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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】光学装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20221226BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20221226BHJP
   F21S 41/25 20180101ALI20221226BHJP
   F21V 5/08 20060101ALI20221226BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20221226BHJP
   G03B 15/02 20210101ALI20221226BHJP
   G02B 13/00 20060101ALI20221226BHJP
   F21W 102/10 20180101ALN20221226BHJP
【FI】
G02B3/00
F21S41/143
F21S41/25
F21V5/08
G03B15/00 V
G03B15/02
G02B13/00
F21W102:10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021562014
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2020059821
(87)【国際公開番号】W WO2020212191
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】1904234
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、リュック、メイルノー
(72)【発明者】
【氏名】コスタディン、ビーブ
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02770248(EP,A1)
【文献】特開2006-164923(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0126425(US,A1)
【文献】国際公開第2007/147377(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02525142(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/00
F21S 41/143
F21S 41/25
F21V 5/08
G03B 15/00
G03B 15/02
G02B 13/00
F21W 102/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の光学装置(1)であって、
- 光軸と、出射側ジオプトリックインターフェース(4)と、入射側ジオプトリックインターフェース(3)とを有する少なくとも1つのレンズ(2)と、
- 前記少なくとも1つのレンズ(2)の入射側ジオプトリックインターフェース(3)に向かって光を発するように配置された光源(5)であって、前記少なくとも1つのレンズは、その光軸上で、実質的に前記レンズ(2)の前記入射側ジオプトリックインターフェース(3)上に位置する物体焦点(F)を有する、前記光源(5)と、
を備え、
前記少なくとも1つのレンズ(2)の光軸に平行な垂直面を通る出射側ジオプトリックインターフェース(4)の断面が、楕円形または略楕円形の1つ以上の弧を有し、この弧は、光源(5)によって生成されたすべての光線が前記少なくとも1つのレンズ(2)の光軸に平行に放出されることになる基準楕円形に対して変形させたものであり、この変形は、前記光学装置がその光軸を水平にして自動車両に配置されたときに、前記光学装置(2)の前記少なくとも1つのレンズ(2)によって放出された光線の全てまたは一部が、地面の照明に適した態様で、前記光軸に平行ではない方向に同じ様に傾斜するようなものであることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのレンズ(2)の光軸に平行な垂直面を通る出射側ジオプトリックインターフェース(4)の上側部分の断面が、楕円形または実質的に楕円形の1つ以上の弧を有し、この弧は、光源(5)によって生成されたすべての光線が前記少なくとも1つのレンズ(2)の光軸に平行に放出されることになる基準楕円形に対して変形させたものであり、この変形は、前記光学装置(2)の前記少なくとも1つのレンズ(2)の前記上側部分によって放出された光線の全てまたは一部が、前記光軸の方に向けて傾斜するようなものであり、および/または
前記少なくとも1つのレンズ(2)の光軸に平行な垂直面を通る出射側ジオプトリックインターフェース(4)の下側部分の断面が、楕円形または実質的に楕円形の1つ以上の弧を有し、この弧は、光源(5)によって生成されたすべての光線が前記少なくとも1つのレンズ(2)の光軸に平行に放出されることになる基準楕円形に対して変形させたものであり、この変形は、前記光学装置(2)の前記少なくとも1つのレンズ(2)の前記下側部分によって放出された光線の全てまたは一部が、前記少なくとも1つのレンズ(2)の前記光軸から発散するように傾斜するようなものである、
ことを特徴とする、請求項1記載の光学装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのレンズ(2)の光軸に平行な垂直面を通る、前記少なくとも1つのレンズ(2)の出射側ジオプトリックインターフェース(4)の上側部分の断面が、楕円形または実質的に楕円形である1つ以上の弧を有し、当該1つ以上の弧は、全ての光線が前記少なくとも1つのレンズ(2)の光軸に平行に出射される基準楕円形の輪郭と、前記基準楕円形の輪郭の短軸の長さを30%減少させて得られる楕円形の輪郭との間で内接し、
および/または、
前記少なくとも1つのレンズ(2)の光軸に平行な垂直面を通る、少なくとも1つのレンズ(2)の出射側ジオプトリックインターフェース(4)の下側部分の断面が、楕円形または実質的に楕円形である1つ以上の複数の弧を有し、当該1つ以上の弧は、全ての光線が前記少なくとも1つのレンズ(2)の光軸に平行に出射される基準楕円形の輪郭と、前記基準楕円形の輪郭の短軸の長さを30%増加させて得られる楕円形の輪郭との間で内接している、
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の光学装置(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つのレンズ(2)の光軸に平行な垂直面を通る、前記少なくとも1つのレンズ(2)の出射側ジオプトリックインターフェース(4)の上側部分の断面が、上側楕円弧(41)および下側楕円弧(42)を有し、これらの楕円弧(41,42)は、これらの楕円弧(41,42)と前記光軸(X)との交点のところで連続した境界によって分離されており、前記2つの楕円弧(41,42)は、同じ中心(O)を持ち、前記レンズ(2)の物体焦点(F)と一致する同じ焦点を持ち、前記上側楕円弧(41)および/または前記下側楕円弧(42)は、前記光源(5)によって生成された光線(51,52)をそれぞれ前記光軸(X)に向けて、および/または前記光軸から遠ざけるように傾斜するように偏向させることができる偏心を有することを特徴とする、請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の光学装置(1)。
【請求項5】
前記上側楕円弧(41)の短軸の長さは、基準楕円弧の短軸の長さよりも5~30%小さいことを特徴とする、請求項4に記載の光学装置(1)。
【請求項6】
前記下側楕円弧(42)の短軸の長さは、基準楕円弧の短軸の長さよりも5~30%大きいことを特徴とする、請求項4または5に記載の光学装置(1)。
【請求項7】
前記出射側ジオプトリックインターフェース(4)から出力された光線は、その全てが光軸に平行な水平面に向かっており、かつ、その全てが前記光学装置(1)が搭載され得る車両が載置される地面を照らすことができることを特徴とする、請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の光学装置(1)。
【請求項8】
前記出射側ジオプトリックインターフェース(4)は、前記光軸(X)に対して垂直に配置されていることを特徴とする、請求項1から7のうちのいずれか一項に記載の光学装置(1)。
【請求項9】
前記光源(5)が、前記入射側ジオプトリックインターフェース(3)に近接して配置されており、前記光源(5)と前記入射側ジオプトリックインターフェース(3)との間の距離は、特に10mmよりも小さいことを特徴とする、請求項1から8のうちのいずれか一項に記載の光学装置(1)。
【請求項10】
前記光源(5)は、前記入射側ジオプトリックインターフェース(3)に連続していることを特徴とする、請求項1から9のうちのいずれか一項に記載の光学装置(1)。
【請求項11】
前記レンズ(2)は、前記入射側ジオプトリックインターフェース(3)と前記出射側ジオプトリックインターフェース(4)との間に、好ましくは前記光源(5)によって放出されるとともに前記レンズ(2)を伝搬する光線によって形成される放射コーンの全体を含むように配置された側方面(7)を備えていることを特徴とする、請求項1から10のうちのいずれか一項に記載の光学装置(1)。
【請求項12】
前記光軸を含む水平面を通る出射側ジオプトリックインターフェース(4)の断面が、略放物線状の形状を有することを特徴とする、請求項1から11のうちのいずれか一項に記載の光学装置(1)。
【請求項13】
車両、特に自動車両のロッカーパネルに取り付けられることを意図した照明システム(10)であって、
請求項1から12のうちのいずれか一項に記載の光学装置(1)を複数備えていることを特徴とする照明システム。
【請求項14】
自動車両、特に自律走行型または半自律走行型の自動車両であって、
自動車両の下側横部分に配置された、請求項1から12のいずれかに記載の1つまたは複数の光学装置(1)、または請求項13に記載の1つまたは複数の照明システムを備えていることを特徴とする自動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側方を照明する光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自律走行車両の開発に伴い、あらゆる照明条件下での運転支援を改善することが必要になってきており、特に以下のような様々な特殊な運転機能を管理することが求められている。
- 「レーンキープ(車線維持)」この機能は、車両が道路上の自分の車線に沿って走行することを可能とするもので、特に進路の逸脱を検知してドライバーに知らせることで実現している。
- 「レーンセンタリング(車線中央維持)」は、前記機能を補完する機能で、より正確には、車両が自律的に車線の中央を維持する機能である。
- 「レーンチェンジ(車線変更)」この機能は、追い越しなどを目的とした車線変更を可能にするものである。
- 「自律緊急ブレーキ」(または単にAEB)。
- 「自律緊急操舵」(または単にAES)この機能は 車線上に存在する障害物を回避するものである。
- 「駐車支援」、「自律的駐車」など。
【0003】
これらの様々な機能において、支援装置は入力情報を受け取る必要があるが、これには、特に、車線を区画する線などの地面のマーキングの検出や、道路上の障害物の存在に関する情報が含まれる。この検出は、あらゆる状況下、特に夜間にも行う必要がある。
【0004】
なお、既存の車両照明では、自車線では2m、隣接車線では5mの距離から車両前方の道路を照らすことができる。
【0005】
しかし、車両の脇の側方領域の照明はより困難である。なぜなら、車両から数cm~数m、そして長さ約10mにわたる、車両に隣接する長方形の領域全体を照明する必要があるためである。照明しなければならないこの領域の角度的な広がりのため、この領域全体を均一に照明することは非常に困難である。
【0006】
これらの制約により、現時点では、車両に近接する地面のマークあるいは障害物、特に側方領域にあるそれらを検出することは不可能ではないにしても困難であり、このことは自律走行車両が必要とする前述の機能を実行できる支援装置を提供することの妨げとなっている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、上記の欠点を改善し、自動車両の運転を支援するための装置および方法を改善し、特に、自律走行車両の支援に適するように前述の支援機能を実行できるようにする、自動車両の側方領域を照明する装置および方法を提供することである。
【0008】
また、本発明の目的は、照明を提供するとともに、自動車両の運転を支援するための、シンプルで信頼性が高く、かつ過度に高い余分なコストを発生させない解決策を提供することである。
【0009】
この目的のため、本発明は、車両用の光学装置に関する。前記光学装置は、光軸と、出射側ジオプトリックインターフェースと、入射側ジオプトリックインターフェースとを有する少なくとも1つのレンズを備える。前記光学装置は、さらに、前記少なくとも1つのレンズの入射側ジオプトリックインターフェースに向かって光を発するように配置された光源を備え、前記少なくとも1つのレンズは、その光軸上で、実質的に前記レンズの前記入射側ジオプトリックインターフェース上に位置する物体焦点を有する。前記少なくとも1つのレンズの光軸に平行な垂直面を通る出射側ジオプトリックインターフェースの断面が、楕円形または実質的に楕円形の1つ以上の弧を有し、この弧は、光源によって生成されたすべての光線が前記少なくとも1つのレンズの光軸に平行に放出されることになる基準楕円形に対して変形させたものであり、この変形は、前記光学装置がその光軸を水平にして自動車両に配置されたときに、前記光学装置の前記少なくとも1つのレンズによって放出された光線の全てまたは一部が、地面の照明に適した態様で、前記光軸に平行ではない方向に同じ様に傾斜するようなものである。
【0010】
一実施形態では、前記少なくとも1つのレンズの光軸に平行な垂直面を通る出射側ジオプトリックインターフェースの上側部分の断面が、楕円形または略楕円形の1つ以上の弧を有し、この弧は、光源によって生成されたすべての光線が前記少なくとも1つのレンズの光軸に平行に放出されることになる基準楕円形に対して変形させたものであり、この変形は、前記光学装置の前記少なくとも1つのレンズの前記上側部分によって放出された光線の全てまたは一部が、前記光軸の方に向けて傾斜するようなものであり、および/または、前記少なくとも1つのレンズの光軸に平行な垂直面を通る出射側ジオプトリックインターフェースの下側部分の断面が、楕円形または実質的に楕円形の1つ以上の弧を有し、この弧は、光源によって生成されたすべての光線が前記少なくとも1つのレンズの光軸に平行に放出されることになる基準楕円形に対して変形させたものであり、この変形は、前記光学装置の前記少なくとも1つのレンズの前記下側部分によって放出された光線の全てまたは一部が、前記少なくとも1つのレンズの前記光軸から発散するように傾斜するようなものである。
【0011】
一実施形態では、前記少なくとも1つのレンズの光軸に平行な垂直面を通る、前記少なくとも1つのレンズの出射側ジオプトリックインターフェースの上側部分の断面が、楕円形または実質的に楕円形である1つ以上の弧を有し、当該1つ以上の弧は、全ての光線が前記少なくとも1つのレンズの光軸に平行に出射される基準楕円形の輪郭と、前記基準楕円形の輪郭の短軸の長さを30%減少させて得られる楕円形の輪郭との間で内接し、および/または、前記少なくとも1つのレンズの光軸に平行な垂直面を通る、少なくとも1つのレンズの出射側ジオプトリックインターフェースの下側部分の断面が、楕円形または実質的に楕円形である1つ以上の複数の弧を有し、当該1つ以上の弧は、全ての光線が前記少なくとも1つのレンズの光軸に平行に出射される基準楕円形の輪郭と、前記基準楕円形の輪郭の短軸の長さを30%増加させて得られる楕円形の輪郭との間で内接している。
【0012】
前記少なくとも1つのレンズの光軸に平行な垂直面を通る、前記少なくとも1つのレンズの出射側ジオプトリックインターフェースの上側部分の断面が、上側楕円弧および下側楕円弧を有し、これらの楕円弧は、これらの楕円弧と前記光軸との交点のところで連続した境界によって分離されており、前記2つの楕円弧は、同じ中心を持ち、前記レンズの物体焦点と一致する同じ焦点を持ち、前記上側楕円弧および/または前記下側楕円弧は、前記光源によって生成された光線をそれぞれ前記光軸に向けて、および/または前記光軸から遠ざけるように傾斜するように偏向させることができる偏心を有している。
【0013】
一実施形態では、前記上側楕円弧の短軸の長さは、基準楕円弧の短軸の長さよりも5~30%小さい。
【0014】
一実施形態では、前記下側楕円弧の短軸の長さは、基準楕円弧の短軸の長さよりも5~30%大きい。
【0015】
一実施形態では、前記出射側ジオプトリックインターフェースから出力された光線は、その全てが光軸に平行な水平面に向かっており、かつ、その全てが前記光学装置(1)が搭載され得る車両が載置される地面を照らすことができる。
【0016】
一実施形態では、前記出射側ジオプトリックインターフェースは、前記光軸に対して垂直に配置されている。
【0017】
一実施形態では、前記光源が、前記入射側ジオプトリックインターフェースに近接して配置されており、前記光源と前記入射側ジオプトリックインターフェースとの間の距離は、特に10mmよりも小さい。
【0018】
一実施形態では、前記光源は、前記入射側ジオプトリックインターフェースに連続している。
【0019】
一実施形態では、前記レンズは、前記入射側ジオプトリックインターフェースと前記出射側ジオプトリックインターフェースとの間に、好ましくは前記光源によって放出されるとともに前記レンズ(2)を伝搬する光線によって形成される放射コーンの全体を含むように配置された側方面を備えている。
【0020】
一実施形態では、前記光軸を含む水平面を通る出射側ジオプトリックインターフェースの断面が、略放物線状の形状を有している。
【0021】
本発明は、車両、特に自動車両のロッカーパネルに取り付けられることを意図した照明システムであって、本発明による光学装置を複数備えている照明システムにも関する。
【0022】
また、本発明は、自動車両の下側横部分に配置された、本発明による1つ以上の光学装置または本発明による1つ以上の照明システムを備える、自動車両、特に自律型または半自律型の自動車両にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
添付の図面は、例として、本発明による光学装置の一実施形態、およびそのようなモジュールを備えた車両を示している。
【0024】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る光学機器の上面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る光学装置の側面図である。
図3図3は、基準光学装置の側面図である。
図4図4は、本発明の第1実施形態による光学装置の側面図である。
図5図5は、本発明の第2実施形態に係る光学装置の側面図である。
図6図6は、本発明の第3実施形態による光学装置の側面図である。
図7図7は、複数の光学装置(側面図)を備えた本発明による照明システムの一実施形態の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
慣例的に、以下では、水平面上に配置された車両に関する3つの方向x、y、zを用いることとする。この自動車両内には、本発明による光学装置が、当該車両の側面領域の照明を実現するために、側面の側面(脇腹)に組み込まれることが意図されている。y方向は、車両の後方から前方に向けた縦方向を表す。x方向は、左から右に向かう横方向に対応している。z方向は、垂直方向に相当する。x、y方向は水平面を定義する。これらの方向は、車両内での将来の位置を参照して、光学機器を単独で説明するために広く用いられる。
【0026】
以下、一実施形態に係る光学装置1のレンズ2の一例を、図1図2および図4図6を参照して説明する。レンズ2は、入射側ジオプトリックインターフェース3と、出射側ジオプトリックインターフェース4と、2つのジオプトリックインターフェースの間に配置された側方面7とを備えている。これらのジオプトリックインターフェースは、これらがそれを中心として実質的に対称に配置された中心点を有する。これらの2つの中心点を結ぶ軸は、レンズの光軸Xを表している。
【0027】
本実施形態に係る光学装置1は、レンズ2の入射側ジオプトリックインターフェース3に向けて光を照射することができる少なくとも1つの光源5を備えている。好ましくは、光源5とレンズ2は、光源で発生してレンズに到達する光線が直線的に伝播するように配置されており、これらの光線は、光源5とレンズ2の出射側ジオプトリックインターフェース4との間の経路で屈折を受けないようになっている。そして、出射側ジオプトリックインターフェース4は、これらの光線を外部に向けて配向する。本実施形態によれば、レンズ2、より詳細には出射側ジオプトリックインターフェース4は、上記で想起された照明の目標領域を達成することを目的として、自動車両に近接した自動車両の側方領域を照明することを可能にするように設計されている。
【0028】
さらに、前記レンズ、特に出射側ジオプトリックインターフェース4の形状は、コンパクトな光学装置の製造を可能にするように設計されている。例えば、光源5と入射側ジオプトリックインターフェース3との間の距離は、10mm以下、あるいは3mm以下であってもよい。好ましくは、光源5は、入射側ジオプトリックインターフェース3に連続している。あるいは、入射側ジオプトリックインターフェース3は、光源5を少なくとも部分的に収容する空洞を形成してもよい。
【0029】
本実施形態によれば、出射側ジオプトリックインターフェース4は、以下に詳述するように、水平面、特に光軸Xを含む水平面を通る断面において、略放物線形状(放物線のセグメント)を有している。この形状により、出射側ジオプトリックインターフェース4から出る光線の良好な左右の分布、すなわち自動車両の長手方向yにおける照明の良好な分布が可能となる。変形例として、水平面を通る断面におけるこの形状は、異なるものとすることもできる。さらに、垂直面、特にレンズ2の光軸Xを含む垂直面を通る断面では、出射側ジオプトリックインターフェース4は、楕円に近い形状(より正確には、1つ以上の楕円セグメントないし楕円弧)を有する。この形状は、より具体的には、車両に近い地面に向かって、すなわち所定の最大範囲で光線を配向させ、上述したように、自律走行車両の正しい動作の観点から有用な領域を横方向xに照射するように設計されている。
【0030】
光学レンズ2は光軸Xを有しており、この光軸Xは、横方向xと平行に配向され、前述の放物線形状の対称軸および前述の略楕円形状の長軸の両方に実質的に対応(一致)する。このレンズは、水平面上に配置された自動車両の中で、その光軸が水平面内にあるように設計されている。
【0031】
好ましくは、光軸Xは、光源5によって放出されるビームの主軸でもあり、すなわち、当該軸上で光度が最も高くなる。一実施形態によれば、より高出力の照明を生成できるように、複数の光源5を光軸Xの周りに互いに近接して配置することができることに留意されたい。説明を簡単にするために、以下においては単一の光源のみが存在すると考えることとするが、実施にあたっては、当該光源は、複数の別個の光源を組み合わせることによって形成することができる。
【0032】
より正確には、光源5は、レンズ2の焦点面内、すなわち、レンズ2の物体焦線(object focal line)上に位置しかつ光軸Xに垂直な平面内に、配置されている。さらに正確には、光源5は、レンズ2の物体焦点(object focal point)Fのところに配置されており、光軸Xと焦点面Pとの交点のところで入射側ジオプトリックインターフェース3の近傍に位置している。
【0033】
光源5は、レンズ2の入射側ジオプトリックインターフェース3に向けて光を発することができる発光面6を有する発光ダイオードを備えていてもよい。好ましくは、発光面6は、レンズ2の焦点面Pと平行に配置され、光軸Xと交差している。非常に好ましくは、発光面6は、入射側ジオプトリックインターフェース3と連続している。図示されている入射側ジオプトリックインターフェース3は、平坦であり、その全体が光源5の発光面6の前にある。
【0034】
レンズ2は、入射側ジオプトリックインターフェース3と出射側ジオプトリックインターフェース4との間に側方面7を備えていてもよく、当該側方面7は、好ましくは光源5から放出されてレンズ2を伝搬する光線によって形成される放射コーン(emission cone)の全体を含むように配置されている。好ましくは、側方面7は、光源5から放出されてレンズ2内を伝搬する光線によって形成される放射コーン(emission cone)に略平行である。また、側方面7は、レンズ2の出射側ジオプトリックインターフェース4に向けて実質的に発散する(拡がる)形状を有していてもよい。
【0035】
側方面7は、入射側ジオプトリックインターフェース3から出射側ジオプトリックインターフェース4に至るまで側方面7の長さにわたって延びる(複数の)稜線11によって連結された複数の連続するファセット8から形成されてもよい。
【0036】
図2に示すように、光軸Xを含む垂直面と出射側ジオプトリックインターフェース4の交線は、上側の楕円弧41と下側の楕円弧42の2つの楕円弧を含む。
【0037】
各楕円弧41,42は、レンズ2の物体焦点Fと一致する物体焦点(図示せず)を有している。各楕円弧41,42は、光軸X上に位置する同じ楕円中心Oを有する。
【0038】
好ましくは、出射側ジオプトリックインターフェース4は、これら2つの楕円弧41,42(のみ)からなる。この2つの楕円弧41,42は、好ましくは隣接している。好ましくは、2つの楕円弧41,42の間の境界は連続している。一実施形態では、2つの楕円弧41,42はそれぞれ光軸Xの片側に位置している。2つの楕円弧41,42の間の境界は、光軸X上の点で構成されていてもよい。
【0039】
このような光学装置には1つの特定の形態があり、これを基準光学装置100と呼ぶこととする。この基準光学装置は、図3に示されているように、基準レンズ102を備えており、この基準レンズ102の基準出射側ジオプトリックインターフェース104と光軸を含む垂直面との交面は、基準楕円弧143を描き、これに対応する楕円は、レンズの焦点Fと一致する焦点を持つ。基準楕円弧143は、その短軸OM1またはOM’1の長さによって定義することができる。ここで、Oは楕円の中心であり、基準点M1およびM’1は基準楕円143の2つの短軸の互いに反対側にある端(短軸の両端)である。3つの点O、M1、M’1は、垂直方向に並んでいる。
【0040】
基準出射側ジオプトリックインターフェース104は、楕円弧を有し、当該楕円弧の基準短軸OM1またはOM’1は、光源5で発生して基準出射側ジオプトリックインターフェース104を透過する(複数の)光線153が、互いに平行であってかつ光軸Xに平行になるように設定されている。
【0041】
この特定の長さは、レンズの焦点距離f、レンズの材料の屈折率n、長軸の半分の長さaに依存している。
【0042】
このような光軸Xに平行な(複数の)光線を得ることを可能とする楕円形の出射側ジオプトリックインターフェース弧を得ることを可能とする距離FM1は、次式で与えられる。
【数1】
【数2】
【0043】
このFM1から、楕円弧の短軸OM1の長さを以下の関係式を用いて容易に求めることができる。
【数3】
【0044】
図4図6は、本発明による光学装置用のレンズの実施形態の側面図、すなわち、光軸を含む垂直面を通る断面図である。
【0045】
図4は、本発明の第1実施形態に係る光学装置1を示している。
【0046】
この第1実施形態では、出射側ジオプトリックインターフェース4の上側の楕円弧41の偏心(eccentricity)は、出射側ジオプトリックインターフェース4から出力される光線が平行になるような楕円弧(図4の破線)の偏心に対して、すなわち、上述した図3の基準楕円に対して、減少している。
【0047】
言い換えると、本実施形態では、上側の楕円弧の短軸の距離OM2が、互いに平行な屈折光線が得られる基準距離OM1よりも小さくなっている。このように、光源5で発生するとともに出射側ジオプトリックインターフェース4の上側の楕円弧41を透過した光線51は、鉛直面内で光軸Xの方を向くように偏向されている。このようにして、光源5によって生成され、出射側ジオプトリックインターフェース4の上側の楕円弧41によって屈折された光線51は、光学装置が車両の側方領域に配置されている場合に、地面上でより迅速に収束するように偏向される。
【0048】
光軸Xとの交点のところでは、出射側ジオプトリックインターフェース4の上側の楕円弧41と下側の楕円弧42との間には、やはり連続性がある。
【0049】
上側の楕円弧41の短軸の距離OM2は、光軸Xに平行な屈折光線が得られる距離OM1よりも、すなわち基準出射側ジオプトリックインターフェース104の基準楕円143の短軸よりも、小さい。好ましくは、上側の楕円弧の短軸の距離OM2は、基準距離OM1よりも少なくとも0.2mm小さく、さらには、当該基準距離よりも0.2mmから3mmの間の距離だけ小さい。変形例として、本発明の第1実施形態による上側の楕円弧の短軸のこの長さは、基準楕円弧のこの長さに対して、少なくとも5%、あるいは、さらには少なくとも10%減少している。
【0050】
例えば、OM1の値は約13.5mm、OM2の値は約12.2mmである。
【0051】
この第1実施形態では、下側の楕円弧42は、上述した基準楕円弧143に対応している(基準楕円弧143と同じである)。
【0052】
図5は、本発明の第2実施形態に係る光学装置1を示している。
【0053】
この第2実施形態では、下側の楕円弧42の偏心(eccentricity)は、出射側ジオプトリックインターフェース4から出力される光線が光軸Xの方向に相互に平行になることを可能とする基準楕円弧の偏心に対して強調されている(図5では破線)。
【0054】
別の言い方をすると、本実施形態では、下側の楕円弧OM’2の短軸の距離を、相互に平行な屈折光線が得られる基準距離OM’1よりも大きくしている。このため、光源5で発生した出射側ジオプトリックインターフェース4の下側の楕円弧42で屈折した(複数の)光線52が、出射側ジオプトリックインターフェース4の下側の楕円弧42で屈折して、垂直面内において光軸Xから離れるように偏向させられる。垂直面内において、出射側ジオプトリックインターフェース4の下側の楕円弧42によって屈折した光線52は、このようにして、車両が載っている地面に向かって収束する。それらは、例えば、車両のすぐ近くの照明を可能にする。
【0055】
光軸Xとの交点のところで、出射側ジオプトリックインターフェース4の下側の楕円弧42と上側の楕円弧41との間には、まだ連続性がある。
【0056】
下側の楕円弧42の短軸の距離OM’2は、光軸Xに平行な屈折光線が得られる基準距離OM’1よりも大きくなっている。好ましくは、下側の楕円弧の短軸の距離OM’2は、基準距離OM’1よりも少なくとも0.3mm、あるいは、さらに0.3mmから6mmの間の長さだけ大きくなっている。変形例として、本発明の第1実施形態による下側の楕円弧の短軸のこの長さは、基準楕円弧のこの長さに対して、少なくとも5%、さらには少なくとも10%増加している。
【0057】
例えば、OM’1の値は約13.5mm、OM’2の値は約16.2mmである。
【0058】
この第2実施形態では、上側の楕円弧41は、上述した基準楕円弧143に対応している(と同じである)。
【0059】
図6は、本発明の好ましい第3実施形態による光学装置1を示している。
【0060】
この第3実施形態では、出射側ジオプトリックインターフェース4の上側の楕円弧41は、先に説明するとともに図4に示されている第1の実施形態のものと同様である。さらに、この第3の実施形態では、出射側ジオプトリックインターフェース4の下側の楕円弧42は、先に説明するとともに図5に示されている上述した第2の実施形態のものと同様である。
【0061】
レンズ2から出力された光線51,52は、すべて下向きに、つまり車両が乗っている地面に向かって偏向されている。この実施形態では、有利なことに、光軸Xが水平のまま光学装置を傾けることなく、車両に非常に近い道路の部分、例えば車両の側方領域を照らすことができる。
【0062】
別の実施形態によれば、光学装置は、複数のレンズを備えていてもよく、これら複数のレンズは互いに同一であっても異なっていてもよい。図7は、そのような実施形態を示しており、光学装置1が本発明による2つのレンズ2を備えている。
【0063】
光学装置1は、それらの光軸がすべて同じ水平面内に含まれている複数のレンズ2を含んでいてもよく、各レンズ2の焦点面Pは、光学装置10によって投影される(複数の)光線55からなるビームを強化するように、場合によっては交差してもよい。
【0064】
一実施形態では、「楕円弧」とは、略楕円状の弧の形状を持つセグメントを意味する。
【0065】
当然ながら、本発明は記載された実施形態に限定されるものではない。特に、出射側ジオプトリックインターフェース4は、横方向の垂直面、すなわち光学装置の光軸に平行な垂直面を通る断面において、別の略楕円形の弧の形状を有していてもよい。したがって、特に、出射側ジオプトリックインターフェース4のそのような断面の光軸より上側の部分は、出射側ジオプトリックインターフェース4から出力された光線を光軸に向けて偏向させるように、図3を参照して定義された基準輪郭の内側で内接する楕円弧の形状または略楕円形状を有していてもよい。逆に、追加または変形として、出射側ジオプトリックインターフェース4の同じ垂直面を通るそのような断面の下側部分は、出射側ジオプトリックインターフェース4から出力された光線を光軸から遠ざけるように偏向させるように、図3を参照して定義された基準輪郭の外側で内接する楕円弧の形状または略楕円形状を有していてもよい。「内側」および「外側」という形容詞は、レンズ2に対する相対的な意味であると理解される。最後に、出射側ジオプトリックインターフェースは、上記で定義された基準楕円と、上側部分で基準楕円の短軸の長さを30%減少させるか、あるいは下側部分で基準楕円の短軸の長さを30%増加させることを介して形成される第2の楕円との間で構成される任意の略楕円形状を有してもよい。このようにして、多数の実施形態を形成することが可能である。
【0066】
本発明はまた、上述したような複数の光学装置1を備えた、車両、特に自動車両のロッカーパネルに取り付けられることを意図した照明装置10に関する。最後に、本発明は、自動車両の下側横部分に配置された上述したような1つ以上の光学装置または照明システムを備えた自動車両、好ましくは自律型自動車両に関する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7