IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マフィン・インコーポレイテッドの特許一覧 ▶ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サーヴィシーズの特許一覧

<>
  • 特許-脈管定着式導入器シース 図1
  • 特許-脈管定着式導入器シース 図2
  • 特許-脈管定着式導入器シース 図3
  • 特許-脈管定着式導入器シース 図4
  • 特許-脈管定着式導入器シース 図5
  • 特許-脈管定着式導入器シース 図6
  • 特許-脈管定着式導入器シース 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】脈管定着式導入器シース
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20221227BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20221227BHJP
【FI】
A61B17/12
A61M25/10 510
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019545881
(86)(22)【出願日】2017-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 US2017058245
(87)【国際公開番号】W WO2018081239
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-26
(31)【優先権主張番号】62/412,646
(32)【優先日】2016-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512240408
【氏名又は名称】マフィン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MUFFIN INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(73)【特許権者】
【識別番号】522335815
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サーヴィシーズ
【氏名又は名称原語表記】THE UNITED STATES OF AMERICA, as represented by the Secretary, Department of Health and Human Services
(72)【発明者】
【氏名】ジタール, ショーン デイヴィス
(72)【発明者】
【氏名】ハーディー, グレゴリー ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】サイモン, ジュニア., ジョン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ニューカーク, ジェレミー ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ハヴェル, ウィリアム ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】フィアノット, ニール イー.
(72)【発明者】
【氏名】レーダーマン, ロバート ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ロジャーズ, トビー
(72)【発明者】
【氏名】ラトニヤカ, カニシュカ
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-512212(JP,A)
【文献】特表2008-521569(JP,A)
【文献】特表2011-516139(JP,A)
【文献】特表平10-509057(JP,A)
【文献】特表2009-542338(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0243081(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0074397(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0038287(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 ― 17/94
A61M 25/00 ― 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
右心耳を通して心膜腔の中へ挿入するための導入器シースであって、
当該シースの近位端から遠位端にまで当該シースの長手軸線に沿って延びる内部ルーメンを画定している滑性な内側の層と、
前記内側の層を取り囲み前記近位端から前記遠位端にまで延びているヒートセット可能な外側の層と、
前記内側の層と前記外側の層の間に固定されているコイル芯であって、ワイヤ又はフィラメントが巻かれたコイル状のワイヤ又はフィラメントを有するコイル芯と、
を備えており、
前記シースは、近位部分、湾曲した中間部分、及び前記遠位端を含む直線状の遠位部分を有し、
前記直線状の遠位部分は、前記長手軸線の周りの周囲を有し、全周囲を周る陥凹部分を含み、前記陥凹部分は、近位縁及び遠位縁、並びに前記直線状の遠位部分の最大外径より小さい外径、を有しており、前記陥凹部分にバルーンを更に備え、前記バルーンは、前記バルーンが前記近位縁及び遠位縁も前記直線状の遠位部分の前記最大外径も越えて広がっていない萎んだ状態と、前記バルーンが前記直線状の遠位部分の前記周囲の周りに前記直線状の遠位部分の前記最大外径を越えて同軸状に広がっている膨らんだ状態と、を有し、前記膨らんだ状態にある前記バルーンは、前記長手軸線に対して60度乃至90度の角度をなす近位方向に面した面を有し、前記面は、前記シースの前記遠位端が前記心膜腔内に配置されるように、前記右心耳の組織と係合するようにされている、導入器シース。
【請求項2】
請求項1に記載のシースにおいて、前記内部ルーメンは当該シースの前記近位部分、前記中間部分、及び前記遠位部分を通って一定の内径を有している、シース。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシースであって、前記陥凹部分の前記近位縁に隣接する少なくとも1つのマーカーを更に備え、前記マーカーは放射線不透過性とエコー源性とのうちの少なくとも一方である、シース。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかの一項に記載のシースにおいて、前記直線状の遠位部分の先端は、前記内部ルーメンの長手方向開口部に隣接している少なくとも1つのマーカーを有しており、前記マーカーは放射線不透過性とエコー源性とのうちの少なくとも一方である、シース。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のシースにおいて、前記マーカーは前記バルーンの最近位部に近接している、シース。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のシースであって、前記陥凹部分内の開口部にまで延びている流体ルーメンを更に備え、それにより、流体が前記バルーンを膨らませるために押し進められ、及び前記バルーンを萎ませるために引き出されることができる、シース。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載のシースにおいて、前記内側の層はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で形成されている、シース。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載のシースにおいて、前記外側の層は、ポリエーテルブロックアミドで形成されていて、前記内側の層と前記外側の層とを互いに付着してから所望の形状にヒートセットされている、シース。
【請求項9】
導入器シースを用いて患者の心膜腔に右心耳経由で帯を導入するための装置の組み合わせであって、
湾曲した中間部分と直線状の遠位部分を有し、前記直線状の遠位部分は、全周囲を周る陥凹部分と、前記陥凹部分の中でその全体が前記直線状の遠位部分の最大外径を越えず前記陥凹部分の外に広がらないように萎んだ状態にあるバルーンと、を含む導入器シースであって、患者の下大動脈の中へ挿入し、前記患者の心臓の右心房の、前記右心耳に隣接する位置まで進め、前記陥凹部分が前記心膜腔の中になるように、前記右心耳を貫いて当該心膜腔にまで通すことが可能とされ前記バルーンは、前記シースが通り抜けている前記右心耳を貫く孔を広げないように前記心膜腔内で膨らませることができ前記バルーンは、前記心膜腔内で膨らませたときに前記バルーンを前記右心耳の前記心膜腔に面している組織と係合するようにされている、導入器シースと
三尖弁逆流症の治療として房室間溝に設置することができ、前記シースを通して前記心膜腔内へと通すことができるようにされた帯と、
を備えている、装置の組み合わせ
【請求項10】
請求項9に記載の装置の組み合わせにおいて、前記導入器シースは請求項1に記載の導入器シースである、装置の組み合わせ
【請求項11】
請求項9又は10に記載の装置の組み合わせにおいて、前記陥凹部分の近位縁に隣接する画像化可能なマーカー更に備えている、装置の組み合わせ
【請求項12】
請求項9又は10に記載の装置の組み合わせにおいて、前記シースを通って前記シースから延びることが可能とされ、前記右心耳を貫く孔を拡張させるようにされた拡張器をさらに備える装置の組み合わせ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組織に対し安全に定着させるための装置であって、当該装置を通して他の装置を所望の処置場所へと導入できるようにする装置に関する。特に、ここでの開示は、右心耳の様な組織を貫いて挿入され、当該組織に対し定着させることのできる導入器に関する。本願は、2016年10月25日出願の米国仮特許出願第62/412,646号に対する優先権を主張し、前記仮特許出願をここに参考文献としてそっくりそのまま援用する。
【背景技術】
【0002】
脈管導入器シースが組織を貫いて通されていて、偶発的な引き戻しが好ましくないという用途は数多くある。例えば、心臓の左心房にアクセスするための一般的な方法は、静脈系を経由して右心房に入り、心房中隔を穿通して左心房に至るというものである。中隔を横断した後、導入器が誤って中隔を横断して右心房の中へ引き戻されでもすれば、中隔の穿通が繰り返されなくてはならず、追加の外傷を生じさせてしまう。別の例では、心臓の内側から心膜にアクセスするやり方で、右心耳から外へ出て心膜の中へ穿通することによるものがある。誤って導入器シースを心臓の中へ引き戻しでもすれば、心膜タンポナーゼを引き起こして死を招かないともかぎらない。
【0003】
経皮的穿刺により脈管系にアクセスする場合、導入器シースが誤って血管から外へ引っ張り出されれば出血又は血腫が起こりかねない。血流を抜け出ることによって1つの血管から別の血管へ(例えば大静脈から大動脈へ)跨いでゆく場合、導入器シースが誤って血管から外へ引っ張り出されれば出血又は血腫が起こりかねない。
【0004】
現在利用可能な装置は、心臓の傷つき易い組織に特に適した定着の特徴を有していない。心臓組織又は心膜に、心臓組織又は隣接組織の穿通又は他の刺入によってアクセスするのに数多くの装置が提案されてきた。その様な装置はアクセスを可能にはするが、装置をそれが通り抜けて設置される組織に対して保持するための何がしかの構造を欠いているのが普通であり、というのもその様な定着が要求も所望もされないからである。1つの例として、薬剤又は他の流体を腔部へ流入させるアクセス装置にとってアンカーは必要ではない。導入器を設置するのに通される開口部又は組織が傷つき易い場所にある場合や孔又は組織への拡大又は損傷が回避されなくてはならない場合も同じく導入器にとってアンカーは望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上記の問題を解決する装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
中でも特に、右心耳を貫いて心膜腔の中へ挿入するための導入器シースが開示されている。シースの実施形態は、シースの近位端から遠位端にまでシースの長手軸線に沿って延びる内部ルーメンを画定している滑性な内側の層と、内側の層を取り囲み近位端から遠位端にまで延びているヒートセット可能な外側の層と、内側の層と外側の層の間に固定されているコイル芯と、を含むことができる。コイル芯は、シースの近位部分の少なくとも一部とシースの湾曲した中間部分の少なくとも一部を通って延びているが、特定の実施形態では遠位端を含むシースの直線状の遠位部分にまでは延びていなくてもよい。
【0007】
直線状の遠位部分は長手軸線の周りの周囲を有し、全周囲を周る陥凹部分を含み、陥凹部分は、近位縁及び遠位縁、並びに直線状の遠位部分の最大外径より小さい外径、を有していてもよい。陥凹部分にはバルーンがあって、バルーンは、バルーンが近位縁及び遠位縁も直線状の遠位部分の最大外径も越えて広がっていない萎んだ状態と、バルーンが直線状の遠位部分の周囲の周りに直線状の遠位部分の最大外径を越えて同軸状に広がっている膨らんだ状態と、を有する。膨らんだ状態では、バルーンは、長手軸線に対して60度乃至90度の角度をなす近位方向に面した面を有している。
【0008】
幾つかの実施形態では、内部ルーメンはシースの近位部分、中間部分、及び遠位部分を通って一定の内径を有している。シースは、更に、陥凹部分の近位縁に隣接する少なくとも1つのマーカーを含むことができ、マーカーは放射線不透過性とエコー源性とのうちの少なくとも一方とすることができる。具体的には、マーカーはバルーンの最近位部に近接していてもよい。流体ルーメンが陥凹部分内の開口部にまで延びており、それにより、流体がバルーンを膨らませるために押し進められ、及びバルーンを萎ませるために引き出されることができる。特定の実施形態は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を内側の層に使用し、及び/又はPEBAXを外側の層に使用している。外側の層は、内側の層と外側の層とを互いに付着してから、所望の形状にヒートセットされていてもよい。
【0009】
導入器シースを用いて患者の心膜腔に右心耳経由でアクセスする方法を含め、方法も開示されている。その様な方法は、導入器シースを患者の下大静脈の中へ挿入する段階であって、導入器シースは、湾曲した中間部分と直線状の遠位部分を有し、直線状の遠位部分は全周囲を周る陥凹部分と、陥凹部分の中でその全体が直線状の遠位部分の最大外径を越えず陥凹部分の外に広がらないように萎んだ状態にあるバルーンと、を含んでいる、導入器シースを下大静脈に挿入する段階を含むことができる。シースは、患者の心臓の右心房の、右心耳に隣接する位置まで進められ、陥凹部分が心膜腔の中になるように右心耳を貫いて心膜腔へ通されることができる。心膜腔の中でバルーンを膨らませることができ、膨らませる段階はシースが通り抜けている右心耳を貫く孔を広げず、膨らんだバルーンは右心耳の心膜腔に面している組織と係合することができる。
【0010】
特定の実施例では、導入器シースはここに説明されている一実施形態である。シースは、それが右心耳を貫いて延びているときに画像化され、膨らませる段階を実行する前に、陥凹部分の近位縁又はバルーン区分に隣接するマーカーが右心耳の組織の向こう側にあることが確認されるようにしてもよい。拡張器がシースの中にあってシースから延びていくようになっていてもよく、そうすると通す段階は、右心耳を貫く孔を拡張器で拡張させることができる。幾つかの実施形態では、拡張器及びシースは、右心耳を貫いて心膜腔又は空間の中へ既に通されているワイヤガイドのワイヤの上から設置されワイヤの上を進められる。拡張器は右心耳の穏やかな拡張を可能にするために約5センチメートルのテーパ長さの様な極めて漸進的なテーパを有していてもよい。拡張器は、更に、送達中はシースの中へ又はシースに対してロックされ、挿入処置中は拡張器とシースが一体となって動くようになっていてもよい。
【0011】
係合させる段階の後、バルーンが膨らまされて右心耳の組織と係合されている間に、1つ以上の装置が治療処置での使用のためにシースを通って心膜腔の中へ通されてもよい。特定の実施例では、(単数又は複数の)装置は三尖弁逆流症の治療として房室間溝に設置するための帯を含んでいることもある。バルーンは、陥凹部分の中でバルーンの全体がシースの遠位部分の最大外径を越えて又はシースの陥凹部分の外に広がっていない状態へつぶれるように萎まされることができる。また、係合させる段階と萎ませる段階の間には係合解除させる段階が行われてもよく、その場合、係合解除させる段階は、バルーンを右心耳の心膜腔に面している組織から遠ざけるためにシースを右心耳に対して動かす段階を含んでいる。
【0012】
開示されている装置及び方法は、血流又は心臓組織内での導入器カテーテルの偶発的引き戻しを防ぐ。幾つかの実施形態では、管状シースが、シャフトの外部に沿って、例えば陥凹部分の中に、取り付けられているバルーンを有している。シースは脈管系を通して導入され、体内の所望場所に設置されるサイズである。それは、更に、所望場所へ向けて医療装置を通すことのできるサイズである。1つの実施例では、導入器シースは、14フレンチの装置が通れるサイズである。近位端には、カテーテルの内径と連通するポートがある。近位端側の第2のポートがバルーンと連通していて、バルーンを膨らませたり萎ませたりするのに使用できる。第2のポートとバルーンの間の流体連通は、カテーテルの第2のルーメン(マルチルーメンカテーテルの場合)か又はシース又は内側のルーメンの周りに設置されているスリーブ(同軸システムの場合)のどちらかを介して実現させることができる。より概括的には、脈管又は心臓の壁を抜け出た後のアクセスを維持するための装置は、遠位端及び外径を有するカテーテル又はシースであって遠位端へ付着された結着型バルーンを更に含むカテーテル又はシースを含んでおり、バルーンは、アクセスカテーテルの外径の少なくとも2倍、望ましくは3倍の直径へ膨らむ。装置装入、造影剤注入、及び/又はバルーン膨張のために、近位端側のポートが、カテーテル又はシースの近位端から外への血液損失を防ぐシールを維持しながら提供されることもできる。
【0013】
例示としての方法は、下大静脈から右心房経由で右心耳へシースを通す段階を含んでいる。シースは右心耳の壁を貫いて、シースの遠位端が心膜腔内に入るように通される。遠位端の膨らまされたバルーンは、シースが心臓の中へ引き戻されるのを防ぐ。より概括的には、脈管又は心臓の壁を抜け出た後に、アクセスシース又はアクセス管へ付着されているバルーンの膨張により、バルーンが壁の外で膨らんで過早引き戻し及びその結果起こるアクセスの喪失を防ぐことでアクセスを維持するための方法が開示されている。特に、心膜アクセスを実現し、しかも過早にアクセスを失うことなく装置や道具を心膜の内部に安全に送達させられるように心膜アクセスを維持するための方法が開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ここに開示されている導入器シースの一実施形態の側方平面図である。
図2図1の実施形態のII-II線における断面図である。
図3図1の実施形態のIII-III線における断面図である。
図4】膨らまされた状態の図1の実施形態の側方平面図である。
図5】使用中の図1の実施形態の側方平面図である。
図6】使用中の図1の実施形態の側方平面図である。
図7】使用中の図1の実施形態の側方平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は多くの異なる形態に具現化され得るが、本開示の原理の理解を促すことを目的に、これより、図面に描かれている実施形態を参照することにし、実施形態を説明するのに特定の用語遣いを用いることにする。とはいえ、それにより開示の範囲の何らの限定も意図されるものではないことを理解しておきたい。開示が関係する分野の当業者には、説明される実施形態における何らかの改変又は更なる修正及びここに記載されている本開示の原理の何らかの更なる適用が普通に想起され得るものと考える。
【0016】
これより図面を全体的に参照するが、導入器シース20の一実施形態が示されており、シース20は他の装置(例えばカテーテル、診断装置、又は処置装置など)がシース20を通って身体内の所望場所へ移動することを可能にさせるように身体内での使用に適合されている。一例として、シース20は、患者の下大静脈(IVC)の様な脈管構造の中へ挿入され、心臓の様な診断又は治療のための場所へ進められ、当該場所又はその近くの組織に又は組織を貫いて定着されることができる。拡張器又は治療装置の様な別の装置がシース20を通してシース20の遠位端から外へ出され、その結果、装置はシース20が定着されている関連の組織を通り抜けて延びる。
【0017】
描かれている実施形態のシース20は、中心のルーメン24を取り囲む内層22と、外層26と、内層22と外層26の間にあり及び/又は内層22と外層26の一方又は両方に少なくとも部分的に埋め込まれているコイル芯28と、を有する多層装置である。シース20は、近位(即ちシース20の使用者又は術者により近い)部分32と、湾曲した中間部分34と、遠位(即ちシース20の使用者又は術者からより遠い)部分36と、を有している。
【0018】
或る特定の実施形態における内層22は、高滑性な物質例えばPTFE(テフロン(登録商標)として知られている)であり、シース20の設置を支援する拡張器Dが通るのを許容するとともに以下に更に論じられている様に組織の処置のための追加の道具又は構造体が通るのも許容するサイズとされたルーメン24を画定している。ルーメン24の直径は、図示の実施形態では、近位部分32、中間部分34、及び遠位部分36を通して一定であり、特定の実施例として9フレンチ、11フレンチ、又は13フレンチであってもよい。身体(例えば脈管構造)の様な環境においてであっても拡張器D又は他の装置を容易に通すためには、内層のためにPTFE又は類似の滑性材料を使用することが好ましい。
【0019】
外層26は最外面40を形成するように内層22を取り囲んでいて、或る特定の実施形態ではヒートセット可能で軟質な又は低摩擦な物質、例えばPEBAX(ポリエーテルブロックアミド)である。外層26は、円筒形又は楕円形を含む所望の形状にヒートセットさせることができ、遠位部分36に関連して以下に説明されている面に容易に形成される。特定の実施形態では、円筒形状はトルクの印加によってシース20を回転させるのをより容易にするだろうし、他の実施形態では、楕円形状は組織に対する定着をより堅固にすることができる。理解しておきたいこととして、シース20は、単一の外側形状又は構成、例えば全体を通して円筒形を有していてもよいし、又は1つより多い外側形状又は構成、例えば近位部分32及び/又は中間部分34は円筒形で遠位部分36の全体又は一部は楕円形、を有していてもよい。
【0020】
コイル芯28は、例示の実施形態では層22と層26の間にあり及び/又は層22と層26の一方又は両方に少なくとも部分的に埋め込まれている。芯28は、特定の実施形態では、生体適合性の金属又はプラスチックの様な頑丈な材料のコイル状フィラメント又はワイヤである。芯28は、シース20を長手軸線周りに回転させるためのトルクを印加でき且つ捻れに抵抗できるような頑丈さをシース20に提供する一方で、シース20が脈管構造又は体内を通る他の経路を通って動かされるようにその巻きがシース20に可撓性を維持する。芯28のフィラメント又はワイヤは、横断面が円筒状であっても又は横断面が矩形(例えば図3に示されている平ワイヤ)であってもよく、また芯28は単一の巻かれたフィラメント又はワイヤを含んでいてもよいし、又は互いの周り又は共通の長手軸線の周りに巻かれた2つ又はそれ以上のフィラメント又はワイヤを含んでいてもよい。図示の実施形態は、両方の層22と26に部分的に埋め込まれているコイル芯28を示しており、つまり芯28の巻きの一部は内層22の最大外径内にあり且つ外層26の最小内径を越えている。理解しておきたいこととして、芯28は内層22の外径の周りに巻かれ、外層26が芯28及び層22の周りに成型されるかそうで無ければ形成されて、芯28が少なくとも部分的に外層26に埋まるようにしてもよい。代わりに、芯28は内層22の外径と外層26の内径の間に保持されて、どちらの層にも埋め込まれていないようにすることもできる。
【0021】
シース20の近位部分32は、図示の実施形態では概してまっすぐであり、脈管構造を通しての操作(例えばIVCを通って心臓へ)を許容するのに十分な可撓性を有している。近位部分32は、内層22、外層26、及びコイル芯28の各部分を含んでいる。近位端44は、シース20の移動、回転、又はそれ以外の操作をそれ単独で又は別の関連装置と協働で可能にさせるハンドル又は他の装置と係合又はその様なハンドル又は他の装置にロックするハブ又はロック機構46を含んでいてもよい。或る特定の実施例として、拡張器Dがシース20の機構46に適合するハブ(図示せず)を含んでいて、拡張器Dがシース20の遠位部分36から延びる位置にあるときに、拡張器Dのハブが機構46に係合及び/又はロックするようになっていてもよい。この様にして、シース20と拡張器Dは、例えば1つのハンドル又は制御部を用いて、一方が他方よりも遠くへ又は異なる方向に進んでしまうリスク無しに一体に動かされることができる。
【0022】
中間部分34はこの実施形態では湾曲しており、その結果、長手軸線の互いに反対側に凹面50と凸面52ができている。図示の実施形態では、面50の凹状湾曲は約20-40度の弧を周って延びているが、湾曲はシース20が使用されることになる特定の使用法又は身体の区域に依存して、より大きい又はより小さい量の弧に亘って延びていてもよいものと理解しておきたい。例示としての実施形態は、以下に更に解説されている様に、心膜にアクセスするためにシースを右心耳を貫いて設置する場合に使用できる。中間部分は、一定の直径のルーメン24を有する内層22、芯コイル28、及び外層26を含んでいる。特定の実施形態では、中間部分34の湾曲は、最初から芯28と外層26の一方又は両方を湾曲付きで形成するか又は芯28と外層26の一方又は両方に湾曲を付与することによって、形成されて維持されている。このやり方では、シース20が組み立てられるとき、曲がった芯28を内層22の上から押し付けることで芯28の湾曲が層22に付与される。同様に、外層26がヒートセット可能な材料であるなら、シース20が所望の湾曲へ組み立てられた後に外層がセットされてもよく、そうすれば外層26がそれのセットした湾曲を芯28及び層22に強いる。
【0023】
遠位部分36は、湾曲した中間部分34に隣接していて、図示の実施形態では、一直線状であり、中間部分34に接続する接合部56と、ルーメン24と連通する開口部60を有する端58と、接合部56と端58の間の陥凹部分62(縁63a、63bあり)と、を有している。陥凹部分62から端58の先端(例えば開口部60)までの長さを最小化する、一例として6ミリメートル以下とする、のが望ましいことが判明した。まっすぐな遠位部分36は外層26及び内層22を含んでいるがコイル芯28を含んでおらず、したがって遠位部分36は中間部分34及び近位部分32よりも高い可撓性及び/又は柔軟性を有する。接合部56は中間部分34及び近位部分32の外径と同じ(外層26の)外径を有している。端58は、外径が、接合部56の外径と同じである陥凹部分62に隣接する外径から、ルーメン24の直径よりごくわずかに広い開口部60での外径へ向かって小さくなっている。このやり方では、開口部60は、開口部60を通過する拡張器Dの外径と同程度のリップ又は縁を有し、拡張器Dと端58の外面の間に段が殆ど又は全くできないようにしており、それにより、シース20が(拡張器Dと共に)組織を貫いて進められる際の組織への外傷のリスクが低減又は排除される。外径の減少は、外層26の厚さ、内層22の厚さ、又はそれら両者の厚さの削減の結果であってもよい。
【0024】
既に指摘されている様に、陥凹部分62が、端58と接合部56の間にあり、接合部56、中間部分34、及び近位部分32より小さい外径を有している。バルーン64が、図示の実施形態では陥凹部分62の一部又は全体の中にあって、バルーン64は膨らんでいないときは端58の最大外径(即ち、シース20の中間部分34及び近位部分32の外径と同じである接合部56の外径)にあるか又はそれより下で縁63a、63bの内側に完全に納まっている。このやり方では、バルーン64は萎んでいるときシース20の残部より大きい外形を呈さない。
【0025】
図示の実施形態のバルーン64は、陥凹部分62の外面に気密式に固定された拡大可能な材料の層である。バルーン64はシース20の全周囲を周って延びており、特定の実施形態ではシース20の長手軸線に沿って測定したときの一定した長さLを有している。流体(例えば、空気又は他の気体、生理食塩水、又は他の液体)がバルーン層64と陥凹部分62の外面の間を押し進められて、バルーン64をそしてバルーン層64と陥凹部分62の外面によって囲われた体積を拡大する。代わりに、バルーン64は陥凹部分62内に固定された環状バルーンであってもよく、そうすると、流体をバルーン64の中へ押し進めることで、バルーン64及びバルーン64によって囲われてはいるが陥凹面62には接していない体積の拡大がもたらされる。いずれにしても、又はバルーン64の他の構成の場合も、バルーン64の近位縁68はシース20のまっすぐな遠位部分36内にあり、シース20の長手軸線に対して同軸状に膨らむ。つまり、バルーン64は陥凹部分62の周囲の全周にわたって拡大する。拡大は周囲を周って全ての場所で同じ又は大凡同じ程度であるのが望ましく、例えば、バルーン64の拡大される程度は、バルーン64の最外直径の全周に亘ってシース20の長手軸線から少なくとも大凡同距離であるのが望ましい。特定の実施形態では、拡大した状態にあるバルーン64の最外縁は、シース20の外径(例えば遠位区分36の最大外径)の少なくとも2倍、望ましくは当該直径の少なくとも3倍、の直径を有している。
【0026】
特定の実施形態では、バルーン64は、膨らまされたときに、全体として近位方向(例えばシース20の中間部分34及び/又は近位部分32の方)を向いている面68を呈している。面68は、図示の実施形態では、シース20の外面の、陥凹部分62内の部分又は陥凹部分62に隣接している部分の様な、面68の少なくとも一部分に沿って、シース20の長手軸線に対し大凡90度の角度を有している。他の実施形態では、面68(又は少なくともシース20の外面に最も近い部分)の長手軸線に対する角度は、85度乃至90度、75度乃至90度、及び/又は60度乃至90度(例えばシース20の長手軸線に対して少なくとも60度の角度)である。面68は、以下に更に解説されている様に、シース20が貫いて延びている組織に係合しシース20が組織を抜けて後戻りするのを防ぐように適合されている。バルーン64が萎まされるとシース20は前記組織を通って引き込まれることができる。
【0027】
1つ以上のマーカー69が、陥凹部分62の基底に設置されていてもよい。図示の実施形態では、生体適合性金属の帯が、シース20の外層26の外側を周って陥凹部分62の近位端に近接して(例えば接触して)設置されている。その様な帯は、放射線不透過性であり、超音波を反射する。(単数又は複数の)マーカー69の他の実施形態は他の放射線不透過性及び/又はエコー源性の材料であってもよいし、又は他の型式の画像化システムを介して画像化できるものであってもよいと理解しておきたい。同じく理解しておきたいこととして、(単数又は複数の)マーカー69は、帯として形成されているのではなく、特定の点にあるか、又は画像化下において複数の方向から容易に見えるように他のフォーメーションをしていてもよい。(単数又は複数の)マーカー69の設置は、少なくとも、バルーン64が膨らまされたときに面68があるはずの大凡の場所を示すためである。拡張器Dは、画像化時にシース20とのコントラストを提供するためにシース20(又は特にマーカー69)よりも高い放射線不透過性又はエコー源性であるのが望ましい。図示の実施形態では、1つ以上のマーカー69が更に端58の先端に開口部60に隣接して設置されていて、進入時に又は後の処置終了時点での引き込み時に、先端がRAA組織を通過するときを術者に示すことができるようになっている。拡張器Dがシース20内にありシース20と共に使用されているときに(単数又は複数の)のマーカー69が容易に視認できるように、(単数又は複数の)マーカー69は拡張器Dよりも高い放射線不透過性又はエコー源性であるのが望ましい。
【0028】
膨張チャネルがシース20を通って又はシース20に沿ってバルーン64まで延びている。或る特定の実施形態では、膨張ルーメン70がルーメン24に沿っていて、陥凹部分62の開口部72のバルーン64の材料の下又は内へ延びている。ルーメン70及びルーメン24は、マルチルーメンカテーテルとしてのシース20の別々のルーメンであってもよいし、又は同軸カテーテルとしてのシース20内で同軸状であってもよい。他の実施形態では、膨張ルーメン70はシース20の外側に沿っていてもよいし、又は層22、26の一方又は両方を通っていていてもよい。ルーメン70は流体源及び/又は圧力源(図示せず)(例えばシリンジ)に接続されていて、バルーン64を膨らませるために流体(例えば空気又は生理食塩水)がバルーン64の中へ又は裏へ押し進められることができるようにする。その様な源は、所望時にバルーン64を萎ませるために流体又は圧力を引くのにも使用できる。特定の実施形態では、造影剤、薬剤、又は他の流体の通行のために、(単数又は複数の)追加のルーメン及び近位部分32及び遠位部分36の(単数又は複数の)対応する連通開口部又はポートが提供されていてもよい。例えば、膨張ルーメン70及び/又は他の流体の通行のためのその様な(単数又は複数の)ポート又は開口部は、湾曲した中間部分34が曲がってゆく方向に面するハブ46に又はその付近に、即ちハブ46の、凹面50に対応している又は凹面50と長手方向に整列している面に、配置させることができる。その様な実施形態では、更に、開口部72(及び他の流体のための他の(単数又は複数の)開口部)が、遠位部分36の、凹面50に対応している又は凹面50と長手方向に整列している面に設けられているだろう。
【0029】
これより、シース20の使用を、三尖弁逆流症(TR)の治療で帯又は他の装置を心臓の周りに設置する際に右心耳(RAA)を貫いて設置するという特定の文脈で説明してゆく。理解される様に、シース20の実施形態は、多数の内的な診断及び治療処置の何れで使用されることができるだろう。
【0030】
バルーン64が、萎まされ、したがって遠位部分36でのシース20の最大外径内にある又は最大外径と均一になっている状態で、シース20は身体の中へ挿入される。図4に描かれている実施形態では、RAAを貫く孔を作成及び/又は拡張するための拡張器Dが示されており、拡張器Dはシース20の遠位部分36の端58の先端と調和する前方面を有している。理解される様に、拡張器Dは、シース20が身体の中へ挿入されるときにシース20に対して図示の位置にあってもよいし、又はシース20が挿入された後、例えばシース20がRAAの組織を貫いて心膜腔の中へ進められる直前に、図示の位置までシース20を通されてもよい。
【0031】
シース20の挿入は、知られている通り、前もって設置されているワイヤガイドのワイヤ、例えば脈管構造、右心房、及び右心耳の組織を貫いて心膜腔又は空間へ既に設置されているワイヤの上で行われてもよい。或る特定の実施形態では、シース20は静脈脈管構造の中へ(例えば腸骨静脈又は下大静脈(IVC)の中へ)挿入される。最初からIVCの中へ挿入されていないなら、その場合、シース20はIVCまで進められIVCを通って心臓の右心房の中へ入り、そしてRAAに隣接する場所へ進められる。以前は、右心房へのアクセスは頚静脈の様な上方位置から行われてきた。しかしながら、IVCを通って右心房へという下方進入法(inferior approach)が、患者の快適性及び介護、案内の容易さ、心房及びRAAへの及びそれらを貫いての前進、及び治療装置のシース20通過の観点から多大な利点を有していることが判明した。
【0032】
図5に見られる様にシース20(及びこの実施形態では拡張器D)がRAAに隣接したら、拡張器D及びシース20の孔Hを通り心膜腔PC(図6図7)へ入る方向決めが起こる。孔Hは、例えばシース20を沿わせて進ませるワイヤの様なガイドワイヤ又は他の道具によって前もって作られていてもよいし、又は拡張器D又は道具をシース20に沿って通すことによって作られてもよい。シース20が拡張器Dと共に、拡張器Dが孔Hの箇所のRAA組織に係合するように進められ、孔Hを拡張するように組織を貫いて進められる。孔Hの周りの組織が拡張器Dの外側に係合し、シース20の遠位部分36の周りに滑るように乗り上げ、その結果、心膜腔からRAA内への流体の漏れは殆ど或いは全く起こらない。理解される様に、拡張器Dをシース20から(例えばシース20を静止させたまま)延ばしてRAA組織を貫かせ、そのうえでシース20を拡張器Dの上から前進させて孔Hを通過させることもできるだろう。シース20が(単数又は複数の)マーカー69を含んでいる実施形態では、シース20が貫いて延びるRAAに対して(単数又は複数の)マーカー69がどこにあるかを見るために、シース20は(例えば、X線、超音波、又は他の画像化システムによって)画像化されることができる。(単数又は複数の)マーカー69がRAA組織を過ぎた又はRAA組織に遮られていない(即ち、心膜腔に入っている、又はRAA組織の心膜側に至った)と分かると、術者はシース20を前進させることを止める。
【0033】
シース20が一杯まで前進させられると、即ちバルーン64及び/又は陥凹部分62が((単数又は複数の)マーカー69によって指示され得る様に)RAA組織の心膜側より向こうになると、術者はバルーン64を膨らませる。孔HがRAAへの損傷及び他の合併症の可能性を伴って広げられることのないようにするため、膨張はバルーン64が孔Hを完全に通り抜けてしまう前に起こってはならない。以上に指摘されている様に、バルーン64はシース20の全周囲にわたって同軸状に膨らむ。膨らまされたとき、バルーン64の面68は孔H及びRAA組織の心膜側に面している。バルーン64の膨張がそのまま面68をRAAの孔Hの周りの組織に係合させることになることもあるし、又は面68がRAA組織にしっかり係合する点まで術者がシース20を後退させる必要があることもあろう。この点にて、バルーン64はシース20の更なる後退に抗うアンカーとして機能する。シース20の、望ましくは遠位部分36の、陥凹部分62に隣接及び近接している外面40は孔Hを貫き孔Hの側面に係合していて、バルーンの面68はRAAの心膜側に係合している。
【0034】
遠位部分36の一直線状の性質は、その様な方法では曲がっている又はカールしているカテーテルや他の装置の端部に勝って好都合であることが注目される。直線状の遠位部分36は同軸状に拡大するバルーン64に均一な表面を提供する。それは、更に、RAAを貫く孔Hとのより良好でより面一な適合を提供してシース20とRAA組織の間の漏れを最小限に抑え又は排除し、また組織を貫いてのより容易な設置を提供するはずである。また、曲がっているカテーテルがRAA組織を通過するために歪められる場合、元の曲がった形へ復帰しようとする傾向が生まれ、その応力が後退の可能性の一因となる。当該応力は、シース20の一直線状区分36がRAA組織を通過する場合は排除される。
【0035】
シース20がバルーン64によって、孔Hを通る後退に抗うよう定着されたら、拡張器Dがシース20を通って引き込まれてもよい。他の道具又は治療構造体がシース20のルーメン24を通って心膜腔の中へ通されてもよい。TRの治療の例では、帯(図示せず)がシース20を通され、帯は房室(AV)間溝に係合するように心臓の周りに操作される。所望に応じ、追加の構造体がベルトを締めてベルトを所定位置に保持するようにしてもよい。
【0036】
治療が完了し、心膜腔及び心臓組織から抜去されるべき何がしかの道具又は他の構造体がシース20を通って引き抜かれたら、シース20自体が取り出される。バルーン64がシース20の陥凹部分62の中へ戻るように、望ましくはシース20の近位部分32の隣接する外径内に入る又は当該外径と均一になるように、バルーン64が萎まされる。バルーン64を萎ませてもRAA組織に悪影響を及ぼさないことを確約するために、所望されるか又は必要であれば、術者は最初にシース20を前方へ動かしてバルーンの表面68をRAAの組織から係合解除する。バルーン64が萎まされたら、シース20は、孔Hのそれ以上の拡大も周りの組織への損傷も無しに、孔Hを通って引き戻されることができる。孔Hのための適切な閉鎖又は他の処置が、シース20又は別の構造を介して適用されてもよい。シース20は、孔Hを通り抜けたら、進入経路に沿って身体から引き抜かれる。
【0037】
開示を図面に例示しこれまでの記述の中で説明してきたが、それらは説明が目的であり本質的に制限を課すものではないと考えられるべきであり、選ばれた実施形態が示され説明されているだけであり、ここに定義される又は付随の特許請求の範囲によって定義される開示の趣旨の内に入る全ての等価物、変更、及び修正は保護されことが望まれるものと理解している。1つ以上の特定の構造又は実施形態に関して具体的に説明されている特徴は、ここに開示されている他の構造又は特徴へ組み入れられるか又はそれら他の構造又は特徴と共に別途使用されることもできるものと理解しておきたい。
【0038】
次の番号の付された条項は、本発明の理解に有用であり得る特定の実施形態を提示している。
【0039】
1.右心耳を通して心膜腔の中へ挿入するための導入器シースであって、
当該シースの近位端から遠位端にまで当該シースの長手軸線に沿って延びる内部ルーメンを画定している滑性な内側の層と、
内側の層を取り囲み近位端から遠位端にまで延びているヒートセット可能な外側の層と、
内側の層と外側の層の間に固定されているコイル芯であって、当該シースの近位部分の少なくとも一部と当該シースの湾曲した中間部分の少なくとも一部を通って延びているが、遠位端を含む当該シースの直線状の遠位部分にまでは延びていないコイル芯と、
を備えており、
直線状の遠位部分は、長手軸線の周りの周囲を有し、全周囲を周る陥凹部分を含み、陥凹部分は、近位縁及び遠位縁、並びに直線状の遠位部分の最大外径より小さい外径、を有しており、陥凹部分にバルーンを更に備え、バルーンは、バルーンが近位縁及び遠位縁も直線状の遠位部分の最大外径も越えて広がっていない萎んだ状態と、バルーンが直線状の遠位部分の周囲の周りに直線状の遠位部分の最大外径を越えて同軸状に広がっている膨らんだ状態と、を有し、膨らんだ状態にあるバルーンは、長手軸線に対して60度乃至90度の角度をなす近位方向に面した面を有している、
導入器シース。
【0040】
2.条項1のシースにおいて、内部ルーメンは当該シースの近位部分、中間部分、及び遠位部分を通って一定の内径を有している、シース。
【0041】
3.条項1から条項2の何れか一項のシースであって、陥凹部分の近位縁に隣接する少なくとも1つのマーカーを更に備え、マーカーは放射線不透過性とエコー源性とのうちの少なくとも一方である、シース。。
【0042】
4.条項1から条項3の何れかの一項のシースにおいて、直線状の遠位部分の先端は、内部ルーメンの長手方向開口部に隣接している少なくとも1つのマーカーを有しており、マーカーは放射線不透過性とエコー源性とのうちの少なくとも一方である、シース。
【0043】
5.条項3から条項4の何れか一項のシースにおいて、マーカーはバルーンの最近位部に近接している、シース。
【0044】
6.条項1から条項5の何れか一項のシースであって、陥凹部分内の開口部にまで延びている流体ルーメンを更に備え、それにより、流体がバルーンを膨らませるために押し進められ、及びバルーンを萎ませるために引き出されることができる、シース。
【0045】
7.条項1から条項6の何れか一項のシースにおいて、内側の層はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で形成されている、シース。
【0046】
8.条項1から条項7の何れか一項のシースにおいて、外側の層は、PEBAXで形成されていて、内側の層と外側の層とを互いに付着してから所望の形状にヒートセットされている、シース。
【0047】
9.
導入器シースを用いて患者の心膜腔に右心耳経由でアクセスする方法であって、
導入器シースを患者の下大静脈の中へ挿入する段階であって、導入器シースは、湾曲した中間部分と直線状の遠位部分を有し、直線状の遠位部分は、全周囲を周る陥凹部分と、陥凹部分の中でその全体が直線状の遠位部分の最大外径を越えず陥凹部分の外に広がらないように萎んだ状態にあるバルーンと、を含んでいる、導入器シースを下大静脈に挿入する段階と、
導入器シースを、患者の心臓の右心房の、右心耳に隣接する位置まで進める段階と、
シースを、陥凹部分が心膜腔の中になるように、右心耳を貫いて当該心膜腔にまで通す段階と、
心膜腔内でバルーンを膨らませる段階であって、シースが通り抜けている右心耳を貫く孔を広げない、バルーンを膨らませる段階と、
バルーンを右心耳の心膜腔に面している組織と係合させる段階と、
を備えている、方法。
【0048】
10.条項9の方法において、導入器シースは条項1の導入器シースである、方法。
【0049】
11.条項9から条項10の何れか一項の方法であって、シースが右心耳を貫いて延びているときにシースを画像化する段階と、膨らませる段階を実行する前に陥凹部分の近位縁に隣接するマーカーが右心耳の組織を超えていることを確認する段階と、を更に備えている方法。
【0050】
12.条項9から条項11の何れか一項の方法において、拡張器がシースの中にあってシースから延びており、通す段階が、右心耳を貫く孔を拡張器で拡張させる段階を含んでいる、方法。
【0051】
13.条項9から条項12の何れか一項の方法であって、係合させる段階の後、バルーンが膨らまされて右心耳の組織と係合されている間に、1つ以上の装置を治療処置での使用のためにシースを通して心膜腔の中にまで通す段階、を更に備えている方法。
【0052】
14.条項13の方法において、1つ以上の装置は、三尖弁逆流症の治療として房室間溝に設置するための帯を含んでいる、方法。
【0053】
15.条項9から条項14の何れか一項の方法であって、バルーンが陥凹部分の中で、バルーンの全体が直線状の遠位部分の最大外径を越えず陥凹部分の外に広がらないような状態へつぶれるように、バルーンを萎ませる段階、を更に備えている方法。
【0054】
16.条項15の方法であって、係合させる段階と萎ませる段階の間の係合解除させる段階を更に備え、係合解除させる段階は、バルーンを右心耳の心膜腔に面している組織から遠ざけるためにシースを右心耳に対して動かす段階を含んでいる、方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7