(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】分岐架線接続構造
(51)【国際特許分類】
H02G 7/00 20060101AFI20221227BHJP
H02G 15/08 20060101ALI20221227BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
H02G7/00
H02G15/08
H02G1/02
(21)【出願番号】P 2019004470
(22)【出願日】2019-01-15
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】弁理士法人小竹アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勝英
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-324627(JP,A)
【文献】特開平02-007811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/00
H02G 15/08
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外構造物に架設された複数の架空線路のそれぞれから分岐架線を分岐させ、それぞれの分岐架線を、対応する線路の下に設置されると共に、前記線路に対して略垂直方向に並設された電力機器に接続する構成を備えた分岐架線接続構造において、
前記分岐架線の前記架空線路に対する分岐位置を隣り合う線路で該線路の軸方向にずらして設けたことを特徴とする分岐架線接続構造。
【請求項2】
前記複数の架空線路は三相線路であり、両側の架空線路に対する前記分岐位置を、中央の架空線路に対する前記分岐位置よりも前記屋外構造物寄りに設けたことを特徴とする請求項1記載の分岐架線接続構造。
【請求項3】
前記中央の架空線路に対する前記分岐位置を、前記分岐架線をほぼ真下に垂下させた状態で前記中央の架空線路に対応する前記電力機器に接続する位置とし、前記両側の架空線路に対する前記分岐位置を、前記分岐架線を斜めに下した状態で前記両側の架空線路に対応する前記電力機器に接続する位置とすることを特徴とする請求項2記載の分岐架線接続構造。
【請求項4】
前記複数の架空線路は三相線路であり、中央の架空線路に対する前記分岐位置を、両側の架空線路に対する前記分岐位置よりも前記屋外構造物寄りに設けたことを特徴とする
請求項1記載の分岐架線接続構造。
【請求項5】
前記両側の架空線路に対する前記分岐位置を、前記分岐架線をほぼ真下に垂下させた状態で前記両側の架空線路に対応する前記電力機器に接続する位置とし、前記中央の架空線路に対する前記分岐位置を、前記分岐架線を斜めに下した状態で前記中央の架空線路に対応する前記電力機器に接続する位置とすることを特徴とする請求項4記載の分岐架線接続構造。
【請求項6】
前記電力機器は、避雷器であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の分岐架線接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔や鉄構などの屋外構造物に架設された複数の架空線路から分岐する分岐架線を、対応する架空線路の下に設置された電力機器に接続する場合の分岐架線接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
発変電所等の電送路には、事故の発生を検知するために、伝送路の電圧を測定するための計器用変圧器が設置されると共に、この計器用変圧器から送られる電圧情報から電送路の事故の有無を判定する保護継電装置が設置されている。そして、この保護継電装置において事故の発生が検出されると、保護継電装置から遮断器や断路器等の開閉装置へ伝送路の切り離し命令が送信され、電送路が電気的に分離されるようになっている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【0003】
このように、発変電所は、電送路、遮断器、断路器、計器用変圧器、保護継電装置等からなる電力系統を備えており、例えば、
図6乃至
図8に示される例においては、発変電所に引き込まれる架空線路(母線)3(3a,3b,3c)が、鉄構等の屋外構造物1に支持され、それぞれの線路から分岐された分岐架線4(4a,4b,4c)に計器用変圧器11(11a,11b,11c)を接続すると共に、この分岐架線の計器用変圧器の一次側に避雷器5(5a,5b,5c)を接続するようにしている。したがって、計器用変圧器11(11a,11b,11c)によって架空線路3(3a,3b,3c)の電圧を計器や継電器に必要な電圧(例えば、110V)に変換し、この計器用変圧器によって得られる電圧情報から図示しない保護継電装置によって事故の有無が判定されるようになっており、また、避雷器5(5a,5b,5c)によって雷撃や電力系統の開閉操作によって生じる過電圧を制限するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、このような計器用変圧器と避雷器を架空線路(母線)に接続するためには、鉄塔や鉄構等の屋外構造物1間に架設された架空線路3(3a,3b,3c)に、計器用変圧器11(11a,11b,11c)のほぼ真上となる位置で分岐クランプ8を介して分岐架線4(4a,4b,4c)を接続し、この分岐架線4(4a,4b,4c)を、分岐クランプ8からほぼ真下に下ろして計器用変圧器11(11a,11b,11c)に接続し、ターンバックル等を利用して所定の張力で張設することで風圧や短絡電磁力によって生じる電線の横揺れをできるだけ小さくするようにしている。そして、分岐架線4(4a,4b,4c)の途中から二次分岐架線12(12a,12b,12c)を介して避雷器5(5a,5,5c)を接続するようにしている。
【0006】
ところで、保護継電装置のデジタル化に伴い、既設の計器用変圧器11(11a,11b,11c)が不要となり除去する場合には、分岐架線4(4a,4b,4c)を計器用変圧器11(11a,11b,11c)から切り離すと共に、避雷器5(5a,5b,5c)については、引き続き架空線路に電気的に接続しておく必要がある。この場合に、従前と同様の分岐架線の接続構造を踏襲し、計器用変圧器11と同等の大きさの碍子支持柱を計器用変圧器が固定されていた基礎に固定し、この碍子支持柱に架空線路3(3a,3b,3c)から垂下する分岐架線4(4a,4b,4c)を接続することも考えられる。
【0007】
しかしながら、従来と同様の分岐架線の接続構造を採用する場合には、隣り合う分岐架線の離間距離を確保するために(風圧や短絡電磁力によって生じる電線の横揺れを小さくするために)、分岐架線にターンバックル等によって十分な張力を掛けなければならず、架空線路3(3a,3b,3c)に大きな負荷がかかり破損する恐れが懸念される。また、このような分岐架線4(4a,4b,4c)の接続構造は、架空線路3(3a,3b,3c)に対して張力がかからないように分岐架線を設けることを要請している電気設備の技術基準(解釈54条)にも合致しないものとなる。
【0008】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、架空線路に張力が加わらないように分岐架線を敷設することができると共に、分岐架線が風圧や短絡電磁力によって横揺れする場合でも、十分な絶縁間隔の裕度を確保することができ、さらに、避雷器等の電力機器へ分岐架線を接続する場合に特別な支持柱や基礎を不要にすることが可能な分岐架線接続構造を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、本発明に係る分岐架線接続構造は、屋外構造物に架設された複数の架空線路のそれぞれから分岐架線を分岐させ、それぞれの分岐架線を、対応する線路の下に設置されると共に、前記線路に対して略垂直方向に並設された電力機器に接続する構成を備えた分岐架線接続構造において、前記分岐架線の前記架空線路に対する分岐位置を隣り合う線路で該線路の軸方向にずらして設けたことを特徴としている。
【0010】
したがって、架空線路から分岐する分岐架線の各架空線路に対する分岐位置を隣り合う架空線路で軸方向にずらして設けたので、隣合う分岐架線が平行に配置されることがなくなり、隣り合う分岐架線の離間距離を大きく確保することが可能となる。
このため、それぞれの分岐架線を意図的に張設する必要がなくなり、風圧や短絡電磁力による横揺れをある程度許容しつつ分岐架線の自重のみで電力機器へ接続することが可能となる。
【0011】
ここで、複数の架空線路が三相線路である場合には、両側の架空線路に対する前記分岐位置を、中央の架空線路に対する前記分岐位置よりも屋外構造物寄りに設けることが望ましい。
すなわち、分岐架線を設けたことによる架空線路の負荷は、分岐架線の架空線路に対する分岐位置が架空線路を支持する屋外構造物に近接するほど小さくなるので、三相線路のそれぞれから分岐する分岐架線の分岐位置を線路の軸方向で交互に前後させる場合には、両側の架空線路に対する分岐架線の分岐位置を中央の架空線路に対する分岐架線の分岐位置よりも屋外構造物寄りに設けることで、分岐架線による負荷が小さい架空線路を多くすることが可能となる。
【0012】
このような構成を採用する具体的態様としては、中央の架空線路に対する前記分岐位置を、分岐架線をほぼ真下に垂下させた状態で前記中央の架空線路に対応する電力機器に接続する位置とし、両側の架空線路に対する前記分岐位置を、分岐架線を斜めに下した状態で前記両側の架空線路に対応する電力機器に接続する位置にするとよい。
【0013】
また、複数の架空線路が三相線路である場合において、隣り合う分岐架線の離間距離を大きくする態様としては、中央の架空線路に対する前記分岐位置を、両側の架空線路に対する前記分岐位置よりも屋外構造物寄りに設けるようにしてもよい。
具体的には、両側の架空線路に対する前記分岐位置を、分岐架線をほぼ真下に垂下させた状態で前記両側の架空線路に対応する電力機器に接続する位置とし、中央の架空線路に対する前記分岐位置を、分岐架線を斜めに下した状態で前記中央の架空線路に対応する電力機器に接続する位置にするとよい。
【0014】
以上のような分岐架線接続構造は、架空線路から分岐架線を分岐させてその分岐架線に電力機器を接続する構成であれば、各箇所に適用可能であるが、一例としては、架空線路から分岐した分岐架線を避雷器に直接接続する場合等に利用可能である。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、本発明によれば、複数の架空線路の各線路から分岐させた分岐架線を、対応する線路の下に設置された電力機器に接続するに当たり、分岐架線の各線路の分岐位置を隣り合う線路で該線路の軸方向にずらして設けるようにしたので、隣合う分岐架線が平行に配置されることがなくなり、隣り合う分岐架線の離間距離を平行に配設した場合に比べて大きく確保することが可能となる。
【0016】
このため、それぞれの分岐架線を意図的に張設する必要がなくなり、風圧や短絡電磁力による横揺れをある程度許容しつつ分岐架線の自重のみで電力機器へ接続することが可能となるので、架空線路の分岐架線が接続する分岐点において、分岐架線の張力がかからないようにすることが可能となる。
【0017】
また、分岐架線が風圧や短絡電磁力によって横揺れする場合でも、十分な絶縁間隔の裕度を確保することができ、さらには、避雷器等の電力機器へ分岐架線を直接接続するので、特別な支持柱や基礎を不要にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、発変電所等において設置された避雷器に、架空線路(母線)から分岐した分岐架線を直接接続させた形態を示す図であり、架空線路の側方から見た図である。
【
図2】
図2は、
図1の分岐架線接続構造を架空線路の上方から見た図である。
【
図3】
図3は、
図2で示す三相線路において、分岐架線が設けられる部分を下方から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、分岐架線接続構造の他の例を架空線路の上方から見た図である。
【
図5】
図5は、
図4で示す三相線路において、分岐架線が設けられる部分を下方から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、発変電所等において設置された計器用変圧器に、架空線路(母線)から分岐した分岐架線を接続させ、この分岐架線を更に分岐して避雷器を接続させた状態を示す従来の接続構造を示す図である。
【
図7】
図7は、
図6の分岐架線接続構造を架空線路の上方から見た図である。
【
図8】
図8は、
図7で示す三相線路において、分岐架線が設けられる部分を下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳述する。
【0020】
図1は、送電鉄塔や鉄構等の屋外構造物1の梁部2間に架設された三相の架空線路3の各線路3a,3b,3cに分岐架線4(4a,4b,4c)を接続し、この分岐架線4(4a,4b,4c)を、対応する線路の下に設置された電力機器としての避雷器5(5a,5,5c)に接続する例が示されている。
【0021】
架空線路3の各線路3a,3b,3cは、屋外構造物1の梁部2に碍子6を介して支持され、この梁部2を跨いで反対側に取り付けられている架空線路にジャンパ線7を介して電気的に接続されている。
【0022】
それぞれの分岐架線4(4a,4b,4c)は、分岐クランプ8を介して架空線路3(3a,3b,3c)と電気的に接続され、実際においては、
図3に示されるように、各架空線路3a,3b,3cを、2本の撚線導体をスペーサ9で所定の間隔に保持して構成し、これに対応して各分岐架線4a,4b,4cも、2本の撚線導体をスペーサ10で所定の間隔に保持して構成されている。
そして、この分岐架線4a,4b,4cの下端部を避雷器5a,5,5cの上端部に設けられた二又の接続端子部50a,50b,50cに挿入し、この接続端子部50a,50b,50cの周囲を加締めることで、分岐架線4a,4b,4cの下端部を接続端子部50a,50b,50cに圧着させ、避雷器5a,5b,5cを分岐架線4a,4b,4cと電気的に接続するようにしている。
【0023】
ここで、避雷器5a,5,5cは、各線路3a,3b,3cの下に設置されると共に、線路3a,3b,3cに対して略垂直となる方向に線路間とほぼ等しい間隔で整列配置されている。
【0024】
そして、以上の構成において、各線路3a,3b,3cから分岐する分岐架線4a,4b,4cは、
図2及び
図3に示されるように設けられている。
先ず、中央の線路3bに対しては、避雷器5bがほぼ真下にくる位置に分岐クランプ8を設ける(分岐架線4bの分岐位置を、対応する線路3bの避雷器5bがほぼ真下にくる位置とする)。
また、両側の線路3a,3cに対しては、中央の線路3bの分岐位置よりも屋外構造物寄りの位置に分岐クランプ8を設け、そこから対応する線路3a,3cの避雷器5a,5cに分岐架線4a,4cを斜めに下ろして接続する。したがって、架空線路に対して直角となる側方から見た場合に、中央の分岐架線4bと両側の分岐架線4a,4cとを、中央の架空線路3bを含む鉛直面に投影した場合に、架空線路を底辺とする逆三角形が形成されるような分岐架線の接続構造とする(
図1参照)。実際には、各分岐架線4a,4b,4cは自重に任せて下げるだけとし、特に張力を調節することはしていないため、両側の分岐架線4a,4cにあっては、
図3に示されるように、緩やかな湾曲カーブを描きながら避雷器5a,5cの接続端子部50a,50cに接続される。
【0025】
したがって、このような分岐架線4(4a,4b,4c)の接続構造を採用することにより、架空線路3(3a,3b,3c)に対する分岐位置から避雷器5(5a,5b,5c)へ接続する分岐架線は、隣合う分岐架線で平行に配置されることがなくなり、平行に配置した場合に比べて隣り合う分岐架線の離間距離を大きく確保することが可能となる。
このため、風圧や短絡電磁力による横揺れによる分岐架線4(4a,4b,4c)の近接を一層抑えることが可能となり、また、分岐架線4の横揺れを許容しつつ分岐架線4の自重のみで避雷器5へ接続することが可能となるので、それぞれの分岐架線4(4a,4b,4c)を意図的に張設する必要がなくなり、架空線路3の分岐点において分岐架線4の張力が加わらないように該分岐架線4を敷設することが可能となる。
【0026】
また、分岐架線4が風圧や短絡電磁力によって横揺れする場合でも、十分な絶縁間隔の裕度を確保することができるので、避雷器5へ分岐架線4を接続する場合において、分岐架線を支持する特別な支持柱や基礎を不要にすることが可能となる。
さらに、上述の構成においては、両側の架空線路3a,3cに対する分岐架線4a,4cの分岐位置を、架空線路を支持する屋外構造物寄りとしているので、両側の架空線路3a,3cにかかる負荷を中央の架空線路3bにかかる負荷よりも低減させることが可能となる。
【0027】
以上のように、隣り合う線路で分岐位置を線路の軸方向に前後させることで、隣合う分岐架線の絶縁間隔の裕度を確保することが可能となるが、同様の目的を達成するために、
図4及び
図5に示されるように、両側の線路3a,3cと中央の線路3bの分岐位置のずらし方を逆にしてもよい。すなわち、両側の線路3a,3cに対しては、避雷器5a,5cがほぼ真下にくる位置に分岐クランプ8を設け(分岐位置を対応する線路の避雷器5a,5cがほぼ真下にくる位置とし)、中央の線路3bに対しては、両側の線路3a,3cの分岐位置よりも屋外構造物寄りの位置とし、そこから対応する線路の避雷器5bに分岐架線を斜めに下ろして接続するようにしてもよい。
【0028】
このような構成においては、両側の架空線路3a,3cに対する分岐架線4a,4cの分岐位置が、中央の架空線路3bに対する分岐架線4bの分岐位置よりも屋外構造物1から離れることになるが、両側の分岐架線4a,4cも特に張設することなく自重のみで避雷器5a,5cへ導かれ、また、分岐位置からほぼ真下に垂下させるので、分岐架線の距離も最短にすることが可能となることから分岐架線の長さを抑えることが可能となり、線路にかかる負荷を十分に許容範囲内に抑えることが可能となる。
【符号の説明】
【0029】
1 屋外構造物
3、3a,3b,3c 架空線路
4.4a,4b,4c 分岐架線
5.5a,5b,5c 避雷器
8 分岐クランプ