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  • 特許-フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20221227BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20221227BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20221227BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
B32B7/023
B32B27/36
B32B27/20 Z
B32B27/00 L
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018552090
(86)(22)【出願日】2018-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2018033621
(87)【国際公開番号】W WO2019073737
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2017196581
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 功
(72)【発明者】
【氏名】荘司 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 照也
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0002429(US,A1)
【文献】特開2009-006713(JP,A)
【文献】特開2006-072347(JP,A)
【文献】国際公開第2017/138638(WO,A1)
【文献】特開2009-109702(JP,A)
【文献】特開平10-268105(JP,A)
【文献】特開2012-002895(JP,A)
【文献】特表2006-517874(JP,A)
【文献】特開2018-041962(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136615(WO,A1)
【文献】特開2007-179035(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0218153(US,A1)
【文献】特開2017-137478(JP,A)
【文献】特開平10-275964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09D 7/12
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
60°光沢度(G60)と、85°光沢度(G85)がいずれも27以下である低光沢層(A層)を有するフィルムであって、前記A層が少なくとも片側の表層にあり、前記60°光沢度(G60)と、前記85°光沢度(G85)が下記(I)式を満足し、前記A層の片側に基材層を有し、基材層、A層ともポリエステル樹脂を主成分とし、長手方向(MD)、幅方向(TD)のうち少なくとも一方向のMIT屈曲破断回数が7500回以上であるフィルム。
0.1≦(G85)/(G60)≦3・・・(I)
【請求項2】
前記低光沢層(A層)の60°光沢度(G60)と、85°光沢度(G85)がいずれも10以下である請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記A層の厚みが3μmを超えて20μm以下である請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記A層が粒子を含んでおり、前記粒子の円形度が0.995以下である請求項1~3のいずれかに記載のフィルム。
【請求項5】
前記粒子が無機粒子である請求項4に記載のフィルム。
【請求項6】
前記粒子の嵩高度が0.5以上である請求項4または5に記載のフィルム。
【請求項7】
二軸配向してなる請求項1~6のいずれかに記載のフィルム。
【請求項8】
60°光沢度(G60)が6未満である請求項1~7のいずれかに記載のフィルム。
【請求項9】
長手方向(MD)、幅方向(TD)の100℃から150℃の範囲での熱寸法変化率が、いずれも0.015%/℃以下である請求項1~のいずれかに記載のフィルム。
【請求項10】
前記A層表面の中心線平均粗さ(SRa)が1000nmを超えて3000nm以下である請求項1~のいずれかに記載のフィルム。
【請求項11】
長手方向(MD)、幅方向(TD)の150℃での熱収縮率がいずれも2%以下である請求項1~10のいずれかに記載のフィルム。
【請求項12】
下記方法により測定した150℃、10分間熱処理後のカール高さが0mm以上30mm以下である請求項1~11のいずれかに記載のフィルム。
(測定方法) フィルムを任意の一方向に100mm、該方向に直交する方向に100mmの大きさに切り出し、サンプルとする。該サンプルを、150℃の熱風循環式オーブンで10分間放置して熱処理を行った後、ガラス板上に置き、ガラス板面から垂直方向での4隅の浮き上がり量を測定し、最大の高さをカール高さとする。
【請求項13】
前記A層表面の表面自由エネルギーが44mN/m以下である請求項1~12のいずれかに記載のフィルム。
【請求項14】
転写用途に使用される請求項1~13のいずれかに記載のフィルム。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載のフィルムのA層の表面に離型層が積層されてなる積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレットの拡大に伴う回路の集積化により、プリント配線基板は、高精度、高密度化が進んでいる。プリント配線基板は、その製造工程において、絶縁基材(ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等)表面に回路を設けた上で、絶縁および回路保護を目的として、接着層を有する耐熱樹脂フィルムであるカバーレイを被覆し、離型フィルムを介して、プレスラミネートによる成形を行うことがある。この際、離型フィルムには、プリント配線板材料、プレス板との離型性、形状追従性、均一な成形性だけでなく、被離型対象にマット調外観(低光沢外観)を転写する特性(マット調外観転写性)が求められる。また、回路基板表面に、加熱プレスにより、絶縁層やハードコート層、電磁波シールド層などの機能層を転写させる転写フィルムにおいても、マット調外観転写性を有するフィルムのニーズが高まっている。
【0003】
従来、マット調外観転写性を有する離型フィルムや転写フィルムとしてはサンドマットフィルムやケミカルマット、コーティングマットなどの加工品が一般的であるが、工程増加によるコストアップや、品位の課題についての改善が望まれていた。これらの課題を解決する方法としては、多量の粒子を樹脂とともに押出す方法で製造される粒子練り込みフィルムが提案されている。(例えば特許文献1、2)。また、高度なマット調外観を有するフィルムとして、表面に樹脂層をコーティングにより設けたフィルムが提案されている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-97522号公報
【文献】特開2014-24341号公報
【文献】特開2005-24942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2、3に記載のフィルムは、ある程度光沢度を低くできるものの、近年求められる入射角度によらない低光沢外観を達成することが困難であった。
本発明の課題は上記した従来技術の問題点を解消することにある。すなわち、転写フィルムとして用いた場合に、入射角度によらない均一な低光沢外観を転写可能であるフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明のフィルムは次の構成を有する。
(1)60°光沢度(G60)と、85°光沢度(G85)がいずれも27以下である低光沢層(A層)を有するフィルムであって、前記A層が少なくとも片側の表層にあり、前記60°光沢度(G60)と、前記85°光沢度(G85)が下記(I)式を満足し、前記A層の片側に基材層を有し、基材層、A層ともポリエステル樹脂を主成分とし、長手方向(MD)、幅方向(TD)のうち少なくとも一方向のMIT屈曲破断回数が7500回以上であるフィルム。
0.1≦(G85)/(G60)≦3・・・(I)
(2)前記低光沢層(A層)の60°光沢度(G60)と、85°光沢度(G85)がいずれも10以下である(1)に記載のフィルム。
)前記A層の厚みが3μmを超えて20μm以下である(1)または(2)に記載のフィルム。
)前記A層が粒子を含んでおり前記粒子の円形度が0.995以下である(1)~(3)のいずれかに記載のフィルム。
)前記粒子が無機粒子である()に記載のフィルム。
)前記粒子嵩高度が0.5以上である()または()に記載のフィルム。
(7)二軸配向してなる(1)~(6)のいずれかに記載のフィルム。
)60°光沢度(G60)が6未満である(1)~()のいずれかに記載のフィルム。
)長手方向(MD)、幅方向(TD)の100℃から150℃の範囲での熱寸法変化率が、いずれも0.015%/℃以下である(1)~()のいずれかに記載のフィルム。
10)前記A層表面の中心線平均粗さ(SRa)が1000nmを超えて3000nm以下である(1)~()のいずれかに記載のフィルム。
11)長手方向(MD)、幅方向(TD)の150℃での熱収縮率がいずれも2%以下である(1)~(10)のいずれかに記載のフィルム。
12)下記方法により測定した150℃、10分間熱処理後のカール高さが0mm以上30mm以下である(1)~(11)のいずれかに記載のフィルム。
(測定方法) フィルムを任意の一方向に100mm、該方向に直交する方向に100mmの大きさに切り出し、サンプルとする。該サンプルを、150℃の熱風循環式オーブンで10分間放置して熱処理を行った後、ガラス板上に置き、ガラス板面から垂直方向での4隅の浮き上がり量を測定し、最大の高さをカール高さとする。
13)前記A層表面の表面自由エネルギーが44mN/m以下である(1)~(12)のいずれかに記載のフィルム。
14)転写用途に使用される(1)~(13)のいずれかに記載のフィルム。
15)(1)~(14)のいずれかに記載のフィルムのA層の表面に離型層が積層されてなる積層体。
【発明の効果】
【0007】
本発明のフィルムは、60°光沢度(G60)、85°光沢度(G85)がともに27以下と低く、かつその差が特定範囲に制御されているため、入射角度によらず優れた低光沢外観を示すので、例えば転写フィルムとして用いた場合に、転写対象物に低光沢の外観を付与する転写性に優れる。そのため、例えば、回路形成工程においてマット調外観の転写性に優れた転写用フィルムとして好適に用いることができる。また、建材、自動車部品やスマートフォンなどのエレクトロニクス製品、家電製品などの成形部材の加飾用途や、機能層への滑り性、エア抜け性、光拡散性といった機能性付与を目的とする表面形状の転写用途においても好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】嵩高度の求め方を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のフィルムは、60°光沢度(G60)と、85°光沢度(G85)がいずれも27以下である低光沢層(A層)を有するフィルムであり、前記A層が少なくとも片側の表層にあるフィルムである。前記60°光沢度(G60)、85°光沢度(G85)は、低光沢外観の観点より、いずれも10以下であることが好ましく、6未満であると最も好ましい。低光沢層に用いられる樹脂は特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロプレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタンおよび環状オレフィン系樹脂等が使用できる。中でも、フィルムの取り扱い性や寸法安定性、製造時の経済性の観点から、ポリエステルを主成分とすることが好ましい。なお、本発明において主成分とするとは、当該層全体に対して50質量%以上含有することをいう。
【0010】
本発明においてポリエステルとは、主鎖中の主要な結合をエステル結合とする高分子の総称であって、通常、ジカルボン酸成分とグリコール成分を重縮合反応させることによって得ることができる。
【0011】
ここで使用するジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸などの各成分を挙げることができる。また、ジカルボン酸エステル誘導体成分として、上記ジカルボン酸化合物のエステル化物、たとえばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸2-ヒドロキシエチルメチルエステル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、ダイマー酸ジメチルなどの各成分を挙げることができる。本発明の樹脂フィルムを構成するポリエステル樹脂において、全ジカルボン酸成分中の、テレフタル酸および/またはナフタレンジカルボン酸の割合は、好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上であることが耐熱性、生産性の点から好ましい。
【0012】
また、グリコール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSなど各成分が挙げられる。中でも、取り扱い性の点で、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコールの各成分が好ましく用いられる。本発明の樹脂フィルムを構成するポリエステル樹脂において、全ジオール成分中の、エチレングリコールの割合が、65モル%以上であると、耐熱性、生産性の点から好ましい。これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上を併用してもよい。
【0013】
本発明のフィルムは、前記A層の片側に基材層を有するフィルムであることが好ましい。A層の片側に基材層を有するフィルム構成とすることで、強度、低光沢性を両立しやすくなるため好ましい。本発明のフィルムは、A層/基材層の2層構成、A層/基材層/A層の3層構成などの構成が好ましく用いられる。本発明において、両面の表層にA層が配置されている場合、より60°光沢度(G60)が低い面をA1層、60°光沢度(G60)が高い面をA2層とする。
【0014】
本発明のフィルムにおいて、A層の片側に基材層を有するフィルムである場合、基材層を構成する樹脂としては、低光沢層(A層)に用いられる樹脂と同様に、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロプレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタンおよび環状オレフィン系樹脂等が使用できる。中でも、フィルムの取り扱い性や寸法安定性、製造時の経済性の観点から、ポリエステルを主成分とすることが好ましい。
【0015】
本発明のフィルムは、前記A層の厚みが3μmを超えて20μm以下であることが好ましい。前記A層の厚みを3μmよりも厚くすることで、A層中の粒子の数が十分に多くなり、60°光沢度、85°光沢度をともに20以下に低く制御しやすくなる。また、前記A層厚みを20μmより厚くしても光沢度への影響は小さくなる一方で、粒子の数が多くなりすぎるため、生産性が低下する場合がある。そのためA層の厚みは20μm以下とすることが好ましい。A層の厚みは、3.5μm以上15μm以下であればより好ましく、4μm以上10μm以下であれば最も好ましい。
【0016】
本発明のフィルムにおいて、低光沢層(A層)は粒子を含んでいることが好ましい。A層に含有させる粒子は、無機粒子、有機粒子いずれも適用することができ、無機粒子と有機粒子を併用することも可能である。ここで、使用する無機粒子および/または有機粒子としては特に限定されるものではないが、たとえば、無機粒子としては、シリカ、ケイ酸アルミ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化アルミなど、有機粒子としては、スチレン、シリコーン、アクリル酸類、メタクリル酸類、ポリエステル類、ジビニル化合物などを構成成分とする粒子を使用することができる。なかでも、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミなどの無機粒子およびスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼンなどを構成成分とする粒子を使用することが好ましい。低光沢外観、経済性の観点からは、シリカ、ケイ酸アルミが特に好ましく用いられる。なお、これらの外部添加粒子は二種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明においては、使用される無機粒子、有機粒子については、染料、無機顔料、有機顔料など、着色を目的とする着色剤は含まない。具体的には、ベンガラ、モリブデンレッド、カドミウムレッド、赤口黄鉛、クロムパーミリオン、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルーなどの青色顔料、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、コバルトグリーン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、マンガンバイオレット、ミネラルバイオレット、二酸化チタン、硫酸バリウム、亜鉛華、硫酸亜鉛、カーボンブラック、黒色酸化鉄などの無機顔料、縮合アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、ジオキサジン、イソインドリノン、キノフタロン、アンスラキノン系などの有機顔料は本発明の無機粒子、有機粒子には該当しない。
【0018】
本発明において、低光沢層(A層)表面の60°光沢度(G60)と、85°光沢度(G85)のいずれもを低くするために、前記A層中には、平均粒子径が1.5μm以上15μm以下の粒子が、A層全体を100質量%として、18質量%を超えて40質量%以下含有していることが好ましい。低光沢表面化の観点より、A層中の粒子の平均粒子径は、3μm以上15μm以下であればより好ましく、6μm以上15μm以下であれば最も好ましい。また、A層中の粒子濃度としては、A層全体を100質量%として、18質量%以上40質量%以下であればより好ましく、22質量%を越えて40質量%以下であれば最も好ましい。なお、本発明における平均粒子径は、D=ΣDi /N(Di :粒子の円相当径、N:粒子の個数)で表される数平均径Dのことを指す。
【0019】
また、本発明において、角度によらない低光沢表面を実現するために、前記60°光沢度(G60)と、前記85°光沢度(G85)が下記(I)式を満足することが必要である。
0.1≦(G85)/(G60)≦3・・・(I)
(I)式を満足するということは、60°光沢度(G60)と、85°光沢度(G85)の差が特定範囲で小さく制御されていることを示し、見る角度によらない均一な低光沢表面となる。均一低光沢表面の観点より、(II)式を満足すればより好ましく、(III)式を満足すれば最も好ましい。
0.1≦(G85)/(G60)≦2・・・(II)
0.1≦(G85)/(G60)≦1.5・・・(III)。
【0020】
本発明において、低光沢層(A層)の60°光沢度(G60)と、85°光沢度(G85)をいずれも27以下とし、上記(I)式を満足する方法としては、特に限定されないが、使用する粒子として多面体形状を有する粒子を用いる方法、単分散型の粒子を用いる方法、多面体形状を有し、かつ単分散型の粒子を用いる方法などが挙げられる。多面体形状を有する粒子や、単分散型の粒子を適用することにより、フィルム表面に不均一な形状を付与することができ、あらゆる方向において低光沢化を達成しやすくなる。本発明における多面体形状とは、複数の平面に囲まれた立体のことを指す。平面の数は三面以上であれば特に制限はないが、フィルム表面の不均一形状付与の観点より、四面体以上であればより好ましく、四面体以上八面体以下であれば最も好ましい。また、本発明における多面体形状としては、三角形、四角形、五角形等の各種の多角形によりその表面が形成されているものであればよい。本発明のフィルムにおいて、低光沢層(A層)中に含有する粒子は、後述する測定方法により求められる投影像の円形度(4π×面積/周囲長)が、0.995以下であることが好ましい。より好ましくは0.990以下である。一方、円形度が低すぎると、本発明のフィルムが配向フィルムである場合、延伸方向に粒子の方向が揃ってしまい、フィルム表面に方向依存性の少ない形状を形成しにくくなることがあるため、円形度は0.800以上であることが好ましい。また、本発明のフィルムにおいて、低光沢層(A層)中に含有する粒子は、後述する測定方法により求められる嵩高度が0.5以上であることが好ましい。本発明のフィルムが配向フィルムである場合、フィルムを延伸する工程を経て形成される。その際、嵩高度が小さい粒子(針状粒子や板状粒子)である場合、延伸方向に粒子の方向が揃ってしまい、フィルム表面に方向依存性の少ない形状を形成しにくくなる。低光沢層(A層)中に嵩高度が大きい粒子を含有することで、延伸する工程を経て形成されるフィルムであっても、フィルム表面に方向依存性の少ない形状を付与することが容易となる。嵩高度はより好ましくは0.6以上であり、さらに好ましくは0.7以上である。一方、フィルム表面に不均一な形状を付与することで、角度依存性なく低光沢化を達成する観点では、嵩高度は0.9以下であることが好ましい。また、本発明において単分散型の粒子とは、二次凝集粒子がほとんどなく、一次粒子としてポリマー中に分散される粒子のことであり、フィルムを透過型電子顕微鏡により観察した際、0.01mmの視野当りの二次凝集粒子の数が20個以下である粒子のことを指す。
【0021】
本発明において、角度によらない低光沢表面を形成し、マット調転写性とフィルム強度を両立するためには、4μm以上10μm以下の厚みとしたA層に、多面体形状の平均粒子径が6μm以上15μm以下の粒子をA層全体を100質量%として、22質量%以上40質量%以下含有する構成が非常に好ましい態様となる。
【0022】
本発明のフィルムは、フィルム強度向上の観点から、長手方向(MD)、幅方向(TD)のうち少なくとも一方向のMIT屈曲破断回数が7500回以上であることが好ましい。MIT屈曲破断回数が7500回以上とすることで、転写後にフィルムを剥離する際の破れや劈開の発生を抑制することができる。MIT屈曲回数は、長手方向(MD)、幅方向(TD)のいずれもが7500回以上であるとより好ましい。長手方向(MD)、幅方向(TD)のうち少なくとも一方向のMIT屈曲破断回数が7500回以上とする方法は特に限定されないが、例えば二軸延伸ポリエステルフィルムとする場合に、熱処理前にA層の結晶化温度(Tcc)以上の温度において延伸を行う方法などが好ましく用いられる。該条件を適用することにより、熱処理前に微細な配向結晶を形成せしめ熱処理により成長することで、フィルム破れや劈開の起点と考えられるラメラを低減することが可能となる。
【0023】
本発明のフィルムは、熱プレス等の高温加工における品位向上の観点から、長手方向(MD)、幅方向(TD)の100℃から150℃の範囲での熱寸法変化率が、いずれも0.015%/℃以下であることが好ましい。上記の方向において熱寸法変化率を0.015%/℃以下とすることで、高温加工時の膨張変形によるシワの発生を抑制することができる。熱寸法変化率は0.012%/℃以下であるとより好ましく、0.009%/℃以下であると最も好ましい。本発明において、長手方向(MD)、幅方向(TD)の100℃から150℃の範囲での熱寸法変化率を0.015%/℃以下とする方法は特に限定されないが、例えば二軸延伸ポリエステルフィルムとする場合に、熱処理後に段階的に降温し、各段階で弛緩させる方法などが好ましく用いられる。
【0024】
本発明のフィルムは、マット調外観転写性の観点から、A層表面の中心線平均粗さSRaが1000nmを超えて3000nm以下であることが好ましい。A層側の中心線平均粗さSRaが1000nm以下の場合は、マット調転写性が十分でない場合があり、3000nmより大きくしようとするとフィルムの強度が低下してしまう場合がある。マット調転写性とフィルム強度の観点から、A層側の中心線平均粗さSRaは1100nm以上2500nm以下であればより好ましく、1200nm以上2000nm以下であれば最も好ましい。本発明において、A層側の中心線平均粗さSRaを1000nmを超えて3000nm以下とする方法としては、特に限られるものでは無いが、A層中の粒子の含有量を調整する方法、A層中に含有する粒子の周辺の空隙を低減することが好ましい方法として挙げられる。粒子周辺の空隙を低減することで粒子の形状を表面に形成しやすくなり、中心線平均粗さSRaを1000nmを超えて3000nm以下と大きく制御しやすくなる。A層中の粒子周辺の空隙を低減する方法として、例えば、基材層、低光沢層(A層)ともにポリエステルからなり、二軸延伸ポリエステルフィルムとする場合は、低光沢層(A層)の延伸性を高める方法、後述する延伸後の熱処理工程において、高温で処理を行うことで、空隙を低減する方法などが好ましく用いられる。低光沢層(A層)は延伸性を高めるために、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂及び/または、その共重合体、ポリブチレンテレフタレート樹脂及び/または、その共重合体を含有することが好ましい。
【0025】
本発明のフィルムは、フィルムの寸法安定性の観点から長手方向(MD)、幅方向(TD)の150℃での熱収縮率がいずれも2%以下であることが好ましい。長手方向(MD)、幅方向(TD)の150℃での熱収縮率を2%以下と低く制御することで、各種加工工程でのカール、シワ等の発生を抑制することが可能となる。本発明は、寸法安定性をより高めるため、長手方向(MD)、幅方向(TD)の150℃での熱収縮率は1.8%以下であればより好ましく、1.5%以下であれば最も好ましい。
【0026】
本発明のフィルムは、取扱い性の観点より、150℃、10分間熱処理後のカール高さが0mm以上30mm以下であることが好ましい。本発明における150℃、10分間熱処理後のカール高さとは、フィルムを任意の一方向に100mm、該方向に直交する方向に100mmの大きさに切り出し、サンプルとし、該サンプルを、150℃の熱風循環式オーブンで10分間放置して熱処理を行った後、ガラス板上に置き、ガラス板面から垂直方向での4隅の浮き上がり量を測定し、最大の高さをカール高さとして算出する。カール高さは0mm以上25mm以下であればより好ましく、0mm以上20mm以下であれば最も好ましい。
【0027】
本発明において、長手方向(MD)、幅方向(TD)の150℃での熱収縮率を2%以下とする方法、150℃、10分間熱処理後のカール高さを0mm以上30mm以下とする方法としとしては特に限定されないが、例えば、二軸延伸後のフィルムの熱処理条件を調整する方法が挙げられる。処理温度は高温とすることで、配向緩和がおこり、熱収縮率は低減される傾向になるが、寸法安定性、フィルムの品位の観点から二軸延伸後の熱処理温度は220℃~240℃であれば好ましく、225℃~240℃であればさらに好ましく、230℃~240℃であれば最も好ましい。なお、フィルムの熱処理温度は、示差走査型熱量計(DSC)において窒素雰囲気下、20℃/分の昇温速度で測定したときのDSC曲線に熱履歴に起因する微小吸熱ピークより求めることができ、本発明のフィルムにおいては、微少吸熱ピーク温度は220~240℃であることが好ましい。
【0028】
また、好ましい熱処理時間としては、5~60秒間で任意に設定することができるが、寸法安定性、フィルムの品位、生産性の観点から、10~40秒とすることが好ましく、15~30秒とすることが好ましい。また、熱処理は、長手方向及び/又は幅方向に弛緩させながら行うことで、熱収縮率を低減させることができる。熱処理時に弛緩させる際の弛緩率(リラックス率)は、1%以上が好ましく、寸法安定性、生産性の観点からは、1%以上10%以下であれば好ましく、1%以上5%以下であれば最も好ましい。
【0029】
また、2段階以上の条件で熱処理する方法も非常に好ましい。220℃~240℃の高温での熱処理後に、熱処理温度より低い温度で、長手方向及び/又は幅方向に弛緩させながら熱処理することで、さらに熱収縮率を低減させることが可能となる。このときの2段階目の熱処理温度は120℃~200℃未満であれば好ましく、150℃~180℃であればさらに好ましい。また、150℃、10分間熱処理後のカール高さを0mm以上30mm以下とする方法として、樹脂押出時の冷却ドラム上と反対面の樹脂の冷却速度に差を付けないように、例えば、冷却ドラム面の反対面側に冷却ニップロールを設ける方法も好ましく用いられる。また、本発明のフィルムが基材層の少なくとも片面に前記A層を有するフィルム構成である場合は、基材層の両面にA層を有する構成とすること、基材層の片面にA層を有する場合も、基材層とA層の樹脂を類似の組成とすることが好ましい。
【0030】
本発明のフィルムは、フィルムの20cm×30cm範囲における引張破断強度のバラツキが20%以下であることが好ましい。引張破断強度のバラツキを小さくすることで、フィルムの取扱い性が向上し、フィルム搬送時、転写剥離時に強度が弱い箇所でのフィルム破れ発生を抑制することができる。本発明におけるフィルムの20cm×30cm範囲における引張破断強度のバラツキは、フィルムを任意の位置で幅20cm×長さ30cmの大きさに切り出したサンプルについて、長さ方向に15cmに2等分し、それぞれ15cm長のサンプルを幅方向に1cm幅に切り出し、長さ15cm×幅1cmの短冊状サンプル40本について引張試験により破断強度を測定し、算出する。フィルムの20cm×30cm範囲における引張破断強度のバラツキは、15%以下であればより好ましく、0.1%以上10%以下であれば最も好ましい。
【0031】
本発明のフィルムの20cm×30cm範囲における引張破断強度のバラツキを20%以下とする方法としては、例えば、A層中に含まれる粒子の分散性を向上させる方法が挙げられる。粒子の分散性が向上し、A層中に均一に粒子が存在することで、引張破断強度のバラツキも低減することができる。粒子の分散性を向上させる方法としては、特に限定されないが、例えば、A層を構成するベース樹脂と相溶性の高い樹脂に粒子をコンパウンドし、該粒子コンパウンド原料を、ベース樹脂にアロイ押出して、A層を形成する方法などが挙げられる。例えば、ベース樹脂がポリエチレンテレフタレートの場合は、コンパウンド用樹脂としてはポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートなどを選定することが好ましい。
【0032】
本発明のフィルムは、転写性の観点からA層表面の表面自由エネルギーを44mN/m以下とすることが好ましい。表面自由エネルギーを44mN/m以下とすることで、転写材料との剥離性が向上するため、転写、剥離が容易となり、転写性が向上する。A層側の表面自由エネルギーは、40mN/m以下であればより好ましく、35mN/m以下であれば最も好ましい。一方、転写材料の均一塗工性や加工中の密着性の観点からは、20mN/m以上であることが好ましい。
【0033】
本発明の表面自由エネルギーを前述の範囲とする方法としては、特に限定されないがシリコーン化合物、ワックス化合物、フッ素系化合物などの離型剤をA層中に含有する方法などが挙げられる。
【0034】
本発明においては、加熱時の耐熱性の観点から、A層をメラミン樹脂と離型剤を含有する層(以降、離型剤を含有する層を離型層と称する場合がある)とすることが好ましい。耐熱性、離型安定性の観点から、A層中のメラミン樹脂の含有量は50質量%以上であることが好ましい。
【0035】
メラミン樹脂としては、メラミンホルムアルデヒド樹脂やメチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、ブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、エーテル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ変性メラミンホルムアルデヒド樹脂等のメラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素メラミン樹脂、アクリルメラミン樹脂などが挙げられるが、メラミンホルムアルデヒド樹脂が好ましく、適度な離型性を有することからメチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂が特に好ましく用いられる。また、本発明のA層は、製膜性、延伸追従性の観点から、バインダー樹脂、離型剤の他にバインダー樹脂を含有することが好ましい。バインダー樹脂としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂が好ましく用いられ、特にアクリル系樹脂が好ましく用いられる。アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体または共重合体、側鎖および/または主鎖末端に硬化性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体があげられ、硬化性官能基としては水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基などがあげられる。なかでもアクリルモノマーと側鎖および/または主鎖末端に硬化性官能基を有するアクリル酸エステルが共重合されたアクリルモノマー共重合体が好ましい。また、本発明のA層に含有する離型剤としては、例えば、フッ素化合物、長鎖アルキル化合物およびワックス化合物などが挙げられる。これらの離型剤は単独で用いてもよいし、複数種使用してもよい。
【0036】
本発明に用いることができるフッ素化合物としては、化合物中にフッ素原子を含有している化合物である。例えば、パーフルオロアルキル基含有化合物、フッ素原子を含有するオレフィン化合物の重合体、フルオロベンゼン等の芳香族フッ素化合物等が挙げられる。本発明の離型フィルムを成形同時転写箔用途などに用いる場合、転写時に高い熱負荷がかかるため、耐熱性、汚染性を考慮すると、フッ素化合物は高分子化合物であることが好ましい。
【0037】
長鎖アルキル化合物とは、炭素数が6以上、特に好ましくは8以上の直鎖または分岐のアルキル基を有する化合物のことである。具体例としては、特に限定されるものではないが、長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂、長鎖アルキル基含有アクリル樹脂、長鎖アルキル基含有ポリエステル樹脂、長鎖アルキル基含有アミン化合物、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有四級アンモニウム塩等が挙げられる。長鎖アルキル化合物は高分子化合物であると、離型フィルム剥離時に貼り合わせている相手方基材表面へのA層由来の成分が転着することを抑制できるため好ましい。
【0038】
本発明に用いることができるワックスとは、天然ワックス、合成ワックス、それらの配合したワックスの中から選ばれたワックスである。天然ワックスとは、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油ワックスである。植物系ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油が挙げられる。動物系ワックスとしては、みつろう、ラノリン、鯨ロウが挙げられる。鉱物系ワックスとしてはモンタンワックス、オゾケライト、セレシンが挙げられる。石油ワックスとしてはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムが挙げられる。合成ワックスとしては、合成炭化水素、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸、酸アミド、アミン、イミド、エステル、ケトンが挙げられる。合成炭化水素としては、フィッシャー・トロプシュワックス(別名サゾワールワックス)、ポリエチレンワックスが有名であるが、このほかに低分子量の高分子(具体的には粘度平均分子量500から20000の高分子)である以下のポリマーも含まれる。すなわち、ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックまたはグラフト結合体がある。変性ワックスとしてはモンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体が挙げられる。ここでの誘導体とは、精製、酸化、エステル化、ケン化のいずれかの処理、またはそれらの組み合わせによって得られる化合物である。水素化ワックスとしては硬化ひまし油、および硬化ひまし油誘導体が挙げられる。
【0039】
これら離型剤をA層の表面に均一に分散させることによって、A層上に積層、剥離する被離型層との密着力、剥離力を適正な範囲とすることができる。離型剤としては、長鎖アルキル化合物を用いると、広範囲に剥離力を調整することが出来る点で、本発明の用途上好ましい。
【0040】
次に本発明のフィルムの具体的な製造方法の例について記載するが、本発明はかかる例に限定して解釈されるものではない。
【0041】
本発明のフィルムが基材層、低光沢層(A層)から構成され、各層ともにポリエステル樹脂が用いられる場合、それぞれ別々の押出機に各樹脂を供給し溶融押出する。この際、樹脂温度は255℃~295℃に制御することが好ましい。ついで、フィルターやギヤポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を各々行い、Tダイより冷却ドラム上にシート状に共押出し、積層シートを得る。その際、高電圧を掛けた電極を使用して静電気で冷却ドラムと樹脂を密着させる静電印加法、キャスティングドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けるキャスト法、キャスティングドラム温度をポリエステル樹脂のガラス転移点~(ガラス転移点-20℃)にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくは、これらの方法を複数組み合わせた方法により、シート状ポリマーをキャスティングドラムに密着させ、冷却固化する。これらのキャスト法の中でも、ポリエステルを使用する場合は、生産性や平面性の観点から、静電印加する方法が好ましく、加熱時のカール抑制の観点からは、冷却ドラムと反対面側に冷却ニップロールを設ける方法も好ましく用いられる。本発明のフィルムは、耐熱性、寸法安定性の観点から二軸配向フィルムとすることが好ましい。二軸配向フィルムは、未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行うことで得ることができる。
【0042】
かかる延伸方法における延伸倍率としては、長手方向に2.8倍以上3.4倍以下、さらに好ましくは2.9倍以上3.3倍以下が採用される。また、延伸速度は1,000%/分以上200,000%/分以下であることが望ましい。また長手方向の延伸温度は、70℃以上90℃以下とすることが好ましい。また、幅方向の延伸倍率としては、好ましくは2.8倍以上3.8倍以下、さらに好ましくは、3倍以上3.6倍以下が採用される。幅方向の延伸速度は1,000%/分以上200,000%/分以下であることが望ましい。また、幅方向の延伸温度は、70℃以上180℃以下とすることが好ましいが、フィルム強度向上の観点から、A層の結晶化温度以上の温度とすることがより好ましい。さらに、二軸延伸の後にフィルムの熱処理を行う。熱処理はオーブン中、加熱したロール上など従来公知の任意の方法により行うことができる。この熱処理は120℃以上ポリエステルの結晶融解ピーク温度以下の温度で行われるが、A層中の粒子周辺の空隙を低減させる観点から、また、150℃での熱収縮率を2%以下と低く制御する観点からも、熱処理温度は、220℃以上と高温とすることが好ましい。また、100℃から150℃の範囲での熱寸法変化率を0.015%/℃以下とする観点から、熱処理後に段階的に降温しながら弛緩処理を行うことが好ましい。より具体的には、熱処理の最大温度(Tmax)にてリラックス率0.5%以上の弛緩熱処理を行い、次いでTmax-50℃以上Tmax-5℃以下の温度において、リラックス率0.5%以上の弛緩熱処理を1段階以上行うことが好ましい。Tmax-50℃以上Tmax-5℃以下における弛緩熱処理は、Tmax-25℃以上Tmax-5℃以下、およびTmax-50℃以上Tmax-25未満の各温度範囲において各1回以上実施することが好ましい。弛緩熱処理は長手方向、または幅方向のいずれの方向に行っても良いが、逐次二軸延伸によって二軸延伸する場合は、二軸目の延伸方向に対して延伸後に連続して弛緩熱処理を行うことが生産性の観点から好ましい。
【0043】
さらに、本発明のフィルムは、安定した離型性を確保するため、フィルムのA層の表面に離型層を設けてなる積層体とすることも好ましい態様である。離型層を設ける方法は特に限られるものでは無いが、インラインにてコーティングさせる方法を挙げることができる。コーティング層をフィルム製造工程内のインラインで設ける方法としては、少なくとも一軸延伸を行ったフィルム上にコーティング層組成物を水に分散させたものをメタリングリングバーやグラビアロールなどを用いて均一に塗布し、延伸を施しながら塗剤を乾燥させる方法が好ましく、その際、離型層の厚みとしては0.02μm以上0.1μm以下とすることが好ましい。また、離型層中に各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、顔料、染料、有機または無機粒子、帯電防止剤、核剤などを添加してもよい。
【0044】
本発明のフィルムは、60°光沢度(G60)、85°光沢度(G85)がともに20以下と低く、かつその差が特定範囲に小さく制御されているため、入射角度によらず優れた低光沢外観を示し、転写フィルムとして用いた場合に、低光沢外観の転写性に優れる。そのため、回路形成工程においてマット調外観の転写性に優れた転写用フィルムとして好適に用いることができる。
【実施例
【0045】
(1)ポリエステルの組成
ポリエステル樹脂およびフィルムをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、H-NMRおよび13C-NMRを用いて各モノマー残基成分や副生ジエチレングリコールについて含有量を定量することができる。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体を構成する成分を採取し、評価することができる。なお、本発明のフィルムについては、フィルム製造時の混合比率から計算により、組成を算出した。
【0046】
(2)ポリエステルの固有粘度
ポリエステル樹脂およびフィルムの固有粘度は、ポリエステルをオルトクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体の固有粘度を評価することができる。
【0047】
(3)フィルム厚み
ダイヤルゲージを用いて、フィルム厚みを測定した。
【0048】
(4)各層厚み
フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面をミクロトームで切り出した。該断面を透過型電子顕微鏡(日立製作所製TEM H7100)で5000倍の倍率で観察し、
各層の厚みを求めた。
【0049】
(5)粒子の平均粒子径
フィルムから、樹脂をプラズマ低温灰化処理法(ヤマト科学製PR-503型)で除去し粒子を露出させる。これを透過型電子顕微鏡(日立製作所製TEM H7100)で観察し、粒子の画像(粒子によってできる光の濃淡)をイメージアナライザー(ケンブリッジインストルメント製QTM900)に結び付け、観察箇所を変えて粒子数100個で次の数値処理を行ない、それによって求めた数平均径Dを平均粒子径とした。
D=ΣDi /N
ここでDi は粒子の円相当径、Nは粒子の個数である。
【0050】
(6)粒子の形状・円形度
(5)と同様にして粒子の画像を観察した。また、円形度は、下記式より算出し、粒子数100個の平均値を本発明の円形度とした。
円形度=4π×面積/周囲長
(7)粒子の形状・嵩高度
フィルム長手方向に平行かつフィルム厚み方向に垂直なフィルム断面、及び、フィルム幅方向に平行かつフィルム厚み方向に垂直なフィルム断面をミクロトームで切り出し、(5)に記載の方法にて観察を行った。断面における粒子で粒子の端と端が最も長くなる長さをL1、前記L1を求めるに際して粒子の端と端を繋いだ線分の垂直な方向で粒子の端と端が最も長くなる長さをL2とする(図1)。嵩高度は、フィルム長手方向に平行かつフィルム厚み方向に垂直なフィルム断面、及び、フィルム幅方向に平行かつフィルム厚み方向に垂直なフィルム断面それぞれにおいてL2/L1を求めてそれぞれ100個の平均として求めた。
【0051】
(8)粒子の含有量
ポリマー1gを1N-KOHメタノール溶液200mlに投入して加熱還流し、ポリマーを溶解した。溶解が終了した該溶液に200mlの水を加え、ついで該液体を遠心分離器にかけて粒子を沈降させ、上澄み液を取り除いた。粒子にはさらに水を加えて洗浄、遠心分離を2回繰り返した。このようにして得られた粒子を乾燥させ、その質量を量ることで粒子の含有量を算出した。
【0052】
(9)光沢度
JIS-Z-8741(1997年)に規定された方法に従って、スガ試験機製デジタル変角光沢度計UGV-5Dを用いて、60°鏡面光沢度及び、85°鏡面光沢度をそれぞれN=3で測定し、平均値を本発明の60°光沢度(G60)、85°光沢度(G85)とした。
(10)MIT屈曲回数
ポリエステルフィルムを、幅15mm長さ100mmの短冊形に切り出しサンプルとした。 MIT耐折度試験機((株)マイズ試験機製)を用いて、フィルム長手方向および幅方向を各3回測定後平均値算出した。
【0053】
・先端:R0.38mm
・屈曲角度:左右135°
・屈曲速度:175往復/毎分
・荷重:9.8N
(11)中心線平均粗さSRa
長さ4.0cm×幅3.5cmの寸法に切り出したものをサンプルとし、触針法の高精細微細形状測定器(3次元表面粗さ計)を用いてJIS B0601-1994に準拠して、下記条件にてフィルムの表面形態を測定した。
・測定装置 :3次元微細形状測定器((株)小坂研究所製、ET-4000A型)
・解析機器 :3次元表面粗さ解析システム(TDA-31型)
・触針 :先端半径0.5μmR、径2μm、ダイヤモンド製
・針圧 :100μN
・測定方向 :フィルム長手方向、フィルム幅方向を各1回測定後平均
・X測定長さ:1.0mm
・X送り速さ:0.1mm/s(測定速度)
・Y送りピッチ:5μm(測定間隔)
・Yライン数:81本(測定本数)
・Z倍率 :20倍(縦倍率)
・低域カットオフ:0.20mm
・高域カットオフ:R+Wmm(粗さカットオフ値)R+Wとはカットオフしないことを意味する。
・フィルタ方式:ガウシアン空間型
・レベリング:あり(傾斜補正)
・基準面積 :1mm
上記条件にて測定を行い、その後解析システムを用いて中心線平均粗さSRaを算出した。
【0054】
(12)100℃から150℃の範囲での熱寸法変化率
長手方向(MD)、幅方向(TD)がそれぞれ長さ方向になるように長さ50mm×幅4mmの矩形に切り出しサンプルとし、熱機械分析装置(セイコ-インスツルメンツ製、TMA EXSTAR6000)を使用して、下記条件下で昇温し、100℃から150℃における熱寸法変化率を測定した。
試長:15mm、荷重:19.6mN、昇温速度:10℃/分、
測定温度範囲:30~200℃
100℃から150℃の範囲での熱寸法変化率(%)=[{150℃でのフィルム長(mm)-100℃でのフィルム長(mm)}/100℃でのフィルム長(mm)]×100
なお、測定は各フィルムとも長手方向および幅方向に5サンプル実施して平均値で評価を行った。
【0055】
(13)150℃熱収縮率
長手方向(MD)、幅方向(TD)がそれぞれ長さ方向になるように長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。サンプルに100mmの間隔で標線を描き、3gの錘を吊して150℃に加熱した熱風オーブン内に30分間設置し加熱処理を行った。熱処理後の標線間距離を測定し、加熱前後の標線間距離の変化から下記式により熱収縮率を算出した。測定は各フィルムとも長手方向および幅方向に5サンプル実施して平均値で評価を行った。
熱収縮率(%)={(加熱処理前の標線間距離)-(加熱処理後の標線間距離)}/(加熱処理前の標線間距離)×100。
【0056】
(14)150℃、10分熱処理後のカール高さ
フィルムを任意の一方向に100mm、該方向に直交する方向に100mmの大きさに切り出し、サンプルとする。該サンプルを150℃の熱風循環式オーブンで10分間放置して熱処理を行った後、ガラス板上に置き、ガラス板面から垂直方向での4隅の浮き上がり量を測定し、最大の高さをカール高さとした。
【0057】
(15)フィルムの20cm×30cm範囲における引張破断強度のバラツキ
フィルムを任意の位置で幅20cm×長さ30cmの大きさに切り出したサンプルについて、長さ方向に15cmに2等分し、それぞれ15cm長のサンプルを幅方向に1cm幅に切り出し、長さ15cm×幅1cmの短冊状サンプル40本を作成する。該サンプルについて、引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT-100)を用いて、初期引張チャック間距離50mmとし、引張速度を300mm/分として引張試験を行い、フィルムが破断した際の強度(引張破断強度)を測定し、下記の通り、バラツキを求めた。
引張破断強度のバラツキ(%)={(最大値-最小値)/平均値}×100
(16)表面自由エネルギー
測定液としては、水、エチレングリコール、ホルムアミドおよびジヨードメタンの4種類を使用し、接触角計(協和界面科学(株)製CA-D型)を用いて各液体のフィルム表面に対する静的接触角を求めた。それぞれの液体について5回測定し、その平均接触角(θ)と測定液(j)の表面張力の各成分を下式にそれぞれ代入し、4つの式からなる連立方程式をγ、γ、γについて解いた。
(γγj1/2+2(γγj1/2+2(γjγ1/2
=(1+cosθ)[γj+2(γjγj1/2]/2
ただし、γ=γ+2(γγ1/2
γj=γj+2(γjγj1/2
ここで、γ、γ、γ、γは、それぞれフィルム表面の表面自由エネルギー、長距離間力項、ルイス酸パラメーター、ルイス塩基パラメーターを、また、γj、γj、γj、γjは、それぞれ用いた測定液の表面自由エネルギー、長距離間力項、ルイス酸パラメーター、ルイス塩基パラメーターを示す。また、ここで用いた各液体の表面張力は、Oss("fundamentals of Adhesion", L. H. Lee (Ed.), p153, Plenum ess, New York (1991).)によって提案された値を使用した。
【0058】
(17)剥離性
フィルムを長さ100mm×幅100mmに切り出し用いた。下記のハードコート層形成用塗料組成物を、乾燥後の厚みが5μmになるように流量を制御してスロットダイコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥して溶剤を除去し、ハードコート層が積層された積層体を得た。
得られたフィルム/ハードコート層積層体を上金型温度、下金型温度ともに温度160℃に加熱したプレス機を使用し、厚さ0.2mmのアルミニウム板/厚さ0.125mmのポリイミドフィルム(東レデュポン製カプトン500H/V)/積層体/厚さ0.125mmのポリイミドフィルム(東レデュポン製カプトン500H/V)/厚さ0.2mmのアルミニウム板の構成体を1.5MPaの条件下で1時間加熱プレスを行った。加熱プレス後に、積層体を取り出し、高圧水銀灯を用いて300mJ/cmの紫外線を積層体側から照射し、ハードコート層を硬化させサンプルを得る。このサンプルをフィルム、ハードコート層界面にて剥離テストを実施し、以下基準で剥離性の評価を行った。なお、フィルムに離型層が設けられている場合は、フィルム/離型層とハードコート層界面にて剥離テストを行った。剥離テストは5回行い、下記評価基準で評価を行った。
【0059】
(ハードコート層形成用塗料組成物)
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し固形分濃度40質量%のハードコート層形成用塗料組成物を得た。
トルエン 30質量部
多官能ウレタンアクリレート 25質量部
(ダイセルオルネクス株式会社製 KRM8655)
ペンタエリスリトールトリアクリレート混合物 25質量部
(日本化薬株式会社製 PET30)
多官能シリコーンアクリレート 1質量部
(ダイセルオルネクス株式会社製 EBECRYL1360)
光重合開始剤 3質量部
(チバスペシャリティーケミカルズ社製 イルガキュア184)
(評価基準)
A:抵抗なく剥離可能であり、(5回の剥離テストにおいて、いずれも)フィルム破れは発生しなかった。
【0060】
B:剥離時に抵抗を感じたが、剥離可能であり、(5回の剥離テストにおいて、いずれも)フィルム破れは発生しなかった。
【0061】
C:剥離可能であったが、(5回の剥離テストにおいて、いずれかにおいて)剥離時にフィルム破れが発生することがあった。
【0062】
D:(5回の剥離テストにおいて、いずれも)剥離できなかった。
【0063】
(18)加熱プレス後のカール性
(17)と同様にして加熱プレスした後の積層体について、ガラス板上に置き、ガラス板面から垂直方向での4隅の浮き上がり量を測定し、最大の高さをカール高さとした。
【0064】
A:カール高さが0mm以上10mm未満
B:カール高さが10mm以上20mm未満
C:カール高さが20mm以上30mm未満
D:カール高さが30mm以上。
【0065】
(18)マット調外観の転写性、均一見栄え
(17)の方法にて得られたハードコート層の剥離面側について、光沢度を測定し、その平均値について以下の基準にて評価した。
(マット調外観の転写性)
A:60°光沢度(G60)と、85°光沢度(G85)いずれも10以下
B:60°光沢度(G60)と、85°光沢度(G85)の一方は10以下であったが、もう一方は10より大きく27以下であった
C:60°光沢度(G60)と、85°光沢度(G85)のいずれも10以上27以下であった
D:60°光沢度(G60)と、85°光沢度(G85)の少なくとも一方が27より大きかった。
【0066】
(マット調外観均一見栄え)
A:0.1≦(G85)/(G60)≦1.5
B:1.5<(G85)/(G60)≦2
C:2.0<(G85)/(G60)≦3
D:0.1>(G85)/(G60)もしくは、(G85)/(G60)>3
(19)転写品位
(17)の方法にて得られたハードコート層の剥離面側について、外観を目視で観察し、以下の基準にて評価した。
A: シワが見られない
B:Aに該当せず、シワの発生が2本以下
C:A、Bに該当せず、シワの発生が5本以下
D:A,B、Cのいずれにも該当しない。
【0067】
(ポリエステルの製造)
製膜に供したポリエステル樹脂は以下のように準備した。
【0068】
(ポリエステルA)
ジカルボン酸成分としてテレフタル成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.75)。
【0069】
(ポリエステルB)
イソフタル酸がジカルボン酸成分に対して20モル%共重合された共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.8)。
【0070】
(ポリエステルC)
ジカルボン酸成分としてテレフタル成分が100モル%、グリコール成分として1,4-ブタンジオール成分が100モル%であるポリブチレンテレフタレート樹脂(固有粘度1.2)。
【0071】
(ポリエステルD)
東レ-デュポン社製“ハイトレル(登録商標)”7247。
【0072】
(粒子マスターE)
ポリエステルA中に平均粒子径6μm・六面体形状の珪酸アルミ粒子を粒子濃度30質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.7)。
【0073】
(粒子マスターF)
ポリエステルA中に平均粒子径7.5μm・六面体形状の珪酸アルミ粒子を粒子濃度30質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.7)。
【0074】
(粒子マスターG)
ポリエステルA中に平均粒子径10μm・六面体形状の珪酸アルミ粒子を粒子濃度30質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.7)。
【0075】
(粒子マスターH)
ポリエステルA中に平均粒子径7.5μm・八面体形状の珪酸アルミ粒子を粒子濃度30質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.7)。
【0076】
(粒子マスターI)
ポリエステルA中に平均粒子径5μm・球状形状の珪酸アルミ粒子を粒子濃度30質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.7)。
【0077】
(粒子マスターJ)
ポリエステルA中に平均粒子径7.5μm・球状形状の珪酸アルミ粒子を粒子濃度30質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.7)。
【0078】
(粒子マスターK)
ポリエステルC中に平均粒子径6μm・六面体形状の珪酸アルミ粒子を粒子濃度30質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.7)。
【0079】
(粒子マスターL)
ポリエステルC中に平均粒子径7.5μm・六面体形状の珪酸アルミ粒子を粒子濃度30質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.7)。
【0080】
(粒子マスターM)
ポリエステルC中に平均粒子径10μm・六面体形状の珪酸アルミ粒子を粒子濃度30質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.7)。
【0081】
(粒子マスターN)
ポリエステルC中に平均粒子径7.5μm・八面体形状の珪酸アルミ粒子を粒子濃度30質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.7)。
【0082】
(粒子マスターO)
ポリエステルC中に平均粒子径5μm・球状形状の珪酸アルミ粒子を粒子濃度30質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.7)。
【0083】
(粒子マスターP)
ポリエステルC中に平均粒子径7.5μm・球状形状の珪酸アルミ粒子を粒子濃度30質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.7)。
【0084】
(粒子マスターQ)
ポリエステルC中に平均粒子径6μm・平均厚み0.10μmのアルミナ粒子を粒子濃度30質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.7)。
【0085】
(離型層形成用溶液(水分散体))
以下に示す、架橋剤:バインダー樹脂:離型剤:粒子をそれぞれ、質量比60:23:17で混合し、固形分が1%の質量比となるように純水で希釈して調整した。
・架橋剤:メチル化メラミン/尿素共重合の架橋製樹脂((株)三和ケミカル製“ニカラック” (登録商標)「MW12LF」)
・バインダー樹脂I:アクリルモノマー共重合体(日本カーバイド製)
・離型剤: ガラス製反応容器中に、パーフルオロアルキル基含有アクリレートであるCF(CFCHCHOCOCH=CH(n=5~11、nの平均=9)80.0g、アセトアセトキシエチルメタクリレート20.0g、ドデシルメルカプタン0.8g、脱酸素した純水354.7g、アセトン40.0g、C1633N(CHCl1.0gおよびC17O(CHCHO)H(n=8)3.0gを入れ、アゾビスイソブチルアミジン二塩酸塩0.5gを加え、窒素雰囲気下で攪拌しつつ60℃で10時間共重合反応させて得られた共重合体エマルション。
・粒子:平均粒子径170nmのシリカ粒子(日産化学工業(株)製“スノーテックス”(登録商標)MP2040)を固形分濃度が40質量%となるように純水で希釈して得られた水分散体。
【0086】
(実施例1)
組成、積層比が表の通りとなるように、原料をそれぞれ押出機に供給し、押出機シリンダー温度を270℃、短管温度を275℃、口金温度を280℃に設定し、樹脂温度280℃で、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ、さらに冷却ドラムと反対面側に25℃に温度制御した冷却ニップロールを設けて未延伸シートを得た。次いで、長手方向に延伸温度85℃で3.1倍延伸し、その後、コロナ放電処理を施し、離型層形成用溶液(水分散体)をメタリングバーを用いてウェット厚みが13.5μmとなるように塗布し、次いでテンター式横延伸機にて、幅方向に延伸温度100℃で延伸倍率3.3倍延伸した。その後、テンター内にて、235℃で15秒間熱処理を行い、続いて、幅方向に3.5%弛緩しながら175℃で10秒間熱処理を行い、フィルム厚み50μmのフィルムを得た(低光沢層(A層)表面をA1面、基材層側表面をB面とした)。
【0087】
(実施例2)
組成を表の通りとした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0088】
(実施例3)
組成を表の通りとした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0089】
(実施例4)
組成を表の通りとした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0090】
(実施例5)
組成を表の通りとした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0091】
(実施例6)
組成を表の通りとした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0092】
(実施例7)
組成を表の通りとした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0093】
(実施例8)
組成を表の通りとし、幅方向に延伸後に225℃で幅方向に1%弛緩しながら30秒熱処理した以外は、実施例2と同様にしてフィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0094】
(実施例9)
組成を表の通りとした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0095】
(実施例10)
組成を表の通りとし、押出機より冷却ドラム上にシート押出する際、冷却ドラムと反対面側の冷却ニップロールを設けずに未延伸シートを得、手方向に延伸した後、コロナ放電処理、離型層塗布を実施しなかった以外は、実施例4と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0096】
(実施例11)
組成を表の通りとし、A層/基材層/A層の3層構成とした以外は、実施例5と同様にしてフィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0097】
(実施例12)
組成を表の通りとし、A層/基材層/A層の3層構成とした以外は、実施例5と同様にしてフィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0098】
(実施例13)
組成を表の通りとし、A層/基材層/A層の3層構成とした以外は、実施例5と同様にしてフィルム厚み38μmのフィルムを得た。
【0099】
(実施例14)
組成を表の通りとした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0100】
(実施例15)
組成を表の通りとした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0101】
(実施例16)
長手方向延伸後に、コロナ放電処理、離型層塗布しなかった以外は実施例5と同様にしてフィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0102】
(実施例17)
組成を表の通りに変更し、横延伸温度を140℃とした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0103】
(実施例18)
組成を表の通りに変更し、横延伸温度を140℃とした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0104】
(実施例19)
組成を表の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0105】
(実施例20)
組成を表の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0106】
(実施例21)
組成を表の通りに変更し、幅方向への延伸後に幅方向への弛緩熱処理を235℃で2.0%、210℃にて1.5%の条件でそれぞれ5秒間ずつ行った以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0107】
(実施例22)
組成を表の通りに変更し、幅方向への延伸後に幅方向への弛緩熱処理を235℃で1.5%、215℃にて1.0%、200℃にて1.0%の条件でそれぞれ5秒間ずつ行った以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0108】
(実施例23)
組成を表の通りに変更し、幅方向への延伸後に幅方向への弛緩熱処理を240℃で3.5%、15秒間行った以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0109】
(実施例24)
組成を表の通りに変更し、幅方向への延伸後に幅方向への弛緩熱処理を235℃で2.0%、210℃にて1.5%の条件でそれぞれ5秒間ずつ行った以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0110】
(実施例25)
組成を表の通りに変更し、幅方向への延伸後に幅方向への弛緩熱処理を235℃で1.5%、215℃にて1.0%、200℃にて1.0%の条件でそれぞれ5秒間ずつ行った以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0111】
(比較例1)
組成を表の通りとした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0112】

(比較例2)
組成を表の通りとした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0113】
(比較例3)
組成を表の通りとした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0114】
(比較例4)
組成を表の通りとした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0115】
(比較例5)
組成を表の通りとした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0116】
(比較例6)
組成を表の通りとし、幅方向への延伸倍率を3.8倍とした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0117】
(比較例7)
組成を表の通りとした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのフィルムを得た。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
【表4】
【0122】
【表5】
【0123】
【表6】
【0124】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明のフィルムは、60°光沢度(G60)、85°光沢度(G85)がともに27以下と低く、かつその差が特定範囲に小さく制御されているため、入射角度によらず優れた低光沢外観を示し、転写フィルムとして用いた場合に、低光沢外観の転写性に優れる。そのため、例えば、回路形成工程においてマット調外観の転写性に優れた転写用フィルムとして好適に用いることができる。また、建材、自動車部品やスマートフォンなどのエレクトロニクス製品、家電製品などの成形部材の加飾用途や、機能層への滑り性、エア抜け性、光拡散性といった機能性付与を目的とする表面形状の転写用途においても好適に用いることができる。
図1