(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】圧縮スリーブを備えたインサートファスナー
(51)【国際特許分類】
F16B 37/04 20060101AFI20221226BHJP
F16B 13/06 20060101ALI20221226BHJP
F16B 43/00 20060101ALI20221226BHJP
F16B 37/00 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
F16B37/04 B
F16B13/06 Z
F16B43/00 Z
F16B37/00 C
F16B37/04 Q
(21)【出願番号】P 2020506806
(86)(22)【出願日】2018-08-16
(86)【国際出願番号】 US2018046818
(87)【国際公開番号】W WO2019036546
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-07-05
(32)【優先日】2017-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518030139
【氏名又は名称】ペン エンジニアリング アンド マニュファクチュアリング コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】PENN ENGINEERING & MANUFACTURING CORP.
【住所又は居所原語表記】5190 Old Easton Road,Danboro,PA 18916 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】マロニー,マイケル,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ベントリム,ブライアン,ジー.
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03651563(US,A)
【文献】特開2004-011876(JP,A)
【文献】特開2010-007771(JP,A)
【文献】実開昭55-147518(JP,U)
【文献】特開2012-026562(JP,A)
【文献】特開2006-297455(JP,A)
【文献】特表2020-505567(JP,A)
【文献】実公昭46-021295(JP,Y1)
【文献】特公昭48-019822(JP,B1)
【文献】実公昭48-028586(JP,Y1)
【文献】国際公開第2016/170835(WO,A1)
【文献】米国特許第04875815(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 37/04
F16B 13/06
F16B 43/00
F16B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)受け取りホールを有するパネル、および
b)2部品ファスナーを有し、この2部品ファスナーが
i)第1材料から形成され、かつ外面にローレットを備えたバレルを有する、全体として円筒形のインサート、
ii)このインサートの底端のフランジ、および
iii)前記第1材料よりも軟質の第2材料から形成され、全体として円筒形であって、変形可能なスリーブを有し、このスリーブが、前記フランジの上部に当接する底端、摩擦嵌めによって前記バレルの下部周囲に固着された底部分、および前記バレルの上部分から半径方向に離間した拡大内径をもつ上部分を有し、
前記2部品ファスナーを摩擦嵌めによって前記受け取りホール内に固着し
、
前記受け取りホールが底端壁を備えたブラインドホールであ
り、
前記スリーブの軸方向圧縮性変形によって前記インサートと前記パネルとの間の空間を埋め、かつ前記ローレット間の空隙を埋め、これによって前記インサートと前記パネルとの間の摩擦嵌めを強化
して、
前記の変形可能なスリーブが前記インサートと前記パネルとの間の空間全体を実質的に埋め
てあり、
前記インサートおよび前記スリーブが、前記パネルの上部と実質的に同じ高さであ
り、
前記受け取りホールの側壁が、前記スリーブの材料を受け入れるアンダーカットを有することを特徴とする集成体。
【請求項2】
a)受け取りホールを有するパネル、および
b)2部品ファスナーを有し、この2部品ファスナーが
i)第1材料から形成され、かつ外面にローレットを備えたバレルを有する、全体として円筒形のインサート、
ii)このインサートの底端のフランジ、および
iii)前記第1材料よりも軟質の第2材料から形成され、全体として円筒形であって、変形可能なスリーブを有し、このスリーブが、前記フランジの上部に当接する底端、摩擦嵌めによって前記バレルの下部周囲に固着された底部分、および前記バレルの上部分から半径方向に離間した拡大内径をもつ上部分を有し、
前記2部品ファスナーを摩擦嵌めによって前記受け取りホール内に固着し
、
前記受け取りホールが底端壁を備えたブラインドホールであ
り、
前記スリーブの軸方向圧縮性変形によって前記インサートと前記パネルとの間の空間を埋め、かつ前記ローレット間の空隙を埋め、これによって前記インサートと前記パネルとの間の摩擦嵌めを強化
して、
前記インサートの底部が前記受け取りホールの
前記底端壁に当接することを特徴とする集成体。
【請求項3】
前記受け取りホールの側壁が複数のアンダーカットを有する請求項
1に記載の集成体。
【請求項4】
前記パネルを第1金属で構成し、そして前記スリーブをこの第1金属よりも軟質な第2金属で構成する請求項
1あるいは請求項2に記載の集成体。
【請求項5】
前記スリーブをアルミニウムで構成する請求項
4に記載の集成体。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は2017年8月16日に出願され、“圧力スリーブインサート”を発明の名称とする仮特許出願第62/546,065号の優先権を主張する非仮特許出願である。この明細書の内容についてはここに援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本発明は金属ファスナー(なお、本明細書においては「ファスナー」を「ファスナー装置」ともいう。)に関する。より具体的には、中間スリーブまたはインサートを使用して、これを受け取りパネルのホールに取り付けるファスナーシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
クリンチ式ファスナー装置の場合、ファスナー装置とファスナー装置を装着するパネルとの間に硬度差を設定する必要がある。ファスナー装置がパネルよりも硬度があまり高くない場合、ファスナー装置のアンダーカット内にパネルの材料が流れないため、これを所定の位置にロックすることができる。パネルがファスナー装置よりも硬い場合には、クリンチ式ファスナー装置は損傷するため、クリンチを行うことができなくなる。
【0004】
この制限があるため、ネジを設けたインサートを硬いパネルに固定する一般的な方法では接着剤、半田付けや溶接を使用する。接着剤は面倒なもので、ファスナー装置を十分に固定する前に長い硬化時間が必要になる不具合が生じる。半田付けや溶接では、高温が必要になるため、集成体の外観や形態が損傷を受けやすい。従って、極めて硬い材料にも効果的に使用できるネジ式取り付け手段を提供することが求められ、また効果的かつ経済的に製造かつ使用できるこのようなファスナー装置の実現も求められている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、きわめて硬いパネルの孔に装着するネジを形成したプレスイン式ファスナー装置を包含する。プレスイン式ファスナー装置は従来と比較してトルクアウト性能およびプルアウト性能がすぐれている。プレスイン式ファスナー装置は簡単な2部品構成であり、一回の装着プレスストロークで簡単に集成かつ装着できる。
【0006】
好適な実施態様では、ネジ刻設インサートは比較的硬く、一端にローレットを切ったバレルを有し、かつ対向下端にフランジを有する。比較的軟質な材料の変形性スリーブをバレルに軸方向プレスによって予め集成しておく。平行な側部を備えたブラインド受け取りホールに装着した後、スリーブを軸方向に圧縮すると、これが膨張し、インサートと受け取りホールの側壁との間のスペースに入り込む。圧縮スリーブと受け取りホールの側壁との間に摩擦が発生するため、プレスイン式ファスナー装置がパネルからトルクアウト(torque out)することがなく、またプルアウト(pull out)することもない。
【0007】
別な好適な実施態様では、本発明はネジを切ったインサートおよび圧縮スリーブを有する2部品ファスナー装置を提供するものである。インサートは全体として円筒形であり、第1硬質材料からなる。このインサートはメネジを切った貫通ボアないし孔を有する。インサートは外面にローレットを切ったバレル、および下端部にフランジを有する。ローレットについては、軸方向に延びる歯を有するのが好ましい。
【0008】
圧縮スリーブは全体として円筒形であり、変形性を有し、そしてインサートの第1材料よりも軟らかい第2材料からなる。スリーブの底端は、フランジの上部に当接する。スリーブの底部分は摩擦嵌めによってバレルの下部分周囲に固着する。スリーブの上部分は大きな内径を有し、この内径はバレルの上部分から半径方向に離間する。
【0009】
スリーブの上部、インサートの上部およびフランジの底部については、面取り部(chamfers)を有するのが好ましい。フランジの外径は、圧縮スリーブの外径にほぼ等しい。スリーブの上端はインサートの上部を超えて上方向に延びているため、集成時に、スリーブの上部から出てくる材料が下向きに圧縮され、インサート周囲に冷間流れが流れ、最終的にインサートおよびこれが集成化されるパネルの上面の両者に同じ高さで取り付けられる。
【0010】
別な実施態様では、本発明はパネルおよび上記の2部品ファスナー装置を有する集成体を包含する。摩擦嵌めおよび適宜行う受け取りホール壁のアンダーカットとの連動係合によってファスナー装置をパネルの受け取りホールに固着する。受け取りホールとしてはブラインドホールを使用でき、このホールはインサートの底部に当接する底端壁を有する。インサートとパネルとの間の摩擦嵌めは、インサートとパネルとの間にあるスリーブの圧縮性変形によってさらに強くなり、変形したスリーブがインサートとパネルとの間の空間を実質的に埋める。適宜使用できる一つの実施態様では、パネルホールの側壁が一つかそれ以上のアンダーカットを有し、このアンダーカットが、圧縮時にスリーブからの材料流れを受け取る。このスリーブについては、パネルの材料よりも軟質のアルミニウムなどの金属で構成することが好ましい。
【0011】
さらに別な実施態様では、本発明は上記の2部品ファスナー装置をパネルに集成化(組み込む)する方法を包含するものである。まず、2部品ファスナー装置をパネルの受け取りホールに装着する。次に、スリーブの上部を下向きにプレスし、スリーブの底部をインサートフランジの上部に押し付け、スリーブと受け取りホールの壁部との間の空間に送り込む。スリーブは、その圧縮時に、ローレットの周囲で変形し、受け取りホールの側壁に当接する。プレスについては、スリーブ材料がインサートと受け取りホールの内壁との間の空間を実質的に埋めるまで、かつスリーブの上部がパネルの上部と同じ高さになるまで続けるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本発明の好適な実施態様に従って構成したファスナー装置の圧縮スリーブの側面図である。
【
図1B】本発明の好適な実施態様に従って構成したファスナー装置のインサートを示す側面図である。
【
図1C】
図1Aおよび
図1Bの圧縮スリーブおよびインサートを示す、本発明の好適な実施態様に従って構成したファスナー装置の横断面図である。
【
図2】
図1Cに示すファスナー装置の部分断面斜視図である。
【
図3-5】本発明の好適な実施態様における3つの異なる装着ステップにおけるホストパネルにおける
図1Cのファスナー装置の横断面図である。
【
図6】本発明の別な好適な実施態様に従って構成したファスナー装置の部分断面斜視図である。
【
図7】装着開始位置における装着用プレスパンチおよびファスナー装置の断面図である。
【
図8】装着段階にある装着用プレスパンチ、ファスナー装置および受け取りホール30の先端の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適な実施態様に従って構成したファスナー装置を
図1~
図5に示す。なお、このファスナー装置の全体を参照符号13で示す。2部品ファスナー装置は、全体として圧縮スリーブ9およびインサート11を有する。これらについては、
図1Cおよび
図2~5に示すように予め集成化しておく。圧縮スリーブ9については、
図1Aに分離して示し、そしてインサート11については、
図1Bに分離して示す。
【0014】
圧縮スリーブ9は全体として円筒形であり、上端9a、底端9b、外側壁9cおよび上部面取り部9dを有する。内側壁が、圧縮スリーブ9を貫通する軸方向ボアを形成する。
図1Cおよび
図3に明示するように、圧縮スリーブ9の内面は上部分17a、下部分17bおよび底部面取り部17cを有する。上部分17aは内径が下部分17bよりも大きい。面取り部17cの直径は、下部分17bから圧縮スリーブ9の底端9bにかけて漸増する。
【0015】
図1~
図5に示す好適な実施態様では、インサート11は円筒形バレル10を有し、このバレルは
図1Bに明示するように上端10a、底端10bおよび上部面取り部10cを有する。内側壁がインサート11を貫通するネジ付き軸方向ボアを形成する。ボアのネジ20は様々なオネジを設けたファスナー装置と協動するように設計される。側壁の外面にはローレットを設ける。ローレット14は上端10aから底端10bまで軸方向に延び、バレル10円周全体に位置する。以下に説明するように、ローレットがあるため、インサート11と圧縮スリーブ9との間で回転が生じることはない。
【0016】
バレルの底端10bは、ローレット14の頂点14aにおいてインサートの直径よりも大きい最大径を有する半径方向フランジ12を有する。このフランジは上面12a、底面12b、円筒形外面12cおよび底部面取り部12dを有する。
【0017】
圧縮スリーブ9については、ローレット14と圧縮スリーブ9の内面の下部分17bとの間の締り嵌めによってインサート11のバレル10に保持する。
図1Cおよび
図2~
図5に集成化した圧縮スリーブ9およびインサート11を示す。
図1Cおよび
図2に、ホストパネル30の受け取りホール32に装着する前の予め集成化した2部品ファスナー装置13を示す。
図3~
図5に、ホストパネル30の受け取りホール32に挿入しかつ装着したファスナー装置13を示す。
【0018】
図1C、
図2および
図3を参照して説明を続けると、圧縮スリーブ9およびインサート11を集成すると、ローレット14の谷と圧縮スリーブ9の内面17の上部分17aとの間に隙間19が生じる。
図1Cは、圧縮スリーブ9の上部分17aの内径が、ローレット14の頂点14aにおいてインサート11の直径にほぼ等しい実施態様を示す断面図である。このように、これらは図示の界面において当接する。対向するローレット14の谷の底部14bから直接取った断面図である
図1Cおよび
図3における参照符号14はローレット14の固体面を指す。なお、
図2に明示するように、これら対向する(
図3の紙面に直交する軸に関して)ローレット前後のローレット(ローレットの谷)間に空隙19がある。
【0019】
対照的に、インサート11の下部分17bの内面の直径は上部分17aよりも小さく、かつローレット14の底部14bにおいてインサート11の外径に近似していてもよいため、圧縮スリーブがローレット14に圧力嵌めでき、圧縮スリーブ9の下部内面17bに埋まることになる。
【0020】
図1Cおよび
図3に、圧縮スリーブ9からの材料が各ローレットの谷の底部まで完全に冷間変形した実施態様を示す。なお、他の実施態様では、圧縮スリーブ9からの冷間変形材料が部分的にのみローレットの谷を埋めるが、これは本発明を逸脱するものではない。例えば、
図4に対向ローレット頂点14aの見えない部分を点線で示す。
図4に、ローレット14全体ではなく、頂点14a上に圧縮スリーブがどのように冷間変形するかを示す。
【0021】
圧縮スリーブの上部17aにおける大きな内径については、圧縮スリーブおよびインサートの製造トレランスに対応できるように設定する。例えば、空隙19がなく、圧縮スリーブが過大な寸法を有している場合、空隙19内で完全に圧縮しない結果、スリーブ材料がパネルから突出することになる。同様に、インサートの上部面取り部10cも付加的な容積を与えるため、ここに過剰な圧縮スリーブ材料が冷間変形する可能性がある。従って、好適な実施態様では、装着前には、パネル30から突出している圧縮スリーブ9の容積については、ローレット14と圧縮スリーブ9の内面との間にある空隙19、および適宜設けるアンダーカット33を含めた圧縮スリーブ9の外面とパネルの受け取りホールの壁部39との間にある空間の容積全体未満に設定しておく必要がある。それぞれの全容積については理論的には等しく設定することができるが、ローレットの谷の底部14bおよび適宜設けるアンダーカット33の角部への冷間変形が完全でないため、圧縮スリーブ9の突出部分の容積については、空間の全容積未満に抑える必要がある。
【0022】
図3、
図4および
図5は底端壁35を有するホストパネル30のブラインド受け取りホールへの装着時の3つの異なる連続ステップにおけるファスナー装置13を示す。最初のステップで、ファスナー装置13を
図3に示す方向でブラインドホールに挿入する。好適な実施態様では、インサート11およびスリーブ9の寸法については、圧縮スリーブ9がパネル表面の受け取りホールから部分的に突出するように設定する。突出部があるため、最初にパネルおよび/またはインサートと同じ高さにあるスリーブと比較した場合よりも軸方向圧縮荷重を印加しやすい。
図3に示す好適な実施態様では、インサート11の寸法については、その軸方向長さが受け取りホールの深さに等しくなるように設定する。インサートの底部に面取り部12dがあるため、ファスナー装置を受け取りホールに簡単に導くことができる。
【0023】
次のステップで、
図7に細部を示す専用パンチ34をファスナー装置13に係合させ、圧縮スリーブ9を下向きにプレスする。装着時、スリーブ9の上面9aが、パネルの上部および本実施態様ではバレル10の上面10aであるインサート11の上部に対して同じ高さになるか、あるいは僅かに低くなるまで、パンチ34が下向きにファスナー装置13をプレスする。上述したように、装着前の状態でまずパネル30から突出している圧縮スリーブ9の金属容積については、集成体における全空間の容積以下に設定しておく必要がある。このように設定すると、圧縮された圧縮スリーブ9の最終構成が、装着時に、パネル30の上面と高さが同じになるか、あるいは僅かに低くなる。圧縮された圧縮スリーブ材料内に発生する圧力によってファスナー装置13を受け取りホール内に保持できる。
【0024】
図4は、予めパネルから上に突出していた圧縮スリーブ材料がどのようにしてインサート11のローレット14間において下向きに、かつ装着ホール32の内壁39に対して押圧されるかをシミュレーションした横断面図である。上部面取り部9dが圧縮スリーブ材料に内向きにバイアスをかけ、インサート11に向けてこれを崩す。圧縮スリーブからの材料が、上部分17aと下部分17bとの間の肩部よりも圧縮スリーブの上部付近においてより内向きに膨れだす。
図4には、圧縮スリーブからの材料がどのようにして適宜設けるアンダーカット33に膨れ出すかも示す。プルアウト抵抗を強めるためには、スリーブ材料がローレットの谷またはアンダーカット33を完全に埋める必要はない。
【0025】
図5は、適宜設けるアンダーカット33、ローレット14、フランジ12の上面12a、および受け取りホールの側壁39に機械的に係合している圧縮スリーブ9の最終状態を示す別な図面である。この機械的な係合の組み合わせによってインサート11がプルアウトやトルクアウトすることがなくなる。
【0026】
図6は、
図3~
図5に示す受け取りホールと同じであるパネル30の受け取りホール32の一つの好適な実施態様を示す図面である。受け取りホール32が側壁39に適宜設けるアンダーカット33を有するため、アンダーカット33内に冷間変形する金属のせん断強度によってプルアウトに抵抗する力が強くなる。この実施態様では、アンダーカット33をより小さな複数のアンダーカット33に分割してあるため、トルク抵抗がより強くなる。
【0027】
図7は、本発明の好適な実施態様に従って構成した装着用プレスパンチを示す横断面図である。
図8は、
図7から取った拡大断面図であり、ファスナー装置13に装着衝撃が最初に加わったときのパンチ34の先端38のクローズアップを示す図であり、また受け取りパネル30の横断面図でもある。装着時、真空をパンチ34のコアに印加し、これによって先端にファスナー装置13を保持する。パンチ本体内のバネ37がピストン36をプレスし、ファスナー装置13を装着ホールの底部35に固着する。パンチ34が下降し、
図3~
図5に示すように圧縮スリーブ9を変形させると、バネ37が圧縮し、ディスプレーサーの先端38に下向き力が働くため、スリーブ9を上記のように変形させ、これによってファスナー装置13をロックする。このようにして、2つの予め集成化された部品(圧縮スリーブ9およびインサート11)が、プレスパンチ34の一回のストロークで受け取りホールに装着することができる。
【0028】
圧縮スリーブ9については、任意の永久的に変形可能な材料から構成できる。好適な実施態様では、圧縮スリーブは装着後無理のない温度で硬化できる材料から構成でき、従ってインサートのプルアウト抵抗およびトルクアウト抵抗がかなり強くなる。例えば、7075-T4アルミニウムがスリーブ材料の一つの好適な材料である。このアルミニウムは装着後、比較的低い温度で熱処理によってより強力なT6状態になるからである。別な実施態様では、取り付けホールの底部にテーパーを形成して、装着すべきインサートにマッチさせてもよい。
【0029】
当業者には明らかなように、以上説明してきた実施態様には多くの改変や改造などが可能である。従って、実施態様の目的は例示のみであると理解されるべきである。これら実施態様の改変や改造などは全て、特許請求の範囲およびこの範囲の法的な等価物によって決定するべき発明の範囲および精神内に包摂されるものである。
【符号の説明】
【0030】
9:圧縮スリーブ
9a:上端、上面
9b:底端
9c:外側壁
9d、10c:上部面取り部
10:円筒形バレル
10a:上端、上面
10b:底端
11:インサート
12:半径方向フランジ
12a:上面
12b:底面
12c:円筒形外面
12d、17c:底部面取り部
13:ファスナー装置
14:ローレット
14a:頂点
17:内面
17a:上部分
17b:下部分
19:隙間、空隙
30:ホストパネル
32:受け取りホール、装着ソール
33:アンダーカット
34:専用パンチ、プレスパンチ
35:底端壁、底部
36:ピストン
37:バネ
38:先端
39:壁部、側壁