IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッドの特許一覧

特許7200452多重露光ワイドダイナミックレンジ画像データに対する画像データ処理
<>
  • 特許-多重露光ワイドダイナミックレンジ画像データに対する画像データ処理 図1
  • 特許-多重露光ワイドダイナミックレンジ画像データに対する画像データ処理 図2
  • 特許-多重露光ワイドダイナミックレンジ画像データに対する画像データ処理 図3
  • 特許-多重露光ワイドダイナミックレンジ画像データに対する画像データ処理 図4
  • 特許-多重露光ワイドダイナミックレンジ画像データに対する画像データ処理 図5
  • 特許-多重露光ワイドダイナミックレンジ画像データに対する画像データ処理 図6
  • 特許-多重露光ワイドダイナミックレンジ画像データに対する画像データ処理 図7
  • 特許-多重露光ワイドダイナミックレンジ画像データに対する画像データ処理 図8
  • 特許-多重露光ワイドダイナミックレンジ画像データに対する画像データ処理 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】多重露光ワイドダイナミックレンジ画像データに対する画像データ処理
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/741 20230101AFI20221227BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20221227BHJP
   H04N 23/76 20230101ALI20221227BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
H04N5/235 500
H04N5/232 290
H04N5/243
G06T5/00 740
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018560910
(86)(22)【出願日】2017-05-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 US2017033387
(87)【国際公開番号】W WO2017201319
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-05-09
(31)【優先権主張番号】15/157,568
(32)【優先日】2016-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【弁護士】
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】シャシャンク ダブラル
(72)【発明者】
【氏名】ラジャセカール レディ アル
【審査官】吉川 康男
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0152694(US,A1)
【文献】特開2003-018457(JP,A)
【文献】特開2014-060502(JP,A)
【文献】特表2014-519218(JP,A)
【文献】特開2015-204488(JP,A)
【文献】特開2001-245130(JP,A)
【文献】特開2000-307963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/235
H04N 5/232
H04N 5/243
G06T 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路(IC)であって、
メモリ回路と、
画像センサからの画像の多重露光に対応する入力露光データを受け取るためのインタフェース回路であって、前記画像の第1の露光に関連する第1の入力露光データを前記メモリ回路の第1のメモリ部に格納し、前記画像の第2の露光に関連する第2の入力露光データを前記メモリ回路の第2のメモリ部に格納するように動作可能であり、前記画像の第1の露光が第1の露光時間を有し、前記画像の第2の露光が前記第1の露光時間と異なる第2の露光時間を有する、前記インタフェース回路と、
前記画像の多重露光に対応する露光データを処理するための処理回路であって、
単一の前処理回路であって、
前記画像の第1の露光に関連する第1の前処理された露光データを生成するために前記第1のメモリ部からの前記第1の入力露光データに対して初期画像処理を実施し、
前記第1の前処理された露光データを前記メモリ回路の第3のメモリ部に格納し、
前記画像の第2の露光に関連する第2の前処理された露光データを生成するために前記第2のメモリ部からの前記第2の入力露光データに対して初期画像処理を実施する、
ように動作可能である、前記単一の前処理回路と、
前記画像を表す統合された画像データを生成するために前記第1及び第2の前処理された露光データを処理するための統合回路であって、
前記画像の第1の露光に関連する第1の利得調整された露光データと前記画像の第2の露光に関連する第2の利得調整された露光データとを生成するために、前記第1及び第2の前処理された露光データの少なくとも1つに対して利得を適用するための利得回路と、
前記画像の第1の露光に関連する第1のシフトされた露光データと前記画像の第2の露光に関連する第2のシフトされた露光データとを生成するために、前記第1の利得調整された露光データと前記第2の利得調整された露光データとをシフトするためのシフト回路と、
前記第1及び第2のシフトされた露光データに基づいて、前記第1の利得調整された露光データの統合処理のための第1の重み値を計算し、前記第2の利得調整された露光データの統合処理のための第2の重み値を計算するための重み付け回路と、
前記第1及び第2の重み値に従って前記統合された画像データを生成するために、前記第1及び第2の利得調整された露光データを統合するための最終統合回路と、
を含み、前記利得回路と前記重み付け回路との1つが構成可能である、前記統合回路と、
を含む、前記処理回路と、
を含む、IC。
【請求項2】
請求項1に記載のICであって、
前記処理回路が、
前記統合回路からの前記統合された画像データに対してトーンマッピング処理を実施するためのトーンマッピング回路と、
最終画像データを生成するために前記統合された画像データに対して更なる画像処理を実施し、前記最終画像データを前記メモリ回路の第4のメモリ部に格納するための後処理回路と、
を更に含む、IC。
【請求項3】
請求項1に記載のICであって、
前記単一の前処理回路が、前記第1の入力露光データと前記第2の入力露光データとに対して、ノイズフィルタリング処理と偏向画素補正とDCクランプ除去とレンズシェーディング補正とホワイトバランス補正との1つを実施するように更に動作可能である、IC。
【請求項4】
請求項に記載のICであって、
前記利得回路が、前記第1及び第2の利得調整された露光データを生成するために、構成可能な第1のホワイトバランス利得を前記第1の前処理された露光データに適用するための回路と、構成可能な第2のホワイトバランス利得を前記第2の前処理された露光データに適用するための回路とを含む、IC。
【請求項5】
請求項に記載のICであって、
前記利得回路が、前記第1及び第2の利得調整された露光データを生成するために、構成可能な第1のブラックレベルオフセットを前記第1の前処理された露光データに適用するための回路と、構成可能な第2のブラックレベルオフセットを前記第2の前処理された露光データに適用するための回路とを含む、IC。
【請求項6】
請求項に記載のICであって、
前記利得回路が、前記第1及び第2の利得調整された露光データを生成するために、構成可能な第1の利得値を前記第1の前処理された露光データに適用するための回路と、及び構成可能な利得値を前記第2の前処理された露光データに適用するための回路とを含む、IC。
【請求項7】
請求項に記載のICであって、
前記重み付け回路が、
前記第1及び第2のシフトされた露光データの選択された1つと構成可能な第1の閾値とに基づいて初期重み値を計算するための重み計算回路であって、
前記画像における現在の画素位置に対する前記第1及び第2のシフトされた露光データの前記選択された1つの値が前記構成可能な第1の閾値より大きいときに、前記初期重み値を第1の所定の値として計算し、
前記現在の画素位置に対する前記第1及び第2のシフトされた露光データの前記選択された1つの前記値が前記構成可能な第1の閾値に等しいか又はそれ未満であるときに、1つ又は複数の構成可能なパラメータと前記現在の画素位置に対する前記第1及び第2のシフトされた露光データの前記選択された1つの値とに従って前記初期重み値を計算する、
ように動作可能である、前記重み計算回路と、
前記画像における前記現在の画素位置に対する前記第1及び第2のシフトされた露光データの値の間の差の絶対値として差の値を計算するための動き適応フィルタ回路であって、
前記差の値が構成可能な第2の閾値より小さいときに、動き適応重み値を前記第1の所定の値として計算し、
前記差の値が前記第2の閾値より大きいか又は前記第2の閾値に等しいときに、前記差の値に従って前記動き適応重み値を計算する、
ように動作可能である、前記動き適応フィルタ回路と、
を含み、
前記重み付け回路が、前記第1の重み値を生成するために前記初期重み値に前記動き適応重み値を乗算し、前記第1の所定の値から前記第1の重み値を減算することによって前記第2の重み値を計算するように動作し得る、IC。
【請求項8】
請求項に記載のICであって、
前記1つ又は複数の構成可能なパラメータが、フリッカーとモーションとを制御するように構成可能である、IC。
【請求項9】
請求項に記載のICであって、
前記単一の前処理回路が、前記第1の入力露光データと前記第2の入力露光データとに対して、ノイズフィルタリング処理と偏向画素補正とDCクランプ除去とレンズシェーディング補正とホワイトバランス補正との1つを実施するように更に動作可能である、IC。
【請求項10】
請求項1に記載のICであって、
前記第1の入力露光データと前記第2の入力露光データとの各々が第1の色深度を有し、前記統合された画像データが前記第1の色深度よりも大きい第2の色深度を有する、IC。
【請求項11】
請求項10に記載のICであって、
前記第1の前処理された露光データと前記第2の前処理された露光データとの各々が前記第1の色深度を有する、IC。
【請求項12】
請求項1に記載のICであって、
前記単一の前処理回路が、前記第1の入力露光データに対して初期画像処理を実施することの後であって前記第1の前処理された露光データを前記第3のメモリ部分に格納することの後に前記第2の入力露光データに初期画像処理を実施するように更に動作可能である、IC。
【請求項13】
請求項1に記載のICであって、
前記単一の前処理回路が、前記第2の入力露光データに初期画像処理を実施するために前記第1の入力露光データに初期画像処理を実施する回路要素を再利用する、IC。
【請求項14】
画像センサからの画像の多重露光に対応する入力露光データを処理する方法であって、
単一の前処理回路を用いて、前記画像の第1の露光に関連する第1の前処理された露光データを生成するために前記画像の第1の露光に関連する第1の入力露光データに対して初期画像処理を実施することと、
前記第1の前処理された露光データをメモリ回路に格納することと、
前記単一の前処理回路を用いて、前記画像の第2の露光に関連する第2の前処理された露光データを生成するために前記画像の第2の露光に関連する第2の入力露光データに対して初期画像処理を実施することと、
前記画像を表す統合された画像データを生成するために前記第1及び第2の前処理された露光データを統合することであって、
前記画像の第1の露光に関連する第1の利得調整された露光データと前記画像の第2の露光に関連する第2の利得調整された露光データとを生成するために、前記第1及び第2の前処理された露光データの少なくとも1つに対して利得を適用することと、
前記画像の第1の露光に関連する第1のシフトされた露光データと前記画像の第2の露光に関連する第2のシフトされた露光データとを生成するために、前記第1の利得調整された露光データと前記第2の利得調整された露光データとをシフトすることと、
前記第1及び第2のシフトされた露光データに基づいて前記第1の利得調整された露光データの統合処理のための第1の重み値と前記第2の利得調整された露光データの統合処理のための第2の重み値とを計算することと、
前記第1及び第2の重み値に従って前記統合された画像データを生成するために、前記第1及び第2の利得調整された露光データを統合することと、
を含む、前記統合することと、
前記統合された画像データに対してトーンマッピングを実施することと、
最終画像データを生成するために前記統合された画像データに対して更なる画像処理を実施することと、
前記最終画像データを前記メモリ回路に格納することと、
を含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
前記第1の入力露光データと前記第2の入力露光データとの各々が第1の色深度を有し、前記統合された画像データが前記第1の色深度よりも大きい第2の色深度を有する、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、
前記統合された画像データに対してトーンマッピングを実施することが、前記第1の色深度と前記第2の色深度との間の第3の色深度を有するトーンマップされた画像データを生成する、方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法であって、
前記第2の入力露光データに対して初期画像処理を実施することが、前記第1の前処理された露光データを前記メモリ回路に格納することの後に始められる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、全般的に、画像処理に関し、特に、ワイドダイナミックレンジ(WDR)センサからの画像データを処理するための回路に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ及び画像センサは、監視、モーション制御、及びその他の用途に広く用いられている。例えば、オートモーティブ応用例には、後退中にドライバをアシストするためのリアビューカメラが含まれ、車載カメラが、障害物の回避や、ブレーキング、ステアリング、加速等の制御のために、システムを制御するために入力を提供し得る。デジタルカメラセンサはダイナミックレンジが限られ、それは自然環境(及びその他の観察領域)のダイナミックレンジ及び人間の目のダイナミックレンジに比べて典型的に非常に小さい。例えば、屋内の部屋は、明かりがついていないが、太陽が昇ったり沈んだりする光景が見える窓を有することがある。これは、極端に暗いエリアと極端に明るいエリアを観察カメラに提示する。人間の視覚システムはそのようなダイナミックレンジを捉えることができるが、多くのデジタルカメラは、センサ及び画像処理ハードウェアにおける限られたダイナミックレンジに起因して、それができない。従って、高ダイナミックレンジを有するシーンのデジタル画像は、通常、白飛びしたハイライト及び真っ暗になるシャドウ領域を有する傾向がある。処理された画像における低ダイナミックレンジは、全体のダイナミックレンジを維持することが重要であるオートモーティブ及び監視カメラシステムにおいて問題となる。ワイドダイナミックレンジ(WDR)センサは、潜在的な解決策を提示し、自然なシーンのフルダイナミックレンジを保つためのオートモーティブ及び監視用途に対して人気が出てきている。しかしながら、既存の画像処理(画像パイプ)回路及びアーキテクチャは、WDRセンサ信号処理に良好に適合していない。また、フルワイドダイナミックレンジ画像処理パイプは、コストが高く、実装するのに複雑である。例えば、多重露光に対する露光データは、マージ処理の前に前処理されなければならず、従って、WDRセンサからの多重露光データは、一層大きく、一層複雑な処理回路要素を必要とする。また、WDRセンサは、後処理において補正することが難しいモーションアーチファクトを起こし得る。また、一時的に分離された複数のフレームをマージすることは、画素ノイズ及びモーションアーチファクトに起因して画像品質の低下を引き起こし得る。また、捕捉されるシーンにおけるLEDライトまたは他のパルス性の光源の存在は、WDRセンサを用いて得られた画像の複数の露光間に不一致を引き起こし得る。例えば、パルス性の光源は、第1の露光時間の間にオフ状態であり得、その後、第2の露光時間の間にオンになり得る。そのような場合において、WDRセンサは、同じ画像に対して第1及び第2の露光データを提供し、その際、1つ又は複数の画素位置が、第1の露光データと第2の露光データとの間で不一致を有し得る。従って、WDRセンサは、ワイドダイナミックレンジイメージングに対する完全な解決策を提供するために、画像処理に対する新たなチャレンジを提供する。
【発明の概要】
【0003】
説明される例は、画像信号処理回路要素と、集積回路と、マージ回路と、ワイドダイナミックレンジセンサからの第1及び第2の露光データ等の多重露光画像データを処理するための方法とを含む。単一の前処理回路が、画像の第1の露光に関連する第1の入力露光データに対して前処理を実施するために、及びその後、画像の第2の露光に関連する第2の入力露光データに対して前処理を実施するために用いられる。前処理されたデータはその後、トーンマッピング及び他の後処理の前に、2つの露光に対してマージされる。例示のマージ回路要素は、マージの前に第1及び第2の画像データの一方又は両方のデータに利得係数を適用するための構成可能利得回路を含む。或る例において、マージ回路はマージ処理のための第1及び第2の露光データに対する重み値を計算するための構成可能重み計算回路を更に含む。幾つかの例において、マージ回路は、第1及び第2の画像データに適用された利得係数をスケーリングするためのモーションアダプティブ重み付け値を計算するためのモーションアダプティブフィルタ回路を更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】画像センサプロセッサ(ISP)集積回路(IC)のシステム図である。
【0005】
図2】画像処理方法のフローチャートである。
【0006】
図3】フレームデータフローチャートである。
【0007】
図4図1のICにおけるマージ処理のシステムレベル図である。
【0008】
図5図1及び図4におけるマージ回路の更なる詳細を示すシステムレベル図である。
【0009】
図6図5のマージ回路における利得調整回路の詳細な概略図である。
【0010】
図7】入ってくる画素値の関数としての重み付け値、及び構成可能パラメータ(V)の異なる値のグラフである。
【0011】
図8】ロング画素値とショート画素値との間の差の関数としてのモーションアダプティブ重み付け値のグラフである。
【0012】
図9図5のマージ回路における重み付け回路の詳細な回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図において、一貫して、類似の要素には類似の参照番号が付され、種々の特徴は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。説明される例は、効率的な回路、IC、及びWDR及び他の画像データ源からの多重露光画像データを前処理しマージするための方法を提供する。説明される例において、例えば、第1の露光データを得るために、画像センサを第1の(例えば、長い)露光時間設定において用い、その後、第2の露光データを得るために、センサを第2の一層短い露光時間設定において用いる等によって、所与の画像に対する第1及び第2の露光データが得られる。データの各セットは、画像シーンの暗いエリアの捕捉を促進する一層長い露光時間データ、及び画像シーンの明るく照らされた部分の詳細を捕捉するために一層短い露光時間データを用いて、得られた画像の所与の画素位置に対する個々の画素データを含む。説明される回路及び方法は、そのような二重露光画像データに対する前処理及びマージ処理を促進する。また、説明される技法は、車載カメラ、監視カメラ、ロボット、及びその他のモーション制御用途等に対する画像データの処理等、種々の異なるイメージング用途に適用可能である。
【0014】
図1は、有線又はワイヤレス接続され得るデータ接続又はリンク103を介して、WDRセンサ102から信号データを受信する画像センサプロセッサIC 100を含むイメージングシステムを示す。図2は、IC 100において実装され得る入力露光データを処理するプロセス又は方法204を示す。一例において、IC 100は、プリント回路基板(PCB、図示されない)に搭載され、導電PCBトレースを介してボード搭載コネクタに電気的に接続される1つ又は複数のピン又は端子を含み、WDRセンサ102は、ケーブル(図示されない)を介してコネクタと結合される。集積回路100は、後述する種々のブロック又は回路を含み、それらは、専用ロジック回路、プログラマブルロジック回路、及び/又はデジタルプロセッサ回路要素によって実装される機能であり得る。一例において、センサ102は、画像露光データを捕捉するためにレンズ構造104を介して対応するセンサフィールド106内の光を検知及び検出する、デジタルオーバーラップ(DOL)WDRセンサである。
【0015】
IC 100は、センサ102からの画像の多重露光に対応する画素データを受信するための通信回路105と、ソーティング回路107とを備える画素データインタフェース回路108を含む。インタフェース回路108は、IC 100におけるメモリ回路110に動作可能に接続される。一例において、画素データインタフェース108の通信回路105は、センサ102からの画素データを受け取るためカメラシリアルインタフェース(CSI)通信プロトコルをサポートするモバイル業界プロセッサインタフェース(MIPI)回路である。例えば、通信回路105は、MIPI CSI-2又はCSI-3通信をサポートする。一例において、相互接続103は、センサ102と画素データインタフェース回路108との間の整数N個のデータライン接続を提供するために、複数のICピン及び対応する回路基板トレース及びセンサ102への接続を含む。相互接続103は、クロック信号のための1つ又は複数の接続を更に含み得る。センサ102は、センサフィールド106に対応する画像の多重露光に関連する画素データの複数のセットを提供する。例えば、センサ102は、第1の露光時間、この場合は2つ又はそれ以上の露光のうち最も長い露光時間、における検知された画像の第1の露光に対応する第1の露光データと、一層短い第2の露光時間を用いて得られる第2の露光に対応する第2の露光データとを提供する。他の例において、この技法は、露光データの2つ以上のセットを含む多重露光画像データにまで拡張され得、露光データの各セットは、通常、一意の露光時間に対応する。これによって、単一のセンサ102を用いるフルダイナミックレンジの利用が可能になる。
【0016】
IC 100は更に、メモリ回路110と動作可能に接続され、画像の多重露光に対応する露光データを処理するように1つ又は複数の構成パラメータ140に従って構成される処理回路112を含む。処理回路112は、入力露光データに対して初期処理又は前処理動作を実施するように動作する、単一の前処理回路120を含む。前処理回路120は、通常、(マージの前に)線形ドメインにおいて働く画像フィルタリング動作を提供する。従って、これらの動作は、個々に、各個別の露光に対して実施される。図示された例において、前処理回路120は、ノイズフィルタリング回路121、偏向画素補正回路122、DCクランプ除去回路123、レンズシェーディング補正回路124、及びホワイトバランス補正回路125を含む。ノイズフィルタリング回路121及び偏向画素補正回路122は、マージ処理の後に実施されるトーンマッピングロジック134の品質を向上させるために用いられ得る。また、DCクランプ除去回路123は、回路125においてホワイトバランス補正の前のデータに対して動作することが好ましく、また、トーンマッピングの前が好ましい。このように、これらの動作は、有利なことに、マージ処理の前の前処理回路120の一部として実施される。また、レンズシェーディング補正回路124は、有利なことに、すべての非線形動作に先立ち、マージ処理の前の個別の露光データに対して動作するように用いられる。
【0017】
他の例において、これより少ないか又はこれより多い前処理回路及び機能が、前処理回路120において実装され得る。図1の例において、単一の前処理回路120は、第1の入力露光データ(図1において「ロング」と示される)及び第2の入力露光データ(「ショート」と示される)に対して、回路121~125を用いて図示された動作を順次実施する。これは、所与の画像に対する露光データの各セットに対して個別の専用前処理回路要素を含んでいた従来のWDRセンサ回路とは対照的である。
【0018】
図1における処理回路112は、画像を表すマージされた画像データを生成するために、第1及び第2の前処理された露光データを処理するためマージ回路130を更に含み、マージされたデータはトーンマッピング回路134に提供される。画像に対してトーンマッピングされたデータは、その後、後処理回路136によって後処理され、ホストシステム142によるアクセスのためにメモリ回路110にストアされる。この例において、ホストシステム142は、更に後述するように、IC 100に1つ又は複数の構成可能な又は構成パラメータ140をストアすることによってIC 100を構成し得る。
【0019】
IC 100の動作は、図2の方法200に概略的に図示されている。概して、インタフェース回路108は、センサ102から入力露光データを受け取り、そのデータをメモリ回路110に提供する。図1の例において、メモリ回路110は、デュアルデータレート(DDR)メモリ回路又は複数のDDRメモリ回路である。メモリ回路110は、第1の部分又は位置110a(図1においてDDR-1と示される)、第2の部分又は位置110b(DDR-2と示される)、第3の部分又は位置110c(DDR-3)、及びダ第4の部分又は位置110d(DDR-4)を含む。所与の画像の2つ以上の露光を処理するための他の例において、メモリ回路110は、更なる位置又は部分(図示されない)を含み得る。図示される例の動作において、インタフェース回路108は、画像の第1の露光に関連する第1の入力露光データLONGを第1のメモリ部又は位置110a(図2における202)にストアする。図2における204において、インタフェース回路108は、画像の第2の露光に関連する第2の入力露光データSHORTを第2のメモリ部又は位置110bにストアする。
【0020】
図2における206において、単一の前処理回路120は、画像の第1の露光に関連する第1の前処理された露光データ(後述の図4における401)を生成するために、第1のメモリ部110aからの第1の露光データLONGに対して前処理動作を実施し、図1における回路120は、図2における208において、第1の前処理された露光データを第3のメモリ部110cにストアする。処理回路112は、有利なことに、第2のメモリ部110bから第2の入力露光データSHORTを取得し、同じ単一の前処理回路120を再度用いて、画像の第2の露光に関連する第2の前処理された露光データを生成する(図4における402)ために、図2における210において第2の入力露光データSHORTに対して初期画像処理を実施する。図1におけるマージ回路130は、画像を表すマージされた画像データを生成する(図4における404)ために、212において、第1及び第2の前処理された露光データ401及び402を処理する。図2における214において、処理回路112は、マージ回路130からのマージされた画像データ404に対してトーンマッピング処理を実施するために、トーンマッピング回路134を用いる。一例において、トーンマッピング回路134は、画像の低光量及び高光量を保ちながら、マージされる画像のビット深度を20ビットから一層少ないビット(16又は12ビット)に低減する(例えば、圧縮する)ために、グローバル及び後続のローカルトーンマッピング動作を実施する。この処理は、画像品質を保ちながらビット深度を低減する。
【0021】
後処理回路136は、最終画像データを生成するために、マージされた画像データ404に対して、更なる画像処理214を実施する。一例において、後処理回路136は、マージされた画像データに対して動作するための画像フィルタリング回路要素を含み、関連する後処理動作は、露光の数に関係なく、一度のみ適用される。例えば、マージ及びトーンマップ処理の後の画素データは通常非線形であるので、回路136によって成される後処理動作は、線形ドメインで実施される必要はない。216において、処理回路112は、最終画像データを第4のメモリ部110dにストアする。メモリ部110dは、その後、図2における218において、最終画像データをホストシステム142に提供する。
【0022】
図1に示されるように、IC 100は、単一の前処理回路112のみを含み、第1の入力露光データLONGは、前処理され、第1の前処理パス131に沿ったマージ回路130への最終的な提供のために第3のメモリ部110cに一時的にストアされる。第2の入力露光データSHORTは、前処理回路120を直接介して前処理され、第2の前処理パス132に沿ってマージ回路130に提供される。この解決策は、有利なことに、IC面積及びコストの削減と引き換えに性能をトレードオフするために、マージ処理の前にマルチパス前処理アプローチを用いる。或る実装において、IC 100は、例えば、画像データ前処理のためのマルチパス動作を考慮したユースケース等、任意の所望のスループット要求が満たされるようなクロック速度で動作し得る。一例において、回路112は、相当なマージンを備えて30fpsで2Mpix解像度をサポートする(2Mpix@30fpsはオートモーティブデバイスに対する通常の最大要求要件である)ために、200MHzのクロック周波数で動作可能である。IC 100は、このように、マージ回路130、並びに、画像処理及びその他の動作を実施する後処理回路134、136を備えて、WDRセンサ102及び他の多重露光画像データソースのダイナミックレンジの利点を活用して、フルダイナミックレンジの最終出力画像データを提供する。このアプローチは、不利な照明条件においてさえも、正しく露光された画像を生成することを期待されるセキュリティ及びオートモーティブイメージングシステムのような応用例に対するインテリジェントな解決策を提供するために、効率的な画像処理回路スペース及びコストを用いて、一層高いダイナミックレンジを捕捉することを可能にする。そのような不利な照明条件の例としては、太陽が水平線の低い位置にあるときや、カメラに正対しているときの朝/夕時間帯に動作する監視カメラ、車両が暗いパーキングロット又はトンネルから日の当たっている道路に出てくるときのオートモーティブカメラ、室内及び室外の両方のシーンが適切に露光されなければならない太陽が当たる窓を備える暗い部屋等の室内シーン等が含まれる。これらの極端な照明条件下では、図1のシステムは、過露光又は白飛び領域が低減又は除去され、しかも画像の照明が暗い部分の良好な詳細も示す最終画像データをホストシステム142に提供する。
【0023】
図3は、IC 100におけるマルチパス前処理を用いるフレームデータフローを図示し、マージ回路130におけるマージ処理の前の初期処理のためPASS 0、PASS 1、及びPASS 2を含む。図3に示されるように、一例において、センサ102は、インタフェース108に12ビット入力露光データを提供する。インタフェース108は、LONGの第1の入力露光データを第1のメモリ位置110aにストアし(図2における202)、12ビットの第2の入力露光データSHORTを第2のメモリ位置110bにストアする。PASS 1において、第1の入力露光データLONGは、処理回路112により、第1のメモリ位置110aの「Read DMA」ダイレクトメモリアクセス300を用いて読み出され、そのデータは、第1の前処理された露光データを生成するために回路120において前処理され、第1の前処理された露光データは、その後、第3のメモリ位置110cにストアされる。PASS 2において、Read DMA動作302を用いて、第2のメモリ位置110bから第2の入力露光データSHORTが得られ、第2の入力露光データは、PASS 2において同じ前処理回路120を用いて前処理される。前処理された露光データはその後、マージ回路130を用いてマージされる。一例において、マージ処理の後のデータは24ビットであり、それはその後16ビットにグローバルトーンマッピングされ、その後、12ビットへのローカルトーンマッピングが続き、圧縮されマージされた画像データは、1つ又は複数の後処理ステップ(例えば、図1における回路136)のために残りの画像パイプラインを介して処理される。
【0024】
図4を参照すると、従来の露光マージ技法には、入ってくる画像データにおけるモーション及び/又は高レベルのノイズのいずれかに起因して発生し得るアーチファクトの問題がある。説明される例は、アーチファクトを軽減又は除去し、一層良好な画像品質を提供するために、マージ処理に対して、洗練された、ノイズ堅牢性の、モーションアダプティブアルゴリズムを実装するためにマージ回路要素を用いている。或る例において、マージ処理回路130は、複数セットの露光データのインテリジェントで構成可能なマージを提供する。図4は、図1のICにおけるマージ処理のシステムレベル図を示す。第1の前処理された露光データ401は、上述したように、第3のメモリ位置110cからマージ回路130によって受け取られる。一例において、1つに対する第1の前処理された露光データは、対応する画像の第1の露光に関連する8~12ビットの画素データであり、マージ回路130は、メモリインタフェース(IF)動作(例えば、一例においてDMAアクセス)を介してデータ401を得る。第2の前処理された露光データ402(例えば、8~12ビット)は、前処理回路120(図1)によってマージ回路130に提供される。マージ回路130は、マージされた画像データ404(例えば、説明される或る例において、12~20ビット)を生成及び提供するために、下記に更に詳しく説明されるように1つ又は複数の構成パラメータ140を用いて、上記に概して記載したように動作する。一例において、回路130は、高ビット幅(例えば、最大24ビット)のマージされたフレームを生成するために、2つの露光に対してデータ401、402をマージする。一例において、図1のトーンマッピング回路134は、範囲を24ビットから16ビットに低減するためにグローバルトーンマッピング動作を実装し、ダイナミックレンジを16ビットから12ビットに低減するためにローカルトーンマップが適用され得、しかも画像のハイライト及びシャドウ領域における詳細を保持する。
【0025】
図5図9を参照すると、マージ回路130は、一例において、マージ処理にわたってアダプティブ構成可能制御を提供する。処理には、概して、種々の原因による画像品質低下の問題がある。例えば、前処理されたロング及びショート露光データをマージする間の画像品質低下に対して、2つの潜在的な理由が存在する。これらはノイズに起因する劣化、及びモーションに起因する劣化である。ノイズ劣化に関して、マージ処理は、閾値ベースの動作であり、入ってくる前処理された露光画素データにおけるノイズに対して敏感である。例えば、マージロジックが第1の前処理された露光データ401に基づく場合、そのデータにおけるノイズが、従来のマージロジックに正しくない露光を選択させ得、また、ノイズに起因する露光間の頻繁なスイッチングの結果、最終のマージされた画像データにおいて重大なアーチファクトとなる。
【0026】
モーション劣化に関して、ほとんどのWDRセンサ102は、単一のセンサが用いられて、初期的に露光データの1つのセットを生成し、その後、異なる露光時間設定において露光データの2番目のセットを生成するので、ロング露光とショート露光との間に時間的なラグを含む。例えば、ロング露光の時間設定は通常大きく(例えば、33ms又はそれ以上)、ショート露光が捕捉される前に、オブジェクトに対する画像に、或いはカメラセンサ102の基準フレーム(例えば、車両搭載カメラ応用例の場合)に著しいモーション遅延が生じ得る。例えば、フレーム内で高速で移動するオブジェクトは、そのフレーム内で移動した可能性があり、その結果モーションブラーとなる。この問題は、特に、自動車(及びカメラ)が高速で移動し、静止しているオブジェクトであってもその車に対して相対的に移動している場合のオートモーティブ応用例において存在する。
【0027】
第3の課題は、捕捉されたシーンにおけるLEDライト又は他のフリッカーのある光源の存在等の、フリッカーのある光源である。LEDライトは、通常、オン-オフ周期及びデューティーサイクルを備えるオン-オフ様式で動作する(即ち、それらは常時発光している光ではなく、周期的にオンオフを切り替える)。この周期のデューティーサイクルは、画像の強度を調整するために用いられる。大抵のLED光源のフリッカーの影響は、人間の目には認識可能ではないが、デジタル画像においては、後続のフレームが、LEDのアクティブデューティーサイクルの捕捉とミスを交互に行い得、LEDフリッカーとして知られる現象を引き起こし得る。LEDフリッカーの問題は、WDRセンサを用いるときにときに更に悪化する。その場合、1つの露光がLEDをオン状態において捕捉し得(例えば、ロング露光)、一方、他の露光(例えば、同じフレームに対するショート露光時間設定の露光データ)がLEDをミスし得る。これらの2つの別々の露光がマージされるとき、結果の出力はアーチファクトを示し得る。
【0028】
図1図5図6、及び図9における例示のマージ回路130は、上述の問題を解決するために用いられ得る。例えば、回路130は、ノイズ及びモーションアーチファクト、及びLEDフリッカーに対して強靭な、インテリジェントなマージアプローチを提供する。マージ処理は、概して、ワイドダイナミックレンジシーンを生成するために2つ又はそれ以上の露光を組み合わせることを含む。一例において、2つ(例えば、ロング露光時間設定及びショート露光時間設定)の12ビット露光が組み合わされて、単一の20ビット(又は16ビット)フレームを生成し、その結果、所与の画像に対して2つの元のセットの露光データのいずれに比較してもビット深度が高い、一体化された又はマージされた露光となる。図5に示されるように、マージ回路130は、第1及び第2のシフト回路502、504、重み付け回路506、及び最終マージ回路508とともに、利得回路500(図5において、「GAIN ADJUST」と示される)を含む。動作において、利得回路500は、第1及び第2の前処理された露光データ401及び/又は402の一方又は両方に利得を適用して、画像の第1の露光に関連する第1の利得調整された露光データLONG ADJ、及び画像の第2の露光に関連する第2の利得調整された露光データSHORT ADJを生成する。図示された例において、利得調整されたデータLONG ADJ及びSHORT ADJは20ビット長であるが、他のビット深度も可能である。利得回路500は、或る例において、1つ又は複数の構成パラメータ140に従って動作する。例示の利得回路500を図6に関連して下記に更に詳細に説明する。
【0029】
シフト回路502及び504は、3ビットWEIGHT SHIFT構成パラメータ140jに従って、第1及び第2の利得調整された露光データLONG ADJ及びSHORT ADJをシフトして、16ビットの第1及び第2のシフトされた露光データLONG SHIFTED及びSHORT SHIFTEDを生成し、これらは重み付け回路506に入力データとして提供される。重み付け回路506は、第1のシフトされた露光データLONG SHIFTEDのマージ処理212に対して16ビットの第1の重み値ALPHA_Lを、及び第2のシフトされた露光データLONG SHIFTEDのマージ処理212に対して第2の重み値ALPHA_Uを計算する。或る例において、重み付け回路506は、1つ又は複数の構成パラメータ140に従って動作する。詳細な例示の重み付け回路506を、図7図9に関連してこれ以降に図示及び説明する。最終マージ回路508は、第1及び第2の重み値ALPHA_L及びALPHA_Uを受け取り、第1及び第2の利得調整されたデータLONG ADJ及びSHORT ADJをマージして、第1及び第2の重み値ALPHA_L、ALPHA_Uに従って、マージされた画像データ404を生成する。
【0030】
図6は、利得回路500の一例の更なる詳細を示す。利得回路500は、第1及び第2の露光データ401及び402の一方又は両方に利得を適用して、それらの値を、互いに近くなるように、理想的にはそれらが同じ強度スケールになるように動かす。一例において、第1の露光データ401に対してユニティ利得が適用され、ショート露光データ402に対して一層高い利得が適用される。或る実装において、固定小数点演算を説明するため、及び利得適用におけるエラーを低減するために、一例において、利得回路500は、ショート露光に対して「1」の利得を、ロング露光に対して<「1」の利得を適用する。一例において、第1の露光利得「gain_long」は、下記式(1)に従って設定される。
(1) gain_long=215×(short exposure gain)/(long exposure gain)
【0031】
利得回路500は、構成可能な第1及び第2のブラックレベルオフセット値パラメータ140a及び140b(例えば、図示される例において、4ビット値)を、それぞれ、減算回路603及び604に提供するための回路601及び602を含む、ブラックレベルオフセット回路要素601~604を含む。或る例において、デジタル画像データは、非ゼロのブラックレベルを有し、その結果、画像においてゼロを表すべき画素が、例えば一例において200等、非ゼロ値となる。従って、この画像における最も低い値は200であり、構成可能パラメータ140a及び140bによって設定されるこの値は、更なる処理の前に画像から減算される。ブラックレベルオフセット回路601及び602からの値は、それぞれ、第1及び第2の露光データ401及び402(例えば、一例において8~12ビット)から減算され、その結果が0と4095との間で、それぞれクリッピング回路605及び606によってクリップされる。回路605及び606は、12ビットの結果の値を乗算回路607及び608に提供し、乗算回路607及び608は、クリップされた結果の値に、構成可能なロング及びショート利得値140c及び140dを乗算する。このようにして、回路607は構成可能な第1の利得値140cを第1の露光データ401に適用し、回路608は構成可能な利得値140dを第2の露光データ402に適用して、第1及び第2の利得調整された露光データLONG ADJ及びSHORT ADJを生成する。回路607及び608による乗算の結果として、28ビットの結果が、それぞれ、加算又はアダー回路609及び610に提供される。利得回路500は、構成可能な4ビットの第1及び第2の(例えば、ロング及びショート)シフト値140b及び140f(「xl」及び「xs」)を用い、それらの値は、それぞれ、乗算回路607及び608からの28ビット値と加算されるシフトされた値を計算するために用いられる。
【0032】
加算回路609及び610は、28ビットの結果を、それぞれ、シフト回路611及び612に提供する。回路611及び612は、28ビットの入力値を15-xl及び15-xs右シフトし、結果の値(例えば、一例において20ビット)は、20ビットの構成可能なクリップ値140g(WDR_CLIP)に従って、クリッピング回路613及び614によって制限又はクリップされる。回路613及び614は、20ビットの結果を、それぞれ、回路615及び616によって提供される構成可能な13ビットのホワイトバランス利得140h及び140iに従ったロング及びショートホワイトバランス利得適用のために、乗算回路617及び618に提供する。回路615~618を用いて、利得回路500は、第1及び第2の利得調整された露光データLONG ADJ、SHORT ADJを生成するための処理の一部として、露光データにおけるホワイトバランスを補正する。ホワイトバランス補正は、画像からカラーキャストを除去するように動作する。一例において、ユニティ利得がグリーンチャネル値に適用され、非ユニティ利得(1より上又は下)が、レッド又はブルーチャネルに適用される。ホワイトバランス利得調整の後、33ビットの乗算回路の結果値が乗算回路617及び618によって加算回路619及び620に提供され、加算回路619及び620は、256の値を加算し、図示される例において、33ビットの出力を提供する。これらの出力は、シフト回路621及び622を用いて9ビット右にシフトされる。回路621及び622は、24ビットシフトされた値を、クリッピング回路623及び624に提供する。クリッピング回路623及び624は、構成可能なクリップ値140gに従って、20ビットの第1及び第2の利得調整された露光データLONG ADJ、SHORT ADJを提供するように動作する。
【0033】
例示の重み付け回路506の更なる詳細を説明する。図7におけるグラフ700は、重み付け値を、入ってくる画素値の関数として図示する、曲線701、702、703、704、及び705を示す。図8におけるグラフ800は、モーションアダプティブ重み付け値曲線802(MA Weight)を、ロング画素値とショート画素値との間の差Deltaの関数として示す。図9は、重み付け回路506の1つの例の更なる詳細を示す。この例において、回路506は、重み計算回路900及びモーションアダプティブフィルタ回路930を含む。重み計算回路900は、LEDフリッカー低減のために用いられる、構成可能な選択パラメータ140q(WGT_SEL)に従った第1又は第2のシフトされた露光データのいずれかに基づいて、初期重み値alphaを計算する。また、回路900は、alphaを計算する際に、構成可能な第1の閾値140r(T)を用いる。画像における現在の画素位置に対する選択された第1又は第2のシフトされた露光データLONG SHIFTED又はSHORT SHIFTEDがTより大きいとき、回路900はalphaを第1の所定の値(例えば、32,768)として計算する。そうではなく、選択された値がTに等しいかそれより小さい場合、回路900は、1つ又は複数の構成可能パラメータ140l、140m、140n(図9において、bf、af_m及びaf_e)に従って、及び現在の画素位置に対する選択されたロング又はショートデータ画素値に従って、初期重み値alphaを計算する。一例において、これらのパラメータ140l、140m、及び140eは集合的に、図7に示される構成可能パラメータ「V」(140k)を構成する。例えば、構成可能パラメータは、グラフ700において閾値712を下回る曲線701、702、703、704、又は705の形状を設定するために、重み計算回路900によって用いられる。このグラフに示されるように、重み付け回路506は、ショート(第2の)重み値ALPHA_Uを、閾値712を上回る画素値に対する一定の値(例えば、グラフ700では目盛りの値「1」)になるように設定する。この値(例えば、図示された例において1000)より下では、構成パラメータ140k、140l、140m、及び/又は140nは、閾値712より下で、第1の露光データセットと第2の露光データセットとを混合するために、任意の適切な曲線を実装するように、ホストシステム142(図1)によって構成され得る。図7において、曲線701~705は、V=0.73、V=0.51、V=0.35、V=0.25、及びV=0に対する例であり、この例において、曲線705(V=0)は、画素値500(図7において、閾値710で示される)で値ALPHA_U=0に終端する。このようにして、IC100は、第1及び第2の露光データ401及び402の任意の所望の混合又はマージを実装するように構成され得る。
【0034】
重み付け回路506は、この例において16ビット値であるロング又はショートシフトされたデータストリームの1つを重み計算回路900に提供するために、選択された信号(構成パラメータ140q)に従って動作し得るマルチプレクサ又は選択回路902を含む。回路900における乗算回路904及び908は、それぞれ、第1及び第2の構成パラメータ値140l(bf)及び140m(af_m)によって、選択された値をスケーリングする。乗算回路904の出力は、シフト回路906によって1ビット右にシフトされ、回路906の出力は、加算又はアダー回路916に入力として提供される。乗算回路908の出力は、構成パラメータ140n(af_e)に従って、シフティング回路910によってシフトされる。乗算回路912が、シフトされた結果に選択された値を乗算し、シフト回路914が、乗算された結果を、この例では10ビット、右シフトする。回路914からのシフトされた出力は、シフト回路906の出力と加算される。シフト回路918が加算結果を構成パラメータクリップUの4倍右にシフトし、その結果の値は、第1の入力としてマルチプレクサ920に提供される。マルチプレクサ920への第2の入力は、この例において、15ビット、1左シフトされた所定の値である。また、回路900は、回路902からの16ビットの選択された値から閾値Tを減算する減算回路922を用いて、閾値パラメータT(140r)に従って、alphaを計算する。減算結果は、マルチプレクサ920に対する選択入力として動作する「SIGN BIT」として用いられる。マルチプレクサの出力は、初期重み値alphaである。減算回路924が、モーションアダプティブフィルタ回路930からのモーションアダプティブ重み値MA Weightに従った選択的スケーリングのために入力を乗算回路940に提供するために、所定の値(例えば、15ビット、1左シフトされる)を減算する。
【0035】
重み付け回路506はまた、画像データにおけるモーションに対して適応する。モーションアダプティブフィルタ回路930は、差の値delta(図8において横軸「Delta」として示される)を計算する。この値は、図9における減算回路931及び絶対値回路932を用いて、画像における現在の画素位置に対する第1及び第2のシフトされた露光データLONG SHIFTED及びSHORT SHIFTED間の差の絶対値として計算される。モーションアダプティブフィルタ回路930は更に、差の値deltaから第2の閾値140o(D1)を減算する減算回路933を含む。クリッピング回路934が、0と第1の所定の値32,768との間の結果の値をクリップし、乗算回路935を用いて、その結果に構成パラメータ140p(WDRMA.MAS)を乗算する。減算回路936が、乗算された値を所定の値(例えば、15ビット、1左シフトされる)から減算し、減算結果は、クリッピング回路937によって0と32,768との間でクリップされる。回路932は、クリップされた出力をモーションアダプティブ重み値MA Weightとして提供する。
【0036】
乗算回路940は、モーションアダプティブ重み値MA Weightに減算回路924の出力を乗算し、その結果は、シフト回路942を用いて、一例において15ビット右シフトされる。シフト回路942は16ビットの第1の重み値ALPHA_Lを提供し、減算回路944は第1の重み値ALPHA_Uを1-ALPHA_Lとして提供する。図9において示されるように、差の値deltaが第2の閾値140o(D1)に等しいかそれより大きいとき、モーションアダプティブフィルタ回路930は、差の値deltaに従ってモーションアダプティブ重み値MA Weightを計算し、そうでないときは、モーションアダプティブ重み値が一定の値(この例では1)に設定される。回路要素940、942、及び944を用いて、重み付け回路506は、初期重み値alphaにモーションアダプティブ重み値MA Weightを乗算して、第1の重み値ALPHA_Lを生成し、第1の所定の値(例えば、32,768)から第1の重み値ALPHA_Lを引くことによって、第2の重み値ALPHA_Uを計算する。
【0037】
この例において、回路506は、ロング及びショート露光に対する重みを生成する。重みALPHA_L及びALPHA_Uは、マージされた出力を生成するために、最終マージ回路508(図5)における補間のために用いられる。図8は、回路930によって提供されるモーションアダプティブフィルタリングの効果を示す。グラフ800に示されるように、Deltaの一層高い値において、値alphaのモーションアダプティブ修正が発生する。図示された回路930は、0.25において、モーションアダプティブ重みに対する最小値を実装するが、異なる最小値を提供するために他の実装も可能である。図9における重み計算回路900は、画素ノイズとの戦いを助け、モーションアダプティブフィルタ回路930はモーションアーチファクトの抑圧を助ける。図9における重み計算回路例900は、下記式(2)を用いて、alphaの値を計算する。
【0038】
式(2)において、「x」は、入ってくる画素データの値であり、T、af_m、bf、及びaf_eは、構成可能パラメータ140である。モーションアダプティブ回路930がないと、「alpha」はショート画素に対する利得として振舞うことになり、ロング画素に対する利得は、「1-alpha」として設定される。図7に示されるように、重みグラフ700は、異なる性能曲線を実装するために異なる構成パラメータを変更することによって操作され得る。このグラフ700において、閾値712(T)は1000に設定され、グラフ701、702、703、704、及び705はそれぞれ、ショート画素重み付け(y軸)に対する重みを、例示の値0.73、0.51、0.35、0.25、及び0.0に対する画素値(x軸)の関数として表す。Vは、構成パラメータaf_m、af_e、及びbfから導かれた簡略化された構成パラメータ140kである。グラフ700における例は、画素値が1000を上回った後は、ショート画素に対する重みが「1」であることを示し、一方、0~1000は非線形曲線に従う。これは、ロング露光とショート露光との間で、正しい混合を選択することによって、任意の適切な所望のダイナミックレンジを設定する際の柔軟性を提供する。各曲線701~705は、異なる種類のセンサ102(図1)に対して適切であり得る。y軸値0.4に対する一例において、出力は、ショート露光に対して0.4、ロング露光に対して0.6の重みを用いて計算され得る(例えば、out=0.4×ショート+0.6×ロング)。図9におけるモーションアダプティブフィルタ回路930は、下記式(3a~3d)を用いて説明され、32768は1.0の値を表す(疑似浮動表記(Pseudo float notation))。
【0039】
ALPHA_Uは、ショート露光値に対する最終重みであり、ALPHA_Lはロング露光値に対する最終重みである。図8における曲線802は、図9における回路930によって実装されるモーションアダプティブ重み計算を示す。動作において、ロング画素とショート画素との間の差が一層小さい(deltaが小さい)とき、回路930は、MA_Weightを1に設定し、実質的に、モーションアダプティブフィルタ回路930はalphaを変更しない。しかしながら、deltaが大きいとき、MA_Weightは1の値より小さくなる。例えば、極端な場合において、delta=4095であるとき、MA_Weightの値は0.25になる。この場合、ロング露光重みは、0.25の係数で乗算されるので低減される。ショート露光重みは1.0-ロング露光重みとして計算されるので、対応して増加する。結果として、画像においてモーションが存在する場合はいつでも、重みがショート露光の方にスキューされる。
【0040】
類似のロジック回路要素がLEDフリッカーを説明するために用いられ得る。画像にLED光源(又は他のパルス光源)があり、フリッカーが存在する場合はいつでも、ロング露光は、ショート露光に比べて、LED源を捕捉する確率がはるかに高い。フリッカーアーチファクトを完全に防止するために、ロング露光時間をLED源の周波数より高く維持し得る。例えば、LED源の周波数が90Hzである(例えば、多くのLED源は、約90Hzのデータ周波数で動作される)場合、11ms又はそれより長い露光時間は常にLED源を正しく捕捉することになる。所与の応用例においてLEDフリッカーが懸念される場合、モーションアダプティブ回路930は、ショート露光に向かって低減される重みを適用する(800)ために、適切な構成パラメータ140を設定するように再構成され得る。この例において、図8におけるグラフは、図示されるようにそのままであるが、MA Weightは、ロング露光ではなくショート露光に適用される。この例において、ロング露光値とショート露光値との間に有意なdeltaが存在する場合はいつでも、LEDフリッカーが想定され、マージ処理において、一層高い重み付けがロング露光に付与される。ロング露光がフリッカーフリーであると考えられるので、重み付けメカニズムは、フリッカーのないマージフレームを生成する。
【0041】
重みが計算された後、最終マージブロック508(図5)は、下記式(4)を用いて、2つの露光をブレンドする。
ここで、「s」は、固定点表記法における小数点桁数(又は小数点ビットの数)である。
【0042】
説明される例は、多くのセンサによってサポートされる個別露光WDRデータフローに対処し、画像の前処理回路要素の重複に関連するコスト不利益を生じさせることなく、多重露光WDR入力データの処理を提供する。これは、インテリジェントな2パスアプローチを用いて、性能と省面積との間の均衡に対するトレードオフを提供する。このように有意なコスト削減(ロジック及びメモリ面積)が促進され、信号処理IC 100をコスト重視の応用例に適合させる。また、IC 100は、多重露光をマージするための先進の回路要素及び技法を実装し、画像ノイズ及びモーションアーチファクトの両方に対して堅牢である。
【0043】
特許請求の範囲内で、説明された実施形態における変更が可能であり、他の実施形態が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9