(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】ロール状態の監視装置及びカレンダー装置並びにロール状態の監視方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/58 20060101AFI20221227BHJP
B29C 43/24 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
B29C43/58
B29C43/24
(21)【出願番号】P 2018230875
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森野 恭平
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-78729(JP,A)
【文献】特開平7-11599(JP,A)
【文献】実公昭49-44068(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/58
B29C 43/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面温度調整用の流体を流すための流路が内部に設けられたドリルドロールを少なくとも1本含み、軸線が互いに略平行になるように配置された、複数のロールを備え、これらロールを回転させながらこれらロールの間隙に高分子材料を通して当該高分子材料を成形するカレンダー装置の
、ロール状態を監視する、ロール状態の監視方法であって、
回転するドリルドロール表面の温度を測定する測定工程と、
前記ドリルドロール表面の温度分布に基づいて当該ドリルドロールの状態を判定する判定工程と
を含
み、
前記ドリルドロール表面の温度が、温度測定手段によって時系列で測定され、
前記ドリルドロール表面の温度分布が、前記ドリルドロール表面の温度の周方向分布であり、
前記ドリルドロール表面の温度の周方向分布が、前記ドリルドロールが1回転するために要する時間内に得られる、前記ドリルドロール表面の各周方向位置での温度の測定値で表される、ロール状態の監視方法。
【請求項2】
前記判定工程において、前記ドリルドロール表面の温度の周方向分布に基づいて前記ドリルドロールが1回転するために要する時間内での当該温度の揺らぎが把握され、当該温度の揺らぎに基づいて当該ドリルドロールの状態が判定される、請求項1に記載のロール状態の監視方法。
【請求項3】
前記カレンダー装置が、前記ドリルドロールの回転速度に関連付けられたパルス信号を出力するエンコーダーを備え、
前記ドリルドロール表面の温度の時系列データに前記パルス信号が関連付けられる、請求項1又は2に記載のロール状態の監視方法。
【請求項4】
前記温度測定手段が、上流側のドリルドロール表面の温度を測定できる位置に配置され、
前記上流側のドリルドロール表面が、前記ドリルドロール表面と前記高分子材料との接触開始位置と、前記ドリルドロールの軸芯とを通る線分を基準線としたとき、前記基準線よりも上流側に位置する前記ドリルドロール表面である、請求項1から3のいずれかに記載のロール状態の監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状態の監視装置及びカレンダー装置並びにロール状態の監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム材料やプラスチック材料のような高分子材料の成形機として、カレンダー装置が知られている。カレンダー装置は、軸線が互いに略平行になるように配置された、複数のロールを備える。カレンダー装置では、これらロールを回転させながらこれらロールの間隙に高分子材料を通して、所望の厚さを有するシート又はフィルムが成形される。
【0003】
カレンダー装置でシート又はフィルムを成形する場合、この成形により得られるシート又はフィルムについては、全体が一様な厚さを有することが求められる。このため、厚さのばらつきを抑えるための技術について様々な検討が行われている。
【0004】
例えば、下記の特許文献1では、製品精度の向上の観点から、バンク量を正確に把握して、このバンク量を正確に制御できる技術が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高分子材料は、ロールの間隙を通過することで圧延される。例えば、高分子材料としてゴム材料を用いる場合、圧延によりゴム材料は発熱する。この発熱は、ロール表面の温度を上昇させる。表面温度の変動は、圧延により得られるゴムシートの仕上がりに影響する。そこで、表面温度のコントロール可能なロールが用いられる。
【0007】
表面温度のコントロール可能なロールとしては、ドリルドロールが知られている。このドリルドロールでは、流体を流すための流路がその表面近傍に設けられる。この流路に、温度がコントロールされた流体を流すことにより、ドリルドロール表面の温度がコントロールされる。
【0008】
ドリルドロールでは、流路内の流体の流れは表面温度のコントロールに影響する。使用により流路が詰まる等して、流体の流れが変化することがある。この場合、流体の流れが悪い箇所では、冷却が不十分となり、ドリルドロール表面の温度が上昇することが懸念される。表面温度が過度に上昇すると、ドリルドロールが局部的に膨張し、シートの厚さにばらつきが生じる恐れがある。
【0009】
ドリルドロール表面の温度上昇は、流体の温度上昇を招来する。このため、流体の出口側において、この流体の温度を計測すれば、ドリルドロール表面の温度が上昇していることの把握は可能である。しかし流体の温度が上昇している状態では、表面温度が過度に上昇し、シートの厚さにばらつきが生じているケースが多い。このため、シートの厚さにばらつきが生じる前に、ドリルドロール表面の温度が局部的に上昇していることを把握できる技術の確立が求められている。
【0010】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、シートの厚さにばらつきが生じる前にドリルドロール表面の温度が局部的に上昇していることを把握できる、ロール状態の監視装置及びカレンダー装置並びにロール状態の監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るロール状態の監視装置は、表面温度調整用の流体を流すための流路が内部に設けられたドリルドロールを少なくとも1本含み、軸線が互いに略平行になるように配置された、複数のロールを備え、これらロールを回転させながらこれらロールの間隙に高分子材料を通して当該高分子材料を成形するカレンダー装置のロール状態を監視するロール状態の監視装置である。このロール状態の監視装置は、回転するドリルドロール表面の温度を測定する温度測定手段と、前記ドリルドロール表面の温度分布に基づいて当該ドリルドロールの状態を判定する判定手段とを備える。
【0012】
好ましくは、このロール状態の監視装置では、前記温度測定手段において、前記ドリルドロール表面の温度が時系列で測定される。前記判定手段において、前記温度の時系列データに基づいて前記ドリルドロールが1回転するために要する時間内での当該温度の揺らぎが把握され、当該温度の揺らぎに基づいて当該ドリルドロールの状態が判定される。
【0013】
より好ましくは、このロール状態の監視装置は、前記ドリルドロールの回転速度に関連付けられたパルス信号を出力するエンコーダーを備える。前記判定手段において、前記温度の時系列データと前記パルス信号とに基づいて前記ドリルドロールが1回転するために要する時間内での当該温度の揺らぎが把握され、当該温度の揺らぎに基づいて当該ドリルドロールの状態が判定される。
【0014】
好ましくは、このロール状態の監視装置は、前記ドリルドロール表面に前記高分子材料が付着したことを検知する検知手段と、前記検知手段が前記高分子材料の付着を検知した場合、前記判定手段による判定を停止する判定停止手段とを備える。
【0015】
本発明に係るカレンダー装置は、前述のロール状態の監視装置を備える。
【0016】
本発明に係るロール状態の監視方法は、前述のロール状態の監視装置を用いて、カレンダー装置のロール状態を監視するロール状態の監視方法である。このロール状態の監視方法は、
(1)回転するドリルドロール表面の温度を測定する測定工程、及び
(2)前記ドリルドロール表面の温度分布に基づいて当該ドリルドロールの状態を判定する判定工程
を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、回転するドリルドロール表面の温度が測定され、このドリルドロール表面の温度分布に基づいてドリルドロールの状態が判定される。本発明では、シートの厚さにばらつきが生じる前にドリルドロール表面の温度が局部的に上昇していることが把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るカレンダー装置の一例が示された概念図である。
【
図2】
図2は、
図1のカレンダー装置のロール状態監視装置を用いて測定された、ドリルドロール表面の温度の経時変化が示されたグラフである。
【
図3】
図3は、ドリルドロールの状態を監視する、ロール状態監視方法のフローが示されたフロー図である。
【
図4】
図4は、ドリルドロールの状態を監視する、ロール状態監視方法の他のフローが示されたフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0020】
[カレンダー装置]
図1は、本発明の一実施形態に係るカレンダー装置2の概要が示された概略図である。このカレンダー装置2は、複数のロール4を備える。
【0021】
図1に示されたカレンダー装置2は、上下に並列した2本のロール4を備える。このカレンダー装置2では、上側のロール4の軸芯UAと、下側のロール4の軸芯LAとが、互いに略平行になるように、上側のロール4と下側のロール4とは配置される。本発明において、略平行とは、軸芯UAに対して軸芯LAがなす角度が0°以上5°以下の範囲にあることを意味する。
【0022】
図示されないが、このカレンダー装置2は、ロール4を所定の回転速度で回転させる回転手段(例えばモーター)を備える。このカレンダー装置2では、回転手段によって、上側のロール4と下側のロール4とを回転させながら、上側のロール4と下側のロール4との間隙に高分子材料としてのゴム材料Gを通して、このゴム材料GがゴムシートGSに成形される。
【0023】
図1において矢印RUは、ゴム材料Gを成形する際の、上側のロール4の回転方向である。矢印RLは、ゴム材料Gを成形する際の、下側のロール4の回転方向である。
【0024】
この
図1において、ゴム材料Gは、左から右に向かってカレンダー装置2を通過する。この紙面の左側がこのカレンダー装置2の上流側であり、この紙面の右側がこのカレンダー装置2の下流側である。
【0025】
このカレンダー装置2では、上下のロール4はその長さ方向に延びる複数の貫通孔6を有する。これら貫通孔6は、ロール4の外周8、すなわち、表面8の近傍に設けられる。これら貫通孔6は、ロール4の表面8(以下、ロール表面8とも称することがある。)に沿って、回転方向に間隔をあけて配置される。
【0026】
このカレンダー装置2では、ロール表面8の温度を調整するために、貫通孔6には流体が流される。この貫通孔6は、表面温度調整用の流体を流すための流路である。つまりこのロール4は、その内部に、表面温度調整用の流体を流すための流路6を備える。表面温度調整用の流体を流すための流路6が内部に設けられたロール4は、ドリルドロール4dと称される。
【0027】
このカレンダー装置2では、上側のロール4と下側のロール4とがドリルドロール4dである。このカレンダー装置2では、このカレンダー装置2に設けられる複数のロール4が少なくとも1本ドリルドロール4dを含んでいればよい。
図1に示されたカレンダー装置2においては、上側のロール4のみがドリルドロール4dであってもよく、下側のロール4のみがドリルドロール4dであってもよい。ロール表面8の温度を安定にコントロールできる観点から、上側のロール4と下側のロール4とが、言い換えれば、カレンダー装置2に設けられる複数のロール4の全てがドリルドロール4dであるのが好ましい。
【0028】
[ロール状態の監視装置]
このカレンダー装置2は、ドリルドロール4dの状態を監視するために、ロール状態の監視装置10を備える。このロール状態の監視装置10(以下、単に監視装置10と称することがある。)は、温度測定手段12及び制御装置14を備える。
【0029】
温度測定手段12は、図示されない監視装置10のフレームに取り付けられる。これにより、ドリルドロール4dに対する温度測定手段12の位置が固定される。この温度測定手段12は、回転するドリルドロール4dの表面8d(以下、ドリルドロール表面8dとも称することがある。)の温度を測定する。この温度測定手段12は、測定した温度をデータとして出力する。
【0030】
この監視装置10では、温度測定手段12と制御装置14とは通信ケーブル16で繋げられる。温度測定手段12が出力する温度に関するデータは、通信ケーブル16を通じて制御装置14に入力される。
【0031】
この監視装置10では、温度測定手段12としては、ドリルドロール表面8dの温度を測定できればよく、この温度測定手段12に特に制限はない。この監視装置10では、温度測定手段12は非接触式温度計である。
【0032】
制御装置14は、例えばCPU等の演算部、RAM及びROMを含む記憶部等を有するマイクロコンピュータにより構成され、記憶部に記憶されたプログラムを演算部が実行することによって所定の機能を発揮する。
【0033】
前述したように、制御装置14には、温度測定手段12が出力する温度に関するデータが入力される。これにより、この制御装置14においては、ドリルドロール表面8dの温度の経時変化が把握される。この制御装置14は、例えば、
図2に示されるような、ドリルドロール表面8dの温度の経時変化を表すグラフをモニター(図示されず)に出力させる。
【0034】
図2において、縦軸はドリルドロール表面8dの温度の測定値である。横軸は、時間である。この
図2は、ドリルドロール4dが1回転するために要する時間が2.5秒に設定された場合の、ドリルドロール表面8dの温度の経時変化を表すグラフの一例である。
【0035】
この
図2において横軸の最大値は、2.5秒である。したがってこの
図2の横軸に示された時間は、ドリルドロール表面8dの周方向位置に対応する。この
図2に示されたグラフは、ドリルドロール表面8dの温度の周方向分布を表す。なお、このグラフの横軸がドリルドロール4dの回転角であってもよく、後述する、エンコーダーが発するパルス信号数であってもよい。
【0036】
この
図2に示された表面温度の経時変化では、全体として温度の上昇と下降とが一定の周期で繰り返されるが、1.9秒の時点においては特異な温度上昇に基づくピークが確認される。これは、温度測定手段12の温度計測位置を基準点が通過してから1.9秒後に通過したドリルドロール4dの表面8において特異な温度上昇が生じていることを示唆する。
【0037】
この監視装置10では、特異な温度上昇の判断基準に特に制限はない。温度の上昇と下降とが一定の周期で繰り返されている状態における振幅を確認しておき、この振幅の2倍以上の温度変化があった場合に、特異な温度上昇として判断してもよい。刻々と観測されるピーク温度が、例えば0.2℃以上変化した場合に、特異な温度上昇として判断してもよい。特異な温度上昇の判断基準は、カレンダー装置2の設置状況、運転状況等に応じて適宜決められる。
【0038】
この制御装置14では、
図2に示されたドリルドロール表面8dの温度分布に基づいて、温度測定手段12の温度計測位置を基準点が通過してから1.9秒後に通過したドリルドロール4dの表面8において特異な温度上昇が生じているという、ドリルドロール4dの状態が判定される。この制御装置14は、監視装置10の一構成要素として、温度測定手段12において測定されたドリルドロール表面8dの温度分布に基づいてこのドリルドロール4dの状態を判定する判定手段18としての機能を有する。つまりこの監視装置10は、ドリルドロール表面8dの温度分布に基づいてこのドリルドロール4dの状態を判定する判定手段18を備える。
【0039】
この監視装置10を備えるカレンダー装置2では、回転するドリルドロール表面8dの温度が測定され、このドリルドロール表面8dの温度分布に基づいてドリルドロール4dの状態が判定される。このカレンダー装置2では、ドリルドロール4dが1回転するために要する時間内での温度の揺らぎが把握され、この温度の揺らぎに基づいてドリルドロール4dの状態が判定される。このため、このカレンダー装置2では、シートの厚さにばらつきが生じる前にドリルドロール表面8dの温度が局部的に上昇していることが把握できる。この監視装置10を備えるカレンダー装置2は、厚さのばらつきが抑えられた高品質なシートの、安定な製造に貢献できる。
【0040】
前述したように、この監視装置10では、温度測定手段12がドリルドロール表面8dの温度を測定する。特に、この監視装置10では、この温度測定手段12において、ドリルドロール表面8dの温度は時系列で測定される。
【0041】
この監視装置10を備えるカレンダー装置2では、時間に関連付けられた温度データに基づく温度分布が用いられる。このため、ドリルドロール4dが1回転するために要する時間内での温度の揺らぎの把握が容易である。このカレンダー装置2では、ドリルドロール4dの状態が効率よく判定される。このカレンダー装置2は、厚さのばらつきが抑えられた高品質なシートの、安定な製造に効果的に貢献できる。この観点から、この監視装置10を備えるカレンダー装置2では、温度測定手段12においてドリルドロール表面8dの温度が時系列で測定され、判定手段18において、温度の時系列データに基づいてドリルドロール4dが1回転するために要する時間内での温度の揺らぎが把握され、この温度の揺らぎに基づいてドリルドロール4dの状態が判定されるのが好ましい。
【0042】
図1に示されるように、このカレンダー装置2の監視装置10はエンコーダー20を備えることができる。このエンコーダー20は、ドリルドロール4dの回転軸22に取り付けられる。このエンコーダー20は、ドリルドロール4dの回転速度に関連付けられたパルス信号を出力する。このエンコーダー20は、ロータリーエンコーダーとも称される。
【0043】
この監視装置10では、エンコーダー20と制御装置14とは通信ケーブル16で繋げられる。この監視装置10では、エンコーダー20が出力するパルス信号は、この通信ケーブル16を通じて制御装置14に入力される。
【0044】
この監視装置10では、判定手段18において、温度の時系列データとパルス信号とに基づいてドリルドロール4dが1回転するために要する時間内での温度の揺らぎが把握され、この温度の揺らぎに基づいてドリルドロール4dの状態が判定される。
【0045】
この監視装置10を備えるカレンダー装置2では、温度の時系列データにパルス信号が関連付けられる。このため、
図2に示された温度分布において、特異な温度上昇を示したドリルドロール4dの表面8d上の位置が正確に特定できる。
【0046】
このカレンダー装置2では、ドリルドロール4dの表面8d上の位置を特定した上で、ドリルドロール4dが1回転するために要する時間内での温度の揺らぎが把握される。このカレンダー装置2では、ドリルドロール4dの状態が正確にそして効率よく判定される。このカレンダー装置2は、厚さのばらつきが抑えられた高品質なシートの、安定な製造により効果的に貢献できる。この観点から、この監視装置10を備えるカレンダー装置2はドリルドロール4dの回転速度に関連付けられたパルス信号を出力するエンコーダー20を備え、判定手段18において、温度の時系列データとパルス信号とに基づいてドリルドロール4dが1回転するために要する時間内での温度の揺らぎが把握され、この温度の揺らぎに基づいてドリルドロール4dの状態が判定されるのがより好ましい。
【0047】
このカレンダー装置2では、監視装置10の温度測定手段12はドリルドロール表面8dの温度を測定できる位置に配置される。ドリルドロール表面8dの特異な温度上昇を効果的に測定できる観点から、この温度測定手段12は、ドリルドロール表面8dの温度をドリルドロール4dの上流側から測定できる位置に配置されるのが好ましい。言い換えれば、この温度測定手段12は、上流側のドリルドロール表面8dの温度を測定できる位置に配置されるのが好ましい。上流側のドリルドロール表面8dとは、ドリルドロール表面8dとゴム材料Gとの接触開始位置と軸芯とを通る線分を基準線としたとき、この基準線よりも上流側に位置するドリルドロール表面8dの部分を意味する。
【0048】
図1に示されるように、このカレンダー装置2の監視装置10は検知手段24を備えることができる。この検知手段24は、図示されない監視装置10のフレームに取り付けられる。これにより、ドリルドロール4dに対する検知手段24の位置が固定される。
【0049】
検知手段24は、ドリルドロール表面8dへのゴム材料Gの付着を検知する。具体的には、この検知手段24は、温度測定手段12が温度測定している箇所にゴム材料Gが付着したことを検知する。この検知手段24は、温度測定手段12が温度測定している箇所にゴム材料Gが付着したことを検知できる位置に配置される。
【0050】
この監視装置10では、検知手段24としては、ドリルドロール表面8dへのゴム材料Gの付着を検知できればよく、この検知手段24に特に制限はない。この検知手段24としては、例えば、ドリルドロール表面8dまでの距離の変化を計測できる、レーザー変位計、超音波距離計等の距離センサ、及び、ドリルドロール表面8dの色変化を判別できる、カラー判別センサが挙げられる。
【0051】
この監視装置10では、検知手段24と制御装置14とは通信ケーブル16で繋げられる。検知手段24が出力する、ドリルドロール表面8dへのゴム材料Gの付着を知らせる信号は、この通信ケーブル16を通じて制御装置14に入力される。
【0052】
ドリルドロール表面8dへのゴム材料Gの付着は、ドリルドロール表面8dの温度測定を阻害する。このため、ゴム材料Gの付着を知らせる信号が入力されると、制御装置14は、前述の判定手段18による判定を停止させる。この制御装置14は、監視装置10の一構成要素として、検知手段24がゴム材料Gの付着を検知した場合、判定手段18による判定を停止する判定停止手段としての機能を有する。つまり、この監視装置10は、検知手段24がゴム材料Gの付着を検知した場合、判定手段18による判定を停止する判定停止手段26を備える。
【0053】
判定停止手段26を備える監視装置10によれば、判定手段18において、ゴム材料Gの付着がドリルドロール表面8dの特異な温度上昇として誤って判定されることが防止される。この監視装置10を備えるカレンダー装置2では、ドリルドロール4dの状態が正確に判定される。このカレンダー装置2は、厚さのばらつきが抑えられた高品質なシートの、安定な製造に効果的に貢献できる。この観点から、この監視装置10を備えるカレンダー装置2は、ドリルドロール表面8dにゴム材料Gが付着したことを検知する検知手段24と、この検知手段24が高分子材料の付着を検知した場合、判定手段18による判定を停止する判定停止手段26とを備えるのが好ましい。
【0054】
このカレンダー装置2は、複数の監視装置10を備えることができる。この場合、これら監視装置10はドリルドロール4dの長さ方向に間隔をあけて配置される。ドリルドロール表面8dの長さ方向各部の温度分布が同時に把握されるので、ドリルドロール表面8dの特異な温度上昇が効果的に検知される。
【0055】
本発明の監視装置10は、状態の把握が必要なドリルドロール4dに設置される。
図1に示されたカレンダー装置2では、上側のドリルドロール4dに監視装置10が設置されているが、上側のドリルドロール4dの状態だけでなく、下側のドリルドロール4dの状態の把握が必要な場合には、この下側のドリルドロール4dにもこの監視装置10は設置される。
【0056】
[ロール状態の監視方法]
以上説明した監視装置10を用いることで、カレンダー装置2に設けられるドリルドロール4dのロール状態を監視することができる。次に、この監視装置10による、このドリルドロール4dのロール状態を監視する、ロール状態の監視方法が説明される。
【0057】
図3は、ロール状態の監視方法のフロー図を示す。この監視方法は、測定工程S1と判定工程S2と停止工程S3とを含む。
【0058】
測定工程S1では、監視装置10の温度測定手段12によって、回転するドリルドロール表面8dの温度が測定される。測定された温度データは、前述したように、制御装置14に入力される。
【0059】
判定工程S2では、測定工程S1で測定された温度データに基づいて、
図2に示された、ドリルドロール表面8dの温度分布が制御装置14において得られる。この判定工程S2では、このドリルドロール表面8dの温度分布に基づいて、ドリルドロール4dの状態が把握される。
図2に示された温度分布のように、特異な温度上昇に基づくピークが確認された場合においては、ロール状態に異常ありとして、例えば、カレンダー装置2が停止される、すなわち停止工程S3実行される。ドリルドロール表面8dの温度分布に特異な温度上昇が確認されなければ、異常なしとして、カレンダー装置2の運転が継続される。この監視方法では、このようにして、測定工程S1と判定工程S2とが繰り返される。
【0060】
この監視方法では、回転するドリルドロール表面8dの温度が測定され、このドリルドロール表面8dの温度分布に基づいてドリルドロール4dの状態が判定される。この監視方法では、ドリルドロール4dが1回転するために要する時間内での温度の揺らぎが把握され、この温度の揺らぎに基づいてドリルドロール4dの状態が判定される。この監視方法では、シートの厚さにばらつきが生じる前にドリルドロール表面8dの温度が局部的に上昇していることが把握できる。この監視方法は、厚さのばらつきが抑えられた高品質なシートの安定な製造に貢献できる。
【0061】
前述したように、監視装置10が検知手段24を含む場合、この検知手段24はドリルドロール表面8dへのゴム材料Gの付着を検知すると、この検知手段24はこの付着を知らせる信号を出力する。この付着を知らせる信号に基づいて、判定停止手段26が判定手段18による判定を停止させる。つまり、検知手段24を含む監視装置10を用いた監視方法では、測定工程S1において、ドリルドロール表面8dへのゴム材料Gの付着の有無も確認される。そして、ドリルドロール表面8dへのゴム材料Gの付着が検知された場合には、
図4に示されるように、ドリルドロール4dの表面8から付着したゴム材料Gを除くために、例えば、カレンダー装置2が停止される。ドリルドロール表面8dへのゴム材料Gの付着が検知されない限り、判定工程S2が実行され、ドリルドロール表面8dの温度分布に基づいてドリルドロール4dの状態が判定される。
【0062】
この監視方法では、測定工程S1において、ドリルドロール表面8dへのゴム材料Gの付着の有無も確認されることで、ゴム材料Gの付着がドリルドロール表面8dの特異な温度上昇として誤って判定されることが防止される。この監視方法では、ドリルドロール4dの状態が正確に判定される。この監視方法は、厚さのばらつきが抑えられた高品質なシートの、安定な製造に効果的に貢献できる。この観点から、測定工程S1においては、回転するドリルドロール表面8dの温度を測定するとともに、ドリルドロール表面8dへのゴム材料Gの付着の有無も確認されるのが好ましい。
【0063】
以上説明したように、本発明では、回転するドリルドロール表面8dの温度が測定され、このドリルドロール表面8dの温度分布に基づいてドリルドロール4dの状態が判定される。本発明では、シートの厚さにばらつきが生じる前にドリルドロール表面8dの温度が局部的に上昇していることが把握できる。本発明によれば、シートの厚さにばらつきが生じる前にドリルドロール表面8dの温度が局部的に上昇していることを把握できる、ロール状態の監視装置10及びカレンダー装置2並びにロール状態の監視方法が得られる。
【0064】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明されたドリルドロールの状態を監視するための技術は、種々のタイヤの製造にも適用できる。
【符号の説明】
【0066】
2・・・カレンダー装置
4・・・ロール
4d・・・ドリルドロール
6・・・貫通孔(流路)
8・・・ロール4の外周(ロール4の表面)
8d・・・ドリルドロール4dの表面
10・・・監視装置
12・・・温度測定手段
14・・・制御装置
16・・・通信ケーブル
18・・・判定手段
20・・・エンコーダー
22・・・回転軸
24・・・検知手段
26・・・判定停止手段