(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】内燃機関のシール構造
(51)【国際特許分類】
F01C 19/08 20060101AFI20221227BHJP
F02F 11/00 20060101ALI20221227BHJP
F02B 53/00 20060101ALI20221227BHJP
F02B 55/02 20060101ALI20221227BHJP
F16J 15/18 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
F01C19/08 A
F02F11/00 P
F02B53/00 C
F02B55/02 C
F16J15/18 C
(21)【出願番号】P 2019060333
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 卓央
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-026606(JP,A)
【文献】実公昭49-036968(JP,Y1)
【文献】米国特許第03359951(US,A)
【文献】米国特許第03139233(US,A)
【文献】特開昭55-164729(JP,A)
【文献】米国特許第06289867(US,B1)
【文献】特公昭50-037322(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2006/0087085(US,A1)
【文献】特開2002-161983(JP,A)
【文献】特開2004-301100(JP,A)
【文献】中国実用新案第202707231(CN,U)
【文献】特開2020-204290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01C 19/08
F02F 11/00
F02B 53/00
F02B 55/02
F16J 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に用いられるシール構造であって、
前記内燃機関は、ハウジングと、前記ハウジング内に回転可能に支持される第1ピストン部材と、前記ハウジング内に回転可能に支持される第2ピストン部材と、を含み、前記ハウジング、前記第1ピストン部材および前記第2ピストン部材によって燃料を燃焼させるための燃焼室が形成され、前記第2ピストン部材は、前記燃焼室の径方向内側に、前記第1ピストン部材に対向する環状の対向面を有し、
前記シール構造は、前記燃焼室の径方向内側に配置された環状のシール部材を備え、
前記シール部材は、拡径方向と縮径方向とのいずれか一方の方向に作用する自己張力を有し、
前記対向面には、前記第1ピストン部材に向かって開口する環状の溝が形成されており、
前記シール部材は、前記溝内に一部が収容されて自己張力により前記溝の壁面に接触するように構成されており、
前記シール部材は、六角形状の断面形状を有し、
前記シール部材の表
面は、前記第1ピストン部材および前記第2ピストン部材の回転の軸方向
に延びる外周面および内周面と、前記第1ピストン部材および前記第2ピストン部材の回転の径方向に延びる対向面およびシール面と、前記軸方向
および前記径方向に対して傾斜
し前記シール部材の表
面の内周側の面に形成され
前記内周面と前記対向面とをつなぐ内傾斜面と、
前記軸方向および前記径方向に対して傾斜し前記シール部材の表
面の外周側の面に形成され
前記外周面と前記対向面とをつなぐ外傾斜面とを有し、
前記内傾斜面と前記外傾斜面とのいずれか一方の面は、前記シール部材の自己張力の作用する方向に向かうにつれて前記第1ピストン部材に近づくように延び、前記内傾斜面と前記外傾斜面とのいずれか他方の面は、前記シール部材の自己張力の作用する方向とは反対方向に向かうにつれて前記第1ピストン部材に近づくように延び、
前記一方の面から前記軸方向の力を受けることで前記シール部材は前記第1ピストン部材に接触する、内燃機関のシール構造。
【請求項2】
前記溝の壁面
は、前記軸方向および前記径方向に対して傾斜し前記シール部材の前記内傾斜面と向き合う内側溝傾斜面と、前記軸方向および前記径方向に対して傾斜し前記シール部材の前記外傾斜面と向き合う外側溝傾斜面とを有する、請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】
前記シール部材の表面の傾斜の角度と、前記溝の壁面の傾斜の角度とが異なっている、請求項2に記載のシール構造。
【請求項4】
前記第1ピストン部材は、前記軸方向に直交する環状平面を有し、
前記シール部材
の前記シール面は、前記環状平面に接触する、請求項1~3のいずれか1項に記載のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータリエンジンにおいて、回転軸と共に回転可能に設置された第1ロータおよび第2ロータそれぞれの基部の間の気密性を保つ、リング状のシール材が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献には、リング状のシール材を第1ロータと第2ロータとの合わせ面に配置する構成が記載されている。回転軸を中心とする円環状の気筒室から径方向内側へのガス漏れを抑制するためには、シール材を第1ロータと第2ロータとの両方に確実に接触させる必要がある。しかしながら上記文献には、第1ロータと第2ロータとの両方にシール材を確実に接触させることへの言及はなく、必ずしも十分なシール性を確保できているとは言い難い。
【0005】
本開示では、シール性を向上できる、内燃機関のシール構造が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うと、内燃機関に用いられるシール構造が提供される。内燃機関は、ハウジングと、ハウジング内に回転可能に支持される第1ピストン部材と、ハウジング内に回転可能に支持される第2ピストン部材と、を含んでいる。ハウジング、第1ピストン部材および第2ピストン部材によって、燃料を燃焼させるための燃焼室が形成される。第2ピストン部材は、燃焼室の径方向内側に、第1ピストン部材に対向する環状の対向面を有している。シール構造は、燃焼室の径方向内側に配置された環状のシール部材を備えている。シール部材は、拡径方向と縮径方向とのいずれか一方の方向に作用する自己張力を有している。第2ピストン部材の対向面には、第1ピストン部材に向かって開口する環状の溝が形成されている。シール部材は、溝内に一部が収容されて自己張力により溝の壁面に接触するように構成されている。シール部材の自己張力により溝の壁面に接触するシール部材の表面と、シール部材の自己張力によりシール部材に接触する溝の壁面との少なくともいずれか一方は、第1ピストン部材および第2ピストン部材の回転の軸方向に対して傾斜する傾斜面を有している。傾斜面は、シール部材の自己張力の作用する方向に向かうにつれて第1ピストン部材に近づくように延びている。傾斜面から軸方向の力を受けることで、シール部材は、第1ピストン部材に接触する。
【0007】
係る構成によれば、シール部材を第1ピストン部材と第2ピストン部材との両方に確実に密着させることができ、第1ピストン部材と第2ピストン部材との合わせ面のシール性を向上することができる。
【0008】
上記のシール構造において、傾斜面は、シール部材の表面と溝の壁面との少なくともいずれか一方の内周側の面に形成されていてもよい。
【0009】
上記のシール構造において、傾斜面は、シール部材の表面と溝の壁面との少なくともいずれか一方の外周側の面に形成されていてもよい。
【0010】
上記のシール構造において、シール部材の表面と溝の壁面との両方が傾斜面であってもよい。シール部材の表面の傾斜の角度と、溝の壁面の傾斜の角度とが、異なっていてもよい。
【0011】
上記のシール構造において、第1ピストン部材は、軸方向に直交する環状平面を有し、シール部材は、環状平面に接触していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係る内燃機関のシール構造に従えば、シール性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の内燃機関の構成を示す斜視図である。
【
図2】エンジン内部に設けられるピストン部材の構成の一例を示す図である。
【
図3】燃焼室およびエンジンの動作を説明するための模式図である。
【
図4】第2ピストン部材およびシール構造の斜視図である。
【
図5】第一実施形態の合せ面シールとその周辺とを拡大して示す断面図である。
【
図6】第二実施形態の合せ面シールとその周辺とを拡大して示す断面図である。
【
図7】第三実施形態の合せ面シールとその周辺とを拡大して示す断面図である。
【
図8】第四実施形態の合せ面シールとその周辺とを拡大して示す断面図である。
【
図9】第五実施形態の合せ面シールとその周辺とを拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0015】
[第一実施形態]
<エンジン2の概略構成>
図1は、実施形態の内燃機関の構成を示す斜視図である。実施形態の内燃機関は、回転ピストン型のエンジン2である。エンジン2の燃料には、たとえば、ガスやガソリンや軽油等が用いられる。エンジン2は、ハウジング4と、吸気管6と、排気管8と、インジェクタ10と、スロットルモータ14と、第1出力軸16と、第2出力軸18とを含む。
【0016】
吸気管6の一方端は、ハウジング4の吸気ポート(図示せず)に接続される。吸気管6の他方端には、たとえば、エアクリーナ(図示せず)が接続される。エアクリーナは、エンジン2の外部から吸入される空気から異物を除去する。エンジン2の作動中において、吸気管6には、エアクリーナから吸入された空気が流通する。吸気管6を流通する空気は、ハウジング4の吸気ポートに流通する。
【0017】
吸気管6には、吸気管6を流通する空気の流量を制限するスロットルバルブが設けられている。スロットルモータ14は、スロットルバルブの開度を調整する。
【0018】
インジェクタ10は、吸気管6のスロットルバルブよりも上流側に設けられ、燃料(たとえば、ガス)を吸気管6内に噴射する。噴射された燃料は、吸気管6内で空気と混合されてハウジング4の吸気ポートに流通する。
【0019】
ハウジング4の外周部分は、
図1に示すように円筒形状によって形成されており、その内周部分も円筒形状に形成されている。ハウジング4は、その内部に、第1出力軸16に接続される第1ピストン部材と、第2出力軸18に接続される第2ピストン部材とを収納する。
【0020】
排気管8の一方端は、ハウジング4の排気ポート(図示せず)に接続される。排気管8の他方端には、たとえば、排気処理装置(図示せず)が接続される。エンジン2の作動中において、ハウジング4内での燃焼により生じた排気は、ハウジング4の排気ポートから排気管8に流通する。排気管に流通する排気は、排気処理装置によって浄化されて、エンジン2の外部に排出される。
【0021】
第1出力軸16および第2出力軸18は、いずれもハウジング4内での燃料の燃焼によって回転する。第1出力軸16および第2出力軸18は、たとえば、モータジェネレータ(図示せず)の回転軸に接続される。このモータジェネレータは、たとえば、三相交流回転電機である。
【0022】
<エンジン2の内部構造>
図2は、エンジン2内部に設けられるピストン部材の構成の一例を示す図である。
図2を参照して、エンジン2の内部構造の一例について説明する。
【0023】
図2に示すように、ハウジング4内には、第1ピストン部材24と、第2ピストン部材28とが組み合わされて収納される。第1ピストン部材24は、第1回転体24aと、第1壁面部材24bとを含む。第2ピストン部材28は、第2回転体28aと、第2壁面部材28bとを含む。
【0024】
第1ピストン部材24と、第2ピストン部材28とは、ハウジング4によって回転可能に支持されている。第1回転体24aと第2回転体28aとは、
図2中に一点鎖線で図示される回転中心AXが一致している。第1回転体24aと第2回転体28aとは、回転中心AXを中心に回転可能である。第1回転体24aと第2回転体28aとは、第1回転体24aの一方の端面と第2回転体28aの一方の端面とが軸方向に対向するように設けられる。
【0025】
なお本明細書中の説明では、回転中心AXと平行な方向を軸方向と称し、回転中心AXを中心とする円周に沿う方向を周方向と称し、回転中心AXと直交する方向を径方向と称する。径方向において、回転中心AXに近い側を内側と称し、回転中心AXから離れる側を外側と称する。
【0026】
第1回転体24aは、その回転中心AXを含む断面に斜面部分24cを有するように形成される。第2回転体28aは、その回転中心AXを含む断面に斜面部分28cを有するように形成される。これにより、第1回転体24aと第2回転体28aとが組み合わされた状態において、第1回転体24aと第2回転体28aとの間には、V字形状の断面を有する凹部が周方向に形成される。
【0027】
第1壁面部材24bは、第1回転体24aの斜面部分24cから、径方向外側に向けて延在し、第2回転体28aの斜面部分28cに向けて軸方向に延在するように、設けられている。第1壁面部材24bは、2つの三角形の板状部材によって構成される。第1壁面部材24bの2つの三角形の板状部材は、回転中心AXについて互いに対称となる位置に配置されている。
【0028】
第2壁面部材28bは、第2回転体28aの斜面部分28cから、径方向外側に向けて延在し、第1回転体24aの斜面部分24cに向けて軸方向に延在するように、設けられている。第2壁面部材28bは、上述の第1壁面部材24bを構成する板状部材と同形状となる、2つの三角形の板状部材によって構成される。第2壁面部材28bの2つの三角形の板状部材は、回転中心AXについて互いに対称となる位置に配置されている。
図2には、第2壁面部材28bの2つの板状部材のうちの一方のみが図示されている。
【0029】
第1壁面部材24bおよび第2壁面部材28bの三角形の板状部材は、いずれも、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28がハウジング4に収納されている状態において第1回転体24aと第2回転体28aとの間のV字形状の凹部とハウジング4の内周面とによって形成される三角形の断面形状に合致するように、形成される。
【0030】
第1壁面部材24bは、三角形の一辺において、第1回転体24aの斜面部分24cに固定されている。第1壁面部材24bの三角形の一辺は、ハウジング4の内周面に対向している。第1壁面部材24bの三角形の一辺は、第2回転体28aの斜面部分28cに対向している。
【0031】
第2壁面部材28bは、三角形の一辺において、第2回転体28aの斜面部分28cに固定されている。第2壁面部材28bの三角形の一辺は、ハウジング4の内周面に対向している。第2壁面部材28bの三角形の一辺は、第1回転体24aの斜面部分24cに対向している。
【0032】
第1回転体24aには、回転中心が一致するように第1出力軸16が接続される。第1回転体24aとハウジング4との間には、ワンウェイクラッチ22が設けられる。ワンウェイクラッチ22は、第1回転体24aのハウジング4内における予め定められた回転方向へのみ回転を許容し、予め定められた回転方向とは逆方向への回転を抑制する。
【0033】
第2回転体28aには、回転中心が一致するように第2出力軸18が接続される。第2回転体28aとハウジング4との間には、ワンウェイクラッチ26が設けられる。ワンウェイクラッチ26は、第2回転体28aのハウジング4内における予め定められた回転方向へのみ回転を許容し、予め定められた回転方向とは逆方向への回転を抑制する。
【0034】
第1壁面部材24bおよび第2壁面部材28bは、三角形の板状形状に限られず、たとえば円板形状など、任意の形状を有してもよい。
【0035】
<燃焼室>
図3は、燃焼室A~Dおよびエンジン2の動作を説明するための模式図である。
図3には、ハウジング4の中央部分(たとえば、第1回転体24aと第2回転体28aとの当接部分)における、回転中心AXに直交する断面が模式的に示される。
図3に示すように、ハウジング4内には、ハウジング4、第1ピストン部材24および第2ピストン部材28によって、燃料を燃焼させるための4つの燃焼室A~Dが形成される。
【0036】
燃焼室A~Dは、各々、ハウジング4の内周面と、第1ピストン部材24の第1壁面部材24bおよび斜面部分24cと、第2ピストン部材28の第2壁面部材28bおよび斜面部分28cとによって、規定されている。第1壁面部材24bおよび第2壁面部材28bは、燃焼室A~Dの周方向の壁面を構成している。周方向に隣り合う2つの燃焼室は、第1壁面部材24bおよび第2壁面部材28bによって仕切られている。
【0037】
図2に示されるワンウェイクラッチ22,26は、
図3においては、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との反時計回りの回転を抑制し、時計回りの回転を許容する。
【0038】
図3に示される燃焼室Aでは、圧縮された空気と燃料との混合気が自着火によって着火する膨張行程となる。すなわち、燃焼室Aで燃料が燃焼すると、第1ピストン部材24の反時計回りの移動がワンウェイクラッチ22によって抑制されるため、第1ピストン部材24の回転位置が維持されつつ、第2ピストン部材28のみが破線矢印の方向に回転し、燃焼室A内の気体の膨張とともに燃焼室Aの容積が増加する。
【0039】
図3に示される燃焼室Bでは、膨張した排気が排気管8から排出される排気行程となる。すなわち、燃焼室Aでの燃料の燃焼によって、第2ピストン部材28が破線矢印の方向に回転すると、第1ピストン部材24の回転位置が維持されるため、燃焼室Bの容積が減少する。このとき、燃焼室Bは、排気管8と連通している。そのため、燃焼室B内の排気は、燃焼室Bの容積の減少とともに、排気管8に排出されていく。
【0040】
図3に示される燃焼室Cでは、吸気管6から空気と燃料との混合気が吸入される吸気行程となる。すなわち、燃焼室Aでの燃料の燃焼によって、第2ピストン部材28が破線矢印の方向に回転すると、第1ピストン部材24の回転位置が維持されるため、燃焼室Cの容積が増加する。このとき、燃焼室Cは、第2ピストン部材28が破線矢印の方向に回転する途中で、吸気管6と連通する。そのため、燃焼室Cの容積の増加とともに、吸気管6から混合気が燃焼室C内に吸入される。
【0041】
図3に示される燃焼室Dでは、吸気管6から吸入された混合気が圧縮される圧縮行程となる。すなわち、燃焼室Aでの燃料の燃焼によって、第2ピストン部材28が破線矢印の方向に回転すると、第1ピストン部材24の回転位置が維持されるため、燃焼室Dの容積が減少する。このとき、燃焼室Dは、吸気管6および排気管8のいずれにも連通していないため、燃焼室Dの容積の減少によって燃焼室D内の混合気が圧縮される。
【0042】
そして、燃焼室D内の圧力が上昇することによって第1ピストン部材24に時計回りの力が作用すると、第1ピストン部材24が回転し、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との位置関係が入れ替わることとなる。
【0043】
このようにして、燃焼室A~Dのうちのいずれかで燃焼する毎に、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28とが交互に回転することによって、エンジン2が動作する。
【0044】
<シール構造の概略構成>
以下、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との対向面間をシールするシール構造について説明する。第1ピストン部材24は、燃焼室A~Dの径方向内側に、第2ピストン部材28に対向する環状の対向面を有している。第2ピストン部材28は、燃焼室A~Dの径方向内側に、第1ピストン部材24に対向する環状の対向面を有している。
【0045】
図4は、第2ピストン部材28およびシール構造の斜視図である。第2ピストン部材28と、
図4には図示しない第1ピストン部材24とは、軸方向に並んで配置されている。第1ピストン部材24と第2ピストン部材28とは、軸受100を介して連結されており、互いに相対回転可能に構成されている。第2ピストン部材28には、潤滑油路281が形成されている。第1ピストン部材24には、潤滑油路281と連通する潤滑油路が形成されている。
【0046】
図4に示されるように、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との間の気密性を保つシール構造は、合せ面シール40と、ピストンシール50,150と、コーナーシール60,160とを含んでいる。
【0047】
合せ面シール40は、周方向の1箇所に合口部を有する環状の形状を有している。合せ面シール40は、第1ピストン部材24および第2ピストン部材28と同心に配置されている。合せ面シール40は、斜面部分28cよりも径方向の内側に配置されている。合せ面シール40は、第2壁面部材28bよりも径方向の内側に配置されている。したがって合せ面シール40は、燃焼室A~Dよりも径方向の内側に配置されており、燃焼室A~Dの内周部をシールしている。合せ面シール40は、燃焼室A~Dから内周側へのガスの漏れを抑制するガスシールである。
【0048】
合せ面シール40は、第2ピストン部材28に保持されている。第2ピストン部材28の、第1ピストン部材24に対向する対向面には、環状溝28Gが形成されている。環状溝28Gは、第1ピストン部材24に向かって開口している。環状溝28G内に、合せ面シール40の一部が収容されている。第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との相対回転に伴い、合せ面シール40は第1ピストン部材24に対して摺動する。
【0049】
ピストンシール50は、第2ピストン部材28の第2壁面部材28bに保持されている。第2壁面部材28bには収容溝285,288が形成されており、収容溝285,288内にピストンシール50が収容されている。収容溝285は、第2壁面部材28bの、第1ピストン部材24の斜面部分24cに対向する縁に形成されている。収容溝288は、第2壁面部材28bの、ハウジング4の内周面に対向する外周縁に形成されている。
【0050】
ピストンシール50は、第1ピストン部材24の斜面部分24cに接触するシール面51を有している。第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との相対回転に伴い、シール面51は第1ピストン部材24に対して摺動する。ピストンシール50は、ハウジング4の内周面に接触するシール面81を有している。ハウジング4内で第2ピストン部材28が回転することに伴い、シール面81はハウジング4に対して摺動する。
【0051】
ピストンシール50は、第2ピストン部材28の第2壁面部材28bと第1ピストン部材24の斜面部分24cとの間をシールしており、かつ、第2ピストン部材28の第2壁面部材28bとハウジング4との間をシールしている。ピストンシール50は、周方向に隣り合う2つの燃焼室間をシールしており、燃焼室A~Dのうちの1の燃焼室から当該1の燃焼室の隣の燃焼室へのガスの漏れを抑制している。
【0052】
ピストンシール150は、ピストンシール50と同様の構造を有している。ピストンシール150は、
図4には図示しない第1ピストン部材24の第1壁面部材24bに保持されている。ピストンシール150は、第2ピストン部材28の斜面部分28cに接触するシール面と、ハウジングに接触するシール面とを有している。ピストンシール150は、第1ピストン部材24の第1壁面部材24bと第2ピストン部材28の斜面部分28cとの間、および第1壁面部材24bとハウジング4との間をシールしている。ピストンシール150は、周方向に隣り合う2つの燃焼室間をシールしており、燃焼室A~Dのうちの1の燃焼室から当該1の燃焼室の隣の燃焼室へのガスの漏れを抑制している。
【0053】
コーナーシール60は、合せ面シール40とピストンシール50との交差部に配置されている。コーナーシール60は、第2ピストン部材28に保持されている。第2ピストン部材28には収容凹部286が形成されており、収容凹部286内にコーナーシール60が収容されている。収容凹部286は、第2壁面部材28bの径方向内側の端部に形成されている。したがってコーナーシール60は、第2壁面部材28bの径方向内側の端部において、第2ピストン部材28に保持されている。
【0054】
コーナーシール60は、第1ピストン部材24に接触する。第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との相対回転に伴い、コーナーシール60は第1ピストン部材24に対して摺動する。収容凹部286の底面にはばね部材73が設けられており、ばね部材73はコーナーシール60を収容凹部286の外部へ向けて付勢している。これにより、コーナーシール60の第1ピストン部材24への密着性が確保されている。
【0055】
コーナーシール160は、合せ面シール40とピストンシール150との交差部に配置されている。コーナーシール160は、第1ピストン部材24に保持されている。第1ピストン部材24の第1壁面部材24bの径方向内側の端部には、収容凹部が形成されており、この収容凹部内にコーナーシール160が収容されている。したがってコーナーシール160は、第1壁面部材24bの径方向内側の端部において、第1ピストン部材24に保持されている。
【0056】
コーナーシール160は、第2ピストン部材28に接触する。第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との相対回転に伴い、コーナーシール160は第2ピストン部材28に対して摺動する。コーナーシール160にはばね部材173が設けられており、ばね部材173はコーナーシール60を第2ピストン部材28へ向けて付勢している。これにより、コーナーシール160の第2ピストン部材28への密着性が確保されている。
【0057】
軸方向においてピストンシール50に隣り合って、コーナーシール90が設けられている。ばね部材93は、コーナーシール90を径方向外側へ付勢しており、コーナーシール90をハウジング4の内周面へ密着させている。
【0058】
<合せ面シール40の詳細>
図5は、第一実施形態の合せ面シール40とその周辺とを拡大して示す断面図である。
図5および後続の断面図には、合せ面シール40ならびにその周辺の第1ピストン部材24および第2ピストン部材28の、周方向に直交する断面(径方向および軸方向を含む断面)が図示されている。図中の上下方向が、径方向である。図中の上側が径方向の外側であり、図中の下側が径方向の内側である。図中の左右方向が、軸方向である。
【0059】
合せ面シール40は、不等辺六角形状の断面形状を有している。合せ面シール40は、外周面40S1と、内周面40S2と、対向面40S3と、シール面40S4と、外傾斜面40S5と、内傾斜面40S6とを有している。外周面40S1、内周面40S2、対向面40S3、シール面40S4、外傾斜面40S5および内傾斜面40S6は、合せ面シール40の外表面を構成している。
【0060】
図4に示す断面視において、外周面40S1と内周面40S2とは、軸方向に延びている。対向面40S3とシール面40S4とは、径方向に延びている。外周面40S1と内周面40S2とは、互いに平行に延びている。対向面40S3とシール面40S4とは、互いに平行に延びている。
【0061】
外傾斜面40S5と内傾斜面40S6とは、軸方向および径方向に対して傾斜して延びている。合せ面シール40の断面は、矩形がその一方の長辺の両端において面取りされた形状を有している。合せ面シール40の表面に、径方向に並ぶ2つの傾斜面が形成されており、外傾斜面40S5は外周側の傾斜面であり、内傾斜面40S6は内周側の傾斜面である。外傾斜面40S5および内傾斜面40S6の傾斜の角度は、たとえば、30°以上60°以下、好ましくは40°以上50°以下、好ましくは略45°としてもよい。
【0062】
外傾斜面40S5は、外周面40S1と対向面40S3とをつなぐ面であり、外周面40S1から対向面40S3に近づくにつれて径方向内側へ延びるように、軸方向および径方向に対して傾斜している。外傾斜面40S5は、径方向外側に向かうにつれて第1ピストン部材24に近づくように延びている。
【0063】
内傾斜面40S6は、内周面40S2と対向面40S3とをつなぐ面であり、内周面40S2から対向面40S3に近づくにつれて径方向外側へ延びるように、軸方向および径方向に対して傾斜している。内傾斜面40S6は、径方向内側に向かうにつれて第1ピストン部材24に近づくように延びている。
【0064】
第2ピストン部材28には、環状溝28Gが形成されており、合せ面シール40は、環状溝28G内に一部が収容されている。
図5に示されるように、合せ面シール40のうち、対向面40S3、外傾斜面40S5および内傾斜面40S6を含む部分は、環状溝28G内に配置されている。合せ面シール40のうち、シール面40S4を含む部分は、環状溝28Gの外部に配置されている。
【0065】
環状溝28Gは、環状溝28Gの壁面のうち径方向の外側の壁面をなす外周壁面28S1と、環状溝28Gの壁面のうち径方向の内側の壁面をなす内周壁面28S5と、底面28S3とを有している。
図4に示す断面視において、外周壁面28S1と内周壁面28S5とは、軸方向に延びている。外周壁面28S1と内周壁面28S5とは、互いに平行に延びている。底面28S3は、径方向に延びている。
【0066】
外周壁面28S1は、合せ面シール40の外周面40S1と向き合っており、外周壁面28S1と外周面40S1との間には隙間が形成されている。環状溝28Gの外周壁面28S1と、合せ面シール40の外周面40S1とは、互いに非接触である。外周壁面28S1と外周面40S1とは、平行に配置されている。
【0067】
内周壁面28S5は、合せ面シール40の内周壁面28S5と向き合っており、内周壁面28S5と内周面40S2との間には隙間が形成されている。環状溝28Gの内周壁面28S5と、合せ面シール40の内周面40S2とは、互いに非接触である。内周壁面28S5と内周面40S2とは、平行に配置されている。
【0068】
底面28S3は、合せ面シール40の対向面40S3と向き合っており、底面28S3と対向面40S3との間には隙間が形成されている。環状溝28Gの底面28S3と、合せ面シール40の対向面40S3とは、互いに非接触である。底面28S3と対向面40S3とは、平行に配置されている。
【0069】
環状溝28Gはさらに、外傾斜面28S2と、内傾斜面28S4とを有している。外傾斜面28S2と内傾斜面28S4とは、軸方向および径方向に対して傾斜して延びている。環状溝28Gの壁面に、径方向に並ぶ2つの傾斜面が形成されており、外傾斜面28S2は外周側の傾斜面であり、内傾斜面28S4は内周側の傾斜面である。外傾斜面28S2および内傾斜面28S4の傾斜の角度は、たとえば、30°以上60°以下、好ましくは40°以上50°以下、好ましくは略45°としてもよい。
【0070】
外傾斜面28S2は、外周壁面28S1と底面28S3とをつなぐ面であり、外周壁面28S1から底面28S3に近づくにつれて径方向内側へ延びるように、軸方向および径方向に対して傾斜している。外傾斜面28S2は、径方向外側に向かうにつれて第1ピストン部材24に近づくように延びている。
【0071】
内傾斜面28S4は、内周壁面28S5と底面28S3とをつなぐ面であり、内周壁面28S5から底面28S3に近づくにつれて径方向外側へ延びるように、軸方向および径方向に対して傾斜している。内傾斜面28S4は、径方向内側に向かうにつれて第1ピストン部材24に近づくように延びている。
【0072】
外傾斜面28S2は、合せ面シール40の外傾斜面40S5と向き合っている。環状溝28Gの外傾斜面28S2と、合せ面シール40の外傾斜面40S5とは、互いに面接触している。外傾斜面28S2と外傾斜面40S5との間に、隙間は形成されていない。外傾斜面28S2と外傾斜面40S5とは、同一面上に配置されている。
【0073】
内傾斜面28S4は、合せ面シール40の内傾斜面40S6と向き合っており、内傾斜面28S4と内傾斜面40S6との間には隙間が形成されている。環状溝28Gの内傾斜面28S4と、合せ面シール40の内傾斜面40S6とは、互いに非接触である。内傾斜面28S4と内傾斜面40S6とは、平行に配置されている。
【0074】
合せ面シール40のシール面40S4は、第1ピストン部材24と向き合っている。シール面40S4は、第1ピストン部材24に面接触している。シール面40S4と第1ピストン部材24との間に、隙間は形成されていない。シール面40S4は、第1ピストン部材24の表面と同一平面上に配置されている。シール面40S4が接触する第1ピストン部材24の表面は、軸方向に直交する環状の平面形状を有している。
【0075】
実施形態の合せ面シール40は、拡径方向に作用する自己張力を有している。上述したように合せ面シール40は周方向の1箇所に合口部を有する略C字形状に形成されており、環状溝28G内に合せ面シール40を収容する際に、合口部を閉じて合せ面シール40の径を縮小させた状態にする。これにより、合せ面シール40には、径方向外側への付勢力が作用する。この付勢力が、拡径方向の自己張力として合せ面シール40に付与される。
【0076】
合せ面シール40は、拡径方向の自己張力の作用によって、環状溝28G内で径方向外側へと動き、合せ面シール40の外傾斜面40S5が環状溝28Gの外傾斜面28S2に接触する。これにより、外傾斜面40S5の第2ピストン部材28への密着性が確保されている。
【0077】
合せ面シール40がさらに拡径しようとする付勢力が、合せ面シール40の外傾斜面40S5から環状溝28Gの外傾斜面28S2に作用する。外傾斜面40S5から、合せ面シール40に対して、環状溝28Gの外部へ向かう向きの軸方向の力が働く。この軸方向の力を受けることで、合せ面シール40は第1ピストン部材24に近づく向きへと動き、合せ面シール40のシール面40S4が第1ピストン部材24の環状平面に接触する。これにより、シール面40S4の第1ピストン部材24への密着性が確保されている。
【0078】
したがって、合せ面シール40を第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との両方に確実に密着させる構成を実現でき、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との合わせ面のシール性を向上することができる。燃焼室A~Dから内周側へのガスの漏れ量を低減できることにより、エンジン2の燃焼効率を向上することができる。
【0079】
合せ面シール40が径方向外側へ移動して外傾斜面40S5が環状溝28Gの外傾斜面28S2に接触し、かつシール面40S4が第1ピストン部材24に接触した状態で、合せ面シール40の外周面40S1と環状溝28Gの外周壁面28S1との間に隙間が確保されている。外傾斜面28S2に沿った合せ面シール40の移動が外周壁面28S1によって妨げられない構成とされている。したがって、合せ面シール40が第1ピストン部材24に接触するまで、確実に合せ面シール40を軸方向に移動させることができる。
【0080】
相対回転移動する第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との両方に合せ面シール40を接触させるために、バネなどの他の部材を追加する必要がない。合せ面シール40単体で、第1ピストン部材24との接触面と、第2ピストン部材28との接触面との2箇所のシールを実現できるので、部品点数を削減でき、構成を簡略化することができる。加えて、バネを配置するために確保される中空空間がガスの漏洩する経路となることを回避できる。合せ面シール40と環状溝28Gとの間に、寸法ばらつきを吸収するための最小限の隙間のみが形成されることになるので、ガスの漏洩する経路となり得る中空空間の容積が低減され、したがってガスの漏れ量を低減することができる。
【0081】
合せ面シール40が内周側の表面に内傾斜面40S6を有し、環状溝28Gが内周側の壁面に内傾斜面28S4を有している。これにより、燃焼室A~D内のガスの圧力によって合せ面シール40が径方向内側へ移動した場合でも、内傾斜面40S6から内傾斜面28S4に作用する力が合せ面シール40を第1ピストン部材24に近づく向きへと移動させる。したがって、合せ面シール40を第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との両方に確実に密着させることができる。
【0082】
合せ面シール40が外周側の表面に外傾斜面40S5を有し、環状溝28Gが外周側の壁面に外傾斜面28S2を有している。これにより、第1ピストン部材24および第2ピストン部材28の回転によって発生する遠心力で合せ面シール40が径方向外側へ移動した場合に、外傾斜面40S5から外傾斜面28S2に作用する力が合せ面シール40を第1ピストン部材24に近づく向きへと移動させる。したがって、合せ面シール40を第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との両方に確実に密着させることができる。
【0083】
合せ面シール40の表面と環状溝28Gの壁面との両方を傾斜面とすることで、合せ面シール40の周辺に形成される隙間の寸法を低減でき、シール性をさらに向上することができる。
【0084】
合せ面シール40の表面の内周側と外周側との両方に傾斜面を形成し、環状溝28Gの壁面の内周側と外周側との両方に傾斜面を形成する構成とすれば、合せ面シール40の自己張力、ならびに合せ面シール40に作用するガスの圧力および遠心力が、合せ面シール40を径方向の内側と外側とのいずれの方向に移動させるように作用しても、シール性を確実に確保することができる。
【0085】
合せ面シール40が接触する第1ピストン部材24の表面が環状平面であることにより、合せ面シール40の周辺に形成される隙間の寸法を低減でき、シール性をさらに向上することができる。
【0086】
[第二実施形態]
図5に示す第一実施形態では、合せ面シール40の傾斜面が軸方向および径方向に対して傾斜する角度と、環状溝28Gの傾斜面が軸方向および径方向に対して傾斜する角度とが等しい例について説明した。この例に限られず、合せ面シール40の傾斜面の傾斜の角度と、環状溝28Gの傾斜面の傾斜の角度とが、互いに異なっていてもよい。
【0087】
図6は、第二実施形態の合せ面シール40とその周辺とを拡大して示す断面図である。第二実施形態では、合せ面シール40の外傾斜面40S5および内傾斜面40S6は、環状溝28Gの外傾斜面28S2および内傾斜面28S4と、異なる角度で傾斜している。合せ面シール40は、外傾斜面40S5が環状溝28Gの外傾斜面28S2に面接触するのではなく、外周面40S1と外傾斜面40S5との境界をなす第一辺40E1が環状溝28Gの外傾斜面28S2に接触するように、構成されている。
【0088】
このようにすれば、第一辺40E1において合せ面シール40と第2ピストン部材28との接触を確保でき、また第一実施形態と同様に合せ面シール40のシール面40S4と第1ピストン部材24との接触を確保できる。したがって、合せ面シール40を第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との両方に密着させる構成を実現することができる。合せ面シール40の表面のうち第2ピストン部材28に接触する位置を第一辺40E1と規定できるので、合せ面シール40を第2ピストン部材28に確実に接触させる品質管理を容易に行なうことができる。
【0089】
[第三実施形態]
図7は、第三実施形態の合せ面シール40とその周辺とを拡大して示す断面図である。第三実施形態においても、合せ面シール40の外傾斜面40S5および内傾斜面40S6は、環状溝28Gの外傾斜面28S2および内傾斜面28S4と、異なる角度で傾斜している。合せ面シール40は、外傾斜面40S5と対向面40S3との境界をなす第二辺40E2が環状溝28Gの外傾斜面28S2に接触するように、構成されている。
【0090】
このようにすれば、第二辺40E2において合せ面シール40と第2ピストン部材28との接触を確保でき、また第一実施形態と同様に合せ面シール40のシール面40S4と第1ピストン部材24との接触を確保できる。したがって、合せ面シール40を第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との両方に密着させる構成を実現することができる。合せ面シール40の表面のうち第2ピストン部材28に接触する位置を第二辺40E2と規定できるので、合せ面シール40を第2ピストン部材28に確実に接触させる品質管理を容易に行なうことができる。
【0091】
[第四実施形態]
これまでの実施形態の説明では、合せ面シール40の表面と環状溝28Gの壁面との両方が傾斜面を有する例について説明した。この例に限られず、合せ面シール40の表面と環状溝28Gの壁面とのいずれか一方のみが傾斜面を有していてもよい。
【0092】
図8は、第四実施形態の合せ面シール40とその周辺とを拡大して示す断面図である。
図8に示される合せ面シール40は、矩形状の断面形状を有している。合せ面シール40は、外周面40S1、内周面40S2、対向面40S3およびシール面40S4を有しているが、傾斜面を有しない。環状溝28Gの壁面は、第一実施形態と同じ形状を有している。合せ面シール40は、外周面40S1と対向面40S3との境界をなす第一辺40E1が環状溝28Gの外傾斜面28S2に接触するように、構成されている。
【0093】
このような構成としても、第一辺40E1において合せ面シール40と第2ピストン部材28との接触を確保でき、また第一実施形態と同様に合せ面シール40のシール面40S4と第1ピストン部材24との接触を確保できる。したがって、合せ面シール40を第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との両方に密着させる構成を実現することができる。
【0094】
第2ピストン部材28の環状溝28Gに傾斜面を設け、合せ面シール40を断面矩形状に形成することで、合せ面シール40の形状を単純化することができる。したがって第四実施形態の合せ面シール40は、製造が容易である。
【0095】
[第五実施形態]
図9は、第五実施形態の合せ面シール40とその周辺とを拡大して示す断面図である。
図9に示される合せ面シール40は、第一実施形態と同じ形状を有している。一方、環状溝28Gの壁面は、外傾斜面28S2に替えて、径方向に延びるスラスト面28S21と、軸方向に延びるラジアル面28S22とを有している。内傾斜面28S4に替えて、径方向に延びるスラスト面28S41と、軸方向にのびるラジアル面28S42とを有している。
【0096】
合せ面シール40の外傾斜面40S5は、スラスト面28S21とラジアル面28S22との境界をなす第一辺28E1に接触している。合せ面シール40の内傾斜面40S6は、スラスト面28S41とラジアル面28S42との境界をなす第二辺28E2と、隙間を空けて向き合っている。
【0097】
このような構成としても、外傾斜面40S5と第一辺28E1との接触によって合せ面シール40と第2ピストン部材28との接触を確保でき、また第一実施形態と同様に合せ面シール40のシール面40S4と第1ピストン部材24との接触を確保できる。したがって、合せ面シール40を第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との両方に密着させる構成を実現することができる。
【0098】
なお、これまでの説明においては、合せ面シール40が拡径方向に作用する自己張力を有している例について説明した。この例に限られず、合せ面シール40は、縮径方向に作用する自己張力を有していてもよい。合口部を有する合せ面シール40を環状溝28G内に収容する際に、合口部を広げて合せ面シール40の径を拡大させた状態にする。これにより、合せ面シール40には、径方向内側への付勢力が作用する。この付勢力が、縮径方向の自己張力として合せ面シール40に付与される。
【0099】
合せ面シール40は、縮径方向の自己張力の作用によって、環状溝28G内で径方向内側へと動く。この場合においては、自己張力の作用する方向である合せ面シール40の内周側の表面と、環状溝28Gの内周側の壁面とのいずれか一方または両方が、傾斜面を有する構成とする。たとえば、
図5に示される、合せ面シール40が内傾斜面40S6を有するとともに環状溝28Gが内傾斜面28S4を有する構成とし、合せ面シール40の内傾斜面40S6が環状溝28Gの内傾斜面28S4に接触するようにする。このようにすれば、上述した実施形態と同様に、合せ面シール40を第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との両方に密着させる構成を実現することができる。
【0100】
以上のように実施形態について説明を行なったが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0101】
2 エンジン、4 ハウジング、24 第1ピストン部材、24a 第1回転体、24b 第1壁面部材、24c,28c 斜面部分、28 第2ピストン部材、28E1,40E1 第一辺、28E2,40E2 第二辺、28G 環状溝、28S1 外周壁面、28S2,40S5 外傾斜面、28S21,28S41 スラスト面、28S22,28S42 ラジアル面、28S3 底面、28S4,40S6 内傾斜面、28S5 内周壁面、28a 第2回転体、28b 第2壁面部材、40 合せ面シール、40S1 外周面、40S2 内周面、40S3 対向面、40S4 シール面、A,B,C,D 燃焼室。