(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】選択的液体冷却による付加製造
(51)【国際特許分類】
B29C 64/245 20170101AFI20221226BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20221226BHJP
B29C 64/205 20170101ALI20221226BHJP
B29C 64/232 20170101ALI20221226BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20221226BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221226BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20221226BHJP
【FI】
B29C64/245
B29C64/106
B29C64/205
B29C64/232
B29C64/295
B33Y10/00
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2020511157
(86)(22)【出願日】2018-08-23
(86)【国際出願番号】 US2018047725
(87)【国際公開番号】W WO2019040732
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-07-29
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518276368
【氏名又は名称】エバプコ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Evapco, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】デイビー・バダー
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-528109(JP,A)
【文献】特表2018-504300(JP,A)
【文献】国際公開第2017/008789(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/126796(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/10,64/106,64/124,64/20,
64/205,64/232,64/245,64/295,
64/30,64/40
B33Y 10/00,30/00,40/00,50/00,
70/00,80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造装置であって、
ビルドトレイのそれぞれの領域を独立して交互に加熱および冷却するように構成された熱交換要素のアレイを備えたビルドトレイと、
前記ビルドトレイの表面上で上下する可動プラテンと、
前記ビルドトレイと前記可動プラテンとの間に移動可能に取り付けられ、前記ビルドトレイに熱可塑性材料の連続層を塗布するように構成された、加熱されたリコータ本体と、を備え、
前記熱可塑性材料の連続層は、前記熱可塑性材料を冷却
することにより、前記ビルドトレイの前記熱交換要素によって交互に固化
され、多層部品の各層を作成し、次に、部分的に液化して、前記可動プラテンが前記ビルドトレイから離れると、固化した熱可塑性材料を前記ビルドトレイから解放する、付加製造装置。
【請求項2】
前記付加製造装置は、任意の方向で動作するように構成され、前記多層部品を構築するために重力を必要としない、請求項1に記載の付加製造装置。
【請求項3】
前記熱交換要素は、ペルチェ加熱/冷却接合部である、請求項1に記載の付加製造装置。
【請求項4】
前記付加製造装置は、層間に熱可塑性樹脂で前記ビルトトレイを補充するためのリコータをさらに備える、請求項1に記載の付加製造装置。
【請求項5】
前記可動プラテンは、加熱または冷却されるように構成されている、請求項1に記載の付加製造装置。
【請求項6】
前記付加製造装置は、前記ビルトトレイおよび可動プラテンを囲む温度制御された筐体をさらに備える、請求項1に記載の付加製造装置。
【請求項7】
熱可塑性物品の製造方法であって、
a)それぞれがビルドトレイのそれぞれの領域を独立して加熱または冷却するように構成された熱交換要素のアレイを含むかまたは接触する基部を有するビルドトレイ内の液体熱可塑性材料の層を加熱するステップと、
b)前記液体熱可塑性材料の表面に冷却されたプラテンを配置し、加熱/冷却要素マトリックスと前記プラテンの両方の間に液体界面を作成するステップと、
c)熱交換要素の前記アレイに、物品が形成される場所に対応する前記ビルドトレイの領域を冷却させ、前記液体熱可塑性材料を選択領域で冷却および固化させて、物品の第1の層を作成するステップと、
d)熱交換要素の前記アレイに、前記プラテンが上昇したときに前記ビルドトレイから解放できるように十分な冷却固化熱可塑性材料の薄層を液化させるステップと、
e)前記ビルドトレイに液体熱可塑性樹脂の新しい層を補充するステップと、
f)前記プラテンを物品の第1の層と一緒に下げて、物品の第1の層の底部が液体熱可塑性樹脂の新しい層と接触するようにするステップと、を含み、
完全な物品が形成されるまで、ステップa)からf)を繰り返す、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジニアリング熱可塑性樹脂を使用して、高速かつ高解像度で付加製造することが難しいことはよく知られている。FDM(溶融堆積モデリング)付加製造は、エンジニアリングポリマを使用した生産製造への道を歩んできたが、高解像度の部品では低速に悩まされている。大きな押出ノズルを使用してはるかに高速に印刷できるFDMマシンは、速度のジレンマを改善したが、低解像度の部分に悩まされている。光硬化ポリマを使用したDLP(デジタル光処理)付加製造は、高解像度での製造速度の向上に大きな期待を示しているが、生産製造には高すぎるポリマコストと、光の存在下で劣化する可能性のあるポリマに悩まされている。既存のすべての付加製造技術は、レーザ、放射線、光などを使用して、液体にエネルギを加えて重合させる。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、液化熱可塑性樹脂の層の選択的冷却を使用して、高解像度の部品を高速で製造することにより、従来技術によって提示された課題を解決しようとするものである。本発明は、液体ポリマからエネルギを除去して固化するという点で従来技術とは異なる。
【0004】
本発明の一実施形態によれば、加熱された液化熱可塑性樹脂の連続層は、それぞれが選択的かつ独立して加熱および冷却され得る熱交換要素のマトリックスを有するかまたは接触するビルドトレイに配置される。これらの要素は、ペルチェ熱電効果を使用して、冷却モードと加熱モードの間ですばやく動作する。ペルチェ型加熱/冷却接合部は、これらの要素として使用できる装置の一例である。これらの接合部は、現在、3mm2の小さなセルで産業に利用可能である。現在、最小の操作単位サイズであるペルチェPおよびN接合「ペレット」は、ミリメートル単位まで生産できる。また、薄膜設計により、すぐにマイクロメートル単位の加熱/冷却ゾーンを作成できるようになると予想される。これにより、本発明は、今日の最高のDLPプリンタでさえ解像度を超えることが可能になる。
【0005】
本発明の方法に係る第1のステップでは、熱可塑性樹脂の層がビルドトレイに配置され、マトリックス内のすべての要素がビルドトレイを加熱して、上の熱可塑性樹脂の層を液化し、それらと接触させる。次に、冷却されたプラテンが液化熱可塑性樹脂上に下げられ、加熱/冷却要素マトリックスとプラテンの間に液体界面が作成される。次に、加熱/冷却要素マトリックスを制御して、部品が形成される要素のみを冷却する。これにより、選択された領域の熱可塑性樹脂が固化するまで冷却して、製造される部品の第1の層を形成し、冷却されたプラテンに融合する。次に、加熱/冷却要素マトリックスを加熱して、新しく固化した第1の層の下部にある冷却熱可塑性樹脂の非常に薄い層を液化し、そのため、プラテンが上昇し、トレイに液体熱可塑性樹脂が再充填されると、冷却および固化した第1の層がビルドトレイから解放される。プラテン上に残っているのは、形成される部品の第1の層である。次に、プラテンを熱可塑性樹脂の液化層の上に下げるが、ほんの少しだけ高くなる。次に、前の冷却層の下側に新しい層を形成できる。プロセスは、完全な部品が形成されるまで層ごとに続けられる。
【0006】
本発明は、水氷を含む液相から固相へと通過するほぼ全ての材料から物体を作るために使用することができる。
【0007】
本発明の好ましい実施形態の以下の説明は、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る装置の平面図を示している。
【
図2b】ビルドトレイが、ある量の液体熱可塑性樹脂で満たされている、本発明の実施形態に係るコーティングプロセスを表している。
【
図3】ビルドトレイが液化熱可塑性樹脂のフィルムで満たされている、
図1および
図2に示された装置の断面図を示している。
【
図4】冷却され固化した熱可塑性樹脂の部分が部品の第1の層を形成している、
図1~
図3の装置の断面図を示している。
【
図5a】プラテンが上方に持ち上げられると、部品の第1の固化層をビルドトレイから解放できる、トレイの底部に液化熱可塑性樹脂の薄層を備えた
図1~
図4の装置の断面図を示している。
【
図5b】ビルドトレイが、ある量の熱可塑性樹脂で再充填される、本発明の実施形態に係る再コーティングプロセスの図である。
【
図6】プラテンが追加量だけ持ち上げられ、部品の第1の層を保持したまま、ビルドトレイに別の量の液体熱可塑性樹脂を再充填して、部品の次の層を形成する、
図1~
図5の装置の断面図を示している。
【
図7】ビルドトレイ内の液体熱可塑性樹脂の第2の部分が冷却されて固化され、部品の第2の層を形成する、
図1~
図6の装置の断面図を示している。
【
図8】プラテンが上方に持ち上げられると、部品の第2の固化層をビルトトレイから解放できるようになり、第2の層の上部が第1の層の底部に接着する、液化熱可塑性樹脂の薄層がトレイの底部にある、
図1~
図7の装置の断面図を示している。
【
図9】部品の第3層を形成するために選択的に冷却されている液化熱可塑性樹脂の第3の量で満たされたビルトトレイを備えている、
図1~
図8の装置の断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1および
図2aは、本発明の実施形態に係る装置の平面図および断面図であり、プラテン1は、ペルチェ型加熱/冷却接合部3a~3nのアレイを含むまたは接触する基部を有するビルドトレイ2上に配置されている。ビルドトレイ2には、ファン2dを介してペルチェ接合部3a~3nとの間で熱を伝達するヒートシンク2aも含まれている。加熱されたリコータ本体2cは、液化熱可塑性樹脂2cの供給を保持する。プラテン1は、本発明の様々なステップに従ってビルドトレイ上で上下させることができる。
【0010】
図2bは、リコータ本体2bがビルドトレイ2を横切って移動し、液化熱可塑性樹脂2cを薄いフィルム4の形でビルドトレイ2に堆積させるときの再コーティングプロセスを示している。ヒートシンクとファンは、簡略化のために示されていない。
【0011】
図3を参照すると、
図2bの液化熱可塑性樹脂のフィルムでビルトトレイが満たされた後の、本発明に係る方法の第1のステップが示されている。簡略化のため、リコータは、示されていない。プラテン1は、その底面が熱可塑性フィルム4の上面と接触するように調整される。熱可塑性フィルム4は、ペルチェ型加熱/冷却接合部3a~3fによって均一に加熱される。プラテン1は、熱可塑性樹脂の凝固温度以下で冷却される。
【0012】
図4に示す次のステップでは、熱可塑性フィルム4の一部がペルチェ型加熱/冷却接合部3d~3fによって液体状態まで加熱され続け、熱可塑性フィルム4の他の部分がペルチェ型加熱/冷却接合部3a~3cによってその固体状態以下に選択的に冷却される。それによって作成された固体ゾーン5a~5cは、付加的に製造される部品の第1の層になる。プラテン1は、熱可塑性樹脂の凝固温度以下で冷却され続ける。
【0013】
製造される部品の第1の層が固化したら、加熱/冷却要素マトリックス全体に付勢して熱可塑性材料を加熱し、固化した第1の層とビルドトレイの底部との間に薄い液体ゾーンを作成して、第1の層を可能にする冷却プラテン1が上方に持ち上げられると、ビルドトレイから分離される。より具体的には、熱可塑性フィルム4は、ペルチェ型加熱/冷却接合部3d~3fによって液体状態まで加熱され続ける。熱可塑性フィルム4は、ペルチェ型の加熱冷却接合部3a~3cによってその液体状態以上に選択的に加熱されて、薄い液体ゾーン6a~6cを生成する。この時点で、プラテン1はトレイ4の液体から固体ゾーン5a~5cを持ち上げ始める。プラテン1は、熱可塑性樹脂の凝固温度以下で冷却され続ける。
【0014】
図5bは、
図2bのように、熱可塑性材料が印刷される物体によって消費されるときにビルドトレイを補充するために全ての層の間に発生する再コーティングステップを示している。プラテン1を持ち上げて、リコータ本体2bを清掃する。リコータ本体2bは、ビルドトレイ2を横切って移動し、液化熱可塑性樹脂2cを薄いフィルム4の形でビルドトレイ2上に堆積させ、固化ゾーン5a~5cを除去することにより枯渇した液体を置換する。
【0015】
図6に示す後続のステップで、プラテン1は、固体ゾーン5a~5cをトレイ4の液体の表面まで下げ、プラテン1が熱可塑性樹脂の凝固温度以下で冷却され続けるため、中間ゾーン5abと5bcは固体ゾーン5a~5cの間で固化して部品の第1の層を完成させる。熱可塑性フィルム4は、ペルチェ型加熱/冷却接合部3a~3fによって液体状態まで加熱され続ける。
【0016】
その後、
図7に示すように、プロセスが繰り返される。マトリックス内の様々な加熱/冷却要素を付勢して熱可塑性液体を冷却し、他の要素を付勢して熱可塑性液体を加熱し、製造される部品のビルドパターンに従って、第1の層が作成されたのと同じ方法で部品の第2の層を作成する(
図4)。
【0017】
部品の第2/後続の層が形成/固化すると、マトリックスのすべての加熱/冷却要素がビルドトレイ内の熱可塑性材料を加熱し、第1の層がビルトトレイから分離されたのと同じ方法で、プラテンを部品の固化部分と一緒に持ち上げてさらに別の層のためのスペースを空けることができるように、第2/後続の層の下部とビルドトレイとの間に薄い層を作成する(
図5)。
図7では、要素3a、3b、3cが冷却されていたが、プラテンが部品をビルドトレイから持ち上げてスペースを空けることができるように、薄い液体ゾーン6d、6e、6f(
図8)を作成するのに十分な加熱に切り替えられるトレイの補充とさらに別の層の作成(
図9を参照)。再コーティングが行われ、固化ゾーン6a~6cを除去することで枯渇した熱可塑性液体4が置き換えられる。
【0018】
このプロセスは、部品に必要な数の層ができるまで続く。