(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】報知システム及び報知方法
(51)【国際特許分類】
F03B 13/10 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
F03B13/10
(21)【出願番号】P 2019025555
(22)【出願日】2019-02-15
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100116920
【氏名又は名称】鈴木 光
(72)【発明者】
【氏名】長屋 茂樹
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-064200(JP,A)
【文献】特開2019-177832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に配置される水中機器の水面への浮上を報知する報知システムであって、
前記水中機器の水面への浮上の情報を取得する浮上情報取得部と、
前記浮上情報取得部により取得された情報に基づいて、前記水中機器が水面へ浮上することを浮上水域に対し報知する報知部と、を備え
、
前記浮上情報取得部及び前記報知部は、陸上に設置される施設に設けられている、報知システム。
【請求項2】
前記水中機器は、水中に配置され水流によって発電を行う発電装置である、
請求項
1に記載の報知システム。
【請求項3】
水中に配置される水中機器の水面への浮上を報知する報知方法であって、
陸上に設置される施設に設けられている浮上情報取得部によって、前記水中機器の水面への浮上の情報を取得する浮上情報取得工程と、
陸上に設置される施設に設けられている報知部によって、前記浮上情報取得工程により取得された情報に基づいて、前記水中機器が水面へ浮上することを浮上水域に対し報知する報知工程と、
を含む報知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、報知システム及び報知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中で用いられる水中機器として、例えば、特表2014-534375号公報に記載されるように、水底に対しプラットフォーム(浮体)を係留ロープで係留し、プラットフォームを水中に浮遊させ、水流によってプラットフォームのブレードを回転させて発電を行う装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような水中機器において、メンテナンスなどにより水面へ浮上することが考えられる。この場合、浮上する水面を航行する他の船舶などに対し浮上することを知らせることが望ましい。一方、水中機器が故障などにより緊急浮上するような場合もあり得る。このような場合、他の船舶などに対し浮上することを迅速に知らせることが必要となる。
【0005】
そこで、水中機器の水面への浮上時における安全性を確保できる報知システム及び報知方法の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本開示の一態様に係る報知システムは、水中に配置される水中機器の水面への浮上を報知する報知システムであって、水中機器の水面への浮上の情報を取得する浮上情報取得部と、浮上情報取得部により取得された情報に基づいて水中機器が水面へ浮上することを浮上水域に対し報知する報知部とを備えて構成される。この報知システムによれば、水中機器が水面へ浮上することを水中機器の浮上水域に対して報知することにより、水中機器の浮上水域を航行する船舶などに対し水中機器の浮上を知らせることができる。このため、水中機器との衝突を回避することが可能となる。
【0007】
また、本開示の一態様に係る報知システムにおいて、浮上情報取得部及び報知部は、陸上に設置される施設に設けられていてもよい。この場合、水中機器の故障により緊急浮上する場合であっても、水中機器が水面へ浮上することを陸上の施設から浮上水域に対し確実に報知することができる。
【0008】
また、本開示の一態様に係る報知システムにおいて、水中機器は水中に配置され水流によって発電を行う発電装置であってもよい。この場合、発電装置の水面への浮上を浮上水域に対し報知することができる。
【0009】
本開示の一態様に係る報知方法は、水中に配置される水中機器の水面への浮上を報知する報知方法であって、水中機器の水面への浮上の情報を取得する浮上情報取得工程と、浮上情報取得工程により取得された情報に基づいて水中機器が水面へ浮上することを浮上水域に対し報知する報知工程とを含んで構成される。この報知方法によれば、水中機器が水面へ浮上することを水中機器の浮上水域に対して報知することにより、水中機器の浮上水域を航行する船舶などに対し水中機器の浮上を知らせることができる。このため、水中機器との衝突を回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る発明によれば、水中機器の水面への浮上時において安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態に係る報知システムの概要を示す図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る報知システムの電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る報知方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る報知システムの構成概要図である。
【0014】
図1に示すように、報知システム1は、水中機器の水面への浮上を報知するシステムであり、例えば水流発電装置2の水面への浮上の報知に用いられる。水流発電装置2は、水中に浮体20を浮遊させ、浮体20に設けられたタービン23を水流FWによって回転させて発電を行う装置である。浮体20は、係留ロープ3によりアンカ4に係留されている。浮体20には、ケーブル5が接続されている。ケーブル5は、浮体20で発電した電力を伝送するための送電ケーブルである。ケーブル5は、係留ロープ3に沿って浮体20からアンカ4に向けて延びている。また、ケーブル5は、水底に沿ってアンカ4から陸上施設6に向けて延びている。ケーブル5には、発電した電力を送電する電線のほか、通信線も含まれる。
【0015】
図2に示すように、水流発電装置2は、例えば海洋に設置され、海流によって発電する。浮体20は、左右二つの発電用ポッド21をビーム22によって連結して構成されている。ビーム22は、例えば矩形の板状体を水平に配置して設けられる。発電用ポッド21には係留ロープ3の一端が取り付けられ、係留ロープ3の他端が水底に設置されるアンカ4に取り付けられている。
【0016】
係留ロープ3は、浮体20をアンカ4に係留するためのロープ材であり、例えばワイヤロープなどの強靭なロープ材により構成される。
図2では、係留ロープ3として、浮体20側の端部を二つに分岐させたロープ材が用いられている。すなわち、係留ロープ3の浮体20側の二つの端部の一方は右の発電用ポッド21に取り付けられ、他方は左の発電用ポッド21に取り付けられている。アンカ4は、浮体20が水流FWで流されないように保持するための構造物であり、例えばコンクリート製又は金属製のものが用いられる。アンカ4は、重量の大きい構造物の自重により位置を維持するシンカであってもよいし、グラウンドアンカなどの支持力も用いて位置を維持するタイプであってもよい。
【0017】
図3は、報知システム1の電気的構成を示すブロック図である。
【0018】
図3に示すように、水流発電装置2には、制御部24、通信部25、浮力調整部26及び受電部27が設けられている。これらの制御部24、通信部25、浮力調整部26及び受電部27は、例えば発電用ポッド21の内部に設けられる。制御部24は、水流発電装置2の装置全体の制御を実行する。例えば、制御部24は、浮体20の浮力調整制御、姿勢制御、発電制御などを実行する。制御部24には、通信部25、浮力調整部26及び受電部27が接続されている。通信部25は、陸上施設6との通信を行う部位であり、信号の送受信が可能となっている。例えば、通信部25は、ケーブル5を介して陸上施設6との通信を行う。浮力調整部26は、浮体20の浮力調整を行い、浮体20の浮上及び沈降を調整する。浮力調整部26としては、例えばバラストタンクへの水の出し入れを行うポンプなどが用いられる。受電部27は、発電機28の発電電力を入力して電力調整を行う。例えば、受電部27は、発電電力を直流電力に変換し、所望の周波数となるように交流電力に変換する。また。受電部27は、交流電力の変圧を行う。発電機28は、タービン23の回転の運動エネルギを電気エネルギに変換する機器であり、タービン23の回転力を受けて発電する。受電部27から出力される電力は、ケーブル5を通じて陸上施設6へ送電される。
【0019】
陸上施設6には、制御部61、通信部62、受電部63及び報知部64が設けられている。制御部61は、通信制御、受電制御及び報知制御などを実行する。例えば、制御部61は、浮体20との通信制御を行い、信号受信及び信号送信を制御する。また、制御部61は、水流発電装置2の水面への浮上の情報を取得する浮上情報取得部として機能する。すなわち、制御部61は、浮体20からの信号を受信して、水流発電装置2の浮上情報を取得する。また、制御部61は、水流発電装置2の浮上情報を取得しているか否かに基づいて、浮体20が水面に浮上するか否かを判断する。そして、制御部61は、浮体20が水面に浮上すると判断した場合、浮体20の浮上水域に対し水流発電装置2が水面へ浮上することを報知させる。
【0020】
報知部64は、水流発電装置2の水面への浮上を報知する部位である。例えば、報知部64としては、報知信号を発信可能な通信機器が用いられる。具体的には、報知部64は、無線信号として報知信号を発信する。報知信号としては、水流発電装置2の識別符号、船名、位置、速度を少なくとも含む信号とされる。この報知信号としては、AIS(AutomaticIdentification System)信号を用いてもよい。AIS信号は、自動船舶識別装置(AIS)から発せられる信号である。
【0021】
図1に示すように、報知信号Sは、水流発電装置2の浮上水域Rに対して送信される。浮上水域Rは、水流発電装置2の浮上位置を含む領域である。例えば、浮上水域Rは、水流発電装置2の浮上位置から所定の範囲内の領域とされる。また、報知信号Sは、水流発電装置2の浮上水域Rに発信されれば、浮上水域R以外の領域に対して発信されてもよい。
【0022】
次に、本実施形態に係る報知方法について説明する。
【0023】
図4は、本実施形態に係る報知方法を示すフローチャートである。
図4のフローチャートは、例えば陸上施設6の制御部61によって実行される。まず、
図4のS10に示すように、水流発電装置2の浮上が行われるか否かが判定される。制御部61は、通信部62を通じて、水流発電装置2から水面への浮上を示す信号を受信していないかどうか判定する。すなわち、制御部61は、水流発電装置2から水面への浮上を示す信号を受信した場合には水流発電装置2の浮上が行われると判定し、水流発電装置2から水面への浮上を示す信号を受信していない場合には水流発電装置2の浮上が行われないと判定する。このとき、水流発電装置2の浮上は、定期的なメンテナンスによる浮上であってもよいし、故障などによる緊急浮上であってもよい。
【0024】
S10にて水流発電装置2の浮上が行われていないと判定された場合、
図4の一連の制御処理を終了する。なお、
図4の一連の制御処理は繰り返し実行され、S10の浮上判定処理も繰り返し実行される。一方、S10にて水流発電装置2の浮上が行われていると判定された場合、報知処理が行われる(S12)。報知処理は、水流発電装置2が水面へ浮上することを浮上水域Rに対し報知する処理である。すなわち、制御部61は報知部64に対し報知指示の信号を出力する。これを受けて、報知部64は、
図1に示すように、浮上水域Rに対して報知信号Sを発信する。
【0025】
浮上水域Rを航行する船舶91は、報知信号Sを受信する。これにより、船舶91は、浮上水域Rの水面に水流発電装置2が浮上することを認識し、浮上水域Rから離れるように航行する。従って、船舶91が水流発電装置2と衝突することを回避でき、船舶91の航行の安全が図られる。そして、
図4のS12の報知処理を終えたら、
図4の一連の制御処理を終了する。
【0026】
以上説明したように、本実施形態に係る報知システム1及び報知方法によれば、水流発電装置2が水面へ浮上する場合、水流発電装置2が水面へ浮上することを浮上水域Rに対して報知する。これにより、水流発電装置2の浮上水域Rを航行する船舶などに対し水流発電装置2の浮上を知らせることができる。このため、水流発電装置2との衝突を回避することが可能となる。
【0027】
本実施形態に係る報知システム1及び報知方法によれば、水流発電装置2が水面へ浮上する場合、陸上施設6から報知信号を発信する。このため、浮上水域Rに対して水流発電装置2の浮上を確実に知らせることができる。例えば、水流発電装置2から報知信号を発信する場合、電波では伝送減衰が大きく報知信号を浮上水域Rの船舶等に伝搬することが難しい。これに対し、陸上施設6から報知信号を発信することで、浮上水域Rの船舶等に対して水流発電装置2の浮上を確実に知らせることができるのである。
【0028】
以上のように、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲の記載の要旨を逸脱しない範囲で様々な変形態様で実施することができる。
【0029】
例えば、上述した実施形態においては、水流発電装置2が水面へ浮上する場合に水流発電装置2が水面へ浮上することを浮上水域Rに対して報知しているが、浮上水域Rに船舶91が航行しているときには水流発電装置2の浮上を遅らせてもよい。例えば、陸上施設6におけるAISの受信信号に基づいて浮上水域Rに船舶91が存在するか否かが判断され、浮上水域Rに船舶91が存在する場合又は浮上水域Rに船舶91が進入する可能性がある場合、水流発電装置2に対し浮上調整指示の信号が出力される。この信号を受けて、水流発電装置2は浮上速度を遅らせる。これにより、水流発電装置2と船舶91との衝突をより確実に回避することができる。
【0030】
また、浮上水域Rに船舶91が航行しているときには水流発電装置2の浮上位置を変更してもよい。例えば、陸上施設6におけるAISの受信信号に基づいて浮上水域Rに船舶91が存在するか否かが判断され、浮上水域Rに船舶91が存在する場合又は浮上水域Rに船舶91が進入する可能性がある場合、水流発電装置2に対し浮上位置変更指示の信号が出力される。この信号を受けて、水流発電装置2はタービン23の回転状態を調整して浮上位置を変更する。水流発電装置2と船舶91との衝突をより確実に回避することができる。
【0031】
また、上述した実施形態においては、水流発電装置2として左右二つの発電用ポッド21をビーム22によって連結した浮体20を用いる場合について説明したが、浮体20はこのように構成されるものに限られない。例えば、浮体は、左右二つの発電用ポッド21の間に中央ポッドを備えていてもよいし、一つの発電用ポッド21を備えて構成されていてもよい。また、三つ以上の発電用ポッド21を備えるものであってもよい。
【0032】
また、上述した実施形態においては、発電用ポッド21に係留ロープ3が接続される場合について説明したが、係留ロープ3は、浮体20における発電用ポッド21以外の部分に接続されていてもよい。例えば、係留ロープ3は、左右の発電用ポッド21の間に設けられるビーム22に接続されていてもよい。この場合であっても、上述した実施形態に係る報知システム及び報知方法と同様の作用効果を得ることができる。
【0033】
また、上述した実施形態においては、水流発電装置2が海に設置される場合について説明したが、本発明に係る水流発電装置は、河川や湖などの水中に設置される場合もある。この場合であっても、水流による発電が可能であれば、上述した各実施形態に係る報知システム1及び報知方法と同様な作用効果を得ることができる。
【0034】
また、上述した実施形態においては、水中機器が水流発電装置2である場合について説明したが、水中機器は水流発電装置2以外の機器であってもよい。この場合であっても、上述した実施形態に係る報知システム1及び報知方法と同様な作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 報知システム
2 水流発電装置(水中機器)
3 係留ロープ
4 アンカ
5 ケーブル
6 陸上施設
20 浮体
21 発電用ポッド
22 ビーム
23 タービン
24 制御部
25 通信部
26 浮力調整部
27 受電部
28 発電機
61 制御部(浮上情報取得部)
62 通信部
63 受電部
64 報知部
91 船舶
FW 水流
R 浮上水域
S 報知信号