(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】電圧レギュレータ及び車載用のバックアップ電源
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20221227BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20221227BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221227BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
G05F1/56 310W
H02J1/00 306B
H02J7/00 P
H02J7/00 302A
H02J9/06 110
(21)【出願番号】P 2019091925
(22)【出願日】2019-05-15
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島本 一翔
(72)【発明者】
【氏名】杉沢 佑樹
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-293492(JP,A)
【文献】特開2010-198405(JP,A)
【文献】実開平04-082711(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
H02J 1/00
H02J 7/00
H02J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電路を介して供給される電力に基づいて入力電圧が入力され、第2導電路に出力電圧を出力する電圧レギュレータであって、
複数の出力端子を有する制御部と、
複数の前記出力端子に電気的に接続される入力回路部と、
前記入力回路部に電気的に接続される第1端子を有するトランジスタと、
前記第1導電路と前記第2導電路と前記トランジスタとに電気的に接続されるスイッチと、
前記トランジスタの第2端子と前記第2導電路との間に介在する素子部と、
を有し、
前記制御部は、複数の前記出力端子の各状態を第1状態及び第2状態のいずれかに切り替えるように動作し、
前記入力回路部は、複数の前記出力端子における前記第1状態の組合せに応じた電圧を前記第1端子に印加し、
前記トランジスタは、少なくともいずれかの前記出力端子が前記第1状態であるときに通電状態となり、
前記スイッチは、前記トランジスタが通電状態である場合にオン状態となり、
前記素子部は、前記第2導電路に印加される前記出力電圧を前記第1端子に印加される電圧に応じた電圧に定め
、
前記トランジスタは、NPN型のバイポーラトランジスタであり、
前記第1端子は、前記バイポーラトランジスタのベースであり、
前記第2端子は、前記バイポーラトランジスタのエミッタであり、
前記素子部は、前記第2導電路にカソードが電気的に接続されるとともに前記エミッタにアノードが電気的に接続されるツェナーダイオードであり、
更に、一端が前記エミッタに電気的に接続され、他端がグラウンドに電気的に接続される抵抗部を有し、
前記ツェナーダイオードは、前記第2導電路に印加される出力電圧を当該ツェナーダイオードのツェナー電圧と前記バイポーラトランジスタのエミッタ電圧との和に応じた値に定め、
前記第1状態はハイレベル電圧又はローレベル電圧のうちの一方が印加された状態であり、前記第2状態は前記ハイレベル電圧又は前記ローレベル電圧のうちの他方が印加された状態であり、
前記入力回路部は、複数の前記出力端子に印加されるハイレベル電圧又はローレベル電圧を分圧して前記第1端子に印加する
電圧レギュレータ。
【請求項2】
前記入力回路部は、複数の第1抵抗部が前記第1端子とグラウンドとの間に直列に接続された直列構成部と、複数の第2抵抗部とを有し、
複数の前記第2抵抗部は、各々の一端が複数の前記出力端子のそれぞれに電気的に接続され、各々の他端が前記直列構成部における複数の素子間導電路のそれぞれに電気的に接続されている
請求項1に記載の電圧レギュレータ。
【請求項3】
前記第1導電路に電気的に接続される蓄電部と、
請求項1又は請求項2に記載の電圧レギュレータと、を備え、
前記制御部は、バックアップ条件の成立に応じて複数の前記出力端子の少なくともいずれかを前記第1状態に切り替える
車載用のバックアップ電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電圧レギュレータ及び車載用のバックアップ電源に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、低ドロップアウト電圧レギュレータと電流源とを有する電圧レギュレーション回路が開示されている。この回路において、低ドロップアウト電圧レギュレータは、負荷回路の電源入力部へ結合される出力部を備え、電源電圧を負荷回路へ供給するように構成されている。電流源は、負荷回路の電源入力部及び低ドロップアウト電圧レギュレータの出力部へ結合され、低ドロップアウト電圧レギュレータによって負荷回路へ供給される電流を低減するように電流を負荷回路へ供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リニアレギュレータなどの電圧レギュレータは、入力電圧から予め定められた出力電圧を出力する機能を有している。しかし、使用環境によっては、出力電圧の設定を状況に合わせて変更することが求められる場合も想定され、このような要求に応える対応としては、出力電圧が異なる複数の電圧レギュレータを用意するなどの対応が考えられる。しかし、単に電圧レギュレータの数を増やすだけでは装置の大型化、複雑化を招いてしまう。
【0005】
そこで、本開示では、電圧レギュレータから出力する電圧の値を設定変更可能な構成を、装置の大型化及び複雑化を抑えて実現し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一例である電圧レギュレータは、
第1導電路を介して供給される電力に基づいて入力電圧が入力され、第2導電路に出力電圧を出力する電圧レギュレータであって、
複数の出力端子を有する制御部と、
複数の前記出力端子に電気的に接続される入力回路部と、
前記入力回路部に電気的に接続される第1端子を有するトランジスタと、
前記第1導電路と前記第2導電路と前記トランジスタとに電気的に接続されるスイッチと、
前記トランジスタの第2端子と前記第2導電路との間に介在する素子部と、
を有し、
前記制御部は、複数の前記出力端子の各状態を第1状態及び第2状態のいずれかに切り替えるように動作し、
前記入力回路部は、複数の前記出力端子における前記第1状態の組合せに応じた電圧を前記第1端子に印加し、
前記トランジスタは、少なくともいずれかの前記出力端子が前記第1状態であるときに通電状態となり、
前記スイッチは、前記トランジスタが通電状態である場合にオン状態となり、
前記素子部は、前記第2導電路に印加される前記出力電圧を前記第1端子に印加される電圧に応じた電圧に定める。
【0007】
本開示の一例である車載用のバックアップ電源は、
上記第1導電路に電気的に接続される蓄電部と、
上記電圧レギュレータと、を備え、
上記制御部は、バックアップ条件の成立に応じて複数の上記出力端子の少なくともいずれかを前記第1状態に切り替える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態の電圧レギュレータの構成を例示した回路図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の電圧レギュレータにおいて、各ポートからの出力とトランジスタのベース電圧との関係を例示した説明図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の電圧レギュレータが蓄電素子からの放電回路として適用された車載用の電源システムの電気的構成である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の電圧レギュレータは、
(1)制御部は、複数の出力端子の各状態を第1状態及び第2状態のいずれかに切り替えるように動作する。そして、入力回路部は、複数の出力端子における第1状態の組合せに応じた電圧を第1端子に印加する。そして、トランジスタは、少なくともいずれかの出力端子が第1状態であるときに通電状態となり、スイッチは、トランジスタが通電状態である場合にオン状態となる。そして、素子部は、第2導電路に印加される出力電圧を第1端子に印加される電圧に応じた電圧に定める。
上記の構成をなす電圧レギュレータは、出力する電圧の値が決められた固定値のみに制限されなくなり、出力電圧値を変更できるようになる。しかも、多数の電圧レギュレータを用いなくても制御部による制御によって出力電圧値を変更することができる構成であるため、「出力電圧値を設定変更可能な構成」を装置の大型化及び複雑化を抑えて実現し得る。
(2)上記の電圧レギュレータにおいて、トランジスタはNPN型のバイポーラトランジスタであってもよく、第1端子はバイポーラトランジスタのベースであってもよく、第2端子はバイポーラトランジスタのエミッタであってもよい。そして、素子部は、第2導電路にカソードが電気的に接続されるとともにエミッタにアノードが電気的に接続されるツェナーダイオードであってもよい。更に、上記の電圧レギュレータは、一端がエミッタに電気的に接続され、他端がグラウンドに電気的に接続される抵抗部を有していてもよい。そして、ツェナーダイオードは、第2導電路に印加される出力電圧を当該ツェナーダイオードのツェナー電圧とトランジスタのエミッタ電圧との和に応じた値に定めても良い。
この電圧レギュレータは、バイポーラトランジスタに与えるベース電圧を変更するだけで第2導電路に印加される出力電圧をベース電圧に応じた値に安定的に切り替えることができる構成となり、このような構成を、より簡易な素子構成で実現できる。
(3)上記の電圧レギュレータにおいて、第1状態はハイレベル電圧又はローレベル電圧のうちの一方が印加された状態とすることができ、第2状態はハイレベル電圧又はローレベル電圧のうちの他方が印加された状態とすることができる。そして、入力回路部は、複数の第1抵抗部が第1端子とグラウンドとの間に直列に接続された直列構成部と、複数の第2抵抗部とを有していてもよい。そして、複数の第2抵抗部は、各々の一端が複数の出力端子のそれぞれに電気的に接続され、各々の他端が直列構成部における複数の素子間導電路のそれぞれに電気的に接続されていてもよい。
この電圧レギュレータは、制御部による複数の出力端子の制御によって第1端子に印加される電圧を段階的に切り替えることができ、このような構成を「複数の第1抵抗部及び複数の第2抵抗部」を主体とした簡易な構成で実現できる。しかも、制御部は、複数の出力端子をハイレベル電圧又はローレベル電圧に切り替えるだけで済むため、制御部の制御も簡易化される。
(4)また、本開示の車載用のバックアップ電源は、上記第1導電路に電気的に接続される蓄電部と、上述の(1)から(3)に記載の電圧レギュレータと、を備え、上記制御部は、バックアップ条件の成立に応じて複数の上記出力端子の少なくともいずれかを第1状態に切り替える。
この車載用のバックアップ電源は、上述の(1)から(3)に記載の電圧レギュレータと同様の効果を奏する。
【0010】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の電圧レギュレータ及び車載用のバックアップ電源の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0011】
本開示の電圧レギュレータを、
図1、
図2を参照して説明する。
図1に示す電圧レギュレータ10は、第1導電路91を介して供給される電力に基づいて入力電圧が入力され、第2導電路92に出力電圧を出力する構成である。電圧レギュレータ10は、制御部20と、入力回路部30と、トランジスタ41と、スイッチ43と、ツェナーダイオード(素子部)45と、抵抗(抵抗部)47と、抵抗49と、を有している。
【0012】
制御部20は、例えばマイクロコンピュータとして構成されており、CPU、ROM又はRAM等のメモリ等を有している。制御部20は、例えば、電源から供給される電力に基づいて動作し、電源からの電力供給が途絶えた場合でもバックアップ電源からの電力によって動作することが可能となっている。制御部20は、ポート(出力端子)P1,P2を有している。制御部20は、ポートP1,P2の各状態を第1状態及び第2状態のいずれかに切り替えるように動作する。第1状態とは、例えば、グラウンド電圧(0V)よりも高い電圧(Vcc)の電圧信号(ハイレベル信号)を出力する状態である。つまり、第1状態とは、ポート(出力端子)にあらかじめ定められたハイレベル電圧を印加する状態である。ハイレベル電圧(Vcc)は、例えば5Vである。なお、本明細書では、特に限定されない限り、電圧とはグラウンド電位(0V)との電位差を意味する。第2状態とは、例えば、グラウンド電圧(0V)の電圧信号(ローレベル信号)を出力する状態である。つまり、第2状態とは、ポート(出力端子)にあらかじめ定められたローレベル電圧を印加する状態である。
【0013】
入力回路部30は、ポートP1,P2に電気的に接続されている。入力回路部30は、ポートP1,P2における第1状態及び第2状態の組合せに応じた電圧を、後述するトランジスタ41のベース(第1端子)に印加する。入力回路部30は、直列構成部31と、抵抗(第2抵抗部)37,39と、を有している。抵抗37の一端は、ポートP1に接続されている。抵抗37の一端とポートP1は、同電位である。抵抗39の一端は、ポートP2に接続されている。抵抗39の一端とポートP2は、同電位である。直列構成部31は、抵抗(第1抵抗部)33,35を有している。抵抗33,35は、トランジスタ41のベースとグラウンドとの間に直列に接続されている。抵抗33の一端は、抵抗37の他端と、トランジスタ41のベースと、に接続されている。抵抗33の一端と、抵抗37の他端と、トランジスタ41のベースは、同電位である。抵抗35の一端は、抵抗33の他端と、抵抗39の他端と、に接続されている。抵抗35の一端と、抵抗33の他端と、抵抗39の他端は、同電位である。このように、抵抗37の他端、及び抵抗39の他端は、直列構成部31における各素子間導電路93,94のそれぞれに接続されている。抵抗35の他端は、グラウンドに接続され、グラウンド電位とされる。
【0014】
トランジスタ41は、NPN型のバイポーラトランジスタとして構成されている。トランジスタ41のベース(第1端子)は、入力回路部30に電気的に接続されている。トランジスタ41のコレクタは、後述する抵抗49の他端と、スイッチ43のゲートと、に接続されている。トランジスタ41のコレクタと、抵抗49の他端と、スイッチ43のゲートは、同電位である。トランジスタ41のエミッタ(第2端子)は、後述する抵抗47の一端と、ツェナーダイオード45のアノードと、に接続されている。トランジスタ41のエミッタと、抵抗47の一端と、ツェナーダイオード45のアノードは、同電位である。トランジスタ41は、少なくともいずれかのポートP1,P2が第1状態であるときに通電状態となり、コレクタからエミッタへ電流を流す。
【0015】
スイッチ43は、Pチャネル型のMOSFETとして構成されている。スイッチ43は、第1導電路91と第2導電路92とトランジスタ41とに電気的に接続されている。具体的には、スイッチ43のゲートは、抵抗49の他端と、トランジスタ41のコレクタと、に接続されている。スイッチ43のソースは、第1導電路91に接続されている。スイッチ43のソースと第1導電路91は、同電位である。スイッチ43のドレインは、第2導電路92に接続されている。スイッチ43のドレインと第2導電路92は、同電位である。スイッチ43は、トランジスタ41が通電状態である場合にオン状態となる。
【0016】
ツェナーダイオード45は、トランジスタ41のエミッタと第2導電路92との間に介在している。ツェナーダイオード45のアノードは、トランジスタ41のエミッタと、抵抗47の一端と、に接続されている。ツェナーダイオード45のカソードは、第2導電路92に接続されている。ツェナーダイオード45のカソードと第2導電路92は、同電位である。ツェナーダイオード45は、第2導電路92に印加される出力電圧をトランジスタ41のベースに印加される電圧に応じた電圧に定める。具体的には、ツェナーダイオード45は、第2導電路92に印加される出力電圧を、ツェナー電圧とトランジスタ41のエミッタ電圧との和に応じた値に定める。
【0017】
抵抗47は、トランジスタ41及びツェナーダイオード45と、グラウンドと、の間に介在している。抵抗47の一端は、トランジスタ41のエミッタと、ツェナーダイオード45のアノードと、に接続されている。抵抗47の他端は、グラウンドに接続され、グラウンド電位とされる。
【0018】
抵抗49は、第1導電路91と、トランジスタ41と、の間に介在している。抵抗49の一端は、第1導電路91に接続されている。抵抗49の一端と第1導電路91は、同電位である。抵抗49の他端は、トランジスタ41のコレクタと、スイッチ43のゲートと、に接続されている。
【0019】
次に、電圧レギュレータ10による出力電圧の制御について説明する。
まず、制御部20は、ポートP1,P2の各状態を第1状態及び第2状態のいずれかに切り替えるように動作する。すなわち、制御部20は、ポートP1及びポートP2から、ハイレベル信号(Vccの大きさの電圧信号)、又はローレベル信号(0Vの大きさの電圧信号)を出力する。
【0020】
入力回路部30は、ポートP1,P2における第1状態及び第2状態の組合せに応じた電圧を、後述するトランジスタ41のベースに印加する。
図2に示すように、例えば、ポートP1からハイレベル信号を出力し、ポートP2からハイレベル信号を出力すると、入力回路部30で分圧され、Vcc×0.8の大きさの電圧Vbがトランジスタ41のベースに印加される。なお、
図2は、抵抗33,35、及び抵抗37,39が、全て同じ抵抗値である場合の電圧Vbを示している。また、ポートP1からハイレベル信号を出力し、ポートP2からローレベル信号を出力すると、入力回路部30で分圧され、Vcc×0.6の大きさの電圧Vbがトランジスタ41のベースに印加される。また、ポートP1からローレベル信号を出力し、ポートP2からハイレベル信号を出力すると、入力回路部30で分圧され、Vcc×0.2の大きさの電圧Vbがトランジスタ41のベースに印加される。また、ポートP1からローレベル信号を出力し、ポートP2からローレベル信号を出力すると、入力回路部30で分圧され、トランジスタ41のベースに電圧が印加されず、電圧レギュレータ10がオフ状態となる。
【0021】
トランジスタ41は、少なくともいずれかのポートP1,P2が第1状態(ハイレベル信号が出力される状態)であるときに通電状態となり、コレクタからエミッタへ電流を流す。スイッチ43は、トランジスタ41が通電状態になると抵抗49に電流が流れるため、ゲートに電圧が印加されて、オン状態となる。ツェナーダイオード45は、スイッチ43がオン状態となると、電圧が印加されるようになる。ツェナーダイオード45に印加される電圧(第2導電路92に印加される出力電圧)が一定程度大きくなると、カソード側からアノード側に電流が流れるようになる。ポートP1,P2のうち少なくともいずれかが第1状態であれば、ツェナーダイオード45がブレークダウンを起こして、カソードとアノードとの間の電位差がツェナー電圧に保たれる。
【0022】
これにより、ツェナーダイオード45は、第2導電路92に印加される出力電圧Voutを、トランジスタ41のベースに印加される電圧Vbに応じた電圧に定める。具体的には、ツェナーダイオード45は、出力電圧Voutを、ツェナー電圧Vzとトランジスタ41のエミッタ電圧V1との和に応じた電圧に定める。
図1の例では、トランジスタ41のエミッタ電圧を電圧V1とし、トランジスタ41のベース-エミッタ間電圧を電圧Vbeとすると、V1=Vb-Vbeであるため、Vout=Vz+V1=Vz+Vb-Vbeとなる。なお、V1は、抵抗47の両端電圧と等しい。これにより、制御部20は、
図2に示すように、ポートP1,P2の各状態を第1状態及び第2状態のいずれかに切り替えるように動作することで、複数種類のVbをトランジスタ41のベースに印加することができ、それに伴い出力電圧Voutを変更することができる。このように、1つの電圧レギュレータ10で複数種類の大きさの出力電圧を出力することができる。
【0023】
次に、本開示の車載用のバックアップ電源(以下、バックアップ電源ともいう)が適用された車載用の電源システム100(以下、電源システム100ともいう)を、
図3を参照して説明する。
図3に示す電源システム100は、車載用の電源部101(以下、電源部101ともいう)と、バックアップ電源110と、負荷103と、充電回路105と、を備え、負荷103に電力を供給し得るシステムとして構成されている。バックアップ電源110は、車載用の蓄電部102(以下、蓄電部102ともいう)と、制御部20と、放電回路106と、を備えている。
【0024】
電源部101は、主電源として機能する。蓄電部102は、バックアップ電源として機能し、電源部101からの電力供給が途絶えたときに電力供給源となる。蓄電部102は、第1導電路91に電気的に接続されている。充電回路105は、電源部101からの電力供給に基づいて蓄電部102を充電する充電動作を行う回路である。放電回路106は、蓄電部102に蓄えられた電力を放電する放電動作を行う回路である。放電回路106は、第1導電路91及び第2導電路92に電気的に接続されている。放電回路106と、制御部20と、によって電圧レギュレータ10が構成されている。
【0025】
放電回路106には、制御部20によって、蓄電部102の放電を指示する放電指示信号、又は蓄電部102の放電停止を指示する放電停止信号が与えられ、蓄電部102から負荷103に放電電流を流す放電動作と、放電電流を遮断する遮断動作とを行う。制御部20は、バックアップ条件の成立に応じて、放電指示信号を送信する。すなわち、制御部20は、複数のポートP1,P2の少なくともいずれかを第1状態に切り替える。ここで、バックアップ条件は、例えば、導電路191の電圧が所定の閾値以下に低下した場合に成立する。
【0026】
放電回路106は、制御部20から放電指示信号が与えられている場合、蓄電部102の出力電圧が印加される第1導電路91の電圧を入力電圧として降圧動作を行い、出力側の第2導電路92に対して変更された出力電圧を印加するように放電動作を行う。放電回路106は、制御部20から放電停止信号が与えられている場合、このような放電動作を停止させ、第2導電路92と蓄電部102との間を非導通状態とするように遮断動作を行う。放電回路106が放電動作を行っているときには、放電回路106から出力される出力電流(放電電流)が負荷103に供給される。
【0027】
制御部20は、バックアップ条件の成立(例えば、導電路191の電圧の値が所定の閾値を下回った場合など)に応じてポートP1,P2のうち少なくともいずれかを第1状態に切り替える。これにより、制御部20は、ポートP1,P2の切り替えの種類(
図2参照)によって、放電回路106から負荷103に出力される出力電圧を変更することができる。
【0028】
このような電圧レギュレータ10は、蓄電部102から適正な電圧の出力電圧が出力されるか否かのイニシャルチェックに用いることができる。
【0029】
以上のように、本開示の電圧レギュレータ10は、制御部20が、複数のポートP1,P2の各状態を第1状態及び第2状態のいずれかに切り替えるように動作する。そして、入力回路部30は、複数のポートP1,P2における第1状態の組合せに応じた電圧をトランジスタ41のベースに印加する。そして、トランジスタ41は、少なくともいずれかのポートP1,P2が第1状態であるときに通電状態となり、スイッチ43は、トランジスタ41が通電状態である場合にオン状態となる。そして、ツェナーダイオード45は、第2導電路92に印加される出力電圧をトランジスタ41のベースに印加される電圧に応じた電圧に定める。
このような構成をなす電圧レギュレータ10は、出力する電圧の値が決められた固定値のみに制限されなくなり、出力電圧値を変更できるようになる。しかも、多数の電圧レギュレータを用いなくても制御部20による制御によって出力電圧値を変更することができる構成であるため、「出力電圧値を設定変更可能な構成」を装置の大型化及び複雑化を抑えて実現し得る。
【0030】
本開示の電圧レギュレータ10は、トランジスタ41はNPN型のバイポーラトランジスタである。そして、ツェナーダイオード45は、第2導電路92にカソードが電気的に接続されるとともにトランジスタ41のエミッタにアノードが電気的に接続される。更に、電圧レギュレータ10は、一端がトランジスタ41のエミッタに電気的に接続され、他端がグラウンドに電気的に接続される抵抗47を有している。そして、ツェナーダイオード45は、第2導電路92に印加される出力電圧を当該ツェナーダイオード45のツェナー電圧とトランジスタ41のエミッタ電圧との和に応じた値に定める。
この電圧レギュレータ10は、トランジスタ41に与えるベース電圧を変更するだけで第2導電路92に印加される出力電圧をベース電圧に応じた値に安定的に切り替えることができる構成となり、このような構成を、より簡易な素子構成で実現できる。
【0031】
本開示の電圧レギュレータ10は、第1状態をハイレベル電圧又はローレベル電圧のうちの一方が印加された状態とすることができ、第2状態をハイレベル電圧又はローレベル電圧のうちの他方が印加された状態とする。そして、入力回路部30は、複数の抵抗33,35がトランジスタ41のベースとグラウンドとの間に直列に接続された直列構成部31と、複数の抵抗37,39とを有している。そして、複数の抵抗37,39は、各々の一端が複数のポートP1,P2のそれぞれに電気的に接続され、各々の他端が直列構成部31における複数の素子間導電路93,94のそれぞれに電気的に接続されている。
この電圧レギュレータ10は、制御部20による複数のポートP1,P2の制御によってトランジスタ41のベースに印加される電圧を段階的に切り替えることができ、このような構成を「複数の抵抗33,35及び複数の抵抗37,39」を主体とした簡易な構成で実現できる。しかも、制御部20は、複数のポートP1,P2をハイレベル電圧又はローレベル電圧に切り替えるだけで済むため、制御部20の制御も簡易化される。
【0032】
[他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
例えば、実施形態は、制御部20は、2つのポートP1,P2を有していたが、他の実施形態としては、3つ以上のポートを有していてもよい。
実施形態は、抵抗33,35及び抵抗37,39の抵抗値が全て同じ大きさである例(
図2参照)を示したが、各抵抗の抵抗値を任意に変更してもよく、各抵抗の抵抗値を変更することで多様な大きさの出力電圧を出力することできる。
【符号の説明】
【0033】
10…電圧レギュレータ
20…制御部
30…入力回路部
31…直列構成部
33,35…抵抗(第1抵抗部)
37,39…抵抗(第2抵抗部)
41…トランジスタ
43…スイッチ
44…制御部
45…ツェナーダイオード(素子部)
47…抵抗(抵抗部)
49…抵抗
91…第1導電路
92…第2導電路
93,94…素子間導電路
100…車載用の電源システム
101…車載用の電源部
102…車載用の蓄電部
103…負荷
105…充電回路
106…放電回路
110…バックアップ電源
191…導電路
P1,P2…ポート(出力端子)