(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】補正回路を有する指向性MEMSマイクロホン
(51)【国際特許分類】
H04R 19/04 20060101AFI20221226BHJP
【FI】
H04R19/04
(21)【出願番号】P 2020540608
(86)(22)【出願日】2019-01-23
(86)【国際出願番号】 US2019014660
(87)【国際公開番号】W WO2019147607
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-11-16
(32)【優先日】2018-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504189151
【氏名又は名称】シュアー アクイジッション ホールディングス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SHURE ACQUISITION HOLDINGS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ ジョーダン
【審査官】西村 純
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205179362(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第106658287(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0094405(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0007107(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の音響容積を画定する第1の筐体、および前記第1の筐体内に配置された微小電気機械システム(「MEMS」)マイクロホントランスデューサを含むトランスデューサアセンブリと、
前記第1の筐体に隣接して配置され、前記第1の音響容積と音響通信する第2の音響容積を画定する第2の筐体であって、音響抵抗を含む第2の筐体であり、前記第1および第2の音響容積が、前記音響抵抗と協働して、指向性極性パターンを生成するための音響遅延を生成する、第2の筐体と、
前記トランスデューサアセンブリに電気的に結合され、前記MEMSマイクロホントランスデューサの周波数応答の一部を補正するように構成されたシェルビングフィルタを備える回路と、
を備える、マイクロホンアセンブリ。
【請求項2】
前記回路が前記トランスデューサアセンブリの外部に機械的に取り付けられている、請求項1に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項3】
前記回路が前記第2の筐体の外部に機械的に取り付けられている、請求項1に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項4】
前記シェルビングフィルタが、所定の帯域幅内の周波数値に対して平坦な周波数応答を生成するように構成されている、請求項1に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項5】
前記指向性極性パターンが1次指向性極性パターンである、請求項1に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項6】
前記トランスデューサアセンブリが、前記MEMSマイクロホントランスデューサに電気的に結合され、前記第1の筐体内に配置された集積回路をさらに含み、前記回路が前記トランスデューサアセンブリの前記集積回路に電気的に接続されている、請求項1に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項7】
前記第1の筐体が、前記第1の音響容積と前記第2の音響容積との間の音響通信を容易にする開孔を含み、前記開孔が前記MEMSマイクロホントランスデューサに隣接して配置されている、請求項1に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項8】
前記第1の筐体が、前記MEMSマイクロホントランスデューサに隣接して配置された第1の音入口を含み、前記第2の筐体が、前記第1の音入口から所定の距離に配置された第2の音入口を含む、請求項7に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項9】
前記所定の距離が、前記MEMSマイクロホントランスデューサのダイアフラムを横切る圧力勾配を生成するように選択されている、請求項8に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項10】
前記音響抵抗が前記第2の音入口を覆っている、請求項8に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項11】
前記回路に電気的に結合され、前記トランスデューサアセンブリを外部デバイスに動作可能に結合するためのケーブルを受け入れるように構成された接続ポートをさらに備える、請求項1に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項12】
微小電気機械システム(「MEMS」)マイクロホントランスデューサ、前記MEMSマイクロホントランスデューサに電気的に結合された集積回路、ならびに第1の音響容積を画定し、前記集積回路および前記MEMSマイクロホントランスデューサが内部に配置された第1の筐体、を含むトランスデューサアセンブリと、
前記第1の筐体に隣接して配置され、前記第1の音響容積と音響通信する第2の音響容積を画定する第2の筐体であって、音響抵抗を含む第2の筐体であり、前記第1および第2の音響容積が指向性極性パターンを生成するための音響遅延を生成する、第2の筐体と、
を備え、
前記集積回路が、前記MEMSマイクロホントランスデューサの周波数応答の一部を補正するように構成されたシェルビングフィルタを備える回路を含む、
マイクロホンアセンブリ。
【請求項13】
前記集積回路が特定用途向け集積回路(ASIC)である、請求項12に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項14】
前記シェルビングフィルタが、所定の帯域幅内の周波数値に対して平坦な周波数応答を生成するように構成されている、請求項12に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項15】
前記指向性極性パターンが1次指向性極性パターンである、請求項12に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項16】
前記第2の筐体が、前記第1の音響容積と前記第2の音響容積との間の音響通信を容易にする開孔を含み、前記開孔が前記MEMSマイクロホントランスデューサに隣接して配置されている、請求項12に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項17】
前記第1の筐体が、前記MEMSマイクロホントランスデューサに隣接して配置された第1の音入口を含み、前記第2の筐体が前記第1の音入口から所定の距離に配置された第2の音入口を含む、請求項12に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項18】
前記所定の距離が、前記MEMSマイクロホントランスデューサのダイアフラムを横切る圧力勾配を生成するように選択されている、請求項17に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項19】
前記音響抵抗が前記第2の音入口を覆っている、請求項17に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項20】
前記集積回路に電気的に結合され、前記トランスデューサアセンブリを外部デバイスに動作可能に結合するためのケーブルを受け入れるように構成された接続ポートをさらに備える、請求項12に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項21】
第1の音響容積を画定する第1の筐体、および前記第1の筐体内に配置された微小電気機械システム(「MEMS」)マイクロホントランスデューサを含むトランスデューサアセンブリ、
前記第1の筐体に隣接して配置され、前記第1の音響容積と音響通信する第2の音響容積を画定する第2の筐体であって、音響抵抗を含む第2の筐体であり、前記第1および第2の音響容積が、前記音響抵抗と協働して、指向性極性パターンを生成するための音響遅延を生成する、第2の筐体、ならびに
前記トランスデューサアセンブリに電気的に結合され、ケーブルを受け入れるように構成された接続ポート、
を備えるマイクロホンアセンブリと、
前記トランスデューサアセンブリを外部デバイスに動作可能に結合するための前記接続ポートに電気的に結合されたケーブルと、
前記ケーブルに含まれ、前記接続ポートを介して前記トランスデューサアセンブリに電気的に結合された回路であって、前記MEMSマイクロホントランスデューサの周波数応答の一部を補正するように構成されたシェルビングフィルタを備える、回路と、
を備える、マイクロホンシステム。
【請求項22】
前記シェルビングフィルタが、所定の帯域幅内の周波数値に対して平坦な周波数応答を生成するように構成されている、請求項21に記載のマイクロホンシステム。
【請求項23】
前記トランスデューサアセンブリが、前記MEMSマイクロホントランスデューサに電気的に結合され、前記第1の筐体内に配置された集積回路をさらに含み、前記回路が前記トランスデューサアセンブリの前記集積回路に電気的に接続されている、請求項21に記載のマイクロホンシステム。
【請求項24】
前記指向性極性パターンが1次指向性極性パターンである、請求項21に記載のマイクロホンシステム。
【請求項25】
前記第2の筐体が、前記第1の音響容積と前記第2の音響容積との間の音響通信を容易にする開孔を含み、前記開孔が前記MEMSマイクロホントランスデューサに隣接して配置されている、請求項21に記載のマイクロホンシステム。
【請求項26】
前記第1の筐体が、前記MEMSマイクロホントランスデューサに隣接して配置された第1の音入口を含み、前記第2の筐体が、前記第1の音入口から所定の距離に配置された第2の音入口を含む、請求項22に記載のマイクロホンシステム。
【請求項27】
前記所定の距離が、前記MEMSマイクロホントランスデューサのダイアフラムを横切る圧力勾配を生成するように選択されている、請求項26に記載のマイクロホンシステム。
【請求項28】
前記音響抵抗が前記第2の音入口を覆っている、請求項26に記載のマイクロホンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2018年1月24日に提出された米国仮特許出願第62/621,406号の優先権を主張し、その内容は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0002】
本出願は、一般に、MEMS(微小電気機械システム)マイクロホンに関する。詳細には、本出願は、マイクロホンの周波数応答を補正するための回路を有する指向性MEMSマイクロホンに関する。
【背景技術】
【0003】
例えば、ダイナミック、クリスタル、コンデンサ/キャパシタ(外部バイアスおよびエレクトレット)などの様々なタイプのマイクロホンおよび関連するトランスデューサがあり、これらは、様々な極性応答パターン(カーディオイド、スーパーカーディオイド、無指向性など)で設計することができる。各タイプのマイクロホンには、用途に応じてその長所および短所がある。
【0004】
微小電気機械システム(「MEMS」)マイクロホン、またはコアトランスデューサとしてMEMS素子を有するマイクロホンは、パッケージサイズが小さく、高性能特性(例えば、高い信号対雑音比(「SNR」)、低消費電力、良好な感度など)のために、ますます人気が高まっている。しかしながら、マイクロホンパッケージの物理的制約のために、従来のMEMSマイクロホンの極性パターンは、本質的に無指向性であり、これは、例えば、レコーディングスタジオ、ライブパフォーマンスなどの広帯域用途にはあまり理想的ではない可能性がある。
【0005】
より具体的には、MEMSマイクロホンは、トランスデューサの位置での瞬間的な空気圧レベルに比例した出力電圧を生成することによって、「圧力マイクロホン」として効果的に動作する。例えば、MEMSマイクロホントランスデューサは、典型的には、到来する音波を受信するためのトランスデューサの前端に位置する音入口と、一定容積の空気を有し、トランスデューサの後端を覆うハウジングによって形成された後部音響チャンバとの間に配置された可動ダイアフラムを含む。到来する音波に起因する空気圧レベルの変化は、トランスデューサにも含まれている穴あきバックプレートに対するダイアフラムの動きを引き起こす。この動きにより、ダイアフラムとバックプレートとの間にキャパシタンスの変化が生じ、これにより、マイクロホンパッケージに含まれている集積回路(例えば、特定用途向け集積回路(「ASIC」))によって検知される交流出力電圧が生じる。理解されるように、ハウジング(例えば、筐体缶)は、MEMSトランスデューサの後端を覆っているため、ハウジングは、MEMSトランスデューサの可動ダイアフラムへの後部音響アクセスを遮断する。その結果、MEMSマイクロホンは、トランスデューサの前端の音入口を介してのみ音を受信し、したがって、無指向性の応答を生成する。
【0006】
したがって、望ましくない周囲音から分離することができ、かつ広帯域オーディオおよびプロフェッショナル用途に適した指向性極性パターンを有するMEMSマイクロホンが必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、とりわけ、(1)指向性極性パターンを生成するように構成された内部音響遅延ネットワークであって、MEMSトランスデューサの既存の筐体缶の背後に第2の筐体缶を追加することによって形成される大きいキャビティコンプライアンス、および第2の筐体缶の後壁に結合された音響抵抗を含む、音響遅延ネットワークと、(2)広帯域オーディオ(例えば、20Hz~20kHz)での使用に適したマイクロホン周波数応答を生成するための補正回路と、を有するMEMSマイクロホンを提供することによって上記および他の問題を解決することが意図されている。
【0008】
例えば、一実施形態は、第1の音響容積(acoustic volume)を画定する第1の筐体、および第1の筐体内に配置された微小電気機械システム(「MEMS」)マイクロホントランスデューサを含むトランスデューサアセンブリと、第1の筐体に隣接して配置され、第1の音響容積と音響通信する第2の音響容積を画定する第2の筐体であって、音響抵抗を含む第2の筐体であり、第1および第2の音響容積が、音響抵抗と協働して、MEMSマイクロホントランスデューサの指向性極性パターンを生成するための音響遅延を生成する、第2の筐体と、トランスデューサアセンブリに電気的に結合され、MEMSマイクロホントランスデューサの周波数応答の一部を補正するように構成されたシェルビングフィルタ(shelving filter)を含む回路と、を備えるマイクロホンアセンブリを含む。
【0009】
別の例示的な実施形態は、微小電気機械システム(「MEMS」)マイクロホントランスデューサ、MEMSマイクロホントランスデューサに電気的に結合された集積回路、ならびに第1の音響容積を画定し、集積回路およびMEMSマイクロホントランスデューサが内部に配置された第1の筐体、を含むトランスデューサアセンブリと、第1の筐体に隣接して配置され、第1の音響容積と音響通信する第2の音響容積を画定する第2の筐体であって、第1および第2の音響容積が、MEMSマイクロホントランスデューサの指向性極性パターンを生成するための音響遅延を生成する、第2の筐体と、を備え、集積回路がMEMSマイクロホントランスデューサの周波数応答の一部を補正するように構成されたシェルビングフィルタを備える回路を含む、マイクロホンアセンブリを含む。
【0010】
これらおよび他の実施形態、ならびに様々な置換および態様は、本発明の原理を用いることができる様々なやり方を示す例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明および添付図面から明らかになり、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】従来の無指向性MEMSマイクロホンの一般的なトポロジーを示す概略図である。
【
図2】1つまたは複数の実施形態による例示的な指向性MEMSマイクロホンの一般的なトポロジーを示す概略図である。
【
図3】実施形態による、
図2に示す指向性MEMSマイクロホンの例示的な周波数応答プロット、および第1の補正回路に起因する第1の補正された応答である。
【
図4】実施形態による、
図2に示す指向性MEMSマイクロホンの例示的な周波数応答プロット、および第2の補正回路に起因する第2の補正された応答である。
【
図5】実施形態による、
図4の第2の補正回路に含まれる例示的なシェルビングフィルタの周波数応答プロットである。
【
図6】実施形態による、
図5の例示的なシェルビングフィルタの回路図である。
【
図7】1つまたは複数の実施形態による、
図2に示す指向性MEMSマイクロホンと、マイクロホンに結合された補正回路と、を備えるマイクロホンアセンブリハウジングの概略図である。
【
図8】1つまたは複数の実施形態による、
図2に示す指向性MEMSマイクロホンと、マイクロホン内に統合された補正回路と、を備えるマイクロホンアセンブリハウジングの概略図である。
【
図9】1つまたは複数の実施形態による、
図2に示す指向性MEMSマイクロホンと、マイクロホンアセンブリハウジングに結合されたケーブルに含まれる補正回路と、を備えるマイクロホンアセンブリハウジングの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明は、本発明の原理に従って、本発明の1つまたは複数の特定の実施形態を説明し、図示し、例示する。本明細書は、本発明を本明細書に記載される実施形態に限定するためではなく、当業者がこれらの原理を理解し、その理解をもって、これらの原理を適用して、本明細書に記載される実施形態だけでなく、これらの原理に従って思い付く可能性がある他の実施形態も実践することができるようなやり方で、本発明の原理を説明し、教示するために提供される。本発明の範囲は、文字通りにまたは均等論の下で、添付の特許請求の範囲内に含まれ得るすべてのそのような実施形態をカバーすることが意図されている。
【0013】
説明および図面において、同様または実質的に同様の要素は、同じ参照番号でラベル付けされることがあることに留意されたい。しかしながら、これらの要素は、例えば、そのようなラベル付けがより明確な説明を容易にする場合などは、異なる番号でラベル付けされる場合がある。さらに、本明細書に記載される図面は、必ずしも縮尺通りには描かれておらず、場合によっては、ある特定の特徴をより明確に表すために比率が誇張されている場合がある。このようなラベル付けおよび描画の実践は、必ずしも根本的な実質的な目的を暗示するものではない。上述したように、本明細書は、全体として捉えられ、本明細書に教示されるような本発明の原理に従って解釈され、当業者に理解されることが意図されている。
【0014】
図1は、典型的なまたは従来のアナログMEMSマイクロホン100の一般的なトポロジーを例示し、このトポロジーは、本明細書に記載され、
図2に示される技法に従って設計された指向性MEMSマイクロホン200の一般的なトポロジーと比較するために示されている。MEMSマイクロホン100は、集積回路104に電気的に結合されたMEMSセンサすなわちトランスデューサ102からなる従来のトランスデューサアセンブリ101を含み、これらは両方とも、基板106(例えば、シリコンウエハ)上に形成され、ハウジング108(例えば、筐体缶)内に封入されている。集積回路104は、典型的には、MEMSトランスデューサ102をプリント回路板(「PCB」)および他の外部デバイスに動作可能に結合するように構成された特定用途向け集積回路(「ASIC」)である。
【0015】
MEMSトランスデューサ102は、本質的に、可動膜すなわちダイアフラム110および固定バックプレート112からなるシリコンキャパシタとして機能する。より具体的には、ダイアフラム110は、トランスデューサ102内に形成された前方チャンバすなわちキャビティ114の背後にあり、バックプレート112は、ダイアフラム110の背後に、筐体缶108によってトランスデューサ102の後部の周りに形成された後方チャンバ118に隣接して配置されている。可動ダイアフラム110は、キャビティ114に入る音波によって引き起こされる空気圧の変化に応答して屈曲する薄い固体構造である。音波は、トランスデューサ102の前端の基板106を貫いて形成された音入口116を通ってキャビティ114に入る。バックプレート112は、空気が打ち抜き穴を通って後方チャンバ118に向かって移動するときに静止したままの穴あき構造である。動作中、到来する音響圧力波または音に応答した、バックプレート112に対するダイアフラム110の動きにより、ダイアフラム110とバックプレート112との間のキャパシタンスの量の変化が生じる。これにより、取り付けられた集積回路104によって検知される交流出力電圧が生じる。
【0016】
図1に示すように、ハウジング108は、ダイアフラム110への後部音響アクセスを遮断し、これにより、MEMSマイクロホン100が本質的に無指向性になる。より具体的には、音波は、トランスデューサ102の前方の音入口116のみを通ってトランスデューサ102に入ることができるため、ダイアフラム110は、前方キャビティ114内の音圧のみに反応することができ、したがって、トランスデューサ102全体が任意の方向(例えば、前側、後側、左側、右側)に配置された音源に対して等しく感度を有するようになる。無指向性マイクロホンは、ある特定の用途、例えば、ターゲット音が複数の方向から来ている場合に有利である可能性があるが、指向性の、またはより具体的には単一方向のマイクロホンは、他の用途において、例えば、多くの望ましくない群集または背景雑音に関連付けられたライブパフォーマンスを録音する場合などに好ましいことがある。
【0017】
図2は、実施形態による指向性MEMSマイクロホン200の一般的なトポロジーを示す。指向性MEMSマイクロホン200は、
図1に示す従来のトランスデューサアセンブリ101と同様のトランスデューサアセンブリ201を含む。特に、トランスデューサアセンブリ201は、トランスデューサ102と同様のMEMSマイクロホントランスデューサ202、集積回路104と同様の集積回路204、およびシリコン基板106と同様の基板206を含む。さらに、MEMSトランスデューサ202は、穴あきバックプレート212の下に配置された可動ダイアフラム210と、ダイアフラム210とトランスデューサ202の前端の基板206を貫いて形成された第1の音入口216との間に形成された前方キャビティ214と、を含む。
【0018】
トランスデューサアセンブリ201は、MEMSトランスデューサを収容するための標準的な筐体缶であってもよく、ハウジング108に少なくとも幾分類似している第1の筐体208も含む。例えば、MEMSトランスデューサ202および集積回路204は、両方とも、
図1のように、第1の筐体208内に配置され、第1の筐体208は、
図1に示す後方チャンバ118と同様の第1の音響容積218をMEMSトランスデューサ202の背後に画定または形成する。しかしながら、後方チャンバ118とは異なり、第1の筐体208は、
図2に示すように、第1の音入口216に対向して、MEMSトランスデューサ202の後端または後側に隣接して配置された開孔220を含む。開孔220は、第1の筐体208の頂面を貫いて穴を打ち抜くか、または穴を開けることによって、あるいは任意の他の適切な手段によって形成することができる。
【0019】
実施形態では、開孔220は、トランスデューサ202の後側を少なくとも部分的に開放し、ダイアフラム210への後部音響アクセスを可能にするように構成されている。これにより、MEMSトランスデューサ202のダイアフラム210が2つの対向する側(例えば、前側および後側)で部分的に開放され、これにより、ダイアフラム210を横切る音響圧力差が生じる。例えば、0度軸に沿ってトランスデューサアセンブリ201に入射する(例えば、x方向に進む)音は、最初に前方音入口216を通って、次いで2つの開口部216と220との間の距離によって遅延された後、開孔220を通って入る。理解されるように、開孔220に入る音波は、第1の入口216に入る音波の(音源からの距離に応じて)減衰された、位相シフトされたバージョンである。結果として生じる圧力勾配は、ダイアフラム210を移動させる正味の力(例えば、前方の力から後方の力を差し引いたもの)をダイアフラム210に及ぼす。したがって、MEMSマイクロホン200は、「圧力勾配マイクロホン」として効果的に動作する。
【0020】
ダイアフラム210の前側と後側との間の圧力差により、MEMSマイクロホン200に指向性応答が生成される。例えば、一部の実施形態では、MEMSマイクロホン200は、トランスデューサ202の前方または後方から到来する音に対しては等しく感度を有してもよいが、側面(例えば、双方向)から到来する音に対しては感度がなくてもよい。好ましい実施形態では、MEMSマイクロホン200は、一方向性であるように、または一方向のみ(例えば、前面)からの音に主として感度があるように構成されている。そのような場合、MEMSマイクロホン200は、圧力と圧力勾配効果の適切な組合せを取得することによって、任意の1次指向性極性パターン(例えば、カーディオイド、ハイパーカーディオイド、スーパーカーディオイド、またはサブカーディオイド)を有するように構成することができる。これは、例えば、MEMSマイクロホン200内の空気の内部容積を(例えば、第2の筐体222の追加によって)調整すること、および/またはその音響抵抗値を(例えば、音響抵抗228の追加によって)構成することによって達成することができる。
【0021】
より具体的には、MEMSマイクロホン200内の容積を調整するための1つの特性は、ダイアフラム210に加わる正味の力に線形に比例する、前方音入口と後方音入口との間の距離である。理解されるように、圧力勾配を確立するために、音入口間の距離は、MEMSトランスデューサ202の音響自己雑音を含むあらゆるシステム雑音を上回って検出することができる正味の力を確立するのに少なくとも十分な大きさでなければならない。場合によっては、第1の音入口216と開孔220との間の距離は、トランスデューサアセンブリ201の製造者によって予め決められており、この所定の距離(例えば、約2ミリメートル(mm))は、マイクロホンシステム全体の電気的/機械的構成要素のノイズフロアを上回って検出可能であるほどには十分に大きくはない。
【0022】
実施形態では、改善された指向性マイクロホン応答は、対象となる帯域幅にわたって圧力勾配が最大化されるか、または実質的に増加するまで、前方音入口と後方音入口との間の距離を増加させることによって達成することができる。この結果を達成するのを助けるために、トランスデューサアセンブリ201は、第1の筐体208の外部に隣接して配置され、またはそれに取り付けられ、第1の筐体208およびその内部に形成された第1の音響容積218の背後に第2の音響容積224を画定する、第2の筐体222をさらに含む。第2の筐体222は、
図2に示すように、第1の筐体208と同様の筐体缶またはハウジングであってもよく、第1の筐体208の上に積み重ねられてもよい。実施形態によると、第1の筐体208の後端の開孔220は、第1の音響容積218と第2の音響容積224との間の音響通信を容易にし、それによってトランスデューサアセンブリ201の総音響容積を増加させる。さらに、
図2に示すように、第2の筐体222の後端または壁は、第2の筐体222を通してダイアフラム210への後部アクセスを可能にするために、開孔220に対向して配置された第2の音入口226を含む。実施形態によると、第2の音入口226は、マイクロホン200の後方音入口として動作する。例えば、ダイアフラム210への正味の力は、第1のまたは前方の音入口216と第2の音入口226との間の距離の関数であってもよい。
図2に示すように、第2の入口226は、開孔220および/または第1の音入口216と実質的に整列して、ダイアフラム210への後部アクセスをさらに容易にすることができる。
【0023】
実施形態では、第2の入口226は、第1の入口216から所定の距離Dに配置することができ、この所定の距離(「前方後方間距離」とも呼ばれる)は、ダイアフラム210を横切る圧力勾配を生成するように選択することができる。
図2に示すように、マイクロホン200の前方後方間距離は、第1の筐体208の高さに第2の筐体222の高さを加えたものに実質的に等しい。一部の実施形態では、第1の筐体208の高さは固定されたままであるが、第2の筐体222の高さは、マイクロホン200の前方から後方までの距離Dがダイアフラム210を横切る圧力勾配を最大化または実質的に増加させるのに十分であるように選択される。例えば、実施形態では、マイクロホン200の前方後方間距離Dは、第2の筐体222が5mmの高さを有するように構成することによって、約7ミリメートル(mm)に増加する。他の実施形態では、第1の筐体208の高さも調整して、マイクロホン200の前方から後方までの全体的な距離の増加を達成することができる。
【0024】
マイクロホン200の前方後方間距離Dを増加させることにより、外部音響遅延d1(「音遅延」とも呼ばれる)、すなわち音圧波がマイクロホン200の前端(例えば、第1の音入口216)からマイクロホン200の後端(例えば、第2の音入口226)まで進むのに要する時間を増加させることができる。理解されるように、マイクロホン200の後端に入射する音波は、平面音波を仮定し、マイクロホン200と音源との間の距離がマイクロホン200の前方から後方への無視できるほどの圧力降下を生成するのに十分な大きさであると仮定すると、前端に入射する音波と位相が異なるだけである。
【0025】
実施形態では、第2の筐体222は、マイクロホン200のための1次指向性極性パターン(例えば、カーディオイド、ハイパーカーディオイド、スーパーカーディオイド、またはサブカーディオイドなど)を確立することが可能な内部音響遅延d2(本明細書では「ネットワーク遅延」とも呼ばれる)を導入するのを助けるようにさらに構成されている。この結果を達成するために、第2の筐体222は、マイクロホン200の後端の第2の音入口226への音の伝播を修正し、マイクロホン200の前端の第1の音入口216に向かう指向性を優先した1次極性パターンを生成するように構成された音響遅延ネットワーク(「位相遅延ネットワーク」とも呼ばれる)のすべてまたは一部を含むことができる。例えば、実施形態では、音響遅延ネットワークは、MEMSマイクロホン200の全体的なキャビティコンプライアンスCtotal、すなわち第1の筐体208の内側の第1の音響容積218と第2の筐体222の内側の第2の音響容積224の和と、第2の入口226に隣接して配置された所定の音響抵抗値Rを有する音響抵抗228と、によって形成される。音響抵抗228は、第2の入口226を覆うように第2の筐体222に取り付けられ、第2の音入口226に音響流抵抗Rを生成するように構成された、布、スクリーン、または他の適切な材料であってもよい。動作中、第1の音入口216を介してダイアフラム210に衝突する音波は、マイクロホン200の後端の第2の音入口226にも伝播し、この第2の音入口226を通って、ダイアフラム210の後部に達する前に、音響抵抗228を含む音響遅延ネットワークを通過する。
【0026】
実施形態では、第2の筐体222によって形成される第2の音響容積224と、そこに含まれる音響抵抗228と、を含む第2の筐体222の機械的特性は、音響ネットワーク遅延d2の値を大部分決定することができる。例えば、一実施形態では、音響ネットワーク遅延d2は、音響抵抗RとキャビティコンプライアンスCtotalの積に実質的に等しいと近似される。さらに、場合によっては、第2の音響容積224が第1の音響容積218よりも著しく大きいため、全体的なキャビティコンプライアンスCtotalは、主に、第2の筐体222によって形成される第2の音響容積224の関数である。理解されるように、指向性マイクロホン応答は、外部音響遅延d1に対抗するように、かつ圧力勾配がヌル(またはゼロ)に近づく方向から接近する音波を相殺するための位相シフトを生成するように音響ネットワーク遅延d2を構成することによって達成することができる。したがって、実施形態では、MEMSマイクロホン200の音響抵抗RおよびキャビティコンプライアンスCtotalの値は、音響ネットワーク遅延d2から生じる時間遅延が外部音響遅延d1から生じる時間遅延に実質的に等しくなるように適切に選択することができ、ここで外部遅延d1は、マイクロホン200の前方後方間距離Dを音速(「c」)で割ったものにほぼ等しい。
【0027】
したがって、本明細書に記載される技法は、
図2に示すように、MEMSトランスデューサアセンブリ201の外部にあるか、またはその一部ではない音響遅延ネットワークを有する指向性MEMSマイクロホン200を提供する。この構成により、下にあるトランスデューサアセンブリ201を変更することなく、第2の筐体222を特定の用途または極性パターンに合わせて調整することができるため、MEMSマイクロホン200の設計の柔軟性が向上する。音響遅延ネットワークの例示的な実施態様が本明細書に記載されたが、本明細書に記載される技法に従って他の実施態様も企図されることを理解されたい。
【0028】
実施形態では、指向性MEMSマイクロホン200の圧力勾配応答は、オクターブ当たり6デシベル(dB)の割合で上昇するが、音響遅延ネットワークによって生成されるローパスフィルタ効果のために、より高い周波数では平坦になる。言い換えれば、マイクロホン200は、ハイエンド応答を有するが、低音または中間セクション応答を有さない。一例として、トランスデューサアセンブリ201に第2の筐体222を追加すると生成される音響遅延ネットワークは、上で論じたように前方後方間距離を7mmと仮定すると、10kHz付近で平坦になり始め、7.8キロヘルツ(kHz)のコーナー周波数またはニー(例えば、-3dBダウンポイント)を有する周波数応答を有する1次ローパスフィルタのように振る舞うことができる(例えば、
図3に示す応答プロット302を参照)。この周波数応答は、マイクロホントランスデューサが、実質的に全オーディオ帯域幅(例えば、20ヘルツ(Hz)≦f≦20キロヘルツ(kHz))を再現することが期待されるある特定の用途、例えば、ライブまたはステージパフォーマンスおよび他の広帯域オーディオ用途などには許容されない場合がある。したがって、本明細書に記載される技法は、対象となる帯域幅の少なくとも実質的な部分にわたって指向性MEMSマイクロホン200のための平坦な周波数応答を生成するように構成された補正回路をさらに提供する(例えば、
図3の補正応答プロット304および
図4の補正応答プロット404を参照)。補正回路は、(例えば、
図6に示すように)オペアンプ技術で構築することができ、以下でより詳細に論じるように、(例えば、
図7に示すように)MEMSマイクロホン200に取り付けられても、(例えば、
図8に示すように)MEMSマイクロホン200に統合されても、または(例えば、
図9に示すように)マイクロホンアセンブリハウジングに結合されたケーブルに含まれてもよい。
【0029】
ここで
図3を参照すると、実施形態による、MEMSマイクロホン200の例示的な周波数対音圧グラフ300が示されている。グラフ300は、いかなる補正または等化効果もない、指向性MEMSマイクロホン200の元の周波数応答を表す第1の応答プロット302(本明細書では「未補正の応答プロット」とも呼ばれる)を含む。図示するように、未補正の応答プロット302は、第1の所定の周波数(例えば、10kHz付近)よりも上で平坦になり始め、第2の所定の周波数(例えば、7.8キロヘルツ(kHz))でコーナー周波数またはニー(例えば、-3dBダウンポイント)を有する。グラフ300は、第1の補正回路によって調整または等化された後の指向性MEMSマイクロホン200の補正された周波数応答を表す第2の応答プロット304(本明細書では「補正された応答プロット」とも呼ばれる)をさらに含む。実施形態では、第1の例示的な補正回路(図示せず)は、MEMSマイクロホン200の対象となる全帯域幅(例えば、20Hz~20kHz)をカバーするのに十分に低いコーナー周波数を有する受動ローパスフィルタを含むことができる。ローパスフィルタは、対象となる全帯域幅にわたって適用されるため、
図3のプロット304によって示すように、補正されたマイクロホン応答は、より高い周波数で減衰することになる。これは、少なくとも、MEMSマイクロホン200の周波数応答が、音響遅延ネットワークの追加に起因して、ある特定のより高い周波数(例えば、10kHz)よりも上で既に少なくとも部分的に減衰しているため、あまり望ましくない場合がある。
【0030】
図4は、実施形態による、MEMSマイクロホン200の別の例示的な周波数対音圧グラフ400を示す。グラフ400は、いかなる補正または等化効果もない、指向性MEMSマイクロホン200の元の周波数応答を表す第1の応答プロット402(本明細書では「未補正の応答プロット」とも呼ばれる)を含む。
図3に示すプロット302と同様に、未補正の応答プロット402は、第1の所定の周波数(例えば、10kHz付近)よりも上で平坦になり始め、第2の所定の周波数(例えば、7.8キロヘルツ(kHz))でコーナー周波数またはニー(例えば、-3dBダウンポイント)を有する。グラフ400は、第2の補正回路によって調整または等化された後の指向性MEMSマイクロホン200の補正された周波数応答を表す第2の応答プロット404(本明細書では「補正された応答プロット」とも呼ばれる)をさらに含む。実施形態によると、第2の補正回路は、MEMSマイクロホン200の周波数応答の選択された部分を補正するように構成された能動シェルビングフィルタを含む。例えば、能動シェルビングフィルタは、マイクロホン応答402の平坦でない部分(例えば、7.8kHzのコーナー周波数ニーまでオクターブ当たり6dBの上昇)を等化し、応答402の平坦な部分(例えば、10kHzよりも上)が影響を受けないままにしておくように構成することができる。
【0031】
図5は、実施形態による、MEMSマイクロホン200の周波数応答の一部を補正するための例示的な能動シェルビングフィルタの応答プロット500である。図示するように、応答プロット500(本明細書では「シェルビングフィルタプロット」とも呼ばれる)は、所定の高周波値(例えば、10kHz)に達するまで減少し、その後、フィルタの周波数応答は、平坦になる。実施形態では、シェルビングフィルタプロット500のこの形状は、シェルビングフィルタに関連付けられた少なくとも3つの対象となるコーナー周波数に起因する。第1のコーナー周波数は、プロット500の左側に隣接しており、低周波数応答または「拡張」を制御するためのハイパスフィルタとして機能する。第2のコーナー周波数は、-6dB/オクターブの補正曲線が始まる前に発生し、第3のコーナー周波数は、-6dB/オクターブの補正曲線が終了すると同時に、または高周波出力が影響を受けずに通過することができるように補正が作動を停止するところで発生する。実施形態によると、
図4に示す補正された周波数プロット404は、
図5のシェルビングフィルタプロット500と
図4の未補正の応答プロット402とを組み合わせた結果である。
図4に示すように、補正された応答プロット404は、周波数応答の大部分(例えば、シェルビングフィルタの第2のコーナー周波数と第3のコーナー周波数との間)に対して平坦であり、減衰は、10kHz(例えば、第3のコーナー周波数)の後でのみ発生する。
【0032】
図6は、実施形態による、MEMSマイクロホン200の周波数応答の一部を補正または平坦化するためのシェルビングフィルタのアナログバージョンを実施するための例示的な回路600を示す。図示するように、回路600は、能動シェルビングフィルタのアナログバージョンを達成するために、演算増幅器(「オペアンプ」)技術を使用して構築されてもよい。描かれた回路は、シェルビングフィルタを実施するための一例であり、本明細書に記載される技法に従って他の実施態様が企図されることを理解されたい。
【0033】
一部の実施形態では、シェルビングフィルタは、デジタル信号プロセッサ、1つまたは複数のアナログ構成要素、および/またはそれらの組合せを使用して実施されてもよい。例えば、一般に、シェルビングフィルタは、式1などの数学的伝達関数によって表すことができ、ここで、分母は、低周波の極の位置を表し、分子は、高周波のゼロおよびシェルビングの位置を表す。
【0034】
【0035】
式1を
図6の回路600に適用すると、高周波のゼロ(シェルフ)は、式2を使用して得ることができ、低周波の極は、式3を使用して得ることができる。
【0036】
【0037】
【0038】
回路600のキャパシタC1のキャパシタンス値が十分に大きく、そのインピーダンスがシェルビング関数に影響を及ぼさないと仮定すると、シェルビング部分の回路伝達関数は、式4によって表すことができる。
【0039】
【0040】
場合によっては、式4を使用して、例えば、デジタル信号プロセッサにシェルビングフィルタのデジタルバージョンを実施することができる。他の場合では、式4を使用して、
図6に示す回路600を実施することができる。本明細書で提供されるシェルビングフィルタ方程式は、例示であり、本明細書に記載される技法に従って他の実施態様が企図されることを理解されたい。
【0041】
ここで
図7を参照すると、実施形態による、
図2の指向性MEMSマイクロホン200の平坦な周波数応答を生成するための補正回路702を備える例示的なアセンブリハウジング700(本明細書では「マイクロホンアセンブリ」とも呼ばれる)が示されている。図示するように、ハウジング700は、MEMSマイクロホン200と、これに動作可能に結合された補正回路702と、を含む。
図7に示すように、補正回路702は、マイクロホン700のトランスデューサアセンブリ201内に含まれる集積回路204に電気的に接続することができる。この電気的接続は、基板206の外面に設けられたはんだパッド704を介して行うことができ、集積回路204も、基板206を介してはんだパッド704に電気的に結合されている。
【0042】
図7に示すように、補正回路702は、MEMSマイクロホン200の外側であるが、全体的なアセンブリハウジング700内で結合することができる。実施形態によると、補正回路702は、トランスデューサアセンブリ201の外部および第2の筐体222の外部のうちの1つまたは複数に機械的に取り付けることができる。図示する実施形態では、補正回路702は、第1の筐体208および第2の筐体222の両方に隣接して、マイクロホン200の一方の側に沿って結合されている。他の実施形態では、補正回路702は、補正回路702が集積回路204に電気的に結合されたままである限り、アセンブリハウジング700内の他の場所に配置することができる。この構成(例えば、補正回路702をMEMSマイクロホン200の完全に外側に配置し、外部接続を介してこの2つを結合すること)により、補正回路702を、例えば、従来のMEMSマイクロホンユニット(例えば、
図1のMEMSマイクロホン100)または他のMEMSマイクロホン設計を含む既存のMEMSマイクロホンに追加することができる。この構成により、MEMSマイクロホン200を補正回路702とは独立して変更することもでき、その逆も可能であり、したがって、全体的なマイクロホン設計の複雑さを低減させることができる。
【0043】
実施形態では、補正回路702は、所望の周波数応答を生成するように構成された1つまたは複数のアナログデバイス(例えば、
図6に示す補正回路600など)に結合されたプリント回路板(PCB)を含む。補正回路702は、所望の応答を得るために、アセンブリハウジング700の外側に他のインターフェースまたは回路が必要とされないように構成することができる。例えば、必要なすべての等化回路は、アセンブリハウジング700の内側の補正回路702に含まれていてもよい。好ましい実施形態では、補正回路702は、MEMSマイクロホン200の周波数応答の選択された部分を補正するように構成された能動シェルビングフィルタを含む。一部の実施形態では、能動シェルビングフィルタは、例えば、
図6の回路600などのオペアンプ技術を使用して構築される。
【0044】
図7に示すように、ハウジング700は、マイクロホンアセンブリハウジング700を外部デバイス(例えば、受信器など)に動作可能に接続するためのケーブルを受け入れるように構成された接続ポート706をさらに含む。一部の実施形態では、接続ポート706は、ケーブルに接続された標準的なオーディオプラグを受け入れるように構成された標準的なオーディオ入力ポートである。図示するように、接続ポート706は、マイクロホン200によって捕捉されたオーディオ信号がポート706を介してマイクロホンアセンブリハウジング700を出る前に補正回路702によって修正されるように、補正回路702に接続されてもよい。
【0045】
図8は、実施形態による、
図2の指向性MEMSマイクロホン200と、マイクロホン200の周波数応答を補正するように構成された補正回路と、を備える別の例示的なアセンブリハウジング800(本明細書では「マイクロホンアセンブリ」とも呼ばれる)を表す。
図8の補正回路は、上述し、
図7に示した補正回路702と機能的に同様であってもよいが、その構造的な構成の点では物理的に異なっていてもよい。例えば、図示する実施形態では、補正回路は、トランスデューサ回路201の外側に外部回路または別個のPCBが必要とされないように、集積回路204(例えば、ASIC)内に含まれている。好ましい実施形態では、集積回路204の補正回路は、本明細書に、および
図7に関して記載されたように、MEMSマイクロホン200の周波数応答の選択された部分を補正するように構成された能動シェルビングフィルタを含む。理解されるように、この構成は、マイクロホンアセンブリハウジング800の全体的なサイズ、ならびにマイクロホン設計の全体的な複雑さを著しく低減させる。
【0046】
図8に示すように、アセンブリハウジング800は、はんだパッド804を介して集積回路204に電気的に結合された接続ポート806をさらに含む。
図7に示す接続ポート706と同様に、接続ポート806は、マイクロホン200を外部デバイス(例えば、受信器など)に動作可能に結合するためのケーブルを受け入れるように構成することができる。例えば、ポート806は、ケーブルの一端に取り付けられた標準的なオーディオプラグを受け入れるように構成された標準的なオーディオ入力ポートであってもよい。また、接続ポート706と同様に、接続ポート806を介してマイクロホンアセンブリハウジング800を出るオーディオ信号は、ハウジング800内の補正回路によって既に修正されている。
【0047】
図9は、実施形態による、
図2の指向性MEMSマイクロホン200を収容するアセンブリハウジング902(本明細書では「マイクロホンアセンブリ」とも呼ばれる)と、マイクロホン200の周波数応答を補正するように構成された補正回路904と、ケーブル906と、を備える例示的なマイクロホンシステム900を表す。補正回路904は、上述し、
図7に示した補正回路702と同様であってもよい。例えば、好ましい実施形態では、補正回路904は、本明細書に、および
図7に関して記載されたように、MEMSマイクロホン200の周波数応答の選択された部分を補正するように構成された能動シェルビングフィルタを含む。しかしながら、補正回路702とは異なり、補正回路904は、マイクロホンアセンブリハウジング900の外側に位置し、ケーブル906を介してマイクロホンアセンブリハウジング902に動作可能に結合されている。
【0048】
図9に示すように、ケーブル906は、アセンブリハウジング902に含まれる接続ポート908に結合されている。実施形態では、接続ポート908は、
図7および
図8にそれぞれ示され、本明細書に記載されているように、接続ポート706および806と同様であってもよい。例えば、接続ポート908は、ケーブル906の第1の端部に接続された標準的なオーディオプラグを受け入れるように構成された標準的なオーディオ入力ポートであってもよい。適切な接続ポートの例には、XLRコネクタ(例えば、XLR3、XLR4、XLR5など)、ミニXLRコネクタ(例えば、TA4F、MTQG、または他のミニ4ピンコネクタなど)、1/8インチまたは3.5mmコネクタ(例えば、TRSコネクタなど)、および低電圧コネクタまたは同軸コネクタ(例えば、LEMOによって製造された単極または多極コネクタなど)が含まれるが、これらに限定されない。
図9に示すように、接続ポート908は、マイクロホン200の基板206の外面に設けられたはんだパッド910を介してマイクロホン200の集積回路204に電気的に接続することができる。基板206を介して、はんだパッド910と集積回路204との間に電気的接続を形成することができる。
【0049】
実施形態では、補正回路904は、ケーブル906に含まれるか、さもなければケーブル906に結合されたプリント回路板(図示せず)に含まれてもよい。プリント回路板は、剛性または可撓性の基板であってもよい。一例として、
図9に示すように、補正回路904の入力は、アセンブリハウジング900と補正回路904との間に配置されたケーブル906の第1のセクション906aに結合されてもよく、補正回路904の出力は、補正回路904の反対側に配置されたケーブル906の第2のセクション906bに結合されてもよい。そのような場合、ケーブル906の第1の端部は、図示するように、接続ポート908に結合することができ、ケーブル906の第2の端部(図示せず)は、外部デバイス(図示せず)に結合することができる。したがって、マイクロホン200によって捕捉されたオーディオ信号は、接続ポート908を介して、アセンブリハウジング902を出た後であるが、ケーブル906の第2の端部に結合された外部デバイス(例えば、受信器)に進む前に、ケーブル906に含まれる補正回路904によって、修正され得る。
【0050】
実施形態では、ケーブル906は、アセンブリハウジング902と外部デバイスとの間でオーディオ信号および/または制御信号を伝送することができる標準のオーディオケーブルである。一部の実施形態では、ケーブル906は、補正回路904を介して、またはそれを通して互いに電気的に接続された2つのセクション906aおよび906bに物理的に分離される。他の実施形態では、ケーブル906は、連続ケーブルであり、補正回路904は、並列接続を使用してケーブル906に電気的に結合される。例示的な一実施形態では、補正回路904は、ケーブル906に結合されたハウジング(例えば、プラスチックケース)に封入されている。ケーブル906上およびアセンブリハウジング902の外側に補正回路を配置することによって、マイクロホンアセンブリ902の全体的なサイズおよび複雑さを最小化または低減させることができ、補正回路904は、必要に応じて、微調整、保守、および/または交換のためにより容易にアクセスすることができるようになる。補正回路904をケーブル906に配置することにより、例えば、マイクロホンアセンブリが(例えば、
図7および
図8に示すように)それ自体の補正回路を既に含む場合、またはMEMSマイクロホンが追加の補正を必要としない場合、補正回路904を完全に除去するという選択肢も生じる。
【0051】
したがって、本明細書に記載される技法は、トランスデューサアセンブリのネイティブの筐体缶の背後にある第2の筐体缶またはハウジングと、両方の筐体の後壁内の開孔と、を含む指向性MEMSマイクロホンを提供し、ネイティブの筐体缶によって画定された第1の音響容積と第2の筐体缶によって画定された第2の音響容積とを音響的に接続する。第1および第2の音響容積は、第2の筐体を貫いて形成された後部音響入口の上に配置された音響抵抗と協働して、MEMSマイクロホンの指向性極性パターンを生成するための音響遅延を生成するように構成されている。
【0052】
本明細書に記載される技法は、広帯域オーディオ用途に適した周波数応答を有する指向性MEMSマイクロホンを生成することも提供する。マイクロホンの周波数応答は、マイクロホン応答の関連部分を補正するためのシェルビングフィルタを含む補正回路を使用して修正することができる。例えば、シェルビングフィルタは、高周波部分が影響を受けずに通過するように、周波数応答の非平坦部分のみを修正するように構成することができる。実施形態では、補正回路は、MEMSマイクロホントランスデューサの集積回路内に埋め込まれるか、トランスデューサアセンブリの外部に取り付けられるか、またはマイクロホンアセンブリハウジングに結合されたケーブルに含まれてもよい。
【0053】
本開示は、その真の、意図された、および公正な範囲ならびに精神を制限するのではなく、本技術に従って様々な実施形態をどのように作成および使用するかを説明することが意図されている。前述の説明は、網羅的であること、または開示された正確な形態に限定されることは意図されていない。上記の教示に照らして、変更形態または変形形態が可能である。実施形態は、記載された技術の原理およびその実際の用途の最良の説明を提供し、当業者が様々な実施形態において、および企図される特定の用途に適するような様々な変更形態を用いて本技術を利用できるように選択および記載された。そのような変更形態および変形形態はすべて、本特許出願およびそのすべての均等物の係属中に修正される可能性があるため、それらが公正に、法的に、および公平に権利を与えられる幅に従って解釈される場合に、添付の特許請求の範囲によって決定されるような実施形態の範囲内にある。