(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20221227BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20221227BHJP
B29D 30/06 20060101ALI20221227BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20221227BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29D30/06
B29L30:00
(21)【出願番号】P 2019071384
(22)【出願日】2019-04-03
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂谷 明宏
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-43048(JP,A)
【文献】特開2006-341471(JP,A)
【文献】特開2007-98756(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0063224(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 35/00-35/18
B29D 30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カーカスプライを含む複数のゴム部材を第一ドラムに巻回して形成された第一成形体の厚さを測定する工程、
(B)トレッドを含む他の複数のゴム部材を第二ドラムに巻回して形成された第二成形体の厚さを測定する工程、
(C)前記第一成形体と前記第二成形体とを組み合わせてローカバーを形成する工程
及び
(D)前記第一成形体の厚さと前記第二成形体の厚さとに基づいて決定した加硫時間で前記ローカバーを加硫する工程
を含む、タイヤの製造方法。
【請求項2】
前記工程(A)において、前記ローカバーにおいて最も昇温に時間を要する位置に対応する、前記第一成形体の位置の厚さを測定し、
前記工程(B)において、前記ローカバーにおいて最も昇温に時間を要する位置に対応する、前記第二成形体の位置の厚さを測定する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程(A)において、前記第一成形体の厚さを所定の周方向間隔で測定し、
前記工程(B)において、前記第二成形体の厚さを所定の周方向間隔で測定し、
前記工程(C)において、前記第一成形体の厚さと前記第二成形体の厚さとを合わせた厚さの周方向における最大値と最小値との差が、最小となる相対位置で、前記第一成形体と前記第二成形体とが組み合わされる、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程(A)及び前記工程(B)において、前記周方向間隔が中心角度で設定されている、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程(B)において、前記第二ドラムの外周面での前記周方向間隔を3mm以下にして、前記第二成形体の厚さを測定する、請求項3又は4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程(D)において、予め設定された、前記ローカバーのモデルの厚さと前記加硫時間との相関関係に基づいて、前記ローカバーの厚さから前記加硫時間を決定する、請求項1から5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記工程(A)において、前記複数のゴム部材のそれぞれが第一ドラムに巻回される毎に、それぞれの巻回後における厚さを測定する、請求項1から6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記工程(B)において、前記他の複数のゴム部材のそれぞれが前記第二ドラムに巻回される毎に、それぞれの巻回後における厚さを測定する、請求項1から7のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2014-19062公報)では、ローカバーが加硫され、ローカバーからタイヤが得られることが記載されている。この加硫において、ローカバーのトレッド部やビード部等の肉厚部は昇温に時間を要することが記載されている。このため、この様な肉厚部の内部にも十分に熱が伝わる様に、ローカバーの加硫時間が設定されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このローカバー間には、加硫が完了するまでの時間にバラツキがある。このバラツキを加味した安全率を加えて、ローカバーの加硫時間が設定される。この加硫が完了するまでの時間のバラツキの要因は種々あるが、肉厚のバラツキはその大きな要因となっている。従って、ローカバーの肉厚を測定することで、ローカバーの加硫時間を更に高精度に設定できる。この加硫時間を高精度に設定することで、安全率による余分な時間を短縮できる。また、加硫時間を長くし過ぎて、過加硫を生じることも抑制できる。この様に、加硫されるローカバーの肉厚を測定することで、タイヤの生産性及び品質の向上に寄与しうる。
【0005】
しかしながら、ローカバーはトロイド状の形状を備えており、ローカバーの肉厚は部位によって大きく異なっている。この肉厚を測定することは容易でない。更に、ローカバーは未加硫のゴムから形成されており、変形し易い。このローカバーの肉厚を正確に測定することは、容易でない。
【0006】
本発明の目的は、タイヤの生産性及び品質の向上に寄与するタイヤの製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、
(A)カーカスプライを含む複数のゴム部材を第一ドラムに巻回して形成された第一成形体の厚さを測定する工程、
(B)トレッドを含む他の複数のゴム部材を第二ドラムに巻回して形成された第二成形体の厚さを測定する工程、
(C)前記第一成形体と前記第二成形体とを組み合わせてローカバーを形成する工程
及び
(D)前記第一成形体の厚さと前記第二成形体の厚さとに基づいて決定した加硫時間で前記ローカバーを加硫する工程
を含む、タイヤの製造方法。
【0008】
好ましくは、前記工程(A)において、前記ローカバーにおいて最も昇温に時間を要する位置に対応する、前記第一成形体の位置の厚さを測定する。前記工程(B)において、前記ローカバーにおいて最も昇温に時間を要する位置に対応する、前記第二成形体の位置の厚さを測定する。
【0009】
好ましくは、前記工程(A)において、前記第一成形体の厚さを所定の周方向間隔で測定する。前記工程(B)において、前記第二成形体の厚さを所定の周方向間隔で測定する。前記工程(C)において、前記第一成形体の厚さと前記第二成形体の厚さとを合わせた厚さの周方向における最大値と最小値との差が最小となる相対位置で、前記第一成形体と前記第二成形体とが組み合わされる。
【0010】
好ましくは、前記工程(A)及び前記工程(B)において、前記周方向間隔が中心角度で設定される。
【0011】
好ましくは、前記工程(B)において、前記第二ドラムの外周面での前記周方間隔を3mm以下にして、前記第二成形体の厚さを測定する。
【0012】
好ましくは、前記工程(D)において、予め設定された、前記ローカバーのモデルの厚さと前記加硫時間との相関関係に基づいて、前記ローカバーの厚さから前記加硫時間を決定する。
【0013】
好ましくは、前記工程(A)において、前記複数のゴム部材のそれぞれが第一ドラムに巻回される毎に、それぞれの巻回後における厚さを測定する。
【0014】
好ましくは、前記工程(B)において、前記他の複数のゴム部材のそれぞれが前記第二ドラムに巻回される毎に、それぞれの巻回後における厚さを測定する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法では、ローカバー毎に厚さが算出される。算出された厚さに基づいて、ローカバーの加硫時間が決定されている。これにより、加硫時間が必要以上に長くなることが抑制されている。この製造方法では、第一ドラムに巻回された第一成形体の厚さが測定される。第二ドラムに巻回された第二成形体の厚さが測定される。第一成形体の厚さと第二成形体の厚さとからローカバーの厚さを算出する。これにより、ローカバーの厚さを容易に且つ高精度に算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの成形装置が示された概念図である。
【
図2】
図2は、
図1の成形装置の使用状態が示された説明図である。
【
図3】
図3は、
図1の成形装置の他の使用状態が示された説明図である。
【
図4】
図4は、
図1の成形装置の更に他の使用状態が示された説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0018】
図1には、本発明の空気入りタイヤの製造方法に用いられる成形装置2が示されている。この成形装置2は、第一成形装置4、第二成形装置6、搬送装置8、シェーピングフォーマ10、第一プロファイル測定装置12、第二プロファイル測定装置14及び制御装置16を備えている。
【0019】
第一成形装置4は、第一ドラム18を備えている。第一ドラム18の形状は円筒形状である。第一ドラム18は、その軸線を回転軸にして回転可能にされている。この第一ドラム18は、拡径縮径可能である。
【0020】
第二成形装置6は、第二ドラム20を備えている。第二ドラム20の形状は円筒形状である。第二ドラム20は、その軸線を回転軸にして回転可能にされている。この第二ドラム20は、拡径縮径可能である。
【0021】
搬送装置8は、移動装置22及び保持装置24を備えている。移動装置22は、第二成形装置6とシェーピングフォーマ10との間で移動可能である。保持装置24は、移動装置22に取り付けられている。保持装置24は、環状フレーム24aと、複数の保持具24bとを備えている。それぞれの保持具24bは、環状フレーム24aの開口24cに配置されている。保持具24bは、開口24cの周方向に沿って等間隔に配置されている。保持具24bは、一体として、環状フレーム24aの軸線を回転軸に回転可能である。
【0022】
保持具24bは、本体24d及びクランプ24eを備えている。クランプ24eは、本体24dに支持されている。クランプ24eは、開口24cの半径方向に移動可能である。複数のクランプ24eは、軸方向に垂直な断面において、同一円周上に位置した状態を維持して、開口24cの半径方向に拡径縮径可能である。
【0023】
シェーピングフォーマ10は、一対の移動体26及び一対のビード受部28を備えている。それぞれの移動体26の形状は、円筒形状である。移動体26は、軸方向に互いに近付く位置と離れる位置とに移動可能である。一対のビード受部28は、移動体26に装着されている。一対のビード受部28の軸方向の間隔は変更可能である。ビード受部28は、軸方向に互いに近付く位置と離れる位置とに移動可能である。この一対の移動体26及び一対のビード受部28は、その軸線を回転軸にして、回転可能である。
【0024】
第一プロファイル測定装置12は、本体12a及びセンサー12bを備えている。センサー12bは、第一ドラム18に巻回されたもの、例えば第一ドラム18に巻回された成形体の外周面の位置を測定する機能を備えている。このセンサー12bは、特に限定されないが、例えばレザーセンサーである。本体12aは、センサー12bから得られた外周面位置データを制御装置16に送信する機能を備えている。
【0025】
第二プロファイル測定装置14は、本体14a及びセンサー14bを備えている。センサー14bは、第二ドラム20に巻回されたもの、例えば第二ドラム20に巻回された成形体の外周面の位置を測定する機能を備えている。このセンサー14bは、特に限定されないが、例えばレザーセンサーである。本体14aは、センサー14bから得られた外周面位置データを制御装置16に送信する機能を備えている。
【0026】
制御装置16は、演算処理をする演算部と、各機器の制御処理をする制御部と、データを記憶する記憶部と、情報を入力する入力部と、情報を出力する出力部と、入力機器の信号を入力し出力機器に信号を出力するインターフェース部とを備えている。この制御装置16は、第一成形装置4、第二成形装置6、搬送装置8、シェーピングフォーマ10、第一プロファイル測定装置12及び第二プロファイル測定装置14を制御する機能を備えている。この制御装置16は、例えば、プロセッサ、メモリ、キーボード、ディスプレイ及びインターフェースボードを備える。
【0027】
この制御装置16は、第一プロファイル測定装置12から外周面位置データを受信する機能を備えている。制御装置16は、この外周面位置データと、この外周面位置データに対応する第一ドラム18の周方向位置データとを記憶する機能を備えている。制御装置16は、外周面位置データから第一ドラム18に巻回された成形体の厚さを算出する機能を備えている。制御装置16は、第二プロファイル測定装置14から外周面位置データを受信する機能を備えている。制御装置16は、この外周面位置データと、この外周面位置データに対応する第二ドラム20の周方向位置データとを記憶する機能を備えている。制御装置16は、外周面位置データから第二ドラム20に巻回された成形体の厚さを算出する機能を備えている。
【0028】
図2には、第一成形装置4の使用状態が示されている。
図2には、第一成形装置4の第一ドラム18と、第一ドラム18に巻回された第一成形体30が示されている。この第一成形体30は、インナーライナー部材30a、カーカスプライ30b、一対のビード部材30c及びサイドウォール部材30dを備えている。
【0029】
インナーライナー部材30aは、タイヤのインナーライナーを形成する部材である。カーカスプライ30bは、タイヤのカーカスを形成する部材である。一対のビード部材30cは、タイヤのビードを形成する部材である。サイドウォール部材30dは、タイヤのサイドウォールを形成する部材である。
図2では、それぞれが帯状のインナーライナー部材30a、カーカスプライ30b及びサイドウォール部材30dが第一ドラム18に巻回されて重ね合わされている。これらの部材に、リング状のビード部材が組み合わされている。これらの部材が外周面18aに巻回されて、第一成形体30が形成されている。
【0030】
図2の一点鎖線L1は、第一ドラム18の回転軸を表している。
図2の一点鎖線Ps1は、第一プロファイル測定装置12のセンサー12bの軸方向における測定位置を表している。
【0031】
図3には、第二成形装置6の使用状態が示されている。
図3には、第二成形装置6の第二ドラム20と、第二ドラム20に巻回された第二成形体32が示されている。この第二成形体32は、第一ベルト部材32a、第二ベルト部材32b及びトレッド部材32cを備えている。
【0032】
第一ベルト部材32aは、タイヤの第一ベルトを形成する部材である。第二ベルト部材32bは、タイヤの第二ベルトを形成する部材である。トレッド部材32cは、タイヤのトレッドを形成する部材である。
図3では、それぞれ帯状の、第一ベルト部材32a、第二ベルト部材32b及びトレッド部材32cが、第二ドラム20に巻回されて重ね合わされている。これらが外周面20aに巻回されて、第二成形体32が形成されている。
【0033】
図3の一点鎖線L2は、第二ドラム20の回転軸を表している。
図3の一点鎖線Ps2は、第二プロファイル測定装置14のセンサー14bの軸方向における測定位置を表している。
【0034】
図4には、シェーピングフォーマ10の使用状態が示されている。
図4には、シェーピングフォーマ10のビード受部28と、搬送装置8の保持装置24の一部と、第一成形体30と第二成形体32とが示されている。この第一成形体30と第二成形体32とが組み合わされてローカバーが得られる。このローカバーは、トロイド形状を備えている。一対のビード受部28は、軸方向に互いに近付いて位置している。保持装置24の保持具24bは、一対のビード受部28の半径方向外側に位置している。
【0035】
図4には、二点鎖線で、円筒形状の第一成形体30の一部と、この第一成形体30を支持する一対のビード受部28とが示されている。この一対のビード受部28は、軸方向に互いに離れて位置している。
【0036】
図4の一点鎖線Psは、ローカバーにおいて、最も昇温に時間を要する軸方向における位置を表している。この軸方向における位置Psは、ローカバーの軸方向センターを赤道面とした場合の、緯度に相当する。このローカバーにおいて、位置Psは、肉厚が最も厚い位置である。
図2の第一成形体30の位置Ps1は、ローカバーを形成したときに、第一成形体30において、ローカバーの位置Psにある位置を表している。この発明では、このことを、第一成形体30の位置Ps1は、この位置Psに対応していると称する。同様に、
図3の第二成形体32の位置Ps2は、この位置Psに対応している。
【0037】
ここでは、このローカバーでは、最も昇温に時間を要する位置Psは、トレッドの軸方向センターを例に説明がされるが、これに限らない。最も昇温に時間を要する位置Psは、ローカバーの形状等によって、異なる。例えば、ローカバーによっては、
図4の一点鎖線Ps’で示されるバットレスの位置や、一点鎖線Ps”で示されるビード近傍の位置のものもある。この位置Ps’が最も昇温に時間を要するローカバーでは、この位置Ps’に対応する、第一成形体30での位置と第二成形体32での位置とで、それぞれの厚さが測定される。また、この位置Ps”が最も昇温に時間を要するローカバーでは、この位置Ps”に対応する、第一成形体30での位置と第二成形体32での位置とで、それぞれの厚さが測定される。
【0038】
図1から
図4を参照しつつ、この成形装置2を用いて、タイヤの製造方法が説明される。このタイヤの製造方法は、成形工程及び加硫工程を含む。成形工程において、この成形装置2が用いて、タイヤの各部を形成する部材が組み合わされてローカバーが形成される。加硫工程において、このローカバーが加硫される。この加硫によって、ローカバーからタイヤが得られる。
【0039】
この成形工程では、インナーライナー部材30a、カーカスプライ30b、一対のビード部材30c、一対のサイドウォール部材30d等の、第一成形体30を形成する複数の部材が準備される(STEP1)。
【0040】
STEP1で準備された複数の部材が、第一ドラム18に順次巻回される(STEP2)。このSTEP2では、まず、インナーライナー部材30aが第一ドラム18の外周面18aに巻回される。インナーライナー部材30aが巻回されつつ、位置Ps1において、インナーライナー部材30aの外周面の位置が測定される。このインナーライナー部材30aの外周面の位置と第一ドラム18の外周面18aの位置との半径方向における差から、インナーライナー部材30aの厚さが測定される。インナーライナー部材30aの厚さは、この位置Ps1において、第一ドラム18の所定の周方向間隔で、例えば中心角3°の間隔で測定される。制御装置16は、この測定された厚さと周方向における測定位置とを記憶する。測定の周方向位置は、第一ドラム18の回転位置で容易に把握できる。
【0041】
続いて、カーカスプライ30bがインナーライナー部材30aの外周面に巻回される。カーカスプライ30bが巻回されつつ、位置Ps1において、カーカスプライ30bの外周面の位置が測定される。このカーカスプライ30bの厚さが測定される。制御装置16は、この厚さと周方向における測定位置とを記憶する。巻回されたカーカスプライ30bの外周面に、ビード部材30cが配置される。カーカスプライ30bの端部がビード部材30cの周りで折り返される。更に、カーカスプライ30bの外周面に一対のサイドウォール部材30dが巻回される。この様にして、STEP1で準備された複数の部材が、第一ドラム18に順次巻回され、
図2に示される様に、第一成形体30が形成される。このSTEP2では、位置Ps1において、それぞれの部材が巻回された中間体の厚さと第一成形体30の厚さとが、測定の周方向位置とともに、得られる。
【0042】
第一ベルト部材32a、第二ベルト部材32b、トレッド部材32c等の、第二成形体32を形成する他の複数の部材が準備される(STEP3)。
【0043】
STEP3で準備された他の複数の部材が、第二ドラム20に順次巻回される(STEP4)。このSTEP4では、まず、第一ベルト部材32aが第二ドラム20の外周面20aに巻回される。第一ベルト部材32aが巻回されつつ、位置Ps2において、第一ベルト部材32aの外周面の位置が測定される。この第一ベルト部材32aの外周面の位置と第二ドラム20の外周面20aの位置との半径方向における差から、第一ベルト部材32aの厚さが測定される。第一ベルト部材32aの厚さは、この位置Ps2において、第二ドラム20の周方向にSTEP2と同様に所定の周方向間隔で、例えば中心角3°の間隔で、測定される。制御装置16は、この厚さと周方向における測定位置とを記憶する。
【0044】
続いて、第二ベルト部材32bが第一ベルト部材32aの外周面に巻回される。第二ベルト部材32bが巻回されつつ、位置Ps2において、第二ベルト部材32bの外周面の位置が測定される。この第二ベルト部材32bの厚さが測定される。制御装置16は、この厚さと周方向における測定位置とを記憶する。トレッド部材32cが第二ベルト部材32bの外周面に巻回される。トレッド部材32cが巻回されつつ、位置Ps2において、トレッド部材32cの外周面の位置が測定される。このトレッド部材32cの厚さが測定される。制御装置16は、この厚さと周方向における測定位置とを記憶する。この様にして、STEP3で準備された他の複数の部材が、第二ドラム20に順次巻回され、
図3に示される様に、第二成形体32が形成される。このSTEP4では、位置Ps2において、それぞれの部材が巻回された中間体の厚さと第二成形体32の厚さとが、測定の周方向位置とともに、得られる。
【0045】
STEP2で得られた第一成形体30がシェーピングフォーマ10に配置される(STEP5)。
図4の二点鎖線に示される様に、第一成形体30の端部がビード受部28に支持される。
【0046】
STEP4で得られた第二成形体32が第一成形体30の半径方向外側に配置される(STEP6)。このSTEP6では、
図1に示された搬送装置8の保持具24bで保持された第二成形体32が、第一成形体30の半径方向外側に配置される。制御装置16は、第一成形体30の位置Ps1における厚さと周方向位置と、第二成形体32の位置Ps2における厚さと周方向位置とを記憶している。周方向において、位置Psにおける厚さが均一化される様に、第一成形体30と第二成形体32とを接合する相対位置を算出する。具体的には、位置Psにおける厚さの最大値と最小値の差が最小となる様に、第一成形体30と第二成形体32とを接合する相対位置を算出する。第一成形体30と第二成形体32とがこの相対位置になる様に、第一成形体30と第二成形体32との両方又はいずれか一方が回転させられる。
【0047】
第一成形体30に圧力流体、例えば空気が充填されて、第一成形体30がトロイド状に膨張させられる(STEP7)。このSTEP7では、第一成形体30の膨張に伴い、一対のビード受部28は互いに近付く向きに移動する。
図4に示される様に、膨張した第一成形体30の外周面が、第二成形体32の内周面に接着する(STEP8)。その後、図示されないステッチャーで、第二成形体32が第一成形体30に圧着される(STEP9)。この様にして、ローカバーが形成される。
【0048】
制御装置16は、ローカバーの位置Psにおける厚さを算出する(STEP10)。このSTEP10では、制御装置16は、第一成形体30の位置Ps1における厚さと第二成形体32の位置Ps2における厚さとから、ローカバーの位置Psにおける厚さを算出する。
【0049】
制御装置16は、ローカバーの位置Psにおける厚さに基づいて、加硫時間を決定する(STEP11)。例えば、予め、ローカバーのモデルを用いて、位置Psにおける厚さと加硫時間との相関関係が求められる。この相関関係を、制御装置16は、記憶している。STEP10で算出された厚さを、この相関関係における厚さとして、加硫時間を決定する。
【0050】
加硫工程では、STEP11で決定された加硫時間で、ローカバーが加硫される(STEP12)。この加硫によって、ローカバーからタイヤが得られる。
【0051】
このタイヤの製造方法では、STEP10において、ローカバー毎に厚さが算出される。STEP11において、算出された厚さに基づいて、ローカバーの加硫時間が決定されている。これにより、加硫時間が必要以上に長くなることが抑制されている。また、ローカバーから得られるタイヤにおいて、過加硫や加硫不足が生じることが抑制される。
【0052】
STEP2では、第一ドラム18に巻回された第一成形体30の厚さが測定される。この第一成形体30は、第一ドラム18に巻回されているので、変形することが抑制されている。第一ドラム18の外周面18aを基準にして測定されるので、厚さを高精度に測定できる。STEP4では、第二ドラム20に巻回された第二成形体32の厚さが測定される。これにより、第一成形体30と同様に、第二成形体32の厚さを高精度に測定できる。
【0053】
このローカバーでは、最も昇温に時間を要する位置Psの厚さが算出される。第一成形体30では、この位置Psに対応する位置Ps1で厚さが測定される。第二成形体32では、この位置Psに対応する位置Ps2で厚さが測定される。これにより、このタイヤの製造方法は、このローカバーをより適正な加硫時間で加硫しうる。
【0054】
ローカバーの軸方向において、最も昇温に時間を要する位置Psは、このローカバーの様に、トレッドセンターに限られない。最も昇温に時間を要する位置Psは、ローカバーの形状等によって、異なる。例えば、
図4に示される様に、バットレスの周辺の位置Ps’やビード周辺の位置Ps”が、最も昇温に時間を要するものもある。この様なローカバーでは、この位置Ps’や位置Ps”に対応する位置で、第一成形体30及び第二成形体32の厚さが測定される。
【0055】
このローカバーでは、位置Ps1での厚さや位置Ps2での厚さの測定は、半径方向に測定されたが、これに限られない。前述の様に、ローカバーのバットレスの周辺の位置Ps’に対応する位置の、第一成形体30及び第二成形体32の厚さでは、ローカバーで測定される厚さ方向に合わせて、半径方向に傾斜した方向で測定がされる。ローカバーのビードの周辺の位置Ps”に対応する位置の、第一成形体30及び第二成形体32の厚さでも、ローカバーで測定される厚さ方向に合わせて、半径方向に傾斜した方向で測定がされる。
【0056】
このSTEP2では、第一ドラム18の周方向に中心角3°の間隔で、第一成形体30の厚さが測定される。これにより、第一成形体30の周方向における測定位置とその位置での厚さとの関係が把握できる。STEP4では、第二ドラム20の周方向に中心角3°の間隔で、第二成形体32の厚さが測定される。これにより、第二成形体32の周方向における測定位置とその位置での厚さとの関係が把握できる。STEP6において、第一成形体30と第二成形体32とを合わせた厚さが周方向に均一化される様に、第一成形体30と第二成形体32とが周方向相対位置に配置される。これにより、得られるローカバーの位置Psにおける厚さが周方向に均一化される。
【0057】
このSTEP2では、第一ドラム18の周方向に中心角3°の間隔で、第一成形体30の厚さが測定されている。STEP4では、第二ドラム20の周方向に中心角3°の間隔で、第二成形体32の厚さが測定されている。この製造方法では、周方向間隔が中心角度で設定されている。これにより、直径の異なる第一成形体30と第二成形体32とに対応する周方向間隔で、厚さを測定しうる。なお、本発明では、STEP2及びSTEP4の両方又はいずれか一方が、周方向の距離等の他の周方向間隔で測定されてもよい。
【0058】
このSTEP4では、第二成形体32の厚さが所定の周方向間隔で測定されている。この周方向間隔を小さくすることで、高精度に測定されうる。また、巻回された部材の周方向端のジョイント部の厚さが測定対象から漏れることが抑制できる。このジョイント部は最も厚い部分であり、ローカバーの厚さを算出する観点から、把握することが好ましい。このジョント部の厚さの測定漏れを抑制する観点から、第二成形体32の周方向間隔は、第二成形体32の内周面の周方向において、3mm以下であることが好ましい。この観点から、この周方向間隔は、第二成形体32が巻回された第二ドラム20の外周面20aの周方向において、3mm以下であることが好ましい。なお、STEP2の第一成形体30の周方向間隔は、第一成形体30の半径が第二成形体32のそれより小さいので、第二成形体32の周方向間隔に対応させて定めればよい。
【0059】
このSTEP11では、予め、ローカバーのモデルを用いて、厚さと加硫時間との相関関係が求められる。この相関関係と、算出された位置Psにおける厚さとに基づいて、加硫時間が決定される。これにより、容易に且つ適切にローカバーを加硫しうる。
【0060】
このSTEP2では、インナーライナー部材30aの厚さが測定される。インナーライナー部材30aに巻回されるカーカスプライ30bの厚さが測定される。このSTEP2では、複数の帯状部材が巻回される毎に、それぞれの厚さが測定される。これにより、第一成形体30の厚さに変動が生じたときに、どの部材によって厚さに変動が生じているかを容易に把握しうる。
【0061】
このSTEP4では、第一ベルト部材32aの厚さが測定される。第一ベルト部材32aに巻回された第二ベルト部材32bの厚さが測定される。第二ベルト部材32bに巻回されたトレッド部材32cの厚さが測定される。このSTEP4では、他の複数の帯状部材が巻回される毎に、それぞれの厚さが測定される。これにより、第二成形体32の厚さに変動が生じたときに、どの部材によって厚さに変動が生じているかを容易に把握しうる。
【0062】
本発明のタイヤの製造方法では、STEP10において、必ずしもローカバーの厚さを算出する必要はない。位置Psにおけるローカバーの厚さが把握できればよい。従って、STEP11では、第一成形体30の位置Ps1における厚さと第二成形体32の位置Ps2における厚さとに基づいて、加硫時間が決定されてもよい。
【実施例】
【0063】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0064】
[テスト1]
[実施例1]
図1の成形装置を用いて、タイヤが製造された。第二ドラムの外周面上での周方向間隔が1mmとなる中心角度で、厚さが算出された。ここでは、トレッドセンターの位置Psとビード周辺の位置Ps”とで(
図4参照)、このローカバーの厚さが算出された。
【0065】
[比較例1]
ローカバーの厚さが実測された(二点挟み込み測定)。位置Ps及び位置Ps”の位置の特定に時間を要した。更に、ビード周辺の位置Ps”では、測定が容易でなく、測定にも時間を要し、更に測定値のバラツキが大きかった。
【0066】
このテスト1の結果から、本発明の優位性は明らかである。
【0067】
[テスト2]
[実施例2-4]
第二ドラムの外周面上での周方向間隔が表1に示され様にされた他は、実施例1と同様にして、このローカバーの厚さが算出された。
【0068】
[測定誤差の評価]
算出された厚さから周方向における厚さの最大値が求められた。一方で、それぞれのローカバーで厚さの最大値が実測された。算出された厚さの最大値と実測された最大値との差が算出された。位置Psと位置Ps”とのそれぞれの位置で、この差が指数で表されている。この指数は、小さいほど、誤差が小さい。この指数は、小さいほど好ましい。
【0069】
[総合評価]
実施例1-4のいずれも、ローカバーの厚さをゲージで測定すること無く、タイヤの加硫時間が短縮された。また、得られるタイヤに加硫不足等の不具合も生じなかった。
【0070】
【0071】
この評価結果から、第二ドラムの外周面上での周方向間隔が3mm以下にされた実施例1及び2で、特に、本発明の優位性は明らかであった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上説明された方法は、成形工程及び加硫工程を経て得られる空気入りタイヤの製造方法に広く適用されうる。
【符号の説明】
【0073】
2・・・成形装置
4・・・第一成形装置
6・・・第二成形装置
8・・・搬送装置
10・・・シェーピングフォーマ
12・・・第一プロファイル測定装置
14・・・第二プロファイル測定装置
16・・・制御装置
18・・・第一ドラム
18a・・・外周面
20・・・第二ドラム
20a・・・外周面
28・・・ビード受部
30・・・第一成形体
32・・・第二成形体