(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】回転装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
G01D5/245 Z
(21)【出願番号】P 2018224962
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴 真人
【審査官】後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-169515(JP,A)
【文献】国際公開第2007/111031(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252
G01D 5/26-5/38
G01D 5/39-5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定体と、
前記固定体に対して第一中心線回りに回転する第一回転体と、
前記第一回転体の回転力によって当該第一回転体よりも高い回転速度で第二中心線回りに回転する第二回転体と、
前記第二回転体の回転角度を検出するセンサと、
前記第二回転体を前記第一回転体に接触状態として支持すると共に、当該第一回転体が前記第一中心線に直交する方向に変位すると当該変位に応じて前記第二回転体が当該第一回転体と同じ方向に変位可能として支持する支持部と、
を備える、回転装置。
【請求項2】
前記支持部は、前記第二中心線を中心とし前記第二回転体を支持する軸と、当該軸を前記第二中心線に直交する方向に変位可能として支持する軸受部と、を有し、
前記軸受部は、前記軸を回転可能として支持する転がり軸受と、当該転がり軸受を支える弾性部材と、を有する、請求項1に記載の回転装置。
【請求項3】
前記第二回転体及び前記センサは、前記第一中心線を中心とする周方向に沿って等間隔で少なくとも三つ設けられている、請求項1又は2に記載の回転装置。
【請求項4】
前記第二回転体及び前記センサは、前記第一中心線を中心として90°間隔で周方向に沿って四つ設けられている、請求項1又は2に記載の回転装置。
【請求項5】
前記第二回転体は、一対を一組として前記第一回転体の周囲に配置され、
前記センサとして、一組の前記第二回転体それぞれを検出対象とする第一のセンサ及び第二のセンサが設けられ、
前記第一のセンサ及び前記第二のセンサそれぞれは、前記第二回転体それぞれが一回転する間に周期的な波形信号を複数周期について出力し、前記第二回転体が変位すると、当該第一のセンサは位相が遅れた波形信号を出力し、当該第二のセンサは位相が進んだ波形信号を出力し、
前記波形信号に基づいて、前記第一のセンサの検出対象位置における前記第二回転体の回転角度及び前記第二のセンサの検出対象位置における前記第二回転体の回転角度を求めると共に、一対の前記第二回転体の前記回転角度の差に基づいて当該第二回転体の変位量を求める、請求項1~4のいずれか一項に記載の回転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ付きの回転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転体に作用する荷重を、センサを用いて検出する技術が知られている。例えば、特許文献1には、自動車用のいわゆるハブユニット(車輪用軸受装置)に作用する荷重をセンサによって検出する技術が開示されている。ハブユニットは、車体側に固定される外輪と、車輪が取り付けられるハブ軸と、これら外輪とハブ軸との間に設けられた転動体とを備える。特許文献1では、回転体となるハブ軸にリング状のセンサロータが取り付けられ、外輪にセンサが取り付けられている。センサは、磁気センサであり、ハブ軸と一体回転するセンサロータの回転位相を検出する。
【0003】
近年、自動車において、走行の際の運転制御を行うために、車輪に作用する荷重や車輪の回転速度等の様々な情報が必要とされている。特許文献1に開示の技術によれば、車輪から作用するハブ軸の荷重及びハブ軸の回転速度の両方が検出可能となる。なお、車輪からハブユニットに作用する荷重は、ドライバの操舵、及び、加減速の操作に依存し、これらによって変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハブ軸の製造において、偏心等の形状に関する製造誤差が生じることがある。また、リング状のセンサロータがハブ軸に取り付けられるが、その際に、両者の中心線が精度良く一致しないこともある。この場合、ハブ軸の回転中心線に対してセンサロータが偏心回転する。このような偏心回転は周期的な変動となってセンサの検出信号に現れる。周期的な変動はセンサの検出信号において不要成分となる。ハブ軸が高速で回転している場合、不要成分の周波数は高いことから、その不要成分については、センサの検出信号から例えばローパスフィルタ又はノッチフィルタによって除去できる。しかし、ハブ軸が低速で回転している場合、
図13に示されるように、検出の目的となるハブ軸に作用する荷重F1の周波数と、不要成分F2の周波数とが、同じ低周波帯にある。この場合、不要成分F2を除去するためにノッチフィルタ等を用いると、検出目的となる荷重F1による信号までもが削除されてしまうという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、センサの検出信号から不要成分を低減することを可能とさせる機構を備えた回転装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の回転装置は、固定体と、前記固定体に対して第一中心線回りに回転する第一回転体と、前記第一回転体の回転力によって当該第一回転体よりも高い回転速度で第二中心線回りに回転する第二回転体と、前記第二回転体の回転角度を検出するセンサと、前記第二回転体を前記第一回転体に接触状態として支持すると共に、当該第一回転体が前記第一中心線に直交する方向に変位すると当該変位に応じて前記第二回転体が当該第一回転体と同じ方向に変位可能として支持する支持部と、を備える。
【0008】
この回転装置によれば、第一回転体に対して第一中心線に直交する方向の荷重が作用すると、第一回転体は同方向に変位する。すると、第二回転体も同じ方向に変位する。この変位は、第二回転体の回転角度の変化となって現れる。センサによってこの回転角度の変化が検出され、検出結果を演算することで前記荷重が求められる。これに対して、例えば第一回転体の偏心等による周期的な変動成分(不要成分)は、第二回転体によって増速される。つまり、不要成分は高周波化される。このため、第一回転体が低速で回転している場合であっても、不要成分は高周波化されることから、この高周波化された不要成分を例えばノッチフィルタ等によって削除すればよい。以上より、センサによる検出対象を、第一回転体ではなく、第一回転体よりも高い回転速度で回転する第二回転体とする前記構成によれば、センサの検出信号から不要成分を低減することが可能となる。
【0009】
また、前記支持部は、前記第二中心線を中心とし前記第二回転体を支持する軸と、当該軸を前記第二中心線に直交する方向に変位可能として支持する軸受部と、を有し、
前記軸受部は、前記軸を回転可能として支持する転がり軸受と、当該転がり軸受を支える弾性部材と、を有するのが好ましい。この構成により、第一回転体が第一中心線に直交する方向に変位すると、第二回転体を第一回転体と同じ方向に変位可能とする構成が得られる。
【0010】
また、前記第二回転体及び前記センサは、前記第一中心線を中心とする周方向に沿って等間隔で少なくとも三つ設けられていればよい。この構成により、第一中心線に直交するどの方向に第一回転体が変位しても、少なくとも三つのセンサの検出結果を用いて演算することで、前記荷重が求められる。
また、前記第二回転体及び前記センサは、前記第一中心線を中心として90°間隔で周方向に沿って四つ設けられているのが好ましい。この構成により、第一中心線に直交するどの方向に第一回転体が変位しても、四つのセンサの検出結果を用いて演算することで、前記荷重が容易に求められる。
【0011】
また、前記第二回転体は、一対を一組として前記第一回転体の周囲に配置され、前記センサとして、一組の前記第二回転体それぞれを検出対象とする第一のセンサ及び第二のセンサが設けられ、前記第一のセンサ及び前記第二のセンサそれぞれは、前記第二回転体それぞれが一回転する間に周期的な波形信号を複数周期について出力し、前記第二回転体が変位すると、当該第一のセンサは位相が遅れた波形信号を出力し、当該第二のセンサは位相が進んだ波形信号を出力し、前記波形信号に基づいて、前記第一のセンサの検出対象位置における前記第二回転体の回転角度及び前記第二のセンサの検出対象位置における前記第二回転体の回転角度を求めると共に、一対の前記第二回転体の前記回転角度の差に基づいて当該第二回転体の変位量を求めるのが好ましい。この構成により、一対のセンサから出力される波形信号に基づいて、第二回転体の変位量が求められる。この変位量は第一回転体の変位量に相当することから、第一回転体の変位量が求められる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の回転装置によれば、センサの検出信号から不要成分を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】(A)は、前側及び後側の支持部を軸方向他方側から見た図であり、(B)は、上側及び下側の支持部を軸方向他方側から見た図である。
【
図4】回転状態にある回転装置に負荷が作用していない状態における、センサの出力を示す図である。
【
図5】回転状態にある回転装置にZ軸方向に沿って下向きの荷重が作用した場合のセンサの出力を示す図である。
【
図6】処理装置が実行する処理を含むフロー図である。
【
図10】センサの配置が変更された軸受装置を軸方向他方側から見た図である。
【
図11】センサから出力される波形信号の説明図である。
【
図12】波形信号が変換された角度信号の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔回転装置10の構成について〕
図1は、回転装置10の一例を示す模式図であり、回転装置10の上側半分を、その中心線C1を含む断面で示している。本実施形態の回転装置10は自動車用のハブユニット(車輪用軸受装置)である。回転装置10は、ハブ軸(内軸部材)11と、ハブ軸11の径方向外方に設けられた筒状の外輪(外輪部材)12と、転動体である玉13とを備える。この回転装置10において、中心線C1に沿った方向を「軸方向」と称する。ここでは、「軸方向」に、中心線C1に平行な方向も含まれるものとする。中心線C1に直交する方向が、回転装置10の径方向であり、単に「径方向」と称する。本実施形態では、ハブ軸11が中心線C1回りに回転する。中心線C1回りの回転方向を「周方向」と称する。また、中心線C1に沿った方向をY軸方向とする。中心線C1に直交する水平方向をX軸方向とする。中心線C1に直交する鉛直方向をZ軸方向とする。各図において、X軸、Y軸、及びZ軸による直交座標系が定義される。ハブユニットである回転装置10が自動車の車体側に固定された状態で、ステアリング操舵角がゼロの状態において、自動車の前後方向はX軸に沿った方向と一致し、左右方向はY軸に沿った方向と一致し、上下方向はZ軸に沿った方向と一致する。
【0015】
外輪12は、円筒形状である外輪本体部21と、この外輪本体部21から径方向外方に延びて設けられている固定用のフランジ部22とを有する。外輪本体部21の内周側に外軌道面12a,12bが形成されている。外輪12はフランジ部22によって車体側部材であるナックル(図示せず)に取り付けられ、これにより外輪12を含む回転装置10が車体に固定される。本実施形態では、外輪12が固定体となり、ハブ軸11が回転体(回転体の一部)となる。ハブ軸11が外輪12に対して中心線C1回りに回転する。中心線C1を「第一中心線C1」と称する。
【0016】
ハブ軸11は、内軸23と、この内軸23の軸方向他方側に取り付けられた内輪24とを有する。内軸23は、外輪12の径方向内方に設けられている内軸本体部26と、内軸本体部26の軸方向一方側に設けられているフランジ部27とを有する。フランジ部27は、内軸本体部26の軸方向一方側から径方向外方に延びて設けられている。フランジ部27の軸方向一方側の面に、図示しないが、車輪及びブレーキロータが取り付けられる。
【0017】
内輪24は、環状の部材であり、内軸本体部26の軸方向他方側に外嵌し固定される。内軸本体部26の外周面の一部に第一の内軌道面11aが形成され、内輪24の外周面に第二の内軌道面11bが形成されている。軸方向一方側における外軌道面12aと内軌道面11aとの間に玉13が複数配置される。軸方向他方側における外軌道面12bと内軌道面11bとの間に玉13が複数配置される。玉13は、外輪12とハブ軸11との間に二列となって設けられている。各列に含まれる複数の玉13が保持器(図示せず)によって保持される。
【0018】
回転装置10は、更に、ハブ軸11と一体回転する環状部材を備える。本実施形態の前記環状部材は歯車14(以下、「大歯車14」と称する。)であり、第一中心線C1を中心として設けられている。大歯車14及び内輪24が、内軸本体部26の端部に外嵌していて、端部に形成されたねじ部にボルト15を締め付けることにより、大歯車14及び内輪24は、軸方向に抜け止めされ内軸23に固定される。
【0019】
ハブ軸11及びこのハブ軸11と一体となる大歯車14が「第一回転体31」であるとすると、回転装置10は、更に、「第二回転体20」を備える。本実施形態の第二回転体20は、大歯車14と噛み合う小歯車16と、小歯車16と一体回転する円板状のセンサロータ17とを有する。本実施形態のセンサロータ17は歯車(平歯車)により構成されている。センサロータ17は強磁性体により構成されるのが好ましい。小歯車16及びセンサロータ17は、軸18に回転不能に取り付けられている。軸18は、外輪12に設けられた支持部19に含まれる。軸18は、外輪12に取り付けられた軸受部35によって支持されている。軸18の中心線を「第二中心線C2」と称する。小歯車16及びセンサロータ17は、第二中心線C2を中心として回転可能である。
【0020】
回転装置10は、更にセンサ7を備える。
図2は、回転装置10を軸方向他方側から見た図である。なお、
図2では、大歯車14、小歯車16、及び歯車から成るセンサロータ17は、簡略化のために円板として示されている。第二回転体20及びセンサ7は、大歯車14の周囲に複数設けられている。本実施形態では、一つの第二回転体20及びその近傍の一つのセンサ7により一つの組が構成され、この組が周方向に沿って等間隔で四箇所に設けられている。
【0021】
ここで、センサ7、第二回転体20、小歯車16、センサロータ17、及び軸18に付されている符号の添字(A,B,C,D)に関して説明する。添字A,B,C,Dは、第一中心線C1を基準とした配置を意味しており、
図2において、第一中心線C1を基準とした場合の、前、後、上、下を示す。例えば、前に位置するセンサの符号は「7A」であり、前に位置する第二回転体の符号は「20A」である。センサ7、第二回転体20、小歯車16、センサロータ17、及び軸18それぞれの構成は、前、後、上、下に関わらず、同じであることから、センサ7、第二回転体20、小歯車16、センサロータ17、及び軸18それぞれに関して共通する説明では、添字(A,B,C,D)を省略する。
【0022】
小歯車16は、大歯車14よりも直径(PCD)が小さい。このため、小歯車16の回転速度(回転数)は、大歯車14の回転速度(回転数)よりも高くなる。センサロータ17の回転速度(回転数)は、小歯車16の回転速度(回転数)と同じである。センサロータ17は、大歯車14と小歯車16との歯車比に応じて増速される。センサロータ17の回転速度(回転数)は、ハブ軸11の回転速度(回転数)に前記歯車比(歯車比>1)を乗算した値となる。歯車比は例えば5~10である。以上より、センサロータ17を含む第二回転体20は、ハブ軸11及び大歯車14(第一回転体31)の回転力によって、ハブ軸11及び大歯車14よりも高い回転速度で第二中心線C2回りに回転する。そして、第二回転体20は、前後上下の四箇所に設けられている。各第二回転体20は、外輪12に設けられた支持部19により第二中心線C2回りに回転可能として支持されている。
【0023】
図3(A)は、前側及び後側の支持部19を軸方向他方側から見た図である。
図3(B)は、上側及び下側の支持部19を軸方向他方側から見た図である。各支持部19は、軸18と、軸18を支持する軸受部35とを有する、軸受部35は、転がり軸受28と、複数の弾性部材(板ばね)29とを有する。
図1及び
図3(A)(B)に示されるように、外輪本体部21には、凹部30が形成されている。転がり軸受28は弾性部材29を介して凹部30に取り付けられている。弾性部材29は、第二中心線C2を中心とした径方向に弾性変形可能であり、軸18と一体となる転がり軸受28の、第二中心線C2を中心とした径方向の変位を許容する。なお、各弾性部材29は、第二中心線C2を中心とした径方向に弾性変形した状態で設けられている。弾性部材29の第二中心線C2を中心とした径方向の剛性は、ハブ軸11の第一中心線C1を中心とした径方向の剛性よりも小さい。
【0024】
図3(A)に示す前側及び後側の各支持部19において、転がり軸受28をZ軸方向に挟む一対の弾性部材29,29が設けられている。このため、ハブ軸11及び大歯車14が第一中心線C1を中心とした径方向(Z軸方向)の成分を有して変位すると、大歯車14が小歯車16A(16B)を同じ径方向(Z軸方向)に押して変位させる。この変位により小歯車16A(16B)を含む第二回転体20A(20B)、及び第二回転体20A(20B)を支持する転がり軸受28は、弾性部材29,29に抗して、第二中心線C2を中心とした径方向(Z軸方向)に変位する。つまり、第二中心線C2が、第一中心線C1を中心とした径方向(Z軸方向)に変位する。
図3(B)に示す上側及び下側の各支持部19において、転がり軸受28をX軸方向に挟む一対の弾性部材29,29が設けられている。このため、ハブ軸11及び大歯車14が第一中心線C1を中心とした径方向(X軸方向)の成分を有して変位すると、大歯車14が小歯車16C(16D)を同じ径方向(X軸方向)に押して変位させる。この変位により小歯車16C(16D)を含む第二回転体20C(20D)、及び第二回転体20C(20D)を支持する転がり軸受28は、弾性部材29,29に抗して、第二中心線C2を中心とした径方向(X軸方向)に変位する。つまり、第二中心線C2が、第一中心線C1を中心とした径方向(X軸方向)に変位する。
【0025】
図2において、例えば、ハブ軸11に下向きの荷重が作用すると、ハブ軸11が下向き(Z軸方向)に変位する。この場合、大歯車14が、前側に位置する小歯車16Aと後側に位置する小歯車16Bを下向き(Z方向)に押して変位させる。これにより、前後のセンサロータ17A,17Bが下方(Z方向)に変位する。センサロータ17A,17Bの変位は、前記支持部19の構成により、妨げられず、また、センサロータ17A,17Bの回転自在の状態は維持される。また、この場合、大歯車14が、前側に位置する小歯車16Aを下向き(Z方向)に押して変位させようとする。この変位させようとした分だけ、前側の小歯車16Aを大歯車14と接する側の接線方向の下向き(Z方向)に回転させる。また、大歯車14が、後側に位置する小歯車16Bを下向き(Z方向)に押して変位させようとする。この変位させようとした分だけ、後側の小歯車16Bを大歯車14と接する側の接線方向の下向き(Z方向)に回転させる。
【0026】
以上より、支持部19は、第二回転体20の小歯車16を、第一回転体31に含まれる大歯車14に接触した状態(噛み合った状態)を保って支持する。更に、支持部19は、ハブ軸11及び大歯車14(第一回転体31)が第一中心線C1に直交する方向に変位すると、この変位に応じて第二回転体20が第一回転体31と同じ方向に変位可能として支持する。つまり、支持部19は、軸18を第一中心線C1に直交する方向に変位可能として支持する軸受部35を有する。また、軸受部35は、軸18を第二中心線C2に直交する方向に変位可能として支持する、とも言える。このように軸18を支持するために、軸受部35は、軸18を回転可能として支持する転がり軸受28と、転がり軸受28を支える弾性部材29とを備える。
【0027】
センサ7は、磁気センサであり、磁気抵抗素子を用いた回転センサである。磁気抵抗素子は、磁束密度変化に応じて抵抗値が変わる素子であり、センサ7は、前記抵抗値の変化をブリッジ回路の分圧値の変化とし、この変化が電圧信号として出力される。本実施形態のセンサ7は、A相の磁気抵抗素子と、B相の磁気抵抗素子とを有する。A相及びB相それぞれの磁気抵抗素子によって、センサ7が対向する第二回転体20の移動に伴う磁界変化が検出される。本実施形態では、センサロータ17は歯車からなり、センサ7は、その歯車の歯部が設けられている外周部を検出対象とする。センサロータ17が第二中心線C2回りに回転することで、センサ7における磁界が変化し、この磁界変化に基づくセンサ7の検出信号により、第二回転体20の第二中心線C2回りの回転角度(回転位相)が検出される。より具体的に説明すると、センサ7が対向する第二回転体20の移動に伴って、前記A相の磁気抵抗素子からSIN信号が出力され、前記B相の磁気抵抗素子からCOS信号が出力される。これらSIN信号とCOS信号とに基づいて、センサ7に対するセンサロータ17の位置(回転角度)が検出される。なお、前記のような位置(回転角度)の検出は、センサ7の信号を取得する処理装置40(
図1参照)によって行われる。なお、処理装置40は、回転装置10外に設けられていればよく、自動車のECUの機能の一部とすることができる。以上のようなセンサ信号(波形信号)及びその処理の概略及び具体例について、説明する。
【0028】
〔センサ信号の処理について〕
センサ7が出力するセンサ信号(波形信号)及びその処理の概略についてまず説明する。
図4は、回転状態にある回転装置10(ハブ軸11)に負荷が作用していない状態(非負荷状態)における、センサ7A,7B,7C,7Dの出力を示す図である。センサ7A,7B,7C,7Dそれぞれは、前記のとおりSIN信号及びCOS信号を出力する。
図5は、回転状態にある回転装置10(ハブ軸11)に、Z軸方向に沿って下向きの荷重(以下、「Fz荷重」と称する)が作用した場合のセンサ7A,7B,7C,7Dの出力を示す図である。
図5において、非負荷状態の信号が破線で示されている。Fz荷重が作用すると、センサ7A,7Bそれぞれにおいて、センサロータ17との間隔は変化しないが、センサロータ17との間に相対的なZ軸方向の平行移動が生じる。この平行移動は、センサロータ17の外周面の回転移動と等価であるとみなすことができる。そこで、後の具体例でも説明するが、センサ7Aとセンサ7Bとのうち一方の出力から他方の出力を引き算することで、Fz荷重が作用していない状態の基準位置からの二倍の平行移動量、つまり、回転角度差が求められる。なお、回転角度差の算出では、センサ7A及びセンサ7Bの出力(SIN信号とCOS信号)それぞれのアークタンジェントによる値を用いるのが好ましい。
【0029】
Fz荷重は、センサロータ17のZ軸方向の変位量に比例し、この変位量は、第一中心線C1を中心として180°離れたセンサ7A,7Bの信号により求められた前記回転角度差に比例する。よって、センサ7Aとセンサ7Bの出力に基づいて求められた回転角度差より、Z軸方向の変位量が演算によって求められ、更に、Fz荷重が演算によって求められる。
【0030】
センサ7が出力する信号は、処理装置40(
図1参照)に入力され、この信号を処理装置40が処理し、回転装置10に作用する荷重(Fz荷重)等を算出する。
図6は、処理装置40が実行する処理を含むフロー図である。以下の説明は、回転状態にある回転装置10(ハブ軸11)に、Z軸方向に沿って下向きの荷重(Fz荷重)が作用した場合(
図6のステップS1)の説明である。
図6には、センサ7A,7Bの出力(信号)を用いる処理が説明されている。また、製造誤差によって大歯車14が第一中心線C1に対して偏心回転しているとする。このため、センサ7A,7Bの検出信号に、周期的な変動が含まれる。この周期的な変動は、センサ7A,7Bの検出信号において「不要成分」となる。以下において、この不要成分を「回転変動成分」とも称する。センサ7A,7Bから取得される前記波形信号には、回転変動成分の信号が含まれている。
【0031】
ハブ軸11の回転は、第二回転体20A,20B(20C,20D)によって増速され、センサロータ17A,17B(17C,17D)は、ハブ軸11と比較して高い周波数で回転する(
図6のステップS2)。センサ7A,7Bは、センサロータ17A,17Bの回転を検出する(
図6のステップS11、S21)。センサ7A,7Bそれぞれが出力する信号は、SIN信号とCOS信号である。
図7(A)に、センサ7Aの出力信号(符号D1)が示され、
図7(B)に、センサ7Bの出力信号(符号D2)が示されている。
【0032】
処理装置40は、センサ7Aの信号を取得し、この信号を角度変換(電気角変換)し(
図6のステップS12)、センサ7Bの信号を取得し、この信号を角度変換(電気角変換)する(
図6のステップS22)。この処理が、角度変換処理である。角度変換処理により、センサ7Aの信号に基づく角度信号(
図7(A)において符号D11)が得られ、センサ7Bの信号に基づく角度信号(
図7(B)において符号D21)が得られる。
【0033】
処理装置40は、センサ7Aの信号に基づく角度信号D11、及びセンサ7Bの信号に基づく角度信号D21から、センサロータ17A,17Bの回転角度差を求める(
図6のステップS3:位相差・変位信号処理)。ここでは、センサ7Aとセンサ7Bとは第一中心線C1を中心として180°離れた配置にあることから、センサ7Aの信号に基づく角度信号D11とセンサ7Bの信号に基づく角度信号D21との差により、回転角度差が求められる。
図8に、求められた回転角度差(位相差)D3のデータが示される。前記のとおり、センサ7A,7Bの検出信号に周期的な変動(前記不要成分)が含まれることから、
図8に示されるように、回転角度差D3は、周期的に変動したデータとなる。なお、前記不要成分が含まれない場合、求められる前記位相差のデータは、
図8において仮想線(二点鎖線)で示すように、一定の値となる。
【0034】
処理装置40は、前記回転角度差D3を求めたデータをフィルタ処理する(
図6のステップS4)。フィルタ処理は、所定の周波数帯を削除する処理であり、例えばローパスフィルタによる処理又はノッチフィルタによる処理が採用される。前記所定の周波数帯は、増速された前記不要成分の周波数(つまり、回転装置10の回転周波数に前記歯車比を乗算した値)を含む。このフィルタ処理により、前記不要成分が除去される。
図9は、フィルタ処理されたデータD4の説明図である。そして、不要成分が除去された回転角度差のデータD4により、前記のとおり、Fz荷重に起因するセンサロータ17及びハブ軸11の変位量、そのFz荷重の値が処理装置40によって求められる(
図6のステップS5)。求められた荷重(Fz荷重の値)が信号として出力される(
図6のステップS6)。
【0035】
次に、前記のセンサ信号の処理の具体例を説明する。前記のとおりセンサ7の検出対象となる第二回転体20に含まれるセンサロータ17は歯車形状を有する。このため、センサ7は、センサロータ17の一つの歯から(凹部を経て)その周方向隣の他の歯までを「一周期」とする波形信号を繰り返し出力する。第センサロータ17における歯の数を「N」とする。また、大歯車14と小歯車16との歯車比を「M(例えば5~10)」とする。大歯車14と一体であるハブ軸11が一回転(360度回転)すると、その間に、少歯車16はM回転し、各センサ7は、一周期の波形信号をN×M回繰り返して出力する。つまり、各センサ7は、ハブ軸11の回転に起因して第二回転体20が一回転する間に、周期的な波形信号を複数周期について出力する。
【0036】
各センサ7は、前記のとおり、位相差を有する2相(A相及びB相)の周期的な波形信号を出力する。つまり、センサ7が対向するセンサロータ17の移動に伴って、A相の磁気抵抗素子からSIN信号が出力され、B相の磁気抵抗素子からCOS信号が出力される。ハブ軸11が一回転(360度回転)すると、その間に、各センサ7は、一周期のSIN信号をN×M回繰り返して出力すると共に、一周期のCOS信号をN×M回繰り返して出力する。これらSIN信号とCOS信号とに基づいて、後に説明するが、センサロータ17を含む第二回転体20の変位量が求められる。第二回転体20の変位量は、第一回転体31、つまり、ハブ軸11の変位量に相当する。この変位量を求める処理は、処理装置40(
図1参照)によって行われる。処理装置40は、回転装置10外に設けられていればよく、本実施形態では、自動車のECUの機能の一部により構成されている。処理装置40は、複数(四つ)のセンサ7それぞれから2相の波形信号を取得し、各種処理を実行する。
【0037】
ハブ軸11(
図1及び
図2参照)が一定の速度(角速度)で回転している状態で、ハブ軸11にZ軸に沿って下向きの荷重が作用する場合について説明する。この場合、外輪12に対してハブ軸11が大歯車14と共にZ軸に沿って下向きに僅かであるが変位し、同方向に同じ変位量で第二回転体20も変位する。
図2において、ハブ軸11及び大歯車14の回転方向は、矢印R0方向であるとする。この場合、前側の第二回転体20Aの回転方向は矢印R1となり、後ろ側の第二回転体20Bの回転方向は矢印R2となる。センサ7A側では、前記荷重により第二回転体20Aが変位する方向は、この第二回転体20Aの回転に対して(回転軌跡の接線方向に対して)反対方向となる。このため、センサ7Aからは、荷重が作用しない場合と比較して、
図11の上側の説明図に示すように、A相及びB相ともに、位相が遅れた波形信号が出力される。つまり、センサ7Aは、センサロータ17の変位を遅れ角度として検出する。なお、
図11において、荷重の負荷前のセンサ7からの信号が実線で示され、荷重の負荷後のセンサ7からの信号が破線で示されている。
図2において、センサ7B側では、前記荷重により第二回転体20Bが変位する方向は、この第二回転体20Bの回転に対して(回転軌跡の接線方向に対して)順方向(同方向)となる。このため、センサ7Bからは、荷重が作用しない場合と比較して、
図11の下側の説明図に示すように、A相及びB相ともに、位相が進んだ波形信号が出力される。つまり、センサ7Bは、センサロータ17の変位を進み角度として検出する。以上のように、ハブ軸11が大歯車14と共に径方向の一方(本実施形態では、Z軸に沿って下向き)に変位すると、センサ7Aは位相が遅れた波形信号を出力し、センサ7Bは位相が進んだ波形信号を出力する。
【0038】
なお、反対に、荷重の方向がZ軸に沿って上向きとなる場合、センサ7Aは変位を進み角度として検出し、センサ7Bは変位を遅れ角度として検出する。また、前記のとおり、センサ7から出力される前記波形信号には、荷重による成分の他に、不要である回転変動成分の信号が含まれている。
【0039】
ハブ軸11に荷重が作用すると、中心線C1を中心として180度離れて設けられている一組のセンサ7A及びセンサ7Bそれぞれから出力される信号には位相差Q(
図11参照)が発生する。この位相差Qは、波形の時間差として得られる。そこで、特定のタイミングでの(瞬時の)位相差Qを検出するために、センサ7A及びセンサ7Bそれぞれから得られた波形信号について、角度変換処理が行われる。
【0040】
角度変換処理について説明する。センサ7A及びセンサ7Bそれぞれからの波形信号は、所定の演算処理がされることで(アークタンジェント演算されることで)
図12に示すように、波形信号の前記一周期毎に単調性を有する角度信号(電気角の信号)に変換される。なお、ここでの角度信号は、電気角(単位[rad])の信号である。また、前記の単調性とは、信号の途中に極大及び極小を有さず増加又は減少することを意味する。本実施形態では、単調性を有する三角波の角度信号が得られる。
図12の上側がセンサ7Aによる角度信号のグラフであり、
図12の下側がセンサ7Bによる角度信号のグラフである。
図12の各グラフの縦軸に示す角度(角度信号)は、センサ7Aの検出対象位置及びセンサ7Bの検出対象位置それぞれにおけるセンサロータ17の回転角度(電気角[rad])である。
【0041】
センサ7A,7Bそれぞれからの波形信号が角度変換処理されて得られた角度信号(回転角度)に基づいて、
図12に示すように、特定のタイミング(特定の時刻)tにおける、センサ7Aの検出対象位置における第二回転体20A(センサロータ17A)の回転角度(電気角)θAが求められ、センサ7Bの検出対象位置における第二回転体20B(センサロータ17B)の回転角度(電気角)θBが求められる。
【0042】
更に、センサ7Aの検出対象位置とセンサ7Bの検出対象位置とにおいて、同じタイミング(同時刻)tにおけるセンサ7A側とセンサ7B側との回転角度の差(θAB=θA-θB)が求められる。本実施形態では、電気角θA,θBの単位は[rad]であり、回転角度の差θABとして、電気角の差(θAB[rad])が求められる。
【0043】
ここで、前記荷重に基づく第二回転体20Aと第二回転体20Bとの変位量は同じであり、この変位量は、ハブ軸11(センサロータ17)の変位量ΔZと比べて、センサ検出部(センサ7A,7B)では、小歯車16とセンサロータ17との半径比(M2)により増幅されている。そして、変位量ΔZは、センサ7A側の電気角θAとセンサ7B側の電気角θBとの差θABに比例する。そこで、電気角の差(θAB)が算出されると、次の式(1)により、前記荷重により生じたハブ軸11の変位量ΔZが算出される。つまり、変位量ΔZと前記電気角の差(θAB)とは、次の式(1)を満たす関係にある。ただし、第二回転体20A(第二回転体20B)の回転中心(中心線C2)からセンサロータ17A(センサロータ17B)の外周部(歯)までの距離(設計値)、つまり、センサロータ17A(17B)の外周部を通過する仮想円の半径を「r」とする。また、センサロータ17A(17B)における歯(検出対象)の等配数は「N」である。
【0044】
ΔZ=2×r×θAB/N/M2 [mm] ・・・(1)
【0045】
変位量ΔZが算出されると、変位量ΔZは、次に式(2)によって前記荷重Fzに換算される。つまり、変位量ΔZに回転装置10の軸受剛性Kzを乗算することで、負荷された荷重Fzが算出される。
【0046】
Fz=Kz×ΔZ ・・・(2)
【0047】
〔本実施形態の回転装置10について〕
以上のように、本実施形態の回転装置10は(
図1及び
図2参照)、固定体となる外輪12と、ハブ軸11及び大歯車14により構成されている第一回転体31と、センサロータ17を含む第二回転体20と、センサ7と、支持部19とを備えている。ハブ軸11及び大歯車14(第一回転体31)は、外輪12に対して第一中心線C1回りに回転する。小歯車16及びセンサロータ17を含む第二回転体20は、ハブ軸11及び大歯車14の回転力によってこれらハブ軸11及び大歯車14よりも高い回転速度で第二中心線C2回りに回転する。センサ7は、第二回転体20それぞれの回転角度を検出する。支持部19は、第二回転体20(小歯車16)を、第一回転体31(大歯車14)に接触状態として支持している。更に、支持部19は、第一回転体31に含まれるハブ軸11及び大歯車14が、第一中心線C1に直交する方向(直交する方向の成分を有する方向)に変位すると、この変位に応じて第二回転体20が、第一回転体31と同じ方向に変位することを許容する。
【0048】
この回転装置10によれば、ハブ軸11に対して第一中心線C1に直交する方向の荷重(Fz荷重)が作用すると、ハブ軸11は同方向に変位する。すると、荷重(Fz荷重)に直交する方向の位置である前後の小歯車16を含む第二回転体20は、第一回転体31と接する側の接線方向の下向き(Z方向)に回転する。前記変位は、荷重(Fz荷重)に直交する方向の位置である前後の第二回転体20に含まれるセンサロータ17の回転の位相のずれとなって現れる。センサ7A,7Bでは位相のずれの符号が逆である。これにより、センサ7A,7Bによってこの位相のずれ(位相差:回転角度の差)が検出され、検出結果を演算することで前記荷重(Fz荷重)が求められる。
【0049】
特に本実施形態では、第二回転体20は、一対を一組として第一回転体31の周囲に配置されている。一組の第二回転体20,20それぞれを検出対象とする第一のセンサ7A及び第二のセンサ7Bが設けられている。第一のセンサ7A及び第二のセンサ7Bそれぞれは、第二回転体20,20それぞれが一回転する間に周期的な波形信号を複数周期について出力する。荷重を受けた第一回転体31の変位により、第二回転体20Aが変位すると、第一のセンサ7Aは位相が遅れた波形信号を出力する。前記荷重を受けた第一回転体31の変位により、第二回転体20Bが変位すると、第二のセンサ7Bは位相が進んだ波形信号を出力する。処理装置40は、センサ7A,7Bからの波形信号に基づいて、第一のセンサ7Aの検出対象位置における第二回転体20Aの回転角度、及び、第二のセンサ7Bの検出対象位置における第二回転体20Bの回転角度を求める。更に、処理装置40は、一対の第二回転体20A,20Bの前記回転角度の差に基づいて、第二回転体20A(20B)の変位量(第二回転体20Aの回転仮想円の接線方向の変位量)を求める。この変位量は、第一回転体20B、つまり、ハブ軸11の変位量に、小歯車16とセンサロータ17の半径比(M2)を乗算した値に相当する。
【0050】
そして、本実施形態の回転装置10によれば、例えばハブ軸11の偏心又は大歯車14の取り付けによる偏心等による周期的な変動成分(不要成分)は、第二回転体20によって増速される。つまり、不要成分は高周波化される。このため、ハブ軸11が低速で回転している場合であっても、不要成分は高周波化されることから、この高周波化された不要成分を例えばノッチフィルタ等によって削除すればよい。つまり、各センサ7からの入力信号となる波形信号が高周波となっても、その高周波化は、前記のような直線的な軸の変位(荷重)の周波数成分に与える影響が小さい。これに対して、回転変動成分は、歯車比により高周波化される。つまり、大歯車14と小歯車16との歯車比をMとすると、回転変動成分(不要成分)はM倍される。よって、フィルタによって回転変動成分が効果的に除去され、ハブ軸11の変位量(荷重)は算出される。以上のように、センサ7(7A,7B)による検出対象を、第一回転体31(大歯車14)ではなく、第一回転体31よりも高い回転速度で回転する第二回転体20(センサロータ17)とする前記構成によれば、センサ7(7A,7B)の検出信号から回転変動成分(不要成分)を低減することが可能となる。
【0051】
このように、本実施形態では、第二回転体20の変位に伴う第二回転体20の回転角度のずれに基づいて荷重が求められる。前記回転角度及びそのずれは、センサ7の信号によって求められ、回転角度のずれは、第一中心線C1を中心として180°離れた二つのセンサ7A,7Bの出力結果を演算することによって得られる。
【0052】
本実施形態では、第二回転体20及びセンサ7が、第一中心線C1を中心として90°間隔で周方向に沿って四つ設けられている。この構成により、第一中心線C1に直交するどの方向にハブ軸11が変位しても、四つのセンサ7の検出結果を用いて演算することで、ハブ軸11に作用する荷重等が容易に求められる。
【0053】
なお、周方向に沿って均等配置された三つのセンサ7からの信号によって、処理装置40は、ハブ軸11に作用する荷重等を求めることが可能である。ただし、この場合、荷重が作用する方向を求めるためには、センサ7の配置に基づく換算が更に必要となる。以上より、第二回転体20及びセンサ7は、第一中心線C1を中心とする周方向に沿って等間隔で少なくとも三つ設けられていればよい。
【0054】
前記実施形態では(
図2参照)、センサ7はセンサロータ17の径方向外方に配置されている。
図10は、センサ7の配置が変更された回転装置10を軸方向他方側から見た図である。センサ7はセンサロータ17の外周部を検出対象としていればよく、
図10に示されるように、センサ7は、センサロータ17の周方向に沿って隣りの領域に設けられていてもよい。
【0055】
回転装置10が自動車用のハブユニットである場合について説明したが、回転装置10は他の機器であってもよい。
【0056】
センサロータ17は、歯車形状以外であってもよく、例えば、磁石からなり、N極とS極とが周方向に沿って交互に設けられていてもよい。N極(S極)は均等配にある。この場合、各センサ7は、センサロータ17の一つのN極からS極を経て次のN極までを「一周期」とする波形信号を繰り返し出力する。センサ7は、センサロータ17の回転により、位相差を有する2相の周期的な波形信号を出力するものであればよく、形態については変更可能である。つまり、センサ7は、MRセンサ以外に、ホールセンサであってもよい。または、センサは、透過形光電式や反射形光電式の光学式であってもよい。これに応じて、センサロータ17の形態も変更される。
【0057】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0058】
7:センサ 10:回転装置 11:ハブ軸
12:外輪(固定体) 18:軸 19:支持部
20:第二回転体 28:転がり軸受 29:弾性部材
31:第一回転体 35:軸受部 C1:第一中心線
C2:第二中心線