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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】液中プラズマ発生装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/24 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
H05H1/24
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019032596
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020136242
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】519067552
【氏名又は名称】小林テック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】309019408
【氏名又は名称】株式会社 ケーエンジニアリング
(73)【特許権者】
【識別番号】591108178
【氏名又は名称】秋田県
(73)【特許権者】
【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100155882
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100154678
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 博子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晃喜
(72)【発明者】
【氏名】金野 正史
(72)【発明者】
【氏名】丹 健二
(72)【発明者】
【氏名】大川 浩一
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-167880(JP,A)
【文献】特開2013-258159(JP,A)
【文献】特開2018-58047(JP,A)
【文献】特開2006-127925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、前記装置本体内に位置し液体を保持可能な容器と、前記容器内に保持されX軸方向に対向離間する一対の電極と、前記電極を覆うとともに前記電極に対して前記X軸方向に相対移動可能な絶縁部材と、前記電極及び前記絶縁部材を前記X軸方向に移動させる第1移動手段と、前記絶縁部材を前記X軸方向に移動させる第2移動手段と、を備えることを特徴とする液中プラズマ発生装置。
【請求項2】
前記電極の上方に位置し前記液体の流動の一部を阻害するカバー部材と、
前記カバー部材を前記X軸方向に直交するZ軸方向に移動させる第3移動手段と、をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の液中プラズマ発生装置。
【請求項3】
前記電極の一部は、前記絶縁部材の先端から突出することを特徴とする請求項1記載の液中プラズマ発生装置。
【請求項4】
前記装置本体は、筐体部と蓋部とを備え、
前記第1移動手段及び前記第2移動手段は、前記蓋部に設けられることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の液中プラズマ発生装置。
【請求項5】
前記装置本体は、筐体部と蓋部とを備え、
前記第3移動手段は、前記蓋部に設けられることを特徴とする請求項2記載の液中プラズマ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液中プラズマ発生装置に関し、より詳細には一対の電極における離間寸法を調整可能である液中プラズマ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の電極間でプラズマを発生させる液中プラズマ装置は知られている。例えば特許文献1によれば、液中プラズマ発生装置は液体を入れる容器と、容器の液体中に配置された液中プラズマ用電極と、これに対向するように配置された対向電極と、液中プラズマ用電極及び対向電極に接続された高周波電源と、アクチュエータとを備える。液中プラズマ用電極及び対向電極は、導電線とその外周を覆う管状の絶縁部材とを備える。絶縁部材の内周面と導電線の外周面との間には、導電線が絶縁部材に対して摺動可能な間隔が設けられる。アクチュエータを用いることによって、液中プラズマ用電極の導電線を対向電極に向かって摺動させ、対向電極の導電線を液中プラズマ用電極に向かって摺動させることができる。
【0003】
導電線の材料として金属製のものを用いることができ、導電線はプラズマの発生によって溶解する性質を有する。導電線が溶解することによって液中プラズマ用電極と対向電極との導電線の離間寸法が大きくなるが、絶縁部材に対して導電線を摺動可能としたことにより、導電線を互いに近づけるように移動させることができ、良好なプラズマ発生を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-167880
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来の液中プラズマ発生装置では、容器に対して相対的に移動できるのは電極の導電線だけであり、絶縁部材は移動することができない。例えば、絶縁部材と電極との位置関係がプラズマの発生に影響を及ぼす場合、絶縁部材と電極との両者を移動させて最適な位置を確立しなければならない。また、電極の特性や容器に保持される液体の特性によって、絶縁部材と電極との位置関係が変わってくる場合もある。従来のプラズマ発生装置では、これらの場合において、効率的にプラズマを発生させることができないという問題があった。
【0006】
この発明は、電極を軸方向に移動可能なだけでなく、絶縁部材も移動可能な液中プラズマ発生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、装置本体と、前記装置本体内に位置し液体を保持可能な容器と、前記容器内に保持されX軸方向に対向離間する一対の電極と、前記電極を覆うとともに前記電極に対して前記X軸方向に相対移動可能な絶縁部材と、前記電極及び前記絶縁部材を前記X軸方向に移動させる第1移動手段と、前記絶縁部材を前記X軸方向に移動させる第2移動手段と、を備えることを特徴とする。
したがって、第1移動手段によって対向する電極をX軸方向に移動可能であるとともに、第2移動手段によって絶縁部材と電極とを相対移動させることもでき、電極の特性や液体の特性に応じたプラズマを発生させることができる。
【0008】
前記電極の上方に位置し前記液体の流動の一部を阻害するカバー部材と、前記カバー部材を前記X軸方向に直交するZ軸方向に移動させる第3移動手段と、をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
カバー部材を設けることによって、拡散するジュール熱を保持することができ、より効率的にプラズマを発生させることができる。さらに、第3移動手段によってカバー部材を移動可能であるので、さらにプラズマ発生の効率を向上させることができる。
【0010】
前記電極の一部は、前記絶縁部材の先端から突出することを特徴とする。
電極を絶縁部材から突出させることによって、露出した電極間においてプラズマを発生させることができ、さらに露出量を調整することによってプラズマの発生量を調整することができる。
【0011】
前記装置本体は、筐体部と蓋部とを備え、前記第1移動手段及び前記第2移動手段は、前記蓋部に設けられることを特徴とする。
第1移動手段及び第2移動手段を蓋部に設けることによって、装置本体の外部から電極及び絶縁部材の移動操作を行うことができる。
【0012】
前記装置本体は、筐体部と蓋部とを備え、前記第3移動手段は、前記蓋部に設けられることを特徴とする。
第3移動手段を蓋部に設けることによって、装置本体の外部から絶縁部材の移動操作を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る液中プラズマ発生装置によれば、電極及び絶縁部材を移動可能な第1移動手段と、絶縁部材のみを移動可能な第2移動手段とを備えるので、電極及び絶縁部材のいずれも調節可能となり、使用される電極や液体の特性に応じた所望のプラズマを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】液中プラズマ発生装置の正面図。
図2図1のII-II線断面図。
図3図2の部分拡大図。
図4】カバー部材の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~4を参照し、この発明の液中プラズマ発生装置の一実施形態を説明する。
【0016】
<液中プラズマ発生装置1>
特に図1及び図2を参照すれば、液中プラズマ発生装置1は、装置本体2と、装置本体2内に位置し液体を保持可能な容器3と、容器3内に保持されX軸方向11に対向離間する一対の電極4と、電極4の周囲を覆う絶縁部材5と、を備える。電極4及び絶縁部材5は第1移動手段6によってX軸方向に移動可能であるとともに、第2移動手段7によって絶縁部材5のみもX軸方向に移動可能である。
【0017】
<装置本体2>
装置本体2は、その内部に容器3を保持可能な筐体部21と、筐体部21の上部に位置する蓋部22とを備える。蓋部22には、第1移動手段6及び第2移動手段7が固定される。
【0018】
<電極4>
特に図3を参照すれば、電極4は一方の電極41と他方の電極42とを備える。一方の電極41及び他方の電極42は、図面の横方向、すなわち電極4の軸方向に一致するX軸方向11に延びるとともに、それらの先端は離間対向する。一方の電極41及び他方の電極42として、導電性を有する導電線を用いることができ、例えば金属材料又は炭素材料等を用いることができる。一方の電極41及び他方の電極42には、図示しない高周波電源が接続され、これら電極41,42に電力が供給されることによって電極41及び電極42間でプラズマを発生させることができる。
【0019】
<絶縁部材5>
電極4の外周は絶縁部材5で覆われる。すなわち、一方の電極41及び他方の電極42の周囲を一方の絶縁部材51及び他方の絶縁部材52で覆う。一方の電極41と一方の絶縁部材51との間、他方の電極42と他方の絶縁部材52との間には、互いが摺動可能な程度な空隙が保持される。一方の絶縁部材51と他方の絶縁部材52とは、X軸方向11にそれぞれ延びるとともに、それぞれの先端51A及び先端52Aが互いに対向する。一方の絶縁部材51の先端51Aからは一方の電極41の一部が突出し、他方の絶縁部材52の先端52Aからは他方の電極42の一部が突出する。一方の絶縁部材51及び他方の絶縁部材52としては、高い絶縁性を有するとともに、プラズマ発生に伴う発熱も耐えうる耐熱性を有する材料を用いることが望ましく、例えばセラミックス材料を用いることができる。
【0020】
<第1移動手段6>
第1移動手段6は、一方の電極41側及び他方の電極42側のそれぞれに設けられる。第1移動手段6は、一方の電極41及び他方の電極42をそれぞれ挟持するとともにX軸方向11に交差するZ軸方向12に延びる電極挟持部61と、一方の絶縁部材51及び他方の絶縁部材52に支持部材65を介してそれぞれ接合される絶縁部材挟持部62とを備える。支持部材65は一方の絶縁部材51及び他方の絶縁部材52の周囲に固定される。絶縁部材挟持部62はZ軸方向12に延びる中空の筒状であり、その中空部分に電極挟持部61が挿入される。特に図2を参照すれば、電極挟持部61及び絶縁部材挟持部62は、第1固定部材63にそれぞれ固定され、第1固定部材63は第1マイクロメータ64によってX軸方向11に移動可能とされている。第1固定部材63の一部及び第1マイクロメータ64は、蓋部22の外側に配置、固定される。第1マイクロメータ64のダイヤルを操作すると、第1固定部材63がX軸方向11の左右いずれかに移動する。第1固定部材63が移動すると、これに固定された電極挟持部61及び絶縁部材挟持部62も移動し、これらに挟持された電極4及び絶縁部材5も一緒にX軸方向11に移動する。このようにして第1移動手段6によって電極4及び絶縁部材5を同時にX軸方向11に移動させることができる。
【0021】
<第2移動手段7>
第2移動手段7は、一方の絶縁部材51及び他方の絶縁部材52のそれぞれに固定される第2固定部材71と、第2固定部材71をX軸方向11に移動可能な第2マイクロメータ72とを備える。第2固定部材71の一部及び第2マイクロメータ72は蓋部22の外側に配置、固定される。第2マイクロメータ72のダイヤルを操作すると、第2固定部材71がX軸方向11の左右いずれかに移動する。第2固定部材71が移動すると、これに固定された一方の絶縁部材51又は他方の絶縁部材52も移動する。なお、第2固定部材71には電極4は固定されていない。したがって、第2移動手段7によって絶縁部材5だけをX軸方向11に移動させることができる。
【0022】
<カバー部材8>
一方の電極41と他方の電極42とのZ軸方向12上方には、流体の移動の一部を阻害するカバー部材8を備える。特に図4を参照すれば、カバー部材8は一方の電極41及び他方の電極42に向かって開口する凹部81を備える。より詳細には、凹部81は一方の電極41と他方の電極42との間であって、その上方に位置する。一方の電極41と他方の電極42との間ではジュール熱が発生し液体を気化させることによりプラズマが発生するが、その際プラズマ発生による温度上昇と気泡発生により、電極41及び電極42間には上昇気流が発生しジュール熱が拡散してしまう。カバー部材8が配置されることによってこの上昇気流の少なくとも一部が阻害され、発生したジュール熱が電極41と電極42との間に留まりやすくなる。ジュール熱を電極付近に保持することによって連続した安定的なプラズマの発生が可能となる。カバー部材8は、耐熱性を有することが望ましく、例えば石英ガラスやセラミックスなどを用いることができる。
【0023】
<第3移動手段9>
カバー部材8は、第3移動手段9によってZ軸方向12に移動可能とされる。第3移動手段9は、カバー部材8に固定された第3固定部材91と、第3固定部材91をZ軸方向12に移動可能な第3マイクロメータ92とを備える。第3固定部材91の一部及び第3マイクロメータ92は、蓋部22の外側に配置、固定される。第3マイクロメータ92のダイヤルを操作すると、第3固定部材91がZ軸方向12の上下いずれかに移動する。第3固定部材91が移動すると、これに固定されたカバー部材8も移動する。したがって、第3移動手段9によってカバー部材8をZ軸方向12に移動させることができる。
【0024】
上記のような構成において、一方の電極41と他方の電極42との間の液体に通電することにより、液体の持つ抵抗に応じてジュール熱が発生する。ジュール熱により液体が気化され提出プラズマを発生させることができる。液体の持つ抵抗がプラズマ発生に影響を及ぼすところ、液体の伝導率を変更することでプラズマ発生に最適なジュール熱となるように調整することができる。この実施形態では、第2移動手段7を用いることによって、絶縁部材5から露出する電極の量を可変とすることができ、これによりジュール熱の調整をすることができる。すなわち電極の露出する表面積を変えることにより、ジュール熱を調整することができるから、液体の伝導率を変えることなく、ジュール熱の調整ができるとともに、伝導率を変えることができない液体も用いることができる。
【0025】
伝導率の低い液体の場合は、液体へ通電される電流が少なくなるため、ジュール熱の発生も小さくなり、液中プラズマの発生が困難となる。このような場合に電極の露出する表面積を増やすことにより、液体の電気的通電経路を並列に増やすことができ、発生ジュール熱が増え、プラズマを発生させることができる。また、電極の離間寸法、露出する表面積を変えることによって発生するプラズマ玉のサイズ調整も期待できる。
【0026】
第1移動手段6、第2移動手段7、及び第3移動手段9としてマイクロメータをそれぞれ用いているが、このようにマイクロメータを用いることによって、微細な調整が可能となり、プラズマ発生に最適な条件を見つけることができる。このような液中プラズマ発生装置は、種々の条件でのプラズマ発生を試行錯誤することができるから、実験装置としての用途に好適である。ただし、実験装置としての用途に限定するものではなく、広くプラズマ発生装置として用いることができる。
【0027】
第1移動手段6、第2移動手段7、及び第3移動手段9は、蓋部22に取り付けられるとともに、第1マイクロメータ64,第2マイクロメータ72,及び第3マイクロメータ92はそれぞれ蓋部22の外側に配置される。したがって、装置本体2の外部から電極4、絶縁部材5及びカバー部8の移動操作をすることができ、操作者の操作性を向上させることができるとともに安全を確保することができる。
【0028】
この実施形態において第1移動手段6、第2移動手段7及び第3移動手段9は、手動で操作することとしているが、制御装置を用いた電子制御をすることもできる。また、第1移動手段6、第2移動手段7及び第3移動手段9としては、この分野において通常用いられる種々の部材を組み合わせて使用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 液中プラズマ発生装置
2 装置本体
3 容器
4 電極
5 絶縁部材
6 第1移動手段
7 第2移動手段
8 カバー部材
9 第3移動手段
11 X軸方向
12 Z軸方向
21 筐体部
22 蓋部
図1
図2
図3
図4