(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】アキシチニブの製造方法、中間体2-((3-ヨード-1H-インダゾール-6-イル)チオ)-N-メチルベンズアミドの精製方法、アキシチニブ塩酸塩によるアキシチニブの精製方法、アキシチニブ塩酸塩の固体形態
(51)【国際特許分類】
C07D 401/06 20060101AFI20221226BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221226BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221226BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20221226BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20221226BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221226BHJP
【FI】
C07D401/06
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P35/04
A61K31/4439
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021560979
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2020060193
(87)【国際公開番号】W WO2020212253
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-12-10
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516053888
【氏名又は名称】シントン・ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】SYNTHON B.V.
【住所又は居所原語表記】Microweg 22, NL-6545 CM Nijmegen, Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】カストゥリック、ヤクブ
(72)【発明者】
【氏名】スコーマル、ラドミール
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/108106(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/067224(WO,A1)
【文献】特表2008-518900(JP,A)
【文献】Brian P. Chekal et al.,Organic Process Research & Development,2014年,18,pp.266-274
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61P
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
で表される化合物又はその塩の製造方法であって、
a)パラジウム触媒を製造する工程、ここで、前記パラジウム触媒は、好適な溶媒中にパラジウム源、配位子及び塩基を含む混合物である;
b)式(III):
【化2】
[式中、Xは、I、Cl、Br又はトリフルオロメタンスルホネートであり、Pは保護基である]
で表される化合物を、2-ビニルピリジン及び溶媒と混合する工程;
c)前記工程a)で製造したパラジウム触媒を、前記工程b)で製造した混合物に添加して、式(IV);
【化3】
で表される化合物を得る工程;
d)式(IV)で表される化合物を脱保護して、式(I)で表される化合物又はその塩を得る工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記パラジウム源が、1%~3%(式(III)で表される化合物に基づくモル%)で使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パラジウム源が、酢酸パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム又は塩化パラジウムから選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記パラジウム源が酢酸パラジウムである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記配位子が、トリフェニルホスフィン、ホスフィノオキサゾリン又は4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテンから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記XがIである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記保護基が、アシル、アセチル、ホルミル、スルホニル又はカルバメートから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記保護基がアセチルである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
式(I)で表される化合物又はその塩が10ppm未満のPdを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、式(I)で表される化合物、すなわちアキシチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の製造方法に関する。
【0002】
アキシチニブ、式(I):
【0003】
【0004】
で表されるN-メチル-2-({3-[(E)-2-ピリジン-2-イルエテニル]-1H-インダゾール-6-イル}スルファニル)ベンズアミドは、血管新生に関与するチロシンキナーゼ、特にVEGFRチロシンキナーゼの阻害剤である。
【0005】
アキシチニブは、単独及び他の化学療法薬と組み合わせて、非小細胞肺がん(NSCLC)、転移性腎細胞がん(mRCC)、転移性乳がん、膵臓がん及び甲状腺がんを含むいくつかの腫瘍に対する臨床活性が実証されており、臨床研究が継続中である。
【0006】
アキシチニブは、国際公開第2001/002369号に開示されている。アキシチニブを作製するための方法も開示されている(たとえば、国際公開第2001/002369号、国際公開第2006/048744号、国際公開第2006/048745号、国際公開第2016/108106号、P. B. Chekal et al., Organic Process Research & Development, 2014, 18, 266-274.)。先行技術(国際公開第2006/048751号、国際公開第2015/067224号)は、アキシチニブの塩も開示する。
【0007】
国際公開第2006/048744号又はOrganic Process Research & Development, 2014, 18, 266-274.に開示された方法は、下記の反応工程:
【0008】
【0009】
[式中、Halはハロゲン化物であり、Pは保護基である。]
を含む。
【0010】
国際公開第2006/048744号又はOrganic Process Research & Development, 2014, 18, 266-274.に記述された方法では、出発化合物(II)を、触媒、塩基、保護剤及び溶媒と混合する。保護反応の完了後、2-ビニルピリジンを加え、反応混合物を24時間高温に加熱する。生成物を脱保護した後、式(I)で表される化合物が得られる。この方法は、反応時間が長く、多くのPd触媒を使用し、最終化合物(I)からPdを除去するのが簡単ではないという難点がある。
【0011】
したがって、アキシチニブを製造する改良された方法が必要である。
【0012】
特に、収率及び化学的純度において効率的で、試薬及び反応条件に費用対効果があり、工業規模に応用可能な、パラジウム触媒の使用量が少なくて反応時間が短い方法が望ましい。
【発明の開示】
【0013】
本発明は、式(I):
【0014】
【0015】
で表される化合物、すなわちアキシチニブ又はその塩の製造方法であって、式(III)
【0016】
【0017】
[式中、Xは、I、Cl、Br又はトリフルオロメタンスルホネートであり、Pは保護基である]
で表される化合物を、2-ビニルピリジンとパラジウム触媒の存在下で反応させることを含む方法に関し、ここで、パラジウム触媒は、好適な溶媒中にパラジウム源、配位子及び塩基を含む混合物であり、パラジウム触媒は別個に製造される。
【0018】
本発明は、式(I):
【0019】
【0020】
で表される化合物又はその塩の製造方法であって、
a)パラジウム触媒を製造する工程、ここで、パラジウム触媒は、好適な溶媒中にパラジウム源、配位子及び塩基を含む混合物である;
b)式(III):
【0021】
【0022】
[式中、Xは、I、Cl、Br又はトリフルオロメタンスルホネートであり、Pは保護基である]
で表される化合物を、2-ビニルピリジン及び溶媒と混合する工程;
c)工程a)で製造したパラジウム触媒を、工程b)で製造した混合物に添加して、式(IV):
【0023】
【0024】
で表される化合物を得る工程;
d)式(IV)で表される化合物を脱保護して、式(I)で表される化合物又はその塩を得る工程
を含む、方法にも関する。
【0025】
本発明は、式(I)で表される化合物の精製方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、式(VIII)で表される化合物の固体形態JのXRPDパターンを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、式(I):
【0028】
【0029】
で表される化合物又はその塩の製造方法であって、
式(III):
【0030】
【0031】
[式中、Xは、I、Cl、Br又はトリフルオロメタンスルホネートであり、Pは保護基である]
で表される化合物を、2-ビニルピリジンとパラジウム触媒の存在下で反応させることを含む方法に関し、ここで、パラジウム触媒は、好適な溶媒中にパラジウム源、配位子及び塩基を含む混合物であり、パラジウム触媒は別個に製造される。
【0032】
先行技術で開示された式(I)で表される化合物の製造方法を以下に示す。
【0033】
【0034】
[式中、Halはハロゲン化物であり、Pは保護基である]
【0035】
出発化合物(II)を、触媒、保護剤及び溶媒と混合する。保護反応の完了後、2-ビニルピリジンを加え、反応混合物を24時間高温に加熱する。生成物を脱保護した後、式(I)で表される化合物が得られる。
【0036】
先行技術の方法に対し、本発明の方法を以下に示す。
【0037】
【0038】
出発化合物(II)を、保護剤及び溶媒と混合する。保護反応の完了後、2-ビニルピリジン及び触媒を加える。反応混合物を3時間~5時間高温に加熱する。触媒を別個に製造する、つまりこれは、一連の反応の最初の工程では式(II)で表される化合物に加えず、第二の工程において式(III)で表される化合物に加えることを意味する。生成物を脱保護した後、式(I)で表される化合物が得られる。本発明者らは、驚くべきことに、本発明の方法により、化合物(I)を製造する反応時間が著しく短縮され、パラジウム源の使用量を大幅に減らすことができることを見いだした。
【0039】
したがって、本発明は、式(I)で表される化合物の製造方法であって、
a)パラジウム触媒を製造する工程、ここで、パラジウム触媒は、好適な溶媒中にパラジウム源、配位子及び塩基を含む混合物である;
b)式(III):
【0040】
【0041】
[式中、Xは、I、Cl、Br又はトリフルオロメタンスルホネートであり、Pは保護基である]
で表される化合物を、2-ビニルピリジン及び溶媒と混合する工程;
c)工程a)で製造したパラジウム触媒を、工程b)で製造した混合物に添加して、式(IV):
【0042】
【0043】
で表される化合物を得る工程、
d)式(IV)で表される化合物を脱保護して、式(I)で表される化合物又はその塩を得る工程
を含む、方法にも関する。
【0044】
式(III)で表される化合物中のXは、塩素、臭素若しくはヨウ素から選択されるハロゲン、又はトリフルオロメタンスルホネートである。Xは、好ましくは、塩素、臭素又はヨウ素から選択されるハロゲンであり、より好ましくはヨウ素である。Pは、保護基、たとえばアシル、アセチル、ホルミル、スルホニル、カルバメート、テトラヒドロピラン若しくはtert-ブトキシカルボニル、又はProtective groups in organic synthesis, Theodora W. Greene and Petr G.M.Wuts, 3rd Ed., John Wiley & Sons Inc.に開示された保護基である。Pは、好ましくはアセチルである。
【0045】
工程a)のパラジウム触媒は、溶媒中、アルゴン又は窒素下といった保護雰囲気下で、パラジウム源を配位子と混合することによって製造される。混合物を5分~20分撹拌し、塩基を添加する。混合物を、25℃から溶媒の還流温度の温度、好ましくは50℃~75℃に加熱できる。
【0046】
パラジウム源は、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、塩化パラジウム又は酢酸パラジウムから選択でき、好ましくは酢酸パラジウムである。パラジウム源は、1%~3%(化合物(III)に基づくモル%)で使用でき、好ましくは1%~2.5%、より好ましくは1%~2%で使用される。溶媒中のパラジウム源の濃度は、0.001g/ml~0.009g/mlであってもよく、好ましくは0.002g/ml~0.006g/ml、より好ましくは0.003g/ml~0.005g/mlである。
【0047】
配位子は、トリフェニルホスフィン、ホスフィノオキサゾリン又は4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテンから選択でき、好ましくは4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテンである。配位子:パラジウム源は1:1~1.5:1(モル比)であってもよく、好ましくは1:1である。
【0048】
塩基は、炭酸塩(例.炭酸カリウム、炭酸ナトリウム)、炭酸水素塩(例.炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム)、酢酸塩(例.酢酸ナトリウム)又はアミン(例.トリメチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン)から選択できる。塩基は、好ましくはN,N-ジシクロヘキシルメチルアミンである。溶媒中の塩基の濃度は、0.01g/ml~0.15g/ml、好ましくは0.03g/ml~0.1g/ml、より好ましくは0.04g/ml~0.08g/mlであってもよい。塩基:式(III)で表される化合物は、1:1~10:1(モル比)であってもよく、好ましくは1.5:1~5:1、より好ましくは2:1~4:1である。溶媒は、1-メチル-2-ピロリドン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、アセトニトリル、ジオキサン若しくは水又はそれらの混合物から選択でき、好ましくは1-メチル-2-ピロリドンである。
【0049】
工程b)では、式(III)で表される化合物、2-ビニルピリジン及び溶媒を含む混合物を、アルゴン又は窒素下といった保護雰囲気下で製造する。
【0050】
溶媒は、非プロトン性極性溶媒、たとえば1-メチル-2-ピロリドン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、アセトニトリル、ジオキサン若しくは水又はそれらの混合物から選択でき、好ましくは1-メチル-2-ピロリドンが使用される。
【0051】
溶媒中の化合物(III)の濃度は、0.15g/ml~1g/mlであってもよく、好ましくは0.2g/ml~0.7g/ml、より好ましくは0.25g/ml~0.5g/mlである。
【0052】
化合物(III)対2-ビニルピリジンのモル比は1:3~1:10であってもよく、好ましくは1:4~1:8、より好ましくは1:5~1:7である。
【0053】
塩基は、炭酸塩(例.炭酸カリウム、炭酸ナトリウム)、炭酸水素塩(例.炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム)、酢酸塩(例.酢酸ナトリウム)、アミン(例.トリメチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン)又は1,2-ジアミノプロパンから選択できる。塩基は、好ましくはN,N-ジシクロヘキシルメチルアミンである。
【0054】
工程a)の混合物を工程b)の混合物に添加し、得られた混合物を、80℃から使用される溶媒の還流温度の温度、好ましくは110℃~130℃で、1時間~10時間、好ましくは2時間~5時間加熱する。反応の進行は、HPLC又はGCといった適切な方法でモニターできる。反応終了後、混合物をテトラヒドロフランで希釈できる。反応溶媒(すなわち、工程a)及び工程b)で使用した溶媒の量の和)とテトラヒドロフランの重量比は、1:1~3:1であってもよく、好ましくは1.3:1~2:1である。次いで、混合物は、必要に応じて、たとえばセライト上、好ましくは50℃~70℃といった高温で濾過できる。
【0055】
工程d)では、保護された式(IV)
【0056】
【0057】
で表される化合物を、1,2-ジアミノプロパンのような好適な脱保護剤により、接触水素化により(Pd、Pt又はNiといった触媒の存在下でH2を使用)、又は酸性(例.塩酸、トリフルオロ酢酸)若しくは塩基性(例.ピペリジン、アンモニア)の脱保護により、脱保護する。脱保護剤は、工程c)で製造した反応混合物に直接的に添加できる。好ましい事例では、保護基がアセチルである場合、1,2-ジアミノプロパンが脱保護剤として有利に使用される。式(IV)で表される化合物の脱保護は、好ましくは15℃~30℃、より好ましくは20℃~25℃で行う。1,2-ジアミノプロパンと式(IV)で表される化合物のモル比は、1.5:1~7:1であってもよく、好ましくは2:1~4:1である。反応の進行は、HPLC又はGCといった適切な方法でモニターできる。
【0058】
場合によっては、たとえば貧溶媒を添加することより、反応混合物から製造された式(I)で表される化合物を単離できる。貧溶媒として、水、又はテトラヒドロフランのような水溶性有機溶媒と水の混合物が使用できる。水と水混和性有機溶媒の体積比は、2:1~10:1であってもよく、好ましくは4:1~7:1である。添加した水又は水と水混和性有機溶媒との混合物と工程d)の反応混合物中の溶媒の総量の体積比は、4:1~15:1であってもよく、好ましくは5:1~8:1である。混合物に、貧溶媒を、40℃~65℃、好ましくは50℃~55℃で添加でき、混合物をこの温度で10分~60分撹拌してもよい。得られた式(I)で表される固体の化合物は、好適な単離方法、たとえば濾過により、単離できる。
【0059】
式(III)で表される化合物は、式(II):
【0060】
【0061】
[式中、Xは、好適な保護剤によるハロゲン又はトリフルオロメタンスルホネートである]
で表される化合物を保護することにより製造できる。
【0062】
保護反応は、好適な溶媒中、好ましくはアルゴン又は窒素下といった保護雰囲気下で行われる。好ましい態様では、Pがアセチル基である場合、無水酢酸が保護剤として使用される。
【0063】
好適な溶媒は、たとえば1-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、トルエン、アセトニトリル、ジオキサン、トルエン若しくは水又はそれらの混合物中であってもよく、好ましくは1-メチル-2-ピロリドン中である。
【0064】
溶媒中の式(II)で表される化合物の濃度は0.2g/ml~0.8g/mlであってもよく、好ましくは0.3g/ml~0.5g/mlである。
【0065】
式(II)で表される化合物と保護剤のモル比は1:1.5~1:5であってもよく、好ましくは1:1.9~1:3である。
【0066】
塩基は、炭酸塩(例.炭酸カリウム、炭酸ナトリウム)、炭酸水素塩(例.炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム)、酢酸塩(例.酢酸ナトリウム)又はアミン(例.トリメチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン又はN,N-ジシクロヘキシルメチルアミン)から選択され得る。塩基は、好ましくはN,N-ジシクロヘキシルメチルアミンである。化合物(II)と塩基のモル比は1:1.8~1:5であってもよく、好ましくは1:2~1:3である。溶媒中の塩基の濃度は0.2g/ml~0.8g/mlであってもよく、好ましくは0.3g/ml~0.5g/mlである。
【0067】
保護反応は、好ましくは80℃から使用される溶媒の還流温度で、より好ましくは100℃~130℃で、10分~180分実施する。反応の進行は、HPLC又はGCといった適切な方法でモニターできる。
【0068】
式(II)で表される化合物は、
a)式(V)で表される化合物を式(VI)で表される化合物と、銅又はパラジウム源の存在下で反応させて、式(VII):
【0069】
【0070】
[式中、HalはCl、Br又はIである]
で表される化合物を得る工程、
b)式(VII)で表される化合物をハロゲン化又はトリフレート化して、式(II)で表される化合物を得る工程
を含む方法によって製造できる。
【0071】
式(V)及び(VI)で表される化合物は市販されている。
【0072】
反応は、好適な溶媒、たとえば1-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、トルエン、アセトニトリル、ジオキサン若しくは水又はそれらの混合物中で行うことができ、好ましくは1-メチル-2-ピロリドン中で行う。反応は、アルゴン又は窒素雰囲気下といった保護雰囲気下で行うことができる。溶媒中の化合物(V)の濃度は0.4g/ml~2g/ml、好ましくは0.5g/ml~1.3g/mlであってもよい。
【0073】
溶媒中の化合物(VI)の濃度は0.4g/ml~2g/mlであってもよく、好ましくは0.5g/ml~1.3g/mlである。
【0074】
化合物(V)と(VI)のモル比は1:1~1:2であってもよく、好ましくは1:1~1:2である。
【0075】
銅又はパラジウム源は、酢酸銅(II)、CuI、CuBr、(CuOTf)2C6H6、CuCl、CuTC、Cu(MCN)4PF6、酢酸銅(I)、ビス(1,3-プロパンジアミン)銅(II)二塩化物、ビス(8-キノリノラト)銅(II)、ビス(2,4-ペンタンジオナト)銅(II)、シアン化銅(I)、2-チオフェンカルボン酸銅(I)、テトラフルオロホウ酸銅(II)、ジ-μ-ヒドロキソ-ビス[(N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン)銅(II)]塩化物、ジクロロ(1,10-フェナントロリン)銅(II)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(I)ベンゼン錯体、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)ヘキサフルオロリン酸塩又はテトラキス(アセトニトリル)銅(I)テトラフルオロホウ酸塩から選択できる。銅又はパラジウム源は、好ましくは酢酸銅(II)又は酢酸銅(II)水和物である。銅又はパラジウム源の量は3%~10%(化合物(V)に基づく重量%)であってもよく、好ましくは2%~5%である。
【0076】
反応は塩基の存在下で行う。塩基は、炭酸塩(例.炭酸カリウム、炭酸ナトリウム)、炭酸水素塩(例.炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム)、酢酸塩(例.酢酸ナトリウム)又はアミン(例.トリメチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン又はN,N-ジシクロヘキシルメチルアミン)から選択できる。塩基は、炭酸カリウム又は炭酸ナトリウムといった炭酸塩である。塩基と式(V)で表される化合物のモル比は2:1~5:1であってもよく、好ましくは2.5:1~4:1である。
【0077】
反応は、80℃から使用される溶媒の還流温度の温度、好ましくは90℃~130℃で、60分~240分、好ましくは80分~120分、行う。反応の進行は、HPLC又はGCといった適切な方法でモニターできる。
【0078】
工程b)において、溶媒中、ハロゲン化剤又はトリフレート化剤を使用して、式(VII)で表される化合物を式(II)で表される化合物に変換する。ハロゲン化剤として、たとえばN-ブロモコハク酸イミド、臭素、HBr、臭化物(例.NH4Br、NaBr、KBr、CuBr、ZnBr2)、I2、ヨウ化物(例.NH4I、NaI、KI、CuI、ZnI2)、ICl、N-ヨードコハク酸イミド、ヨウ化トリメチルシリル、N-クロロコハク酸イミド又はトリクロロイソシアヌル酸が使用できる。ハロゲン化反応は、CF3COOH、AgNTf2、H2SO4、H2O2、BF3.Et2O、NaIO4又はDMSOのような別の試薬(活性化剤)の存在下で行うことができる。トリフレート化剤はトリフルオロメタンスルホン酸であってもよい。ハロゲン化又はトリフレート化剤は、好ましくはI2である。好適な溶媒は、1-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、水、酢酸、ニトロメタン、ハロゲン化アルカン(例.ジクロロメタン、クロロホルム)、酢酸エステル(例.酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル)、テトラヒドロフラン、2-メチル-テトラヒドロフラン、アルコール(例.メタノール、エタノール、ブタノール、s-ブタノール、tert-ブタノール、イソプロパノール、tert-アミルアルコール又はアミルアルコール)又は1,4-ジオキサンから選択できる。溶媒は、好ましくは1-メチル-2-ピロリドンである。
【0079】
溶媒中のハロゲン化剤又はトリフレート化剤の濃度は0.5g/ml~10g/mlであってもよく、好ましくは1.5g/ml~7g/mlであり、より好ましくは2g/ml~5g/mlである。式(VII)で表される化合物とハロゲン化剤又はトリフレート化剤のモル比は1:1.2~1:5であってもよく、好ましくは1.5~2.5である。反応は、アルゴン又は窒素雰囲気下といった保護雰囲気下、90℃~130℃、好ましくは110℃~120℃で、1時間~5時間、好ましくは1時間~3時間行う。反応の進行は、HPLC又はGCといった適切な方法でモニターできる。ハロゲン化剤がI2である好ましい態様では、反応混合物は下記の方法で製造する。反応終了後、混合物に、アセトニトリル、アセトン、アルコール(例.メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール又はtert-ブタノール)、テトラヒドロフラン又は2-メチルテトラヒドロフランのような水混和性有機溶媒、好ましくはアセトニトリルを添加する。添加された水混和性有機溶媒とハロゲン化/トリフレート化工程b)で使用した溶媒の重量比は1:1~3:1であってもよく、好ましくは1.1:1~1.6:1である。混合物を70℃~80℃に冷却する。混合物にL-アスコルビン酸の水溶液を添加する。L-アスコルビン酸水溶液の濃度は0.15g/ml~0.3g/ml、好ましくは0.2g/ml~0.25g/mlであってもよい。L-アスコルビン酸の溶液をゆっくりと、好ましくは30分~240分、好ましくは120分~180分かけて添加する。
【0080】
混合物を同じ温度で10分~60分撹拌する。
【0081】
混合物を、-10℃~10℃、好ましくは-5℃~5℃に冷却し、この温度で20分~60分撹拌して、式(II)で表される化合物を沈殿させる。沈殿した式(II)で表される化合物は、好適な方法、たとえば濾過により、単離できる。
【0082】
本発明者らは、驚くべきことに、式(II)で表される化合物、又はXがIである場合は式(IIa):
【0083】
【0084】
で表される化合物が、
a)式(II)又は式(IIa)で表される化合物を、1-メチル-2-ピロリドンと混合する工程;
b)混合物を、70℃~120℃に加熱して、式(II)又は式(IIa)で表される化合物を溶解する工程;
c)溶液を冷却することにより、式(II)又は式(IIa)で表される化合物を単離する工程
を含む方法により精製できることを見いだした。
【0085】
工程a)において、混合物中の化合物(II)又は式(IIa)で表される化合物の濃度は0.4g/ml~1.5g/mlであってもよく、好ましくは0.6g/ml~0.9g/mlである。
【0086】
工程b)で、混合物を70℃~120℃、好ましくは100℃~110℃に加熱する。混合物を、この温度で30分~120分、好ましくは45分~80分撹拌する。次いで、工程c)で、混合物を-10℃~20℃、好ましくは0℃~10℃に冷却し、この温度で30分~180分、好ましくは60分~120分撹拌する。沈殿した式(II)又は式(IIa)で表される化合物は、好適な方法、たとえば濾過で、単離できる。
【0087】
この方法で精製された式(II)又は式(IIa)で表される化合物は、良好な結晶化度及び純度を示し、式(I)で表される化合物の化学的純度をさらに改良する可能性をもたらす。
【0088】
本発明者らは、驚くべきことに、式(I)で表される化合物が、
a)式(I)で表される化合物を、溶媒中で塩化水素と反応させて、式(VIII);
【0089】
【0090】
で表される化合物を得る工程;
b)貧溶媒を添加することにより固体の式(VIII)で表される化合物を単離する工程;
c)式(VIII)で表される化合物を溶媒中で塩基と接触させて、式(I)で表される化合物を得る工程
を含む方法で精製できることも見いだした。
【0091】
式(VIII)で表される化合物の固体形態である形態Jは、CuKα1線で測定した場合に、2θが、約6.1°、10.4°、12.2°、13.1°、14.3°、16.9°、18.0°、23.1°、24.7°及び27.7°(±0.2°)のピークを含むXRPDパターンによって特徴付けることができる。固体形態は、CuKα1線で測定した場合に、2θが、約6.1°、10.4°、10.7°、12.2°、13.1°、14.3°、15.5°、15.9°、16.9°、18.0°、20.6°、22.7°、23.1°、24.7°、25.9°、26.3°、27.7°及び32.0°(±0.2°)のピークを含むXRPDパターンによってさらに特徴付けることができる。固体形態は、以下の表に示すピークを含むXRPDパターンによっても特徴付けることができる:
【0092】
【0093】
固体の式(VIII)で表される化合物は、
図1に示すXRPDパターンによっても特徴付けることができる。
【0094】
工程aの溶媒は、テトラヒドロフラン若しくは1-メチル-2-ピロリドン又はそれらの混合物から選択できる。好ましくはテトラヒドロフラン又は1-メチル-2-ピロリドンの混合物が使用される。テトラヒドロフラン:1-メチル-2-ピロリドンの重量比は、1:1.4~1:2.5であってもよく、好ましくは1:1.6~1:2.1であり、より好ましくは1:1.9である。
【0095】
溶媒中又は溶媒混合物中の式(I)で表される化合物の濃度は0.2g/ml~1g/mlであってもよく、好ましくは0.3g/ml~0.6g/mlである。塩化水素は、気体の形態で、又は、たとえばN,N-ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリドン、アルコール(例.メタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノール)、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン若しくはジオキサン中の溶液、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド中の溶液として添加できる。溶媒中の塩化水素の濃度はたとえば5%~40(重量)%であってもよく、好ましくは10%~20%である。塩化水素と式(I)で表される化合物のモル比は1:1~10:1であってもよく、好ましくは1:1~2:1である。式(I)で表される化合物を溶媒又は溶媒混合物に溶解する。混合物を、たとえば50℃から使用される溶媒又は溶媒混合物の還流温度、好ましくは60℃~85℃に加熱する。混合物をこの温度で10分~120分、好ましくは15分~45分撹拌する。混合物に貧溶媒を添加する。貧溶媒は、アルコール(例.メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール)又は水から選択でき、好ましくはアルコール、より好ましくはメタノールが使用される。貧溶媒:溶媒又は溶媒混合物は1.5:1~10:1(重量比)であってもよく、好ましくは2:1~5:1、より好ましくは2:1~4:1である。貧溶媒を60分~240分、好ましくは120分~180分かけて添加する。次いで、混合物を10分~120分、好ましくは15分~45分撹拌する。混合物を-20℃~10℃、好ましくは-5℃~5℃に冷却し、この温度で60分~240分、好ましくは120分~180分撹拌して、式(VIII)で表される固体の化合物を単離する。式(VIII)で表される化合物は、好適な方法、たとえば濾過により、単離できる。さらに、式(VIII)で表される化合物と塩基を溶媒中で接触させ、式(I)で表される化合物を得ることができる。溶媒は、テトラヒドロフラン若しくは1-メチル-2-ピロリドン又はそれらの混合物から選択できる。好ましくはテトラヒドロフラン及び1-メチル-2-ピロリドンの混合物が使用される。テトラヒドロフラン:1-メチル-2-ピロリドンは、1:1.5~1:5(重量比)であってもよく、好ましくは1:2~1:4である。溶媒又は溶媒混合物中の式(VIII)で表される化合物の濃度は0.1g/ml~1g/mlであってもよく、好ましくは0.15g/ml~0.3g/mlである。塩基は、炭酸塩(例.炭酸カリウム、炭酸ナトリウム)、炭酸水素塩(例.炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム)、酢酸塩(例.酢酸ナトリウム)、アミン(例.トリメチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン)又は1,2-ジアミノプロパンから選択でき、好ましくは1,2-ジアミノプロパンである。式(VIII)で表される化合物と塩基のモル比は1:3~1:10であってもよく、好ましくは1:4~1:6である。混合物を、40℃から使用される溶媒又はその混合物の還流温度の温度、好ましくは50℃~70℃に加熱でき、この温度で、10分~120分、好ましくは15分~45分撹拌できる。混合物に貧溶媒を添加する。貧溶媒は、アルコール(例.メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール)又は水から選択でき、好ましくはメタノールが使用される。溶媒又は溶媒混合物:貧溶媒は、1.5:1~10:1(重量比)であってもよく、好ましくは2:1~5:1、より好ましくは2:1~4:1である。貧溶媒を60分~240分、好ましくは120分~180分かけて添加する。混合物を10分~120分、好ましくは15分~45分撹拌する。次いで、混合物を、-20℃~10℃、好ましくは-5℃~5℃に冷却し、この温度で60分~240分、好ましくは120分~180分撹拌して、式(I)で表される化合物を単離する。式(I)で表される化合物は、好適な方法、たとえば濾過により、単離できる。単離された式(I)で表される化合物は乾燥できる。式(I)で表される化合物は、優れた収率及び純度(ほぼ100%、HPLC ES(外部標準))で得ることができる。
【0096】
式(I)で表される化合物を、さらに、国際公開第2006/048751号に開示された固体形態IVに変換できる。式(I)で表される化合物の固体形態IVは、CuKα1線で測定した場合に、2θが、約8.9°、12.0°、14.6°、15.2°、15.7°、17.8°、19.2°、20.5°、21.6°、23.2°、24.2°、24.8°、26.2°及び27.5°(±0.2°)のピークを含むXRPDパターンによって特徴付けることができる。式(I)で表される化合物は、先行技術で公知の方法、或いは
a.式(I)で表される化合物を、N,N-ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドといった溶媒に溶解する工程;
b.混合物を、60℃~90℃、好ましくは70℃~80℃に加熱する工程;
c.混合物に酢酸エチルのような貧溶媒を添加する工程;
d.混合物を冷却し、場合によっては播種する工程;
e.式(I)で表される化合物の得られた固体形態IVを単離し乾燥する工程
を含む方法のいずれかで、多形形態IVに変換できる。
【0097】
工程aにおいて式(I)で表される化合物の濃度は0.02g/ml~0.15g/mlであってもよく、好ましくは0.03g/ml~0.09g/mlである。工程aで使用する溶媒は、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミドである。混合物を、60℃~90℃、好ましくは70℃~80℃に加熱し、高温で10分~60分撹拌する。次いで、貧溶媒、たとえば酢酸エチルを、高温で添加する。貧溶媒:溶媒は1:1.5~1:8(体積比)であってもよく、好ましくは1:2~1:5である。貧溶媒を20分~120分、好ましくは30分~60分かけて添加する。次いで、混合物を-20℃~10℃、好ましくは-5℃~5℃に冷却し、この温度で、60分~240分、好ましくは120分~180分撹拌し、式(I)で表される化合物を単離する。混合物は、好ましくは冷却中の温度が58℃~60℃に到達したら、固体形態IVの式(I)で表される化合物を播種できる。式(I)で表される化合物は、好適な方法、たとえば濾過により、単離できる。単離された固体を乾燥し、固体形態IVの式(I)で表される化合物を得る。
【0098】
先行技術に開示された方法と比較すると、本発明の方法は、下記の利点を有する:
1.式(III)で表される化合物と2-ビニルピリジンの反応で使用する触媒の量が少なく、反応時間が短い;
2.式(I)で表される化合物中の残留Pdが少なく、10ppm未満、好ましくは5ppm未満、より好ましくは1ppm未満である;
3.式(II)、式(IIa)又は式(VIII)で表される固体化合物は、式(I)で表される化合物の化学的純度をさらに改良する可能性をもたらす。
【0099】
下記の非限定的な実施例により、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0100】
XRPDスペクトルは、以下の測定条件で得た:
PixCell 3D検出器付きθ/2θ(トランスミションモード)によるPanalytical Empyrean回折計;
【0101】
【0102】
実施例1 2-((3-ヨード-1H-インダゾール-6-イル)チオ)-N-メチルベンズアミドの製造
【0103】
【0104】
窒素雰囲気下、3kgの1-メチル-2-ピロリドンを、4.4kgの6-ヨード-1H-インダゾール、7.3kgの炭酸カリウム及び0.17kgの酢酸銅(II)水和物と、20℃~25℃で混合する。混合物を80℃に加熱する。
【0105】
3.5kgの2-メルカプト-N-メチルベンズアミドを、1.75kgの1-メチル-2-ピロリドンと混合し、60℃に加熱する。この溶液を、事前に調製した6-ヨード-1H-インダゾールの溶液に、80℃で15分かけて添加する。次いで、混合物を105℃で90分撹拌する。
【0106】
2.8kgの1-メチル-2-ピロリドンに8.2kgのヨウ素溶液を添加する。混合物を105℃で120分撹拌する。次いで、80℃に冷却する。10.7kgのアセトニトリルを添加する。24kgの水に5kgのアスコルビン酸を混合した物を、80℃で120分かけて添加する。次いで、24kgの水を80℃で80分かけて添加する。得られた混合物を4時間かけて0℃~5℃に冷却する。混合物を濾別する。窒素雰囲気下、得られた固体を20kgのアセトン及び10kgの水と混合し、混合物を55℃~60℃に加熱し、この温度で1時間撹拌する。次いで、混合物を20℃に冷却し、濾過し、得られた固体を3kgの冷アセトンで洗浄し、乾燥して、2-((3-ヨード-1H-インダゾール-6-イル)チオ)-N-メチルベンズアミドを収率65%及び純度99%(HPLC ES)で得る。
【0107】
実施例2 1-メチル-2-ピロリドン中における2-((3-ヨード-1H-インダゾール-6-イル)チオ)-N-メチルベンズアミドの精製
5kgの2-((3-ヨード-1H-インダゾール-6-イル)チオ)-N-メチルベンズアミド(純度94%、HPLC ES)を、6.8kgの1-メチル-2-ピロリドンに105℃で溶解した。混合物をこの温度で60分撹拌した。次いで、混合物を210分かけて0℃に冷却した。沈殿した固体を濾別し、2-((3-ヨード-1H-インダゾール-6-イル)チオ)-N-メチルベンズアミドを収率97%及び純度99.3%(HPLC ES)で得た。
【0108】
実施例3 アキシチニブ、式(I)で表される化合物の製造
【0109】
【0110】
窒素雰囲気下の第1の反応容器中で、0.024kgの酢酸パラジウム(II)、0.062kgのキサントホスを、0.85kgの無水1-メチル-2-ピロリドンと混合した。0.048kgのN,N-ジシクロヘキシルメチルアミンを添加し、90℃に加熱した。
【0111】
窒素雰囲気下の第2の反応容器中で、2.2kgの2-((3-ヨード-1H-インダゾール-6-イル)チオ)-N-メチルベンズアミドを、6.6kgの1-メチル-2-ピロリドン、2.17kgのN,N-ジシクロヘキシルメチルアミン及び1.1kgの無水酢酸と混合した。混合物を120℃に加熱し、3.4kgの2-ビニルピリジンを添加した。第1の反応容器中の混合物を、第2の反応容器に加えた。混合物を110℃~125℃で3.5時間撹拌した。次いで、混合物を65℃に冷却し、5.2kgのテトラヒドロフラン及び0.1kgのセライトを添加する。混合物を50℃で30分撹拌し、濾過する。濾過ケーキを3.2kgのテトラヒドロフランで洗浄した。濾液を20℃~25℃に冷却し、0.8kgの1,2-ジアミノプロパンを添加した。混合物を20℃~25℃で1時間撹拌した。次いで、混合物を50℃~55℃に加熱し、44kgの水を120分かけて添加した。得られた懸濁液を50℃~55℃で30分撹拌し、次いで0℃~5℃に冷却し、この温度で30分撹拌した。沈殿した固体を濾別し、濾過ケーキを4.4kgのテトラヒドロフランで洗浄し、2kgのアキシチニブ(理論収率の96%及び純度97.7%(HPLC IN)を得た。
【0112】
実施例4 アキシチニブの精製
実施例3で製造したアキシチニブを、2.9kgの1-メチル-2-ピロリドン及び1.55kgのテトラヒドロフランと混合した。混合物を75℃~80℃に加熱し、2.45kgのN,N-ジメチルホルムアミド中の10%塩酸溶液を添加した。混合物を15分撹拌した。次いで、混合物を65℃に冷却した。13.8kgのメタノールをこの温度で120分かけて添加し、混合物を65℃で15分撹拌した。混合物を0℃~5℃に冷却し、この温度で30分撹拌した。混合物を濾別し、濾過された塊を1.6kgの酢酸エチルで洗浄し、乾燥して、1.7kgのアキシチニブ塩酸塩(化合物(VIII)を純度99.5%(HPLC IN)で得た。得られた固体のXRPDは、
図1に示したXRPDパターンに対応する。得られたアキシチニブ塩酸塩を、4.1kgの1-メチル-2-ピロリドン、1.32kgのテトラヒドロフラン及び0.93kgの1,2-ジアミノプロパンと混合した。混合物を60℃~65℃に加熱した。混合物に、0.4kgのテトラヒドロフラン中の80gの炭を添加し、次いで、混合物を30分撹拌した。混合物を濾過し、濾過ケーキを1kgのテトラヒドロフランで洗浄した。混合物に、8.4kgのメタノールを、60℃~65℃で2.5時間かけて添加した。混合物を-5℃~0℃に冷却し、この温度で30分撹拌した。混合物を濾別し、濾過ケーキを1.65kgのメタノールで洗浄し、乾燥して、1.5kgのアキシチニブを純度99.99%(HPLC ES)で得た。得られたアキシチニブ中におけるPdの含有量は0.5ppm未満であった。
【0113】
実施例5 固体形態IVのアキシチニブの製造
窒素雰囲気下、0.55kgのアキシチニブを4.5kgのN,N-ジメチルホルムアミドと混合した。混合物を80℃~85℃に加熱し、濾過して、第1の濾液を得た。濾過ケーキを0.7kgのN,N-ジメチルホルムアミドで洗浄し、この濾液を第1の濾液と混合した。混合された濾液に、85℃~90℃で、5.4kgの酢酸エチルを30分かけて添加し、混合物を0℃に冷却し、この温度で180分撹拌した。混合物を濾別し、ケーキを2kgの酢酸エチルで洗浄した。濾過された固体にフィルター上で5時間送風し、次いで、130℃で5時間乾燥して、形態IVのアキシチニブを収率86%及び純度99.99%(HPLC ES)で得た。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 式(I):
【化21】
で表される化合物又はその塩の製造方法であって、
式(III):
【化22】
[式中、Xは、I、Cl、Br又はトリフルオロメタンスルホネートであり、Pは保護基である]
で表される化合物を、2-ビニルピリジンとパラジウム触媒の存在下で反応させることを含み、前記パラジウム触媒は、好適な溶媒中にパラジウム源、配位子及び塩基を含む混合物であり、前記パラジウム触媒は別個に製造される、方法。
[2] a)パラジウム触媒を製造する工程、ここで、前記パラジウム触媒は、好適な溶媒中にパラジウム源、配位子及び塩基を含む混合物である;
b)式(III):
【化23】
[式中、Xは、I、Cl、Br又はトリフルオロメタンスルホネートであり、Pは保護基である]
で表される化合物を、2-ビニルピリジン及び溶媒と混合する工程;
c)前記工程a)で製造したパラジウム触媒を、前記工程b)で製造した混合物に添加して、式(IV);
【化24】
で表される化合物を得る工程;
d)式(IV)で表される化合物を脱保護して、式(I)で表される化合物又はその塩を得る工程
を含む、[1]に記載の方法。
[3] 前記パラジウム源が、1%~3%(式(III)で表される化合物に基づくモル%)で使用される、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記パラジウム源が、酢酸パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム又は塩化パラジウムから選択される、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 前記パラジウム源が酢酸パラジウムである、[4]に記載の方法。
[6] 前記配位子が、トリフェニルホスフィン、ホスフィノオキサゾリン又は4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテンから選択される、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7] 前記配位子が4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテンである、[6]に記載の方法。
[8] 前記塩基が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、トリメチルアミントリエチルアミン、モルホリン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン又はN,N-ジシクロヘキシルメチルアミンから選択される、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9] 前記塩基がN,N-ジシクロヘキシルメチルアミンである、[8]に記載の方法。
[10] 前記XがIである、[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11] 前記保護基が、アシル、アセチル、ホルミル、スルホニル又はカルバメートから選択される、[1]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12] 前記保護基がアセチルである、[11]に記載の方法。
[13] 式(III)で表される化合物が、式(II)
【化25】
[式中、Xは、I、Cl、Br又はトリフルオロメタンスルホネートである]
で表される化合物を保護することによって製造される、[1]又は[12]のいずれかに記載の方法。
[14] 式(II)で表される化合物が、
a)式(V)で表される化合物を式(VI)で表される化合物と、銅又はパラジウム源の存在下で反応させて、式(VII):
【化26】
[式中、HalはCl、Br又はIである]
で表される化合物を得る工程、
b)式(VII)で表される化合物をハロゲン化又はトリフレート化して、式(II)で表される化合物を得る工程
を含む方法によって製造される、[1]~[13]のいずれかに記載の方法。
[15] 前記銅又はパラジウム源が、酢酸銅(II)、CuI、CuBr、(CuOTf)
2
C
6
H
6
、CuCl、CuTC、Cu(MCN)
4
PF
6
、酢酸銅(I)、ビス(1,3-プロパンジアミン)銅(II)二塩化物、ビス(8-キノリノラト)銅(II)、ビス(2,4-ペンタンジオナト)銅(II)、シアン化銅(I)、2-チオフェンカルボン酸銅(I)、テトラフルオロホウ酸銅(II)、ジ-μ-ヒドロキソ-ビス[(N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン)銅(II)]塩化物、ジクロロ(1,10-フェナントロリン)銅(II)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(I)ベンゼン錯体、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)ヘキサフルオロリン酸塩、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)テトラフルオロホウ酸塩、酢酸パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム又は塩化パラジウムから選択される、[14]に記載の方法。
[16] 式(IIa):
【化27】
で表される化合物の精製方法であって、
a)式(IIa)で表される化合物を1-メチル-2-ピロリドンと混合する工程;
b)前記混合物を70℃~125℃に加熱して、式(IIa)で表される化合物を溶解する工程;
c)前記溶液を冷却することによって式(IIa)で表される化合物を単離する工程
を含む、方法。
[17] 前記工程b)における混合物を100℃~110℃に加熱する、[16]に記載の方法。
[18] 前記工程c)における混合物を-10℃~20℃に冷却する、[16]又は[17]に記載の方法。
[19] 式(I)で表される化合物又はその塩が10ppm未満のPdを含む、[1]~[18]のいずれかに記載の方法。
[20] 式(I)で表される化合物の精製方法であって、
a)式(I)で表される化合物を塩化水素と、溶媒又は溶媒混合物中で反応させて、式(VIII):
【化28】
で表される化合物を形成する工程;
b)貧溶媒を添加することによって固体の式(VIII)で表される化合物を単離する工程;
c)式(VIII)で表される化合物と塩基を、溶媒中で接触させて、式(I)で表される化合物を得る工程
を含む、方法。
[21] 工程a)における前記溶媒が、テトラヒドロフラン若しくは1-メチル-2-ピロリドン又はそれらの混合物を含む群から選択される、[20]に記載の方法。
[22] 前記溶媒が、テトラヒドロフラン及び1-メチル-2-ピロリドンの混合物であり、テトラヒドロフラン:1-メチル-2-ピロリドンが1:1.4~1:2.5(重量比)である、[21]に記載の方法。
[23] 前記テトラヒドロフラン:1-メチル-2-ピロリドンが1:1.6~1:2.1(重量比)である、[22]に記載の方法。
[24] 式(VIII)で表される化合物の前記固体形態、形態Jが、CuKα1線で測定した場合に、2θが、約6.1°、10.4°、12.2°、13.1°、14.3°、16.9°、18.0°、23.1°、24.7°及び27.7°(±0.2°)のピークを含むXRPDパターンによって特徴付けられる、[20]~[23]のいずれかに記載の方法。
[25] 前記塩基が、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン又は1,2-ジアミノプロパンからなる群から選択される、[20]~[24]のいずれかに記載の方法。
[26] 前記塩基が1,2-ジアミノプロパンである、[25]に記載の方法。
[27] 前記工程c)における溶媒が、プロパノール、2-プロパノール又はメタノールからなる群から選択される、[20]~[26]のいずれかに記載の方法。
[28] 前記溶媒がメタノールである、[27]に記載の方法。
[29] 前記式(I)で表される化合物を、CuKα1線で測定した場合に、2θが、約8.9°、12.0°、14.6°、15.2°、15.7°、17.8°、19.2°、20.5°、21.6°、23.2°、24.2°、24.8°、26.2°及び27.5°(±0.2°)のピークを含むXRPDパターンによって特徴付けられる式(I)で表される化合物の固体形態IVに変換することをさらに含む、[20]又は[28]のいずれかに記載の方法。
[30] CuKα1線で測定した場合に、2θが、約6.1°、10.4°、12.2°、13.1°、14.3°、16.9°、18.0°、23.1°、24.7°及び27.7°(±0.2°)のピークを含むXRPDパターンによって特徴付けられる、式(VIII)で表される化合物の固体形態、形態J。