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  • 特許-樹脂成形体打抜型 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】樹脂成形体打抜型
(51)【国際特許分類】
   B26F 1/44 20060101AFI20221227BHJP
   B26F 1/40 20060101ALI20221227BHJP
   B26D 7/08 20060101ALI20221227BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
B26F1/44 J
B26F1/40 Z
B26D7/08 D
B26D3/00 601C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022124824
(22)【出願日】2022-08-04
【審査請求日】2022-08-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520244924
【氏名又は名称】有限会社坂本抜型
(74)【代理人】
【識別番号】100142136
【弁理士】
【氏名又は名称】深澤 潔
(72)【発明者】
【氏名】坂本 康市朗
(72)【発明者】
【氏名】坂本 茂行
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-4277(JP,A)
【文献】特開2021-133453(JP,A)
【文献】特開平3-98797(JP,A)
【文献】特開2002-11697(JP,A)
【文献】特開平07-001396(JP,A)
【文献】実開昭51-131787(JP,U)
【文献】実公昭37-1797(JP,Y1)
【文献】特開昭58-22697(JP,A)
【文献】特開昭51-109587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 1/38 ー 1/44
B26D 3/00
B26D 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂発泡材を押圧して成形体を作成するための樹脂成形体打抜型であって、
前記合成樹脂発泡材を切断する切断刃が立設された第一基部と、
押圧時に変形せずに前記切断刃及び前記第一基部の少なくとも一部が挿入されつつ前記合成樹脂発泡材の押圧方向以外の変形を抑制する第二基部と、
該第二基部の押圧方向に接続されて前記合成樹脂発泡材の押圧時に前記切断刃に対して押圧方向に縮変しながら移動する第三基部と、
を備える樹脂成形体打抜型。
【請求項2】
前記切断刃の周囲に配されて押圧により縮変可能な変形部と、
先端が前記切断刃の先端位置に対して高低差を有して配された段差部と、
を備える請求項1に記載の樹脂成形体打抜型。
【請求項3】
前記段差部が、前記切断刃の先端よりも低い第一段部と、前記切断刃の先端よりも高い第二段部と、を備える請求項2に記載の樹脂成形体打抜型。
【請求項4】
前記変形部が前記合成樹脂発泡材よりも硬い材質からなり、
前記第三基部が押圧時に前記変形部よりも先に縮変可能請求項2に記載の樹脂成形体打抜型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打ち抜きによって合成樹脂発泡材から成型体を製造するための樹脂成型体打抜型に関する。
【背景技術】
【0002】
打ち抜きによって合成樹脂発泡材から成型体を製造する際には、抜き型を用いて打ち抜き成型することが多い(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-179698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の抜き型を用いて厚肉の合成樹脂発泡材から円柱部材や円筒部材等を成型しようとしても、打ち抜き時の圧縮力によって成形体の側面にえぐれが生じて変形してしまう場合がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、打ち抜き後の成形体におけるえぐれ等の変形を抑制することが可能な樹脂成形体打抜型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係る樹脂成形体打抜型は、合成樹脂発泡材を押圧して成形体を作成するための樹脂成形体打抜型であって、前記合成樹脂発泡材を切断する切断刃が立設された第一基部と、押圧時に変形せずに前記切断刃及び前記第一基部の少なくとも一部が挿入されつつ前記合成樹脂発泡材の押圧方向以外の変形を抑制する第二基部と、該第二基部の押圧方向に接続されて前記合成樹脂発泡材の押圧時に前記切断刃に対して押圧方向に縮変しながら移動する第三基部と、を備える。
【0007】
また、本発明に係る樹脂成形体打抜型は、前記切断刃の周囲に配されて押圧により縮変可能な変形部と、先端が前記切断刃の先端位置に対して高低差を有して配された段差部と、を備える。
【0008】
また、本発明に係る樹脂成形体打抜型は、前記段差部が、前記切断刃の先端よりも低い第一段部と、前記切断刃の先端よりも高い第二段部と、を備える。
【0009】
また、本発明に係る樹脂成形体打抜型は、前記変形部が前記合成樹脂発泡材よりも硬い材質からなり、前記第三基部が押圧時に前記変形部よりも先に縮変可能される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、打ち抜き後の成形体におけるえぐれ等の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態に係る樹脂成形体打抜型を示す平面図である。
図2図1のII-II線における断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る樹脂成形体打抜型によって合成樹脂発泡材から成形される円筒体を示す斜視図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る樹脂成形体打抜型を示す平面図である。
図5図4のV-V線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
本発明に係る第1の実施形態について、図1から図3を参照して説明する。
本実施形態に係る樹脂成形体打抜型10は、ポリウレタン発泡材等の直方体状の合成樹脂発泡材Pから中心軸線Cを有する複数の円筒体(成形体)CYを不図示のプレス機を用いて作成するための樹脂成形体打抜型であって、一の合成樹脂発泡材Pが載置されるとともに一の合成樹脂発泡材Pから四の円筒体CYを一度に切断する切断刃11を有する第一型12と、合成樹脂発泡材Pが挿入される貫通孔(孔)13aが配された第二型13と、合成樹脂発泡材Pの押圧時に押圧方向以外の方向への第一型12及び第二型13との相対移動を抑える係合部15と、を備える。
【0013】
第一型12は、円筒体CYの中心軸線Cと一致する中心軸線C1を有する円筒状の切断刃11と切断刃11を取り囲む外周刃16とが略同一の高さで立設された第一基部17と、合成樹脂発泡材よりも硬く押圧により縮変可能な変形部18と、中心軸線C1から離間するにつれて切断刃11の先端位置に対して高低差が設けられた段差部20と、を備える。第一基部17は、例えばベニヤ等の木や金属等からなり、所定の厚さに形成されている。
【0014】
切断刃11は、円筒体CYの内側を成形する内側刃21及び円筒体CYの外側を成形する外側刃22を備える。そして、中心軸線C1を共有する一の内側刃21と一の外側刃22とが対となって第一基部17に複数配されている。変形部18は、例えば、合成樹脂発泡材Pよりも硬いゴム材からなり、内側刃21と外側刃22との間を除く第一基部17上部に積層される。
【0015】
段差部20は、内側刃21と外側刃22との間に配される第一段部23と、内側刃21の内側及び外側刃22の外側と外周刃16との間に配される第二段部25と、外周刃16の外側に配される第三段部26と、を備える。第二段部25及び第三段部26は変形部18の上部に積層される。段差部20は、例えばベニヤ等の木や金属等からなる。
【0016】
第一段部23は、切断刃11の先端よりも低くなるよう所定の厚さに形成されて第一基部17上に積層される。第二段部25は、変形部18の上に積層された際に切断刃11の先端よりも高く突出するよう所定厚さに形成されている。第三段部26は、第二段部25よりもさらに高く突出するよう所定厚さに形成されている。
【0017】
第二型13は、合成樹脂発泡材Pが挿入される貫通孔13aを形成する壁13Aが配された第二基部27と、押圧時に変形部18よりも先に縮変可能な第三基部28と、を備える。貫通孔13aは、押圧時に第一型12に載置された合成樹脂発泡材Pと第一型12の高さ方向の少なくとも一部が挿入可能な大きさに形成されて第二基部27の中央部に貫通して配されている。
【0018】
第二基部27は、例えばベニヤ等の木や金属等からなる。また、第三基部28は、変形部18よりも柔らかい弾性を有する材質にて所定の厚さに形成されて押圧方向となる第二基部27の下端に接続される。第二基部27及び第三基部28は、非押圧時には非圧縮状態の第三基部28と第二基部27とのそれぞれの厚さを合わせた高さが第一型12の高さを超え、かつ、押圧時には圧縮状態の第三基部28と第二基部27とのそれぞれの厚さを合わせた高さが第一型12の高さを超えない高さに形成されている。
【0019】
係合部15は、第一型12の外側面から中心軸線C1の鉛直方向に突出して配された突起部30と、壁13Aの内側に配されて突起部30が係合される孔部31と、を備える。突起部30は直方体状に形成されている。突起部30と孔部31とは係合された状態で押圧方向にのみ相対移動可能となっている。
【0020】
次に、本実施形態に係る樹脂成形体打抜型10の作用について、円筒体CYの成形方法とともに説明する。
【0021】
まず、予め切断刃11が立設された第一基部17に対して変形部18及び段差部20を順に積層して第一型12を組み立てる。そして、突起部30と孔部31とを係合させて第二型13を第一型12と接続する。続いて合成樹脂発泡材Pを貫通孔13a内に格納する。
【0022】
この状態で押圧方向となる上方向又は下方向から不図示のプレス機にて所定の圧力で樹脂成形体打抜型10を押圧する。押圧時には、合成樹脂発泡材P及び第三基部28が圧縮され、続いて変形部18が圧縮され、プレス機の押圧プレートが切断刃11に到達することによって切断が終了する。
【0023】
ここで、合成樹脂発泡材Pが押圧される際、合成樹脂発泡材Pは押圧方向には圧縮される一方、押圧方向以外の方向には拡張しようとする。しかし、合成樹脂発泡材Pが貫通孔13a内に格納されているので、合成樹脂発泡材Pの側面が押圧方向以外の方向に拡張しようとしても貫通孔13aの壁13Aによって押圧方向以外の方向への変形が抑制される。
【0024】
一方、合成樹脂発泡材Pの内部では、内側刃21よりも内側の合成樹脂発泡材Pは第二段部25によって内側刃21側へ、外側刃22よりも外側の合成樹脂発泡材Pは第二段部25によって外側刃22側へ戻される。そして、合成樹脂発泡材Pが圧縮された後に変形部18が圧縮されることによって第二段部25よりも切断刃11の先端が突出する。こうして不図示のプレス機の押圧プレートと切断刃11とが接触することで合成樹脂発泡材Pの切断が終了する。
【0025】
合成樹脂発泡材Pは外周刃16によっても所定の形状に切断される。この際、外周刃16の外側に配された第三段部26によって、外周刃16よりも外側の合成樹脂発泡材Pが外周刃16側へ戻され、外周刃16よりも外側部分に発生する円筒体CY側面を外側へ引っ張ろうとする力が抑制される。
【0026】
この樹脂成形体打抜型10によれば、第一型12の第一基部17と、第二型13の第二基部27及び第三基部28と、を備えて合成樹脂発泡材Pの押圧時に第三基部28が縮変しながら切断刃11に対して押圧方向に移動する。そのため、押圧時に合成樹脂発泡材Pが押圧方向に縮変する際、合成樹脂発泡材Pの側面が押圧方向以外の方向へ拡張しようとするのを貫通孔13aの壁13Aが抑え続けることができる。したがって、打ち抜き後の円筒体におけるえぐれ等の変形を抑制することができ、合成樹脂発泡材Pに生じるえぐれが抑制された円筒体CYが形成される。
【0027】
また、樹脂成形体打抜型10が変形部18と段差部20とを備えるので、押圧時の切断刃11周辺の合成樹脂発泡材Pの変形方向を制御して円筒体CYの側面をより好適な形に整形することができる。この際、段差部20が、内側刃21の先端よりも低い第一段部23と、内側刃21の先端よりも高い第二段部25と、を備えることから、合成樹脂発泡材Pの変形方向をより好適に制御することができる。また、合成樹脂発泡材P、変形部18及び第三基部28の押圧時の変形順番を制御することによってより好適にえぐれを抑制することができる。
【0028】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について図4及び図5を参照して説明する。
なお、上述した第1の実施形態と同様の構成要素には同一符号を付すとともに説明を省略する。
第2の実施形態と第1の実施形態との異なる点は、本実施形態に係る樹脂成形体打抜型40が、直方体状の合成樹脂発泡材Pから不図示の複数の円柱体(成形体)を成形するとした点である。
【0029】
第一型41に配される切断刃42は、円柱体を成形する円筒状の複数の外側刃22のみを備える。段差部43は、第一段部23が外側刃22の内側に配され、第二段部25は外側刃22の外側と外周刃16との間に配される。
【0030】
次に、本実施形態に係る樹脂成形体打抜型40の作用について、円柱体の成形方法とともに説明する。
【0031】
まず、第1の実施形態に係る第一型12と同様に第一型41を組み立てる。そして、突起部30と孔部31とを係合させて第二型13を第一型41と接続する。続いて合成樹脂発泡材Pを貫通孔13a内に格納する。
【0032】
この状態で第1の実施形態と同様に型全体を上方向又は下方向から不図示のプレス機にて所定の圧力で押圧する。押圧時には、合成樹脂発泡材P及び第三基部28が圧縮され、変形部18が圧縮される。
【0033】
外側刃22が合成樹脂発泡材Pを切断する際、第1の実施形態と同様に合成樹脂発泡材Pは圧縮されながら切断刃42によって切断される際に圧縮される方向以外の方向に拡張しようとする。しかし、合成樹脂発泡材Pが貫通孔13a内に格納されているので、合成樹脂発泡材Pの側面については押圧方向以外の方向への変形が抑制される。また、合成樹脂発泡材Pの内部については、段差部43が配されているため、外側刃22よりも外側の合成樹脂発泡材Pは外側刃22側へ戻される。こうして、合成樹脂発泡材Pに生じるえぐれが抑制された円柱体が形成される。
【0034】
この樹脂成形体打抜型40によれば、円柱体に対しても円筒体CYと同様に打ち抜き後の成形体におけるえぐれ等の変形を抑制することができる。
【0035】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第一型12,41が、第一基部17、変形部18、段差部20,43の順に積層されて構成されているとしているが、順番はこれに限らず、段差部20,43が最上部に配される構成であればよい。また、第一型12,41が第一基部17を備え、第二型13が第二基部27及び第三基部28を備えるとしているが、第一基部、第二基部及び第三基部の組み合わせはこれに限らない。
【0036】
さらに、第三基部28は第二基部27の下方に接続されているとしているが、下方のみに限らない。また、押圧によって第三基部が縮変するとしているが、例えば、第三基部が不図示のプレス機と合成樹脂発泡材Pとの間に配されるとともに貫通孔内に嵌合可能な大きさに形成され、プレス機とともに合成樹脂発泡材Pを押圧する場合には縮変しなくても構わない。
【0037】
また、変形部18は一層のみに限らず配置場所に応じて複数層積層されても構わない。また、各部の厚さ(高さ)は成形される円筒体や円柱体等の厚みに応じた合成樹脂発泡材の厚さに応じて設定されればよい。
【符号の説明】
【0038】
10,40 樹脂成形体打抜型
11,42 切断刃
17 第一基部
18 変形部
20,43 段差部
23 第一段部
25 第二段部
27 第二基部
28 第三基部
CY 円筒体(成形体)
P 合成樹脂発泡材
【要約】
【課題】打ち抜き後の成形体におけるえぐれ等の変形を抑制することができる樹脂成形体打抜型を提供すること。
【解決手段】樹脂成形体打抜型10は、合成樹脂発泡材を押圧して成形体を作成するための樹脂成形体打抜型であって、合成樹脂発泡材を切断する切断刃11を有する第一基部17と、押圧時に合成樹脂発泡材の押圧方向以外の変形を抑制する第二基部27と、合成樹脂発泡材の押圧時に切断刃11に対して押圧方向に移動する第三基部28と、を備えて、合成樹脂発泡材から成形体を作成する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5