(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】フラッシュハンドルを備える自動車のドアリーフの施錠システム
(51)【国際特許分類】
E05B 77/06 20140101AFI20221227BHJP
E05B 85/16 20140101ALI20221227BHJP
【FI】
E05B77/06 A
E05B85/16 D
(21)【出願番号】P 2020511229
(86)(22)【出願日】2018-08-20
(86)【国際出願番号】 EP2018072411
(87)【国際公開番号】W WO2019038220
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-07-09
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516180070
【氏名又は名称】ユーシン イタリア ソチエタ ペル アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】アントニー ゲラン
(72)【発明者】
【氏名】シアヴァッシュ オストヴァリ‐ファー
(72)【発明者】
【氏名】アントーニオ ロッチ
(72)【発明者】
【氏名】シモーヌ イラルド
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-89373(JP,A)
【文献】特表2012-527547(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0223263(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(10)ドアリーフの施錠システム(12)に関し、前記施錠システム(12)は、前縁(16)から後縁(18)まで垂直面内で長手方向に延びるドアリーフ(14)を備えており、フラッシュハンドル(24)は、少なくとも、
- ドアリーフ(14)に固定されているブラケット(26)と、
- 把持部(32)を備える把持レバー(30)と、
- 第1の阻止面(67)および第2の阻止面(84)を画定する伝達レバー(34)とを備えており、
前記把持レバー(30)は、前記把持部(32)が前記ドアリーフ(14)の外面(22)と同一面上にある少なくとも1つの休止位置と、前記ドアリーフ(14)の外面(22)に対して前記把持部(32)が突出している作動位置と、前記把持レバー(30)が前記ドアリーフ(14)を解錠する開位置との間で、第1の回転軸(B)の周りを前記ブラケット(26)に対して回転可能に取り付けられ、
前記伝達レバー(34)は、休止位置と、前記伝達レバー(34)が前記ドアリーフ(14)の解錠を作動させる作動位置との間で、前記把持レバー(30)の前記第1の回転軸(B)と直交する第2の回転軸(C)の周りに前記ブラケット(26)に対して枢動可能に取り付けられ、前記伝達レバー(34)は、前記把持レバー(30)によって回転駆動させられており、
前記施錠システムは、
- 前記ブラケット(26)に取り付けられ、第1の慣性質量(64)を支える第1のロッカー(58)を含む第1の可逆的慣性安全システム(28)と、
- 前記ブラケット(26)に取り付けられ、第2の慣性質量(80)を支える第2のロッカー(74)を含む第2の不可逆的慣性安全システム(72)とを含んでおり、
前記第1のロッカー(58)は、第1の阻止フィンガ(66)を含み、休止位置と、衝撃が生じた場合に、前記第1の阻止フィンガ(66)が前記伝達レバー(
34)の回転を防止する阻止位置との間で、前記伝達レバー(34)の前記第2の回転軸(C)とほぼ直交する第3の旋回軸(D)の周りに、枢動可能に取り付けられており、
前記第2のロッカー(74)は、第2の阻止フィンガ(82)を含み、前記第2の阻止フィンガ(82)は、休止位置と、衝撃が生じた場合に、前記第2の阻止フィンガ(82)が前記伝達レバー(
34)の回転を防止する阻止位置との間で、前記第1のロッカー(58)の前記第3の旋回軸(D)とほぼ平行な第4の旋回軸(E)の周りに、枢動可能に取り付けられていることを特徴とする自動車ドアリーフの施錠システム(12)。
【請求項2】
前記第1のロッカー(58)の前記第3の旋回軸(D)および前記第2のロッカー(74)の前記第4の旋回軸(E)は、垂直方向に沿ってほぼ平行であることを特徴とする請求項1に記載の自動車ドアリーフの施錠システム(12)。
【請求項3】
前記伝達レバー(34)の前記回転軸(C)は、前記把持レバー(30)の前記回転軸(B)に対して横方向、直角方向に伸びていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車ドアリーフの施錠システム(12)。
【請求項4】
衝撃が生じた場合に、前記第1の慣性質量(64)の加速度が第1の値の範囲内にあると、前記第1のロッカー(58)は、その休止位置から阻止位置まで駆動し、衝撃が生じた場合に、前記第2の慣性質量(80)の加速度が第2の値の範囲内にあると、前記第2のロッカー(74)は、その休止位置から阻止位置まで駆動させられることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の自動車ドアリーフの施錠システム(12)。
【請求項5】
前記把持部(32)は、後端部(44)と前記ドアリーフ(14)の中央部(20)の向かい側に配置された前端部(42)とによって長手方向に画定されており、前記第1の慣性質量(64)および前記第2の慣性質量(80)はそれぞれ、前記把持部(32)の前記前端部(42)の前方で、長手方向に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の自動車ドアリーフの施錠システム(12)。
【請求項6】
前記把持レバー(30)の前記回転軸(B)は、通常、前記把持部(32)の前端部(42)の前方で、垂直に延在し、前記慣性質量(64)、(80)は、前記把持レバー(30)の前記回転軸(B)の前方で、長手方向に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の自動車ドアリーフの施錠システム(12)。
【請求項7】
各慣性質量(64)、(80)は、前記ドアリーフ(14)の中央部(20)と前記把持レバー(30)の前記回転軸(B)との間で、長手方向に配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の自動車ドアリーフの施錠システム(12)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の施錠システム(12)が装備されているドアハンドル(24)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシュハンドル、ドアリーフ、および二重慣性安全システムを備える自動車のドアリーフの施錠システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載され、図示されているように、ドアリーフと視覚的に融合するように設計されたフラッシュハンドルは、周知である。
【0003】
特許文献1に記載されているフラッシュハンドルは、ドアリーフに固定されたブラケット、把持レバーおよび伝達レバーを備えている。
【0004】
把持レバーは把持部を備えており、把持レバーは、把持部がドアリーフの外面と同一面上にある少なくとも1つの休止位置と、ドアリーフの外面に対して把持部が突出している作動位置と、把持レバーがドアリーフを解錠する開位置の間で、第1の回転軸の周りにブラケットに対して回転可能に取り付けられている。
【0005】
伝達レバーは、休止位置と、伝達レバーがドアリーフの解錠を作動させる作動位置との間で、第2の回転軸の周りに、ブラケットに対して旋回可能に取り付けられており、伝達レバーは、把持レバーによって回転駆動させられる。
【0006】
把持レバーの把持部は、視覚で確認できるようになっており、ドアリーフを開けるためにユーザが操作することができるようになっている。
【0007】
安全上の理由から、自動車が衝撃を受けた場合に、ハンドルが誤作動しないように、慣性安全システムをハンドルに設けることは知られている。
【0008】
特に、特許文献2に記載されている二重慣性安全システムを含むハンドルは知られている。
【0009】
この二重慣性安全システムには、伝達レバーを一時的に阻止する第1の慣性質量を含む第1の可逆的慣性システムと、伝達レバーを不可逆的に阻止する、すなわち、慣性質量の跳ね返りを避けるための第2の慣性質量を含む第2の不可逆的慣性安全システムとが含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許出願公開第3106596号明細書
【文献】欧州特許第2432954号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2に記載されている二重慣性安全システムは、効果的なように思われるけれども、その大きさゆえに、フラッシュハンドルとは相容れないものである。
【0012】
実際、フラッシュハンドルが動くためには、かなりの空間を要するため、慣性安全システムを小さくすることが希求されている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、特にこの欠点を解決することを課題とし、この課題を解決するための自動車ドアリーフの施錠システムに関し、前記施錠システムは、前縁から後縁まで垂直面内で長手方向に延びるドアリーフを備えており、フラッシュハンドルは、少なくとも、
- ドアリーフに固定されているブラケットと、
- 把持部を備える把持レバーと、
- 第1の阻止面および第2の阻止面を画定する伝達レバーとを備えており、
前記把持レバーは、前記把持部が前記ドアリーフの外面と同一面上にある少なくとも1つの休止位置と、前記ドアリーフの外面に対して前記把持部が突出している作動位置と、前記把持レバーが前記ドアリーフを解錠する開位置との間で、第1の回転軸の周りを前記ブラケットに対して回転可能に取り付けられ、
前記伝達レバーは、休止位置と、前記伝達レバーが前記ドアリーフの解錠を作動させる作動位置との間で、前記把持レバーの前記第1の回転軸と直交する第2の回転軸の周りに、前記ブラケットに対して枢動可能に取り付けられ、前記伝達レバーは、前記把持レバーによって回転駆動させられており、
前記施錠システムは、
- 前記ブラケットに取り付けられ、第1の慣性質量を支える第1のロッカーを含む第1の可逆的慣性安全システムと、
- 前記ブラケットに取り付けられ、第2の慣性質量を支える第2のロッカーを含む第2の不可逆的慣性安全システムとを含んでおり、
前記第1のロッカーは、第1の阻止フィンガを含み、休止位置と、衝撃が生じた場合に、前記第1の阻止フィンガが前記伝達レバーの回転を防止する阻止位置との間で、前記伝達レバーの前記第2の回転軸とほぼ直交する第3の旋回軸の周りに、枢動可能に取り付けられており、
前記第2のロッカーは、第2の阻止フィンガを含み、前記第2の阻止フィンガは、休止位置と、衝撃が生じた場合に、前記第2の阻止フィンガが前記伝達レバーの回転を防止する阻止位置との間で、前記第1のロッカーの前記第3の旋回軸とほぼ平行な第4の旋回軸の周りに、枢動可能に取り付けられていることを特徴としている。
【0014】
本発明による慣性安全システムは、第1の可逆的慣性安全システムと、第2の不可逆的慣性安全システムとを備えているので、それらは、ドアリーフを開放するための運動学的連鎖部材に、より具体的には伝達レバーに、それぞれが独立して作用することとなり、有利である。
【0015】
さらに、各慣性安全システムのロッカーの旋回軸の方向、および伝達レバーの回転軸の方向は、本発明によると、慣性安全システムのコンパクトな配置を可能にする。このことは、フラッシュハンドルに適用されている。
【0016】
実際、フラッシュハンドルには、把持レバーを駆動するためのアクチュエータが含まれているため、慣性安全システムに使用できるスペースが制限されている。
【0017】
別の特徴によれば、前記第1のロッカーの前記第3の旋回軸、および前記第2のロッカーの前記第4の旋回軸は、垂直方向に沿ってほぼ平行である。
【0018】
別の特徴によれば、前記伝達レバーの前記回転軸は、前記把持レバーの前記垂直回転軸に対して、横方向に直角に伸びている。
【0019】
別の特徴によれば、衝撃が生じた場合に、前記第1の慣性質量の加速度が第1の値の範囲内にあると、前記第1のロッカーは、その休止位置から阻止位置まで駆動し、衝撃が生じた場合に、前記第2の慣性質量の加速度が第2の値の範囲内にあると、前記第2のロッカーは、その休止位置から阻止位置まで駆動させられる。
【0020】
この特徴により、慣性安全システムは、互いに独立して広範囲の加速度値に応答することとなる。
【0021】
別の特徴によれば、前記把持部は、後端部と、前記ドアリーフの中央部の向かい側に配置された前端部とによって長手方向に画定されており、前記第1の慣性質量および前記第2の慣性質量は、それぞれ、前記把持部の前記前端部の前方で、長手方向に配置されている。
【0022】
この特徴により、本発明による慣性安全システムの大きさを制限することができる。
【0023】
さらに、慣性質量の位置を把持部の前方とすることにより、各慣性安全システムをドアリーフの中心に近づけて、各慣性安全システムをより早く応答させることができる。
【0024】
より具体的には、前記把持レバーの前記回転軸は、通常、前記把持部の前端部の前方で、垂直に延在し、前記慣性質量は、前記把持レバーの前記回転軸の前方で、長手方向に配置されている。
【0025】
別の特徴によれば、各慣性質量は、前記ドアリーフの中央部と、前記把持レバーの前記回転軸との間で、長手方向に配置されている。
【0026】
本発明はまた、前述のいずれかに記載の施錠システムが装備されているドアハンドルに関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明による施錠システムに関する自動車のハンドルおよびドアリーフの模式的な斜視図である。
【
図2】ハンドルのブラケットと共に、休止位置における
図1のハンドルの把持レバーおよび第1の慣性安全システムの正面図である。
【
図3】ブラケットと共に、休止位置における伝達レバーの背面図である。
【
図4】把持部がドアリーフの外面と同一面にある休止位置における把持部の斜視図である。
【
図5】ドアリーフの外面に対して把持部が突出している作動位置における把持部の斜視図である。
【
図6】把持レバーがドアリーフを解錠する開位置における把持部の斜視図である。
【
図8】休止位置における第1の慣性安全システムのロッカーおよび休止位置における伝達レバーの詳細斜視図である。
【
図9】休止位置における第1の慣性安全システムのロッカーおよび作動位置における伝達レバーの詳細斜視図である。
【
図10】阻止位置における第1の慣性安全システムのロッカーおよび休止位置における伝達レバーの詳細斜視図である。
【
図11】阻止位置における第1の慣性安全システムのロッカーおよび被阻止位置における伝達レバーの詳細斜視図である。
【
図12】第1の慣性安全システムのロッカーの縦断面の詳細斜視図である。
【
図13】第1の慣性安全システムのロッカーの詳細斜視図である。
【
図14】休止位置における第2の慣性安全システムの第2のロッカーおよび作動位置における伝達レバーの詳細斜視図である。
【
図15】阻止位置における第2の慣性安全システムのロッカーおよび休止位置における伝達レバーの詳細斜視図である。
【
図16】阻止位置における第2の慣性安全システムのロッカーおよび被阻止位置における伝達レバーの詳細斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照して、本発明を理解するための以下の詳細な説明から明らかになると思う。
【0029】
本明細書では、「頂部の」、「底部の」、「上方の」、「下方の」、「水平の」、「垂直の」という用語、およびそれらの派生語は、構成要素の位置または方向を指しており、この位置または方向は、自動車が水平の地上で使用状態にあるときのものである。
【0030】
さらに、明細書および特許請求の範囲を明確にするために、図に示す三軸L、V、Tをもって、それぞれ、長手方向、垂直方向、および横方向を、非限定的に示している。
【0031】
これらの図のすべてにおいて、同一または類似の符号は、同一または類似の部材、または部材の集まりを表している。
【0032】
本明細書において、「前」および「後」という語は、自動車の長手方向、すなわち、
図1において左から右方向である。
【0033】
図1は、本発明によるドアリーフの施錠システム12を備える自動車10を示している。
【0034】
施錠システム12は、垂直面内で前縁16から後縁18まで長手方向に延びるドアリーフ14を備えており、このドアリーフ14は、前縁16と後縁18との間に長手方向に設置された中央部20を備えている。
【0035】
ドアリーフ14は、自動車の外側に配置されたトリミング外面22によって画定されている。
【0036】
また、ドアリーフ14は、
図1に示す閉位置と、ドアリーフ14の前縁16の近傍で、垂直方向を向く開閉軸Aの周りの開位置との間で枢動可能に取り付けられている。
【0037】
図2および
図3を参照すると、施錠システム12は、ブラケット26を備えるハンドル24、ドアリーフ14の錠36の解錠機構、第1の可逆的慣性安全システム28、および第2の不可逆的慣性安全システム72を含んでおり、これらはそれぞれ、障害物によって自動車10に激しい衝撃が生じた場合に、ドアリーフ14が妄りに開くのを防ぐことを目的としている。
【0038】
ブラケット26は、通常、ドアリーフ14の平面内に位置し、例えばネジ(図示せず)によってドアリーフの構造体(図示せず)に固定されるプレート状をしている。
【0039】
解錠機構36は、把持レバー30、把持部32、および伝達レバー34を備えている。
【0040】
把持部32がドアリーフ14のトリミング外面22と同一面上にある
図2から
図4に示す休止位置と、ユーザが枢動するために把持部32がドアリーフ14のトリミング外面22に対して突出している
図5に示す作動位置と、ドアリーフ14を解錠するために把持レバー30が錠を作動させる
図6に示す開放位置との間で、把持レバー30は、第1の垂直回転軸Bの周りに、ブラケット26に対して回転可能に取り付けられている。
【0041】
相補的に、開放機構は、
図4に示すアクチュエータ35を含み、アクチュエータ35は、休止位置と作動位置との間で、把持レバー30を枢動可能に駆動するように設計されている。
【0042】
把持レバー30は、把持レバー30の回転軸Bの周りに垂直に延在しており、ブラケット26に連結されたコイルバネ38によって、その休止位置に向かって弾性的に付勢されている。
【0043】
把持部32は、ユーザが把持レバー30を作動することができるように設計されている。
【0044】
この目的を達成するために、
図1に示すように、把持部32は、ドアリーフ14のトリミング外面22によって形成されているハウジング40内のドアリーフ14の外側に配置されており、ユーザが把持部32を作動させて把持レバー30を回転駆動させるために、把持部32は、把持レバー30に固定されている。
【0045】
把持部32は、前端部42から後端部44まで長手方向に延びる細長いハンドルの形状をしている。
【0046】
図2および
図4~
図6では、把持部32は、トリミングキャップなしで示されているが、このトリミングキャップは、把持レバー30が休止位置を占めるときに、ドアリーフのトリミング外面22と同一面上にあることに留意されたい。
【0047】
また、ドアリーフ14を解錠するために、把持レバー30は、その動きにより、伝達レバー34を駆動するようになっている。
【0048】
この目的のために、伝達レバー34は、
図2~
図4に示す休止位置と
図5に示す作動位置との間で、第2の回転軸Cの周りに、ブラケット26に対して枢動可能に取り付けられており、伝達レバー34は、ドアリーフ14を解錠する。
【0049】
さらに、
図7に示すように、把持レバー30の前端部48は、通常、球状のプロフィール51を有するカム50を画定している。
【0050】
相補的に、伝達レバー34の後端部52は、カム50の向かい側に横方向に延びる軸受面56を画定する従動子54を含んでいる。
【0051】
カム50および従動子54は、垂直の回転軸Bの周りの把持レバー30の回転運動を、横軸Cの周りの伝達レバー34の回転運動に変換するために配置されている。
【0052】
ハンドル24は、「フラッシュ」ハンドルとも呼ばれるフラッシュタイプのものである。すなわち、把持レバー30が休止位置を占めるとき、把持部32は、ドアリーフ14の外面22と同一面上にあり、ドアリーフ14の外面22と視覚的に融合している。
【0053】
このタイプのハンドル24は、特許文献1に記載されているので、さらなる詳細についてはこれを参照されたい。
【0054】
別の態様によれば、第1の可逆的慣性安全システム28は、後端部60から第1の慣性質量64を支える前端部62まで、長手方向に延びる
図12および
図13に詳細に表されている第1のロッカー58を含んでいる。
【0055】
第1のロッカー58の前端部62は、前方へ長手方向に突出し、第1のロッカー58の第3の回転軸Dに対して、半径方向かつ直角方向に延びる第1の阻止面67を画定する第1の阻止フィンガ66を備えている。
【0056】
図11に示すように、自動車10に衝撃が生じた場合に、伝達レバー34が休止位置から作動位置へ回転することに対抗させるため、第1のロッカー58の第1の阻止面67は、第1のロッカー58の第1の阻止面67と平行をなす伝達レバー34によって画定された第1の阻止面68と協働するように設計されている。
【0057】
この目的を達成するために、第1のロッカー58は、
図8および
図9に示す休止位置と、第1のロッカー58の第1の阻止フィンガ66が伝達レバー34の経路上に位置している
図10および
図11に示す阻止位置との間で、第3の垂直回転軸Dの周りに枢動可能に取り付けられている。これにより伝達レバー34の第1の阻止面68が第1のロッカー58の第1の阻止フィンガ66に当接し、伝達レバー34の回転が妨げられ、ドアリーフ14の開放を阻止するようになる。
【0058】
第1のロッカー58の回転軸Dは、第1のロッカー58の後端部60と前端部62との間に設けられている。
【0059】
第1の慣性安全システム28は、可逆的である。すなわち、第1の可逆的慣性安全システム28の作動に続いて、短時間でドアリーフ14を開くことができるようにするために、第1のロッカー58は、一時的に阻止位置を占めている。
【0060】
この目的のため、
図12を参照すると、第1のロッカー58は、第1のロッカー58の回転軸Dの周りに延在し、ブラケットと協働して、第1のロッカー58を阻止位置から休止位置へ弾性的に付勢するコイルバネ70を備えている。
【0061】
したがって、第1のロッカー58に加えられた加速度が再びゼロになると、第1のロッカー58は、初期の休止位置へ弾性的に付勢される。
【0062】
第1の慣性質量64の加速度が、例えば5G~15Gの間に含まれる第1の値の範囲内にあるとき、第1のロッカー58は、その休止位置から阻止位置まで駆動するように設計されている。なお、加速度単位Gは、9.80665ms-2である。
【0063】
したがって、第1の可逆的慣性安全システム28は、非常に応答が早く、阻止位置へ素早く切り替えが行われる。
【0064】
本発明の別の態様によれば、
図2に示すように、第1のロッカー58の第1の慣性質量64は、把持部32の前端部42の前方で長手方向に配置されている。
【0065】
より具体的には、第1のロッカー58の第1の慣性質量64は、把持レバー30の回転軸Bの前方で長手方向に配置されており、把持レバー30の回転軸Bは、把持部32の前端部42の前方に配置されている。
【0066】
一般に、
図1に示すように、第1の慣性質量64は、ドアリーフ14の中央部20と把持レバー30の回転軸Bとの間で、長手方向に配置されている。
【0067】
実際、自動車と障害物との激しい衝撃により、ドアリーフ14の中央部20は、ドアリーフ14の周辺部よりも柔軟性がより大きいため、ドアリーフ14の周辺部よりも速い速度で変形する。
【0068】
したがって、第1の可逆的慣性安全システム28の第1の慣性質量64がドアリーフ14の中央部20の近くに位置しているほど、第1の可逆的慣性安全システム28は、ドアリーフ14の開放機構をすばやく阻止するようになる。
【0069】
図3、
図14、
図15および
図16から分かるように、第2の不可逆的慣性安全システム72は、後端部76から第2の慣性質量80を支える前端部78まで、長手方向に延びる第2のロッカー74を含んでいる。
【0070】
第2のロッカー74の前端部78は、長手前方向に突出し、第2のロッカー74の回転軸Eに対して、半径方向かつ直角方向に延びる第2の阻止面84を画定する第2の阻止フィンガ82を備えている。
【0071】
図16に示すように、自動車10に衝撃が生じた場合に、伝達レバー34が休止位置から作動位置へ回転することに対抗するために、第2のロッカー74の第2の阻止面84は、第2のロッカー74の第2の阻止面84と平行をなす伝達レバー34によって画定された第2の阻止面86と協働するように設計されている。
【0072】
この目的を達成するために、第2のロッカー74は、第2の阻止フィンガ82が伝達レバー34の経路から離間している
図14に示す休止位置と、第2の阻止フィンガ82が伝達レバー34の経路上に位置している
図15および
図16に示す阻止位置との間で、第1のロッカー58の第3の旋回軸Dとほぼ平行な第4の旋回軸Eの周りに枢動可能に取り付けられている。これにより、伝達レバー34の第2の阻止面86が第2の阻止フィンガ82に当接し、伝達レバー34の回転が妨げられ、ドアリーフ14の開放を阻止するようになる。
【0073】
第2の不可逆的慣性安全システム72は、第4の旋回軸Eの周りに延在し、第2のロッカー74を休止位置に弾性的に付勢するために、ブラケット26を第2のロッカー74に弾性的に連結しているコイルバネ88を備えている。
【0074】
コイルバネ88は、衝撃の際に、第2のロッカー74に加えられる加速度閾値により、第2のロッカー74が旋回することができるように定められている。
【0075】
より具体的には、第2のロッカー74は、例えば、第2の慣性質量80の加速度が30Gから始まる第2の値の範囲内にあるとき、休止位置から阻止位置まで駆動するように設計されている。
【0076】
また、第2のロッカー74の第4の旋回軸Eは、第2のロッカー74の後端部76の近傍に配置されていることに留意されたい。
【0077】
阻止位置から休止位置への第2のロッカー74の跳ね返りを防止するため、第2の慣性安全システム72は、不可逆的なシステムである。すなわち、第2のロッカー74は、最終的に阻止位置を占めることになる。
【0078】
この目的のために、
図14に示すように、第2の不可逆的慣性安全システム72は、ブラケット26(
図3に示す)に連結されている前端部92から後自由端部94まで長手方向に延びる施錠ブレード90を含んでいる。
【0079】
施錠ブレード90の後自由端部94は、開口部96を画定している。
【0080】
相補的に、第2のロッカー74は、第2のロッカー74の第4の旋回軸Eに対して直角方向に突出する突起98を含んでいる。
【0081】
図15および
図16に示すように、第2のロッカー74の旋回中に、突起98は、開口部96を貫通して施錠位置に至るまで、施錠ブレード90を押し込むように設計されており、突起98は、開口部96の縁と協働して第2のロッカー74を阻止位置に保持している。
【0082】
本発明の別の態様によれば、
図4に示すように、第2のロッカー74の第2の慣性質量80は、把持部32の前端部42の前方で長手方向に配置されている。
【0083】
より具体的には、第2のロッカー74の第2の慣性質量80は、把持レバー30の回転軸Bの前方で長手方向に配置されており、把持レバー30の回転軸Bは、把持部32の前端部42の前方に配置されている。
【0084】
一般に、
図1を参照すると、第2の慣性質量80は、第1の慣性質量64に関して前述したことと同じ理由で、ドアリーフ14の中央部20と、把持レバー30の回転軸Bとの間で、長手方向に配置されている。
【0085】
本発明の上記の説明は、非限定的な実施例に基づくものである。
【0086】
機械的な構成要素を単に移動させることは、本発明に含まれるものであることを理解するべきである。
【0087】
例えば、第1のロッカー58および/または第2のロッカー74は、把持レバー30の回転、または伝達レバー34の回転、またはドアリーフ14の開放の運動学的連鎖の他の要素を、相互に無関係に阻止することができる。
【0088】
なお、第1のロッカー58の回転軸D、把持レバー30の回転軸B、第2のロッカー74の回転軸Eは、伝達レバー34の回転軸Cに対してすべて平行であり、かつ直交している。有利なことに、本発明による施錠システム12は、アクチュエータ35ならびに第1の慣性安全システム、および第2の慣性安全システムを備えるフラッシュハンドルを提供することができるコンパクトな構成を提案するものである。
【符号の説明】
【0089】
10 自動車
12 施錠システム
14 ドアリーフ
16 前縁
18 後縁
20 中央部
22 トリミング外面
24 ハンドル
26 ブラケット
28 第1の可逆的慣性安全システム
30 把持レバー
32 把持部
34 伝達レバー
35 アクチュエータ
36 解錠機構
38 コイルバネ
40 ハウジング
42 前端部
44 後端部
48 前端部
50 カム
51 プロフィール
52 後端部
54 従動子
56 軸受面
58 第1のロッカー
60 後端部
62 前端部
64 第1の慣性質量
66 第1の阻止フィンガ
67 第1の阻止面
68 第1の阻止面
70 コイルバネ
72 第2の不可逆的慣性安全システム
74 第2のロッカー
76 後端部
78 前端部
80 第2の慣性質量
82 第2の阻止フィンガ
84 第2の阻止面
86 第2の阻止面
88 コイルバネ
90 施錠ブレード
92 前端部
94 後自由端部
96 開口部
98 突起
A 開閉軸
B 第1の回転軸
C 第2の回転軸
D 第3の回転軸
E 第4の回転軸