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特許7200241側方視野角を有する内視鏡向け偏向プリズムアセンブリ、内視鏡、および偏向プリズムアセンブリの組立方法
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  • 特許-側方視野角を有する内視鏡向け偏向プリズムアセンブリ、内視鏡、および偏向プリズムアセンブリの組立方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】側方視野角を有する内視鏡向け偏向プリズムアセンブリ、内視鏡、および偏向プリズムアセンブリの組立方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20221226BHJP
   G02B 23/26 20060101ALI20221226BHJP
   G02B 7/18 20210101ALI20221226BHJP
【FI】
A61B1/00 731
G02B23/26 C
G02B7/18 100
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020522364
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 EP2018077182
(87)【国際公開番号】W WO2019076654
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】102017124593.6
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591228476
【氏名又は名称】オリンパス ビンテル ウント イーベーエー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】OLYMPUS WINTER & IBE GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴィータース マルティン
(72)【発明者】
【氏名】テューメン アルン
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-212194(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015101624(DE,A1)
【文献】中国実用新案第204009189(CN,U)
【文献】特表2015-507497(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0026067(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 23/24 -23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側方視野角を有する内視鏡(2)用の偏向プリズムアセンブリ(20)であって、プリズムホルダ(30)と前記プリズムホルダ(30)に収容された偏向プリズム(22)とを備え、前記偏向プリズム(22)は、光出口面(27)、および、該偏向プリズムに対し斜めに配置された光導入面(26)を有し、側面(23)は、前記光導入面および前記光出口面の間に延びる、前記プリズムホルダ(30)が前記偏向プリズム(22)の前記側面(23)における特定範囲を囲うようにして、前記プリズムホルダ(30)が前記偏向プリズム(22)を収容し、前記プリズムホルダ(30)は、第1の部分(30a)と第2の部分(30b)とを備え、前記第1の部分(30a)は前記偏向プリズム(22)の全長に沿って延び、前記第2の部分(30b)は前記偏向プリズム(22)の一部の長さに沿って延び、前記長さとは、前記偏向プリズム(22)の前記光出口面(27)に対する垂直方向での延長である、ことを特徴とする、偏向プリズムアセンブリ(20)。
【請求項2】
前記プリズムホルダ(30)は、前記プリズムホルダ(30)が前記偏向プリズム(22)の潜在的外周のいずれかにおいて、前記偏向プリズム(22)を完全には内包しないように形成され、前記潜在的外周の一部は前記光出口面(27)と平行に走ることを特徴とする、請求項1に記載の偏向プリズムアセンブリ(20)。
【請求項3】
前記光導入面(26)は、斜め配置のために、前記光出口面(27)に対して近辺部分面(26b)および遠方部分面(26a)を有し、前記プリズムホルダ(30)の第1の部分(30a)は、前記光出口面(27)から前記近辺部分面(26b)まで延び、前記プリズムホルダ(30)の第2の部分(30b)は、前記光出口面(27)から前記遠方部分面(26a)の方向に延びることを特徴とする、請求項に記載の偏向プリズムアセンブリ(20)。
【請求項4】
前記プリズムホルダ(30)の第2の部分(30b)は上側保持面(32)を備え、前記偏向プリズム(22)の反射面(28)は前記上側保持面(32)に固定されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の偏向プリズムアセンブリ(20)。
【請求項5】
前記プリズムホルダ(30)の第1の部分(30a)は下側保持面(34a、34b、34c)を備え、前記偏向プリズム(22)は相補形状となる底面(29a、29b、29c)を備え、前記下側保持面(34a、34b、34c)および前記底面(29a、29b、29c)は、前記光出口面(27)に垂直に配置され、前記底面(29a、29b、29c)は前記下側保持面(34a、34b、34c)に固定されていることを特徴とする、請求項に記載の偏向プリズムアセンブリ(20)。
【請求項6】
前記プリズムホルダ(30)の第1の部分(30a)は、少なくとも2つの隣接する下側保持面(34a、34b、34c)を備え、前記偏向プリズム(22)は、前記下側保持面(34a、34b、34c)に付随する底面(29a、29b、29c)を備えることを特徴とする、請求項に記載の偏向プリズムアセンブリ(20)。
【請求項7】
総角度(α)、すなわち前記隣接する下側保持面(34a、34b、34c)の個々の角度の合計が、60°から120°の間であることを特徴とする、請求項に記載の偏向プリズムアセンブリ(20)。
【請求項8】
第1の部分(30a)と第2の部分(30b)とは前記プリズムホルダ(30)の止め具(30c)によって接続され、前記止め具(30c)は、環状であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の偏向プリズムアセンブリ(20)。
【請求項9】
前記止め具(30c)は、前記偏向プリズム(22)の前記光出口面(27)に平行な面である接触面(33)を備え、前記光出口面(27)は前記接触面(33)の特定範囲に位置することを特徴とする、請求項に記載の偏向プリズムアセンブリ(20)。
【請求項10】
ギャップ幅を有する接着ギャップ(35)は、前記下側保持面(34a、34b、34c)と前記付随する底面(29a、29b、29c)の間、および/または、前記上側保持面(32)と前記付随する反射面(28)の間に構成され、前記光出口面(27)が前記接触面(33)の特定範囲に位置する場合に、製造交差を考慮した上で、前記下側保持面(34a、34b、34c)が前記底面(29a、29b、29c)のどの位置にも位置しない程、および/または、前記上側保持面(32)が前記反射面(28)のどの位置にも位置しない程に、前記ギャップ幅が大きいことを特徴とする、請求項に記載の偏向プリズムアセンブリ(20)。
【請求項11】
前記側面(23)の外周の少なくとも3分の1が円形であることを特徴とする、請求項1から10のうちいずれか1つに記載の偏向プリズムアセンブリ(20)。
【請求項12】
前記プリズムホルダ(30)の外周の少なくとも3分の1が円形であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の偏向プリズムアセンブリ(20)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の偏向プリズムアセンブリ(20)を備える内視鏡(2)。
【請求項14】
側方視野角を有する内視鏡(2)用のプリズムホルダ(30)および偏向プリズム(22)を備える、偏向プリズムアセンブリ(20)の組立方法であって、前記偏向プリズムアセンブリ(20)は、プリズムホルダ(30)と前記プリズムホルダ(30)に収容された偏向プリズム(22)とを備え、前記偏向プリズム(22)は、光出口面(27)、および、該偏向プリズムに対し斜めに配置された光導入面(26)を有し、側面(23)は、前記光導入面および前記光出口面の間に延びる、前記プリズムホルダ(30)が前記偏向プリズム(22)の前記側面(23)における特定範囲を囲うようにして、前記プリズムホルダ(30)が前記偏向プリズム(22)を収容し、前記プリズムホルダ(30)は、第1の部分(30a)と第2の部分(30b)とを備え、前記第1の部分(30a)は前記偏向プリズム(22)の全長に沿って延び、前記第2の部分(30b)は前記偏向プリズム(22)の一部の長さに沿って延び、前記長さとは、前記偏向プリズム(22)の前記光出口面(27)に対する垂直方向での延長であり、
当該組立方法は、
前記偏向プリズム(22)の側面(23)の外周および前記プリズムホルダ(30)の外周を位置合わせすることにより、前記偏向プリズム(22)を前記プリズムホルダ(30)に対してセンタリングする工程と、
前記偏向プリズム(22)の光出口面の特定範囲(27)を、前記プリズムホルダ(30)の接触面(33)に位置させるようにすることにより、前記プリズムホルダ(30)に対し、前記偏向プリズム(22)を位置合わせする工程と、
前記偏向プリズム(22)の少なくとも1つの底面(29a、29b、29c)を、前記プリズムホルダ(30)の少なくとも1つの下側保持面(34a、34b、34c)に固定し、前記偏向プリズム(22)の反射面(28)を前記プリズムホルダ(30)の上側保持面(32)に固定する工程と、
を含む、偏向プリズムアセンブリ(20)の組立方法。
【請求項15】
前記総角度(α)、すなわち前記隣接する下側保持面(34a、34b、34c)の個々の角度の合計が約90°であることを特徴とする、請求項に記載の偏向プリズムアセンブリ(20)。
【請求項16】
前記側面(23)の外周の少なくとも3分の2が円形であることを特徴とする、請求項11に記載の偏向プリズムアセンブリ(20)。
【請求項17】
前記プリズムホルダ(30)の全外周が円形であることを特徴とする、請求項12に記載の偏向プリズムアセンブリ(20)。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、側方視野角を有する内視鏡向け偏向プリズムアセンブリ、内視鏡、および、偏向プリズムアセンブリの組立方法に関する。
【0002】
内視鏡検査においては、0度からずれる、すなわち、前方視からずれている視野角を有する内視鏡を配備することは、しばしば有意義となる。この場合、これらの内視鏡は、側方視野角を有する内視鏡と称される。
【0003】
このような、側方視野角を有する内視鏡は、例えば、独国特許公報第10 2011 090 132 A1号に開示されている。
【0004】
複数のサブプリズムで構成される末端偏向プリズムは、一般的には、内視鏡、具体的には、このタイプのビデオ内視鏡に配備されている。偏向プリズムの目的は、斜めの入射光が偏向プリズムから出た後に、内視鏡軸に平行に走るように偏向することから成る。
【0005】
偏向プリズムを内視鏡内に固定するため、後者はプリズムホルダ内に収容される。前記プリズムホルダは一般的に円筒状であり、偏向プリズムを完全に内包する。偏向プリズムとプリズムホルダが偏向プリズムアセンブリを形成する。
【0006】
光学特性の向上および視野の拡大を達成すべく、光が内視鏡に入れる範囲を増大するため、より大きな偏向プリズムが配備されうる。
【0007】
しかしながら、特に医療用内視鏡の場合には、患者に対する低侵襲内視鏡検査を可能とするべく、内視鏡シャフトの外径は可能な限り小さいことが非常に重要となる。
【0008】
しかしながら、内視鏡シャフトの小外径は、偏向プリズムアセンブリも可能な限り小さいことを要求する。結果として、一方では後者に高画質や高い強度を持たせ、また一方では可能な限り小さい外径にするという、内視鏡への要求は、互いに矛盾することになる。
【0009】
ここで、本発明の目的は、偏向プリズムアセンブリ、内視鏡、および、偏向プリズムアセンブリの組立方法を提供することであり、それによって内視鏡シャフトの外径を大きくすることなく、光学特性の向上を達成する。
【0010】
この目的は、プリズムホルダおよび該プリズムホルダに収容された偏向プリズムを備え、該偏向プリズムは、光出口面、および、反対に、該偏向プリズムに対して斜めに配置された光導入面を有し、側面は前記導入面および出口面の間に延びており、更には、プリズムホルダが偏向プリズムの側面における特定範囲を囲うようにして、偏向プリズムをプリズムホルダが収容するように展開する、側方視野角を有する内視鏡向け偏向プリズムアセンブリによって解決される。
【0011】
光導入面は、光導入面と光出口面が成す角度が、内視鏡の斜めの視野角に相当するよう、位置合わせされる。側面は、光導入面と光出口面の間に延びる。光導入面又は光出口面に属さない偏向プリズムの表面の範囲すべては、結果として側面の一部となる。本明細書の内容において、「特定範囲を内包している」という用語は、円筒状プリズムホルダと比較し、プリズムホルダの範囲が省略されていることを示すものとする。
【0012】
偏向プリズムは、有利には、プリズムホルダに囲まれていない範囲において、拡大される。偏向プリズムは、偏向プリズムの特定範囲のみを内包することにより省略される分だけ正確に拡大される。この偏向プリズムの拡大は、偏向プリズムアセンブリの周囲の拡大にはつながらず、それゆえ、内視鏡シャフトの直径の増加につながらない。同時に、偏向プリズムの拡大により、より多くの光が内視鏡に入るため、内視鏡の光学特性は向上し、内視鏡の光強度は増加する。
【0013】
プリズムホルダは、確実に固定するため、また、プリズムホルダ内で偏向プリズムを正確に整合するために必要な範囲において、側面を有利に内包するのみである。
【0014】
プリズムホルダは、後者が偏向プリズムの潜在的外周のどこかにおいて、偏向プリズムを完全には内包しない様にて形成されることが好ましく、ここで、該外周は、偏向プリズムの側面上の光出口面に平行に走る。
【0015】
プリズムホルダ内において、正確に偏向プリズムを位置合わせするには、全外周に沿う側面をプリズムホルダが内包する必要はない。具体的には、光導入面から光出口面までの側面に沿って延びるプリズムホルダの範囲が、結果として完全に省略できる。このことは、プリズムホルダの省スペース設計を有利に生み出す。プリズムホルダに内包されていない範囲内で、偏向プリズムを拡大することにより、内視鏡の光学特性は向上する。
【0016】
該プリズムホルダは、第1の部分と第2の部分とを備えることが好ましく、該第1の部分は偏向プリズムの全長に沿って延び、該第2の部分は偏向プリズムの長さの一部に沿って延びており、ここで、該長さとは、光出口面に対して垂直方向における、該偏向プリズムの延長のことである。
【0017】
結果として、プリズムホルダの第1の部分は、光出口面と光導入面の間における、側面の全長に沿って延びる。その結果、プリズムホルダの第1の部分は、偏向プリズムをプリズムホルダに固定するのに適する。第1の部分は、確実に固定するために必要な外周の角度範囲において、有利に偏向プリズムの側面を内包するのみである。例えば、プリズムホルダの第1の部分は、側面を外周沿いに約150°に渡って内包するのみである。
【0018】
第2の部分は、側面長の一部にのみ沿って延び、当該一部は、光出口面から光導入面の方向に延びる。結果として、該側面は、光導入面とプリズムホルダの第2の部分との間において、プリズムホルダに囲まれなくなる。内視鏡の光学特性を更に向上させるため、この範囲において、偏向プリズムを拡大することができる。
【0019】
斜め配置のために、光導入面は、光出口面に対して近辺部分面と遠方部分面を有することが好ましく、ここで、プリズムホルダの第1の部分は、光出口面から近辺部分面にかけて延び、プリズムホルダの第2の部分は、光出口面から遠方部分面の方向へと延びる。
【0020】
光導入面の斜め配置の結果、偏向プリズム内での入射光の反射が、実質的に偏向プリズムの上側部分で起こる。偏向プリズムの上側部分は、遠方部分面から反射面にかけて延びる、偏向プリズムの一部であり、ここで反射面とは、一回目に入射光を反射する側面の一部である。それに反して、偏向プリズムの下側部分は、近辺部分面から光出口面にかけて延びる。
【0021】
プリズムホルダの第1の部分は、結果として偏向プリズムの下側部分において、側面の特定範囲を囲う一方、プリズムホルダの第2の部分は、偏向プリズムの上側部分において、側面の特定範囲を囲う。
【0022】
入射光のビーム路程は、実質的に偏向プリズムの上部を走るため、下部は固定のために使用されうる。それゆえ、偏向プリズムの該下側部分を囲うプリズムホルダの第1の部分は、偏向プリズムを側面に確実に固定することが出来るよう、側面の全長に沿って延びている。
【0023】
内視鏡の光強度を大きくするために、偏向プリズムの上側部分における特定範囲において、プリズムホルダは省略され、この範囲内で偏向プリズムは拡大される。この理由から、プリズムホルダの第2の部分は、側面の一部の長さに沿って延びるのみとなる。
【0024】
プリズムホルダの第2の部分は、有利には上側保持面を備え、偏向プリズムの反射面は、該上側保持面に固定される。
【0025】
入射光は反射面により反射されるため、反射面の後ろ側の範囲は、光学的には必要とされない。プリズムホルダの第2の部分は、この範囲に配置される。
【0026】
プリズムホルダの第2の部分をこのように配置することにより、これが内視鏡の光学特性に悪影響を及ぼすことなく、偏向プリズムを固定するために後者を使用することができる。これを実現すべく、第2の部分の面は、例えば、接着剤を用いるなどして、反射面が取り付けられる上側保持面として構成される。
【0027】
プリズムホルダの第1の部分は、下側保持面を備えることが好ましく、偏向プリズムは、相補形状を有する底面を備えることが好ましく、ここで、下側保持面と底面は光出口面に垂直に配置され、底面は下側保持面に固定されている。
【0028】
偏向プリズムの下側部分は光学的には利用されず、偏向プリズムをプリズムホルダに固定するために使用される。これを実現すべく、偏向プリズムは、出口面に垂直な底面を有するよう、例えば、研磨によって設計される。プリズムホルダは、相補形状を有した保持面を有し、ここに底面が固定される。こうした固定は、例えば、接着剤を用いて実現される。
【0029】
偏向プリズムは、有利には、プリズムホルダの第2の部分の上側保持面と、プリズムホルダの第1の部分の下側保持面との両方に固定される。このようにして、偏向プリズムのプリズムホルダ内への確実な固定が実現される。
【0030】
プリズムホルダの第1の部分は、少なくとも2つの隣接する下側保持面を備えることが好ましく、偏向プリズムは、該下側保持面に付随する底面を備えることが好ましい。
【0031】
偏向プリズムが1つだけの底面を有する場合、偏向プリズムのプリズムホルダへの固定は、偏向プリズムに側方向に作用するせん断力に影響されやすい。このことにより、偏向プリズムがプリズムホルダ内で滑ってしまう可能性があり、内視鏡の光学特性を低下させることにつながりかねない。これらのせん断力に対抗するため、複数の底面および複数の下側保持面を使用するのは良い案である。具体的には、これらの底面(および、結果として相補形状を有する下側保持面も)は、ある角度を成す。同時に、すべての底面は光出口面に垂直に配向している。
【0032】
総角度、すなわち、隣接する下側保持面の個々の角度の合計は、60°から120°の間、具体的には約90°であることが好ましい。
【0033】
総角度を算出するには、すべての隣接する下側保持面について、隣接する面同士が成す角度を求め、これらの角度を合計する。
【0034】
せん断力に対抗するべく、互いに90°の角度で配置される2つの下側保持面が考えられる。事実、2つの面を使用するということは、プリズムホルダの第1の部分が側面の外周を約180°の角度範囲内で囲うことができる程、プリズムホルダの第1の部分を大きく設計しなければならない事を意味する。
【0035】
これは、内視鏡の光学特性に悪影響を及ぼす可能性があり、加えて、このためにプリズムホルダに囲まれていない側面の外周が、可能な限り大きいことが要求されるため、偏向プリズムのセンタリングを困難にする。
【0036】
それゆえ、偏向プリズムの側面の外周が可能な限り大きいことと、せん断力に対する抵抗力が可能な限り大きいこととの間で、折衷案を見つけることが必要となる。このような折衷案とは、例えば、それぞれが互いに少なくとも略45°の角度で配置される、3つの下側保持面を用いることなどを含む。このことで、約90°の総角度を得ること、そして同時に、プリズムホルダの第1の部分に囲まれていない、約210°の側面の外周を実現することが可能になる。
【0037】
第1の部分と第2の部分は、プリズムホルダの止め具によって接続されることが好ましく、該止め具は、具体的には、環状である。該止め具は、特に、偏向プリズムの光出口面に平行な面である接触面を備えていることが好ましく、ここで、該光出口面は、接触面の特定範囲に位置している。
【0038】
止め具は、偏向プリズムの近くに配置される。環状の形状をしているが、結果的に偏向プリズムを内包しない。
【0039】
光出口面を接触面に位置させるようにすることで、偏向プリズムの傾きは最小限になる。接触面は、光出口面と全く同じく、内視鏡軸に垂直に配置されている。これにより、偏向プリズムの傾斜を内視鏡軸に対し正確に位置合わせできるようになる。接触面は、光学的は利用されない光出口面の範囲にのみ、有利に位置する。
【0040】
ギャップ幅を有する接着ギャップは、下側保持面と付随する底面の間、および/または、上側保持面と付随する反射面の間に構成されることが好ましく、光出口面が接触面の特定範囲に位置する場合に、製造交差を考慮した上で、下側保持面が底面のどの位置にも位置しない程、および/または、上側保持面が反射面のどの位置にも位置しない程に、ギャップ幅は大きい。
【0041】
光出口面を接触面に位置するようにすることで、傾斜の位置合わせがなされるため、偏向プリズムがプリズムホルダのどの位置にも位置しないことが有利となるが、これは位置合わせに悪影響を及ぼしかねないためである。
【0042】
従って、偏向プリズムおよびプリズムホルダは、上側保持面と付随する反射面の間、そして、下側保持面と付随する底面の間、それぞれにギャップが存在するようにすることで、偏向プリズムとプリズムホルダが接触面の範囲においてのみ接触するよう、製造される。ギャップは、具体的には、固定のための接着ギャップとして利用される。
【0043】
側面の外周の少なくとも3分の1、具体的には少なくとも3分の2は、円形であることが好ましい。更には、プリズムホルダの外周の少なくとも3分の1、具体的には、プリズムホルダの全外周は、円形であることが好ましい。
【0044】
側面の外周、およびプリズムホルダの外周は、有利には同一半径である。
【0045】
側面およびプリズムホルダの外周が円形であるため、内視鏡内への装着時に、これらを内視鏡軸に対して位置合わせすることができる。少なくとも部分的に円形である外周により、偏向プリズムおよびプリズムホルダの外周は、互いに対し位置合わせがなされ、その後内視鏡軸に対し位置合わせがなされ、すなわち、センタリングがなされることになる。このような偏向プリズムの位置合わせ、および、プリズムホルダの位置合わせは、ケラレや画像切れを防止し、結果として画質の向上が保証される。
【0046】
加えて、該目的は、前述した実施形態のうち1つによる偏向プリズムアセンブリを備える内視鏡によって解決される。
【0047】
更に、該目的は、側方視野角を有する内視鏡向けプリズムホルダおよび偏向プリズムを備える、偏向プリズムアセンブリの組立方法によって解決され、その方法とは以下の工程を含む。
【0048】
偏向プリズムの側面の外周およびプリズムホルダの外周を位置合わせすることにより、偏向プリズムをプリズムホルダに対してセンタリングする工程、
偏向プリズムの光出口面における特定範囲を、プリズムホルダの接触面上に位置させることにより、偏向プリズムをプリズムホルダに対して位置合わせする工程、
偏向プリズムの少なくとも1つの底面を、プリズムホルダの少なくとも1つの下側保持面に固定し、偏向プリズムの反射面をプリズムホルダの上側保持面に固定する工程。
【0049】
偏向プリズムアセンブリについて説明されたのと同一の、又は類似の利点を、内視鏡および偏向プリズムアセンブリの組立方法にも適用するため、再度の説明は省略する。
【0050】
本発明の更なる特徴は、本発明にかかる実施形態の説明、および、請求項や添付の図面から明らかにされる。本発明にかかる実施形態は、各特徴またはいくつかの特徴の組み合せを実現することが可能である。
【0051】
本発明を、本発明の概念を制限することなく、図面を参照し例示的な実施形態を用いて、以下で説明する。文中ではあまり詳細には説明されていない本発明の全ての詳細に関しては、特に以下の図面を参照するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1図1は、概略的に簡略化された、内視鏡の斜視図を示す。
図2図2は、先行技術にかかる導入レンズと出口レンズを有する偏向プリズムアセンブリを通る、概略的に簡略化された縦断面を示す。
図3図3は、導入レンズと出口レンズを有する本発明にかかる偏向プリズムアセンブリを通る、概略的に簡略化された縦断面を示す。
図4a図4aは、光導入面の範囲内における本発明にかかる偏向プリズムアセンブリを通る、概略的に簡略化された断面図を示す。
図4b図4bは、光出口レンズの範囲内における本発明にかかる偏向プリズムアセンブリを通る、概略的に簡略化された断面図を示す。
図5図5は、本発明にかかる偏向プリズムアセンブリの、概略的に簡略化された斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
それぞれの図において、同一または類似の要素および/または部品には、これらの要素および/または部品についての再度の説明を省略するため、同一の引用番号が付されている。
【0054】
図1は、側方視野角を有する内視鏡2を示す。内視鏡2の近位端には、シャフト6が接合されるハンドル4が配置されている。シャフト6の先端部8には、先端部8の前方の遠位に位置する観察又はオペレーションフィールドからの光ビームが、シャフト6の内部に入るための入口窓10が配置されている。シャフト6の先端部範囲12には、偏向プリズムが偏向プリズムアセンブリの一部としてシャフト6内に配置されている。
【0055】
図2は、先行技術にかかる偏向プリズムアセンブリ20を概略的に示す。偏向プリズムアセンブリ20は、3つのサブプリズム22a、22b、22cから成る偏向プリズム22と、円筒状プリズムホルダ30を備える。プリズムホルダ30は、偏向プリズム22の側面23を完全に内包する。偏向プリズムアセンブリ20の一部ではないが、同様に導入レンズ16および出口レンズ18が示されている。
【0056】
点線で表されている観察エリアからの入射光は、図2には表されていない入口窓10と、導入レンズ16を通って偏向プリズム22に入る。光は、一回目に反射面28によって反射され、それから二回目に、第2サブプリズム22bと第3サブプリズム22cの境界によって、実質的に内視鏡軸に平行な方向に反射される。光は、出口レンズ18を通って、内視鏡の内部の方向へ更に導かれる。
【0057】
例示する光ビームのビーム路程は、図2および図3において点線で示されており、内視鏡2の視野の中心から来て、実質的に入口窓16に当たる。
【0058】
本発明にかかる偏向プリズムアセンブリ20は、概略的に図3に示されている。図2の先行技術にかかる円筒状プリズムホルダ30と比較すると、図3の本発明にかかるプリズムホルダ30は、第1の部分30a、第2の部分30b、環状の止め具30cを備えている。
【0059】
第1の部分30aは、実質的にそり型の形状をしており、光導入面26の近辺部分面26bから偏向プリズム22の光出口面27へと延びる。円周方向において、第1の部分30aは、約150°の角度で側面23の外周を内包する(図4a参照)。第2の部分30bは、反射面28から近位方向に延び、実質的にくさび型の形状をしている。出口レンズ18の範囲において、第1の部分30aおよび第2の部分30bは、環状の止め具30cによって接続されている(図5参照)。
【0060】
偏向プリズムアセンブリ20は、従来のプリズムホルダと比較して、図2に例示されている通り、プリズムホルダ30の範囲が省略されていることに違いがある。省略された範囲において、偏向プリズム22は適宜拡大される。このことは、図3における図の最上部に位置する範囲、および、光導入面26の遠方部分面26aに隣接した範囲に特に関わる。特筆すべきは、反射面28がより大きいことである。偏向プリズム22を拡大することによって、内視鏡2の光学特性を向上させることができ、内視鏡2の光強度は増加する。
【0061】
同時に、プリズムホルダ30上での省略にも関わらず、偏向プリズムアセンブリ20によって、偏向プリズム22が正確に位置合わせされ、プリズムホルダ30内に安定して固定されることが保障される。
【0062】
固定する目的のもと、偏向プリズム22は下側に底面29a、29b、29cを有しており、そのうち底面29bのみが、図3が示す縦断面において視認される。底面29a、29b、29cは光出口面27に垂直であり、プリズムホルダ30における第1の部分30aの下側保持面34a、34b、34cに対して相補形状に構成されている。底面29a、29b、29cおよび下側保持面34a、34b、34cは、接着ギャップ35によって隔てられている。底面29a、29b、29cが偏向プリズム22の位置合わせのためではなく、固定のためにのみ使用されるため、接着ギャップ35が必要となる。
【0063】
プリズムホルダ30の第2の部分30bは、上側保持面32を有している。これは、反射面28に対して相補形状になっており、例えば、適切な接着剤を用いて後者に取り付けられる。上側保持面32と反射面28の間には、接着ギャップ35が配置されている。
【0064】
偏向プリズム22を位置合わせするため、光出口面27の範囲は止め具30cの接触面33に位置する。このようにして、偏向プリズム32の傾きが最小にされる、又は、さらには排除される。
【0065】
図4aおよび4bは、図3のA-A線およびB-B線に沿った偏向プリズムアセンブリ20の断面図を概略的に示す。図4aが示すように、プリズムホルダ30の第1の部分30aは、外周の約150°の角度範囲において、側面23を内包する。
【0066】
偏向プリズム22を正確にセンタリングできるようにするため、側面23は、内包されていない外周の一部において円形である。図4aが示す例の場合、ここは約210°である。
【0067】
裏面には、偏向プリズム22は、プリズムホルダ30の下側保持面34a、34b、34cに対して相補形状となっている3つの底面29a、29b、29cを有する。底面29a、29b、29cと保持面34a、34b、34cの間には、この目的のためにギャップ35が配置されている。
【0068】
偏向プリズム22を、せん断力の作用による滑りから守るため、底面29a、29b、29cを約90°の総角度αで配置することは良い案である。換言すると、隣接する下側保持面34a、34b、34cの角度の合計は、約90°である。この実施形態は、せん断力への抵抗力と、偏向プリズム22のセンタリングの可能性との間の折衷案である。
【0069】
図4bに示されるB-B線に沿った断面図は、偏向プリズムアセンブリ20の範囲を通って走っており、プリズムホルダ30の止め具30cが出口レンズ18を内包している。この切断面において、プリズムホルダ30は円状である。このようにして、プリズムホルダ30の安定性の保証と、径方向での位置合わせ、すなわちセンタリングの両方が可能になる。これを達成すべく、プリズムホルダ30の円形外周は、偏向プリズム22の側面23の外周の円形部分に揃えられ、その次に、内視鏡軸に揃えられる。このようにして、偏向プリズム22の精確な位置合わせが可能になり、ケラレや画像切れが回避される。
【0070】
図5は、プリズムホルダ30の形状が明確化された状態で、偏向プリズムアセンブリ20を概略的に簡略化した斜視図を示す。そり型の形状をした第1の部分30a、くさび型の形状をした第2の部分30b、環状の止め具30cの形状と配置を確認できる。さらには、プリズムホルダ30が側面23の外周に沿うどこかで側面23を完全には内包していない、すなわち、第1の部分30aはどの位置においても第2の部分30bを接合しないことが確認できる。第1の部分30aと第2の部分30bの接続部は、止め具30cに単独で存在する。しかしながら、止め具30cは偏向プリズム22上の近位方向に位置し、これを内包しない。同様に、偏向プリズム22は、光出口面27と共に環状の止め具30cの接触面33上に位置することが確認できる。
【0071】
図面のみによって導かれるものを含む、全ての挙げられた特徴、および他の特徴と組み合わせて開示されている個々の特徴は、単独で、また、組み合わせて、本発明に重要なものとみなされる。本発明にかかる実施形態は、個々の特徴によって、又は複数の特徴を組み合わせることによって、実現され得る。本発明の枠組みの中で、「具体的には」又は「好ましい」と示されている特徴は、任意の特徴である。
【符号の説明】
【0072】
2…内視鏡、4…ハンドル、6…シャフト、8…先端部、10…入口窓、12…先端部範囲、16…導入レンズ、18…出口レンズ、20…偏向プリズムアセンブリ、22…偏向プリズム、22a-22c…サブプリズム、23…側面、26…光導入面、26a…遠方部分面、26b…近辺部分面、27…光出口面、28…反射面、29a-29c…底面、30…プリズムホルダ、30a…第1の部分、30b…第2の部分、30c…止め具、32…上側保持面、33…接触面、34a-34c…下側保持面、35…接着ギャップ、α…角度
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5