(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】車両用接合構造体
(51)【国際特許分類】
B60J 1/00 20060101AFI20221227BHJP
B29C 65/48 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
B60J1/00 W
B29C65/48
(21)【出願番号】P 2019186304
(22)【出願日】2019-10-09
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和雅
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-112621(JP,A)
【文献】特開2011-246090(JP,A)
【文献】特開2016-132344(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105216875(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/00 ; 1/02
B60J 10/00 - 10/90
B60R 13/06
B62D 17/00 - 25/08
B62D 25/14 - 29/04
B29C 65/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材、前記第1部材よりも線膨張係数の大きな第2部材、および、前記第1部材と前記第2部材との隙間に配置され両者を接合する接合部材を有し、
前記接合部材は、
前記第1部材に接着される第1接着面を有する第1接合部、
前記第2部材に接着される第2接着面を有し、前記第1接合部に対して高さ方向に離れて配置される第2接合部、
弾性変形可能であり前記第1接合部と前記第2接合部とを連結する連結部、および、
前記高さ方向における長さが前記連結部よりも短く、前記第1接合部、前記第2接合部、前記連結部の何れかである干渉基部に一体化されている干渉リブを有し、
前記干渉リブは、前記第2部材の膨張時に前記第1接合部、前記第2接合部、前記連結部のうち前記干渉基部以外のものの何れかに当接する、車両用接合構造体。
【請求項2】
前記干渉リブは前記第1接合部に一体化され、
前記干渉リブと前記第2接合部との間、および、前記干渉リブと前記連結部との間には隙間がある、請求項1に記載の車両用接合構造体。
【請求項3】
前記干渉リブは弾性変形可能である、請求項1または請求項2に記載の車両用接合構造体。
【請求項4】
前記第1部材は、
前記第1接着面に接着される第1連結接着面と、
前記第2部材が膨張する方向の先側において前記第2部材の端面に対向する対向面とを有し、
前記対向面と前記第2部材の前記端面との隙間は5mm以下である、請求項1~請求項3の何れか一項に記載の車両用接合構造体。
【請求項5】
前記第1部材と前記第1接合部とを接着する接着剤、および前記第2部材と前記第2接合部とを接着する接着剤は、ウレタン系接着剤である、請求項1~請求項4の何れか一項に記載の車両用接合構造体。
【請求項6】
前記第2部材は樹脂ガラス製である、請求項1~請求項5の何れか一項に記載の車両用接合構造体。
【請求項7】
第1部材と、前記第1部材よりも線膨張係数の大きな第2部材と、の隙間に配置され両者を接合する接合部材であって、
前記接合部材は、
前記第1部材に接着される第1接着面を有する第1接合部、
前記第2部材に接着される第2接着面を有し、前記第1接合部に対して高さ方向に離れて配置される第2接合部、
弾性変形可能であり前記第1接合部と前記第2接合部とを連結する連結部、および、
前記高さ方向における長さが前記連結部よりも短く、前記第1接合部、前記第2接合部、前記連結部の何れかである干渉基部に一体化されている干渉リブを有し、
前記干渉リブは、前記第1接合部と前記第2接合部とが相対的に位置変化したときに前記第1接合部、前記第2接合部、前記連結部のうち前記干渉基部以外のものの何れかに当接する、車両用接合部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用の接合構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、サンルーフ、フロントウインドウ、リアウインドウ等に代表される各種の固定窓が設けられている。これらの固定窓はボデーに設けられた開口に光透過性のパネル(所謂窓ガラス)が嵌め込まれたものであり、パネルの外周部はボデーにおける開口の周縁部に固定される。車両用の固定窓においては、接着剤を用いてパネルを開口の周縁部に接着することで両者を接合一体化するのが一般的である(例えば、特許文献1~特許文献4参照)。
【0003】
特許文献1~特許文献4には、何れも、パネルを開口の周縁部に接着する技術が紹介されている。特許文献1および特許文献2には、パネルを開口の周縁部に接着するための接着剤として、ウレタン系接着剤が好適である旨が紹介されている。特許文献3には、パネルを開口の周縁部に接着し、かつ、パネルの端縁に成形ストリップを取付けて、パネルと開口の周縁部との間に当該成形ストリップを介在させる旨が紹介されている。特許文献4には、パネルを開口の周縁部に接着するための接着剤としてウレタン系接着剤が用いられる旨、および、プライマー層を不要とし得るウレタン系接着剤の組成が紹介されている。
【0004】
近年、燃費向上等の観点から車両の軽量化が望まれており、各種の車両構成部材において、その材料を軽量な樹脂に変更する取り組みが進められている。車両用の固定窓についても、パネルの材料をケイ酸ガラスから樹脂に変更することが提案されている。
【0005】
樹脂製パネルは、ケイ酸ガラス製パネルに比べて、線膨張係数が大きく、高温時における膨張量や低温時における収縮量が大きい。このような樹脂製パネルの体積変化に対応する為に、樹脂製パネルを開口の周縁部に接着する接着剤としては、硬化後にも変形可能なものを用いるのが一般的である。上記した特許文献で用いられているウレタン系接着剤は、硬化後に弾性変形可能であることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-10436号公報
【文献】特開2019-98792号公報
【文献】特開平8-151237号公報
【文献】特開2013-95759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
極暑時または極寒時等、樹脂製パネルの温度が過度に上昇または低下した場合には、樹脂製パネルの体積変化量が過大となる。ここで、ボデーの材料としては、鋼鉄等の樹脂製パネルよりも線膨張係数の小さなものが用いられるのが一般的である。したがって、樹脂製パネルの体積変化量が過大であれば、ボデーにおける開口の周縁部と樹脂製パネルとの体積変化量の差が大きくなり、樹脂製パネルと開口の周縁部との相対位置が変化して大きくずれる。そしてその結果、樹脂製パネルを開口の周縁部に接着する接着剤には大きな応力が作用する。当該応力が過大であれば、接着剤が樹脂製パネルおよび/または開口の周縁部から剥離し、樹脂製パネルと開口の周縁部との接合状態に不具合が生じる虞がある。
【0008】
接着剤が弾性変形可能であれば、接着剤が引張変形または圧縮変形して上記した樹脂製パネルと開口の周縁部との相対位置のずれに追従できる可能性がある。しかし、樹脂製パネルと開口の周縁部との体積変化量の差が過大である場合等には、このような接着剤の弾性変形だけでは、上記相対位置のずれに充分に対応できない場合がある。
【0009】
例えば、高温時における樹脂製パネルの膨張量が過大であれば、当該樹脂製パネルがボデーにおける開口の周縁部やその他の部材に突き当たり、場合によっては、樹脂製パネルやボデー等が損傷する虞もある。
したがって、上記したパネルとボデーの開口の周縁部とのように、線膨張係数が異なりかつ車両に搭載される2つの部材を安定して接合するための新たな技術が望まれている。
【0010】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、線膨張係数が異なりかつ車両に搭載される2つの部材を安定して接合し、かつ、このうち線膨張係数の大きな部材の過剰な膨張変形を抑制し得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の車両用接合構造体は、
第1部材、前記第1部材よりも線膨張係数の大きな第2部材、および、前記第1部材と前記第2部材との隙間に配置され両者を接合する接合部材を有し、
前記接合部材は、
前記第1部材に接着される第1接着面を有する第1接合部、
前記第2部材に接着される第2接着面を有し、前記第1接合部に対して高さ方向に離れて配置される第2接合部、
弾性変形可能であり前記第1接合部と前記第2接合部とを連結する連結部、および、
前記高さ方向における長さが前記連結部よりも短く、前記第1接合部、前記第2接合部、前記連結部の何れかである干渉基部に一体化されている干渉リブを有し、
前記干渉リブは、前記第2部材の膨張時に前記第1接合部、前記第2接合部、前記連結部のうち前記干渉基部以外のものの何れかに当接する、車両用接合構造体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両用接合構造体によると、線膨張係数が異なりかつ車両に搭載される2つの部材を安定して接合し、かつ、このうち線膨張係数の大きな部材の過剰な膨張変形を抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1の車両用接合構造体を車両に搭載した様子を模式的に表す説明図である。
【
図2】実施例1の車両用接合構造体を
図1中A-A位置で切断した様子を模式的に表す説明図である。
【
図3】実施例1の車両用接合構造体における接合部材を模式的に表す説明図である。
【
図4】第2部材が膨張した際の実施例1の車両用接合構造体を説明する説明図である。
【
図5】第2部材が膨張した際の実施例1の車両用接合構造体を説明する説明図である。
【
図6】第2部材が膨張した際の実施例1の車両用接合構造体を説明する説明図である。
【
図7】第2部材が膨張した際の実施例2の車両用接合構造体を説明する説明図である。
【
図8】第2部材が膨張した際の実施例2の車両用接合構造体を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x~y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
【0015】
本発明の車両用接合構造体は、
第1部材、前記第1部材よりも線膨張係数の大きな第2部材、および、前記第1部材と前記第2部材との隙間に配置され両者を接合する接合部材を有する。
【0016】
本発明の車両用接合構造体が既述した固定窓であれば、樹脂製パネルが第2部材に相当し、当該樹脂製パネルが嵌め込まれる開口が設けられたボデーの全体または一部が第1部材に相当する。
なお、本発明の車両用接合構造体における第2部材は固定窓の樹脂製パネルに限定されず、第1部材もまたボデーに限定されない。例えば、バンパやフロントグリル、加飾パネルや各種のガーニッシュ等を第2部材としても良い。そして、車両においてこれら各種の第2部材が接着される部材を第1部材としても良い。
【0017】
本発明の車両用接合構造体は、第2部材の体積変化量が大きくなる環境で用いられるものであるのが好ましく、特に、車両の外装部材であるのが好ましい。また、第2部材が大型である程、第2部材全体としての体積変化量が大きくなるため、第2部材は大型の部材であるのが好ましい。具体的には、第2部材は、サンルーフ、フロントウインドウ、リアウインドウ等の固定窓用の樹脂製パネルや、バンパ、フロントグリルとして好ましく具現化できる。
【0018】
ところで、本発明の車両用接合構造体において、高温時において膨張した第2部材は、径方向外方に向けて膨張変形するものの、接合部材および第1部材によって径方向内方に向けて相対的に引っ張られる。このため、第2部材の径方向外方への膨張は干渉され、その結果、第2部材は径方向外方に膨張するだけでなく高さ方向にも反り変形する。
つまり、高温時には、第1部材のうち接合部材に接着される部分(第1連結接着面と称する)と、第2部材のうち接合部材に接着される部分(第2連結接着面と称する)とは、その相対位置が第2部材の径方向にずれるだけでなく、高さ方向にもずれる。より詳しくは、高温時における第1連結接着面と第2連結接着面との高さ方向の距離は、第2部材の径方向内側においては離れ、第2部材の径方向外側においては近づく。
【0019】
このように、高温時に第2部材が膨張すると、第2部材の第2連結接着面と第1部材の第1連結接着面との相対的な位置にずれが生じる。当該相対位置のずれが過大となれば、第2部材における径方向外側の端部が第1部材における開口の周縁部等に突き当たり、第2部材や第1部材が損傷する虞がある。
【0020】
本発明の車両用接合構造体は、接合部材によって、上記した第2連結接着面と第1連結接着面との相対位置が過剰にずれることを抑制し、第2部材の径方向の過剰な膨張変形を抑制し得る。既述したように、接合部材は、第1部材と第2部材との隙間に配置され両者を接合する部材である。
本発明の車両用接合構造体における接合部材は、
上記第1部材に接着される第1接着面を有する第1接合部、
上記第2部材に接着される第2接着面を有し、上記第1接合部に対して高さ方向に離れて配置される第2接合部、
弾性変形可能であり上記第1接合部と上記第2接合部とを連結する連結部、および、
上記高さ方向における長さが上記連結部よりも短く、上記第1接合部、上記第2接合部、上記連結部の何れかである干渉基部に一体化されている干渉リブを有する。
【0021】
このような接合部材を有する本発明の車両用接合構造体においては、高温時における第2部材の膨張変形により第1部材の第1連結接着面と第2部材の第2連結接着面との相対位置がずれると、接合部材が変形して当該相対位置のずれを吸収する。より具体的には、第1部材の第1連結接着面と、第2部材の第2連結接着面と、の相対位置がずれると、当該第1連結接着面に接着される第1接合部の第1接着面と、第2連結接着面に接着される第2接合部の第2接着面と、の相対位置も変化し互いにずれる。接合部材のうち弾性変形可能な連結部は、第1接着面と第2接着面との相対位置のずれを許容する方向、つまり、第2部材の径方向内方から外方に向けて変形し得る。これにより、本発明の車両用接合構造体における接合部材は、第1部材と第2部材とを安定して接合することが可能である。
【0022】
また、本発明の車両用接合構造体における接合部材は、干渉基部、すなわち、第1接合部、第2接合部、連結部の何れかに一体化されている干渉リブを有する。当該干渉リブは、第2部材の膨張時に、第1接合部、第2接合部、連結部のうち上記の干渉基部以外のものの何れかに当接する。以下、必要に応じて、第2部材の膨張時に当該干渉リブが当接する「第1接合部、第2接合部、連結部のうち干渉基部以外のものの何れか」を、干渉当接部と称する場合がある。
【0023】
既述したように、第2部材の膨張時には、接合部材の第1接合部、第2接合部および連結部は変形または位置変化する。しかし、干渉リブに干渉当接部が当接することで、干渉当接部の更なる変形または位置変化が妨げられ、第1部材の第1連結接着面に対する第2部材の第2連結接着面の更なる位置変化が妨げられ、ひいては、第2部材の径方向外方に向けた更なる膨張が妨げられる。
【0024】
よって、本発明の車両用接合構造体における接合部材は、第1部材および第2部材を安定して接合し、かつ、このうち線膨張係数の大きな第2部材の径方向外方に向けた過剰な膨張変形を抑制することが可能である。
なお、接合部材の連結部は弾性変形可能であるため、低温時における第2部材の収縮変形により第1部材と第2部材との相対位置が元に戻ると、連結部が弾性回復することにより、接合部材における第1接合部と第2接合部との相対位置もまた元に戻る。これにより、本発明の車両用接合構造体における接合部材は、第2部材の収縮時にも、第1部材および第2部材を安定して接合することが可能である。
【0025】
本発明の車両用接合構造体は、このように、第2部材の径方向外方に向けた過剰な膨張を、接合部材の干渉リブによって抑制できる。つまり、本発明の車両用接合構造体における第2部材は、径方向外方に過剰に膨張し難い。このため、本発明の車両用接合構造体は、第2部材における外周端面と第1部材との隙間が小さい場合に、より効果的である。具体的には、第2部材が膨張していない通常時において、第2部材における外周端面と、第1部材のうちこれに対向する部分(対向面)との隙間g2は5mm以下とすることができる。
【0026】
以下、接合部材の詳細を説明する。また、以下、必要に応じて本発明の車両用接合構造体における接合部材を、本発明の接合部材、実施例の接合部材等と称する場合がある。
【0027】
上記の機能を発揮する接合部材は、連結部が弾性変形可能であることを必須とする。また、第2部材が膨張した際に干渉リブと干渉当接部とを信頼性高く当接させるためには、干渉リブは、連結部に対して、第2部材が膨張する方向すなわち第2部材の径方向の先側に配置されるのが良い。なお、第2部材が膨張する方向すなわち第2部材の径方向は、接合部材においては高さ方向に直交する方向である。以下、必要に応じて、当該方向を幅方向と称する。また、必要に応じて、「第2部材が膨張する方向の先側」を幅方向の先側と称する。
【0028】
第2部材の膨張時に連結部を充分に変形させるためには、連結部には適切な形状があると考えられる。先ず、上記の幅方向における連結部の長さは、当該幅方向および高さ方向と直交する長手方向における連結部の長さよりも短いのが好ましい。幅方向の長さが長手方向の長さよりも大きいと、連結部が幅方向に倒れ変形または曲げ変形し難くなり、干渉リブと干渉当接部とを信頼性高く当接させ難くなる場合があるためである。
【0029】
ところで、本発明の車両用接合構造体において、高さ方向における干渉リブの長さは、高さ方向における連結部の長さよりも短い。つまり、干渉リブが一体化されている干渉基部が第1接合部と第2接合部との一方である場合には、干渉リブは当該第1接合部と第2接合部との他方には一体化されない。干渉基部が連結部である場合には、干渉リブは第1接合部と第2接合部との一方とも一体化されても良いが、この場合にも、干渉リブは当該第1接合部と第2接合部との他方には一体化されない。勿論、干渉基部が連結部である場合には、干渉リブは第1接合部と第2接合部との何れとも一体化されなくても良い。
【0030】
高さ方向における干渉リブの長さが、高さ方向における連結部の長さよりも短いことにより、干渉リブを第1接合部および/または第2接合部から構造的に分断し、連結部の変形を許容することができる。連結部の変形が許容されることで、接合部材は、第2部材の膨張または収縮時にも、第1部材と第2部材とを安定して接合することが可能である。
なお、干渉リブと連結部との間に幅方向の隙間を設ける場合には、連結部および干渉リブを各々独立して機能させることが可能であり、連結部の変形の自由度をさらに向上させることが可能である。これにより、接合部材によって第1部材と第2部材とをさらに安定して接合することが可能である。
【0031】
なお、幅方向における干渉リブと連結部との距離L5は、上記した第2部材の外周端面と第1部材のうち当該外周端面に対向する部分(対向面)との隙間g2に応じて設定することが可能である。具体的には、両者の関係はL5<g2であるのが好ましく、0.1×g2≦L5≦1.0×g2の範囲内であるのがより好ましく、0.5×g2≦L5≦0.8×g2の範囲内であるのが特に好ましい。さらに、高さ方向における連結部の長さL2を、上記のL5に関連づけて設定することもできる。具体的には、両者の関係は、0.5×L5≦L2≦5.0×L5の範囲内であるのが好ましく、1.0×L5≦L2≦3.0×L5の範囲内であるのがより好ましい。例えば、g2が3mmであれば、L5は2mm程度であるのが特に好適であり、L2は4mm程度であるのが特に好適である。
【0032】
干渉リブの形状は特に限定しないが、第2部材の過剰な膨張時に干渉リブと干渉当接部とを信頼性高く当接させるためには、連結部における長手方向の多くの部分において、連結部の幅方向の先側に干渉リブが配置されるのが好ましい。
好ましくは、長手方向における連結部の長さを100%としたときに、連結部のうち幅方向の先側に干渉リブが配置されている部分の長さは、50%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、80%以上であるのがさらに好ましい。長手方向における連結部の全長において、連結部の幅方向の先側に干渉リブが配置されているのが特に好ましい。なお、干渉リブは、連結部の長手方向に沿って断続的に設けられても良いが、連続的に設けられるのがより好ましい。
【0033】
高さ方向における干渉リブの長さは、高さ方向における連結部の長さよりも小さければ良く、当該干渉リブの長さに上限や下限はない。但し、第2部材が過剰でない程度に径方向外方に向けて膨張した際に連結部を充分に変形させ、かつ、第2部材が径方向外方に向けて過剰に膨張した際に当該膨張を信頼性高く妨げるためには、干渉リブの長さに適切な範囲があると考えられる。具体的には、当該高さ方向における連結部の長さを100%としたときの干渉リブの長さの好適な範囲として、10%以上90%以下、25%以上80%以下、40%以上75%以下、50%以上70%以下の各範囲が挙げられる。
【0034】
接合部材における連結部は弾性変形可能である。このような連結部の材料としては、熱可塑性ポリウレタン、発泡ポリウレタン、各種のフッ素樹脂、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、各種の熱可塑性エラストマ、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ウレタンゴム等の各種ゴム等を例示し得る。
【0035】
連結部の形状は特に限定しないが、連結部の長手方向の長さは、後述する第1接合部および第2接合部の長手方向の長さに比べて過小でないのが好ましい。具体的には、第1接合部および第2接合部における長手方向の多くの部分が、連結部によって連結されるのが好ましい。
好ましくは、長手方向における第1接合部および第2接合部の長さを100%としたときに、当該第1接合部および第2接合部が連結部によって連結されている部分の長さは、70%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましく、90%以上であるのがさらに好ましい。第1接合部および第2接合部はその長手方向の全長にわたって連結部によって連結されているのが特に好ましい。
また、連結部の長手方向の長さは、連結部の幅方向および高さ方向において一定であるのが好ましい。同様に、連結部の幅方向の長さは、連結部の長手方向および高さ方向において一定であるのが好ましく、連結部の高さ方向の長さは、連結部の長手方向および幅方向において一定であるのが好ましい。連結部を狙い通りに変形させるためである。
【0036】
本発明の接合部材における連結部以外の部分は、弾性変形可能であっても良いし、弾性変形不能であっても良い。例えば、接合部材における連結部以外の部分は、連結部とは異なる材料からなり、弾性変形不能であっても良い。このような接合部材は、例えば、インサート成形により製造することが可能である。製造の容易性を考慮すると、接合部材は同一材料を用いた一体成形品であるのが好ましく、この観点からは、接合部材の全体が弾性変形可能であるのが好ましいといい得る。
【0037】
第1接合部および第2接合部の形状は特に限定されないが、第1部材に接着される第1接着面の面積、および、第2部材に接着される第2接着面の面積が充分な大きさであるのが好ましい。より具体的には、第1接着面の面積s1および第2接着面の面積s2は、連結部を幅方向および長手方向に平行な平面で切断した断面積s3よりも大きいのが好ましい。当該s1、s2、s3の好ましい関係としては、1.2×s3≦s1かつ1.2×s3≦s2、1.5×s3≦s1かつ1.5×s3≦s2、2.0×s3≦s1かつ2.0×s3≦s2の各範囲を例示し得る。
【0038】
第1接合部の第1接着面を第1部材に接着する接着剤、および、第2接合部の第2接着面を第2部材に接着する接着剤は、第1接合部、第1部材、第2接合部および第2部材の材料や形状に応じて適宜適切に選択すれば良い。第1接着面を第1部材に接着する接着剤と第2接着面を第2部材に接着する接着剤とは同じものであっていても良いし、異なるものであっても良い。
当該接着剤は弾性を有するものであっても良いし、弾性を有さないものであっても良いが、第1部材と第2部材との相対位置のずれに対応することを考慮すると、弾性を有する接着剤であるのが好ましい。
【0039】
第1接合部の第1接着面を第1部材に接着する接着剤、および、第2接合部の第2接着面を第2部材に接着する接着剤の具体例としては、ウレタン樹脂を主成分とするウレタン系接着剤、シロキサン結合を主鎖に有しアルキル基を側鎖に有するシリコーン系接着剤や変性シリコーン系接着剤、エーテル結合を主鎖に有しシリル基を側鎖に有する変成シリコーン系接着剤等を例示できるが、これに限定されるものではない。
必要に応じて、第1部材および/または第2部材の表面に、接着剤用のプライマー層を形成しても良い。さらに、当該プライマー層を形成するかわりに、接着剤として、例えば特許文献4に紹介されているような、プライマー層を不要とし得るウレタン系接着剤を用いても良い。
【0040】
本発明の車両用接合構造体における第1部材および第2部材は、互いに線膨張係数の異なるものであれば良く、第1部材の材料は当該第1部材に組み合わせる第2部材の材料に応じて適宜選択すれば良い。第2部材の材料についても同様に、当該第2部材に組み合わせる第1部材の材料に応じて適宜選択すれば良い。例えば、第2部材はポリカーボネート等の樹脂製とすることができる。また、第2部材は、樹脂製の基体の表面にコート層を形成した所謂樹脂ガラス製としても良い。ポリカーボネートの線膨張係数は6.5~6.6×10-5℃程度であり、樹脂ガラスの線膨張係数も同程度である。
【0041】
他方、第1部材の材料は、炭素鋼等の鋼鉄やアルミニウム合金、ガラス繊維や炭素繊維等にエポキシ樹脂やフェノール樹脂を含浸させた繊維強化プラスチック(FRP)等とすることができる。鋼鉄の線膨張係数は1.2×10-5℃程度、アルミニウム合金の線膨張係数は2.3×10-5℃程度、FRPの線膨張係数は概ね1.0×10-5℃以下である。
【0042】
本発明の車両用接合構造体は、第1部材と第2部材との線膨張係数の差が大きい場合に特に効果的である。具体的には、第2部材の線膨張係数の好ましい範囲として、第1部材の線膨張係数の1.5倍以上、1.75倍以上、2倍以上、2.25倍以上、2.5倍以上、3倍以上の各範囲を例示できる。第2部材の線膨張係数の好ましい範囲に上限はないが、強いていえば、第1部材の線膨張係数の10倍以下とすることができる。
【0043】
第2部材が樹脂ガラス製である場合、基体の材料およびコート層の材料は、本発明の車両用接合構造体の用途に応じて、適宜選択すれば良い。例えば、第2部材が固定窓用の樹脂製パネルであれば、基体の材料としては、上記したポリカーボネートの他にも、ポリエステル、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合合成樹脂等を好ましく使用できる。基体は、射出成形や射出プレス成形等の一般的な方法で成形し得る。
【0044】
当該基体に形成するコート層は、第2部材の硬度や耐擦傷性等を向上させて第2部材を汚れや損傷から保護するためのハードコート層とすることができる。
ハードコート層としては、例えば、シリコン系化合物を含有する紫外線硬化型のアクリル樹脂からなるものや、フッ素化合物を含有する紫外線硬化型のアクリル樹脂からなるものを例示することができる。ハードコート層は、紫外線硬化型に限らず熱硬化型のものであっても良いし、アクリル樹脂系のものに限らずメラミン樹脂系やウレタン樹脂系のものであっても良い。
コート層を形成する方法は特に限定されず、フロー塗装やディップ塗装等の一般的な方法を採用し得る。
【0045】
さらに、コート層の上層に接着剤用のプライマー層を形成しても良い。プライマー層は、基体の材料、コート層の材料および接着剤の材料に応じて適宜適切に選択すれば良い。例えば、基体がポリカーボネート製であり、コート層がアクリル樹脂系のハードコート層であり、接着剤がウレタン系接着剤である場合には、ウレタンプライマーによりプライマー層を形成するのが好ましい。
【0046】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。また、実施形態及び以下の実施例を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施することができる。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例等によって限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
実施例1の車両用接合構造体は、固定窓の一種であるサンルーフである。
実施例1の車両用接合構造体を車両に搭載した様子を模式的に表す説明図を
図1に示す。実施例1の車両用接合構造体を
図1中A-A位置で切断した様子を模式的に表す説明図を
図2に示す。実施例1の車両用接合構造体における接合部材を模式的に表す説明図を
図3に示す。第2部材が膨張した際の実施例1の車両用接合構造体を説明する説明図を
図4~
図6に示す。なお、
図3中の吹き出し内には、本体部の前側部分を
図3中のB-B位置で切断した断面を模式的に示す。
以下、上、下、左、右、前、後とは、
図1に示す上、下、左、右、前、後を指すものとする。また、前後方向は車両の進行方向と一致し、左右方向は車両の車幅方向と一致する。
【0049】
実施例1の車両用接合構造体1は、第1部材2、第2部材3および接合部材4を有する。
図1に示すように、車両9のボデー90におけるルーフ91には、開口10が設けられている。第1部材2は、ボデー90における当該開口10の周縁部であり、略枠状をなす。第2部材3は、当該開口10に嵌め込まれた樹脂製パネルである。開口10は長手方向を前後に向ける略矩形をなし、当該開口10の周縁部である第1部材2、および、当該開口10に嵌め込まれる第2部材3もまた、その長手方向を前後に向ける。なお、実施例1の車両用接合構造体1における第2部材3の前後方向すなわち長手方向の長さは約1500mmであり、左右方向すなわち短手方向の長さは約1200mmである。
【0050】
図2に示すように、第1部材2と第2部材3との間には隙間g1があり、第1部材2と第2部材3とは当該隙間g1に配置される接合部材4によって接着されている。
【0051】
第1部材2は、全体として、開口10の周方向に沿って延びる環状をなす。
図2に示すように、第1部材2は、開口10に隣接する連結接着部20と、当該連結接着部20に隣接する対向部21と、当該対向部21に隣接する一般部22とを有する。連結接着部20は、開口10の周方向に連続する環状をなし、開口10の外縁を区画し、当該開口10の径方向に延びる。対向部21は、連結接着部20における径方向外側の端部に連続し、連結接着部20の周方向に連続する環状をなし、上下方向に延びる。一般部22は、対向部21の上端に連続し、開口10および対向部21の径方向に延びる。換言すると、連結接着部20は、一般部22よりも一段下がった位置にあり、上下方向に延びる対向部21によって一般部22に接続されている。このため、第1部材2における開口10の周縁部分は略階段状をなす。
第1部材2は鋼鉄製である。
【0052】
第2部材3は、開口10より僅かに大きい略矩形の板状をなす。第2部材3は、既述したように樹脂製パネルであり、より具体的には、ポリカーボネート製の基体にハードコート層が形成された、所謂樹脂ガラス製である。接合部材はウレタンゴム製である。
【0053】
実施例1の車両用接合構造体1では、第2部材3における外周部30と、第1部材2における開口10の周縁部(すなわち連結接着部20)とが、接合部材4により接合される。
図2に示すように、このとき、連結接着部20の上面である第1連結接着面20sは第2部材3における外周部30の下面すなわち第2連結接着面30sに対向し、当該第1連結接着面20sと第2連結接着面30sとは各々接合部材4に接触する。また、このとき、対向部21の内周面である対向面21sは、第2部材3の外周端面3sに対向する。対向面21sと外周端面3sとの隙間g2は、3mm程度と非常に小さい。参考までに、第1連結接着面20sと第2連結接着面30sとの上下方向の距離は5mm程度である。
【0054】
接合部材4は、第1接合部41、第2接合部42、連結部43および干渉リブ44を有する本体部40と、2つの接着剤層45とを有する。より詳しくは、本体部40は、第1部材2における第1連結接着面20sと、第2部材3における第2連結接着面30sとの隙間g1に配置され、接着剤層45によって第1部材2および第2部材3に接着されることにより、第1部材2および第2部材3を接合する。接着剤層45を構成する接着剤は、ウレタン系接着剤である。
【0055】
図3に示すように、本体部40は、全体として略環状をなす長尺材である。前側部分および後側部分においては、本体部40は長手方向を左右に向ける。左側部分および右側部分においては、本体部40は長手方向を前後に向ける。なお、本体部40の径方向は、第2部材3の径方向、つまり、第2部材3が膨張する方向と一致する。当該本体部40の径方向を
図3中に白抜き矢印で示す。
第1接合部41および第2接合部42は略同形の環状かつ平板状をなし、互いに上下に離れて配置される。連結部43もまた環状をなし、第1接合部41および第2接合部42をこれらの長手方向の全長で連結する。
【0056】
第1接合部41および第2接合部42と比べて、連結部43の内径は大きく、外径は小さく、かつ、高さすなわち上下方向の長さは大きい。
なお、幅方向における連結部43の長さL1は、連結部43の高さ方向および長手方向に略一定である。また、高さ方向における連結部43の長さL2は、連結部43の幅方向および長手方向に略一定である。なお、図示しないが、長手方向における連結部43の長さは、連結部43の幅方向および高さ方向に略一定である。
【0057】
連結部43に対して、第2部材3および本体部40の径方向外側、つまり、第2部材3が膨張する方向の先側には、干渉リブ44が配置されている。換言すると、連結部43と干渉リブ44は、本体部40ひいては接合部材4の幅方向に配列し、このうち干渉リブ44は連結部43に対して幅方向の先側に配置されている。
干渉リブ44は、第1接合部41の上面に一体化され、上方に延びる。したがって、実施例1の車両用接合構造体1における接合部材4の干渉基部47は、第1接合部41である。
干渉リブ44は、連結部43の長手方向の全長にわたって、連結部43の幅方向の先側に配置されている。
【0058】
高さ方向における干渉リブ44の長さL4は、同じく高さ方向における連結部43の長さL2よりも小さく、干渉リブ44の上端部と、第2接合部42の下面との間には隙間がある。参考までに、連結部43の長さL2は4mm程度であり、干渉リブ44の長さL4は連結部43の長さL2の60%程度である。また、干渉リブ44と連結部43とは、幅方向に離れている。幅方向における干渉リブ44と連結部43との距離L5は2mm程度である。
【0059】
図4に示すように、第1接合部41の第1接着面41sは、接着剤層45によって、第1部材2の連結接着部20における第1連結接着面20sに接着される。また、第2接合部42の第2接着面42sは、接着剤層45によって、第2部材3の外周部30における第2連結接着面30sに接着される。これにより、第1部材2と第2部材3とは接合され一体化される。
【0060】
図4に示すように、高温時において第2部材3が膨張変形すると、第2部材3は径方向aすなわち対向面21sに向けて膨張し、かつ、上方向にも反り変形する。このとき、接合部材4には、第2部材3の径方向外方、すなわち、接合部材4の幅方向の先側に向けた応力(
図4中矢印a)に加えて、接合部材4を中心とする回転方向の応力(
図4中矢印b1、b2)も作用する。これにより接合部材4の連結部43は弾性変形する。より具体的には、
図5に示すように連結部43は幅方向の先側に向けて倒れ変形する、および/または、
図6に示すように連結部43は幅方向の先側に向けて倒れつつ曲げ変形する。
【0061】
ここで、実施例1の車両用接合構造体1における接合部材4は、連結部43の幅方向の先側に配置される干渉リブ44を有する。このため、
図5および
図6に示すように、第2部材3が過剰に膨張し、連結部43が過剰に変形した場合には、第1接合部41、第2接合部42および連結部43のうち、干渉リブ44が一体化されている干渉基部47、すなわち第1接合部41以外のものの何れかに干渉リブ44が当接する。
具体的には、
図5に示すように連結部43が幅方向の先側に向けて大きく倒れ変形する場合には、干渉リブ44は連結部43に当接する。したがって、この場合には当該連結部43が干渉リブ44に当接する干渉当接部46となる。また、
図6に示すように、連結部43が幅方向の先側に倒れ変形しつつ曲げ変形する場合には、干渉リブ44は第2接合部42に当接する。したがって、この場合には第2接合部42が干渉リブ44に当接する干渉当接部46となる。
【0062】
このように、干渉リブ44が干渉当接部46に当接することで、接合部材4の更なる変形が抑制され、ひいては第2部材3の径方向外方に向けた更なる膨張変形が抑制される。よって、実施例1の車両用接合構造体1によると、線膨張係数の大きな第2部材3の過剰な膨張変形を抑制し得る。また、第2部材3が過剰でない程度に膨張変形した場合には、連結部43が変形することにより、第1部材2における第1連結接着面20sと第2部材3における第2連結接着面30sとの相対位置のずれを吸収し、これにより、第1部材2と第2部材3とを安定して接合し得る。
【0063】
実施例1の車両用接合構造体1においては、第2部材3をその周方向全周で第1部材2に接着したが、本発明の車両用接合構造体1においては、第2部材3の一部のみを接合部材4により第1部材2に接着しても良い。第2部材3の他の部分については、必要に応じて、通常の接着剤等で第1部材2またはその他の相手部材に接着しても良い。この場合には、第2部材3のうち、長手方向の端部(実施例1においては前後方向の端部)を、当該第2部材3の短辺に沿って、接合部材4により接着するのが良い。第2部材3における長手方向の端部は、第2部材3のうち径方向の位置変化量が特に大きく顕れる部分である。このような部分を接合部材4により接合することで、第2部材3の径方向外方への膨張変形に効果的に対応することが可能である。
【0064】
(実施例2)
実施例2の車両用接合構造体は、接合部材の形状以外は、実施例1と同じものである。
第2部材が膨張した際の実施例2の車両用接合構造体を説明する説明図を
図7および
図8に示す。
以下、実施例1の車両用接合構造体と相違する部分を中心に、実施例2の車両用接合構造体を説明する。
【0065】
図7に示すように、実施例2の車両用接合構造体1における接合部材4は、実施例1の車両用接合構造体1における接合部材4と同様に、第1接合部41、第2接合部42、連結部43および干渉リブ44を有する本体部40と、2つの接着剤層45とを有する。第1接合部41および第2接合部42は、実施例1の車両用接合構造体1における第1接合部41および第2接合部42と同様に、各々、接着剤層45によって第1部材2の連結接着部20および第2部材3の外周部30に接着される。これにより、第1部材2と第2部材3とは接合され一体化される。
【0066】
実施例2の車両用接合構造体1においては、干渉リブ44は第2接合部42に一体化されている。つまり、実施例2の車両用接合構造体1における接合部材4の干渉基部47は、第2接合部42である。干渉リブ44は、第2接合部42の下面から下方に延びる。干渉リブ44の下端部と、第1接合部41の上面との間には隙間がある。干渉リブ44の長さL4は連結部43の長さL2の70%程度である。実施例2の車両用接合構造体1においても、干渉リブ44と連結部43とは幅方向に離れており、干渉リブ44と連結部43との距離L5は実施例1と同様に2mm程度である。
また、第1接合部41における幅方向先側の端部は、第2接合部42における幅方向先側の端部よりも、さらに幅方向先側にまで延びている。
【0067】
図8に示すように、高温時において第2部材3が過剰に膨張変形し、接合部材4の連結部43が幅方向の先側に向けて過剰に倒れ変形すると、干渉リブ44が干渉当接部46である第1接合部41に当接する。これにより、接合部材4の更なる変形が抑制され、ひいては第2部材3の径方向外方に向けた更なる膨張変形が抑制される。よって、実施例2の車両用接合構造体1によっても、第1部材2と第2部材3とを安定して接合でき、かつ、第2部材3の過剰な膨張変形を抑制し得る。
【符号の説明】
【0068】
1:車両用接合構造体
2:第1部材
20s:第1連結接着面
21s:対向面
3:第2部材
3s:第2部材の外周端面(第2部材の端面)
4:接合部材
41:第1接合部
41s:第1接着面
42s:第2接着面
42:第2接合部
43:連結部
44:干渉リブ
45:接着剤層(接着剤)
46:干渉当接部(第1接合部、第2接合部、連結部のうち干渉基部以外のもの)
47:干渉基部
g1:第1部材と第2部材との隙間
g2:対向面と第2部材の端面との隙間