(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】リチウム硫黄およびナトリウム硫黄電池カソード
(51)【国際特許分類】
H01M 4/136 20100101AFI20221226BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20221226BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221226BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20221226BHJP
【FI】
H01M4/136
H01M4/58
H01M10/052
H01M10/054
(21)【出願番号】P 2020560826
(86)(22)【出願日】2019-04-29
(86)【国際出願番号】 US2019029597
(87)【国際公開番号】W WO2019212944
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-12-07
(32)【優先日】2018-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501335771
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン サラ ソイ
(72)【発明者】
【氏名】アヴェリー イー バウマン
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103236542(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102738510(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0207446(US,A1)
【文献】特開2015-145454(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0086788(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第102336774(CN,A)
【文献】国際公開第2017/152171(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 10/00-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池カソードであって、複数の欠陥のある金属有機フレームワークの部分を含み:
(i)そのときにそれぞれの欠陥のある金属有機フレームワークの部分には、構造的欠陥および組成的特色から選ばれる少なくとも一の欠陥が無関係に含まれ;および
(ii)そのときにそれぞれの欠陥は電池アノード金属イオンの捕捉、多硫化物の捕捉のための化学的アンカー置換基の組込み、またはそれらの組合せを無関係に可能にさせるものであり、および
そのときに前記金属有機フレームワークの金属はジルコニウム、ハフニウム、セシウム、チタン、バナジウム、モリブデン、ニオブ、およびクロムから選ばれる、カソード。
【請求項2】
前記金属有機フレームワークの金属はジルコニウムである、請求項1に記載された電池カソード。
【請求項3】
前記欠陥は金属配位部位およびプロトン性部位から無関係に選ばれる、請求項1または請求項2に記載された電池カソード。
【請求項4】
前記カソードには、硫黄が含まれ、およびリチウム硫黄電池カソードであり、
前記欠陥は前記プロトン性部位であり、そのときに前記プロトン性部位の実体的部分はリチウムにより機能化される、請求項
3に記載された電池カソード。
【請求項5】
前記カソードには、硫黄が含まれ、およびナトリウム硫黄電池カソードであり、
前記欠陥は前記プロトン性部位であり、そのときに前記プロトン性部位の実体的部分はナトリウムにより機能化される、請求項
3に記載された電池カソード。
【請求項6】
以下の:
(i)リチウムが含まれるアノード;
(ii)電解質;および
(iii)硫黄および複数の欠陥のある金属有機フレームワークの部分が含まれるカソードであり、そこでは
(1)そのときにそれぞれの欠陥のある金属有機フレームワークの部分には、構造的欠陥および組成的特色から選ばれる少なくとも一の欠陥が無関係に含まれ;および
(2)そのときにそれぞれの欠陥は電池アノード金属イオンの捕捉、または多硫化物の捕捉のための化学的アンカー置換基の組込みを無関係に可能にさせる
もの
を含み、そこで
前記金属有機フレームワークの金属はジルコニウム、ハフニウム、セシウム、チタン、バナジウム、モリブデン、ニオブ、およびクロムから選ばれる、リチウム硫黄電池。
【請求項7】
前記金属有機フレームワークの金属はジルコニウムである、請求項6に記載されたリチウム硫黄電池。
【請求項8】
前記欠陥は金属配位部位およびプロトン性部位から無関係に選ばれる、請求項6または請求項7に記載されたリチウム硫黄電池。
【請求項9】
前記複数の欠陥のある金属有機フレームワークの部分の一部分には、プロトン性部位である少なくとも一の欠陥が含まれ、そこで前記プロトン性部位の実体的部分はリチウムにより機能化される、請求項6ないし8のいずれか一項に記載されたリチウム硫黄電池。
【請求項10】
20回の充放電サイクル後に少なくとも60%の容量保持を有し、および20回の充放電サイクル後に少なくとも800mAh g
-1の絶対容量を有する、請求項6ないし9のいずれか一項に記載されたリチウム硫黄電池。
【請求項11】
リチウム伝導性を有する固形物質であって、リチウムおよび複数の欠陥のある金属有機フレームワークの部分を含み:
(i)そのときにそれぞれの欠陥のある金属有機フレームワークの部分には、金属配位部位、組成的特色およびプロトン性部位から選ばれる欠陥が無関係に含まれ;および
(ii)そのときにリチウムは欠陥に結合または捕捉される
ものであり、
(iii)前記複数の欠陥のある金属有機フレームワークの部分の一部分には、プロトン性部位である少なくとも一の欠陥が含まれ、前記プロトン性部位の実体的な部分はリチウムまたはナトリウムで機能化されている、物質。
【請求項12】
前記金属有機フレームワークの金属はジルコニウム、ハフニウム、セシウム、銅、亜鉛、チタン、鉄、バナジウム、モリブデン、ニオブ、およびクロムから選ばれる、請求項11に記載された固形物質。
【請求項13】
前記金属はジルコニウムである、請求項12に記載された固形物質。
【請求項14】
前記固形物質は電解質である、請求項11ないし13のいずれか一項に記載された固形物質。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
この出願は2018年4月30日出願の米国仮出願第62/664371号に対する優先権を主張し、その内容は参照によってそれらの全体において組み込む。
【0002】
本発明の背景
本発明の分野は概して、高容量リチウム硫黄電池および環境温度ナトリウム硫黄電池に関する。
【0003】
リチウム硫黄(Li-S)電池は典型的なLi-イオン電池での約300Wh・kg-1と比べて約2600Wh kg-1の高エネルギー密度に基づくLi-イオン電池の有望な候補として浮上した。さらに、硫黄は豊富でおよび安価な原材料であり、およびLi-イオン電池でのLiCoO2カソードに関係する供給およびコストの問題を解決することができる。
【0004】
Li-S電池には、硫黄を含むカソード、リチウムを含むアノード、および電解質が含まれる。電池の放電サイクル中、多硫化物は、カソード表面で還元され、例えば、次の順序に従うようなものである:
S8 → Li2S8→ Li2S6 → Li2S4→ LiS3
● → Li2S2→ Li2S
電池の充電サイクル中、多硫化物はカソードにて形成され、例えば、次の順序に従うようなものである:
Li2S → Li2S2→ LiS3
● → Li2S4→ Li2S6 → Li2S8→ S8。
【0005】
より一層具体的には、Li-S電池における典型的な放電サイクル中、エネルギーはLi+イオンを形成するためにLiアノードの酸化から導き出される。これらのLiイオンは電解質を横切って硫黄カソード(例えば、硫黄/炭素複合体物質などのようなもの)に移動し、および荷電は硫黄の多硫化物Li2Sx(式中x=1-8)への還元のバランスを取る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Li-S変換化学は約1680mAh g-1の高い理論的充電容量を促進するが、問題なことに、Li-Sデバイスには商業化を妨げてきたという重大な課題がある。例として、硫黄はイオンおよび電子の両方の伝導性に乏しく、そのことは電池の最大容量を減ずる。さらに、硫黄カソードから多硫化物の電解質中への溶解は、活性硫黄の減少、および繰り返される充電および放電サイクル中にアノードおよびカソードの表面上に不溶性および絶縁性の硫化物種の形成をもたらす。この現象は、「多硫化物シャトル」と呼ばれ、不可逆的な容量損失および電池サイクル寿命の低下をもたらす。
【0007】
Li-S電池に関係するこれらの問題に対処すべく、導電率および最大充電容量を高めるために様々なカソード物質が研究されてきた。例としては、Li2SはLiイオンの導電率を改善し、および高い硫黄利用率(レドックス化学について利用可能な硫黄の量として規定される)をもたらすことが実証されてきた。Liリッチカソードはイオン伝導を促進するための既存のLi+部位を提供する。例として、Z. Lin(リン)ら、Lithium Superionic Sulfide Cathode for All-Solid Lithium-Sulfur Batteries(全固体リチウム硫黄電池用のリチウム超イオン性硫化物カソード)、ACS Nano(ACSナノ)、2013、7、2829-2833;およびL. Wang(ワン)ら、A high performance lithium-ion sulfur battery based on a Li2S cathode using a dual-phase electrolyte(二相電解質を使用するLi2Sカソードをベースにした高性能リチウムイオン硫黄電池)、Energy Environ. Sci.(エナジー&エンバイロンメンタル・サイエンス)、2015、8、1551-1558参照。しかしながら、Li2Sカソードは依然として多硫化物の浸出および高い過電圧に悩まされいる。さらに、高いイオン伝導性を提供するために電極内に固態のチオリン酸リチウム物質を組み込む試みは、物質が不安定であるために実用的でないことが証明された。例として、Z. Linら、Lithium polysulfidophosphates: a family of lithium-conducting sulfur-rich compounds for lithium-sulfur batteries(リチウム多硫化物ホスファート:リチウム硫黄電池用のリチウム伝導性硫黄リッチ化合物のファミリー)、Angew. Chem. Int. Ed. Engl.(アンゲバンテ・ヘミー(インターナショナル・エディション・イン・イングリッシュ))、2013、52、7460-3参照。
【0008】
環境温度(室温)ナトリウム硫黄電池(RT Na-S)は高い理論的エネルギー密度および低コストのために同様に有望である。さらに、リチウム電池と比較して、RT Na-S電池はNaを選択して比較的高価なLiの使用を回避する。
【0009】
RT Na-S電池には、硫黄を含むカソード、ナトリウム金属を含むアノード、および電解質が含まれる。電池放電サイクル中、多硫化物はカソード表面上で還元され、および電池充電サイクル中、多硫化物は次のようにカソードにて形成される:
2 Na + xS ⇔ Na2Sx
Li-S電池と同様、RT Na-Sデバイスには、商品化、例えば、理論に近い充電容量を達成し、および繰り返しサイクル(repeated cycling)により電荷を保持するなどのようなものを妨げてきたという重大な難題がある。
【0010】
したがって、容量および電荷保持が改善されたLi-S電池およびRT Na-S電池に対する本技術における必要性が存在する。
本発明の簡便な説明
【0011】
本開示の一態様では、電池カソードを提供する。カソードには、複数の欠陥のある金属有機フレームワークの部分が含まれ:(i)そのときにそれぞれの欠陥のある金属有機フレームワークの部分には、構造的欠陥および組成的特色から選ばれる少なくとも一の欠陥が無関係に含まれ;および(ii)そのときにそれぞれの欠陥は電池アノード金属イオンの捕捉、多硫化物の捕捉のための化学的アンカー置換基の組込み、またはそれらの組合せを無関係に可能にさせる。
【0012】
本開示の別の態様では、リチウム硫黄電池を提供する。電池には、以下の:(i)リチウムが含まれるアノード;(ii)電解質;および(iii)硫黄と、複数の欠陥のある金属有機フレームワークの部分とが含まれるカソードが含まれ、(1)そのときにそれぞれの欠陥のある金属有機フレームワークの部分には、構造的欠陥および組成的特色から選ばれる少なくとも一の欠陥が無関係に含まれ;および(2)そのときにそれぞれの欠陥は電池のアノード金属イオンの捕捉、または多硫化物の捕捉のための化学的アンカー置換基の組込みを無関係に可能にさせる。
【0013】
本開示のさらに別の態様では、リチウム伝導性を有する固形物質を提供する。固形物質には、リチウムおよび複数の欠陥のある金属有機フレームワークの部分が含まれ:(i)そのときにそれぞれの欠陥のある金属有機フレームワークの部分には、金属配位部位、組成的特色およびプロトン部位から選ばれる欠陥が無関係に含まれ;および(ii)そのときにリチウムは欠陥に結合または捕捉される。
【0014】
本開示のさらに別の態様では、リチウム硫黄電池を使用する方法を提供する。方法には、リチウム硫黄電池を用意することが含まれ、前記電池は充電サイクルおよび放電サイクルを有する。いくらかの態様において:(1)電池には、(a)リチウムが含まれるアノード、(b)電解質、および(c)硫黄と、複数の欠陥のある金属有機フレームワークの部分であり構造的欠陥および組成的特色から選ばれる少なくとも一の欠陥を含むものであり、そのときにそれぞれの欠陥がリチウムイオンの捕捉を無関係に可能にさせるものとが含まれるカソードが含まれ;(2)放電サイクルには、元素硫黄および/またはリチウム多硫化物をカソードにてリチウム硫化物に還元することが含まれ、そのときにリチウム多硫化物の少なくとも一部分は欠陥のある金属有機フレームワークの部分によって捕捉され;および(3)充電サイクルには、リチウム硫化物をカソードにてリチウム多硫化物および/または元素硫黄に酸化することが含まれ、そのときに酸化反応におけるリチウム多硫化物の少なくとも一部分は放電サイクルにおいて捕捉されるリチウム多硫化物である。いくらかの態様において:(1)リチウム硫黄電池には、(a)リチウムが含まれるアノード、(b)電解質、および(c)硫黄と、複数の欠陥のある金属有機フレームワークの部分であり多硫化物をそれに対して機能化する能力のある化学的アンカー置換基および金属配位部位から選ばれる少なくとも一の欠陥を含むものとが含まれるカソードが含まれ;(2)放電サイクルには、元素硫黄および/またはリチウム多硫化物をカソードにてリチウム硫化物に還元することが含まれ、そのときに多硫化物の少なくとも一部分は金属有機フレームワークの化学的アンカー部位に対して機能化によって捕捉され;および(3)充電サイクルには、リチウム硫化物をカソードにてリチウム多硫化物および/または元素硫黄に酸化することが含まれ、そのときに酸化反応におけるリチウム多硫化物の少なくとも一部分は放電サイクルにおいて捕捉されるリチウム多硫化物である。いくらかの態様において:(1)リチウム硫黄電池には、(a)リチウムが含まれるアノード、(b)電解質、および(c)硫黄と、複数の欠陥のある金属有機フレームワークの部分であり(I)構造的欠陥および組成的特色から選ばれる少なくとも一の欠陥を含むものであり、そのときにそれぞれの欠陥はリチウムイオンの捕捉を無関係に可能にさせるもの、および(II)および複数の欠陥のある金属有機フレームワークの部分であり多硫化物をそれに対して機能化する能力のある化学的アンカー置換基および金属配位部位から選ばれる少なくとも一の欠陥を含むものとが含まれるカソードが含まれ;(2)放電サイクルには、元素硫黄および/またはリチウム多硫化物をカソードにてリチウム硫化物に還元することが含まれ、そのときにリチウム多硫化物の少なくとも一部分は金属有機フレームワークの化学的アンカー部位に対して機能化によって捕捉され;および(3)充電サイクルには、リチウム硫化物をカソードにてリチウム多硫化物および/または元素硫黄に酸化することが含まれ、そのときに酸化反応におけるリチウム多硫化物の少なくとも一部分は放電サイクルにおいて捕捉されるリチウム多硫化物である。
【0015】
本開示のさらに別の態様では、環境温度ナトリウム硫黄電池を提供する。電池には、以下の:(i)ナトリウムが含まれるアノード;(ii)電解質;(iii)硫黄と、複数の欠陥のある金属有機フレームワークの部分とを含むカソードが含まれ、(1)そのときにそれぞれの欠陥のある金属有機フレームワークの部分は構造的欠陥および組成的特色から選ばれる少なくとも一の欠陥を無関係に含み、および(2)そのときにそれぞれの欠陥は電池アノード金属イオンの捕捉または多硫化物の捕捉のための化学的アンカー置換基の組込みを無関係に可能にさせる。
【0016】
本開示の別の態様では、ナトリウム伝導性を有する固形物質を提供する。物質はナトリウムおよび複数の欠陥のある金属有機フレームワークの部分を含み:(i)そのときにそれぞれの欠陥のある金属有機フレームワークの部分は金属配位部位、組成的特色およびプロトン性部位から選ばれる欠陥を無関係に含み;および(ii)そのときにナトリウムは欠陥に結合または捕捉される。
【0017】
本開示の別の態様では、環境温度ナトリウム硫黄電池を使用する方法を提供する。方法には、ナトリウム硫黄電池を用意することが含まれ、前記電池は充電サイクルおよび放電サイクルを有する。いくらかの態様において:(1)電池には、(a)ナトリウムが含まれるアノード、(b)電解質、および(c)硫黄と、複数の欠陥のある金属有機フレームワークの部分であり構造的欠陥および組成的特色から選ばれる少なくとも一の欠陥を含むものであり、そのときにそれぞれの欠陥はナトリウムイオンの捕捉を無関係に可能にさせるものとが含まれるカソードが含まれ;(2)放電サイクルには、元素硫黄および/またはナトリウム多硫化物をカソードにてナトリウム硫化物に還元することが含まれ、そのときにナトリウム多硫化物の少なくとも一部分は欠陥のある金属有機フレームワークの部分によって捕捉され;および(3)充電サイクルには、ナトリウム硫化物をカソードにてナトリウム多硫化物および/または元素硫黄に酸化することが含まれ、そのときに酸化反応におけるナトリウム多硫化物の少なくとも一部分は放電サイクルにおいて捕捉されるナトリウム多硫化物である。いくらかの態様において:(1)ナトリウム硫黄電池には、(a)ナトリウムが含まれるアノード、(b)電解質、および(c)硫黄と、複数の欠陥のある金属有機フレームワークの部分であり多硫化物をそれに対して機能化する能力のある化学的アンカー置換基および金属配位部位から選ばれる少なくとも一の欠陥を含むものとが含まれるカソードが含まれ;(2)放電サイクルには、元素硫黄および/またはナトリウム多硫化物をカソードにてナトリウム硫化物に還元することが含まれ、そのときに多硫化物の少なくとも一部分は金属有機フレームワークの化学的アンカー部位に対して機能化によって捕捉され;および(3)充電サイクルには、ナトリウム硫化物をカソードにてナトリウム多硫化物および/または元素硫黄に酸化することが含まれ、そのときに酸化反応におけるナトリウム多硫化物の少なくとも一部分は放電サイクルにおいて捕捉されるナトリウム多硫化物である。いくらかの態様において:(1)ナトリウム硫黄電池には、(a)ナトリウムが含まれるアノード、(b)電解質、および(c)硫黄と、(I)複数の欠陥のある金属有機フレームワークの部分であり構造欠陥および組成的特色から選択される少なくとも一の欠陥を含むものであり、そのときにそれぞれの欠陥はナトリウムイオンの捕捉を無関係に可能にさせるもの、および(II)および複数の欠陥のある金属有機フレームワークの部分であり多硫化物をそれに対して機能化する能力のある化学的アンカー置換基(chemical anchor substituent)および金属配位部位から選ばれる少なくとも一の欠陥を含むものが含まれるものとが含まれるカソードが含まれ;(2)放電サイクルには、元素硫黄および/またはナトリウム多硫化物をカソードにてナトリウム硫化物に還元することが含まれ、そのときにナトリウム多硫化物の少なくとも一部分は金属有機フレームワークの化学的アンカー部位に対して機能化によって捕捉され;および(3)充電サイクルには、ナトリウム硫化物をカソードにてナトリウム多硫化物および/または元素硫黄に酸化することが含まれ、そのときに酸化反応におけるナトリウム多硫化物の少なくとも一部分は放電サイクルにおいて捕捉されるナトリウム多硫化物である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】UiO-66金属有機フレームワーク上に欠陥性部位を導入すること、および欠陥のある金属有機フレームワークをリチウム化することについての本開示の一態様を描く。
【
図2】本開示のリチウム硫黄電池の一実施形態を描く。
【
図3】化学的アンカー、例えば、UiO-66金属有機フレームワーククラスター上の、Li
3PS
4などのようなものにより欠陥性部位を機能化すること、および欠陥のある金属有機フレームワーククラスターをリチウム化することについての本開示の一態様を描く。
【
図4】Aはリチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有する本開示のリチウム硫黄電池(LPS-UiO-66(50Benz)およびLPS-Uio66(noMod))対非リチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有する電池(UiO-66(50Benz)および硫黄-炭素複合体カソードが含まれる電池(S/C))についての比容量(specific capacity)(mAh g
-1)対サイクル数における定電流サイクル結果を描く。
図4Bはリチウム化金属有機フレームワーク(2xLPS MOF-808;lxLPS MOF-808;および0.7xLPS MOF-808;)が含まれるカソードを有する本開示のリチウム硫黄電池対非リチウム化金属有機フレームワーク(MOF-808)が含まれるカソードを有する電池およびS/C複合体カソードが含まれる電池についての比容量(mAh g
-1)対サイクル数における定電流サイクル結果を描く。
【
図5】Aは、Li
3PS
4(「LPS」)化学的アンカー機能化UiO-66対ペアレントの欠陥のないMOF(UiO-66)についての透過率(%)対波数(cm
-1)における赤外線(IR)分光法の結果を描く。
図5Bは、Li
3PS
4(「LPS」)化学的アンカー機能化MOF-8O8対ペアレントの欠陥のないMOF(MOF-8O8)についての透過率(%)対波数(cm
-1)における赤外線(IR)分光法の結果を描く。
【
図6】1M水酸化ナトリウム水溶液におけるLPS機能化金属有機フレームワーク(LPS-UiO-66(50Benz))についての溶液状態の
31P核磁気共鳴(
31P Nuclear Magnetic Resonance)(NMR)スペクトルを描く。
【
図7】本開示のLPS機能化UiO-66(
図7A)および本開示のLPS機能化MOF-808(
図7B)についての固態の
31P核磁気共鳴(NMR)スペクトルを描く。
【
図8】コインセル電池の例を描く。いくらかの態様において、コインセル電池は本開示の欠陥のある金属有機フレームワークが含まれるカソードを有する。
【
図9】本開示のリチウム化した欠陥のある金属有機フレームワーク(Li-UiO-66(noMod)、Li-UiO-66(50Benz)およびLi-UiO-66(l2TFA))についてのおよび非リチウム化金属有機フレームワーク(UiO-66(50Benz))についての2°シータ(2°Theta)におけるカウント対位置におけるPowder X-ray diffraction(粉体X線回折)(PXDR)結果を描く。
【
図10】本開示のリチウム化した欠陥のある金属有機フレームワーク(Li-UiO-66(50Benz))についての、および非リチウム化金属有機フレームワーク(UiO-66)についての透過率(%)対波数(cm
-1)における赤外線(IR)分光法結果を描く。
【
図11】Aは非リチウム化金属有機フレームワーク(UiO-66(50Benz))についての重量損失(Weight Loss)(%)対温度(Temperature)(℃)におけるサーモグラフィック分析(thermographic analysis)(TGA)結果を描き、および
図11Bは本開示のリチウム化金属有機フレームワーク(Li-UiO-66(50Benz))についての重量損失(%)対温度(℃)におけるTGA結果を描く。
【
図12】様々なリチウム化合成条件下で調製される本開示のリチウム化金属有機フレームワーク(Li-UiO-66(MOD))中に組み込まれるリチウムの原子吸光分光法(AAS)結果を描く。
【
図13】本開示のリチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有する本開示の様々なリチウム硫黄電池(Li-UiO-66(50Benz)およびLi-UiO-66(l2TFA))について、リチウム化非修飾化(lithiated non-modified)金属有機フレームワークが含まれるカソードを有するリチウム硫黄電池(Li-UiO-66(noMod))について、非リチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有するリチウム硫黄電池(UiO-66(50Benz))について、およびより一層過酷な化学的条件にてリチウム化された金属有機フレームワークが含まれるカソードを有するリチウム硫黄電池(Li-UiO-66(50Benz)-80、Li-UiO-66(50Benz)-nBuLi)についての原子吸収分光法によって測定されるような最大放電容量(mAh g
-1)対相対リチウム含量を描く。
【
図14】左側軸およびグラフの閉じた形状の関連する下部の3つの線上に、リチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有する本開示のリチウム硫黄電池対非リチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有するリチウム硫黄電池についての絶対容量(mAh g
-1)対電池サイクル数を描く。
図14の右側軸およびグラフ上部での開いた形状の関連する線はリチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有する本開示のリチウム硫黄電池対非リチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有するリチウム硫黄電池についてのクーロン効率(%)対電池サイクル数を描く。
【
図15】Aはリチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有する本開示のリチウム硫黄電池(Li-UiO-66(50Benz))対非リチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有する電池(UiO-66(50Benz))についての相対容量(mAh g
-1)対C/10から2Cまでの低ないし中程度の充電速度でのサイクル数における速度能力(rate capability)を描く。
図15Bはリチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有する本開示のリチウム硫黄電池(Li-UiO-66(50Benz))対非リチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有する電池(UiO-66(50Benz))についてのC/2から4Cまでの中ないし高度の充電速度での相対容量(mAh g
-1)対サイクル数における速度能力を描く。
【
図16】Aは最大比容量(mAh g
-1)対リチウム重量パーセントについてのコンパイルされた定電流サイクル結果を描き、そこで増加したLi重量%は増加したLPS取込みと、リチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有する本開示のリチウム硫黄電池(LPS-UiO-66(50Benz);LPS-Uio66(noMod);2xLPS MOF-808;lxLPS MOF-808;および0.7xLPS MOF-808)対非リチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有する電池(UiO-66(50Benz)およびMOF-808)およびS/C複合体カソードが含まれる電池について相関する。
図16Bは100xサイクル(mAh g
-1)対リチウム重量パーセントでの容量についてのコンパイルされた定電流サイクル結果を描き、そこで増加したLi重量%は増加したLPS取込みと、リチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有する本開示のリチウム硫黄電池(LPS-UiO-66(50Benz);LPS-UiO-66(noMod);2xLPS MOF-808;lxLPS MOF-808;および0.7xLPS MOF-808)対非リチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有する電池(UiO-66(50Benz)およびMOF-808)およびS/C複合体カソードが含まれる電池ついて相関する。
【
図17】Aは、リチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有する本開示のリチウム硫黄電池(LPS-UiO-66(50Benz))対非リチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有する電池(UiO-66(50Benz))およびS/C複合体カソードが含まれる電池についての比容量(mAh g
-1)対C/10から2Cまでの低から中程度までの充電速度でのサイクル数における速度能力を描く。
図17Bはリチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有する本開示のリチウム硫黄電池(LPS-UiO-66(50Benz))対非リチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有する電池(UiO-66(50Benz))およびS/C複合体カソードが含まれる電池についての比容量(mAh g
-1)対C/2から4Cまでの中から高程度までの充電速度でのサイクル数における速度能力を描く。
【
図18】グラフおよび左側軸における下部の三本の線にて、リチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有する本開示のリチウム硫黄電池(LPS-UiO-66(50Benz)およびLPS-UiO-66(noMod))対S/C複合体カソードが含まれるカソードを有する電池についての比容量(mAh g
-1)対1Cでのサイクル数における拡大ガルバニックサイクリングプロファイルを描く。
図18は、グラフの上部の線および右側軸にて、リチウム化金属有機フレームワークが含まれるカソードを有する本開示のリチウム硫黄電池(LPS-UiO-66(50Benz)およびLPS-UiO-66(noMod))対S/C複合体カソードが含まれるカソードを有する電池についてのクーロン効率(%)対1Cでのサイクル数を描く。
【
図19】本開示のLi
5P
2S
6N物質のNMRスペクトルを描く。
【
図20】本開示のLi
5P
2S
6N物質のIRスペクトルを描く。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示によれば、欠陥のある物質の有機フレームワーク(MOF)の部分が含まれるLi-S電池およびRT Na-S電池は本技術において知られるLi-S電池およびRTNa-S電池と比較して改善された絶対容量および改善された容量保持を提供することが発見された。いくらかの態様において、リチウム化MOFsが含まれる高容量のLi-S電池カソードは延長されたLi?Sサイクリングを提供する。いくらかの態様において、ナトリウム化(sodiated)MOFsが含まれる高容量のRT Na-S電池カソードは延長されたRT Na-Sサイクリングを提供する。他のいくらかの態様において、化学的アンカーにより誘導体化されるMOFsは多硫化物の捕捉および/またはカプセル化を提供し、電解質における多硫化物の溶解の減少および付随する反応性硫黄の損失を通してLi-S性能の改善をもたらす。他のいくらかの態様では、化学的アンカーにより誘導体化されるMOFsは多硫化物の捕捉および/またはカプセル化を提供し、電解質における多硫化物の溶解の低減および付随する反応性硫黄の損失を通してRT Na-S性能の改善をもたらす。本開示のLi-SおよびRT Na-S電池は目下のLiイオンおよびRT Na-S技術と比較して桁違いのエネルギー密度を達成し、その一方で目下のLi-SおよびRT Na-S技術と比較して改善された電池サイクル寿命および容量保持を提供する。
【0020】
いくらかの態様において、本開示のLi-S電池は、少なくとも800mAh g-1、少なくとも900mAh g-1、少なくとも1000mAh g-1、少なくとも1100mAh g-1、少なくとも1200mAh g-1、少なくとも1300mAh g-1、例として1320mAh g-1の絶対容量を有する。いくらかの態様では、本開示のLi-S電池は、少なくとも800mAh g-1、少なくとも900mAh g-1、少なくとも1000mAh g-1、少なくとも1100mAh g-1、または少なくとも1200mAh g-1の絶対容量を20回の充放電サイクル後さらに有する。いくらかの態様において、本開示のLi-S電池は、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%または少なくとも80%の容量保持を20回の充放電サイクル後に有する。
【0021】
ここで使用するように、「金属ノード」は酸化物および/または水酸化物配位子を架橋することによって接続される二またはそれよりも多く(二以上とも言う)の金属イオンが含まれるクラスターに言及する。そのようなノードはセカンダリバインディングユニット(二次結合単位)(SBU)と称され得る。金属ノードの非制限的な例はヘキサジルコニウムオキソヒドロキソである。
【0022】
ここで使用するように、「金属有機フレームワーク(金属有機構造体とも言う)」(MOF)は一以上(一またはそれよりも多く)の金属ノード、およびそれらのクラスターが含まれる配位ネットワークである物質に言及し、有機配位子またはリンカーによって配位される。MOFsは結晶性であり、および一、二、または三次元の構造によって特徴付けられ得る。
【0023】
MOF構造は多孔質である。いくらかの態様において、MOF構造はボイドを有する多孔質フレームワークとして特徴付けられ得、および表面積によってさらに特徴付けられ得る。概して、MOFsは約200m2/g、300m2/g、400m2/g、約500m2/g、約600m2/g、約700m2/g、約800m2/g、約900m2/g、約1000m2/g、約1100m2/g、約1200m2/g、約1300m2/g、約1400m2/g、約1500m2/g、または約1600m2/gの多孔度、およびそれらのいずれかから構築される任意の範囲、例えば、約200m2/gから約1600m2/gまでまたは約400m2/gから約1600m2/gまでなどのようなものを有し、本発明の実践に適する。
【0024】
ここで使用するように、「有機配位子(有機リガンドとも言う)」または「有機リンカー」は少なくとも一のC-H結合が含まれ分子または分子群の組合せに言及し、およびそれは/それらは少なくとも二の金属ノードに結合する能力がある。
【0025】
ここで使用するように、MOFsに関して「欠陥のある(defected)MOF」および「欠陥」は金属イオン(例は、Li+)および/または多硫化物(poly sulfides)の捕捉/カプセル化の能力のある部位に言及する。欠陥は、構造的欠陥、例えば、転位(dislocation)、局所欠陥または大規模欠陥などのようなものであり得、そこで欠陥は一以上のMOFボイドまたは空孔をもたらす。他の欠陥は組成的特色(compositional features)、例えば、金属配位部位、機能化のためのプロトン性部位(protic sites)(例は、-OHおよび-OH2)、化学的アンカー、および有機リンカー上にて機能化される(functionalized、官能化されるなどとも言う)置換基などのようなものであり得る。例として:Z. Fang(ファン)ら、Defect Engineered Metal-Organic Frameworks(欠陥工学的な金属-有機フレームワーク)、Agnew. Chem. Int. Ed.(アンゲヴァンテ・ケミー・インターナショナル・エディション)2015, 54, 7234-7254;D. Pravas(プラバス)ら、MOF Functionalization via Solvent-Assisted Ligand Incorporation: Phosphonates vs Carboxylates(溶媒アシスト配位子の取込みを介するMOF機能化:ホスホナート対カルボキシラート)、Inorg. Chem.(イノーガニック・ケミストリー)2015, 54, 2185-2192;およびG. Shearer(シアラー)ら、Functionalizing the Defects:Postsynthetic Ligand Exchange in the Metal Organic Framework UIO-66(欠陥の機能化:金属有機フレームワークUIO-66における合成後の配位子交換)、Chem. Mater.(ケミストリー・オブ・マテリアルズ)2016, 28, 7190-7193を参照し,それらのそれぞれの内容は参照によってその全体においてここに組み込む。本開示の様々な態様のいずれかにおいて、複数のMOFの部分(moieties、モイエティとも言う)におけるMOFの部分の数によって少なくとも50%、少なくとも75%または少なくとも90%には、少なくとも一の欠陥が含まれる。
【0026】
ここで使用するように、および本技術において概して知られるように、固形物質構造における欠陥は局所欠陥(または点欠陥)、大規模欠陥、または転位であり得る。点欠陥は大抵、原子サイズであり、および以下の:格子構造または金属有機フレームワークにおける一以上の部位の不純物(例は、原子またはイオン)による占有(置換)からもたらされ得、そこでそのような置換原子は外因性欠陥と呼ばれ;原子の不存在によるボイド(空孔)でありそこでボイドは固有の欠陥と呼ばれるもの;または一以上の格子構造部位での特別の原子(extra atom)または特別のイオンの存在でありそこで通常は原子が現れず、そこではそのような追加の原子は固有の欠陥と呼ばれるものである。転位は固形物質構造内での不規則性であり、および線に沿った原子の規則的な順序における変化に起因し、転位線と呼ばれる。大規模な構造欠陥(または容量欠陥またはバルク欠陥)は大抵、一以上の固形物質特性、例えば、構造の機械的強度、多孔性、亀裂、ならびに均質および不均質物質の別々の小さな領域の形成などのようなもの(例は、原子のクラスター化による)に反映され得るように固形物質の三次元(巨視的)構造に影響を与えるのに足りる大きさの原子またはボイドの三次元集合体である。
【0027】
ここで使用するように、「機能化MOF」はMOFに言及し、そのときに有機リンカーの骨格原子の一以上がペンダント官能基、化学的アンカーにより機能化されるMOF(例えば、Li3PS4などのようなもの)を運ぶ。
【0028】
金属有機MOFsは有機リンカーおよび金属イオン前駆体の選定を通して機能性を組み込む能力を有する調整可能な物質である。MOFsの高い多孔性は反応性硫化物種および金属イオン(例は、リチウムイオン類)をホストし(host)および安定化する能力を提供し、その一方で関係する構造的完全性および長距離秩序は、分子分光法および単結晶および粉体回折技術を使用する中間体の検出について好都合なハンドルを提供する。
【0029】
ここでは、ジルコニウムMOFsおよびLi+金属イオンについて言及するが、本技術において熟練する者(当業者とも言う)は、本開示が狭く制限されず、および金属イオンおよび多硫化物の捕捉/カプセル化について適する任意の欠陥のあるMOFに適用可能であることを認識する。
【0030】
ナトリウム硫黄(Sodium-sulfur)電池は本技術において知られる。例として、および制限を伴わずに:K. Kumar(クマー)ら、Progress and prospects of sodium sulfur batteries: A review(ナトリウム硫黄電池の進歩および展望:レビュー)、Solid State Ionics(ソリッド・ステート・アイオニクス)312(2107)8-16;A. Douglas(ダグラス)ら、Ultrafine Iron Pyrite(FeS2);Nanocrystals Improve Sodium-Sulfur and Lithium-Sulfur Conversion Reactions for Efficient Batteries(超微細黄鉄鉱(FeS2);ナノ結晶は効率的な電池についてナトリウム硫黄およびリチウム硫黄変換反応を改善する)、ACS Nano(ACSナノ), Vol. 9(第9巻), No. 11(第11号), 11156-11165, 2015;およびA. Abouimrane(アブーイムラン)、A New Class of Lithium and Sodium Rechargeable Batteries Based on Selenium and Selenium-Sulfur as a Positive Electrode(正極としてのセレンおよびセレン硫黄に基づく新しいクラスのリチウムおよびナトリウム充電式電池)、J. Am. Chem. Soc.(ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ), 2012, 134, 4505-4508を参照。それらの参考文献のそれぞれの内容はそれらの全体においてここに組み込む。ここではLi-S電池についてさらに言及するが、本技術における熟練する者は本開示が狭い意味に制限されず、およびRT Na-S電池に対して適用可能であることを認識する。
【0031】
MOFのための金属は適切には、任意の金属、例えば、例としておよび制限を伴わないが、金属イオンおよび多硫化物の捕捉/カプセル化について適する欠陥のあるMOFを提供する遷移金属などのようなものである。いくらかの態様において、金属は、ジルコニウム、ハフニウム、セリウム、銅、亜鉛、チタン、鉄、バナジウム、モリブデン、ニオブ、およびクロム、ならびにそれらの組合せから選ばれる。いくらかの態様において、金属は、ジルコニウム、ハフニウム、セリウム、銅、亜鉛、チタン、鉄、バナジウム、モリブデン、ニオブ、およびクロムの少なくとも二つの組合せから選ばれる。いくらかの態様において、金属はジルコニウムである。
【0032】
本開示のいくらかの非制限的な態様では、MOFsはZrベースである。そのようなZr-MOF種の一例はUiO-66である。Zr-MOF種などのようなものの別の例はMOF-808である。いくらかのそのような態様では、MOFは多孔質ZrベースのMOFであり、およびMOFはLi-S電池用のLiに富むMOF/Sカソードとしてファー使用される(fur use)リチウム原子により組み込まれる。典型的なジルコニウムMOFノード構造は、酸化物および水酸化物の配位子を架橋することによって接続される六核Zrクラスターで構成される。いくらかの態様において、SBUはカルボン酸の存在下で形成され得、その結果、Zr6(μ3-0)4(μ3-OH)4(RCOO)12の一般式がもたらされる。
【0033】
UiO-66の場合に、1,4-ベンゼンジカルボン酸(H
2BDC)はすべてのカルボン酸部位が占有されるMOFのSBUsを形成および接続するダイトピックリンカー(ditopic linker)として働く。J. Cavka(カフカ)ら、A new zirconium inorganic building brick forming metal organic frameworks with exceptional stability(格別な安定性を有する金属有機フレームワークを形成する新しいジルコニウム無機ビルディングブリック)、J Am Chem Soc. 2008, 130(42), 13850-13851を参照し、それらの内容は参照によってその全体において組み込む。近年の研究では、修飾因子(モジュレーター)として知られる競合性カルボン酸(competing carboxylic acids)を使用することを通して、欠落性リンカー(missing linkers)の形態における欠陥部位をUiO-66構造中に組み込むことができることが示された。以下を参照:G. C. Shearerら、Tuned to Perfection:Ironing Out the Defects in Metal-Organic Framework UiO-66(完璧に調整:金属-有機フレームワークUiO-66における欠陥の打開)、Chem. Mater.、2014、26、4068-4071;G. C. Shearerら、Functionalizing the Defects: Postsynthetic Ligand Exchange in the Metal Organic Framework UiO-66、Chem. Mater.、2016、28、7190-7193;およびG. C. Shearerら、Defect Engineering:Tuning the Porosity and Composition of the Metal-Organic Framework UiO-66 via Modulated Synthesis(欠陥エンジニアリング:修飾合成を介する金属-有機フレームワークUiO-66の多孔性および組成の調整)、Chem. Mater.、2016、28、3749-3761、これらのそれぞれは参照によってその全体においてここに組み込む。欠陥のあるUiO-66は表面が少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%または少なくとも25%増加することによって特徴付けられ、元の(pristine)MOF(即ち、欠陥のないMOF)よりも高いBET表面積を見せ、およびオープンZr部位を含み、そこでアクア(aqua)およびヒドロキソリガンドが欠落性リンカー部位を占める。これらの欠陥のある部位は反応性であり、および他のカルボキシラートまたはホスファートを使用してさらに機能化することができる。以下を参照:G. C. Shearerら、Chem. Mater.、2016、28、7190-7193;G. C. Shearerら、Chem. Mater.、2016、28、3749-3761;S. Wangら、General and Direct Method for Preparing Oligonucleotide-Functionalized Metal-Organic Framework Nanoparticles(オリゴヌクレオチド-機能化金属-有機フレームワークナノ粒子を調製するための一般的および直接的方法)、J Am Chem Soc、2017、139、9827-9830;およびP. Deria(デリア)ら、MOF functionalization via solvent-assisted ligand incorporation: Phosphonates vs carboxylates、Inorg. Chem.、2015、54、2185-2192、それらのそれぞれは参照によってその全体においてここに組み込む。本開示によれば、
図1において示すように、これらの欠陥部位はH
20-およびHO-リガンドにおいて利用可能なプロトン性部位を脱プロトン化することによってリチウムの取込みについて適する。特に、
図1において示すように、欠落性リンカー欠陥の導入によりLi
+とスワップ(交換とも言う)することができる追加的なプロトンが導入され、および追加的なLi
+ストレージ部位が作り出される。そのような脱プロトン化方法は先行技術の方法(例えば、R. Ameloot(アメルート)ら、Ionic Conductivity in the Metal-Organic Framework Ui0-66 by Dehydration and Insertion of Lithium tert-Butoxide(脱水およびリチウムターシャリー-ブトキシドの挿入による金属-有機フレームワークUiO-66におけるイオン伝導率)、Chem.-A Eur, J.(ケミストリー:ア・ヨーロピアン・ジャーナル)、2013、19、5533-5536、参照によってその全体においてここに組み込むものによって開示されるなどのようなもの)とは、Li
+イオン伝導度および硫黄利用を増加させるためのZrノードの脱水について異なる。
【0034】
Zr-MOFsのノード構造は、ヒドロキソ、オキソ、およびカルボキシラート配位子を架橋することによって接続される六つの金属原子を特色にする。十分に配位されるノード(coordinated node)では、十二のカルボキシラートがそれぞれのZr原子をその隣接する原子に橋渡しし、およびゲスト種との相互作用を防ぐ。節状のカルボキシラート配位子の一部分(a portion)が除去される場合、ゲスト分子を結合するためにオープンサイトが利用可能になり、金属ノードの高度な機能化のための合成ハンドルが提供される(例は、
図3を参照)。一定のZr-MOFsは、固有の結晶構造を通して(例えば、および制限を伴わずに、MOF-808)か、または修飾化合成(modulated synthetic)アプローチを使用して欠陥を導入すること(例えば、および制限を伴わずに、UiO-66)によってかのいずれかで、これらのオープンサイトを支持する能力がある。
【0035】
MOF-808の場合、MOF-808はZr6(μ3-0)4(μ3-0H)4(RCOO)12-x(HC00)xの式を有する六核Zrクラスターから構成され、式中x=5または6、1,3,5-ベンゼントリカルボキシラート(BTC)によって接続される。ホルマート(HCOO)部位はHC1の活性化の下で除去され、および他のカルボン酸および化学的アンカー、例えば、チオホスファートなどのようなものにより機能化される。MOF-808の合成が報告された。以下を参照:H. Furukawa(フルカワ)ら、Water Adsorption in Porous Metal-Organic Frameworks and Related Materials(多孔質金属-有機フレームワークおよび関連物質における水の吸着)、J. Am. Chem. Soc. 2014、136、4369-4381;およびJ. Jiang(チアン)ら、Superacidity in Sulfated Metal-Organic Framework-808(硫酸化金属-有機フレームワーク-808における過度酸性)、J. Am. Chem. Soc. 2014、136、12844-12849、それらのそれぞれの内容は参照によってそれらの全体において組み込む。欠陥のないMOF-808はペアレント(親とも言う)のUiO-66 MOF(欠陥のない)と比べてZrクラスター当たり少なくとも六より多い潜在的なアクア/ヒドロキシル末端部位を含む。MOF-808への追加的な欠陥の導入はここに記載する合成方法を使用して為し得ると考えられる。
【0036】
有機リンカーは狭く制限されるものではなく、および適切には、MOF生産において慣習的に使用される任意の有機リンカーであり得る。適切な有機リンカーには概して、カルボン酸、ボロン酸、アミン、ニトロ、無水物、ヒドロキシル、およびそれらの組合せから選ばれる少なくとも二つの官能基が含まれる。二、三または四つの官能基を有する有機リンカーは本開示の範囲内にある。いくらかの態様において、官能基はカルボキシラートおよびヒドロキシル、ならびにそれらの組合せから選ばれる。一態様では、それぞれの官能基はカルボキシルである。
【0037】
有機リンカーには、線状または分枝状のC1-20アルキル基、C3-12シクロアルキル基、芳香族の部分、およびそれらの組合せが含まれ得る。いくらかの態様において、アルキル基はCl-6アルキルである。いくらかの態様において、シクロアルキル基は、C4-6シクロアルキルである。いくらかの態様において、芳香族の部分には、1から6までの環を含むことができる。一よりも多くの環を有する芳香族の部分について、環は随意にスピロ環(spirocycle)または縮合配置(fused configuration)で存在し得る。いくらかの態様において、芳香族の部分には、一または二つの環、例えば、ベンジル、ナフチル、ピリジルまたはビピリジルなどのようなものが含まれる。アルキル、シクロアルキルおよび芳香族の部分は随意にN、O、S、およびSiから選ばれる一またはそれよりも多く(一以上とも言う)のヘテロ原子を含み得る。
【0038】
適切な有機リンカー化合物の例には、以下が含まれる:BTC;シュウ酸;エチルオキサリックアシッド(ethyloxalic acid);フマル酸;1,3,5-ベンゼントリ安息香酸(BTB);1,3,5-ベンゼントリ安息香酸;ベンゼントリビフェニルカルボン酸(BBC);5,15-ビス(4-カルボキシフェニル)亜鉛(II)ポルフィリン(BCPP);1,4-ベンゼンジカルボン酸(H2BDC);2-アミノ-1,4-ベンゼンジカルボン酸(R3-BDCまたはH2N BDC);1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸;2-ニトロ-1,4-ベンゼンジカルボン酸;1,1'-アゾ-ジフェニル4,4'-ジカルボン酸;シクロブチル-1,4-ベンゼンジカルボン酸(R6-BDC);1,2,4-ベンゼントリカルボン酸;2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDC);1,1'-ビフェニル4,4'-ジカルボン酸(BPDC);2,2'-ビピリジル-5,5'-ジカルボン酸;アダマンタンテトラカルボン酸(ATC);アダマンタンジ安息香酸(ADB);アダマンタンテラカルボン酸(adamantane teracarboxylic acid)(ATC);ジヒドロキシテレフタル酸(DHBDC);ビフェニルテトラカルボン酸(BPTC);テトラヒドロピレン2,7-ジカルボン酸(HPDC);ピレン2,7-ジカルボン酸(PDC);ピラジンジカルボン酸;アセチレンジカルボン酸(ADC);しょうのうジカルボン酸;フマル酸;ベンゼンテトラカルボン酸;1,4-ビス(4-カルボキシフェニル)ブタジイン;ニコチン酸;およびテルフェニルジカルボン酸(TPDC)である。いくらかの態様において、有機リンカー化合物は、H2BDC、2-アミノ-1,4-ベンゼンジカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸および2-ニトロ-1,4-ベンゼンジカルボン酸またはそれらの混合物から選ばれる。いくらかの特定の態様では、有機リンカー化合物はH2BDCである。
【0039】
いくらかの態様において、上記のリンカーの二以上の混合物は一以上の官能基を導入するために使用し得る。例として、アミノ安息香酸は遊離アミン基を提供するために、またはより一層短いリンカー、例えば、シュウ酸などのようなものを使用することによって用いられ得る。
【0040】
電解質は狭く制限されず、および適切な電解質が本技術において知られる。固形および液状電解質は本開示の範囲内にある。例として、以下を参照:J. Scheers(シェールズ)ら、A review of electrolytes for lithium-sulfur batteries(リチウム-硫黄電池用の電解質のレビュー)、Journal of Power Sources(ジャーナル・オブ・パワー・ソース)、2014、255(1)、204-218;X. Yu(ユー)ら、Electrode-Electrolyte Interfaces in Lithium-Sulfur Batteries with Liquid or Inorganic Solid Electrolytes(液状または無機固形電解質を有するリチウム-硫黄電池における電極-電解質界面)、Acc. Chem. Res.(アカウンツ・オブ・ケミカル・リサーチ)、2017、50(11)、2653-2660;およびX. Judez(ジューデズ)ら、Review-Solid Electrolytes for Safe and High Energy Density Lithium-Sulfur Batteries:Promises and Challenges(レビュー-安全でおよび高エネルギー密度のリチウム-硫黄電池用の固形電解質:見込みおよび課題)、Journal of The Electrochemical Society(ジャーナル・オブ・ジ・エレクトロケミカル・ソサエティ)、2018、165(1)、それらのそれぞれの内容は参照によってそれらの全体において組み込む。いくらかの非制限的な態様では、電解質は適切には、エーテル混合物、ジメチルスルホキシド、およびジメチルホルムアミドを含み得る。そのような電解質の一例は、ジメトキシエタンおよびジオキサランの混合物において溶解するLiビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)(LiTFSI)である。
【0041】
本開示の任意の様々な態様において、および本開示の範囲内の欠陥のあるMOFの調製のための非制限的な例において、欠陥のあるUiO?66サンプルはLillerud(リールルード)らによって開発された修飾化合成アプローチを使用して合成されてよく、次にMOF構造中に組み込まれる競合性モノカルボン酸が使用される(G. Shearerら、Functionalizing the Defects:Postsynthetic Ligand Exchange in the Metal Organic Framework UIO-66、Chem. Mater. 2016、28、7190-7193およびG. C. Shearerら、Defect Engineering:Tuning the Porosity and Composition of the Metal-Organic Framework UiO-66 via Modulated Synthesis、Chem. Mater.、2016、28、3749-3761)。次いで、さらなる結合または機能化用にUiO-66 Zr6-クラスター上にオープンサイトを作り出すために競合性カルボン酸をアクアおよびヒドロキシルリガンドとスワップすることができる。修飾性強度(modulating strength)(例は、pKa、結合定数)および修飾因子対合成において使用されるマルチトピックカルボン酸リンカーのモル比を変動させることによって、制御可能な欠陥濃度を有する一連のMOFsを取得し得る。欠落性リンカー部位での増加は電位差滴定の酸-塩基滴定によって定量化することができるH2O-およびHO-基を導入することによって不安定なプロトンの増加して数と相関する。M. R. R. Destefano(デステファノ)ら、Room-Temperature Synthesis of UiO-66 and Thermal Modulation of Densities of Defect Sites(UiO-66の室温合成および欠陥部位の密度の熱調節)、Chem. Mater.、2017、29、1357-1361を参照し、その内容は参照によってその全体においてここに組み込む。本方法は物質フレームワーク内に安定したLiイオンリザーバーを作り出すために欠陥部位およびノード構造の両方の酸性プロトンをLi+とスワップする能力を提供する。
【0042】
Li-S電池における硫黄の多硫化物への還元の間、電子移動は電荷バランスのためにLi
+拡散を伴わなければならない。何ら特定の理論に拘束されることなく、MOFフレームワークでのリチウム化に利用可能な部位における増加はより一層速いLi
+伝導につながり、およびLiリザーバーとして機能すると考えられる。さらに、MOF構造においてすでに存在する高濃度のLiイオンは好ましい静電相互作用を通して多硫化物の形成およびカプセル化を促進すると考えられる。これまでの実験的証拠に基づき、ペアレントのUiO-66(即ち、最小限の欠陥しか有しないUiO-66)と比べてリチウム化された欠陥のあるUiO-66でのLi濃度において大幅な増加がある。さらに、これまでの実験的証拠に基づいて、および一つの非制限的な例では、
図14においてLi-UiO-66(50Benz)によって例示されるリチウム化された欠陥のあるUiO-66は、ペアレントUiO-66と比べて高められたLi-S容量保持を提供した。まださらに実験的証拠に基づいて、リチウム化された欠陥のあるUiO-66は約900mAh g
-1(約1390Wh kg
-1)の最大Li-S電池容量を提供し、および多硫化物のホストとして使用されるリチウム化された欠陥部位を有するMOFsの使用はLi-Sのサイクル性(cyclability)を改善し、および理論上の限界に近い比エネルギー密度を提供すると考えられる。
【0043】
本開示によれば、リチウムの取込みの程度は、例として、(i)欠陥部位の濃度、(ii)塩基の強度(pKa<30)、および(iii)合成について使用される温度(-77ないし200℃)によって制御することができる。水性媒体において行う酸塩基滴定によれば、UiO-66μ3-OH、-OH2、および-OHのpKa値はそれぞれ3.52、6.79、および8.30である。R. C. Klet(クレット)ら、Evaluation of Bronsted acidity and proton topology in Zr- and Hf-based metal-organic frameworks using potentiometric acid-base titration(電位差滴定の酸-塩基滴定を使用するZr-およびHf-ベースの金属-有機フレームワークにおけるブレーンステッド酸性度およびプロトントポロジーの評価)、J. Mater. Chem. A(ジャーナル・オブ・マテリアルズ・ケミストリーA)、2016、4、1479-1485を参照し、その内容はその全体においてここに組み込む。しかしながら、pHが中性から外れるとき、水性媒体におけるUiO-66の安定性が影響を受け得;PXRDおよびATR-IR実験によって証明されるように、酸性および塩基性条件の両方はMOF分解をもたらし得る。Y. Huang(ファン)ら、Stability and degradation mechanisms of metal-organic frameworks containing the Zr6O4(OH)4 secondary building unit(Zr604(0H)4二次構造単位を含む有機-金属フレームワークの安定性および分解機構)、J. Mater. Chem. A、2013、1、5642-5650を参照し、その内容はその全体においてここに組み込む。MOF分解を抑制または回避するために、強塩基性溶液において極性非プロトン性溶媒を使用してリチウム化手順を行い得る。いくらかの態様において、強塩基は有機リチウム塩基、例えば、N-ブチルリチウムなどのようなものである。いくらかの態様において、塩基は、アミン、水酸化物、またはアルコキシド、例えば、ピリジン、トリメチルアミン(TEA)、またはナトリウムメトキシドなどのようなものである。いくらかのそのような態様において、極性溶媒は、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)アセトニトリル、ジメチルスルホキシドおよびプロピレンカーボナートから選ばれ得る。一態様では、溶媒はDMFである。いくらかの態様において、リチウム源は有機リチウム塩基またはリチウム塩、例えば、制限されないが、LiNO3などのようなものに由来し得る。リチウム化手順は適切には、少なくとも一時間、少なくとも4時間、少なくとも8時間、少なくとも16時間または少なくとも24時間、例えば、例として、24時間などのようなものの反応時間を有し得る。
【0044】
前に開示するように、欠陥部位濃度はリチウム貯蔵能力において役割を果たす。欠陥部位の数が増えると、より一層酸性のプロトンがもたらされる。高度に欠陥のあるMOFsはH+/Li+交換を容易に受け、およびリチウム含量がより一層多くなる。Li-UiO-66、Li-UiO-66(l2TFA)、およびLi-UiO-66(50Benz)の非制限的な例についてのこれまでの実験的証拠に基づいて、Li-UiO-66、Li-UiO-66(l2TFA)、およびLi-UiO-66(50Benz)のリチウム含量は、欠陥濃度の関数、例えば、LiおよびZr原子吸光分析(AAS)によって定量化されるなどのようなものとして増加する。温度を高めるか、または塩基の強度を増加させることによって、さらにまたリチウム化を達成することもできる。例えば、上記のDMFにおいてLiNO3およびTEAを含む溶液においてUiO-66(50Benz)を60および80℃に加熱することは、Liのモル濃度においてそれぞれ1.3倍および1.7倍までの増加を導く。室温でのより一層強い塩基、n-ブチルリチウムの使用はまた、TEAを使用する類似の室温リチウム化と比較してモルLi含量も1.8倍まで高めた。
【0045】
これまでの実験的証拠に基づき、および任意の特定の理論に拘束されることなく、ある理論の下では、MOFsにおけるLiリザーバーは好ましい静電相互作用を通して多硫化物のカプセル化を促進すると考えられる。
【0046】
さらにこれまでの実験的証拠に基づき、および任意の特定の理論に拘束されることなく、Li豊富なカソードの使用の成功に基づいて、カソードにおけるリチウムの量が多硫化物のカプセル化およびLi-S電池の性能に好影響を与え得ると考えられる。中性硫黄(S
8)をより一層短い鎖のリチウム多硫化物に還元することはLi-S電池において高い硫黄利用率を達成するために電荷平衡性Li
+イオンの拡散が必要である(
図2を参照)。Li含量を増やすことは、Liイオン伝導をさらに促進するだけでなく、帯電した多硫化物を安定化させ、およびそれらの溶解を防ぐための好ましい静電相互作用も提供する。しかしながら、Li含量は慣習的な固態の(solid-state)物質において簡単に調整されず、それは最終的に格子エネルギーに影響を与え、および他の構造変化を引き起こし得るからである。
【0047】
本開示のいくらかの態様では、金属伝導および多硫化物との静電相互作用を促進するリチウム-欠陥のあるMOFsを提供する。いくらかの特定の態様において、Li-Sカソードには、そのようなリチウム-欠陥のあるMOFsが含まれる。そのようないくらかの態様では、欠陥のあるMOFsはZr-MOFsである。リチウム化(Lithiated)-MOFsは高容量の硫黄カソードおよび延長されたLi-Sサイクリングを提供する。欠陥のあるZr-MOFsをリチウム化するためのスキームを
図1に描く。
【0048】
本開示のいくらかの態様において、多硫化物の共有結合アンカーリングのための化学的アンカー官能基を組み込むリチウム-欠陥のあるMOFsを提供する。いくらかの特定の態様において、Li-Sカソードには、そのようなリチウム-欠陥のあるMOFsが含まれる。多硫化物について適する化学的アンカーの例には、以下が含まれる:チオホスファート、例えば、[P
xO
yS
z]
a-などのようなもの、式中xは1-3、yは0-9、zは1-10、およびaは3-6であり;チオゲルマナート、例えば、[Ge
xO
yS
z]
a-などのようなもの、式中xは1-3、yは0-9、zは1-10、およびaは3-6であり;チオアルセナート(thioarsenate、チオヒ酸塩などとも言う)、例えば、[As
xO
yS
z]
a-などのようなもの、式中xは1-3、yは0-9、zは1-10、およびaは3-6である。これまでの実験的証拠に基づいて、欠陥のあるZr-MOFを化学的アンカーLi
3PS
4(LPS)により機能化した。
図3はリンクされたZr-UiO-66 MOFクラスターに-OHおよび-H
2Oプロトン性欠陥部位を導入すること、活性部位を脱プロトン化すること、および脱プロトン化された不完全な(defective)MOF活性部位をリチウム化すること、それによってLi-UiO-66(MOD)を生じさせることを描く(そこでUiO-66(MOD)は修飾因子(MOD)、例えば、安息香酸およびTFAなどのようなものにより合成される欠陥のあるUiO-66に言及する)。ある理論の下では、および任意の特定の理論に拘束されることはないが、共有結合S-S結合が、P(S
Z)
4
3-を形成するために電池サイクリング間にPS
4
3-単位上に可逆的に形成されると考えられる。
図4Aおよび4Bに描くように、さらに実験的証拠に基づいて、Li-S電池においてLPS機能化Zr-MOFの使用(LPS-UiO-66(MOD))は、機能化されていない欠陥フリーのZrMOFsと比べて高められた容量保持を提供し、約1200mAh h
-1(約1860Wh kg
-1)の非常に高い容量が提供される。
【0049】
本開示の他のいくらかの態様において、多硫化物の共有結合アンカーリングのための化学的アンカー官能基は、一般式M
rP
nS
OおよびM
rP
nS
oX
qのチオホスファートである。そのような任意の様々な態様において、MはLiまたはNaである。Xは非硫黄原子、例えば、N、O、またはハロゲン化物などのようなものである。rは2ないし9、nは1ないし3、oは1ないし8、およびqは1ないし4である。そのような適切なアンカーの例には、Li
5P
2S
6N、Li
3PS
3O、およびLi
2PS
3Clが含まれる。そのようなリチウム化チオホスファートの化学的アンカーは、LPSN、LPSO、またはLPSXと称される。LPSN物質の例のNMRおよびIRスペクトルを
図19および20に示す。本開示の他のいくらかの態様では、Li-Sカソードには、ここに記載のような多硫化物との金属伝導および静電相互作用を促進するリチウム-欠陥のあるMOFsおよびここに記載のような多硫化物の共有結合アンカーリングについての化学的アンカー官能基を組み込むリチウム-欠陥のあるMOFsの両方が含まれる。
【0050】
本開示はZrベースのMOFsのリチウム化がLi-S電池の性能を向上させることを実証する。実証された1272mAh g-1の高容量は本技術において既知の最良の硫黄/炭素電極を超え、およびLi-S電池の理論上の制限である1680mAh g-1に近づく。Li-S電池の性能は定電流サイクリング(galvanostatic cycling)研究によって実証され得る。Li-S電池の電池性能の一つの測定基準は最大電荷容量(maximum charge capacity)であり、それは電池が電荷を蓄積する能力の反映であり、および合計エネルギー密度に直接関連する。欠陥のあるMOF Li-UiO-66(MOD)の非制限的な例について、そこでMODは修飾合成において使用される修飾因子を表し、追加的なLi部位は多硫化物の還元を促進し、および最大電荷容量を高めると考えられる。サイクル寿命の測定基準は定電流サイクルを延長した後の相対容量によって測定される。容量の減衰率は放電サイクル中に多硫化物を保持するMOFsの能力に関する洞察を提供する。
【実施例】
【0051】
例
【0052】
例1:UiO-66(MOD)の合成
【0053】
修飾した手順に従って、UiO-66-MOD MOFsは欠陥を組み込むために様々な修飾因子(MOD)を用いて合成した。G. Shearerら、Chem. Mater. 2016、28、7190-7193およびG. C. Shearerら、Chem. Mater.、2016、28、3749-3761を参照。典型的な合成では、1.70gのZrCl4(7.3ミリモル)および1.23gのH2BDC(7.4ミリモル)を200mLのDMFを含む500mLのエルレンマイヤーフラスコに対して加えた。UiO-66(l2TFA)、UiO-66(36TFA)、およびUiO-66(50Benz)の形成のために、制御された量の修飾因子トリフルオロ酢酸(TFA)および安息香酸(benz)を加え、およびそれらの欠陥濃度はAtomic Absorption Spectroscopy(原子吸光分光法)によって分析し、以下の表1に報告する結果を伴う。それぞれについて、すべての試薬が溶解するまで混合物を50℃にて5分間撹拌した。溶解したら、0.40mLのH2Oを加えてフラスコを覆い、および80℃に設定した予熱オーブン中に1時間置いた。次いでオーブン温度を120℃に上げ、および72時間放置した。得られた固形物を遠心分離機によって収集し、および150mLの新鮮なDMFにおいて夜通し洗浄した。固形物を再度収集し、およびこのマナーにおいてDMFによりさらに2回4時間洗浄した。洗浄後、MOF粉体を60℃にて夜通し乾燥させた。
【0054】
【0055】
組み込まれた修飾因子を交換するために、「HCl活性化」と呼ばれるプロセスをUiO-66の前の修飾合成に従って使用した。G. Shearerら、Chem. Mater. 2016、28、7190-7193。DMF-HCl溶液は、600:25のDMF対8M HCl(v/v)の比率を使用して調製した。取得したUiO-66-MODの2gごとについて、この溶液600mLをHCl活性化プロセスのために使用した。HCl活性化プロセスは適宜にスケールアップまたはダウンし得る。合成したままの、および乾燥したMOF粉体の1gをDMF-HCl溶液の312.5mLとともに500mLのエルレンマイヤーフラスコに加え、蓋をし、および予熱した100℃オーブンに置き、および48時間保持した。固形物は遠心分離を介して収集し、および2日間にわたる3回洗浄のために150mLのDMFを使用して上記のマナーにおいて洗浄した。最後の洗浄後、余分なDMFを除去し、およびMOF粉体を60℃のオーブンにおいて夜通し乾燥させた。修飾合成のそれぞれはHCl活性化後に1.5から2.5gまでの範囲(ranging from 1.5-2.5g)の異なる収量をもたらした。
【0056】
比較のために、Li-UiO-66(noMod)もまた初期のUiO-66合成において、修飾因子を添加しなかったことを除き、同じ手順を使用して合成および活性化した。
【0057】
例2:Li-UiO-66(MOD)の合成
82mgのLiNO3(70ミリモル)を10.5mLのDMFにおいて溶解することによってリチウム取込み溶液を調製した。溶解したら、6.3mLのトリエチルアミン(TEA、45mmol)を脱プロトン化用の塩基として溶液に加えた。次に、この溶液を、約150mgのHCl活性化UiO-66(MOD)を含む20mLのシンチレーションバイアルに加え、次いで混合するために振とうすることによって続けた。混合物を反応させた(例は、室温にて、または60または80℃に設定したオーブンにおいて24時間)。24時間後溶液をデカントし、および20mLのアセトンと置き換えた。固形物を遠心分離によって収集し、20mLのアセトンにより洗浄し、および新しいアセトン溶液において夜通し浸漬した。固形物をアセトンによりさらに4回洗浄し(washed four more times)、および追加的な一回の洗浄後、固形物をアセトンにおいて夜通し浸した。アセトン洗浄に続き、溶媒をDCMに切り替え、および上記の洗浄プロセスを繰り返した。最後のDCM洗浄後、溶媒を除去し、およびLi-UiO-66(MOD)固形物を空気において乾燥させた。サンプルは更なる使用または特性評価までデシケーターにおいて貯蔵した。
【0058】
追加的な合成では、TEAの代わりにn-ブチルリチウムを塩基として使用した。合成されたままのUiO-66(50Benz)は、DMFからアセトン、および次いで上記の洗浄手順を使用してDCMに溶媒交換した。次いで、150mgのMOFは、Schlenk(シュレンク)アダプターを取り付けた25mLの丸底フラスコ中に置き、および窒素を流しながらパージした。このフラスコには、窒素を流しながら、ヘキサンにおける1.6Mのn-ブチルリチウム溶液の7mLをフラスコにゆっくりと加え、および24時間保持した。溶液を除去し、および収集したMOFを10mLのペンタンにより数回洗浄し、次いで蒸留したテトラヒドロフランを使用して浸漬および溶媒交換を続けた。
【0059】
周囲温度でのLi-UiO-66(50Benz)および非リチウム化UiO-66(50Benz)多結晶粉体を粉体X線回折(PXRD、Bruker D8 Focus diffractometer(ブルカーD8フォーカス回折計)、Cu Kα、LynxEye検出器)および赤外線分光法(IR、ThermoScientific Nicolet(サーモサイエンティフィク・ニコレ)iS FT-IR、iD 5 ATRアタッチメント付き)によって
図9および10に示す結果と共に評価した。
図9および10はどちらも、リチウム化MOFsが高い結晶性(crystallinity)を伴う構造的に無傷のままであることを示す。
図9は、TEA処理されたMOFsについて、およびPXRDに基づいて、リチウム化MOF構造がHClで活性化されたUiO-66(50Benz)と比べて結晶性を伴い無傷のままであることを示す。
図10(IR分光法)におけるアスタリスクは、UiO-Liが特徴的なMOFカルボニルストレッチを有し、それによって構造が保存されていることを示す。Zr-0ピークにおけるわずかなシフト(0によって示される)は、支持性ノードの脱プロトン化(supporting node deprotonation)が発生することを指し示す。Li-UiO-66(50Benz)および非リチウム化UiO-66(50Benz)は、走査型電子顕微鏡(JEOL JSM IT100)によってさらに評価され、および八面体結晶の劣化またはLi-UiO-66(50Benz)およびUiO-66(50Benz)間の粒子サイズでの変化を示さなかった。
【0060】
Li-UiO-66(50Benz)およびUiO-66(50Benz)は、サーモグラフィー分析(TGA、TA Instruments(TAインスツルメンツ)SDT Q600の5.0℃ 分
-1の加熱速度にてArを流しながら)によってさらに評価した。
図11Aおよび11Bにおいて描くTGAプロットは、Li-MOFの特徴的な熱安定性がMOFと比くらべて変化しないままであることを示す。
【0061】
Li-UiO-66(50Benz)およびUiO-66(50Benz)は窒素吸着技術(Micromeritics(マイクロメリティクス)ASAP2020Plus(ASAP2020プラス))によってさらに評価した。Li-UiO-66(50Benz)は450.6m2/gのBET表面積を提供し、およびUiO-66(50Benz)は1520.8m2 g-1のBET表面積を提供した。BETデータは欠陥濃度の関数として表面積が増加することを示す。
【0062】
したがって、実験データはリチウム化法がUio-66構造を劣化させず、および高い結晶性、熱安定性、および高い表面積の有利な特性が保存されることを示す。
【0063】
例3:MOF欠陥部位濃度の評価
【0064】
欠陥部位濃度はリチウム貯蔵能力においてある役割を果たす。欠陥部位の数が増えると酸性プロトンが増えるため、最も欠陥のあるサンプルはH
+/Li
+交換が容易になり、およびリチウム含量が高くなる。実験的証拠に基づいて、Li-UiO-66(noMod)、Li-UiO-66(l2TFA)、およびLi-UiO-66(50Benz)におけるリチウム含量は、LiおよびZr原子吸光分光法(AAS、Perkin Elmer(パーキン・エルマー)AAnalyst(エーアナリスト)100システムおよびPerkin Elmer Intesitron(パーキン・エルマー・インテシトロン)ホローカソードランプ)によって定量化されるような欠陥濃度の関数として増加することが示された。
図12に描くように、欠陥部位の数が増えると、酸性プロトンのより一層多くの数がもたらされ、および最も多くの欠陥のあるUiO-66(50Benz)は最も多くのリチウムの取込みを有し、それはまた以下の表2において示すようにSBU当たりに最も高いLi原子を意味する。リチウム化手順において塩基または弱塩基(ピリジン)を使用しないとき、以下の表3において示すようにMOFにおけるリチウムの量が減少する。さらに実験的証拠に基づき、温度を高めるか、または塩基の強度を増加させることによって改善されたリチウム化を達成することができることが見出された。例えば、上記のDMFにおけるLiNO
3およびTEAを含む溶液におけるUiO-66(50Benz)を60℃(Li-UiO66(50Benz)-60および80℃(Li-UiO66(50Benz)-80)に加熱することはLiモル濃度においてそれぞれ1.3および1.7倍までの増加を導く(
図12および表2参照)。より一層強い塩基、n-ブチルリチウム(Li-UiO-66(50Benz)-nBuLi)の室温での使用はまた、TEAを使用する類似の室温リチウム化と比べてLiのモル含量を1.8倍まで高めた。すべての場合において、これらの代替経路を介して達成される高度にリチウム化されたMOFsはそれらの構造的完全性および結晶性を維持する(
図9、10、11Aおよび11Bを参照)。
【0065】
【0066】
【0067】
UiO-66(noMod)。UiO-66(50Benz)およびMOF-808をオープンサイトの数および表面積についてさらに評価した。オープンサイトの数は以下の方法に従い電位差滴定の酸-塩基滴定によって定めた。最初に、活性化したMOF粉体をアセトンにより洗浄し(24時間にわたり5×20mL)、およびMOF内からプロトン性溶媒を除去するために150℃にて2時間排気した。次いで、排気したフラスコを窒素により負荷し、およびおよそ40mgの粉体をビーカー中に置いた。これに対し、0.01MのLiNO3溶液(50mgのMOFについて50mL溶液)をビーカーに加え、カバーをし、および滴定に先立ち最低16時間放置した。電位差滴定はpH Probe(pHプローブ)およびDrop Counter accessories(ドロップカウンターアクセサリ)を有するVernier LabQuest2(バーニア・ラボクエスト2)を使用して実行した。滴定を開始するために、3.00のpHに達するまで0.1MのHClを滴下により加えることによって溶液のpHを調整した。pHが11になるまでおよそ0.02mL毎分の速度にて0.05MのNaOH溶液を送るためにビュレットを使用した。前に報告した手順に従って、当量点(EP)を定めてUiO-66およびMOF-808サンプルについての欠落性リンカーの数を定量化するために、微分曲線(dpH/dV、式中Vは0.05MのNaOH溶液の容量である)を使用した。表面積は、The Brunauer-Emmett-Teller(ザ・ブルナウアー-エメット-テラー)(BET)法によって定めN2吸着等温線から表面積を取得するために適用した。BET表面積を算出するために使用する窒素吸着等温線(Micromeritics ASAP 2020)はサンプルにて収集し、それは60℃で1時間、熱および真空によって十分に脱気し、次いで150℃にて2時間保持した。結果を以下の表4において報告する。Zrノードでのゲスト分子の取込みを体系的に調節するためにオープンサイトの数を使用し得ることが発見された。
【0068】
【0069】
例4:カソードおよびコインセルの調製
【0070】
カソードスラリーは30重量%MOF、45重量%S、15重量%Super-P(スーパーP)カーボン(99+%、Alfa Aesar(アルファ・エイサー))、および10重量%ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)固形混合物のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)におけるものを使用して調製した。MOFを乳鉢および乳棒により磨砕し、および硫黄と共に混合した。MOFおよび硫黄の混合物をPVDFおよびSuper-Pカーボンと共に混ぜ合わせた。小さなステンレス鋼球を混和物に加え、および固形物はボルテクサー(vortexer)を使用して5分間十分に混合した。混和物にNMPを添加すること、およびボルテクサーでの少なくとも30分間の均質化によって、スラリーを調製した。NMPの量は重量によって測定し、およびいくらかの態様において、固形混合物の合計質量の4倍であり得る。初期の混合の後、乾燥後の均質なフィルムの形成用に望ましいスラリーコンシステンシーを達成するため、必要に応じてさらにNMPを加えた。均質化したら、スラリーを事前に秤量した12.7mmのカーボンペーパーディスク上にキャスティングし、およびカソードを形成するために80℃のオーブンにおいて夜通し乾燥させた。硫黄の装填(sulfur loading)を測定するために12.7mmのカソードを再度秤量し、および使用するまでArを充填したグローブボックスに貯蔵した。
【0071】
CR 2032型コインセルは、予め秤量したカソード、研磨した金属Liアノード、二つのセルガード(Celgard)セパレータ、二つのステンレス鋼スペーサーおよびばね(TOB New Energy(TOBニュー・エナジー))を使用してAr-充填グローブボックスにおいて構築した。コインセルの例を
図8において示す。電解質は、1,2-ジメトキシエタン(DME、99+%)および1,3-ジオキソラン(DOL、99.5%)(1:1、v/v)で、添加した2重量%の硝酸リチウム塩(LiNO
3、99%)を伴う混合溶液における1Mのビス-(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)で構成した。それぞれのコインセルアセンブリに添加した電解質の量はカソード上のSの質量に基づき、Sの1mg当たり60μLの比率を有した。
【0072】
例5:リチウム化欠陥MOFsを含むカソードを有するLi-S電池の性能
【0073】
リチウム化した欠陥のあるMOFsが含まれるカソードを有するLi-S電池の最大電荷容量およびサイクル寿命を評価するために、Li-S性能でのリチウム含量の変動の影響を調べるべく、Li-UiO-66(MOD)および硫黄/炭素の複合体を含むカソードを構築した。
【0074】
この例の評価において、サイクリック・ボルタンメトリー(CV)は、Ivium-n-STAT Multichannel Electrochemical Analyzer(イビウム-n-STATマルチチャネル・エレクトロケミカル・アナライザ)にて実行した。新らしく調製したコインセルをCV用に使用し、そこで電位は2.9および1.6V対Li/Li+の間での0.1mV/sのスキャン速度にてサイクルさせた。コインセルは8時間休止した後に定電流的にサイクルさせた(MNT-BA-5V、MicroNanoTools(マイクロナノツールズ))。すべてのセルは、C/10(168mA g-1S)のCレート(そこで1C=十分に充電または1時間において放電)にて二十サイクルについて充電および放電し、次いで別なふうに明記しない限りC/5(336mA g-1S)にて八十サイクルを続けた。十分な統計的有意性を得るために、同じ電池の少なくとも三つを同じ条件下でテストした。
【0075】
図13に示すように大抵は、最大容量およびLi含量間でUiO?66(50Benz)、Li-UiO-66(noMod)(「noM-Li」)、Li-UiO-66(l2TFA)、およびLi-UiO-66(50Benz)の順で線形傾向を観察した。
図13はまた、過酷な反応条件から取得したLi-MOFsが劣化をもたらし、および最大容量が最小化されることも示す。Li-UiO-66(50Benz)セル、それは評価され、および
図13において描くセルの最も高いLi含量を含み、加えてLi-UiO-66(noMod)セルは、比容量の容量(mAh g
-1)およびクーロン効率(%)対電池サイクル数についてUiO-66(50Benz)セルと対比して評価し、そこで最初の20×サイクルはC/10のCレートにて、次いでC/5のCレートにて20×サイクルを取得した(
図14参照)。
図14はリチウム化を伴わない918mAh g
-1でのペアレントUiO-66(50Benz)と比べて最大で1272mAh g
-1までの平均最大(絶対)容量における著しい増加を示す。
図14はさらに、リチウム化および非リチウム化MOFsのクーロン効率が延長したサイクリング中に100%に近いことを示す。より一層高い比容量はリチウム化MOFsにおいて得られた。増加した容量は高い硫黄利用を指し示し、およびMOFのリチウム化の直接的な結果であると考えられる。
図14に示す容量保持において観察されるように、リチウム化MOFはペアレントUiO-66サンプルと同様の減衰率を示す。より一層高い温度およびより一層強い塩基を使用してリチウム化されたMOFsは概して、乏しい結晶性に悩まされ、および比較的低い性能をもたらす。
【0076】
図15Aおよび15Bはさらに、Li-UiO-66(50Benz)がUiO-66(50Benz)よりも優れた容量保持を有することを示し、それはCレートがC/10から2CまでおよびC/2から4Cまでに変動したからである。定電流充電-放電率(Cレート)はイオンを輸送し、および効果的にサイクルさせるセルの能力を反映する。Li-UiO-66(50Benz)およびUiO-66(50Benz)複合体電極を含む両方のセルは、C/10の遅いCレートにて最初の五つのサイクルにおいて下がる同様の容量を示す(
図15A)(Both cells containing Li-UiO-66(50Benz) and UiO-66(50Benz) composite electrodes how similar capacity fade in the first five cycles at the slow C-rate of C/10 (Figure 15A).)。しかしながら、Cレートを順次上げると差異が生じ始め、最終的にCレートが1Cおよび2Cに達するとき保持において10%向上がもたらされる。容量損失は、Li-UiO-66(50Benz)およびUiO-66(50Benz)セルの両方についてより一層遅いC/10レートに戻る際に回復可能であるが、リチウム化された場合についてわずかに良好な容量回復を伴う。
図15Aおよび15Bにおける結果は、Li-UiO-66(50Benz)を含むセルが、リチウム化されていないUiO-66(50Benz)を含むセルよりも実験においてそれぞれのCレートステップにてより一層少ない容量の低下しか表示しないことを明確に示す。ある範囲のCレートにて電荷を送り、および容量を保持する能力は、幅広い用途における急速なエネルギー使用の需要を満たすための重要な考慮事項である。Cレートが2Cを超えてさらに増加するとき、リチウム化MOFを含むセルは著しく改善された容量保持を見せる(
図15B)。Li-UiO-66-(50Benz)を含むセルは、安定した容量を維持することが可能であり、4Cの高速にて30×サイクルにわたって4%しか低下しない。逆に、リチウム化されていないUiO-66(50Benz)セルは同じサイクリング実験にわたり12%の著しく悪い容量低下をこうむる。
【0077】
LPS-UiO-66(noMod)、LPS-UiO- 66(50Benz)、およびUiO-66を有するLi-Sセルのサイクリング性能をS/C複合体カソード(45重量%S/C)と比較して
図4Aにおいて示す。LPS-MOF複合体カソードは、類似のMOF電極よりも著しくより一層高い最大容量を産生し、LPS-UiO-66(50Benz)、LPS-UiO-66(noMod)、およびUiO-66についてそれぞれ1193mAh g
-1、1172mAh g
-1、および891mAh g
-1に平均される(
図16Aも参照)。最大容量での増加は原子吸光分光法(AAS)によって測定されるリチウム含量の増加と一致し(後掲の表5参照)、LPS装填の増加は硫黄利用を改善することが示唆される。改善された使用率に加え、LPS-UiO-66(noMod)およびLPS-UiO-66(50Benz)により構築されたセルはUiO-66(50Benz)よりも高い容量保持を示す。100サイクル後(20×C/10、80×C/5)、LPS-UiO-66(50Benz)およびLPS-UiO-66(noMod)複合体カソードは、UiO-66(50Benz)複合体についてのわずか560mAh g
-1と比べて835mAh g
-1および767mAh g
-1の平均の比容量を有する(
図4Aおよび16B)。
【0078】
MOF-808はUiO-66よりも多くのオープンサイトを有し、チオホスファートの追加的な等価物に結合するその能力が強化される。LPS-UiO-66の結果に基づき、任意の特定の理論に束縛されることなく、最大容量および容量保持の両方がLPS濃度の増加と共に増加すると考えられる。Zr当たり0.7、1.0、および2.0のLPS等価物を使用して合成されるLPS-MOF-808サンプルの複合体カソードをセルにまで組み立て、およびLPS-UiO-66サンプルと同じ手順を使用して定電流的にサイクルした(
図4Bおよび16B)。
図16Aにおいてまとめた結果は最大容量のデリバリーにおいて明確な傾向を見せ、0.7x、l.0xおよび2.0x-LPS-MOF-808サンプルについてそれぞれ、~(ほぼ、約などとも言う)70mAh g
-1、130mAh g
-1、および300mAh g
-1のMOF-808セルにわたる平均的改善を有する。増加した容量は再度、機能化されたMOF内の増加したLiおよびLPS含量に起因する。100サイクルの後、容量保持はLPS-UiO-66のものに似ており、0.7x-、l.Ox-および2.0x-LPS-MOF-808セルは~800mAh g
-1の容量をデリバリーするが、MOF-808を含むセルは平均~700mAh g
-1未満である。追加的に、LPS-MOF添加剤により構築されるすべてのセルは硫黄-炭素複合体カソード(45重量%S/C)と比べるとき一層高い容量保持を見せる(
図4A、4B、16Aおよび16B)。
【0079】
LPS-MOF複合体セルの性能はより一層厳しいサイクリング条件下で評価した。LPS-UiO-66(50Benz)複合セルはすべてのCレートにてUiO-66(50Benz)と比べて一層高い容量を見せる(
図17Aおよび17B)。さらに、C/10の一層低いCレートに戻るとき、LPS-UiO-66(50Benz)セルは驚くほど回復し、および~1040mAh g
-1の容量を維持し、C/10でのその最初の5サイクル後の容量と同じである。対照的に、UiO-66(50Benz)および45重量%S/Cセルは容量を十分には回復せず、および容量の低下を受け続け、わずかに15サイクルだけにおいてほとんど200mAh g
-1を失う。容量を回復するLPS-UiO-66(50Benz)のこの優れた能力は、セルが最大で4Cまでの充電率にて継続的なサイクリングによって酷使され、および放電状態での貯蔵を延ばした後でも明らかである。これらの過酷なサイクリング条件の後、CレートがC/10にまで遅くなるとき、LPS-UiO-66(50Benz)セルは940mAh g
-1の容量を提供する一方、UiO-66(50Benz)セルは250mAh g
-1に到達することができるだけであり、および45重量%S/Cセルは不可逆的にゼロ容量に減衰する。LPS-MOF複合体カソードにより構築されるセルはまた、1CのCレートでの長期サイクリング実験において改善された容量デリバリーおよび保持も示す(
図18)。
図18はさらに、リチウム化および非リチウム化MOFsのクーロン効率が延長されたサイクリング中に100%に近いことを示す。LPS-UiO-66(50Benz)およびLPS-UiO-66(noMod)複合体カソードは驚くべきことに、600サイクル後にそれぞれ~375mAh g
-1および~300mAh g
-1をデリバリーすることが見出されたが、45重量%S/Cセルは100mAh g
-1でも保持することは可能でない。
【0080】
例6:化学的アンカーを有する欠陥のあるMOFsの調製
【0081】
チオホスファート前駆体、Li3PS4は、Ar充填したグローブボックスにおける20mLシンチレーションバイアルにて200mgのP2S5(0.9ミリモル)を122mgのLi2S(2.7ミリモル)と混合することによって合成した。これらの固形物に、5mLの蒸留したTHFを加え、およびグローブボックスにおいて室温にて24時間撹拌した。反応混合物を沈降させた後、黄色の溶液および白色粉体を取得する。黄色の溶液を除去し、および固形物は、黄色がもはや観察されなくなるまでTHFにより連続的に洗浄した。粉体を懸濁するため追加のTHFを使用し、および生産物はSchlenkアダプターを取り付けた50mL回収フラスコに移した。次いで、密封したフラスコをグローブボックスから取り出し、および室温にて3時間排気し、次いで140℃にて8時間追加的な排気を続けた。フラスコをグローブボックス中に戻し、および284mgの生産物を産生した(収率=88%)。D20における1MのNaOHでの溶液31P-NMR(Bruker Avance 400 MHz Spectrometer(ブルカー・アバンス400MHzスペクトロメータ))はPS4
3-種と一致するδ=87ppmに単一のピークを産生した。
【0082】
例1の方法に従ってUiO-66(MOD)を調製し、および活性化した。
【0083】
ホスファートの部分は溶媒アシスト配位子の組込みによってUiO-66(MOD)の部分に組み込まれ得、そこで活性化されたMOFを望ましいホスファートまたはホスホナート化合物の溶液において浸漬した。この例では、酸化に感受性なチオホスファート種を保存するために溶媒を選定した。LPS前駆体溶液の調製のために使用するLi3PS4の量は異なるMOF装填について変動した。すべてのUiO-66 MOFsに関し、同じ質量比の3:1(UiO-66:Li3PS4)を用いた。この比率は、用いるUiO-66のモル質量が高度に欠陥のある「レオ」-相またはペアレントの、欠陥のない、構造のものである場合、欠落性リンカーのオープンサイトを十分に占有するためにそれが必要なPS4
3-サブユニットのモル量の間にあるように選定した。欠陥のある、または欠陥のない構造のいずれの算出でも、必要なLi3PS4の量を過大に評価するために、MOFの1モル当たり3つのオープンサイトの値を使用する。
【0084】
算出したLi3PS4の質量をAr-充填グローブボックスにおけるフラスコ中に置き、およびゴム製のセプタムにより蓋をした。LPS前駆体溶液は、1:4(v:v)の比率において混合される乾燥トリエチルアミン-メタノール溶液を使用して調製した。この溶液を使用しておおよそのLi3PS4のモル濃度~50mMを形成するために、Li3PS4塩を不活性雰囲気下で溶解した。溶解してから、次に活性化MOFを含むフラスコ中に、LPS前駆体溶液を不活性雰囲気下、室温で注入した。フラスコを密封し、渦を巻かせ、および次いで24時間そのままにした。この装填手順において、MOF粉体の色は変わらないままであった。
【0085】
24時間浸漬した後、液相を8mLの乾燥THFに交換し、および最低24時間浸漬させた。THF洗浄手順を3日間(3d)にわたって繰り返し(5×8mLのTHF)、および全体を通して不活性雰囲気下に保った。最後のTHF洗浄液を除去し、およびサンプルを室温で3時間真空乾燥した。結果として得られるMOF-LPS粉体(caケミカルアンカーにより機能化された欠陥のあるMOF)は、貯蔵および将来の使用のためにグローブボックスに戻した。この方法に基づき、典型的に、使用される非活性化MOFの開始質量の約70-80%はLPS装填後に回収される。
図5AはLPS-機能化UiO-66(50Benz)について、およびペアレントの欠陥のないMOF(UiO-66)についての透過率(%)対波数(cm
-1)における赤外線(IR)分光法の結果を描く。
図5BはLPS-機能化MOF-808について、およびペアレントの欠陥のないMOF(MOF-808)についての透過率(%)対波数(cm
-1)における赤外線(IR)分光法の結果を描く。
図7Aおよび7BはLPS-機能化UiO-66(50Benz)(
図7A)について、およびLPS-機能化MOF-808(
図7B)についての固態のマジック角回転
31P核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance)(NMR、標準のBruker 4 mm HXプローブを有するAVIII 500MHz分光計、15kHzの回転速度)のスペクトルを描く。
【0086】
チオホスファート種の好首尾な取込みは、LPS-機能化UiO-66(50Benz)およびMOFをダイジェストし、および取り込まれたゲスト分子を放出するために1MのNaOH水溶液において夜通しダイジェストされたLPS-機能化MOF-808の固形状態
31P溶液NMRスペクトルによって確認した。LPS-UiO-66(50Benz)がダイジェストされる場合、
31P溶液NMRスペクトルは91.7ppmでの単一ピークを示し、それはLi
4P
2S
7に起因する(
図6参照)。
【0087】
化学的アンカーを有する欠陥のあるMOF-808を以下のように調製した。500mLのスクリューキャップ付きガラス容器に、1:1のDMF/HCOOH(450mL)において溶解したH3BTC(1g、5mmol)およびZrOCl28H2O(5g、15mmol)の溶液を130℃にて2日間加熱した。白色固形物を分離し、およびDMFにより5×、H2Oにより5×、およびアセトンにより5×連続3日間にわたり洗浄した。固形物をろ過し、および24時間風乾した。活性化したサンプルを追加的に真空下150℃にて24時間加熱した。次いで、活性化したMOFsはMOF-808の開始質量を考慮して化学量論的に算出した量のLi3PS4を使用してトリメチルアミンおよびメタノール(1:4のv/vによる)におけるLPSの溶液により処理した。装填および洗浄の手順は、LPS-機能化UiO-66(上記)を調製するためのものと一致した。本例に従って、LPSないしMOF-808の化学量論を変動させた。MOF-808はそのZrノード上に6つのオープンサイトを有する。したがって、MOF-808のモル当たり6モルのLi3PS4は理論的にはそれぞれのオープンサイトにて化学的アンカーを誘導体化するために必要であり、およびそのようなLPS MOF-808はl×LPS MOF-808と呼ばれる。同様に、LPS MOF-808はMOF-808の1モル当たり4.2モルのLi3PS4を調製し、0.7×LPS MOF-808と呼ばれ、およびLPS MOF-808はMOF-808の1モル当たり12モルのLi3PS4を調製し、2×LPS MOF-808と呼ばれる。
【0088】
チオホスファートの装填は制御されることができ、その一方MOF構造は保存されることが発見された。元素分析はLPS装填の程度がオープンサイトの数と直接相関することを示した。ダイジェストされたサンプルは以下の表5に示すように、UiO-66(noMod)<UiO-66(50Benz)<MOF-808の順にLiおよびP含量が増加することを示す。表5では:「AAS」はPerkin Elmer AAnalyst100システムおよびPerkin Elmer Intesitronホローカソードランプを用いて取得される原子吸光分析に言及し;「ICP-OES」は誘導結合プラズマ発光分析に言及し;および「EDS」はJEOL JSM IT100 Scanning Electron Microscope(走査型電子顕微鏡)を使用して収集したエネルギー分散型X線スペクトルに言及する。そのより一層大きな細孔径およびより一層多くのオープンサイトの数のため、MOF-808はLPS対Zrの装填率が0.7から2までに増加するときに追加的なLPSユニットを組み込むことができる。チオホスファート種の好首尾な取込みは溶液状態の31PNMR分光法によってさらに確認した。
【0089】
【0090】
この書面による説明は、ベストモードを含め、本発明を開示するために、およびまた、任意のデバイスまたはシステムの作成および使用、ならびに任意の組み込まれる方法の実行を含め、本発明が本技術において熟練する任意の人により実践されるのを可能にするために、例を使用する。本発明の特許可能な範囲は、請求の範囲によって規定され、および本技術における熟練する者の思い浮かぶ他の例を含み得る。そのような他の例は、それらが請求の範囲の文字通りの言い回しと異ならない構造要素を有する場合、または請求の範囲の文字通りの言い回しとの非実質的な違いを伴う等価な構造要素を含む場合、請求の範囲の射程内にあることが意図される。