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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】弾性クローラの走行試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/03 20060101AFI20221227BHJP
   B62D 55/24 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
G01M17/03
B62D55/24
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018123255
(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公開番号】P2020003349
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横尾 勝昭
(72)【発明者】
【氏名】坂東 真郁
(72)【発明者】
【氏名】尾辻 秀希
(72)【発明者】
【氏名】鳶野 義之
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-157836(JP,A)
【文献】実開昭53-087184(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0007643(US,A1)
【文献】特開平05-099798(JP,A)
【文献】特開2000-085643(JP,A)
【文献】特開2015-096363(JP,A)
【文献】実開昭55-001757(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00- 17/10
B62D 41/00- 67/00
G01M 13/00- 13/045
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性クローラが装着されるクローラ装着部、及び前記クローラ装着部に装着した弾性クローラを回送駆動する駆動部を有する台車と、
前記台車に装着された弾性クローラを走行させる仮想路面が外周に設けられた路面コンベアを有する台車支持装置と、を備え、
前記路面コンベアの仮想路面には、複数の突部が周方向に間隔をあけて突設され、
前記突部は、周方向の幅よりも高さの方が小さい、弾性クローラの走行試験装置。
【請求項2】
弾性クローラが装着されるクローラ装着部、及び前記クローラ装着部に装着した弾性クローラを回送駆動する駆動部を有する台車と、
前記台車に装着された弾性クローラを走行させる仮想路面が外周に設けられた路面コンベアを有する台車支持装置と、を備え、
前記路面コンベアの仮想路面には、複数の突部が周方向に間隔をあけて突設され、
前記クローラ装着部は、前記弾性クローラに噛み合う駆動輪及び従動輪を前後方向の一端部と他端部とに備えており、前記駆動輪及び前記従動輪の前後方向の間隔が調整可能であり、
前記クローラ装着部は、前記駆動輪と前記従動輪との前後方向の間に弾性クローラの内周面を転動する転動輪を備えており、前記転動輪の前後方向の位置及び数量の少なくとも一方が調整可能である、弾性クローラの走行試験装置。
【請求項3】
弾性クローラが装着されるクローラ装着部、及び前記クローラ装着部に装着した弾性クローラを回送駆動する駆動部を有する台車と、
前記台車に装着された弾性クローラを走行させる仮想路面が外周に設けられた路面コンベアを有する台車支持装置と、を備え、
前記路面コンベアの仮想路面には、複数の突部が周方向に間隔をあけて突設され、
前記台車が、ウエイトを取り外し可能に装着するウエイト装着部を備えている、弾性クローラの走行試験装置。
【請求項4】
前記クローラ装着部は、前記弾性クローラに噛み合う駆動輪及び従動輪を前後方向の一端部と他端部とに備えており、前記駆動輪及び前記従動輪の前後方向の間隔が調整可能である、請求項1又は3に記載の弾性クローラの走行試験装置。
【請求項5】
前記突部の頂部に、前記路面コンベアの周方向に直交する左右方向に沿った角部が設けられている、請求項1~のいずれか1項に記載の弾性クローラの走行試験装置。
【請求項6】
前記路面コンベアは、前後のスプロケットに巻き掛けられた左右一対の回送チェーンと、一対の回送チェーンの間に架け渡され、当該回送チェーンの周方向に沿って並べられた複数の路面板とを有しており、
前記突部が、前記路面板における前記周方向の幅よりも小さい幅を有する板材よりなり、前記路面板の表面に取り付けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載の弾性クローラの走行試験装置。
【請求項7】
前記突部の高さが、3mm以上15mm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の弾性クローラの走行試験装置。
【請求項8】
前記駆動部が出力可変型の電動モータを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の弾性クローラの走行試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性クローラの走行試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバイン等の農用機械やバックホー等の建設機械には、軟弱地や凹凸の激しい場所でも好適に走行可能な弾性クローラを備えた走行装置が適用されている。この弾性クローラは、ゴム等の弾性材料により無端帯状に形成されたクローラ本体と、このクローラ本体の周方向に間隔をあけて埋設された芯金等を備えており、走行装置における駆動輪、従動輪、転動輪等に巻き掛けられて使用される。
【0003】
このような弾性クローラにおいては、長期使用による損傷及び摩耗の有無や芯金と弾性材料との剥離の有無等を評価するために、当該弾性クローラを実際の車両に装着した状態で耐久試験が行われることがある。しかし、このような実車による耐久試験は、広い試験場が必要である。また、この耐久試験は、路面に存在する砕石等の影響を受けたり試験中の旋回動作の頻度や旋回時の左右弾性クローラの周速差の影響を受けたりするので、再現性に乏しいという実状がある。
【0004】
一方、下記特許文献1には、試験対象となる弾性クローラを台車に装着してコンベア状の仮想路面上で走行させる台上走行試験装置が開示されている。この台上走行試験装置を用いれば、広い試験場が不要となり、再現性もある程度は改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭53-2801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の台上走行試験装置では、仮想路面上で弾性クローラがスリップすることがあり、そのスリップの頻度によって牽引状態が変化するので耐久性等の評価を適切に行えない恐れがある。特に、高牽引負荷をかけた試験を行う場合には、弾性クローラのスリップが顕著になる。
【0007】
本発明は、弾性クローラのスリップを抑制し、弾性クローラの試験を適切に行うことができる走行試験装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明における弾性クローラの走行試験装置は、
弾性クローラが装着されるクローラ装着部、及び前記クローラ装着部に装着した弾性クローラを回送駆動する駆動部を有する台車と、
前記台車に装着された弾性クローラを走行させる仮想路面が外周に設けられた路面コンベアを有する台車支持装置と、を備え、
前記路面コンベアの仮想路面には、複数の突部が周方向に間隔をあけて突設されている。
【0009】
上記構成を有する走行試験装置によれば、台車に装着された弾性クローラを回送駆動することによって、路面コンベアの仮想路面上で弾性クローラを走行させることができる。仮想路面には複数の突部が周方向に間隔をあけて設けられているので、弾性クローラの外周面が突部に引っ掛かり、仮想路面上で弾性クローラがスリップするのを抑制することができる。したがって、一定の牽引力を発揮させた状態で安定して弾性クローラを走行させることができ、耐久性等の評価を適切に行うことができる。
【0010】
(2)好ましくは、前記突部の頂部に、前記路面コンベアの周方向に直交する左右方向に沿った角部が設けられている。
このような構成によって、弾性クローラの外周面がより突部に引っ掛かりやすくなり、スリップの発生をより抑制することができる。
【0011】
(3)好ましくは、前記路面コンベアは、前後のスプロケットに巻き掛けられた左右一対の回送チェーンと、一対の回送チェーンの間に架け渡され、当該回送チェーンの周方向に沿って並べられた複数の路面板とを有しており、
前記突部が、前記路面板における前記回送方向の幅よりも小さい幅を有する板材よりなり、前記路面板の表面に取り付けられている。
この構成によれば、突部を構成する板材を路面板に取り付けるだけで、容易に仮想路面に突部を形成することができる。
【0012】
(4)好ましくは、前記突部の高さが、3mm以上15mm以下である。
このような構成によって、弾性クローラに無用な損傷を与えることなくスリップを抑制することができる。
【0013】
(5)好ましくは、前記クローラ装着部は、前記弾性クローラに噛み合う駆動輪及び従動輪を前後方向の一端部と他端部とに備えており、前記駆動輪及び前記従動輪の前後方向の間隔が調整可能である。
このような構成によって、周方向の長さが異なる弾性クローラを装着部に装着することができ、台車の汎用性を高めることができる。
【0014】
(6)好ましくは、前記クローラ装着部は、前記駆動輪と前記従動輪との前後方向の間に弾性クローラの内周面を転動する転動輪を備えており、前記転動輪の前後方向の位置及び数量の少なくとも一方が調整可能である。
このような構成によって、弾性クローラの周方向の長さに応じて転動輪の位置や数量を適切に調整することができる。
【0015】
(7)好ましくは、前記駆動部が出力可変型の電動モータを含む。
このような構成によって、弾性クローラの回送速度を変更することができるので、例えば、弾性クローラを高速で回送させる促進テストを行うことが可能となる。また、駆動部として電動モータを用いることによって、排気ガスによる試験環境の悪化が生じることもない。
【0016】
(8)好ましくは、前記台車が、ウエイトを取り外し可能に装着するウエイト装着部を備えている。
このような構成によって、高荷重をかけた促進テストを行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の走行試験装置によれば、弾性クローラのスリップを抑制し、弾性クローラの試験を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る弾性クローラの走行試験装置を示す概略的な側面図である。
図2】走行試験装置の台車を示す概略的な平面図である。
図3】走行試験装置の台車支持装置を示す概略的な平面図である。
図4図3のA-A矢視断面図である。
図5図3のB部を拡大して示す平面図である。
図6図5のC-C矢視断面図である。
図7】路面コンベアの路面板に設けられた突部の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る弾性クローラの走行試験装置を示す概略的な側面図である。
この走行試験装置10は、無端帯状に形成された弾性クローラCを装着し、この弾性クローラCを走行させることによって、耐久試験等を行うために用いられる。一般に、弾性クローラCは、ゴム等の弾性材料によって形成されたクローラ本体の内部に周方向に等間隔で多数の芯金が埋設されており、この芯金に走行装置の駆動輪を噛み合わせることによって動力が伝達され、回送駆動されるようになっている。
【0020】
なお、本明細書においては、弾性クローラCを走行させる方向を前後方向とし、この前後方向に直交する水平方向を左右方向とする。
【0021】
走行試験装置10は、台車11と、台車支持装置12とに大別される。
(台車の構造)
図2は、走行試験装置10の台車11を示す概略的な平面図である。
図1及び図2に示すように、台車11は、車体フレーム21と、この車体フレーム21に設けられたクローラ装着部22、駆動部23、及びウエイト装着部24とを有する。
クローラ装着部22は、車体フレーム21の左右両側に設けられている。クローラ装着部22は、車体フレーム21の側面の前部側に設けられた駆動輪31と、後部側に設けられた従動輪32と、駆動輪31と従動輪32との前後方向の間に配置された複数の転動輪33とを有している。駆動輪31は、車体フレーム21の前部に回転自在に支持された駆動シャフト34の両端部に設けられている。
【0022】
従動輪32は、車体フレーム21に位置調整機構35を介して取り付けられている。この位置調整機構35は、車体フレーム21の側部に回転自在に設けられた送りネジ35aと、この送りネジ35aに螺合された支持体35bとを備えており、支持体35bに従動輪32が回転自在に支持されている。位置調整機構35は、送りネジ35aを回転させて支持体35bを前後に移動させることによって、従動輪32の前後方向の位置を調整することができる。図1及び図2は、従動輪32が最も後方に位置付けられた状態を示している。また、図1には、従動輪32の位置調整範囲を符号Rで示している。
【0023】
転動輪33は、支持体33aに回転自在に支持されており、この支持体33aが車体フレーム21の側面に固定ボルト等の取付具33bによって取り外し可能に取り付けられている。車体フレーム21の側面には、取付具33bを取り付けることができる取付孔21aが前後方向に多数形成されている。そして、この取付孔21aのいずれかを選択して支持体33aを取り付けることで、転動輪33の前後方向の位置を調整可能であり、また、車体フレーム21に取り付ける転動輪33の数量も調整可能である。
【0024】
駆動部23は、車体フレーム21の前部側の上面に配置されている。駆動部23は、電動モータ36と、減速機37とを有する。電動モータ36は、インバータ制御等によって出力(運転回転数)を調整可能な出力可変型のモータである。
減速機37は、電動モータ36の駆動軸36aの回転を減速する。電動モータ36の駆動軸36aと減速機37の入力軸37aとは、ベルト伝動機構38によって動力伝達可能に接続されている。減速機37の出力軸37bと、駆動シャフト34とは、チェーン伝動機構39によって動力伝達可能に接続されている。
【0025】
以上より、駆動部23は、電動モータ36を作動することによって、減速機37を介して駆動シャフト34及び駆動輪31を回転させることができる。そして、駆動輪31を回転させることによって、クローラ装着部22に装着した弾性クローラCを回送させることができる。
【0026】
ウエイト装着部24は、車体フレーム21の後部側の上面に配置されている。具体的には、ウエイト装着部24は、駆動部23を構成する電動モータ36の後方に配置されている。ウエイト装着部24は、上方が開口した箱体24aを備え、前後方向に並べて複数(図示例では3箇所)設けられている。各ウエイト装着部24の箱体24a内には、板状のウエイト24bを積層して収容することができる。
【0027】
車体フレーム21の前後左右の4隅には、アイボルト等からなるワイヤ取付具21bが設けられており、このワイヤ取付具21bには、台車11を前後から引っ張るワイヤが取り付けられている。これにより台車11の前後方向の位置が固定され、台車支持装置12上における前後方向の移動が阻止されている。
【0028】
(台車支持装置の構成)
図3は、走行試験装置10の台車支持装置12を示す概略的な平面図である。
図1及び図3に示すように、台車支持装置12は、装置フレーム26と、装置フレーム26に支持された左右一対の路面コンベア27を備えている。
図3に示すように、各路面コンベア27は、左右一対の回送チェーン41と、左右一対の回送チェーン41の間に架け渡された複数の路面板42とを有している。回送チェーン41は、装置フレーム26に回転自在に支持された前後のシャフト43,44に取り付けられた前側スプロケット45と後側スプロケット46とに巻き掛けられている。一方のシャフト43には制動装置49が設けられ、路面コンベア27の回送を制動することができる。
【0029】
図4は、図3のA-A矢視断面図である。
図1及び図4に示すように、左右一対の路面コンベア27上には、台車11に装着された左右の弾性クローラCがそれぞれ載置される。各路面コンベア27の左右の回送チェーン41の上部側は、上側支持レール47によって下方から支持されている。この上側支持レール47は、台車11の荷重を弾性クローラCを介して受け、台車11を支持している。また、各路面コンベア27の左右の回送チェーン41の下部側は、下側支持レール48によって下方から支持されている。上側支持レール47及び下側支持レール48は、装置フレーム26に固定されている。
【0030】
図5は、図3のB部を拡大して示す平面図である。図6は、図5のC-C矢視断面図である。
各路面コンベア27の左右の回送チェーン41は、それぞれ左右一対のリンク部材51をリンクピン52で周方向に多数連結することによって構成されている。リンクピン52には、ローラ53が回転自在に装着されている。このローラ53は、図4に示す上側支持レール47及び下側支持レール48上を走行する。
【0031】
左右一対のリンク部材51のうち路面コンベア27の左右方向の内側に配置されたリンク部材51には、左右方向の内側へ向けて突出する支持片51aが設けられている。そして、この支持片51aには、路面板42の左右方向の両端部が固定されている。路面板42は、前後方向(路面コンベア27の回送方向)の幅が、左右方向の長さよりも小さい平面視長方形状の板材であり、複数の路面板42の表面は、台車11に装着された弾性クローラCが走行する仮想路面50を形成している。図6に示すように、路面板42の前後方向の端部には、内周側に折り曲げられた補強リブ42aが設けられており、台車11の荷重を受けることができるように路面板42の曲げ剛性が高められている。
【0032】
各路面板42の表面には突部54が突設されている。突部54は、図5に示すように、路面板42の左右方向の長さと同一の長さを有し、路面板42の前後方向の幅よりも小さい幅を有する平面視長方形状の板材により構成されている。また、図6に示すように、突部54を構成する板材は、断面形状が長方形状に形成されている。突部54は、路面板42の前後方向の略中央部に取り付けられている。
【0033】
図6に示すように、路面板42の前後方向の幅をL1、突部54の前後方向の幅をL2としたとき、L2/L1が25%以上50%以下に設定されている。突部54の高さhは、3mm以上15mm以下に設定されている。
突部54は、回送チェーン41の周方向に並べられた複数の路面板42のそれぞれに設けられているので、路面コンベア27の仮想路面50には、複数の突部54が周方向(回送方向)に間隔をあけて配置されることになる。
【0034】
以上の構成を有する走行試験装置10は、台車11のクローラ装着部22に弾性クローラCを装着し、当該台車11を台車支持装置12上に搭載した状態で使用される。そして、台車11の駆動部23を作動することによって弾性クローラCを回送させると、弾性クローラCと路面コンベア27との接触面に発生する摩擦力(弾性クローラCの牽引力)によって路面コンベア27も回送する。したがって、弾性クローラCが実際の路面を走行する場合と略同様の環境で弾性クローラCの試験を行うことができる。
【0035】
また、弾性クローラCを路面コンベア27上で走行させるので、広い試験場を必要とせず、走行試験装置10を設置することができる一定の広さの領域があれば試験を行うことができる。
そして、弾性クローラCを路面コンベア27上で走行させるので、実際の路面に存在する砕石等の影響を受けることがなく、弾性クローラCの純粋な屈曲や牽引力等についての評価が可能となる。また、試験中は一定の場所で弾性クローラCを直進させるだけであるので弾性クローラCを旋回させる必要がなくなり、旋回頻度や左右弾性クローラCの周速差の影響で試験結果が変動することもなく、再現性の高い試験を行うことができる。したがって、同種又は異種の弾性クローラCの比較評価が可能となる。なお、弾性クローラCの評価としては、弾性クローラCのクラック評価、駆動輪に対する噛み合い評価、摩耗の評価、弾性クローラCを構成する部品(芯金、スチールコード、ゴム等)の接着性評価等を挙げることができる。
【0036】
路面コンベア27の仮想路面50には、複数の突部54が周方向に間隔をあけて設けられているので、弾性クローラCの外周面(特に、外周面に設けられたラグ)が突部54に引っ掛かり、仮想路面50上における弾性クローラCのスリップが抑制される。そのため、一定の牽引力を発揮させた状態で弾性クローラCを安定して走行させることができ、耐久性等の評価を一定の条件で適切に行うことができる。
【0037】
なお、前述したように、突部54の高さhが3mm以上15mm以下に設定されているのは、3mm未満であると、弾性クローラCのスリップを確実に抑制することが困難となり、15mmを超えると、突部54自体が障害物となって、実際の使用形態では生じえない損傷を弾性クローラCに与える可能性があるからである。
【0038】
図6に示すように、仮想路面50に設けられた突部54は、その断面が長方形状であるため、その頂部の2箇所には左右方向に沿った角部54aが設けられる(図6参照)。そのため、弾性クローラCの外周面が、突部54の角部54aに引っ掛かりやすくなり、よりスリップを抑制することができる。
【0039】
台車11のクローラ装着部22は、従動輪32が前後方向に位置調整自在に設けられ、駆動輪31と従動輪32との前後方向の間隔が調整可能である。そのため、長さが異なる弾性クローラCをクローラ装着部22に装着することができ、台車11の汎用性を高めることができる。
【0040】
また、クローラ装着部22の転動輪33は、前後方向の位置及び数量を調整可能である。そのため、前述したように、長さの異なる弾性クローラCを装着するときに、その弾性クローラCの長さに応じて転動輪33の位置及び数量を適切に設定することができる。
【0041】
台車11の駆動部23を構成する電動モータ36は出力可変型であるため、その出力を高めることによって弾性クローラCを高速で回送させることができる。そのため、試験を短時間で行う促進テストを行うことが可能となる。また、駆動部23として電動モータ36が用いられているので、エンジンを用いた駆動部のように排気ガスによる試験環境の悪化が生じることもない。
【0042】
台車11には、ウエイト24bを装着するウエイト装着部24が設けられているので、台車11に高荷重をかけた促進テストを行うことが可能となる。また、ウエイト装着部24は、複数のウエイト24bを取り外し可能に装着することができるので、台車11に付与する荷重を調整することができる。
【0043】
なお、ウエイト装着部24は、前後方向に複数設けられているので、いずれかのウエイト装着部24を選択してウエイト24bを装着することができる。本実施形態では、ウエイト装着部24が、従動輪32の位置調整範囲(図1にRで示す)に対応して複数設けられており、従動輪32の位置に応じてウエイト24bを装着するウエイト装着部24を選択することができる。例えば、図1に示すように従動輪32が最も後方に位置付けられた場合は、3つのウエイト装着部24に均等にウエイト24bを装着することができる。また、従動輪32が最も前方に位置付けられた場合は、最も前側のウエイト装着部24のみにウエイト24bを装着することができる。
【0044】
台車支持装置12には、路面コンベア27を制動する制動装置49が設けられているので、路面コンベア27の回送を止めた状態で弾性クローラCを回送させるという高牽引負荷をかけた促進テストを行うことが可能となる。
【0045】
(変形例)
図7は、路面コンベアの路面板に設けられた突部の変形例を示す断面図である。路面板42の突部54は、図7に示すように変形することができる。
具体的には、図7(a)に示す路面板42は、突部54の断面形状が台形状に形成されている。図7(b)に示す路面板42は、突部54の断面形状が三角形状に形成されている。図7(c)に示す路面板42は、突部54の頂部が曲面状に形成されている。
【0046】
断面形状が台形状の突部54の頂部には2箇所の角部54aが形成され、断面三角形状の突部54の頂部には1個所の角部54aが形成されている。したがって、弾性クローラCの外周面が突部54の角部54aに引っ掛かることによってよりスリップを抑制することができる。また、図7(c)に示す突部54は角部を備えないので、図7(a)及び(b)に示す突部54と比べて弾性クローラCが引っ掛かりにくくなるものの、スリップを抑制する効果は十分に有している。
【0047】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、適宜変更できるものである。
例えば、上記実施形態では、路面板と別体に形成された板材を路面板に取り付けることによって突部が構成されていたが、路面板の表面を機械加工(削り出し等)することによって路面板と一体に突部が形成されていてもよい。ただし、上記実施形態の方が路面板上に安価に突部を設けることができる。
【0048】
上記実施形態では、路面板上の突部が、路面板の左右方向の長さ全体にわたって連続的に設けられているが、路面板の長さ方向に断続的に設けられていてもよい。
上記実施形態では、クローラ装着部における従動輪の前後方向の位置が調整可能に構成されていたが、これに代えて又は加えて、駆動輪の前後方向の位置が調整可能に構成されていてもよい。また、転動輪は、従動輪と同じような位置調整機構によって前後方向の位置が調整可能に構成されていてもよい。
【0049】
転動輪の位置調整機構は、上記実施形態のような送りネジ式のものに代えて、流体圧シリンダや電動シリンダを用いたものであってもよい。
転動輪は、前後方向の位置及び数量のいずれか一方のみが調整可能に構成されていてもよい。
【0050】
上記実施形態における走行試験装置は、芯金を備えた弾性クローラに限らず、芯金レスの弾性クローラにも適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 :走行試験装置
11 :台車
12 :台車支持装置
22 :クローラ装着部
23 :駆動部
24 :ウエイト装着部
24b :ウエイト
27 :路面コンベア
31 :駆動輪
32 :従動輪
33 :転動輪
36 :電動モータ
41 :回送チェーン
42 :路面板
50 :仮想路面
54 :突部
54a :角部
C :弾性クローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7