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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】印刷基材の処理
(51)【国際特許分類】
   G03G 7/00 20060101AFI20221226BHJP
   G03G 9/12 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
G03G7/00 101B
G03G9/12 311
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020514662
(86)(22)【出願日】2018-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 US2018032572
(87)【国際公開番号】W WO2018213191
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/507,741
(32)【優先日】2017-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519408962
【氏名又は名称】ソレニス・テクノロジーズ・エル・ピー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・エフ・バーネル
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-315670(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0245651(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0282737(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0031615(US,A1)
【文献】国際公開第2014/160604(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02426176(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 7/00
G03G 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも1つの表面への画像の付着力を向上させる方法であって、
1つ以上のポリマーを含む組成物を表面の一部に適用することにより、表面の少なくとも一部を処理する工程であって、前記1つ以上のポリマーが、ビニルピロリドン、オキサゾリン含有モノマー、N-ビニルピペリジノン、N-ビニルカプロラクタム、及びこれらの組み合わせの群から選択されるモノマーから生成される、工程;
組成物を基材に適用した後にこの組成物を乾燥させて、処理された基材を形成する工程;及び
画像を、電子写真印刷機で液体トナー技術を利用して、処理された基材上に印刷する工程;
を含、方法。
【請求項2】
記1つ以上のポリマーが、2-エチル-2-オキサゾリン及び/またはメチルオキサゾリンから生成され、前記組成物が、前記1つ以上のポリマーを、当該組成物の乾燥質量に基づく少なくとも約50%の量で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つ以上のポリマーの各々が、第三級アミド基を含む少なくとも1つの反復単位を含み、(i)第三級アミド基の窒素原子に結合した炭素原子の少なくとも1つは、これに結合した2つまたは3つの水素原子を有し、(ii)第三級アミド基の窒素は、-CH、-CH2、または-CH3基に結合したカルボニル基に結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上のポリマーが、2-エチル-2-オキサゾリンから生成されたホモポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上のポリマーが、ポリ(2-メチルオキサゾリン)である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
印刷受容コーティングを含む表面処理された基材であって、前記印刷受容コーティングが基材の少なくとも片側の少なくとも一部にコーティングされ、前記印刷受容コーティングは1つ以上のポリマーを含む基材であって、前記1つ以上のポリマーが、ビニルピロリドン、オキサゾリン含有モノマー、N-ビニルピペリジノン、N-ビニルカプロラクタム、及びこれらの組み合わせの群から選択されるモノマーから生成される、基材;及び
前記印刷受容コーティングの少なくとも一部の上の画像であって、前記画像は印刷受容コーティングに電子写真印刷機で液体トナー技術を利用して印刷された画像;
を含む印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年5月17日に出願された米国仮出願第62/507,741号に対する優先権を主張し、その全体を参照により本明細書に組み込むこととする。
【背景技術】
【0002】
現在開示されている方法及び製品は、一般に、基材の少なくとも1つの表面への液体トナーの付着力を強化する方法に関し、(i)印刷可能な基材を印刷直前にポリマーを含む組成物で処理する工程;(ii)処理された基材を乾燥させる工程;及び(iii)処理された基材上に液体トナーインクを使用して画像を液体電子写真印刷する工程を含む。本開示はまた、一般に、こうした方法により製造されたプリント基板に関する。
【0003】
液体電子写真(LEP)印刷は、基材上に印刷するために、乾燥粉末トナーを使用するのではなく、液体インクを使用する。LEP印刷機の一般的な例は、HP(登録商標)デジタルIndigo(商標)印刷機である。LEP印刷で使用される液体インクのトナー粒子は、十分に小さいため、LEP印刷された画像は、例えば紙基材の表面粗さ/光沢を覆い隠さない。LEP印刷で使用される液体インク(本明細書では「インク」、「液体トナー」、または「LEPインク」とも呼称)は、約1から2ミクロンの範囲の小さな顔料粒子の非水性液体中の懸濁液である。HP(登録商標)ElectroInk(登録商標)は、液体電子写真印刷に一般的に使用される液体インクである。顔料粒子とは、ポリマー中に分散された顔料を意味し得る。LEP印刷は、最高のデジタル印刷品質の画像を比較的高速で提供すると考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、LEP印刷画像は、乾式トナープロセスを利用する電子リプログラフィー印刷方法を使用して印刷された画像並びに基材に、しばしば付着しないことが判明している。したがって、LEP印刷プロセスにより、LEPインクの基材への付着力を強化する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、基材の少なくとも1つの表面への画像の付着力を高める方法が提供される。この方法は、以下に限定されるものではないが、1つ以上のポリマーを含む組成物を表面の一部に適用することにより、表面の少なくとも一部を処理する工程を含む。この方法は、以下に限定されるものではないが、組成物を基材に適用した後にこの組成物を乾燥させて処理済み基材を形成する工程をさらに含む。この方法は、以下に限定されるものではないが、電子写真印刷機から液体トナー技術を利用して処理された基材上に画像を印刷する工程をさらに含む。基材は、印刷前の約5分以内に処理され乾燥される。本明細書では印刷物も提供される。印刷物は、以下に限定されるものではないが、印刷受容コーティングを含む。印刷受容コーティングは、基材の少なくとも片側の少なくとも一部にコーティングされる。印刷受容コーティングは、以下に限定されるものではないが、1つ以上のポリマーを含む。印刷物は、以下に限定されるものではないが、印刷受容コーティングの少なくとも一部の上の画像をさらに含む。画像は、印刷受容コーティングに、電子写真印刷機で液体トナー技術を利用して印刷される。基材は、画像が印刷される前の約5分以内にコーティングされる。
【0006】
以下の詳細な説明は本質的に単なる例示であり、本明細書に記載される主題の開示または用途及び使用の限定を意図するものではない。さらにまた、前述の背景または以下の詳細な説明で提示される理論による拘束を意図しない。
【0007】
さらに、以下の説明は、本開示の完全な理解を提供するために、材料及び寸法などの特定の詳細を提供する。しかしながら、当業者は、これら特定の詳細を使用せずに本開示を実施し得ることを理解するであろう。実際、本開示は、印刷業界で従来使用されているプロセス、製造、または制作技術と併せて実施可能である。さらにまた、以下のプロセスは、本開示による画像の付着力を高めるための組成物を含む基材を形成するための完全なプロセスフローではなく、工程を説明するのみである。
【0008】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、または「the」は、特記のない限り1つ以上を意味する。「または」なる語は、接続的または分離的である。「包含する」、「包含」、「含有する」、「含有」などの制限のない語は、「含む」を意味する。本明細書及び特許請求の範囲を通して数値に関して使用される「約」なる語は、正確な、当業者になじみのある許容可能な差を示す。一般に、こうした精度の差は±10%である。したがって、「約10」は9から11を意味する。量、材料の比率、材料の物理特性、及び/または用途を示す本明細書中の全ての数値は、明示的に特記のある場合を除き、「約」となる語で修飾されていると理解する必要がある。本明細書で使用される通り、本開示に記載される「%」は、特記のない限り質量パーセントを指す。本明細書で使用される通り、「実質的に含まない」という語句は、組成物が特定の材料/成分をほとんど含まないこと、例えば、約1質量%未満、0.5質量%未満、または0.1質量%未満、もしくは特定の成分の検出可能なレベル未満を含むことを意味する。特記のない限り、ポリマーの分子量は重量平均分子量を指す。
【0009】
本明細書で使用される「液体電子写真印刷」は、「LEP印刷」、「液体トナー粒子を用いる電子リプログラフィー印刷」、または「液体トナー粒子を用いたゼログラフィー印刷」と互換的に使用でき、これら全てが、例えば、HP(登録商標)デジタルIndigo印刷機及びプロセスを含む。さらにまた、本明細書で使用される液体電子写真印刷とは、リソグラフィとして既知のオフセット型印刷プロセスを参照も包含もせず、その全体が本明細書に組み込まれるAlex Glassman, Printing Fundamentals, TAPPI Press, 1985で詳細に検討されている。
【0010】
当業者によって理解されるように、本明細書に開示される液体電子写真印刷方法は、例えば、LEP印刷機及びデジタルLEP印刷機とも呼称される液体電子写真印刷機を使用する。LEP印刷機のよく知られた商業的な例は、HP(登録商標)デジタルIndigo印刷機であり、Indigo印刷機またはその変形とも呼称される。
【0011】
本明細書で使用される「ポリマー溶液」なる語は、ポリマーまたはポリマーの一部が水またはアルカリ性もしくは酸性の水溶液に可溶であることを意味する。
【0012】
「レオロジー調整剤」とは、溶液の粘度または溶液の粘度対せん断応答を変化させる化学品を意味する。
【0013】
本明細書中に特記のない限り、本開示中で使用される「ポリマー」なる語は、1つ以上の異なるモノマー単位を含むポリマーであり、これは、例えば、コポリマー及びターポリマーを包含することができる。本開示で使用される1つ以上のポリマーは、ポリマー溶液である。
【0014】
本明細書で使用される「コーティング」なる語は、基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に適用される材料のフィルムまたは均一な塗布であり、基材及び/またはその上に印刷される画像の印刷品質を向上させるための基材(例えば、紙基材及び/またはプラスチック含有基材)のコーティングに有益であると当業者に知られた1つ以上の成分を含むことができる。しかしながら、「コーティング紙」に適用されるコーティングは、David Saltman, et al., Pulp&Paper Primer, 2nd Edition, TAPPI Press(1998)の、以下に限定されるものではないが、例えば24~25頁に定義される、フィラーとバインダーの組み合わせで表面を処理された紙の意味を有し、前記文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
本開示は、他の手段による印刷の準備ができているが、その後、実施態様では印刷の直前に組成物を塗布することによって変性されて、液体トナー印刷画像の付着力が改善された基材の処理に関する。例えば、基材が紙である場合には、組成物は、紙が抄紙機から取り除かれた後に紙製品に適用される。組成物は1つ以上のポリマーを含み、ここで、1つ以上の全ポリマーは、乾燥質量で、組成物の約50%超、あるいは70%超を構成する。この処理は、ほとんどの場合印刷機での印刷プロセスの一部として行われる。驚くべきことに、この処理に使用される組成物は、印刷画像の所望の付着力を提供するために、本開示に使用される1つ以上のポリマーが添加されたバインダーを要しないことが判明している。さらにまた、本開示で使用される1つ以上のポリマーは、印刷プロセスの直前または印刷プロセスの一部としても基材に適用されてもよく、1つ以上のポリマーの総量は、乾燥質量で、組成物の約50%超、あるいは約70%超であり、かくして取り扱いが容易であり、印刷の準備ができた基材を処理して画像の付着力を向上させ得る便利なプロセスを提供する。本開示は、基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に印刷された液体トナーインクの付着力を、デジタルLEP印刷機を使用して、高める方法を提供する。本開示はまた、現在開示されている方法により製造された1つ以上の印刷製品を提供する。
【0016】
本開示は、基材の少なくとも1つの表面への液体トナーの付着力を強化する方法であって、(i)印刷可能基材を、印刷前に、実施態様では印刷前の約5分以下または印刷前の約1分以下、または約30秒以下で、1つ以上のポリマー及び任意にレオロジー調整剤を含む組成物を適用することにより処理する工程、(ii)組成物を、この組成物を基材に適用した後に乾燥させて、処理された基材を形成する工程、(iii)画像を、前記処理された基材に、液体インクを使用して液体電子写真印刷する工程を含む方法を提供する。本開示はまた、一般に、こうした方法により製造されたプリント基板にも関する。
【0017】
組成物は1つ以上のポリマーを含み、前記1つ以上のポリマーは反復単位を含み、ここで前記反復単位は、局在化し強度に負電荷を帯びた双極子(例えばカルボニル基)を有し、強度に正電荷を帯びた双極子を有しない。本明細書で使用される、「局在化し強度に負電荷を帯びた双極子」とは、反復単位の構造中に官能基、例えばカルボキシル基が存在することを意味し、本明細書では「強度」とは2デバイより大きい局在化双極子モーメントを有することと定義され、ここでカルボニル基は大きさが約2.4デバイの双極子であることが既知であり、局在化双極子は、結合した原子の電気陰性度の相違から生じる。本明細書において、「強度に正電荷を帯びた双極子を有しない」とは、0.8デバイより大きい双極子を有する局在化した双極子(例えばヒドロキシル基)を有しないことを意味する。
【0018】
反復単位は、例えば、以下に限定されるものではないが、カルボニル基を含むことができる。
【0019】
組成物は、第三級アミド基を含む少なくとも1つの反復単位を有する1つ以上のポリマーを含むことができ、(i)第三級アミド基の窒素原子に結合した炭素原子の少なくとも1つは、これに結合した2つまたは3つの水素原子を有し、(ii)第三級アミド基のカルボニル基は-CH、-CH2、または-CH3基に結合している。
【0020】
処理に使用される1つ以上のポリマーは、1つ以上のモノマーから生成される1つ以上のポリマーを含み、ここで、1つ以上のポリマーのそれぞれに対する1つ以上のモノマーの少なくとも1つは、ビニルピロリドン、オキサゾリン含有モノマー、N-ビニルピペリジノン(N-ビニルピペリドンとしても既知)、N-ビニルカプロラクタム、N,N-ジメチルアクリルアミド、及びこれらの組み合わせの群から選択される。1つ以上のポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、またはこれらの組み合わせであってよい。例えば、処理に使用される1つ以上のポリマーは、1つ以上のホモポリマーであっても、1つ以上のモノマーから生成される1つ以上のポリマーを含んでもよく、ここで、1つ以上のポリマーのそれぞれのモノマーは、ビニルピロリドン、オキサゾリン含有モノマー、N-ビニルピペリジノン(N-ビニルピペリドンとしても既知)、N-ビニルカプロラクタム、及びN,N-ジメチルアクリルアミドの群から選択される。
【0021】
1つ以上のポリマーは、1つ以上の非イオン性モノマー単位をさらに含んでよい。例えば、(i)1つ以上のポリマーのそれぞれについての、ビニルピロリドン、オキサゾリン含有モノマー、N-ビニルピペリジノン、N-ビニルカプロラクタム、N,N-ジメチルアクリルアミド、及びこれらの組み合わせの群から選択される1つ以上のモノマー;及び(ii)1つ以上の非イオン性モノマーを利用して製造される1つ以上のポリマーを含むことができる。オキサゾリン含有モノマーの非限定的な例は、2-エチル-2-オキサゾリン及び/または2-メチルオキサゾリンである。繰り返しになるが、1つ以上のポリマーはホモポリマーであってもよく、1つ以上のポリマーのそれぞれは、2-エチル-2-オキサゾリン及び2-メチルオキサゾリンの群から選択される1つのモノマーから生成されてもよい。本明細書で使用される非イオン性モノマーは、使用条件下でアニオン性またはカチオン性官能基を持たないものであり、例えばアクリル酸、メタクリル酸、4級アミン含有モノマーなどである。1つ以上のポリマーは、処理の主要なポリマーとの水素結合を強くもたらさない1つ以上のモノマー単位をさらに含むことができ、本開示の目的のためには、これらは、ポリマー内で強度の自己会合をもたらさない。本開示では、強度の自己会合とは、ポリマーのそれ自体との著しい水素結合、またはポリマーのそれ自体との高度な双極子間相互作用を意味する。ポリマー中のモノマー単位間の相互作用、並びにポリマーと別のポリマーまたは溶媒との相互作用については、1953年にCornell Pressにより初版が出版されたPaul Floryの名著「Principles of Polymer Chemistry」の第12章が参照される。彼は、「最隣接相互作用自由エネルギー」を表す相互作用パラメーターを定義した。Floryの研究以後、他者がこの概念を大幅に拡張した。この概念をよく知る者であれば、ここで主張される点は、本開示のポリマーは、他のポリマーと比較して自己会合をほとんど持たず、さらに重要なことには(理論による拘束を意図するものではないが)、ポリマー自身とよりも液体トナーのポリマーと、分子レベルでより強度に相互作用するポリマーであるという特徴を有することである。したがって、少量、例えば5%未満の他のコモノマーを、1つ
以上のポリマーに、前記1つ以上のポリマーによって基材に付与される主な特性を変えることなく組み込むことができることもさらに理解される。
【0022】
一実施態様では、1つ以上のポリマーの少なくとも1つは、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)及びポリ(2-メチルオキサゾリン)の少なくとも1つを含む。別の実施態様では、少なくとも1つまたは1つ以上のポリマーは、ビニルピロリドンに基づく主要な反復単位を有する。
【0023】
1つ以上のポリマーのそれぞれは、約40,000ダルトンより大きい、または約80,000ダルトンより大きい、または約190,000ダルトンより大きい、または約450,000ダルトンより大きい数平均分子量を有することができ、ここで、上限は、当業者には認識される通り1つ以上のポリマーを含む溶液の形成を妨げる分子量である。所定の実施態様では、上限は約2,000,000ダルトン未満である。
【0024】
1つ以上のポリマーを含む組成物にレオロジー調整剤を添加してこの組成物の粘度を調整し、当業者に既知の方法によって基材に適用可能な機能的粘度を得ることができる。
【0025】
基材は、紙製品、織布及び/または不織繊維材料、プラスチックベースの材料(本明細書では単に「プラスチック」とも呼称)、及びこれらの組み合わせの群から選択することができる。基材は、何らかの手段により処理前に印刷可能でなければならず、液体トナーベースの電子リプログラフィー印刷機で印刷される前の乾燥を含む現在の開示に従って処理可能でなければならない。
【0026】
一実施態様では、基材は、当業者に知られているように任意の向きであってよい紙製品であり、例えば、デジタルLEP印刷機で印刷することのできる、1つ以上のロール、カットシート、及び/または様々な形状及び構成である。基材は、当業者に知られているように、LEP印刷プロセスと適合性の他の任意の基材であってもよい。
【0027】
基材に適用されるポリマーの量は、基材の特性に依存する。例えば、基材がコーティングされていない紙である場合、1つ以上のポリマーを含む組成物は、基材に浸透するか、または表面に維持され得る。
【0028】
1つ以上のポリマーを含む組成物が印刷可能な表面に適用される方法は、基材に適用される組成物の量に影響を与え得る。こうした場合、ポリマーの量は、単に基材の質量パーセントでの基材に添加された量の測定値として、本明細書に反映される。しかしながら、組成物が基材に浸透しない場合、1つ以上のポリマーの総量は、そのうちどれくらいが表面に適用されたかによって表され、添加レベルは、処理された表面積あたりの質量として表される。その量は、基材に適用された組成物全体ではなく、適用された1つ以上のポリマーの合計量に基づく。
【0029】
一般に、処理された基材が紙製品または多孔性もしくは半多孔性の基材である場合、処理された紙製品に添加される1つ以上のポリマーの量は、乾燥質量ベースで基材の約0.02~約1質量%、または約0.03から約0.5質量%、または約0.04から約0.25質量%、または約0.04から約0.1質量%の範囲であり得る。その量は、適用された組成物全体ではなく、基材に適用された1つ以上のポリマーの合計量に基づく。
【0030】
処理された基材は、比較的非多孔質の基材であってもよく、孔のない表面を有する紙であってさえよく、処理された基材の各面上の1つ以上のポリマーの量は、乾燥質量ベースで基材の約0.0075 g/m2から約0.375 g/m2、または0.0115 g/m2から約0.165 g/m2、または約0.015 g/m2から約0.095 g/m2、または約0.015 g/m2から約0.04 g/m2の範囲であって良い。この量は、適用された組成物全体ではなく、基材に適用された1つ以上のポリマーの合計量に基づく。
【0031】
1つ以上のポリマーを含む組成物は、基材上に印刷された液体トナーの付着力を高めるための追加の添加剤をさらに含むことができる。こうした添加剤は、ポリエチレンイミンまたはエチレンとアクリル酸との共重合体であってよい。
【0032】
1つ以上のポリマーを含む組成物は、当技術分野で既知の追加の添加剤、例えば、フィラー、消泡剤、ワックス、顔料、染料、殺生物剤、レオロジー調整剤、ロジン誘導体、界面活性剤、及び/またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。本開示は、処理された基材への画像の付着をもたらす所望の機能を提供するためのバインダーを必要とせず、紙を抄紙機、例えばサイズプレスで処理する場合のように適用のためにバインダーを必要とするものでもない。基材を処理するために使用される組成物中の1つ以上のポリマーの乾燥質量ベースの量は、組成物の合計乾燥質量の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、及び少なくとも98%である。
【0033】
この方法は、例えば、ポリマーを含む組成物へのUV硬化性または熱硬化性のモノマーの添加、及び/または表面処理基材のUV硬化または熱硬化を含む、当技術分野で既知の任意の手段による、表面処理された基材の架橋をさらに含むことができる。
【0034】
本開示の方法は、ポリマーを含む組成物を基材に適用して、基材の表面または所望の印刷領域に亘って実質的に均一な処理をもたらすとして当業者に知られる、任意の適切な方法を利用することができる。こうした方法には、例えば、以下に限定されるものではないが、スプレーコーティング、フォームコーティング、カーテンコーティング、ローラーコーティング、転写コーティング、印刷、及び/またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0035】
一態様では、本開示は、上記の方法のいずれか1つによって製造されたプリント基板に関する。
【0036】
別の態様では、本開示は、本開示の方法のいずれか1つにより製造されるプリント基板に関し、これは、本発明の方法の前及び/または後に基材上に印刷された1つ以上の画像をさらに含んでよい。基材上に印刷された1つ以上の追加の画像は、例えば、以下に限定されるものではないがインクジェット印刷を含む、当業者に既知の任意の印刷方法/プロセスを使用して印刷可能である。
【0037】
実施態様では、基材上に本発明の方法を使用して印刷された画像は、3M 230テープを使用するTape Pull Testで測定して約80%超、または約85%超、または約90%超、または約95%超の、基材への付着力を有することができる。
【0038】
あるいは、プリント基板上の任意の画像、100%黒色画像、または290%複合黒色画像(HP試験に使用される)は、以下により詳細に説明される3M 230テープを使用したTape Pull Testに従って、約85%を超える、あるいは約90%を超える、あるいは95%を超える量の、処理基材への付着力保持を示す。一実施態様では、100%黒色液体トナーから形成された画像は、ロチェスター工科大学によりHP Indigo 5500 Pressで標準HP手順を用いて試験されたように、Tape Pull Testに従って、処理基材への付着力保持が90%を超えると報告されている。現在、かかるテストでは3M 234テープの使用が求められている。これは3M 230テープの使用に代わるものであり、テープの種類の変更についての手順修正が組み込まれている。別の実施態様では、RITにより報告された付着力は95%超である。別の実施態様では、290%黒色液体トナーから形成された画像は、処理基材への付着力保持が、RITによる同様のHPテープ試験により80%超であるか、あるいは90%超または95%超と報告されている。
【0039】
本開示は、(i)本開示のポリマー処理を含む組成物で処理されて、処理基材を形成する基材;及び(ii)処理基材の1つの表面の少なくとも一部上の画像を含む印刷物であって、前記画像が、処理基材上に液体電子写真印刷機及び液体トナーを使用して印刷されている印刷物を提供する。
【実施例
【0040】
以下の実施例は、先行技術において以前から既知の基材へのLEPインクの付着力と比較して強化された、本明細書に開示される基材上にLEP印刷された液体トナーの付着力を示す。これらの実施例は、本開示の単なる例示であり、本開示を本明細書に開示される特定の化合物、プロセス、条件、または応用に限定するものとして解釈されるべきでない。
【0041】
粘着の測定方法
使用した試験方法は、HP(登録商標)デジタルIndigo(商標)印刷画像の、Indigo印刷機用の紙の適格性についてHPによって定義された基材への付着力を決定する標準方法であった。より具体的には、100%黒色液体トナーの黒色長方形画像を、HP(登録商標)Indigo 5500印刷機を使用し、4連写モードで、標準温度設定を使用して印刷し、試験パターンを提供した。黒色長方形の画像も同じ印刷機及び設定を使用して印刷されたが、黒色液体トナーは、52部の黄色、66部のマゼンタ、72部のシアン、及び100部の黒色トナーで構成されており、これは一般に290%の写真画像と呼称される。後者の試験は通常、より厳しい試験である。
【0042】
上記の画像を印刷した10分後、画像を、3MTM230テープ及び加重ローラーを使用して均一に且つ一貫して力を加えるテープ試験により、基材への付着力について試験した。テープの剥離により除去されない画像の割合を測定した。
【0043】
試験は、ロチェスター工科大学(indigo印刷用の紙処理を評価するための北米試験地)により、インクの付着力を試験するためにHPによって規定された標準試験手順に従って実施された。これらの試験のためには、HP(登録商標)Indigo印刷機5500を使用した。本開示は、全ての液体トナーベースのHP Indigo印刷機に適用され、これらは、当業者に既知の方法で付着力の試験に使用することができる。
【0044】
(実施例1)
灰分含有量が19%、Hercules Sizing試験(HST)によるサイジングレベルが8秒であり、且つスルホン化蛍光増白剤を含む市販の112g/m2のアルカリオフセット印刷用紙を、HP 5500 Indigo印刷機による画像の付着力について試験した(試験はロチェスター工科大学で行った)。試料はさらに、500,000ダルトンの平均分子量のポリ-2-エチル-2オキサゾリン(PEtOx)の溶液を用い、乾燥ベースのポリマー処理量を紙の質量の0.3%及び0.6%として処理した。処理は15%溶液として適用され、ドラム乾燥機で乾燥させた。100%の黒色印刷と参照紙の粘着率は84%であった。0.3%のPEtOxの塗布により、付着力は91%に改善され、0.6%の処理では付着力は92%であった。したがって、PEtOxの添加により付着力が向上する。他のポリマーもレオロジー調整剤も、PEtOxと共に添加しなかった。
【0045】
少なくとも1つの例示的実施態様が前述の詳細な説明で提示されたが、膨大な数の変形形態が存在することが理解されるべきである。また、1つまたは複数の例示的実施態様は例に過ぎず、様々な実施態様の範囲、適用可能性、または構成のいかなる限定も意図しないこともまた、理解されるべきである。むしろ、前述の詳細な説明は、本明細書で企図される例示的な実施態様を実施するための便利なロードマップを当業者に提供する。添付の特許請求の範囲に記載される様々な実施態様の範囲から逸脱することなく、例示的な実施態様に記載される要素の機能及び配置に様々な変更を実施可能であることが理解される。