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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】膜分離装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20221227BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20221227BHJP
   B01D 61/12 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D65/02 530
B01D61/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018209115
(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公開番号】P2020075210
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】中 祥彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 隼人
(72)【発明者】
【氏名】平尾 匡章
【審査官】柴田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-279461(JP,A)
【文献】特開2013-141621(JP,A)
【文献】実開昭62-194495(JP,U)
【文献】特開2007-260483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
B01D 53/26
B01D 61/00-71/82
B01D 24/00-37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水を含む供給水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュールと、
供給水を前記逆浸透膜モジュールに供給する供給水ラインと、
前記逆浸透膜モジュールで分離された透過水を送出する透過水ラインと、
前記逆浸透膜モジュールで分離された濃縮水を送出する濃縮水ラインと、
前記透過水の流量を測定する第1流量測定手段と、
前記濃縮水の流量を測定する第2流量測定手段と、
前記透過水の流量と前記濃縮水の流量とから回収率を算出する回収率算出部と、
前記逆浸透膜モジュールのフラッシング工程を終了させる制御を行うフラッシング制御部と、
前記給水の積算通水量を算出する積算通水量算出部及び/又は前記第2流量測定手段によって、排水としての前記濃縮水の積算排水量を算出する積算排水量算出部と、を備え、
前記フラッシング制御部は、フラッシング時の前記積算通水量又は前記積算排水量が、前記回収率に基づいて算出される所定量に達した場合にフラッシング工程を終了させる、膜分離装置。
【請求項2】
前記フラッシング制御部は、フラッシング時の前記積算通水量又は前記積算排水量が、フラッシング時の前記回収率に加えて、給水時の前記回収率に基づいて算出される所定量に達した場合に、フラッシング工程を終了させる、請求項に記載の膜分離装置。
【請求項3】
前記フラッシング制御部は、給水時の前記回収率に対するフラッシング時の前記回収率の比が小さいほど、又は給水時の前記回収率からフラッシング時の前記回収率を引いた差分が大きいほど、前記所定量を小さくする、請求項に記載の膜分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体の製造工程、電子部品や医療器具の洗浄等においては、不純物を含まない高純度の純水が使用される。この種の純水は、一般に、地下水や水道水等の原水を、逆浸透膜モジュール(以下、「RO膜モジュール」ともいう)で逆浸透膜分離処理することにより製造される。
【0003】
逆浸透膜モジュールを用いた逆浸透膜分離処理により、純水を製造するに伴い、逆浸透膜モジュールに対して、懸濁物質、フミン質、タンパク質等の汚染物質が付着していくため、定期的に又は不定期で、逆浸透膜モジュールを洗浄する必要が発生する。このような逆浸透膜モジュールの洗浄は、一般にフラッシングと呼ばれる。
【0004】
例えば、特許文献1は、供給水の浸透圧を調整した後、フラッシング運転を実行する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-064599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来は一律、一定時間ないし一定水量の洗浄水を流した後に、フラッシングを終えていたが、例えば、フラッシング時の回収率が低くなる場合等、条件によってはフラッシング洗浄用水の節水が可能なケースも考えられる。
【0007】
本発明は、RO膜モジュールのフラッシング時における節水効果が高い膜分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、給水を含む供給水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュールと、供給水を前記逆浸透膜モジュールに供給する供給水ラインと、前記逆浸透膜モジュールで分離された透過水を送出する透過水ラインと、前記逆浸透膜モジュールで分離された濃縮水を送出する濃縮水ラインと、前記透過水の流量を測定する第1流量測定手段と、前記濃縮水の流量を測定する第2流量測定手段と、前記透過水の流量と前記濃縮水の流量とから回収率を算出する回収率算出部と、前記逆浸透膜モジュールのフラッシング工程を終了させる制御を行うフラッシング制御部と、前記給水の積算通水量を算出する積算通水量算出部及び/又は前記第2流量測定手段によって、排水としての前記濃縮水の積算排水量を算出する積算排水量算出部と、を備え、前記フラッシング制御部は、フラッシング時の前記積算通水量又は前記積算排水量が、前記回収率に基づいて算出される所定量に達した場合にフラッシング工程を終了させる、膜分離装置に関する。
【0010】
また、前記フラッシング制御部は、フラッシング時の前記積算通水量又は前記積算排水量が、フラッシング時の前記回収率に加えて、給水時の前記回収率に基づいて算出される所定量に達した場合に、フラッシング工程を終了させることが好ましい。
【0011】
また、前記フラッシング制御部は、給水時の前記回収率に対するフラッシング時の前記回収率の比が小さいほど、又は給水時の前記回収率からフラッシング時の前記回収率を引いた差分が大きいほど、前記所定量を小さくすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、RO膜モジュールのフラッシング時における節水効果が高い膜分離装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る膜分離装置の全体構成図である。
図2】本発明の実施形態で用いられる流量調整ユニットに係る圧力と流量の関係を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る膜分離装置に含まれる制御部の機能ブロック図である。
図4】本発明の実施形態におけるフラッシング時回収率とフラッシングに必要な水量との関係を示すグラフの例である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る膜分離装置の動作を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2の実施形態に係る膜分離装置に含まれる制御部の機能ブロック図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る膜分離装置の動作を示すフローチャートである。
図8】本発明の第3の実施形態に係る膜分離装置に含まれる制御部の機能ブロック図である。
図9】本発明の実施形態におけるフラッシング時回収率に対する給水時回収率の比と、フラッシングに必要な水量との関係を示すグラフの例である。
図10】本発明の第3の実施形態に係る膜分離装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔1 第1実施形態〕
〔1.1 膜分離装置の構成〕
本発明の第1の実施形態に係る膜分離装置1について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る膜分離装置1の全体構成図である。本実施形態に係る膜分離装置1は、例えば、淡水から純水を製造する純水製造システムに適用される。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る膜分離装置1は、加圧ポンプ2と、加圧側インバータ3と、逆浸透膜モジュールとしてのRO膜モジュール4と、流量調整ユニット5と、排水流量調整手段としての排水流量調整弁7(比例制御弁)と、給水ポンプ12と、給水側インバータ13と、給水圧力調整手段としての給水圧力調整弁14(比例制御弁)と、第1流量検出手段としての流量センサFM1と、第2流量検出手段としての流量センサFM2と、制御部30と、を備える。なお、制御部30と被制御対象機器との電気的接続線の図示については、省略している。
【0016】
また、膜分離装置1は、給水ラインL1と、供給水ラインL2と、透過水ラインL3と、第1濃縮水ラインL41と、第2濃縮水ラインL42とを備える。本明細書における「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0017】
給水ラインL1は、給水W1を、加圧ポンプ2まで供給するラインである。給水ラインL1の上流側の端部は、給水W1の供給源(不図示)に接続されている。給水ラインL1には、上流側に給水ポンプ12が設けられている。
【0018】
給水ポンプ12は、給水ラインL1を流通する給水W1を吸入し、加圧ポンプ2へ向けて圧送(吐出)する装置である。給水ポンプ12には、給水側インバータ13から周波数が変換された駆動電力が供給される。給水ポンプ12は、供給(入力)された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
【0019】
給水側インバータ13は、給水ポンプ12に周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路(又はその回路を持つ装置)である。給水側インバータ13は、制御部30と電気的に接続されている。給水側インバータ13には、制御部30から指令信号が入力される。給水側インバータ13は、制御部30により入力された指令信号(電流値信号又は電圧値信号)に対応する駆動周波数の駆動電力を給水ポンプ12に出力する。本実施形態においては、制御部30は、給水ポンプ12が給水W1を所定の一定圧力値で吐出するように、給水側インバータ13を制御する。
【0020】
給水圧力調整弁14は、実質的に無段階で開度を調整することにより、加圧ポンプ2に供給される給水W1の圧力を調整する比例弁である。給水圧力調整弁14は、制御部30と電気的に接続されており、制御部30からの制御により開度が調整される。
【0021】
供給水ラインL2は、給水W1を、供給水W2としてRO膜モジュール4に供給するラインである。供給水ラインL2の上流側の端部は、加圧ポンプ2に接続されている。供給水ラインL2の下流側の端部は、RO膜モジュール4の一次側入口ポートに接続されている。供給水ラインL2には、上流側から下流側に向けて順に、加圧ポンプ2、RO膜モジュール4が設けられている。
【0022】
加圧ポンプ2は、供給水ラインL2に設けられる。加圧ポンプ2は、供給水ラインL2において、給水W1を吸入し、供給水W2として、RO膜モジュール4へ向けて圧送(吐出)する装置である。加圧ポンプ2には、加圧側インバータ3から周波数が変換された駆動電力が供給される。加圧ポンプ2は、供給(入力)された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
【0023】
加圧側インバータ3は、加圧ポンプ2に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路(又はその回路を持つ装置)である。加圧側インバータ3は、制御部30と電気的に接続されている。加圧側インバータ3には、制御部30から指令信号が入力される。加圧側インバータ3は、制御部30により入力された指令信号(電流値信号又は電圧値信号)に対応する駆動周波数の駆動電力を加圧ポンプ2に出力する。
【0024】
RO膜モジュール4は、加圧ポンプ2から吐出された供給水W2を、溶存塩類が除去された透過水W3と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W41とに膜分離処理する設備である。RO膜モジュール4は、単一又は複数のRO膜エレメント(不図示)を備える。RO膜モジュール4は、これらRO膜エレメントにより供給水W2を膜分離処理し、透過水W3及び濃縮水W41を製造する。
【0025】
透過水ラインL3は、RO膜モジュール4で分離された透過水W3を送出するラインである。透過水ラインL3の上流側の端部は、RO膜モジュール4の二次側ポートに接続されている。透過水ラインL3には、流量センサFM1が設けられる。
【0026】
流量センサFM1は、透過水ラインL3を流通する透過水W3の流量を検出流量値として検出する機器である。流量センサFM1は、透過水ラインL3に接続されている。流量センサFM1は、制御部30と電気的に接続されている。流量センサFM1で検出された透過水W3の検出流量値は、制御部30へ検出信号として送信される。流量センサFM1として、例えば、流路ハウジング内に軸流羽根車又は接線羽根車(不図示)を配置したパルス発信式の流量センサを用いることができる。
【0027】
第1濃縮水ラインL41は、RO膜モジュール4で分離された濃縮水W41を送出するラインである。第1濃縮水ラインL41の上流側の端部は、RO膜モジュール4の一次側出口ポートに接続されている。また、第1濃縮水ラインL41の下流側は、流量調整ユニット5の一次側に接続されている。
【0028】
また、第2濃縮水ラインL42は、流量調整ユニット5で流量が調整された濃縮水W42を送出するラインである。第2濃縮水ラインL42の上流側の端部は、流量調整ユニット5の二次側に接続されている。また、第2濃縮水ラインL42には、排水流量調整手段としての排水流量調整弁7と流量センサFM2とが、この順で設けられる。
【0029】
なお、以降では、第1濃縮水ラインL41と第2濃縮水ラインL42とをまとめて、「濃縮水ラインL4」と総称することがある。また、濃縮水W41と濃縮水W42とをまとめて、「濃縮水W4」と総称することがある。
【0030】
流量調整ユニット5は、当該流量調整ユニット5における差圧によらず、実質的に定流量の濃縮水を流通させる定流量要素と、当該流量調整ユニット5における差圧に実質的に比例して濃縮水の流量が高くなる比例要素とを備える。流量調整ユニット5における差圧は、具体的には、第1濃縮水ラインL41の水圧と第2濃縮水ラインL42の水圧との差圧である。定流量要素は、補助動力や外部操作を必要とせずに一定流量値を保持し、例えば水ガバナの名称で呼ばれるものを用いてもよい。また、比例要素としては、例えばオリフィスの名称で呼ばれるものを用いてもよく、オリフィスから流れる濃縮水W4の流量が、当該流量調整ユニット5における差圧に比例する。
【0031】
図2は、RO膜モジュール4の入口圧力と、流量調整ユニット5を流れる濃縮水の流量との関係の例を示すグラフである。流量調整ユニット5は、定流量要素を備えることから、入口圧力が発生すると、流量調整ユニット5を流れる濃縮水の流量は一気にA点まで上昇する。すなわち近似的には、入口圧力の発生と同時にA点の高さの流量が流量調整ユニット5に流れる。同時に、流量調整ユニット5は比例要素を備えることから、以降、入口圧力が上昇するに従い、流量調整ユニット5を流れる濃縮水の流量は、一次関数的に上昇する。
【0032】
なお、流量調整ユニット5において、定流量要素と比例要素とは一体的に構成されていてもよく、別体として構成されていてもよい。一体的に構成されている場合には、例えば、比例要素の流れ方向が、流量調整ユニット5の長軸方向と一致し、定流量要素の流れ方向が流量調整ユニット5の長軸方向に直交するように構成してもよい。あるいは、比例要素の流れ方向が流量調整ユニット5の長軸方向に直交し、定流量要素の流れ方向が流量調整ユニット5の長軸方向と一致するように構成してもよい。あるいは、定流量要素の流れ方向と比例要素の流れ方向が、共に流量調整ユニット5の長軸方向と一致するように構成してもよい。
【0033】
排水流量調整弁7は、第2濃縮水ラインL42から装置外へ排出する濃縮排水としての濃縮水W42の排水流量を調整可能な弁である。排水流量調整弁7は、制御部30と電気的に接続されている。排水流量調整弁7の弁開度は、制御部30から送信される駆動信号により制御される。制御部30から電流値信号(例えば、4~20mA)を排水流量調整弁7に送信して、弁開度を制御することにより、濃縮水W42の排水流量を調整することができる。
【0034】
流量センサFM2は、排水流量調整弁7によって調整された後に第2濃縮水ラインL42から装置外へ排出される濃縮排水としての濃縮水W42の流量を検出流量値として検出する機器である。流量センサFM2は、第2濃縮水ラインL42に接続されている。流量センサFM2は、制御部30と電気的に接続されている。流量センサFM2で検出された濃縮水W42の検出流量値は、制御部30へ検出信号として送信される。流量センサFM2として、例えば、流路ハウジング内に軸流羽根車又は接線羽根車(不図示)を配置したパルス発信式の流量センサを用いることができる。
【0035】
〔1.2 制御部の機能ブロック〕
制御部30は、CPU、ROM、RAM、CMOSメモリ等を有し、これらはバスを介して相互に通信可能に構成される、当業者にとって公知のものである。
【0036】
CPUは膜分離装置1を全体的に制御するプロセッサである。該CPUは、ROMに格納された各種プログラムを、バスを介して読み出し、該各種プログラムに従って膜分離装置1の全体を制御することで、図3の機能ブロック図に示すように、回収率算出部301、積算通水量算出部302、フラッシング制御部303の機能を実現するように構成される。
【0037】
回収率算出部301は、流量センサFM1によって測定される透過水W3の流量値と流量センサFM2によって測定される濃縮水W42の流量値とから、膜分離装置1における回収率を算出する。とりわけ、回収率算出部301は、膜分離装置1の給水時及びフラッシング時の双方において、回収率を算出する。
【0038】
積算通水量算出部302は、膜分離装置1のフラッシング時における、RO膜モジュール4への供給水W2の積算通水量を算出する。より詳細には、積算通水量算出部302は、膜分離装置1でのフラッシング開始指令をトリガとして、これ以降に流量センサFM1によって測定される透過水W3の流量値と、流量センサFM2によって測定される濃縮水W42の流量値とから、RO膜モジュール4への供給水W2の積算通水量を算出する。
【0039】
フラッシング制御部303は、膜分離装置1のフラッシング時において、回収率算出部301によって算出された回収率に基づいて、フラッシング工程を終了させる。とりわけ、本実施形態においては、フラッシング制御部303は、積算通水量算出部302によって算出されるフラッシング時における積算通水量が、回収率算出部301によって算出された回収率に基づいて算出されるフラッシングに必要な水量(第1の所定量)に達した場合に、フラッシング工程を終了させる。
【0040】
図4は、回収率算出部301によって算出される回収率と、フラッシングに必要な水量との関係を示す。従来、透過水量が少なく濃縮排水量が多くなることで回収率が低くなるほど、フラッシング効果が高くなることが知られている。具体的には、RO膜モジュール4の一次側入口から二次側に透過する水量よりも、一次側入口からRO膜を透過せず一次側出口に流れる水量の割合が多くなると共に、RO膜表面での流速が速くなり、膜の表面に付いた汚れを剥離させる度合いが高くなることにより、フラッシング効果が高くなる。すなわち、回収率が低くなる程、所定のフラッシング効果を奏するために必要な水量は少なくて済む。このため、回収率が高くなるに伴い、フラッシングに必要な水量は単調増加する。図4のグラフにおいて、フラッシング時回収率aよりもフラッシング時回収率bの方が高い場合、フラッシング時回収率aの場合にフラッシングに必要な水量Qaよりも、フラッシング時回収率bの場合にフラッシングに必要な水量Qbの方が高くなる。なお、図4のグラフにおいては、回収率とフラッシングに必要な水量との関係は線形となっているが、これには限定されない。
【0041】
本実施形態に係る膜分離装置1においては、図4に例示されるフラッシング時回収率とフラッシングに必要な水量との関係を理論的に導き出し、フラッシング制御部303は、この関係に基づいて、第1の所定量を算出してもよい。あるいは、膜分離装置1において、経験則に基づいて予めフラッシング時回収率とフラッシングに必要な水量との関係を導き出し、フラッシング制御部303は、この関係に基づいて、第1の所定量を算出してもよい。
【0042】
〔1.3 膜分離装置の動作〕
図5は、膜分離装置1の動作を示すフローチャートである。
ステップS1において、フラッシング制御部303は、回収率算出部301によって算出されるフラッシング時の回収率に基づいて、第1の所定量を算出する。
ステップS2において、積算通水量算出部302は、RO膜モジュール4への積算通水量を算出する。
【0043】
ステップS3において、RO膜モジュール4への積算通水量が第1の所定値以上である場合(S3:YES)には、処理はステップS4に移行する。RO膜モジュール4への積算通水量が第1の所定値未満である場合(S3:NO)には、処理はステップS1に戻る。
【0044】
ステップS4において、フラッシング制御部303はフラッシング工程を終了し、一連の処理を終了する。
【0045】
〔1.4 第1実施形態の効果〕
上述した第1実施形態に係る膜分離装置1によれば、例えば、以下のような効果が得られる。
第1実施形態に係る膜分離装置1は、透過水W3の流量と濃縮水W4の流量とから回収率を算出する回収率算出部301と、フラッシング時の回収率に基づいてフラッシング工程を終了させるフラッシング制御部303とを備える。
これにより、膜表面での濃縮度の低下が速い場合、すなわち、RO膜モジュール4の一次側入口から二次側に透過する水量よりも、一次側入口からRO膜を透過せず一次側出口に流れる水量の割合が多くなる場合に、RO膜表面での流速が速くなり、膜の表面に付いた汚れを剥離させる度合いが高くなる。このことにより、所定のフラッシング効果を奏するために必要な水量が少なくて済むため、節水効果が高いフラッシングを実行することが可能となる。
【0046】
また、膜分離装置1は、供給水W2の積算通水量を算出する積算通水量算出部302を更に備え、フラッシング制御部303は、フラッシング時の積算通水量が、フラッシング時の回収率に基づいて算出される所定量に達した場合に、フラッシング工程を終了させる。
フラッシング時の回収率に応じて、フラッシング時の必要水量を決定することにより、節水効果が高いフラッシングを実行することが可能となる。
【0047】
〔2 第2実施形態〕
〔2.1 膜分離装置の構成〕
本発明の第2の実施形態に係る膜分離装置1Aの全体構成は、第1の実施形態に係る膜分離装置1と基本的に同一であるため、その図示と説明を省略する。第2の実施形態に係る膜分離装置1Aに備わる制御部30Aが、第1の実施形態に係る膜分離装置1に備わる制御部30とは異なる機能ブロックを有する点で、第2の実施形態に係る膜分離装置1Aは、第1の実施形態に係る膜分離装置1とは異なる。
【0048】
〔2.2 制御部の機能ブロック〕
図6は、制御部30Aの機能ブロック図である。制御部30Aは、制御部30とは異なり、積算通水量算出部302を有さず、その代わりに、積算排水量算出部304を有する。また、制御部30Aは、フラッシング制御部303の代わりにフラッシング制御部303Aを有する。
【0049】
積算排水量算出部304は、膜分離装置1Aのフラッシング時における、第2濃縮水ラインL42からの濃縮排水としての濃縮水W42の積算排水量を算出する。より詳細には、積算排水量算出部304は、膜分離装置1Aでのフラッシング開始指令をトリガとして、これ以降に流量センサFM2によって測定される濃縮水W42の流量値から、第2濃縮水ラインL42からの濃縮排水としての濃縮水W42の積算排水量を算出する。
【0050】
フラッシング制御部303Aは、膜分離装置1Aのフラッシング時において、回収率算出部301によって算出された回収率に基づいて、フラッシング工程を終了させる。とりわけ、フラッシング制御部303Aは、積算排水量算出部304によって算出されるフラッシング時における積算排水量が、回収率算出部301によって算出された回収率に基づいて算出されるフラッシングに必要な水量(第2の所定量)に達した場合に、フラッシングを終了させる。
【0051】
〔2.3 膜分離装置の動作〕
図7は、膜分離装置1Aの動作を示すフローチャートである。
ステップS11において、フラッシング制御部303Aは、回収率算出部301によって算出されるフラッシング時の回収率に基づいて、第2の所定量を算出する。
ステップS12において、積算排水量算出部304は、第2濃縮水ラインL42からの積算排水量を算出する。
【0052】
ステップS13において、第2濃縮水ラインL42からの積算排水量が第2の所定値以上である場合(S13:YES)には、処理はステップS14に移行する。第2濃縮水ラインL42からの積算排水量が第2の所定値未満である場合(S13:NO)には、処理はステップS11に戻る。
【0053】
ステップS14において、フラッシング制御部303Aはフラッシング工程を終了し、一連の処理を終了する。
【0054】
〔2.4 第2実施形態の効果〕
上述した第2実施形態に係る膜分離装置1Aによれば、第1実施形態に係る膜分離装置1と同様の効果が得られる。
【0055】
また、膜分離装置1Aは、濃縮水W4の積算排水量を算出する積算排水量算出部304を更に備え、フラッシング制御部303は、フラッシング時の積算排水量が、フラッシング時の回収率に基づいて算出される所定量に達した場合に、フラッシング工程を終了させる。
フラッシング時の回収率に応じて、フラッシング時の必要水量を決定することにより、節水効果が高いフラッシングを実行することが可能となる。
【0056】
〔3 第3実施形態〕
〔3.1 膜分離装置の構成〕
本発明の第3の実施形態に係る膜分離装置1Bの全体構成は、第1の実施形態に係る膜分離装置1と基本的に同一であるため、その図示と説明を省略する。第3の実施形態に係る膜分離装置1Bに備わる制御部30Bが、第1の実施形態に係る膜分離装置1に備わる制御部30とは異なる機能ブロックを有する点で、第3の実施形態に係る膜分離装置1Bは、第1の実施形態に係る膜分離装置1とは異なる。
【0057】
〔3.2 制御部の機能ブロック〕
図8は、制御部30Bの機能ブロック図である。制御部30Bは、制御部30とは異なり、フラッシング制御部303の代わりにフラッシング制御部303Bを有する。
【0058】
フラッシング制御部303は、膜分離装置1のフラッシング時において、回収率算出部301によって算出された回収率に基づいて、フラッシング工程を終了させる。とりわけ、本実施形態においては、フラッシング制御部303は、積算通水量算出部302によって算出されるフラッシング時における積算通水量が、回収率算出部301によって算出された回収率に基づいて算出されるフラッシングに必要な水量(第1の所定量)に達した場合に、フラッシング工程を終了させる。
【0059】
フラッシング制御部303Bは、膜分離装置1Bのフラッシング時において、回収率算出部301によって算出された回収率に基づいて、フラッシング工程を終了させる。とりわけ、フラッシング制御部303Bは、積算通水量算出部302によって算出されるフラッシング時における積算通水量が、回収率算出部301によって算出された、フラッシング時の回収率と給水時の回収率と基づいて算出されるフラッシングに必要な水量(第3の所定量)に達した場合に、フラッシングを終了させる。
【0060】
図9は、回収率算出部301によって算出されるフラッシング時の回収率と給水時の回収率との比と、フラッシングに必要な水量との関係を示す。濃縮水の濃縮倍率は、以下の式(1)で計算される。
濃縮倍率=1/(1-回収率/100) (1)
そのため、フラッシング時の回収率と給水時の回収率にギャップがあるほど、濃縮度合いの差が大きくなり、フラッシング効果が高くなることが知られている。すなわち、フラッシング時の回収率が給水時の回収率に比較して小さいほど、所定のフラッシング効果を奏するために必要な水量は少なくて済む。このため、給水時の回収率に対するフラッシング時の回収率の比が大きくなるに従い、フラッシングに必要な水量は単調増加する。図9のグラフにおいて、フラッシング時回収率/給水時回収率の比aよりもフラッシング時回収率/給水時回収率の比bの方が高い場合、フラッシング時回収率/給水時回収率の比aの場合にフラッシングに必要な水量Qaよりも、フラッシング時回収率/給水時回収率の比bの場合にフラッシングに必要な水量Qbの方が高くなる。なお、図9のグラフにおいては、フラッシング時回収率/給水時回収率の比とフラッシングに必要な水量との関係は線形となっているが、これには限定されない。
【0061】
本実施形態に係る膜分離装置1Bにおいては、図9に例示されるフラッシング時回収率/給水時回収率の比とフラッシングに必要な水量との関係を理論的に導き出し、フラッシング制御部303Bは、この関係に基づいて、第3の所定量を算出してもよい。あるいは、膜分離装置1Bにおいて、経験則に基づいて予めフラッシング時回収率/給水時回収率の比とフラッシングに必要な水量との関係を導き出し、フラッシング制御部303Bは、この関係に基づいて、第3の所定量を算出してもよい。
【0062】
〔2.3 膜分離装置の動作〕
図10は、膜分離装置1Bの動作を示すフローチャートである。
ステップS21において、フラッシング制御部303Bは、回収率算出部301によって算出されるフラッシング時の回収率と給水時の回収率とに基づいて、第3の所定量を算出する。
ステップS22において、積算通水量算出部302は、RO膜モジュール4への積算通水量を算出する。
【0063】
ステップS23において、積算通水量が第3の所定値以上である場合(S23:YES)には、処理はステップS24に移行する。積算通水量が第3の所定値未満である場合(S23:NO)には、処理はステップS21に戻る。
【0064】
ステップS24において、フラッシング制御部303Bはフラッシング工程を終了し、一連の処理を終了する。
【0065】
〔3.4 第3実施形態の効果〕
上述した第3実施形態に係る膜分離装置1Bによれば、第1実施形態に係る膜分離装置1及び第2の実施形態に係る膜分離装置1Bと同様の効果が得られる。
【0066】
また、第3実施形態に係る膜分離装置1Bにおいては、フラッシング制御部303Bは、フラッシング時の回収率に加えて、給水時の回収率に基づいてフラッシング工程を終了させる。更に、フラッシング制御部303Bは、給水時の回収率に対するフラッシング時の回収率の比が小さいほど、第3の所定量を小さくする。
これにより、フラッシング効率の高低に応じて、節水効果の点で最適なフラッシングを実行することが可能となる。
【0067】
〔4 変形例〕
膜分離装置1~1Bにおいて電気伝導度を計測することにより濃縮度を把握し、回収率算出部301は、この濃縮度に基づいて回収率を算出してもよい。
また、膜分離装置1~1Bにおいて、給水W1又は供給水W2等の水温に基づいて、フラッシングに必要な水量やフラッシングの時間を調整してもよい。
また、膜分離装置1~1Bにおいて、RO膜モジュール4の下部からエアを供給して、中空糸膜の束を揺動させるバブリング工程を実行することにより、更に節水効果を高めてもよい。
【0068】
更に、第3の実施形態に係る膜分離装置1Bにおいて、フラッシング制御部303Bは、フラッシング時回収率/給水時回収率の比に基づいてフラッシングに必要な水量を導き出していたが、フラッシング時回収率と給水時回収率との差に基づいてフラッシングに必要な水量を導き出してもよい。
また、第3の実施形態に係る膜分離装置1Bにおいて、フラッシング制御部303Bは、RO膜モジュール4への積算通水量と第3の所定量との比較に基づいてフラッシング工程を終了させていたが、第2濃縮水ラインL42からの積算排水量と第3の所定量との比較に基づいてフラッシング工程を終了させてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1,1A,1B 膜分離装置
2 加圧ポンプ
3 加圧側インバータ(インバータ)
4 RO膜モジュール(逆浸透膜モジュール)
5 流量調整ユニット
7 排水流量調整弁
12 給水ポンプ
13 給水側インバータ(インバータ)
14 給水圧力調整弁
FM1,FM2 流量センサ(流量検出手段)
L1 給水ライン
L2 供給水ライン
L3 透過水ライン
L4 濃縮水ライン
L41 第1濃縮水ライン
L42 第2濃縮水ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10