(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】プレガバリン含有固形医薬組成物及びその製造法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/197 20060101AFI20221226BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20221226BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221226BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20221226BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221226BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20221226BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20221226BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20221226BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20221226BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
A61K31/197
A61K47/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/14
A61K9/16
A61K47/32
A61P25/04
A61P25/08
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2022001921
(22)【出願日】2022-01-07
(62)【分割の表示】P 2018047269の分割
【原出願日】2018-02-27
【審査請求日】2022-01-11
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306020438
【氏名又は名称】日本ジェネリック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100168859
【氏名又は名称】柏 延之
(72)【発明者】
【氏名】新田 美春
(72)【発明者】
【氏名】中上 博秋
(72)【発明者】
【氏名】西島 聡
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-142834(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146642(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/124358(WO,A1)
【文献】特表2011-504491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/195
A61K 47/14
A61K 9/20
A61K 9/48
A61K 9/14
A61K 9/16
A61K 47/32
A61P 25/04
A61P 25/08
A61P 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレガバリン及びモノステアリン酸グリセリンを含有することを特徴とする固形医薬組成物(
プレガバリン、モノステアリン酸グリセリン、マンニトール、トウモロコシデンプン、ステアリン酸マグネシウムからなり、1錠質量が200.0mgでプレガバリンの含有量が75.0mgの錠剤、プレガバリン、モノステアリン酸グリセリン、スクラロース、マンニトール、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、クロスポビドン、ステアリン酸マグネシウムからなり、1錠質量が420.0mgでプレガバリンの含有量が150.0mgの口腔内崩壊錠、並びに硬化油を含むものを除く)の製造における、プレガバリンのラクタム体生成を抑制するためのモノステアリン酸グリセリンの使用。
【請求項2】
プレガバリンの含有量が1固形医薬組成物あたり10~60重量%である請求項1記載のモノステアリン酸グリセリンの使用。
【請求項3】
モノステアリン酸グリセリンの含有量が1固形医薬組成物あたり1~20重量%である請求項1~2記載のモノステアリン酸グリセリンの使用。
【請求項4】
モノステアリン酸グリセリン含有量がプレガバリン含有量に対し0.01~20重量%である請求項1~3記載のモノステアリン酸グリセリンの使用。
【請求項5】
固形医薬組成物がモノステアリン酸グリセリン以外の添加剤も含む請求項1~4記載のモノステアリン酸グリセリンの使用。
【請求項6】
モノステアリン酸グリセリン以外の添加剤がクロスポビドンである請求項5記載のモノステアリン酸グリセリンの使用。
【請求項7】
クロスポビドンの含有量が1固形医薬組成物あたり1~20重量%である請求項6記載のモノステアリン酸グリセリンの使用。
【請求項8】
固形医薬組成物の剤形が、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤のいずれかである請求項1~7記載のモノステアリン酸グリセリンの使用。
【請求項9】
固形医薬組成物の剤形が錠剤であり、当該錠剤が口腔内崩壊錠である請求項8記載のモノステアリン酸グリセリンの使用。
【請求項10】
プレガバリン含有固形医薬組成物(
プレガバリン、モノステアリン酸グリセリン、マンニトール、トウモロコシデンプン、ステアリン酸マグネシウムからなり、1錠質量が200.0mgでプレガバリンの含有量が75.0mgの錠剤、プレガバリン、モノステアリン酸グリセリン、スクラロース、マンニトール、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、クロスポビドン、ステアリン酸マグネシウムからなり、1錠質量が420.0mgでプレガバリンの含有量が150.0mgの口腔内崩壊錠、並びに硬化油を含むものを除く)において、モノステアリン酸グリセリンを含有させることによるプレガバリンの安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い安定性を示すプレガバリン含有固形医薬組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレガバリンは、電位依存性カルシウムチャンネルをブロックして神経伝達物質の放出を減らし、臨床的には主として末梢性神経障害性疼痛の治療および部分発作てんかんの補助的治療に用いられる新規のカルシウムチャンネル調節薬(非γ-ブタン酸(GABA)受容体アゴニストまたはアンタゴニスト)である。
【0003】
特許文献1には、プレガバリンを含むGABA誘導体で、製剤化及び製剤保存時にプレガバリンの分解物であるラクタム体が生成することが記載されており、そのラクタム体の生成を抑えるために、イソマルトを使用することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、保水剤としてエチレングルコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリアセチン、又はモノラウリン酸デカグリセリルを使用することによりラクタム体生成が抑制できることが記載されている。
【0005】
更に、特許文献3には、α-アミノ酸を用いることによりラクタム体生成が抑制できるが記載されている。
【0006】
しかしながら、これらのいずれの特許文献にも、モノステアリン酸グリセリンがプレガバリンからのラクタム体生成を抑制することについては、記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第8968780号公報
【文献】特許第4564607号公報
【文献】特許第4612923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、プレガバリン含有固形医薬組成物のラクタム体生成を抑制する新たな手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、驚くべきことに、モノステアリン酸グリセリンが、プレガバリン含有固形医薬組成物のラクタム体生成を著しく抑制することを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明はプレガバリン及びモノステアリン酸グリセリンを含有する固形医薬組成物を提供する。
【0011】
また、プレガバリンの含有量が1固形医薬組成物あたり10~60重量%であるプレガバリン及びモノステアリン酸グリセリンを含有する固形医薬組成物を提供する。
【0012】
また、モノステアリン酸グリセリンの含有量が1固形医薬組成物あたり1~20重量%であるプレガバリン及びモノステアリン酸グリセリンを含有する固形医薬組成物を提供する。
【0013】
また、モノステアリン酸グリセリン含有量がプレガバリン含有量に対し0.01~20重量%であるプレガバリン及びモノステアリン酸グリセリンを含有する固形医薬組成物を提供する。
【0014】
また、モノステアリン酸グリセリン以外の添加剤も含むプレガバリン及びモノステアリン酸グリセリンを含有する固形医薬組成物を提供する。
【0015】
また、クロスポピドン、プレガバリン及びモノステアリン酸グリセリンを含有する固形医薬組成物を提供する。
【0016】
また、クロスポピドンの含有量が1固形医薬組成物あたり1~20重量%であるクロスポピドン、プレガバリン及びモノステアリン酸グリセリンを含有する固形医薬組成物を提供する。
【0017】
また、プレガバリン及びモノステアリン酸グリセリンを含有する錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤を提供する。
【0018】
また、プレガバリン及びモノステアリン酸グリセリンを含有する口腔内崩壊錠を提供する。
【0019】
また、プレガバリンとモノステアリン酸グリセリンを溶融造粒する工程を含む固形医薬組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明のプレガバリン含有固形医薬組成物は、有効成分であるプレガバリンのラクタム体生成が抑制されているため、プレガバリンの安定性が良好な医薬品として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】苛酷試験(熱条件)において測定されたラクタム体の割合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明において、プレガバリン((3S)-3-(Aminomethyl)-5-methylhexanoic acid)は、以下の化学式により表される化合物である。プレガバリンは、例えば、特表平7-508288号公報に記載の方法によって製造されうる。プレガバリンの含有量は、1固形医薬組成物あたり10~60重量%が好ましく、20~50重量%がより好ましく、30~40重量%が特に好ましい。
【化1】
【0023】
本発明において、モノステアリン酸グリセリンとは、当技術分野で用いられているものであれば何でもよい。モノステアリン酸グリセリンの含有量は、1固形医薬組成物あたり1~20重量%が好ましく、2~10重量%がより好ましい。
また、モノステアリン酸グリセリン含有量がプレガバリン含有量に対し0.01~20重量%であることが好ましく、0.1~10重量%がより好ましい。
【0024】
本発明において、添加剤とは、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑択剤を言うが、特にこれらに制限されない。当該添加剤以外に、当技術分野で用いられる着色剤、抗酸化剤、増粘剤、緩衝化剤、甘味付与剤、フレーバー付与剤、又はパフューム剤などを本発明の錠剤に配合してもよい。甘味付与剤としては、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア、マルチトール、グリセリン、ラクチトール、ガラクチトールなどが挙げられる。着色剤としては、例えば二酸化チタン、酸化第二鉄などが挙げられる。
【0025】
本発明において、賦形剤として、例えばD-マンニトール、乳糖(乳糖水和物、噴霧乾燥乳糖、流動層造粒乳糖、異性化乳糖、還元乳糖等)、ショ糖、エリトリトール、ソルビトール、キシリトールなどが挙げられる。本発明においては、ラクタム体生成抑制の観点からD-マンニトールが好ましい。
【0026】
本発明において、結合剤として、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上適宜配合して用いてもよい。
【0027】
本発明において、崩壊剤として、例えばクロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシプロピルスターチナトリウム、部分アルファ化デンプン、トウモロコシデンプンなどが挙げられる。本発明においては、ラクトン体等の不純物生成抑制の観点からクロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、部分α化デンプンが好ましい。また、崩壊剤の含有量は、1固形医薬組成物あたり1~20重量%が好ましく、5~10重量%がより好ましい。
【0028】
本発明において、滑択剤として、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルクなどが挙げられる。
【0029】
本発明において、錠剤は、フィルムコーティングを施してもよく、例えば口腔内崩壊錠にフィルムコーティングを施してもよい。
【0030】
本発明の錠剤は、通常の錠剤製造方法により製造することが可能であるが、ラクトン体等の不純物生成抑制の観点から、溶融造粒法によって得られたプレガバリン顆粒に、添加剤を加え、混合後、打錠することにより製剤することが好ましい。
より具体的には、本発明のプレガバリン含有錠剤は、例えば、プレガバリンと、モノステアリン酸グリセリン等の低融点物質を混合後、通常、40~80℃程度に加温して、モノステアリン酸グリセリン等の低融点物質を融解させて、場合によっては、付着防止剤を加え、混合・造粒後、冷却、整粒して、溶融造粒物を調製し、次いで滑沢剤、崩壊剤、賦形剤等と混合後、打錠することによって、錠剤を製造できる。これらの操作の内、溶融造粒操作は、例えば、流動層造粒機、転動流動層造粒機、高速撹拌造粒機、押出造粒機等の装置を使用して行えばよい。また、打錠は、市販の打錠機を使用して行うことができる。
【0031】
次いで、コーティングをする場合には、水性フィルムコーティング調製物を用いた噴霧被覆により施してもよい。また水性フィルムコーティング調製物は、例えばポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルポリエチレングリコールグラフトコポリマー、マクロゴール、二酸化チタン、酸化第二鉄を含んでもよい。コーティングの含量は、例えば錠剤組成物の0.5~10重量%が好ましく、1~6重量%がより好ましく、2~3重量%が特に好ましい。
【0032】
以下に、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例等
に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0033】
流動層造粒乾燥機(パウレック社製;FD-MP-01)に、プレガバリン(住友化学社製)300g、モノステアリン酸グリセリン(理研ビタミン製;リケマールP-100)24g及びタルク(松村産業製;クラウンタルク)6gを投入し、給気温度100℃設定にて流動させながら加熱しモノステアリン酸グリセリンを70~80℃で溶融させ、モノステアリン酸グリセリンの融点以上に達してから約5分間流動させ造粒する。その後、モノステアリン酸グリセリンの融点以下まで冷却して造粒物を得る。得られた造粒物を流動層造粒乾燥機(パウレック社製;FD-MP-01)に投入し、D-マンニトール(三菱商事フードテック製;マンニットP)15.96g及びマルチトール(三菱商事フードテック製、アマルティー)8.04gを精製水216gに溶解した溶液を噴霧し、乾燥後、プレガバリン顆粒を得た。
得られたプレガバリン顆粒を500μmの篩で整粒した後、D-マンニトール(フロイント産業製、グラニュトールS)550.8g、クロスポビドン(BASF製;コリドンCF-L)48g及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製;植物性)7.2gと混合して打錠用末とした後、ロータリー式打錠機を用いて打錠し、質量80mg、φ6mmの錠剤を得た。
【0034】
また、比較例として、市販されているリリカOD錠25mg(プレガバリン含有口腔内崩壊錠、ファイザー株式会社、以下「比較例1」という)についても50℃7日間、14日間密栓状態で苛酷試験を実施した後類縁物質の割合を測定した。比較例1の組成は表1の通り。
【0035】
【0036】
(試験例1)
実施例1及び比較例1の錠剤を50℃7日、14日間密栓状態で苛酷試験を実施し、苛酷試験後の錠剤中のラクタム体量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて測定した。
<純度試験方法>
純度の測定として、HPLCを用いて、下記測定条件でプレガバリンのピーク面積を測定し、プレガバリンのピーク面積に対するラクタム体のピーク面積比(%)を測定した。
プレガバリン100mgに対応する量を取り、水10mLを加えて、時々振り混ぜながら超音波処理する。この液を必要に応じて遠心分離し、上済液を孔径1.0μm以下のフィルターでろ過し試料溶液とする。
HPLC測定条件
検出器:紫外吸光光度計(210nm)
カラム:液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲル充填カラム
カラム温度:35℃付近
移動相A:リン酸水素二アンモニウム5.28gを水1000mLに溶かし、リン酸を加えてpH6.5に調整する。この液800mLにメタノール200mLを加える。
移動相B:アセトニトリル/メタノール混合液(9:1)
移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比を次のように変えて濃度勾配制御する。
【表2】
【0037】
その結果、表3に示す通り、比較例1においては50℃7日間、14日間において開始時からラクタム体の著しい増加が認められたが、実施例1においてはラクタム体の生成が抑制された。
【0038】