(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】住宅
(51)【国際特許分類】
E04H 1/02 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
E04H1/02
(21)【出願番号】P 2019011507
(22)【出願日】2019-01-25
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】中原 潤平
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-127780(JP,A)
【文献】特開2004-162323(JP,A)
【文献】特開2008-014121(JP,A)
【文献】特開2002-004598(JP,A)
【文献】特開2009-155873(JP,A)
【文献】特開2017-214808(JP,A)
【文献】自然とつながる心地よい暮らし 新しく、どこか懐かしい佇まい ダインコンクリートの邸宅,日本,2013年10月28日,検索日:2022年10月3日,URL,https://diamond.jp/articles/-/43425
【文献】収納をいっぱいとった住みよい住宅間取り,HOMEMAKE住まいのベスト間取り540集 ,日本,ニューハウス出版株式会社,2004年12月25日,第53頁-第60頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/00-1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
居室と、前記居室に隣接して設けられた中庭とを備える住宅であって、
道路に面した間口領域と、
前記居室外に設けられ
、前記中庭を囲んで配置されたデッキと、
前記デッキの一部上に設けられた屋外リビングを備え、
前記屋外リビングは、前記間口領域と前記中庭の間に配置されており、前記間口領域から前記中庭まで連通した空間を形成していることを特徴とする住宅。
【請求項2】
請求項1に記載の住宅であって、
前記屋外リビングには、前記居室上から屋根が延出して設けられていることを特徴とする住宅。
【請求項3】
請求項1または2に記載の住宅であって、
前記中庭および前記屋外リビングには、共通の壁部が設けられて
おり、
前記中庭の全周は、前記デッキおよび前記壁部で囲まれていることを特徴とする住宅。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一つに記載の住宅であって、
前記デッキは、前記居室の床面と同じ高さに形成されていることを特徴とする住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅に関し、特に中庭を備える住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から居室内での開放感を得るために、中庭を備える間取りの住宅が数多く提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このような中庭を備えた住宅では、居室内からの中庭の視認性を確保するとともに、敷地外から中庭や居室内が丸見えになることを防止するために、壁等を用いて視線を遮ってプライベート空間のプライバシーを確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来から提案されている間取りでは、中庭と居室のプライバシー確保を重視すると、敷地外と中庭とが空間的に分離されて開放感を得ることが難しいという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、適切にプライバシーを確保しながらも開放感を得ることが可能な住宅を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の住宅は、居室と、前記居室に隣接して設けられた中庭とを備える住宅であって、道路に面した間口領域と、前記居室外に設けられ、前記中庭を囲んで配置されたデッキと、前記デッキの一部上に設けられた屋外リビングを備え、前記屋外リビングは、前記間口領域と前記中庭の間に配置されており、前記間口領域から前記中庭まで連通した空間を形成していることを特徴とする。
【0007】
このような本発明の住宅では、間口領域と中庭の間に屋外リビングが配置され、連通した空間を形成していることで、中庭から間口までの空間の連続性や移動性が確保され、また、屋外リビングの存在により敷地外から中庭への視線を遮ることができ、適切にプライバシーを確保しながらも開放感を得ることが可能となる。
【0008】
また本発明の一態様では、前記屋外リビングには、前記居室上から屋根が延出して設けられている。
【0009】
また本発明の一態様では、前記中庭および前記屋外リビングには、共通の壁部が設けられており、前記中庭の全周は、前記デッキおよび前記壁部で囲まれている。
【0010】
また本発明の一態様では、前記デッキは、前記居室の床面と同じ高さに形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、適切にプライバシーを確保しながらも開放感を得ることが可能な住宅を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態における住宅の一階部分を模式的に示す平面図である。
【
図2】第1実施形態における住宅の二階部分を模式的に示す平面図である。
【
図3】屋外リビング12から中庭13方向を視認した様子を模式的に示す図である。
【
図4】玄関土間19から屋外リビング12方向を視認した様子を模式的に示す図である。
【
図5】島状デッキ17から屋外リビング12方向を視認した様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態における住宅の一階部分を模式的に示す平面図である。
図2は、本実施形態における住宅の二階部分を模式的に示す平面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の住宅は一階に居室11と、屋外リビング12と、中庭13と、第1窓部14aと、第2窓部14bと、壁部15を備えている。また、中庭13と居室11との間にはデッキ16が設けられ、デッキ16と分離した島状デッキ17が中庭13内に設けられている。デッキ16と島状デッキ17の間には、中庭13の地表面が部分的に露出しており、島状デッキ17上にはテーブル等の家具18が配置されている。また、住宅の玄関には玄関土間19と玄関ホール20と棚21が設けられ、屋外リビング12の外側には間口領域22と道路23が設けられている。
【0015】
図2に示すように本実施形態の住宅は、二階に二階居室24を備えている。二階居室24は、住宅の二階部分において住宅を構成する壁面で区切られた空間であり、その窓からは中庭13を鑑賞可能となっている。また、屋外リビング12の上には屋根26が設けられている。
【0016】
居室11は、住宅の一階部分において住宅を構成する壁面で区切られた空間であり、その一部に第1窓部14aと第2窓部14bが設けられている。
図1では、居室11がリビングルームの例を示しているが、ダイニングルームやキッチン、書斎等の人が居住する空間であれば用途は限定されない。
【0017】
屋外リビング12は、居室11の外部に設けられ、外気に開放された空間であり、デッキ16の一部が延伸して敷設されており、家具18が配置されることで屋外における居住空間を構成している。住宅において屋外リビング12が設けられる位置は、間口領域22と中庭13の間であり、
図1に示した例では玄関ホール20の横である。屋外リビング12と中庭13の間には壁や間仕切りが設けられておらず、互いの空間が連通して自由に移動可能となっている。また、屋外リビング12と間口領域22との間には、少なくとも一部では通行可能に空間が連通している。したがって、間口領域22から屋外リビング12を経て中庭13までは、連通した空間が形成されている。
【0018】
中庭13は、住宅の敷地内において外気に開放された空間である。中庭13は第2窓部14bと壁部15に挟まれた位置に設けられている。中庭13では、地表面は建造物で覆われず植栽が設けられて小規模な庭園を形成している。ここでは中庭13として地表面が露出した庭園の例を示したが、ウッドデッキやインターロッキング等で地表を覆う形式の中庭であってもよい。
【0019】
第1窓部14aは、居室11の壁面の一部に設けられて屋外リビング12に面する窓であり、居室11内から屋外リビング12を視認可能に仕切っている。第2窓部14bは、居室11の壁面の一部に設けられて中庭13に面する窓であり、居室11内から中庭13を視認可能に仕切っている。第1窓部14aおよび第2窓部14bの具体的構造は限定されないが、屋外リビング12や中庭13との空間の連続性や一体感を高めるためには掃出し窓が好ましい。
【0020】
壁部15は、住宅の外壁の一部が延長された壁であり、屋外リビング12と中庭13を挟んで第1窓部14aと第2窓部14bに対向して設けられている。
図1に示すように壁部15は、敷地外と屋外リビング12および中庭13とを仕切り、敷地外から中庭13および居室11を視認できないように目隠ししている。また、
図1に示した例では、壁部15として住宅の外壁を延長した構造例を示したが、住宅の外壁とは独立して設けられた壁であってもよい。
【0021】
デッキ16は、中庭13のうち屋外用の床材を敷設した略平坦な領域である。
図1に示すようにデッキ16は、居室11の第1窓部14aと第2窓部14bに隣接して、中庭13を囲むように設けられている。玄関ホール20に隣接する領域では、デッキ16は第1窓部14aから壁部15に至るまで形成されており、屋外リビング12の床を構成している。
【0022】
デッキ16の高さは居室11および玄関ホール20の床レベルと同じであり、かつ第1窓部14aおよび第2窓部14bを介して居室11および玄関ホール20と連続して一体の平面を構成している。デッキ16の構造や材質は限定されないが、第1窓部14aおよび第2窓部14bに隣接する床面と同様の仕上げを用いることで、居室11と屋外リビング12と中庭13との空間の連続性が高まるため好ましい。
図1に示したように中庭13の周囲を囲むようにデッキ16を設けると、中庭13と居室11との境界が曖昧になり、居室11と中庭13との空間の連続性をさらに高めることができる。
【0023】
島状デッキ17は、デッキ16とは分離して形成された平坦面を有する領域であり、中庭13内の地表面で囲まれて島状に配置されている。島状デッキ17の構造や材質は限定されないが、デッキ16と同様の構造と材質を用いることが好ましい。島状デッキ17上には屋外用の椅子や机等の家具18を配置して、中庭13中にアウトドアダイニングを構成している。また、島状デッキ17はデッキ16と同等の高さに形成するとしてもよく、デッキ16よりも高く形成するとしてもよい。島状デッキ17の高さを地表面より高くすることで、地表面に浮いた島のような空間を演出することができる。
【0024】
玄関土間19は、住宅の正面玄関に設けられた土間である。玄関ホール20は、玄関土間19に隣接して居室11と同じ床レベルの床が設けられた空間であり、居室11の一部を構成している。棚21は、玄関土間19と居室11の間に設けられた棚であり、玄関とリビングとの境界を構成している。間口領域22は、住宅の敷地内において道路23に面した空間であり、道路23から玄関に至るまでの領域である。道路23は、住宅の敷地に面した通行領域であり、車両や通行人が往来をする通常の公道や私道である。
【0025】
屋根26は、住宅の屋根の一部が延出されて屋外リビング12上を覆っている。ここでは屋根26として住宅の屋根の一部を用いた例を示したが、住宅と別体に屋根26を設けるとしてもよい。また、屋外リビング12上を覆って日照や降雨を遮ることができれば、バルコニーやピロティーなどの構造であってもよい。
【0026】
図3は、屋外リビング12から中庭13方向を視認した様子を模式的に示す図である。屋外リビング12にはテーブル31やソファ32,33が配置されており、屋根26の下で飲食や読書等をして過ごすことができる。中庭13の周囲には屋外リビング12から連続したデッキ16が設けられており、第1窓部14aや第2窓部14bを介して居室11内への移動も可能となっている。屋外リビング12からは中庭13の植栽や、島状デッキ17(図示省略)上に配置された家具18を眺めることができる。また、屋外リビング12と中庭13には共通の壁部15が設けられており、かつ両者間には遮るものがないため空間が連通し、オープンエアーな空間ではあるものの一続きの纏まった空間を構成して一体感と開放感が得られる。
【0027】
また、屋外リビング12と間口領域22との間には少なくとも一部で通路が構成されており、両者間で空間が連通して自由に行き来することが可能である。これにより、道路23から間口領域22、屋外リビング12を介して中庭13まで移動することが可能であり、開放感をより高めることができる。このとき、道路23から中庭13方向を眺めた場合には、中庭13よりも手前側に間口領域22と屋外リビング12が存在するため、中庭13や居室11内を直接視認することは困難であり、一定のプライバシーを確保しながらも開放感を得ることができる。
【0028】
図4は、玄関土間19から屋外リビング12方向を視認した様子を模式的に示す図である。上述したように屋外リビング12は、玄関ホール20に隣接して設けられている。したがって玄関土間19からは、玄関ホール20と第1窓部14aを介して屋外リビング12上のソファ32,33等の家具や、壁部15、屋根26を見渡すことができる。また、中庭13も第1窓部14aと第2窓部14bを介して見渡すことができる。
【0029】
ここで、デッキ16は第1窓部14aおよび第2窓部14bに隣接して設けられ、居室11の床面と同じ高さに形成され、居室11や玄関ホール20とデッキ16とは連続して一体の平面を構成している。これにより、居室11内と屋外リビング12および中庭13との境界が曖昧になり、居室11と屋外リビング12および中庭13の空間の連続性を高めることができる。
【0030】
図5は、島状デッキ17から屋外リビング12方向を視認した様子を模式的に示す図である。中庭13と屋外リビング12とは、間に遮るものがなく連通した空間を形成しており、さらに屋外リビング12と間口領域22(図示省略)との間には通路が形成されて連通した空間となっている。したがって
図5に示すように、中庭13からは屋外リビング12を通して間口領域22が視認可能となっている。一方で、屋外リビング12の上には屋根26が設けられており、間口領域22との境界は明確であり、屋外リビング12と中庭13の一体感を確保しながらも、間口領域22や道路23からの視線を過剰に意識しないようにプライバシーを確保できる。
【0031】
また、デッキ16は中庭13から屋外リビング12にまで一体で連続して設けられることで、屋外リビング12と中庭13との空間の連続性と開放感を高めることができる。また、デッキ16が第1窓部14aおよび第2窓部14bに隣接して設けられ、居室11内の床と同一高さで形成されていることで、居室11内と屋外リビング12および中庭13の一体感と開放感を高めることができる。
【0032】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
11…居室
12…屋外リビング
13…中庭
14a…第1窓部
14b…第2窓部
15…壁部
16…デッキ
17…島状デッキ
18…家具
19…玄関土間
20…玄関ホール
21…棚
22…間口領域
23…道路
24…二階居室
26…屋根
31…テーブル
32…ソファ