第2方向32に拡げることができ、照射漏れ領域を低減することができる。
【0151】
次に、LiDARセンサ20の回転軸21が無人ヘリコプター1の機体の左右方向よりも前後方向に近い方向を向いている場合の計測について説明する。
【0152】
図22は、鉛直方向33から見た平面視における無人ヘリコプター1を示している。図22に示す例では、回転軸21が無人ヘリコプター1の機体の前後方向を向いている。このような形態では、無人ヘリコプター1の信号処理回路15g(図4)は、回転軸21が機体進行方向(第1方向31)よりも第2方向32に近い方向を向くように、無人ヘリコプター1を飛行させる。例えば、図22に示すように、無人ヘリコプター1を機体の右斜め前方向に飛行させることで、回転軸21を第2方向32に近い方向に向けた状態で無人ヘリコプター1を飛行させることができる。これにより、回転軸21を第2方向32に近い方向に向けた状態で計測対象エリア50の計測を行うことができる。
【0153】
次に、複数のLiDARセンサが設けられた無人ヘリコプター1を説明する。
【0154】
図23は、複数のLiDARセンサが設けられた無人ヘリコプター1の正面図である。図23に示す例では、LiDARセンサ20に加えてLiDARセンサ(第2LiDARセンサ)40が無人ヘリコプター1に設けられている。LiDARセンサ40は、LiDARセンサ20と同様の構成を有している。LiDARセンサ40のヘッドは回転軸41を中心として回転する。回転するLiDARセンサ40のヘッドは、所定角度ピッチαごとにN個のレーザパルス42を同時に出射する。
【0155】
無人ヘリコプター1に設けられるLiDARセンサの個数は任意であり、三個以上のLiDARセンサが無人ヘリコプター1に設けられてもよい。ここでは、二つのLiDARセンサが設けられた無人ヘリコプター1を例示して説明する。
【0156】
図24は、LiDARセンサ20、40の回転軸21、41が臨む方向を説明する図である。図24は、鉛直方向33から見た平面視における無人ヘリコプター1を示している。平面視において、LiDARセンサ40の回転軸41は、LiDARセンサ20の回転軸21とは異なる方向を向いている。すなわち、回転軸方向21aと、回転軸41が臨む方向である回転軸方向41aとは互いに異なっている。回転軸方向41aと第2方向32とがなす角度θaは、角度θと同じであり得るが、互いに異なっていてもよい。
【0157】
計測対象エリア50の計測中、平面視において、機体進行方向(第1方向31)よりも第2方向32に近い方向に回転軸41を向ける。例えば、機体進行方向31を前方向としたとき、LiDARセンサ20の回転軸21を左斜め前方から右斜め後方に臨ませ、第2LiDARセンサ40の回転軸41は右斜め前方から左斜め後方に臨ませる。
【0158】
図25は、LiDARセンサ20から同時に出射されるN個のレーザパルス22、およびLiDARセンサ40から同時に出射されるN個のレーザパルス42を示す図である。図6と同様に、図25は、所定角度ピッチαごとに出射されるレーザパルス22のうちの、鉛直方向33に垂直な平面方向に沿って出射されるN個のレーザパルス22を示している。また、図25は、所定角度ピッチαごとに出射されるレーザパルス42のうちの、鉛直方向33に垂直な平面方向に沿って出射されるN個のレーザパルス42を示している。
【0159】
図26は、進行する無人ヘリコプター1から出射されるレーザパルス22、42を示す図である。記載の便宜上、図26では、所定角度ピッチαごとに出射されるレーザパルス22、42のうちの、鉛直方向33に垂直な平面方向に沿って出射されるレーザパルス22、42を示している。無人ヘリコプター1が距離J進む間に、LiDARセンサ20、40のそれぞれは一回転し、所定角度ピッチαごとにN個のレーザパルス22、42を出射する。
【0160】
上述した図7は、一個のLiDARセンサ20から出射されるレーザパルス22を示している。図7に示す例では、機体進行方向31に沿った右側のエリアに多くのレーザパルス22を照射できているが、左側のエリアでは右側のエリアよりもレーザパルス22照射数が少なくなっている。
【0161】
一方、無人ヘリコプター1がLiDARセンサ40をさらに備えた形態では、図26に示すように、機体進行方向31に沿った左側のエリアにLiDARセンサ40から多くのレーザパルス22を照射することができている。回転軸が互いに異なる方向を向いている二つのLiDARセンサ20、40からレーザパルス22、42を出射させることにより、より広い範囲に多くのレーザパルス22、42を照射することができる。
【0162】
また、二つのLiDARセンサ20、40が互いに異なる方向にレーザパルス22、42を出射することにより、一方のLiDARセンサから多くのレーザパルスを照射することが難しいエリアを、他方のLiDARセンサで補完することができる。これにより、機体進行方向31に沿ったエリアにより多くのレーザパルス22を照射することができる。
【0163】
次に、二つのLiDARセンサ20、40が設けられた無人ヘリコプター1の変形例を説明する。
【0164】
図27は、LiDARセンサ20、40の回転軸21、41が臨む方向を説明する図である。図27に示す例では、平面視において、LiDARセンサ40の回転軸41は、第2方向32よりも第1方向31に近い方向を向いている。回転軸方向41aと第1方向31とがなす角度θbは、角度θと同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。計測対象エリア50の計測中、LiDARセンサ40の回転軸41が機体進行方向(第1方向31)に近い方向を向いていることにより、機体進行方向31に対する横方向にも広い範囲にわたってレーザパルス22を照射することができる。これにより、一本の経路セグメントに沿った飛行中により広いエリアの計測を行うことができる。
【0165】
上述した実施形態によれば、無人ヘリコプター1が従来の航空機よりも低い高度を飛ぶことにより、レーザスポットの面内個数密度を高めるとともに、レーザスポット中心間隔を縮小することができる。
【0166】
低い高度の飛行に伴い飛行速度を低下させた場合、バッテリから供給される電力で電動モータを動作させるマルチコプターでは、航続距離が短いため、計測対象エリアが狭くなってしまう。一方、内燃機関を動力源として飛行する無人ヘリコプターは、航続距離が長いため、飛行速度を低下させても、十分な計測対象エリアを確保することができる。
【0167】
なお、本明細書では、LiDARセンサが設けられた無人航空機を例示して説明した。機械回転方式、MEMS方式、フェーズドアレイ方式のLiDARセンサを例示したが、フラッシュLiDARセンサを用いてもよい。フラッシュLiDARセンサには回転軸または揺動軸は存在しないが、斜面に広がる森林を対象とする森林計測を行い得るような位置および角度で無人ヘリコプター1に取り付けられればよい。
【0168】
以上、本発明の例示的な実施形態を説明した。
【0169】
本発明のある実施形態に係る計測システム100は、LiDARセンサ20が設けられた無人ヘリコプター1を飛行させて計測対象エリア50の計測を行う。計測システム100は、無人ヘリコプター1と、無人ヘリコプター1に設けられたLiDARセンサ20と、無人ヘリコプター1の飛行を制御する制御装置15とを備える。鉛直方向33から見た平面視において、無人ヘリコプター1の機体進行方向31を第1方向31とし、第1方向31に垂直な方向を第2方向32としたとき、LiDARセンサ20を用いた計測対象エリア50の計測中、無人ヘリコプター1は、LiDARセンサ20の回転軸21が第1方向31よりも第2方向32に近い方向を向いた状態で飛行する。
【0170】
LiDARセンサ20を用いた計測対象エリア50の計測中、LiDARセンサ20の回転軸21が第1方向31よりも第2方向32に近い方向を向いた状態で無人ヘリコプター1は飛行する。LiDARセンサ20は回転していることから、無人ヘリコプター1が進行する過程で、機体進行方向31に沿ったエリアに、レーザパルス22を密に照射することができる。これにより、例えば、LiDARセンサ20から複数のレーザパルス22が同時に出射される形態においては、機体進行方向31に沿ったエリアの同一箇所に、様々な角度からレーザパルス22を密に照射できる。その結果、機体進行方向31に沿ったエリアの詳細な3次元点群データを取得できる。さらに、LiDARセンサ20を回転させることにより、例えば、森林54を構成する樹木56に対し、様々な角度からレーザパルス22を照射することができる。
【0171】
飛行経路60に含まれる一つの経路セグメントの飛行において、機体進行方向31に沿ったエリアに繰り返しレーザパルス22を照射することができる。これにより、その一つの経路セグメントの飛行において高密度の3次元点群データを取得することができる。
【0172】
一つの経路セグメントの飛行においてLiDARセンサ20でスキャンしたエリアを、別の経路セグメントの飛行において再度詳細にスキャンしなくても、そのエリアの高密度の3次元点群データを取得することができる。
【0173】
計測対象エリア50内の同一の物体に対して、連続的にレーザパルス22を照射することができる。これにより、例えば樹木56の上空を飛行しながら計測するとき、樹木56に接近しながら計測して得られる点群データと、その樹木56から遠ざかりながら計測して得られる点群データとの間の、地理座標系上の位置ずれを小さくすることができる。
【0174】
ある実施形態において、LiDARセンサ20は、回転軸21が無人ヘリコプター1の機体の前後方向よりも左右方向に近い方向に向けられていてもよい。
【0175】
機体の前後方向が機体進行方向31を向くという無人ヘリコプター1の通常の飛行姿勢において、LiDARセンサ20の回転軸21を第1方向31よりも第2方向32に近い方向に向かせることができる。
【0176】
ある実施形態において、LiDARセンサ20を用いた計測対象エリア50の計測中、制御装置15は、LiDARセンサ20の回転軸21が第1方向31よりも第2方向32に近い方向を向くように、無人ヘリコプター1を飛行させてもよい。
【0177】
LiDARセンサ20の回転軸21が無人ヘリコプター1の機体の前後方向よりも左右方向に近い方向を向いていない場合においても、その回転軸21を第2方向32に近い方向に向けた状態で無人ヘリコプター1を飛行させることができる。
【0178】
ある実施形態において、計測対象エリア50の計測中、LiDARセンサ20の回転軸21は、第2方向32を向いていてもよい。
【0179】
無人ヘリコプター1が進行する過程で、機体進行方向31に沿ったエリアに対してレーザパルス22をより密に照射できる。これにより、機体進行方向31に沿ったエリアのより詳細な3次元点群データを取得することができる。さらに、LiDARセンサ20を回転させることにより、例えば、森林54を構成する樹木56に対し、様々な角度からレーザパルス22を照射することができる。
【0180】
ある実施形態において、計測対象エリア50の計測中、平面視において、LiDARセンサ20の回転軸21は、第2方向32に対して傾いていてもよい。
【0181】
LiDARセンサ20が地上に形成するレーザパルス22の照射位置を第2方向32に拡げて分布させることができる。スキャンラインが1本のLiDARセンサ20を用いる場合、回転軸21が第2方向32に一致していると、照射位置は第1方向31に平行な直線上に位置する。レーザパルス22の照射位置を第2方向32に拡げることにより、照射漏れ領域を低減できる。
【0182】
ある実施形態において、LiDARセンサ20は、回転軸21に対して所定の角度を有する方向にレーザパルス22を出射し、レーザパルス22を出射する方向を回転軸21の周りに回転させてもよい。
【0183】
スキャンラインが1本のLiDARセンサ20を用いる場合、地上に形成されるレーザパルス22の照射位置が1本のライン上に並ぶが、第2方向32に幅を有するエリアをスキャンすることができる。
【0184】
ある実施形態において、計測対象エリア50は、地表面59から複数の樹木56が立ち上がる森林54を含んでもよい。
【0185】
森林54に様々な角度からレーザパルス22を照射することができ、レーザパルス22は樹木56の樹冠56aだけでなく、樹木56の幹56b、下層植生58および地表面59等にも到達し、反射される。これにより、樹冠点群だけでなく幹点群、下層植生点群および地表面点群を含む3次元点群データを得ることができる。
【0186】
ある実施形態において、地表面59は斜面52を含み、計測対象エリア50の計測中、制御装置15は、無人ヘリコプター1を斜面52に沿って上昇または下降させてもよい。
【0187】
斜面52に広がる森林54に対して、斜め上方向からだけではなく、横方向からレーザパルス22を照射したり、斜め下方向からレーザパルス22を照射したりすることができる。レーザパルス22は樹木56の樹冠56aだけでなく、樹木56の幹56b、下層植生58および地表面59等にも到達し、反射される。これにより、樹冠点群だけでなく幹点群、下層植生点群および地表面点群を含む3次元点群データを得ることができる。
【0188】
ある実施形態において、計測対象エリア50の計測中、制御装置15は、複数の等高線62を横切る第1経路セグメント60aに沿って無人ヘリコプター1を飛行させてもよい。
【0189】
複数の等高線62を横切るように斜面52に沿って無人ヘリコプター1を飛行させることより、斜面52に広がる森林54に対して、斜め上方向からだけではなく、横方向からレーザパルス22を照射したり、斜め下方向からレーザパルス22を照射したりすることができる。
【0190】
ある実施形態において、計測対象エリア50の計測中、制御装置15は、LiDARセンサ20の回転軸21が等高線62に沿った方向を向いた状態で無人ヘリコプター1を飛行させてもよい。
【0191】
LiDARセンサ20の回転軸21が等高線62に沿った方向を向いた状態で斜面52に沿って無人ヘリコプター1が飛行することより、斜面52に広がる森林54に対して、斜め上方向からだけではなく、横方向からレーザパルス22を照射したり、斜め下方向からレーザパルス22を照射したりすることができる。
【0192】
ある実施形態において、計測対象エリア50の計測を行うときに無人ヘリコプター1を飛行させる飛行経路60は、平面視において、第1経路セグメント60aと交差する第2経路セグメント60bを含んでもよい。
【0193】
互いに交差する複数の経路セグメントを飛行することにより、計測対象エリア50に複数の方位からレーザパルス22を照射することができ、計測対象エリア50の詳細な3次元点群データを取得することができる。
【0194】
ある実施形態において、計測対象エリア50の計測を行うときに無人ヘリコプター1を飛行させる飛行経路60は、格子状の飛行経路60を含んでもよい。
【0195】
格子状の飛行経路60を飛行することにより、計測対象エリア50に複数の方位からレーザパルス22を照射することができ、計測対象エリア50の詳細な3次元点群データを取得することができる。
【0196】
ある実施形態において、LiDARセンサ20に加えて第2LiDARセンサ40が無人ヘリコプター1に設けられており、平面視において、第2LiDARセンサ40の回転軸41は、LiDARセンサ20の回転軸21とは異なる方向を向いていてもよい。
【0197】
回転軸21、41が互いに異なる方向を向いている二つのLiDARセンサ20、40からレーザパルス22、42を出射させることにより、より広い範囲に多くのレーザパルス22、42を照射することができる。
【0198】
ある実施形態において、計測対象エリア50の計測中、平面視において、第2LiDARセンサ40の回転軸41は、第1方向31よりも第2方向32に近い方向を向いており、機体進行方向31を前方向としたとき、LiDARセンサ20の回転軸21は左斜め前方から右斜め後方に臨んでおり、第2LiDARセンサ40の回転軸41は右斜め前方から左斜め後方に臨んでいてもよい。
【0199】
機体進行方向31に沿ったエリアにより多くのレーザパルス22を照射することができる。また、二つのLiDARセンサ20が互いに異なる方向にレーザパルス22を出射することにより、一方のLiDARセンサ20から多くのレーザパルス22を照射することが難しいエリアを、他方のLiDARセンサ20で補完することができる。
【0200】
ある実施形態において、計測対象エリア50の計測中、平面視において、第2LiDARセンサ40の回転軸41は、第2方向32よりも第1方向31に近い方向を向いていてもよい。
【0201】
機体進行方向31に対する横方向にも広い範囲にわたってレーザパルス22を照射することができる。
【0202】
ある実施形態において、無人ヘリコプター1は、内燃機関を動力源とする無人ヘリコプターまたは無人マルチコプターであってもよい。
【0203】
バッテリから供給される電力で動作する電動モータを動力源とする場合は、航続距離が短いため、計測対象エリア50が狭くなってしまう。一方、内燃機関を動力源とする場合は、航続距離が長いため、十分な計測対象エリア50を確保することができる。
【0204】
本発明のある実施形態に係る計測対象エリア50の計測を行う方法は、LiDARセンサ20が設けられた無人ヘリコプター1を飛行させて計測対象エリア50の計測を行う。計測対象エリア50の計測を行う方法は、無人ヘリコプター1の飛行経路60を設定すること、設定された飛行経路60に沿って無人ヘリコプター1を飛行させること、鉛直方向33から見た平面視において、無人ヘリコプター1の機体進行方向を第1方向31とし、第1方向31に垂直な方向を第2方向32としたとき、LiDARセンサ20の回転軸21が第1方向31よりも第2方向32に近い方向を向いた状態で、計測対象エリア50をLiDARセンサ20でスキャンさせることを実行する。
【0205】
LiDARセンサ20を用いた計測対象エリア50の計測中、LiDARセンサ20の回転軸21が第1方向31よりも第2方向32に近い方向を向いた状態で無人ヘリコプター1は飛行する。LiDARセンサ20は回転していることから、無人ヘリコプター1が進行する過程で、機体進行方向31に沿ったエリアに、レーザパルス22を密に照射することができる。これにより、例えば、LiDARセンサ20から複数のレーザパルス22が同時に出射される形態においては、機体進行方向31に沿ったエリアの同一箇所に、様々な角度からレーザパルス22を密に照射できる。その結果、機体進行方向31に沿ったエリアの詳細な3次元点群データを取得できる。さらに、LiDARセンサ20を回転させることにより、例えば、森林54を構成する樹木56に対し、様々な角度からレーザパルス22を照射することができる。
【0206】
飛行経路60に含まれる一つの経路セグメントの飛行において、機体進行方向31に沿ったエリアに繰り返しレーザパルス22を照射することができる。これにより、その一つの経路セグメントの飛行において高密度の3次元点群データを取得することができる。
【0207】
一つの経路セグメントの飛行においてLiDARセンサ20でスキャンしたエリアを、別の経路セグメントの飛行において再度詳細にスキャンしなくても、そのエリアの高密度の3次元点群データを取得することができる。
【0208】
計測対象エリア50内の同一の物体に対して、連続的にレーザパルス22を照射することができる。これにより、例えば樹木56の上空を飛行しながら計測するとき、樹木56に接近しながら計測して得られる点群データと、その樹木56から遠ざかりながら計測して得られる点群データとの間の、地理座標系上の位置ずれを小さくすることができる。
【0209】
ある実施形態において、飛行経路60は複数の経路セグメントを含み、上記方法は、複数の経路セグメントそれぞれを飛行中にLiDARセンサ20から出力されたセンサーデータを組み合わせて3次元点群データを生成することをさらに実行してもよい。
【0210】
一つの経路セグメントの飛行においてLiDARセンサ20でスキャンしたエリアを、別の経路セグメントの飛行において再度詳細にスキャンしなくても、そのエリアの高密度の3次元点群データを取得することができる。これにより、計測対象エリア50の高密度の3次元点群データを取得することができる。
【0211】
ある実施形態において、計測対象エリア50は斜面52の森林54を含み、無人ヘリコプター1の飛行経路60を設定するステップは、対象エリア内の等高線62データを参照し、複数の等高線62を横切る経路セグメントを含む飛行経路60を設定することを含んでもよい。
【0212】
複数の等高線62を横切るように斜面52に沿って無人ヘリコプター1を飛行させることより、斜面52に広がる森林54に対して、斜め上方向からだけではなく、横方向からレーザパルス22を照射したり、斜め下方向からレーザパルス22を照射したりすることができる。レーザパルス22は樹木56の樹冠56aだけでなく、樹木56の幹56b、下層植生58および地表面59等にも到達し、反射される。これにより、樹冠点群だけでなく幹点群、下層植生点群および地表面点群を含む3次元点群データを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0213】
本発明の技術は、無人航空機を利用して計測対象エリアの計測を行う技術分野に好適に利用され得る。
【符号の説明】
【0214】
1:無人ヘリコプター(無人航空機)、 2:メインボディ、 3:テールボディ、 4:機体、 5:メインロータ、 6:テールロータ、 7:ラジエータ、 8:エンジン、 9:発電装置、 10:コントロールパネル、 11:表示灯、 12:スキッド、 13:リモコン受信アンテナ、 15:飛行制御ボックス(制御装置)、 15a:GPSモジュール、 15b:加速度センサ、 15c:気圧センサ、 15d:地磁気センサ、 15e:超音波センサ、 15f:通信回路、 15g:信号処理回路、 15h:ROM、 15i:RAM、 15j:記憶装置、 15k:内部バス、 20:LiDARセンサ、 21:回転軸、 21a:回転軸方向、 22:レーザパルス、 23:ヘッド 24:レーザスポット、 25:ブラケット、 31:機体進行方向(第1方向)、 32:機体進行方向に垂直な方向(第2方向)、 33:鉛直方向、 40:LiDARセンサ(第2LiDARセンサ)、 41:回転軸、 41a:回転軸方向、 42:レーザパルス、 50:計測対象エリア、 52:斜面、 54:森林、 56、57:樹木、 56a:樹冠、 56b:幹、 58:下層植生 59:地表面 60:飛行経路、 60a:第1経路セグメント、 60b:第2経路セグメント、 62:等高線 66:飛行経路、 66a、66b:経路セグメント、 70:タブレットコンピュータ、 71:CPU、 72:メモリ、 73:通信回路、 74:画像処理回路、 75:ディスプレイ、 76:タッチスクリーンパネル、 77:通信バス、 80:基地局操縦装置、 90:地図データ、 100:計測システム
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