(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】電池用非水電解液及びリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20221227BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221227BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20221227BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20221227BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20221227BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M10/058
H01M4/505
H01M4/525
(21)【出願番号】P 2018233325
(22)【出願日】2018-12-13
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】藤山 聡子
(72)【発明者】
【氏名】菅原 敬
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-164831(JP,A)
【文献】特開2015-149234(JP,A)
【文献】国際公開第2010/137571(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
H01M 10/052
H01M 10/058
H01M 4/505
H01M 4/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を正極活物質として含むリチウム二次電池に用いられ、
下記式(1)で表される化合物
と、
下記式(3)で表される化合物及び下記式(6)で表される化合物の少なくとも一方と、
を含有する電池用非水電解液。
【化1】
〔式(1)中、R
11及びR
12は、それぞれ独立に、炭素数1~12の脂肪族基又は炭素数1~12のフッ化脂肪族基を表す。〕
【化2】
〔式(3)中、R
31
~R
34
は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、式(a)で表される基、又は式(b)で表される基を表す。式(a)及び式(b)において、*は、結合位置を表す。
式(6)中、R
61
~R
63
は、それぞれ独立に、フッ素原子又は-OLi基を表し、R
61
~R
63
の少なくとも1つが-OLi基である。〕
【請求項2】
前記式(3)で表される化合物と、前記式(6)で表される化合物と、を含有する請求項
1に記載の電池用非水電解液。
【請求項3】
前記式(3)で表される化合物と、前記式(6)で表される化合物と、下記式(5)で表される化合物と、を含有する請求項
1又は請求項
2に記載の電池用非水電解液。
【化3】
〔式(5)中、R
51
及びR
52
は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。〕
【請求項4】
前記式(3)で表される化合物の含有質量が、前記式(1)で表される化合物の含有質量よりも大きく、
前記式(6)で表される化合物の含有質量が、前記式(1)で表される化合物の含有質量よりも大きい請求項
2又は請求項
3に記載の電池用非水電解液。
【請求項5】
前記式(1)で表される化合物の含有量が、非水電解液の全量に対し、0.01質量%~5質量%である請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の電池用非水電解液。
【請求項6】
LiNi
0.5
Mn
0.3
Co
0.2
O
2
、LiNi
0.6
Mn
0.2
Co
0.2
O
2
、又はLiNi
0.8
Mn
0.1
Co
0.1
O
2
を正極活物質として含むリチウム二次電池に用いられ、
下記式(1)で表される化合物を含有する電池用非水電解液。
【化4】
〔式(1)中、R
11及びR
12は、それぞれ独立に、炭素数1~12の脂肪族基又は炭素数1~12のフッ化脂肪族基を表す。〕
【請求項7】
更に、下記式(2)~下記式(9)のいずれかで表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項
6に記載の電池用非水電解液。
【化5】
〔式(2)中、R
21~R
24は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
式(3)中、R
31~R
34は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、式(a)で表される基、又は式(b)で表される基を表す。式(a)及び式(b)において、*は、結合位置を表す。
式(4)中、R
41~R
44は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。但し、R
41~R
44は、同時に水素原子となることはない。
式(5)中、R
51及びR
52は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
式(6)中、R
61~R
63は、それぞれ独立に、フッ素原子又は-OLi基を表し、R
61~R
63の少なくとも1つが-OLi基である。
式(7)中、R
71~R
76は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は炭素数1~3のフッ化炭化水素基を表す。
式(8)中、R
81~R
84は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は炭素数1~3のフッ化炭化水素基を表す。
式(9)中、Mは、アルカリ金属を表し、Yは、遷移元素、又は周期律表の13族、14族もしくは15族元素を表し、bは1~3の整数、mは1~4の整数、nは0~8の整数、qは0又は1を表す。R
91は、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のハロゲン化アルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリーレン基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、またqが1でmが2~4の場合にはm個のR
91はそれぞれが結合していてもよい。)を表し、R
92は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン化アリール基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、また、nが2~8の場合はn個のR
92はそれぞれが結合して環を形成していてもよい。)、又は-X
3R
93を表す。X
1、X
2及びX
3は、それぞれ独立に、O、SまたはNR
94を表し、R
93およびR
94は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリール基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、R
93またはR
94が複数個存在する場合はそれぞれが結合して環を形成してもよい。)を表す。〕
【請求項8】
前記式(3)で表される化合物及び前記式(6)で表される化合物の少なくとも一方を含有する請求項7に記載の電池用非水電解液。
【請求項9】
前記式(3)で表される化合物と、前記式(6)で表される化合物と、を含有する請求項7又は請求項8に記載の電池用非水電解液。
【請求項10】
前記式(3)で表される化合物と、前記式(6)で表される化合物と、前記式(5)で表される化合物と、を含有する請求項7~請求項9に記載の電池用非水電解液。
【請求項11】
前記式(3)で表される化合物の含有質量が、前記式(1)で表される化合物の含有質量よりも大きく、
前記式(6)で表される化合物の含有質量が、前記式(1)で表される化合物の含有質量よりも大きい請求項9又は請求項10に記載の電池用非水電解液。
【請求項12】
前記式(1)で表される化合物の含有量が、非水電解液の全量に対し、0.01質量%~5質量%である請求項6~請求項11のいずれか1項に記載の電池用非水電解液。
【請求項13】
リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を正極活物質として含む正極と、
負極と、
請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載の電池用非水電解液と、
を備えるリチウム二次電池。
【請求項14】
LiNi
0.5
Mn
0.3
Co
0.2
O
2
、LiNi
0.6
Mn
0.2
Co
0.2
O
2
、又はLiNi
0.8
Mn
0.1
Co
0.1
O
2
を正極活物質として含む正極と、
負極と、
請求項6~請求項12のいずれか1項に記載の電池用非水電解液と、
を備えるリチウム二次電池。
【請求項15】
請求項
13又は請求項14に記載のリチウム二次電池を充放電させて得られたリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池用非水電解液及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、リチウム二次電池等の電池に用いられる電池用非水電解液について、種々の検討がなされている。
例えば、特許文献1には、非水電解液電池において、水の混入に基づくハロゲン酸の発生を防止して、電池の劣化を防ぐことを目的として、水と反応してハロゲン酸を生じ得る支持電解質を含む非水電解液に、前記水及び支持電解質と相互作用して不活性な錯体を形成することによりハロゲン酸を生じさせない錯体形成化合物を添加したことを特徴とする電池用非水電解液が開示されている。
また、特許文献2には、遊離酸を発生させる非水系電解液中で非水系ゲル状組成物を提供できる非水系電解液として、カルボジイミド構造を有する化合物を含有してなる非水系電解液が開示されており、更に、この非水系電解液を用いた電気化学素子(例えば電池)が開示されている。
また、特許文献3には、保管時の着色と酸分の上昇が抑制された非水電解質として、特定構造のカルボジイミドと、特定構造の硫酸エステル及びホウ素化合物の少なくとも1種と、を含有する非水電解質が知られている。特許文献3には、更に、上記非水電解質を用いて作成した初期充電時のガス発生が少なくサイクル特性も良好となる非水電解質二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-294129号公報
【文献】特開2001-313073号公報
【文献】特開2010-251313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば自動車向けの電池として、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を正極活物質として含むリチウム二次電池が普及している。
このリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物は、リチウム二次電池の容量向上に寄与する。
しかし、上記リチウム二次電池において、電池抵抗が上昇する場合がある。
このため、上記リチウム二次電池における電池抵抗を低減させることが求められる場合がある。
【0005】
本開示の一態様の目的は、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を正極活物質として含むリチウム二次電池における電池抵抗を低減できる電池用非水電解液を提供することである。
本開示の別の一態様の目的は、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を正極活物質として含み、かつ、電池抵抗が低減されたリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を正極活物質として含むリチウム二次電池に用いられ、
下記式(1)で表される化合物を含有する電池用非水電解液。
【0007】
【0008】
式(1)中、R11及びR12は、それぞれ独立に、炭素数1~12の脂肪族基又は炭素数1~12のフッ化脂肪族基を表す。
【0009】
<2> 更に、下記式(2)~下記式(9)のいずれかで表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含有する<1>に記載の電池用非水電解液。
【0010】
【0011】
式(2)中、R21~R24は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
式(3)中、R31~R34は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、式(a)で表される基、又は式(b)で表される基を表す。式(a)及び式(b)において、*は、結合位置を表す。
式(4)中、R41~R44は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。但し、R41~R44は、同時に水素原子となることはない。
式(5)中、R51及びR52は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
式(6)中、R61~R63は、それぞれ独立に、フッ素原子又は-OLi基を表し、R61~R63の少なくとも1つが-OLi基である。
式(7)中、R71~R76は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は炭素数1~3のフッ化炭化水素基を表す。
式(8)中、R81~R84は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は炭素数1~3のフッ化炭化水素基を表す。
式(9)中、Mは、アルカリ金属を表し、Yは、遷移元素、又は周期律表の13族、14族もしくは15族元素を表し、bは1~3の整数、mは1~4の整数、nは0~8の整数、qは0又は1を表す。R91は、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のハロゲン化アルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリーレン基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、またqが1でmが2~4の場合にはm個のR91はそれぞれが結合していてもよい。)を表し、R92は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン化アリール基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、また、nが2~8の場合はn個のR92はそれぞれが結合して環を形成していてもよい。)、又は-X3R93を表す。X1、X2及びX3は、それぞれ独立に、O、SまたはNR94を表し、R93およびR94は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリール基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、R93またはR94が複数個存在する場合はそれぞれが結合して環を形成してもよい。)を表す。
【0012】
<3> 前記式(3)で表される化合物及び前記式(6)で表される化合物の少なくとも一方を含有する<2>に記載の電池用非水電解液。
<4> 前記式(3)で表される化合物と、前記式(6)で表される化合物と、を含有する<2>又は<3>に記載の電池用非水電解液。
<5> 前記式(3)で表される化合物と、前記式(6)で表される化合物と、前記式(5)で表される化合物と、を含有する<2>~<4>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液。
<6> 前記式(3)で表される化合物の含有質量が、前記式(1)で表される化合物の含有質量よりも大きく、
前記式(6)で表される化合物の含有質量が、前記式(1)で表される化合物の含有質量よりも大きい<4>又は<5>に記載の電池用非水電解液。
<7> 前記式(1)で表される化合物の含有量が、非水電解液の全量に対し、0.01~5質量%である<1>~<6>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液。
<8> リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を正極活物質として含む正極と、
負極と、
<1>~<7>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液と、
を備えるリチウム二次電池。
<9> <8>に記載のリチウム二次電池を充放電させて得られたリチウム二次電池。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一態様によれば、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を正極活物質として含むリチウム二次電池における電池抵抗を低減できる電池用非水電解液が提供される。
本開示の別の一態様によれば、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を正極活物質として含み、かつ、電池抵抗が低減されたリチウム二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示のリチウム二次電池の一例である、ラミネート型電池の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】
図1に示すラミネート型電池に収容される積層型電極体の、厚さ方向の概略断面図である。
【
図3】本開示のリチウム二次電池の別の一例である、コイン型電池の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0016】
〔電池用非水電解液〕
本開示の電池用非水電解液(以下、単に「非水電解液」ともいう)は、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を正極活物質として含むリチウム二次電池(例えば、後述する本開示のリチウム二次電池)に用いられる非水電解液であり、下記式(1)で表される化合物を含有する。
本開示の非水電解液は、下記式(1)で表される化合物を含有することにより、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を正極活物質として含むリチウム二次電池における電池抵抗を低減できる。
【0017】
<式(1)で表される化合物>
【0018】
【0019】
式(1)中、R11及びR12は、それぞれ独立に、炭素数1~12の脂肪族基又は炭素数1~12のフッ化脂肪族基を表す。
【0020】
式(1)中、フッ化脂肪族基とは、少なくとも1個のフッ素原子によって置換された脂肪族基を意味する。
【0021】
式(1)中、脂肪族基及びフッ化脂肪族基は、それぞれ、分岐及び/又は環構造を含んでいてもよい。
【0022】
式(1)中、脂肪族基としては、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
式(1)中、フッ化脂肪族基としては、フッ化アルキル基又はフッ化アルケニル基が好ましく、フッ化アルキル基がより好ましい。
【0023】
式(1)中、炭素数1~12の脂肪族基の炭素数は、好ましくは2~10であり、より好ましくは3~8である。
式(1)中、炭素数1~12のフッ化脂肪族基の炭素数は、好ましくは2~10であり、より好ましくは3~8である。
【0024】
式(1)中、R11及びR12は、それぞれ独立に、
炭素数1~12のアルキル基又は炭素数1~12のフッ化アルキル基であることが好ましく、
炭素数1~12のアルキル基であることがより好ましく、
ノルマルプロピル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、又はジメチルシクロヘキシル基であることが更に好ましく、
イソプロピル基又はシクロヘキシル基であることが更に好ましい。
【0025】
式(1)で表される化合物としては、
N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(R11及びR12がいずれもイソプロピル基である化合物;以下、「DIC」ともいう)、又は、
N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(R11及びR12がいずれもシクロヘキシル基である化合物;以下、「DCC」ともいう)
が特に好ましい。
【0026】
式(1)で表される化合物の含有量は、非水電解液の全量に対し、好ましくは0.01質量%~5質量%であり、より好ましくは0.05質量%~3質量%であり、更に好ましくは0.1質量%~2質量%であり、更に好ましくは0.1質量%~1質量%である。
【0027】
本開示の非水電解液は、電池抵抗低減の効果をより効果的に得る観点から、更に、下記式(2)~下記式(9)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含有してもよい。
以下、式(2)~式(9)で表される化合物について説明する。
【0028】
<式(2)で表される化合物>
本開示の非水電解液は、式(2)で表される化合物を少なくとも1種含有してもよい。
【0029】
【0030】
式(2)中、R21~R24は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
【0031】
式(2)中、R21~R24で表される炭素数1~6の炭化水素基は、直鎖の炭化水素基であってもよいし、分岐及び/又は環構造を有する炭化水素基であってもよい。
R21~R24で表される炭素数1~6の炭化水素基としては、アルキル基又はアリール基が好ましく、アルキル基が更に好ましい。
【0032】
式(2)中、R21~R24で表される炭素数1~6の炭化水素基の炭素数としては、1~3がより好ましく、1又は2が更に好ましく、1が特に好ましい。
【0033】
式(2)中、R21~R24で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基は、直鎖のフッ化炭化水素基であってもよいし、分岐及び/又は環構造を有するフッ化炭化水素基であってもよい。
R21~R24で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基としては、フッ化アルキル基又はフッ化アリール基が好ましく、フッ化アルキル基が更に好ましい。
【0034】
式(2)中、R21~R24で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の炭素数としては、1~3がより好ましく、1又は2が更に好ましく、1が特に好ましい。
【0035】
式(2)で表される化合物の具体例としては、下記式(2-1)~下記式(2-9)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物(2-1)~化合物(2-9)ともいう)が挙げられるが、式(2)で表される化合物は、これらの具体例には限定されない。
これらのうち、化合物(2-1)又は化合物(2-2)が特に好ましい。
【0036】
【0037】
本開示の非水電解液が式(2)で表される化合物を含有する場合、非水電解液の全量に対する式(2)で表される化合物の含有量としては、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.005質量%~5質量%がより好ましく、0.01質量%~2質量%が更に好ましく、0.1質量%~1質量%が特に好ましい。
【0038】
<式(3)で表される化合物>
本開示の非水電解液は、式(3)で表される化合物を少なくとも1種含有してもよい。
【0039】
【0040】
式(3)中、R31~R34は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、式(a)で表される基、又は式(b)で表される基を表す。式(a)及び式(b)において、*は、結合位置を表す。
【0041】
式(3)中、R31~R34で表される炭素数1~6の炭化水素基の好ましい態様は、式(2)中、R21~R24で表される炭素数1~6の炭化水素基の好ましい態様と同様である。
R31~R34で表される炭素数1~6の炭化水素基の炭素数としては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0042】
式(3)の好ましい態様は、
R31が、炭素数1~6の炭化水素基、式(a)で表される基、又は式(b)で表される基(より好ましくは、式(a)で表される基又は式(b)で表される基)であり、
R32が、水素原子であり、
R33が、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、式(a)で表される基、又は式(b)で表される基であり、
R34が、水素原子である態様である。
【0043】
式(3)で表される化合物の具体例としては、下記式(3-1)~下記式(3-4)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物(3-1)~化合物(3-4)ともいう)が挙げられるが、式(3)で表される化合物は、これらの具体例には限定されない。
これらのうち、化合物(3-1)~化合物(3-3)が好ましく、化合物(3-1)又は化合物(3-2)がより好ましく、化合物(3-1)が更に好ましい。
【0044】
【0045】
本開示の非水電解液が式(3)で表される化合物を含有する場合、非水電解液の全量に対する式(3)で表される化合物の含有量としては、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.005質量%~5質量%がより好ましく、0.01質量%~2質量%が更に好ましく、0.1質量%~1質量%が更に好ましい。
【0046】
本開示の非水電解液が式(3)で表される化合物を含有する場合、式(3)で表される化合物の含有質量は、式(1)で表される化合物の含有質量よりも大きいことが好ましい。
この場合、式(1)で表される化合物の含有質量に対する式(3)で表される化合物の含有質量の比(以下、「含有質量比〔式(3)で表される化合物/式(1)で表される化合物〕」ともいう)は、好ましくは0.01~20であり、より好ましくは0.05~15であり、更に好ましくは0.1~10であり、更に好ましくは1.5~10であり、更に好ましくは2~10である。
【0047】
<式(4)で表される化合物>
本開示の非水電解液は、下記式(4)で表される化合物を少なくとも1種含有してもよい。
【0048】
【0049】
式(4)中、R41~R44は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。但し、R41~R44は、同時に水素原子となることはない。
【0050】
式(4)中、R41~R44で表される炭素数1~6の炭化水素基の好ましい態様は、式(2)中、R21~R24で表される炭素数1~6の炭化水素基と同様である。
但し、R41~R44で表される炭素数1~6の炭化水素基は、アルケニル基であることも好ましい。
R41~R44で表される炭素数1~6の炭化水素基の炭素数としては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0051】
式(4)中、R41~R44で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の好ましい態様は、式(2)中、R21~R24で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の好ましい態様と同様である。
但し、R41~R44で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基は、フッ化アルケニル基であることも好ましい。
R41~R44で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の炭素数としては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0052】
式(4)で表される化合物の具体例としては、下記式(4-1)~下記式(4-5)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物(4-1)~化合物(4-5)ともいう)が挙げられるが、式(4)で表される化合物は、これらの具体例には限定されない。
これらのうち、化合物(4-1)又は化合物(4-2)が特に好ましい。
【0053】
【0054】
本開示の非水電解液が式(4)で表される化合物を含有する場合、非水電解液の全量に対する式(4)で表される化合物の含有量としては、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.005質量%~5質量%がより好ましく、0.01質量%~2質量%が更に好ましく、0.1質量%~1質量%が特に好ましい。
【0055】
<式(5)で表される化合物>
本開示の非水電解液は、下記式(5)で表される化合物を少なくとも1種含有してもよい。
【0056】
【0057】
式(5)中、R51及びR52は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
【0058】
式(5)中、R51又はR52で表される炭素数1~6の炭化水素基の好ましい態様は、式(2)中、R21~R24で表される炭素数1~6の炭化水素基の好ましい態様と同様である。
R51又はR52で表される炭素数1~6の炭化水素基の炭素数としては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0059】
式(5)中、R51又はR52で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の好ましい態様は、式(2)中、R21~R24で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の好ましい態様と同様である。
R51又はR52で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の炭素数としては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0060】
式(5)で表される化合物の具体例としては、下記式(5-1)~下記式(5-11)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物(5-1)~化合物(5-11)ともいう)が挙げられるが、式(5)で表される化合物は、これらの具体例には限定されない。
これらのうち、化合物(5-1)が特に好ましい。
【0061】
【0062】
本開示の非水電解液が式(5)で表される化合物を含有する場合、非水電解液の全量に対する式(5)で表される化合物の含有量としては、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.005質量%~5質量%がより好ましく、0.01質量%~2質量%が更に好ましく、0.1質量%~1質量%が特に好ましい。
【0063】
本開示の非水電解液が式(5)で表される化合物を含有する場合、
式(1)で表される化合物の含有質量に対する式(5)で表される化合物の含有質量の比(以下、「含有質量比〔式(5)で表される化合物/式(1)で表される化合物〕」ともいう)は、好ましくは0.01~20であり、より好ましくは0.05~15であり、更に好ましくは0.1~10であり、更に好ましくは0.2~5であり、更に好ましくは0.3~3である。
【0064】
<式(6)で表される化合物>
本開示の非水電解液は、下記式(6)で表される化合物を少なくとも1種含有してもよい。
【0065】
【0066】
式(6)中、R61~R63は、それぞれ独立に、フッ素原子又は-OLi基を表し、R61~R63の少なくとも1つが-OLi基である。
【0067】
式(6)で表される化合物の具体例としては、下記式(6-1)及び下記式(6-2)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物(6-1)及び化合物(6-2)ともいう)が挙げられるが、式(6)で表される化合物は、これらの具体例には限定されない。
【0068】
【0069】
本開示の非水電解液が式(6)で表される化合物を含有する場合、非水電解液の全量に対する式(6)で表される化合物の含有量としては、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.005質量%~5質量%がより好ましく、0.01質量%~2質量%が更に好ましく、0.1質量%~1質量%が特に好ましい。
【0070】
本開示の非水電解液が式(6)で表される化合物を含有する場合、式(6)で表される化合物の含有質量は、式(1)で表される化合物の含有質量よりも大きいことが好ましい。
この場合、式(1)で表される化合物の含有質量に対する式(6)で表される化合物の含有質量の比(以下、「含有質量比〔式(6)で表される化合物/式(1)で表される化合物〕」ともいう)は、好ましくは0.01~20であり、より好ましくは0.05~15であり、更に好ましくは0.1~10であり、更に好ましくは1.1~10であり、更に好ましくは1.2~5である。
【0071】
<式(7)で表される化合物>
本開示の非水電解液は、下記式(7)で表される化合物を少なくとも1種含有してもよい。
【0072】
【0073】
式(7)中、R71~R76は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は炭素数1~3のフッ化炭化水素基を表す。
【0074】
式(7)中、R71~R76で表される炭素数1~3の炭化水素基の好ましい態様は、炭素数が1~3であることを除けば、式(2)中、R21~R24で表される炭素数1~6の炭化水素基の好ましい態様と同様である。
R71~R76で表される炭素数1~3の炭化水素基の炭素数としては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0075】
式(7)中、R71~R76で表される炭素数1~3のフッ化炭化水素基の好ましい態様は、炭素数が1~3であることを除けば、式(2)中、R21~R24で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の好ましい態様と同様である。
R71~R76で表される炭素数1~3のフッ化炭化水素基の炭素数としては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0076】
式(7)で表される化合物の具体例としては、下記式(7-1)~下記式(7-21)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物(7-1)~化合物(7-21)ともいう)が挙げられるが、式(7)で表される化合物は、これらの具体例には限定されない。
これらのうち、化合物(7-1)が特に好ましい。
【0077】
【0078】
本開示の非水電解液が式(7)で表される化合物を含有する場合、非水電解液の全量に対する式(7)で表される化合物の含有量としては、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.005質量%~5質量%がより好ましく、0.01質量%~2質量%が更に好ましく、0.1質量%~1質量%が特に好ましい。
【0079】
<式(8)で表される化合物>
本開示の非水電解液は、下記式(8)で表される化合物を少なくとも1種含有してもよい。
【0080】
【0081】
式(8)中、R81~R84は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は炭素数1~3のフッ化炭化水素基を表す。
【0082】
式(8)中、R81~R84で表される炭素数1~3の炭化水素基の好ましい態様は、炭素数が1~3であることを除けば、式(2)中、R21~R24で表される炭素数1~6の炭化水素基の好ましい態様と同様である。
R81~R84で表される炭素数1~3の炭化水素基の炭素数としては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0083】
式(8)中、R81~R84で表される炭素数1~3のフッ化炭化水素基の好ましい態様は、炭素数が1~3であることを除けば、式(2)中、R21~R24で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の好ましい態様と同様である。
R81~R84で表される炭素数1~3のフッ化炭化水素基の炭素数としては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0084】
式(8)で表される化合物の具体例としては、下記式(8-1)~下記式(8-21)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物(8-1)~化合物(8-21)ともいう)が挙げられるが、式(8)で表される化合物は、これらの具体例には限定されない。
これらのうち、化合物(8-1)が特に好ましい。
【0085】
【0086】
本開示の非水電解液が式(8)で表される化合物を含有する場合、非水電解液の全量に対する式(8)で表される化合物の含有量としては、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.005質量%~5質量%がより好ましく、0.01質量%~2質量%が更に好ましく、0.1質量%~1質量%が特に好ましい。
【0087】
<式(9)で表される化合物>
本開示の非水電解液は、下記式(9)で表される化合物を少なくとも1種含有してもよい。
【0088】
【0089】
式(9)中、Mは、アルカリ金属を表し、Yは、遷移元素、又は周期律表の13族、14族もしくは15族元素を表し、bは1~3の整数、mは1~4の整数、nは0~8の整数、qは0又は1を表す。R91は、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のハロゲン化アルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリーレン基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、またqが1でmが2~4の場合にはm個のR91はそれぞれが結合していてもよい。)を表し、R92は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン化アリール基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、また、nが2~8の場合はn個のR92はそれぞれが結合して環を形成していてもよい。)、又は-X3R93を表す。X1、X2及びX3は、それぞれ独立に、O、SまたはNR94を表し、R93およびR94は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリール基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、R93またはR94が複数個存在する場合はそれぞれが結合して環を形成してもよい。)を表す。
【0090】
式(9)において、Mは、アルカリ金属であり、Yは、遷移金属、又は周期表の13族、14族もしくは15族元素である。Yとしては、このうちAl、B、V、Ti、Si、Zr、Ge、Sn、Cu、Y、Zn、Ga、Nb、Ta、Bi、P、As、Sc、Hf又はSbであることが好ましく、Al、BまたはPであることがより好ましい。YがAl、BまたはPの場合には、アニオン化合物の合成が比較的容易になり、製造コストを抑えることができる。アニオンの価数およびカチオンの個数を表すbは1~3の整数であり、1であることが好ましい。bが3より大きい場合は、アニオン化合物の塩が混合有機溶媒に溶解しにくくなる傾向があるので好ましくない。また、定数m、nは、配位子の数に関係する値であり、Mの種類によって決まってくるものであるが、mは1~4の整数、nは0~8の整数である。定数qは、0または1である。qが0の場合には、キレートリングが五員環となり、qが1の場合にはキレートリングが六員環となる。
【0091】
R91は、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のハロゲン化アルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基又は炭素数6~20のハロゲン化アリーレン基を表す。これらのアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基又はハロゲン化アリーレン基はその構造中に置換基、ヘテロ原子を含んでいてもよい。具体的には、これらの基の水素原子の代わりに、ハロゲン原子、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホニル基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、アシル基、アミド基、又は水酸基を置換基として含んでいてもよい。また、これらの基の炭素元素の代わりに、窒素原子、硫黄原子、又は酸素原子が導入された構造であってもよい。また、qが1でmが2~4のときには、m個のR91はそれぞれが結合していてもよい。そのような例としては、エチレンジアミン四酢酸のような配位子を挙げることができる。
【0092】
R92は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン化アリール基又は-X3R93(X3、R93については後述する。)を表す。
R92におけるこれらのアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基又はハロゲン化アリール基は、R91と同様に、その構造中に置換基、ヘテロ原子を含んでいてもよく、また、nが2~8のときにはn個のR12は、それぞれ結合して環を形成してもよい。R92としては、電子吸引性の基が好ましく、特にフッ素原子が好ましい。
【0093】
X1、X2及びX3は、それぞれ独立に、O、SまたはNR94を表す。つまり、配位子はこれらヘテロ原子を介してYに結合することになる。
【0094】
R93及びR94は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素集6~20のハロゲン化アリール基を表す。これらのアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、又はハロゲン化アリール基は、R91と同様に、その構造中に置換基、ヘテロ原子を含んでいてもよい。また、R93及びR94は複数個存在する場合にはそれぞれが結合して環を形成してもよい。
【0095】
Mで表されるアルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。このうち、リチウムが特に好ましい。
nとしては、0~4の整数が好ましい。
【0096】
式(9)で表される化合物としては、下記式(9A)で表される化合物、下記式(9B)で表される化合物、下記式(9C)で表される化合物、下記式(9D)で表される化合物、及び下記式(9E)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0097】
【0098】
式(9A)~式(9E)中、Mは、式(9)におけるMと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0099】
式(9)で表される化合物として、特に好ましくは、式(9A)で表される化合物であってMがリチウムである化合物、又は、式(9D)で表される化合物であってMがリチウムである化合物である。
【0100】
本開示の非水電解液が式(9)で表される化合物を含有する場合、非水電解液の全量に対する式(8)で表される化合物の含有量としては、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.005質量%~5質量%がより好ましく、0.01質量%~2質量%が更に好ましく、0.1質量%~1質量%が特に好ましい。
【0101】
本開示の非水電解液は、電池抵抗低減の効果をより効果的に得る観点から、上記式(2)~上記(9)で表される化合物のうち、
式(3)で表される化合物及び式(6)で表される化合物の少なくとも一方を含有することがより好ましく、
式(3)で表される化合物と式(6)で表される化合物とを含有することが更に好ましく、
式(3)で表される化合物と、式(6)で表される化合物と、式(5)で表される化合物と、を含有することが更に好ましい。
【0102】
本開示の非水電解液が、式(3)で表される化合物と式(6)で表される化合物とを含有する場合(更に式(5)で表される化合物で表される化合物を含有する場合を含む。以下同じ。)、
式(3)で表される化合物の含有質量が、式(1)で表される化合物の含有質量よりも大きく、
式(6)で表される化合物の含有質量が、式(1)で表される化合物の含有質量よりも大きいことが好ましい。
【0103】
本開示の非水電解液が、式(3)で表される化合物と式(6)で表される化合物とを含有する場合、含有質量比〔式(3)で表される化合物/式(1)で表される化合物〕は、好ましくは0.01~20であり、より好ましくは0.05~15であり、更に好ましくは0.1~10であり、更に好ましくは1.5~10であり、更に好ましくは2~10であり、更に好ましくは3~7である。
また、この場合、式(1)で表される化合物の含有質量に対する式(6)で表される化合物の含有質量の比(以下、「含有質量比〔式(6)で表される化合物/式(1)で表される化合物〕」ともいう)は、好ましくは0.01~20であり、より好ましくは0.05~15であり、更に好ましくは0.1~10であり、更に好ましくは1.1~10であり、更に好ましくは1.2~5であり、更に好ましくは1.5~3.5である。
【0104】
本開示の非水電解液が、式(3)で表される化合物と式(6)で表される化合物とを含有する場合、式(3)で表される化合物の含有質量が、式(6)で表される化合物の含有質量よりも大きいことが好ましい。
式(6)で表される化合物の含有質量に対する式(3)で表される化合物の含有質量の比(以下、「含有質量比〔式(3)で表される化合物/式(6)で表される化合物〕」ともいう)は、好ましくは0.01~20であり、より好ましくは0.05~15であり、更に好ましくは0.1~10であり、更に好ましくは1.1~5であり、更に好ましくは1.1~4である。
【0105】
本開示の非水電解液が、式(3)で表される化合物と、式(6)で表される化合物と、式(5)で表される化合物と、を含有する場合、含有質量比〔式(5)で表される化合物/式(1)で表される化合物〕は、好ましくは0.01~20であり、より好ましくは0.05~15であり、更に好ましくは0.1~10であり、更に好ましくは0.2~5であり、更に好ましくは0.3~3である。
この場合、式(3)で表される化合物の含有質量が、式(5)で表される化合物の含有質量よりも大きいことが好ましい。
式(5)で表される化合物の含有質量に対する式(3)で表される化合物の含有質量の比(以下、「含有質量比〔式(3)で表される化合物/式(5)で表される化合物〕」ともいう)は、好ましくは0.05~20であり、より好ましくは0.1~10であり、更に好ましくは1.5~10であり、更に好ましくは3~7である。
【0106】
次に、非水電解液の他の成分について説明する。非水電解液は、一般的には、電解質と非水溶媒とを含有する。
【0107】
<電解質>
本開示の非水電解液は、電解質を含有する。
電解質は、リチウム塩を含むことが好ましく、LiPF6を含むことがより好ましい。
電解質がLiPF6を含む場合、電解質中に占めるLiPF6の比率は、好ましくは10質量%~100質量%、より好ましくは50質量%~100質量%、さらに好ましくは70質量%~100質量%である。
【0108】
本開示の非水電解液における電解質の濃度は、0.1mol/L~3mol/Lが好ましく、0.5mol/L~2mol/Lがより好ましい。
また、本開示の非水電解液におけるLiPF6の濃度は、0.1mol/L~3mol/Lが好ましく、0.5mol/L~2mol/Lがより好ましい。
【0109】
電解質がLiPF6を含む場合、電解質は、LiPF6以外の化合物を含んでいてもよい。
LiPF6以外の化合物としては;
(C2H5)4NPF6、(C2H5)4NBF4、(C2H5)4NClO4、(C2H5)4NAsF6、(C2H5)4N2SiF6、(C2H5)4NOSO2CkF(2k+1)(k=1~8の整数)、(C2H5)4NPFn[CkF(2k+1)](6-n)(n=1~5、k=1~8の整数)などのテトラアルキルアンモニウム塩;
LiBF4、LiClO4、LiAsF6、Li2SiF6、LiOSO2CkF(2k+1)(k=1~8の整数)、LiPFn[CkF(2k+1)](6-n)(n=1~5、k=1~8の整数)、LiC(SO2R7)(SO2R8)(SO2R9)、LiN(SO2OR10)(SO2OR11)、LiN(SO2R12)(SO2R13)(ここでR7~R13は互いに同一でも異なっていてもよく、フッ素原子又は炭素数1~8のパーフルオロアルキル基である)等のリチウム塩(即ち、LiPF6以外のリチウム塩);
等が挙げられる。
【0110】
<非水溶媒>
本開示の非水電解液は、非水溶媒を含有する。
非水電解液に含有される非水溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
非水溶媒としては、種々公知のものを適宜選択することができる。
非水溶媒としては、例えば、特開2017-45723号公報の段落0069~0087に記載の非水溶媒を用いることができる。
【0111】
非水溶媒は、環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物を含むことが好ましい。
この場合、非水溶媒に含まれる環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物は、それぞれ、1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
【0112】
環状カーボネート化合物としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート等が挙げられる。
これらのうち、誘電率が高い、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートが好適である。黒鉛を含む負極活物質を使用した電池の場合は、非水溶媒は、エチレンカーボネートを含むことがより好ましい。
【0113】
鎖状カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、メチルペンチルカーボネート、エチルペンチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、メチルヘプチルカーボネート、エチルヘプチルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、メチルヘキシルカーボネート、エチルヘキシルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、メチルオクチルカーボネート、エチルオクチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、等が挙げられる。
【0114】
環状カーボネートと鎖状カーボネートの組み合わせとして、具体的には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネートなどが挙げられる。
【0115】
環状カーボネート化合物と鎖状カーボネート化合物の混合割合は、質量比で表して、環状カーボネート化合物:鎖状カーボネート化合物が、例えば5:95~80:20、好ましくは10:90~70:30、更に好ましくは15:85~55:45である。このような比率にすることによって、非水電解液の粘度上昇を抑制し、電解質の解離度を高めることができるため、電池の充放電特性に関わる非水電解液の伝導度を高めることができる。また、電解質の溶解度をさらに高めることができる。よって、常温または低温での電気伝導性に優れた非水電解液とすることができるため、常温から低温での電池の負荷特性を改善することができる。
【0116】
非水溶媒は、環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物以外のその他の化合物を含んでいてもよい。
この場合、非水溶媒に含まれるその他の化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
その他の化合物としては、環状カルボン酸エステル化合物(例えばγブチロラクトン)、環状スルホン化合物、環状エーテル化合物、鎖状カルボン酸エステル化合物、鎖状エーテル化合物、鎖状リン酸エステル化合物、アミド化合物、鎖状カーバメート化合物、環状アミド化合物、環状ウレア化合物、ホウ素化合物、ポリエチレングリコール誘導体、等が挙げられる。
これらの化合物については、特開2017-45723号公報の段落0069~0087の記載を適宜参照できる。
【0117】
非水溶媒中に占める、環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物の割合は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは95質量%以上である。
非水溶媒中に占める、環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物の割合は、100質量%であってもよい。
【0118】
非水電解液中に占める非水溶媒の割合は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。
非水電解液中に占める非水溶媒の割合の上限は、他の成分(電解質、添加剤等)の含有量にもよるが、上限は、例えば99質量%であり、好ましくは97質量%であり、更に好ましくは90質量%である。
【0119】
〔リチウム二次電池〕
本開示のリチウム二次電池は、
リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を正極活物質として含む正極と、
負極と、
前述した本開示の非水電解液と、
を備える。
本開示のリチウム二次電池は、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を正極活物質として含むリチウム二次電池でありながら、電池抵抗が低減されている。
かかる効果は、非水電解液中の式(1)で表される化合物によってもたらされる効果である。
【0120】
<正極>
正極は、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を正極活物質として含む。
リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物としては、下記式(P1)で表される化合物が好ましい。
【0121】
LiNixMnyCozO2 … (P1)
〔式(P1)中、x、y及びzは、それぞれ独立に、0超1.00未満であり、かつ、x、y及びzの合計は、0.99~1.00である。〕
【0122】
式(P1)中、xは、好ましくは0.10~0.90であり、より好ましくは0.30~0.90であり、更に好ましくは0.50~0.90であり、更に好ましくは0.50超0.90以下であり、更に好ましくは0.55~0.90であり、更に好ましくは0.60~0.80である。
式(P1)中、yは、好ましくは0.10~0.90であり、より好ましくは0.10~0.50であり、更に好ましくは0.20~0.40である。
式(P1)中、zは、好ましくは0.10~0.90であり、より好ましくは0.10~0.50であり、更に好ましくは0.10~0.30である。
【0123】
式(P1)で表される化合物としては、LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、又はLiNi0.8Mn0.1Co0.1O2が好ましく、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、又はLiNi0.8Mn0.1Co0.1O2がより好ましく、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2又はLiNi0.8Mn0.1Co0.1O2が更に好ましい。
【0124】
正極は、正極活物質として、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物以外の成分を含んでいてもよい。
リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物以外の成分としては;
MoS2、TiS2、MnO2、V2O5などの遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物;
LiCoO2、LiMnO2、LiMn2O4、LiNiO2、LiNiXCo(1-X)O2〔0<X<1〕、LiFePO4、LiMnPO4などの、リチウムと遷移金属とからなる複合酸化物(但し、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を除く);
ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアセン、ジメルカプトチアジアゾール、ポリアニリン複合体などの導電性高分子材料;
等が挙げられる。
【0125】
正極活物質中に占めるリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物の割合は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
正極活物質中に占めるリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物の割合は、100質量%であってもよいし、100質量%未満であってもよい。
【0126】
正極は、好ましくは、正極活物質を含む正極活物質層を備える。
正極活物質層は、正極活物質以外の成分を含んでいてもよい。
正極活物質以外の成分としては、導電性助剤、バインダー、等が挙げられる。
導電性助剤としては、カーボンブラック(例えばアセチレンブラック)、アモルファスウィスカー、グラファイトなどの炭素材料が挙げられる。
バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
【0127】
正極活物質層は、正極活物質と溶媒とを含む正極合剤スラリーを、後述する正極集電体上に塗布し、乾燥させることによって形成され得る。
正極合剤スラリーは、正極活物質以外の成分(例えば、導電性助剤、バインダー等)を含んでいてもよい。
正極合剤スラリーにおける溶媒としては、例えば、N-メチルピロリドン等の有機溶剤が挙げられる。
【0128】
正極活物質層の全固形分に占める正極活物質の割合は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
正極活物質層の全固形分に占める正極活物質の割合は、100質量%であってもよい。
ここで、正極活物質層の全固形分とは、正極活物質層に溶媒が残存している場合には、正極活物質層から溶媒を除いた全量を意味し、正極活物質層に溶媒が残存していない場合には、正極活物質層の全量を意味する。
【0129】
正極活物質層の全固形分に占めるリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物の割合は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
正極活物質層の全固形分に占めるリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物の割合は、100質量%であってもよいし、100質量%未満であってもよい。
【0130】
正極は、好ましくは正極集電体を含む。
正極集電体の材質には特に制限はなく、公知のものを任意に用いることができる。
正極集電体の具体例としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、タンタルなどの金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパーなどの炭素材料;等が挙げられる。
【0131】
<負極>
負極は、好ましくは負極活物質を含む。
負極活物質としては、例えば、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属若しくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
リチウム(又はリチウムイオン)との合金化が可能な金属もしくは合金としては、シリコン、シリコン合金、スズ、スズ合金などを挙げることができる。
また、負極活物質としては、チタン酸リチウムも挙げられる。
これらの中でも、リチウムイオンをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料が好ましい。
このような炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、黒鉛材料(人造黒鉛、天然黒鉛)、非晶質炭素材料、等が挙げられる。上記炭素材料の形態は、繊維状、球状、ポテト状、フレーク状のいずれの形態であってもよい。
【0132】
上記非晶質炭素材料として具体的には、ハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチカーボンファイバー(MCF)などが例示される。
上記黒鉛材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。人造黒鉛としては、黒鉛化MCMB、黒鉛化MCFなどが用いられる。また、黒鉛材料としては、ホウ素を含有するものなども用いることができる。また、黒鉛材料としては、金、白金、銀、銅、スズなどの金属で被覆したもの、非晶質炭素で被覆したもの、非晶質炭素と黒鉛を混合したものも使用することができる。
【0133】
これらの炭素材料は、1種類で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
上記炭素材料としては、特にX線解析で測定した(002)面の面間隔d(002)が0.340nm以下の炭素材料が好ましい。また、炭素材料としては、真密度が1.70g/cm3以上である黒鉛又はそれに近い性質を有する高結晶性炭素材料も好ましい。以上のような炭素材料を使用すると、電池のエネルギー密度をより高くすることができる。
【0134】
負極活物質中に占める炭素材料(好ましくは黒鉛材料)の割合は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
負極活物質中に占める炭素材料(好ましくは黒鉛材料)の割合は、100質量%であってもよいし、100質量%未満であってもよい。
【0135】
負極は、好ましくは、負極活物質を含む負極活物質層を備える。
負極活物質層は、負極活物質以外の成分を含んでいてもよい。
負極活物質以外の成分としては、バインダーが挙げられる。
バインダーとしては、カルボキシメチルセルロース、SBRラテックス等が挙げられる。
【0136】
負極活物質層は、負極活物質と溶媒とを含む負極合剤スラリーを、後述する負極集電体上に塗布し、乾燥させることによって形成され得る。
負極合剤スラリーは、負極活物質以外の成分(例えばバインダー)を含んでいてもよい。
負極合剤スラリーにおける溶媒としては、例えば、水が挙げられる。
【0137】
負極活物質層の全固形分に占める負極活物質の割合は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
負極活物質層の全固形分に占める負極活物質の割合は、100質量%であってもよい。
ここで、負極活物質層の全固形分とは、負極活物質層に溶媒が残存している場合には、負極活物質層から溶媒を除いた全量を意味し、負極活物質層に溶媒が残存していない場合には、負極活物質層の全量を意味する。
【0138】
負極活物質層の全固形分に占める炭素材料(好ましくは黒鉛材料)の割合は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
負極活物質層の全固形分に占める炭素材料(好ましくは黒鉛材料)の割合は、100質量%であってもよい。
【0139】
負極は、好ましくは負極集電体を含む。
負極集電体の材質には特に制限はなく、公知のものを任意に用いることができる。
負極集電体の具体例としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられる。中でも、加工しやすさの点から特に銅が好ましい。
【0140】
<セパレータ>
本開示のリチウム二次電池は、負極と正極との間にセパレータを備えることが好ましい。
セパレータは、正極と負極とを電気的に絶縁し且つリチウムイオンを透過する膜であって、多孔性膜や高分子電解質が例示される。
多孔性膜としては微多孔性高分子フィルムが好適に使用され、材質としてポリオレフィン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル等が例示される。
特に、多孔性ポリオレフィンが好ましく、具体的には多孔性ポリエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルム、又は多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとの多層フィルムを例示することができる。多孔性ポリオレフィンフィルム上には、熱安定性に優れる他の樹脂がコーティングされてもよい。
高分子電解質としては、リチウム塩を溶解した高分子や、電解液で膨潤させた高分子等が挙げられる。
本開示の非水電解液は、高分子を膨潤させて高分子電解質を得る目的で使用してもよい。
【0141】
<電池の構成>
本開示のリチウム二次電池は、種々公知の形状をとることができ、円筒型、コイン型、角型、ラミネート型、フィルム型その他任意の形状に形成することができる。しかし、電池の基本構造は、形状によらず同じであり、目的に応じて設計変更を施すことができる。
【0142】
本開示のリチウム二次電池の例として、ラミネート型電池が挙げられる。
図1は、本開示のリチウム二次電池の一例であるラミネート型電池の一例を示す概略斜視図であり、
図2は、
図1に示すラミネート型電池に収容される積層型電極体の厚さ方向の概略断面図である。
図1に示すラミネート型電池は、内部に非水電解液(
図1中では不図示)及び積層型電極体(
図1中では不図示)が収納され、且つ、周縁部が封止されることにより内部が密閉されたラミネート外装体1を備える。ラミネート外装体1としては、例えばアルミニウム製のラミネート外装体が用いられる。
ラミネート外装体1に収容される積層型電極体は、
図2に示されるように、正極板5と負極板6とがセパレータ7を介して交互に積層されてなる積層体と、この積層体の周囲を囲むセパレータ8と、を備える。正極板5、負極板6、セパレータ7、及びセパレータ8には、本開示の非水電解液が含浸されている。正極板5は、正極集電体及び正極活物質層とを含む。負極板5は、負極集電体及び負極活物質層とを含む。
上記積層型電極体における複数の正極板5は、いずれも正極タブを介して正極端子2と電気的に接続されており(不図示)、この正極端子2の一部が上記ラミネート外装体1の周端部から外側に突出している(
図1)。ラミネート外装体1の周端部において正極端子2が突出する部分は、絶縁シール4によってシールされている。
同様に、上記積層型電極体における複数の負極板6は、いずれも負極タブを介して負極端子3と電気的に接続されており(不図示)、この負極端子3の一部が上記ラミネート外装体1の周端部から外側に突出している(
図1)。ラミネート外装体1の周端部において負極端子3が突出する部分は、絶縁シール4によってシールされている。
なお、上記一例に係るラミネート型電池では、正極板5の数が5枚、負極板6の数が6枚となっており、正極板5と負極板6とがセパレータ7を介し、両側の最外層がいずれも負極板6となる配置で積層されている。しかし、ラミネート型電池における、正極板の数、負極板の数、及び配置については、この一例には限定されず、種々の変更がなされてもよいことは言うまでもない。
【0143】
本開示のリチウム二次電池の別の一例として、コイン型電池も挙げられる。
図3は、本開示のリチウム二次電池の別の一例であるコイン型電池の一例を示す概略斜視図である。
図3に示すコイン型電池では、円盤状負極12、非水電解液を注入したセパレータ15、円盤状正極11、必要に応じて、ステンレス、又はアルミニウムなどのスペーサー板17、18が、この順序に積層された状態で、正極缶13(以下、「電池缶」ともいう)と封口板14(以下、「電池缶蓋」ともいう)との間に収納される。正極缶13と封口板14とはガスケット16を介してかしめ密封する。
この一例では、セパレータ15に注入される非水電解液として、本開示の非水電解液を用いる。円盤状正極11は、正極集電体及び正極活物質層を含む。円盤状負極12は、負極集電体及び負極活物質層を含む。
【0144】
なお、本開示のリチウム二次電池は、正極と、負極と、本開示の非水電解液と、を備えるリチウム二次電池(充放電前のリチウム二次電池)を、充放電させて得られたリチウム二次電池であってもよい。
即ち、本開示のリチウム二次電池は、まず、正極と、負極と、本開示の非水電解液と、を備える充放電前のリチウム二次電池を作製し、次いで、この充放電前のリチウム二次電池を1回以上充放電させることによって作製されたリチウム二次電池(充放電されたリチウム二次電池)であってもよい。
【0145】
本開示のリチウム二次電池の用途は特に限定されず、種々公知の用途に用いることができる。例えば、ノート型パソコン、モバイルパソコン、携帯電話、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、電子手帳、電卓、ラジオ、バックアップ電源用途、モーター、自動車、電気自動車、バイク、電動バイク、自転車、電動自転車、照明器具、ゲーム機、時計、電動工具、カメラ等、小型携帯機器、大型機器を問わず広く利用可能なものである。
【実施例】
【0146】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例によって制限されるものではない。
なお、以下の実施例において、「添加量」は、最終的に得られる非水電解液の全量に対する含有量を表す。
また、「wt%」は、質量%を意味する。
【0147】
〔実施例1〕
以下の手順にて、
図3に示す構成を有するコイン型のリチウム二次電池(以下、「コイン型電池」とも称する)を作製した。
【0148】
<正極の作製>
正極活物質としてのLiNi0.5Mn0.3Co0.2O2(90質量部)、導電性助剤としてのアセチレンブラック(5質量部)、及び、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(5質量部)を、N-メチルピロリジノンを溶媒として混練してペースト状の正極合剤スラリーを調製した。
次に、この正極合剤スラリーを、厚さ20μmの帯状アルミ箔の正極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して正極集電体と正極活物質とからなるシート状の正極を得た。このときの正極活物質層の塗布密度は22mg/cm2であり、充填密度は2.5g/mLであった。
【0149】
ここで、正極活物質としてのLiNi0.5Mn0.3Co0.2O2は、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物の具体例である。
以下、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2を、NMC532と称する。
【0150】
<負極の作製>
負極活物質としてのアモルファスコート天然黒鉛(97質量部)、バインダーとしてのカルボキシメチルセルロース(1質量部)、及び、バインダーとしてのSBRラテックス(2質量部)を水溶媒で混練してペースト状の負極合剤スラリーを調製した。
次に、この負極合剤スラリーを厚さ10μmの帯状銅箔製の負極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して負極集電体と負極活物質層からなるシート状の負極を得た。このときの負極活物質層の塗布密度は12mg/cm2であり、充填密度は1.5g/mLであった。
【0151】
<非水電解液の調製>
非水溶媒として、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とメチルエチルカーボネート(EMC)とをそれぞれ30:35:35(質量比)の割合で混合し、混合溶媒を得た。
得られた混合溶媒中に、電解質としてのLiPF6を、最終的に調製される非水電解液中における電解質濃度が1モル/リットルとなるように溶解させた。
得られた溶液に対して、添加剤として、式(1)で表される化合物(以下、「式(1)化合物」ともいう)の具体例であるDCC(N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド;R11及びR12がいずれもシクロヘキシル基である化合物)を、最終的に調製される非水電解液全質量に対する含有量が0.5質量%となるように添加し(即ち、添加量0.5質量%にて添加し)、非水電解液を得た。
【0152】
<コイン型電池の作製>
上述の負極を直径14mmで、上述の正極を直径13mmで、それぞれ円盤状に打ち抜き、コイン状の負極及びコイン状の正極をそれぞれ得た。また、厚さ20μmの微多孔性ポリエチレンフィルムを直径17mmの円盤状に打ち抜き、セパレータを得た。
得られたコイン状の負極、セパレータ、及びコイン状の正極を、この順序でステンレス製の電池缶(2032サイズ)内に積層し、次いで、この電池缶内に非水電解液20μLを注入し、セパレータと正極と負極とに含漬させた。
次に、正極上にアルミニウム製の板(厚さ1.2mm、直径16mm)及びバネを乗せ、ポリプロピレン製のガスケットを介して、電池缶蓋をかしめることにより電池を密封した。
以上により、直径20mm、高さ3.2mmの
図3で示す構成を有するコイン型電池(即ち、コイン型のリチウム二次電池)を得た。
【0153】
<評価>
得られたコイン型電池について、以下の電池抵抗の評価を実施した。
評価結果を表1に示す。
表1では、実施例1における電池抵抗を、後述の比較例1における値を100とした場合の相対値として示す。
【0154】
(電池抵抗の評価)
上記コイン型電池に対し、恒温槽内で25℃にて、2.75Vと4.25Vとの間で充放電を三回繰り返した(以下、この操作を「コンディショニング」ともいう)。
コンディショニング後のコイン型電池のSOC(State of Charge)を80%に調整し、次いで、以下の方法により、コイン型電池の電池抵抗(直流抵抗)を測定した。
上述のSOC80%に調整されたコイン型電池を用い、放電レート0.2CでのCC10s放電、300秒間の休止、放電レート1CでのCC10s放電、300秒間の休止、放電レート2CでのCC10s放電、300秒間の休止、及び、放電レート5CでのCC10s放電をこの順に行った。
なお、CC10s放電とは、定電流(Constant Current)にて10秒間放電することを意味する。
各放電レートと、各放電レートでの放電開始後10秒目の電圧と、の関係に基づき直流抵抗を求め、得られた直流抵抗(Ω)を、コイン型電池の電池抵抗(Ω)とした。
【0155】
〔実施例2〕
DCCを、同質量のDIC(N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド)に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0156】
〔比較例1〕
非水電解液にDCCを含有させなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0157】
〔比較例2~4〕
NMC532を、同質量のLiCoO2(以下、「LCO」ともいう)に変更したこと以外は、比較例1、実施例1及び実施例2の各々と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
表1では、比較例3及び4における電池抵抗を、比較例2の電池抵抗を100とした場合の相対値として示す。
【0158】
【0159】
表1に示すように、正極活物質としてリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物であるNMC532を用い、かつ、非水電解液に式(1)で表される化合物を含有させた実施例1及び2では、非水電解液に式(1)で表される化合物を含有させなかった比較例1と比較して、電池抵抗が低減されていた。
表1の結果全体から、式(1)で表される化合物による電池抵抗低減の効果は、正極活物質としてリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を用いた場合に特に顕著であることがわかる。
【0160】
〔実施例101、実施例102、及び比較例101〕
非水電解液に含有させる添加剤の種類及び量を、表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
表2では、実施例101及び実施例102における電池抵抗を、それぞれ、比較例101の電池抵抗を100とした場合の相対値として示す。
実施例101、実施例102、及び比較例101で用いた各添加剤は、以下のとおりである。
DCC及びDICは、前述したとおり、式(1)化合物の具体例であり、
化合物(3-1)は、式(3)で表される化合物(以下、「式(3)化合物」ともいう)の具体例であり、
化合物(5-1)は、式(5)で表される化合物(以下、「式(5)化合物」ともいう)の具体例であり、
化合物(6-2)は、式(6)で表される化合物(以下、「式(6)化合物」ともいう)の具体例である。
【0161】
【0162】
【0163】
表2に示すように、正極活物質としてリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物であるNMC532を用い、かつ、非水電解液に、式(1)化合物、式(3)化合物、式(5)化合物、及び式(6)化合物を含有させた実施例101及び102では、非水電解液に式(1)化合物を含有させなかった比較例101と比較して、電池抵抗が低減されていた。
表1と表2との対比より、非水電解液が、式(3)化合物、式(5)化合物、及び式(6)化合物を含有する場合(表2)には、非水電解液がこれらの化合物を含有しない場合(表1)と比較して、式(1)化合物による電池抵抗の低減幅(即ち、改善幅)がより大きいことがわかる。
【符号の説明】
【0164】
1 ラミネート外装体
2 正極端子
3 負極端子
4 絶縁シール
5 正極板
6 負極板
7、8 セパレータ
11 正極
12 負極
13 正極缶
14 封口板
15 セパレータ
16 ガスケット
17、18 スペーサー板