(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、プリプレグおよび繊維強化複合材料
(51)【国際特許分類】
C08G 59/50 20060101AFI20221227BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20221227BHJP
C08G 59/32 20060101ALI20221227BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20221227BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
C08G59/50
C08G59/40
C08G59/32
C08L63/00 A
C08J5/24 CFC
(21)【出願番号】P 2019507971
(86)(22)【出願日】2019-02-06
(86)【国際出願番号】 JP2019004260
(87)【国際公開番号】W WO2019167579
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2018032782
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三角 潤
(72)【発明者】
【氏名】町田 銀平
(72)【発明者】
【氏名】坂田 宏明
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-181132(JP,A)
【文献】特開昭62-184015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08L 63/00ー63/10
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも次の構成要素[A]~[C]を含み、以下の条件(1)と(2)を満たし、さらに
ポリエーテルスルホンを含む熱硬化性樹脂組成物。
[A]
グリシジルアミン型エポキシ、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシから選ばれる少なくとも1種のグリシジル基を2つ以上有するエポキシ樹脂
[B]
ビスフェノールA型シアネートエステルとフェノールノボラック型シアネートエステルから選ばれる少なくとも1種のシアネート基を2つ以上有するシアネートエステル樹脂
[C]
アミノ基を二つ以上有する芳香族アミン化合物
(1)0.25≦熱硬化性樹脂組成物中のグリシジル基のモル数/熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数≦1.5
(2)0.05≦熱硬化性樹脂組成物中のアミノ基に含まれる活性水素のモル数/熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数≦0.5
【請求項2】
構成要素[C]のアミン化合物が25℃において固形である請求項
1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
構成要素[C]のアミン化合物が、ジアミノジフェニルスルホンまたはジアミノジフェニルケトンを含む請求項
2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
構成要素[A]のグリシジル基を2つ以上有するエポキシ樹脂が、グリシジル基を3個以上含むグリシジルアミン型エポキシ樹脂であり、全エポキシ樹脂100質量部に対し、上記グリシジル基を3個以上含むグリシジルアミン型エポキシ樹脂を40~100質量部含む請求項1から
3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
ポリエーテルスルホンを熱硬化性樹脂組成物中に1~30質量%含む請求項1から
4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
昇温速度5℃/分での示差走査熱量測定による発熱曲線において、100mW/g以上の発熱ピークが160℃~200℃に存在する請求項1から
5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
周波数0.5Hzの動的粘弾性試験による30℃の貯蔵弾性率が、0.1~100,000Paである請求項1から
6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物が強化繊維に含浸されてなるプリプレグ。
【請求項9】
請求項
8に記載のプリプレグが硬化されてなる繊維強化複合材料。
【請求項10】
強化繊維と請求項1から
7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物が硬化されてなる樹脂硬化物を含んでなる繊維強化複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿後の高温環境下の力学特性および耐熱性に優れ、短時間で硬化可能な優れた反応性を有する熱硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物が強化繊維に含浸されてなる、室温での取扱性(タック性)に優れたプリプレグ、および熱硬化性樹脂組成物と強化繊維よりなる繊維強化複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭素繊維、ガラス繊維などの強化繊維と、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシアネートエステル樹脂などの熱硬化性樹脂からなる繊維強化複合材料は、軽量でありながら、強度や剛性などの力学特性や耐熱性、また耐食性に優れているため、航空・宇宙、自動車、鉄道車両、船舶、土木建築およびスポーツ用品などの数多くの分野に応用されてきた。特に、高性能が要求される用途では、連続した強化繊維を用いた繊維強化複合材料が用いられ、強化繊維としては比強度、比弾性率に優れた炭素繊維が用いられている。近年、繊維強化複合材料の使用例が増えるに従い、その要求特性は厳しくなっている。特に航空宇宙用途の構造材料に適用する場合は、空気との摩擦により表面は高温となり、さらに雲中の水分を吸湿するため、吸湿後の高温環境下においても十分な物性を発現することが要求される。
【0003】
一般的なエポキシ樹脂系複合材料は、吸湿しやすい性質があり、吸湿後の高温環境下での力学特性および耐熱性が十分ではない傾向にあった。また、一般的なシアネートエステル樹脂系複合材料は、吸湿しにくく、吸湿後の高温環境下でも優れた力学特性を有するが、一方で反応性が低いため、成形に200℃以上の高温で長時間を必要とする課題があった。さらに、シアネートエステル樹脂は、一般的に結晶性が高く、室温付近で固形であるため、強化繊維に含浸させてプリプレグとした際のタック性が低く、プリプレグとしての取扱性が悪いという課題もあった。そのため、吸湿後の高温環境下の力学特性および耐熱性に優れ、低温または短時間で硬化可能な優れた反応性を有し、さらにプリプレグとしての取扱性(タック性)にも優れる熱硬化性樹脂組成物の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
ここで、特許文献1および2では、エポキシ樹脂にシアネートエステル樹脂を配合することで、室温付近の取扱性(タック性)に優れたプリプレグが得られることが示されている。また、特許文献3では、シアネートエステル樹脂に、アミン化合物を配合することで、反応性が向上することが示されている。特許文献4では、エポキシ樹脂にシアネートエステル樹脂と液状のアミン化合物を配合することで、室温での良好なポットライフと、短時間で硬化が可能となる速硬化性の両立が可能となることが示されている。
【文献】特開昭62-185720号公報
【文献】特表2005-506394号公報
【文献】特開2017-132896号公報
【文献】国際公開第2017/038603号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および2に示される熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂とシアネートエステル化合物の反応性は乏しく、硬化時間の短縮効果は十分ではなかった。特許文献3に記載のアミン化合物とシアネートエステル樹脂の混合物では、シアネートエステル樹脂単独の反応により形成されるトリアジン環構造が多く存在するため、吸湿後の高温環境下の力学特性には優れるが、吸湿後のガラス転移温度が十分ではなかった。特許文献4に記載の熱硬化性樹脂組成物は、反応性が高いため、80℃を超える高温での粘度上昇が著しく、樹脂混練工程や、プリプレグ等の中間基材製造工程等で作業性や硬化物の物性を低下させるという課題があった。さらに、得られる硬化物は、吸湿後の高温環境下での力学特性および耐熱性が十分ではなかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、吸湿後の高温環境下の力学特性および耐熱性に優れ、短時間で硬化可能な優れた反応性を有する熱硬化性樹脂組成物と、室温でのタック性に優れたプリプレグおよび繊維強化複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために本発明の熱硬化性樹脂組成物は、次の構成を有する。すなわち、
少なくとも次の構成要素[A]~[C]を含み、以下の条件(1)と(2)を満たし、さらにポリエーテルスルホンを含む熱硬化性樹脂組成物、である。
[A]グリシジルアミン型エポキシ、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシから選ばれる少なくとも1種のグリシジル基を2つ以上有するエポキシ樹脂
[B]ビスフェノールA型シアネートエステルとフェノールノボラック型シアネートエステルから選ばれる少なくとも1種のシアネート基を2つ以上有するシアネートエステル樹脂
[C]アミノ基を二つ以上有する芳香族アミン化合物
(1)0.25≦熱硬化性樹脂組成物中のグリシジル基のモル数/熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数≦1.5
(2)0.05≦熱硬化性樹脂組成物中のアミノ基に含まれる活性水素のモル数/熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数≦0.5。
【0008】
また、本発明のプリプレグは、次の構成を有する。すなわち、
上記の熱硬化性樹脂組成物が強化繊維に含浸されてなるプリプレグ、である。
【0009】
さらに、本発明の繊維強化複合材料は、次のいずれかの構成を有する。すなわち、
上記のプリプレグが硬化されてなる繊維強化複合材料、
または、
強化繊維と上記の熱硬化性樹脂組成物が硬化されてなる樹脂硬化物を含んでなる繊維強化複合材料、である。
【0010】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、構成要素[C]のアミン化合物が、アミノ基を二つ以上有する芳香族アミン化合物であることが好ましい。
【0011】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、構成要素[C]のアミン化合物が25℃において固形であることが好ましい。
【0012】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、構成要素[C]のアミン化合物が、ジアミノジフェニルスルホンまたはジアミノジフェニルケトンを含むことが好ましい。
【0013】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、構成要素[A]のグリシジル基を2つ以上有するエポキシ樹脂が、グリシジル基を3個以上含むグリシジルアミン型エポキシ樹脂であり、全エポキシ樹脂100質量部に対し、上記グリシジル基を3個以上含むグリシジルアミン型エポキシ樹脂を40~100質量部含むことが好ましい。
【0014】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、構成要素[B]のシアネート基を2つ以上有するシアネートエステル樹脂が、全シアネートエステル樹脂100質量部に対して式(1)で表されるシアネートエステル樹脂を20~100質量部含むことが好ましい。
【0015】
【0016】
(式(1)中、R1~R4は、水素原子、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、およびハロゲン原子からなる群から選ばれた少なくとも一つから選ばれ、nは2~20を表す。)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ポリエーテルスルホンを熱硬化性樹脂組成物中に1~30質量%含むことが好ましい。
【0017】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、昇温速度5℃/分での示差走査熱量測定による発熱曲線において、100mW/g以上の発熱ピークが160℃~200℃に存在することが好ましい。
【0018】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、周波数0.5Hzの動的粘弾性試験による30℃の貯蔵弾性率が、0.1~100,000Paであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明において、エポキシ樹脂とシアネートエステル樹脂とアミン化合物を含むことで、力学特性と耐熱性に優れた熱硬化性樹脂硬化物が得られる。一般的なエポキシ樹脂とアミン化合物の反応により形成されるエポキシ樹脂硬化物は、吸湿性が高い傾向にあるのに対し、本発明の熱硬化性樹脂硬化物は吸湿性が低く、吸湿後の高温環境下においても、優れた力学特性と耐熱性を発現する。
【0020】
さらに、アミン化合物のシアネートエステル樹脂への求核反応によって生じる発熱により、エポキシ樹脂とシアネートエステル樹脂の反応が促進され、全体の反応が短時間で完了する効果が得られる。また、シアネートエステル樹脂に、エポキシ樹脂とアミン化合物を配合することで、シアネートエステル樹脂の結晶性が低下し、室温においても良好なタック性を示すため、本発明の熱硬化性樹脂組成物を強化繊維に含浸させてなるプリプレグは良好なタック性を示す。
【0021】
本発明の熱硬化性樹脂組成物およびプリプレグを硬化してなる繊維強化複合材料は、エポキシ樹脂およびアミン化合物を含有しない、従来のシアネートエステル樹脂をマトリックス樹脂として用いた繊維強化複合材料と比較して、短時間の成形が可能となるため、航空機構造部材、風車の羽根、自動車外板およびICトレイやノートパソコンの筐体などのコンピュータ用途等の適用製品の成形時間および成形コストを大きく低減させることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、次の構成を有する。
少なくとも次の構成要素[A]~[C]を含み、以下の条件(1)と(2)を満たす熱硬化性樹脂組成物。
[A]グリシジル基を2つ以上有するエポキシ樹脂
[B]シアネート基を2つ以上有するシアネートエステル樹脂
[C]アミン化合物
(1)0.25≦熱硬化性樹脂組成物中のエポキシ基のモル数/熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数≦1.5
(2)0.05≦熱硬化性樹脂組成物中のアミノ基に含まれる活性水素のモル数/熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数≦0.5。
【0023】
本発明で用いる構成要素[A]は、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂である。グリシジル基の数が2個に満たないと、加熱硬化して得られる熱硬化性樹脂硬化物のガラス転移温度を十分に高くすることができない。本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルなどの臭素化エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、N,N,O-トリグリシジル-m-アミノフェノール、N,N,O-トリグリシジル-p-アミノフェノール、N,N,O-トリグリシジル-4-アミノ-3-メチルフェノール、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-メチレンジアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-2,2’-ジエチル-4,4’-メチレンジアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジル-o-トルイジンなどのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、レゾルシンジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどを挙げることができる。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、全エポキシ樹脂100質量部に対し、グリシジル基を3個以上含むグリシジルアミン型エポキシ樹脂を40~100質量部含むことで、高いガラス転移温度や弾性率を有する硬化物が得られるため、より好ましい態様となる。グリリシジル基を3個以上含むグリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、N,N,O-トリグリシジル-m-アミノフェノール、N,N,O-トリグリシジル-p-アミノフェノール、N,N,O-トリグリシジル-4-アミノ-3-メチルフェノール、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-メチレンジアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-2,2’-ジエチル-4,4’-メチレンジアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミンなどを挙げることができる。
【0024】
これらのエポキシ樹脂は、単独で用いてもよいし、複数種組み合わせて用いてもよい。任意の温度において流動性を示すエポキシ樹脂と、任意の温度において流動性を示さないエポキシ樹脂とを組み合わせて用いることは、得られるプリプレグを熱硬化する時のマトリックス樹脂の流動性制御に有効である。例えば、熱硬化時において、マトリックス樹脂がゲル化するまでの間に示す流動性が小さいと、強化繊維の配向の乱れが生じにくく、マトリックス樹脂が系外に流れ出にくいため、繊維質量含有率を所定の範囲内に制御しやすく、その結果、繊維強化複合材料としての良好な力学特性を発現する傾向にある。また、任意の温度において様々な粘弾性挙動を示すエポキシ樹脂を複数種組み合わせることは、得られるプリプレグのタック性やドレープ性を適切なものとするためにも有効である。
【0025】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、耐熱性や機械物性に対して著しい低下を及ぼさない範囲であれば、構成要素[A]以外のエポキシ樹脂、例えば1分子中に1個のみのグリシジル基を有するモノエポキシ樹脂や、脂環式エポキシ樹脂などを適宜含有させることができる。
【0026】
本発明に含まれる構成要素[B]は、2つ以上のシアネート基を有するシアネートエステル樹脂である。シアネート基の数が2個に満たないと、加熱硬化して得られる熱硬化性樹脂硬化物のガラス転移温度を十分に高くすることができない。本発明で用いられるシアネートエステル樹脂としては、例えばビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビフェニル骨格を有するシアネートエステル樹脂、ナフタレン骨格を有するシアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するシアネートエステル樹脂、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、クレゾールノボラック型シアネートエステル樹脂、フェノールフェニルアラルキル型シアネートエステル樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトールフェニルアラルキル型シアネートエステル樹脂などを挙げることができる。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、全シアネートエステル樹脂100質量部に対し、式(1)で表されるシアネートエステル樹脂を20~100質量部含むことで、高い吸湿後のガラス転移温度を有する硬化物が得られるため、好ましい態様となる。これらのシアネートエステル樹脂は、単独で用いてもよいし、複数種組み合わせて用いてもよい。
【0027】
【0028】
(式(1)中、R1~R4は、水素原子、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、およびハロゲン原子からなる群から選ばれた少なくとも一つから選ばれ、nは2~20を表す。)
本発明における構成要素[C]は、アミン化合物である。25℃で固形のアミン化合物であると、樹脂混練工程や、プリプレグ等の中間基材製造工程等での良好なポットライフが得られるため好ましい。さらに、2個以上のアミノ基を有する芳香族アミン化合物であると、架橋構造を形成することができ、得られる化学構造も剛直となるため、高いガラス転移温度を有する熱硬化性樹脂硬化物が得られ、好ましい。構成要素[C]としては、例えば、3,3’-ジイソプロピル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジ-t-ブチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジイソプロピル-4,4’-ジアミノジフェニルケトン、3,3’-ジ-t-ブチル-4,4’-ジアミノジフェニルケトン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルケトン、4,4’-ジアミノジフェニルケトン、3,3’-ジアミノジフェニルケトン、3,3’-ジイソプロピル-4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジ-t-ブチル-4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミンなどが挙げられる。
【0029】
中でも、ジアミノジフェニルスルホンおよびジアミノジフェニルケトンは、電子吸引性の官能基を有するため、アミンの求核性が適度に抑制され、樹脂混練工程や、プリプレグ等の中間基材製造工程等での良好なポットライフが得られる。さらに、ジアミノジフェニルスルホンおよびジアミノジフェニルケトンは、剛直な化学構造を有するため、高い耐熱性を有する熱硬化性樹脂硬化物が得られ、好ましい。これらのアミン化合物は、単独で用いてもよいし、複数種組み合わせて用いてもよい。また、他成分との混合時は粉体、液体いずれの形態でもよく、粉体と液体のアミン化合物を混合して用いても良い。
【0030】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、次の(1)と(2)を同時に満たす。
(1)0.25≦熱硬化性樹脂組成物中のグリシジル基のモル数/熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数≦1.5
(2)0.05≦熱硬化性樹脂組成物中のアミノ基に含まれる活性水素のモル数/熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数≦0.5。
【0031】
シアネート基とエポキシ樹脂中のグリシジル基が反応することで、オキサゾリドン環が形成され、吸湿後の高温環境下において優れた力学特性と耐熱性を発現する。さらに、アミン化合物のシアネートエステル樹脂への求核反応によって生じる発熱により、エポキシ樹脂とシアネートエステル樹脂の反応が促進され、全体の反応が短時間で完了する効果が得られる。また、アミン化合物とシアネートエステル樹脂の反応により、イソウレア構造が形成されるが、イソウレア構造の水素結合性により、室温での力学特性が向上する。一方、イソウレア構造の水素結合性に起因して、吸湿量が増加する傾向にある。(1)において、当該比が0.25未満であると、プリプレグとしてのタック性が不十分となる。一方、当該比が1.5を超えると、吸湿後の高温環境下における力学特性と耐熱性が不十分となる。
【0032】
(2)において、当該比が0.05以上未満であると、熱硬化性樹脂組成物の反応性が向上する効果が得られず、0.5を超えると、80℃を超える高温での粘度上昇を抑制することができず、また、吸湿後の高温環境下における力学特性と耐熱性が不十分となる。
【0033】
ここで、構成要素[A]のエポキシ樹脂が有するグリシジル基のモル数は以下の通り計算する。
構成要素[A]のエポキシ樹脂が有するグリシジル基のモル数=構成要素[A]のエポキシ樹脂の質量部数/構成要素[A]のエポキシ樹脂のエポキシ当量。
【0034】
構成要素[A]のエポキシ樹脂が2成分以上のエポキシ樹脂を含む場合は、各成分のエポキシ基のモル数の和となり、例として、成分1と成分2の2成分を含む場合は、以下の通り計算する。
構成要素[A]のエポキシ樹脂が有するグリシジル基のモル数=成分1のエポキシ樹脂の質量部数/成分1のエポキシ樹脂のエポキシ当量+成分2のエポキシ樹脂の質量部数/成分2のエポキシ樹脂のエポキシ当量。
【0035】
さらに、構成要素[B]のシアネートエステル樹脂が有するシアネート基のモル数は以下の通り計算する。
構成要素[B]のシアネートエステル樹脂が有するシアネート基のモル数=構成要素[B]のシアネートエステル樹脂の質量部数/構成要素[B]のシアネートエステル樹脂のシアネート当量。
【0036】
構成要素[C]のアミン化合物の活性水素のモル数は以下の通り計算する。
構成要素[C]のアミン化合物の活性水素のモル数=構成要素[C]のアミン化合物の質量部数/構成要素[C]のアミン化合物の活性水素当量。
【0037】
ここで、エポキシ当量は、JIS K 7236-2009に記載の方法によって求めた値を指す。また、活性水素当量は、JIS K 7237-1995に記載の方法によって求めたアミン価を指す。シアネート当量は、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS法)により、化学構造およびその割合を同定して算出したシアネート当量を指す。
【0038】
本発明における構成要素[C]のアミン化合物に加えて、熱硬化性樹脂組成物の耐熱性と熱安定性を損ねない範囲で他の硬化促進剤と併用しても良い。他の硬化促進剤としては、例えば、カチオン重合開始剤、三級アミン、イミダゾール化合物、尿素化合物、ヒドラジド化合物などが挙げられる。
【0039】
本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、さらに熱可塑性樹脂を含有させることが好ましい。熱可塑性樹脂は、得られるプリプレグのタック性の制御、プリプレグを加熱硬化する時のマトリックス樹脂の流動性の制御および得られる繊維強化複合材料の耐熱性や弾性率を損なうことなく靭性を付与するために含有される。熱硬化性樹脂組成物の粘弾性制御およびプリプレグのタック性の制御の観点から、熱可塑性樹脂の配合量は、熱硬化性樹脂組成物中に1~30質量%含有させることが好ましい。かかる熱可塑性樹脂としては、ポリアリールエーテル骨格で構成される熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルスルホンなどを挙げることができ、これらのポリアリールエーテル骨格で構成される熱可塑性樹脂は単独で用いてもよいし、適宜併用して用いてもよい。中でも、ポリエーテルスルホンおよびポリエーテルイミドは得られる繊維強化複合材料の耐熱性や力学物性を低下することなく靭性を付与することができるため、好ましく用いることができる。
【0040】
これらのポリアリールエーテル骨格で構成される熱可塑性樹脂の末端官能基としては、第1級アミン、第2級アミン、水酸基、カルボキシル基、チオール基、酸無水物やハロゲン基(塩素、臭素)などのものが使用できる。このうち、エポキシ樹脂との反応性が少ないハロゲン基の場合、保存安定性に優れたプリプレグを得ることができ、一方、ハロゲン基を除いた官能基の場合、エポキシ樹脂およびシアネートエステル樹脂との反応性を有することから、熱可塑性樹脂との接着に優れた熱硬化性樹脂組成物を得ることができるため好ましい。
【0041】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、昇温速度5℃/分での示差走査熱量測定による発熱曲線において、100mW/g以上の発熱ピークが、160℃以上200℃以下の範囲に存在することが好ましく、より好ましくは、180℃以上200℃以下である。160℃以上であることで、80℃を超える高温での粘度上昇を抑制でき、良好なポットライフが得られ、200℃以下であることで、反応性が向上し、短時間での硬化完了が可能となる。
【0042】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、80℃で120分間保持した時の粘度が、80℃における初期粘度の1.0倍以上3.0倍以下であることが好ましく、より好ましくは1.0倍以上2.0倍以下である。ここで、80℃で120分間保持した時の増粘倍率は、80℃で1分間保持した時の粘度(80℃における初期粘度)η*
1、80℃で120分間保持した時の粘度η*
120を測定し、増粘倍率をη*
120/η*
1より求める。ここで粘度とは、動的粘弾性測定装置(ARESレオメーター:TAインスツルメント社製)を用い、直径40mmのパラレルプレートを用い、周波数0.5Hz、Gap1mmで測定を行った複素粘性率η*のことを指す。
【0043】
80℃で保持した時の増粘倍率は、樹脂組成物の混練工程や、プリプレグの製造工程での熱硬化性樹脂組成物のポットライフの指標とすることができる。即ち、80℃で保持したときの増粘倍率が小さい程、ポットライフが良好ということになる。熱硬化性樹脂組成物を80℃で120分間保持した時の増粘倍率が1.0倍以上3.0倍以下であると、樹脂組成物の熱安定性が高く、プリプレグ製造工程において強化繊維への樹脂の含浸性が低下せず、成形物にボイドが生じにくい。
【0044】
プリプレグのタック性に関しては、被着体表面の微細凹凸部への接触面積が影響するため、マトリックス樹脂組成物の貯蔵弾性率が低いと接触面積が増加し、タック性が良好となる。周波数0.5Hzで測定した動的粘弾性測定において、30℃の貯蔵弾性率が、0.1Pa以上100,000Pa以下であると、プリプレグとしてのタック性が優れ、プリプレグ/金属やプリプレグ同士の貼り付き性が良好となる。
【0045】
航空宇宙用途の構造材料に適用する場合は、空気との摩擦により表面は高温となり、さらに雲中の水分を吸湿するため、吸湿後の高温環境下でも、優れた力学特性と耐熱性が要求される。ここで、吸湿後の高温環境下での熱硬化性樹脂硬化物の力学特性は、試験片を98℃の熱水に48時間浸漬し、82℃環境下での3点曲げ試験により評価した弾性率をさす。本発明の熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は、吸湿後の高温環境下での弾性率が3.0GPa以上であることが好ましく、より好ましくは3.2GPa以上である。吸湿後の高温環境下での弾性率の上限については特に限定されず、高ければ高いほど好ましいが、通常の熱硬化性樹脂硬化物は7.0GPaが上限である。熱硬化性樹脂硬化物の曲げ弾性率が高いほど、繊維強化複合材料としての力学特性に優れるため好ましい。
【0046】
また、吸湿後の硬化物の耐熱性は、試験片を98℃の熱水に48時間浸漬し、動的粘弾性試験により評価したガラス転移温度をさす。本発明の熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は、吸湿後のガラス転移温度が180℃以上であることが好ましく、より好ましくは190℃以上である。吸湿後の硬化物のガラス転移温度の上限については特に限定されず、高ければ高いほど好ましいが、通常の熱硬化性樹脂硬化物は400℃が上限である。熱硬化性樹脂硬化物のガラス転移温度が高いほど、より高い耐熱性が求められる部材への適用が可能となるため好ましい。
【0047】
本発明においては、熱可塑性樹脂を主成分とする粒子を含有させることも好適である。熱可塑性樹脂粒子を含有させることにより、繊維強化複合材料としたときに、繊維強化複合材料の強化繊維からなる層と層の間に形成される樹脂層(以降、「層間樹脂層」と表すこともある)の靱性が向上するため、耐衝撃性が向上する。
【0048】
熱可塑性樹脂粒子としては、熱硬化性樹脂組成物に混合して用い得る熱可塑性樹脂を使用することができ、中でも、ポリアミドは最も好ましく、ポリアミドの中でも、ポリアミド12、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド6/12共重合体や特開2009-221460号公報の実施例1~7に記載のエポキシ化合物にてセミIPN(高分子相互侵入網目構造)化されたポリアミド(セミIPNポリアミド)は、熱硬化性樹脂との特に良好な接着強度を与える。この熱可塑性樹脂粒子の形状としては、球状粒子でも非球状粒子でも、また多孔質粒子でもよいが、球状の方が樹脂の流動特性を低下させないため粘弾性に優れ、また応力集中の起点がなく、高い耐衝撃性を与えるという点で好ましい態様である。ポリアミド粒子の市販品としては、SP-500、SP-10、TR-1、TR-2、842P-48、842P-80(以上、東レ(株)製)、“オルガソール(登録商標)”1002D、2001UD、2001EXD、2002D、3202D、3501D,3502D、(以上、アルケマ(株)製)等を使用することができる。これらのポリアミド粒子は、単独で使用しても複数を併用してもよい。
【0049】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、カップリング剤や、熱硬化性樹脂粒子、あるいはシリカゲル、カーボンブラック、クレー、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボン粒子、金属粉体といった無機フィラー等を含有させることができる。
【0050】
本発明のプリプレグは、上述した熱硬化性樹脂組成物をマトリックス樹脂とし、この樹脂組成物を強化繊維と複合させたものである。強化繊維は、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等を好ましく挙げることができるが、中でも炭素繊維が特に好ましい。
【0051】
炭素繊維の市販品としては、“トレカ”(登録商標)T800G-24K、“トレカ”(登録商標)T800S-24K、“トレカ”(登録商標)T700G-24K、“トレカ”(登録商標)T300-3K、および“トレカ”(登録商標)T700S-24K(以上、東レ(株)製)などが挙げられる。
【0052】
炭素繊維の形態や配列については、一方向に引き揃えた長繊維や織物等から適宜選択できるが、軽量で耐久性がより高い水準にある炭素繊維強化複合材料を得るためには、炭素繊維が、一方向に引き揃えた長繊維(繊維束)や織物等連続繊維の形態であることが好ましい。
【0053】
本発明のプリプレグは、様々な公知の方法で製造することができる。例えば、マトリックス樹脂をアセトン、メチルエチルケトンおよびメタノールなどから選ばれる有機溶媒に溶解させて低粘度化し、強化繊維に含浸させるウェット法、あるいは、マトリックス樹脂を、有機溶媒を用いずに加熱により低粘度化し、強化繊維に含浸させるホットメルト法などの方法により、プリプレグを製造することができる。
【0054】
ウェット法では、強化繊維を、マトリックス樹脂を含む液体に浸漬した後に引き上げ、オーブンなどを用いて有機溶媒を蒸発させてプリプレグを得ることができる。
【0055】
またホットメルト法では、加熱により低粘度化したマトリックス樹脂を、直接、強化繊維に含浸させる方法、あるいは一旦マトリックス樹脂を離型紙などの上にコーティングした樹脂フィルム付きの離型紙シート(以降、「樹脂フィルム」と表すこともある)をまず作製し、次いで強化繊維の両側あるいは片側から樹脂フィルムを強化繊維側に重ね、加熱加圧することにより強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させる方法などを用いることができる。
【0056】
本発明のプリプレグの製造方法としては、プリプレグ中に残留する有機溶媒が実質的に皆無となるため、有機溶媒を用いずにマトリックス樹脂を強化繊維に含浸させるホットメルト法が好ましい。
【0057】
本発明のプリプレグは、単位面積あたりの強化繊維量が30~2,000g/m2であることが好ましい。かかる強化繊維量が30g/m2以上であると、繊維強化複合材料成形の際に所定の厚みを得るための積層枚数を少なくすることができ、作業が簡便となりやすい。一方で、強化繊維量が2,000g/m2以下であると、プリプレグのドレープ性が向上しやすくなる。
【0058】
本発明のプリプレグの繊維質量含有率は、好ましくは30~90質量%であり、より好ましくは35~85質量%であり、更に好ましくは40~80質量%である。繊維質量含有率が30質量%以上であると、樹脂の量が多くなりすぎず、比強度と比弾性率に優れる繊維強化複合材料の利点が得られやすくなり、また、繊維強化複合材料の成形の際、硬化時の発熱量が高くなりすぎにくい。また、繊維質量含有率が90質量%以下であると、樹脂の含浸不良が生じにくく、得られる繊維強化複合材料のボイドが少なくなりやすい。
【0059】
本発明の繊維強化複合材料の第一の態様は、本発明のプリプレグを硬化させてなる。上述した本発明のプリプレグを所定の形態で積層し、加圧・加熱して樹脂を硬化させる方法を一例として製造することができる。ここで熱及び圧力を付与する方法には、例えば、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法等が採用される。
【0060】
本発明の繊維強化複合材料の第二の態様は、強化繊維と上記の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる熱硬化性樹脂硬化物を含んでなる。この態様の繊維強化複合材料は、プリプレグを用いずに、本発明の熱硬化性樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させた後、加熱硬化する方法、例えばハンド・レイアップ法、フィラメント・ワインディング法、プルトルージョン法、レジン・インジェクション・モールディング法、レジン・トランスファー・モールディング法などの成形法によって作製することができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、組成比の単位「部」は、特に注釈のない限り質量部を意味する。また、各種特性の測定は、特に注釈のない限り温度23℃、相対湿度50%の環境下で行った。
【0062】
<実施例および比較例で用いた材料>
(1)構成要素[A]:グリシジル基を2つ以上有するエポキシ樹脂
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(“jER”(登録商標)828、三菱ケミカル(株)製)エポキシ当量:189(g/eq.)、グリシジル基数:2)
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂(“EPICLON”(登録商標)830、DIC(株)製)エポキシ当量:172(g/eq.)、グリシジル基数:2)
・テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(“アラルダイト”(登録商標)MY721、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)エポキシ当量:113(g/eq.)、グリシジル基数:4)
・トリグリシジル-m-アミノフェノール(“アラルダイト”(登録商標)MY0600、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)エポキシ当量:106(g/eq.)、グリシジル基数:3)
・トリグリシジル-p-アミノフェノール(“アラルダイト”(登録商標)MY0500、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)エポキシ当量:106(g/eq.)、グリシジル基数:3)
・フェノールノボラック型エポキシ樹脂(“jER”(登録商標)154、三菱ケミカル(株)製)エポキシ当量:178(g/eq.)。
【0063】
(2)構成要素[B]:シアネート基を2つ以上有するシアネートエステル樹脂
・ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂(“サイテスタ(CYTESTER)”(登録商標)TA、三菱ガス化学(株)製)シアネート当量:139(g/eq.)
・フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(“AroCy”(登録商標)XU371、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)シアネート当量:131(g/eq.)、式(1)の構造に含まれるシアネートエステル樹脂。
【0064】
(3)構成要素[C]:アミン化合物
・4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(セイカキュアS、和歌山精化工業(株)製)活性水素当量:62(g/eq.)、25℃で固形、アミノ基を2つ以上有する芳香族アミン化合物
・3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DAS、三井化学ファイン(株)製)活性水素当量:62(g/eq.)、25℃で固形、アミノ基を2つ以上有する芳香族アミン化合物
・4,4’-ジアミノジフェニルケトン(和歌山精化工業(株)製)活性水素当量:53(g/eq.)、25℃で固形、アミノ基を2つ以上有する芳香族アミン化合物
・3,3’-ジアミノジフェニルケトン(東京化成工業(株)製)活性水素当量:53(g/eq.)、25℃で固形、アミノ基を2つ以上有する芳香族アミン化合物
・ジエチルトルエンジアミン(“Aradur”(登録商標)5200、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)活性水素当量:45(g/eq.)、25℃で液状、アミノ基を2つ以上有する芳香族アミン化合物
・4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン(“カヤハード”(登録商標)A-A、日本化薬(株)製)活性水素当量:64(g/eq.)、25℃で液状、アミノ基を2つ以上有する芳香族アミン化合物
・ジシアンジアミド(DICY7、三菱ケミカル(株)製)、25℃で固形、脂肪族アミン化合物。
【0065】
(4)熱可塑性樹脂
・ポリエーテルスルホン(“Virangage”(登録商標)VW-10700RP SOLVAY社製)。
【0066】
(5)硬化促進剤
・テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート(“TPP-MK”(登録商標)北興化学工業(株)製)。
【0067】
<熱硬化性樹脂組成物の作製方法および評価方法>
以下の方法にて各実施例および比較例の熱硬化性樹脂組成物を測定した。
【0068】
(1)熱硬化性樹脂組成物の作製
混練装置中に、表1~6に記載の構成要素[A]に該当するエポキシ樹脂、および構成要素[B]に該当するシアネートエステル樹脂および熱可塑性樹脂を投入し、加熱混練を行い、熱可塑性樹脂を溶解させた。次いで、混練を続けたまま100℃以下の温度まで降温させ、表1~5に記載の構成要素[C]または硬化促進剤(ただし、比較例においては、構成要素[A]、構成要素[B]、構成要素[C]を加えない場合もある。)を加えて撹拌し、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0069】
(2)熱硬化性樹脂組成物の発熱ピーク温度の測定方法
示差走査熱量計(DSC Q2000:TAインスツルメント社製)を用いて、窒素雰囲気中で5℃/分の昇温速度にて、熱硬化性樹脂組成物の発熱曲線を得た。得られた発熱曲線中で、発熱量が100mW/g以上である発熱ピークの頂点の温度を、発熱ピーク温度とした。発熱量が100mW/g以上である発熱ピークが2つ以上ある場合は、低温側のピークの頂点の温度を、発熱ピーク温度とした。速硬化性の評価に関し、表1~6において、発熱ピーク温度が180℃以下をA、180℃超、200℃以下をB、200℃超、220℃以下をC、220℃超をDで表記した。
【0070】
(3)熱硬化性樹脂組成物を80℃で120分間保持した時の増粘倍率の測定方法
熱硬化性樹脂組成物の粘度は、動的粘弾性測定装置ARESレオメーター(TAインスツルメント社製)を用いて評価した。上下部測定冶具に直径40mmの平板のパラレルプレートを用い、上部と下部の冶具間距離が1mmとなるように該熱硬化性樹脂組成物をセットし、ねじりモード(測定周波数:0.5Hz)により測定した複素粘性率η*を粘度とした。80℃で1分間保持した時の粘度η*
1、80℃で120分間保持した時の粘度η*
120を測定し、増粘倍率(ポットライフ)をη*
120/η*
1より求めた。ポットライフの評価に関し、表1~6において、増粘倍率が2.0倍以下をA、2.0倍超、2.5倍以下をB、2.5倍超、3.0倍以下をC、3.0倍超をDで表記した。
【0071】
(4)熱硬化性樹脂組成物の貯蔵弾性率測定
熱硬化性樹脂組成物の貯蔵弾性率は、動的粘弾性装置ARESレオメーター(TAインスツルメント社製)を用いて評価した。上下部測定冶具に直径40mmの平板のパラレルプレートを用い、上部と下部の冶具間距離が1mmとなるように該熱硬化性樹脂組成物をセットし、ねじりモード(測定周波数:0.5Hz)で測定した。30℃で1分間保持した時の貯蔵弾性率を、30℃貯蔵弾性率として算出した。
【0072】
(5)熱硬化性樹脂硬化物の作製方法
上記(1)で調製した熱硬化性樹脂組成物をモールドに注入し、熱風乾燥機中で30℃から速度1.5℃/分で昇温し、210℃で8時間加熱硬化した後、30℃まで速度2.5℃/分で降温して、厚さ2mmの板状の樹脂硬化物を作製した。
【0073】
(6)乾燥条件および吸湿条件での熱硬化性樹脂硬化物のガラス転移温度の測定方法
上記(5)の方法で作製した樹脂硬化板から、幅12.7mm、長さ45mmの試験片を切り出し、乾燥条件での測定の場合は、試験片を60℃真空オーブン中で24時間乾燥させ、JIS K 7244に従い、動的粘弾性試験によりガラス転移温度を求めた。また、吸湿条件での測定の場合は、試験片を98℃の熱水に48時間浸漬し、同様に動的粘弾性試験によりガラス転移温度を求めた。貯蔵弾性率曲線において、ガラス状態での接線と転移状態での接線との交点の温度の値をガラス転移温度とした。ここでは、昇温速度5℃/分、周波数1Hzで測定した。表1~6において、吸湿後の耐熱性は、吸湿後のガラス転移温度が190℃以上をA、180℃以上190℃未満をB、170℃以上180℃未満をC、170℃未満をDで表記した。
【0074】
(7)熱硬化性樹脂硬化物の乾燥時の室温環境下および吸湿後の高温環境下での曲げ弾性率の測定方法
上記(5)の方法で作製した樹脂硬化板から、長さ60mm、幅10mmの試験片を切り出し、材料万能試験機(インストロン・ジャパン(株)製、“インストロン”(登録商標)5565型P8564)を用い、試験速度2.5mm/分、支点間距離32mmで3点曲げ試験を行い、JIS K 7171-1994に従い曲げ弾性率を求めた。乾燥時の室温環境下での測定の場合は、試験片を60℃真空オーブン中で24時間乾燥させ、環境温度25℃で試験した。吸湿後の高温環境下での測定の場合は、試験片を98℃の熱水に48時間浸漬し、環境温度82℃で試験した。表1~6において、吸湿後の高温環境下の力学特性は、吸湿後の82℃での曲げ弾性率が、3.2GPa以上をA、3.0GPa以上3.2GPa未満をB、2.8GPa以上3.0GPa未満をC、2.8GPa未満をDで表記した。
【0075】
(8)プリプレグの作製方法
上記(1)で調製した熱硬化性樹脂組成物を離型紙上にコーティングし、所定の樹脂目付の樹脂フィルムを作製した。この樹脂フィルムをプリプレグ作製機にセットし、引き揃えた強化繊維の両面から重ね、加熱加圧して熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、繊維目付192g/m2、樹脂含有率が35質量%のプリプレグを作製した。なお、強化繊維は、炭素繊維(“トレカ”(登録商標)T700S-24K、東レ(株)製、繊維数24,000本、引張強度4,900MPa、引張弾性率230MPa)を用いた。
【0076】
(9)プリプレグのタック性評価方法
上記(8)で作製したプリプレグを、15cm角および10cm角のシート状に切り出し、15cm角のプリプレグを下側、10cm角のプリプレグを上側にして重ねた。重ねたプリプレグの上側に、粘着性テープを貼り付けた10cm角のステンレス製プレート(400g)を載せ、30秒間保持した。その後、ステンレス製プレートを持ち上げた際に、重ねたプリプレグが2枚に分かれない場合はタック性を「良好」、プリプレグが剥がれて2枚に分かれる場合を、タック性は「不良」と判定した。
【0077】
<実施例1~4および比較例1、8、9>
実施例1~4では、構成要素[C]として、表1に記載のアミン化合物を用いた結果、表5に記載の比較例1(構成要素[C]非含有)と比べ、80℃2時間保持後の増粘倍率は良好な値を保ちつつ、発熱ピーク温度の大幅な低下がなされ、優れた速硬化性を示した。さらに、実施例1~4は、アミンとシアネートの反応により形成したイソウレア構造の水素結合性により、比較例1対比、吸湿後の82℃環境下の曲げ弾性率が向上し、優れた力学特性を示した。
【0078】
表1および5に示す通り、実施例1~4、比較例8および9において、熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数に対するグリシジル基のモル数の比を一定とし、熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数に対するアミノ基に含まれる活性水素のモル数の比を変更した結果、活性水素のモル数の割合が増えるほど、発熱ピーク温度が低下し、速硬化性が高まる傾向を示した。また、吸湿後のガラス転移温度が低下し、80℃2時間保持後の増粘倍率も増加する傾向が見られたが、実施例1~4についてはいずれも問題のない優れた物性を示した。熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数に対する、アミノ基に含まれる活性水素のモル数の比が0.02である比較例8では、発熱ピーク温度が高く、十分な速硬化性が得られなかった。また、熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数に対する、アミノ基に含まれる活性水素のモル数の比が0.6である比較例9では、実施例1~4対比、吸湿後のガラス転移温度が低く、80℃2時間保持後の増粘倍率も高い値を示し、ポットライフが不良であった。
【0079】
<実施例5~8および比較例2>
表1および5に示すように、実施例5~8および比較例2では、実施例1~4および比較例1における構成要素[A]のエポキシ樹脂を、テトラグルシジルジアミノジフェニルメタンから変更し、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた。実施例5~8では、比較例2(構成要素[C]非含有)と比べ、80℃2時間保持後の増粘倍率は良好な値を保ちつつ、発熱ピーク温度の大幅な低下がなされ、優れた速硬化性を示した。さらに、実施例5~8は、比較例2対比、吸湿後の82℃環境下での曲げ弾性率が向上し、優れた力学特性を示した。
【0080】
<実施例2、9~11および比較例6、7、10~12>
表1、2および5に示すように、実施例2、9~11および比較例6、7では、構成要素[A]のエポキシ樹脂として、テトラグルシジルジアミノジフェニルメタンを用い、熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数に対する、アミノ基に含まれる活性水素のモル数の比を一定とし、熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数に対するグリシジル基のモル数の比を変更した。グリシジル基のモル数の割合が増加すると、80℃2時間保持後の増粘倍率が低下する傾向が見られ、優れたポットライフを示した。熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数に対するグリシジル基のモル数の比が0.2である比較例6では、吸湿後のガラス転移温度が、実施例2、9~11対比低く、さらに熱硬化性樹脂組成物は30℃で固形であり、プリプレグとしてのタックを示さなかった。また、熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数に対するグリシジル基のモル数の比が1.75である比較例7では、実施例2、9~11対比、吸湿後のガラス転移温度および吸湿後82℃環境下の曲げ弾性率が低い値であった。
【0081】
表5、6に示す、構成要素[C]を含まない比較例10~12では、構成要素[C]を含む実施例9~11対比、発熱ピーク温度が著しく高く、十分な速硬化性を示さなかった。
【0082】
<実施例6、12~14および比較例2、13~15>
表1および2に示すように、実施例6、12~14では、構成要素[A]のエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用い、熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数に対するアミノ基に含まれる活性水素のモル数の比を一定とし、熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数に対するグリシジル基のモル数の比を変更した。グリシジル基のモル数の割合が増加すると、80℃2時間保持後の増粘倍率が低下する傾向が見られ、優れたポットライフを示した。表5、6に示すとおり、構成要素[C]を含まない比較例2、13~15では、構成要素[C]を含む実施例6、12~14対比、発熱ピーク温度が著しく高く、十分な速硬化性を示さなかった。
【0083】
<実施例2、6、15~18>
表1および2に示すように、実施例2、6、15~18では、熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数に対する、アミノ基に含まれる活性水素のモル数の比および、熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数に対するグリシジル基のモル数の比を一定とし、テトラグルシジルジアミノジフェニルメタンとビスフェノールA型エポキシ樹脂の配合割合を変更した。3官能以上のグリシジルアミン型エポキシ樹脂であるテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの配合量が増加することで、乾燥状態のガラス転移温度および吸湿後のガラス転移温度が大きく向上し、好ましい特性を示した。
【0084】
<実施例1~3および比較例3~5>
表5に示すように、比較例3~5では、構成要素[A]のエポキシ樹脂を含んでいないため、熱硬化性樹脂組成物が30℃で固形状であり、貯蔵弾性率の測定が不可能であった。さらに、作製したプリプレグはタック性を示さなかった。構成要素[A]を含む実施例1~3は、比較例3~5対比、吸湿後の82℃環境下の曲げ弾性率および吸湿後のガラス転移温度が高く、優れた特性を示した。
【0085】
<実施例19~22および比較例16~19>
表2および3に示すように、実施例19~22では、種々の構成要素[A]のエポキシ樹脂を用いた結果、表6に記載の比較例16~19(構成要素[C]非含有)と比べ、80℃2時間保持後の増粘倍率は良好な値を保ちつつ、発熱ピーク温度の大幅な低下が達成され、優れた速硬化性を示した。
【0086】
<実施例2、23~26>
表3に示すように、実施例23~26では、実施例2と同じ熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数に対するアミノ基に含まれる活性水素のモル数の比および、熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数に対するグリシジル基のモル数の比とした上で、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(式(1)の構造に含まれる)とビスフェノールA型シアネートエステル樹脂の配合割合を変更した。フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(式(1)の構造に含まれる)の配合量が増加することで、吸湿後のガラス転移温度が大きく向上し、優れた特性を示した。
【0087】
<実施例27~30>
表3に示すように、実施例27~30では、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂を全シアネートエステル樹脂に対して20質量部以上含んだ上で、実施例23、24に対して、熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数に対するアミノ基に含まれる活性水素のモル数の比または、熱硬化性樹脂組成物中のシアネート基のモル数に対するグリシジル基のモル数の比を変更した。いずれも優れた吸湿後のガラス転移温度を有しており、優れた特性を示した。
【0088】
<実施例31~36>
表4に示すように、実施例31~36では、種々の構成要素[C]のアミン化合物を用いた結果、いずれの場合も、表5に記載の比較例1(構成要素[C]非含有)と比べ、発熱ピーク温度の大幅な低下がなされ、優れた速硬化性を示した。構成要素[C]としてジアミノジフェニルホンまたはジアミノジフェニルケトンを用いた実施例31~33では、電子吸引性の官能基を有するためアミンの求核性が適度に抑制されており、特に優れたポットライフと速硬化性のバランスを示した。さらに、ジアミノジフェニルホンまたはジアミノジフェニルケトンの骨格の剛直性に起因し、特に優れた吸湿後のガラス転移温度を示した。
【0089】
<比較例20、21>
表6に示す通り、構成要素[B]を含まない比較例20は、グリシジル基とアミノ基の反応により形成されるヒドロキシル基の親水性のため吸湿しやすく、構成要素[B]を含む実施例1に対し、吸湿後の82℃環境下での曲げ弾性率が著しく低い特性であった。
【0090】
構成要素[A]と構成要素[C]を含まない比較例21は、実施例1に対し吸湿後のガラス転移温度が著しく低い特性であった。さらに、比較例21の熱硬化性樹脂組成物は30℃で固形状であり、プリプレグとしてのタック性を示さなかった。
【0091】
<実施例1、37>
表4に示す通り、熱可塑性樹脂を含まない実施例37では、30℃の貯蔵弾性率が低下する傾向を示したが、プリプレグとして良好なタック性を示した。
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】