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特許7200947光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブルの製造方法
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  • 特許-光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブルの製造方法 図1
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  • 特許-光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブルの製造方法 図4B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
G02B6/44 366
G02B6/44 391
G02B6/44 371
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019564706
(86)(22)【出願日】2019-01-09
(86)【国際出願番号】 JP2019000269
(87)【国際公開番号】W WO2019139018
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2018001926
(32)【優先日】2018-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文昭
(72)【発明者】
【氏名】梁 國雄
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-006472(JP,A)
【文献】特表2006-520020(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0091307(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0254668(US,A1)
【文献】特開2013-171072(JP,A)
【文献】特開2015-215447(JP,A)
【文献】特開2013-097320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル長手方向に沿って形成された複数のリブを有し、前記リブ同士の間に光ファイバテープ心線を収納するスロット溝が形成されたスロットコアを有する光ファイバケーブルであって、
前記スロット溝内に、前記光ファイバテープ心線が複数本束ねられ、その周囲がバンドル材で巻かれてなるサブユニットを複数有し、
複数の前記サブユニット間の前記バンドル材同士が接着されており、
一つの前記サブユニットは、少なくとも二本の前記バンドル材で巻かれ、前記二本のバンドル材同士が接着されており、
前記二本のバンドル材同士の接着強度よりも、複数の前記サブユニット間のバンドル材同士の接着強度の方が低
前記バンドル材は、内層材と外層材とからなる二層構造であり、
複数の前記サブユニット間のバンドル材同士は、前記外層材同士で接しており、
前記内層材の融点が前記外層材の融点よりも高い、光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記光ファイバテープ心線は、一部、または全ての光ファイバ心線間において、隣接する光ファイバ心線間が連結された連結部と、隣接する光ファイバ心線間が連結されていない非連結部とが長手方向に間欠的に設けられた間欠連結型光ファイバテープ心線である、請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記光ファイバテープ心線の表層に、潤滑材が塗布されている、請求項1または請求項2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
複数本の光ファイバテープ心線を束ねてバンドル材を巻いてサブユニットを作成する工程と、
ケーブル長手方向に沿って形成された複数のリブを有し、前記リブ同士の間に前記光ファイバテープ心線を収納するスロット溝が形成されたスロットコアを用意し、複数の前記サブユニットを前記スロット溝内に収納する工程と、
複数の前記サブユニットが前記スロット溝内に収納された状態で、押し出し成形によりケーブル外被を形成する工程と、を含み、
前記ケーブル外被を押し出し成形する際の熱を用いて、複数の前記サブユニット間の前記バンドル材同士を加熱溶着させ、
一つの前記サブユニットは、少なくとも二本の前記バンドル材で巻かれ、前記二本のバンドル材同士が接着されており、
前記二本のバンドル材同士の接着強度よりも、複数の前記サブユニット間のバンドル材同士の接着強度の方が低
前記バンドル材は、内層材と外層材とからなる二層構造であり、
複数の前記サブユニット間のバンドル材同士は、前記外層材同士で接しており、
前記内層材の融点が前記外層材の融点よりも高い、
光ファイバケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブルの製造方法に関する。
本出願は、2018年1月10日出願の日本出願2018-001926号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光ファイバの集合体を束ねて、複数のバンドル材を長手方向に螺旋状に直接巻回してなる光ファイバユニットにおいて、複数のバンドル材のいずれか二本が交差している交差点の一部又は全部で、バンドル材同士が接着されている光ファイバユニットが記載されている。
特許文献2には、複数の光ファイバ心線と、複数の光ファイバ心線の外周に互いに逆方向に螺旋巻きされる一対のバンドル材とを具備した光ファイバユニットが記載されている。そして、一対のバンドル材の交差部には、バンドル材同士が接着する接着部が設けられ、バンドル材と光ファイバ心線との間には、互いに接着しない非接着部が形成されることが記載されている。
特許文献3には、複数本の識別糸を繰り出し、互いに交差するように識別糸の交点を熱融着させる、光ファイバユニットの製造方法が記載されている。
特許文献4には、複数本の光ファイバ心線の束の周囲を、少なくとも二本のバンドル材で束ねてなる光ファイバユニットであって、バンドル材同士が、間欠的に接着されている、光ファイバユニットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2011-169939号公報
【文献】日本国特開2013-88549号公報
【文献】日本国特開2013-190641号公報
【文献】日本国特開2012-88454号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る光ファイバケーブルは、
ケーブル長手方向に沿って形成された複数のリブを有し、前記リブ同士の間に光ファイバテープ心線を収納するスロット溝が形成されたスロットコアを有する光ファイバケーブルであって、
前記スロット溝内に、前記光ファイバテープ心線が複数本束ねられ、その周囲がバンドル材で巻かれてなるサブユニットを複数有し、
複数の前記サブユニット間の前記バンドル材同士が接着されており、
一つの前記サブユニットは、少なくとも二本の前記バンドル材で巻かれ、前記二本のバンドル材同士が接着されており、
前記二本のバンドル材同士の接着強度よりも、複数の前記サブユニット間のバンドル材同士の接着強度の方が低く、
前記バンドル材は、内層材と外層材とからなる二層構造であり、
複数の前記サブユニット間のバンドル材同士は、前記外層材同士で接しており、
前記内層材の融点が前記外層材の融点よりも高い
【0005】
また、本開示の一態様に係る光ファイバケーブルの製造方法は、
複数本の光ファイバテープ心線を束ねてバンドル材を巻いてサブユニットを作成する工程と、
ケーブル長手方向に沿って形成された複数のリブを有し、前記リブ同士の間に前記光ファイバテープ心線を収納するスロット溝が形成されたスロットコアを用意し、複数の前記サブユニットを前記スロット溝内に収納する工程と、
複数の前記サブユニットが前記スロット溝内に収納された状態で、押し出し成形によりケーブル外被を形成する工程と、を含み、
前記ケーブル外被を押し出し成形する際の熱を用いて、複数の前記サブユニット間の前記バンドル材同士を加熱溶着させ、
一つの前記サブユニットは、少なくとも二本の前記バンドル材で巻かれ、前記二本のバンドル材同士が接着されており、
前記二本のバンドル材同士の接着強度よりも、複数の前記サブユニット間のバンドル材同士の接着強度の方が低く、
前記バンドル材は、内層材と外層材とからなる二層構造であり、
複数の前記サブユニット間のバンドル材同士は、前記外層材同士で接しており、
前記内層材の融点が前記外層材の融点よりも高い
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の実施形態に係る光ファイバケーブルの構成を示す断面図である。
図2】光ファイバケーブルに収容される光ファイバテープ心線の一例を示す図である。
図3】光ファイバケーブルに収容されるサブユニットの一例を示す図である。
図4A】バンドル材の一例を示す断面図である。
図4B】バンドル材の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
テープスロット型ケーブルは、光ファイバテープ心線を収納したスロット溝が異なることで、取り出す際に光ファイバテープ心線の識別ができる。ところが、多心高密度で光ファイバテープ心線を実装しているスロット型ケーブルは、スロット溝の隙間が小さいため、ケーブルを解体する際に光ファイバテープ心線をスロット溝から取り出すことが難しい。
【0008】
また、多心高密度のスロット型ケーブルは、収納された光ファイバテープ心線の数が多く、スロット溝から光ファイバテープ心線を取り出した後に、他のスロット溝から取り出した光ファイバテープ心線と混ざって識別が困難になり、光ファイバテープ心線を誤接続してしまう可能性がある。
【0009】
本開示は、光ファイバテープ心線を複数本束ねたサブユニットをスロット溝から取り出しやすく、かつ、取り出した後の、サブユニット間および光ファイバテープ心線間の識別性が優れている光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブルの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
[本開示の効果]
本開示によれば、光ファイバテープ心線を複数本束ねたサブユニットをスロット溝から取り出しやすく、かつ、取り出した後にサブユニット間および光ファイバテープ心線間の識別性が優れている光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブルの製造方法を提供することができる。
【0011】
(本開示の実施形態の説明)
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の一態様に係る光ファイバケーブルは、
(1)ケーブル長手方向に沿って形成された複数のリブを有し、前記リブ同士の間に光ファイバテープ心線を収納するスロット溝が形成されたスロットコアを有する光ファイバケーブルであって、
前記スロット溝内に、前記光ファイバテープ心線が複数本束ねられ、その周囲がバンドル材で巻かれてなるサブユニットを複数有し、
複数の前記サブユニット間の前記バンドル材同士が接着されており、
一つの前記サブユニットは、少なくとも二本の前記バンドル材で巻かれ、前記二本のバンドル材同士が接着されており、
前記二本のバンドル材同士の接着強度よりも、複数の前記サブユニット間のバンドル材同士の接着強度の方が低く、
前記バンドル材は、内層材と外層材とからなる二層構造であり、
複数の前記サブユニット間のバンドル材同士は、前記外層材同士で接しており、
前記内層材の融点が前記外層材の融点よりも高い
上記構成によれば、複数のサブユニット間のバンドル材同士が接着されているので、光ファイバテープ心線をケーブルから取り出す際に、簡単に一纏めに取り出すことができる。また、取り出したスロット溝毎にサブユニットが一体となっている。これにより、光ファイバテープ心線をスロット溝から取り出しやすく、かつ、取り出した後にサブユニット間および光ファイバテープ心線間の識別性が優れている光ファイバケーブルを提供できる。さらに上記構成によれば、光ファイバケーブルから取り出した後に、容易にサブユニット同士を分離することができる。さらに上記構成によれば、複数のサブユニット間のバンドル材同士が融点の比較的低い外層材同士で接しているので、ケーブル外被を押し出し成形する際の熱程度で、複数のサブユニット間のバンドル材同士を容易に溶着することができる。
【0012】
(2)前記光ファイバテープ心線は、一部、または全ての光ファイバ心線間において、隣接する光ファイバ心線間が連結された連結部と、隣接する光ファイバ心線間が連結されていない非連結部とが長手方向に間欠的に設けられた間欠連結型光ファイバテープ心線であってもよい。
上記構成によれば、光ファイバテープ心線が間欠連結型であるので、光ファイバケーブル内に高密度に実装することができる。
【0013】
(3)前記光ファイバテープ心線の表層に、潤滑材が塗布されていてもよい。
上記構成によれば、光ファイバテープ心線がバンドル材に接着しにくく、バンドル材を除去しやすい。
【0016】
また、本開示の一態様に係る光ファイバケーブルの製造方法は、
)複数本の光ファイバテープ心線を束ねてバンドル材を巻いてサブユニットを作成する工程と、
ケーブル長手方向に沿って形成された複数のリブを有し、前記リブ同士の間に前記光ファイバテープ心線を収納するスロット溝が形成されたスロットコアを用意し、複数の前記サブユニットを前記スロット溝内に収納する工程と、
複数の前記サブユニットが前記スロット溝内に収納された状態で、押し出し成形によりケーブル外被を形成する工程と、を含み、
前記ケーブル外被を押し出し成形する際の熱を用いて、複数の前記サブユニット間の前記バンドル材同士を加熱溶着させ、
一つの前記サブユニットは、少なくとも二本の前記バンドル材で巻かれ、前記二本のバンドル材同士が接着されており、
前記二本のバンドル材同士の接着強度よりも、複数の前記サブユニット間のバンドル材同士の接着強度の方が低く、
前記バンドル材は、内層材と外層材とからなる二層構造であり、
複数の前記サブユニット間のバンドル材同士は、前記外層材同士で接しており、
前記内層材の融点が前記外層材の融点よりも高い
上記方法によれば、ケーブル外被を押し出し成形する際の熱を用いて、複数のサブユニット間のバンドル材同士を加熱溶着させるので、バンドル材同士を加熱する工程を別途行う必要がなくなり、製造工程を簡略化することができる。さらに上記構成によれば、光ファイバケーブルから取り出した後に、容易にサブユニット同士を分離することができる。さらに上記構成によれば、複数のサブユニット間のバンドル材同士が融点の比較的低い外層材同士で接しているので、ケーブル外被を押し出し成形する際の熱程度で、複数のサブユニット間のバンドル材同士を容易に溶着することができる。
【0017】
(本開示の実施形態の詳細)
本開示の実施形態に係る光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブルの製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
図1は、本開示の実施形態に係る光ファイバケーブルの長さ方向に垂直な断面図である。図1に示すように、光ファイバケーブル1は、複数(本例では8本)のリブ2と、リブ2同士の間に形成されるスロット溝3とを有するスロットコア4を備えている。リブ2およびスロット溝3は、光ファイバケーブル1の長手方向(長さ方向)に沿って、例えば、螺旋状またはSZ状に形成されている。スロットコア4は、例えば、ポリカーボネート(PC)とポリブチレンテレフタレート(PBT)との合成樹脂または高密度ポリエチレン(HDPE)等の硬質樹脂で形成されている。
【0019】
スロット溝3の中には、複数のサブユニット20が収納されている。本例では、一つのスロット溝3に3個のサブユニット20(20A~20C)が収納されている。サブユニット20は、例えば図2に示すような光ファイバテープ心線10を複数本束ねた集合体21の周囲に、例えば図3に示すようなバンドル材30が巻かれたものである。各サブユニット20A~20Cは、各々に巻かれているバンドル材30同士が接着されることにより、その接着された接着箇所32を介して互いに接続されている。光ファイバテープ心線10については図2の説明で詳述する。また、サブユニット20A~20Cについては図3の説明で、バンドル材30については図3および図4の説明で詳述する。
【0020】
スロットコア4の外周には、吸水テープ5がスロット溝3を覆うように、例えば縦添えまたは横巻きで巻回されている。吸水テープ5の外側には、吸水テープ5を介してスロットコア4の周囲を覆うように外被6が設けられている。外被6は、例えばポリエチレン(PE)等の樹脂で形成されている。外被6は、樹脂を押出成形することにより、スロットコア4の周囲に形成される。
【0021】
スロットコア4の中心部には、鋼線等で構成されるテンションメンバ7が光ファイバケーブル1の長手方向に沿って埋設されている。
【0022】
図2は、サブユニット20を構成する光ファイバテープ心線10の一例を示す。図2に示すように、光ファイバテープ心線10は、複数の光ファイバ心線11A~11Lが並列に配置された状態で、隣接する光ファイバ心線間が連結された連結部12と、隣接する光ファイバ心線間が連結されていない非連結部13とが長手方向に間欠的に設けられている間欠連結型の光ファイバテープ心線である。なお、光ファイバテープ心線10の表層には、例えば、タルク等の潤滑材が塗布されている。
【0023】
連結部12と非連結部13とが間欠的に設けられている箇所は、図2に示すように一部の光ファイバ心線間であってもよく、または、全ての光ファイバ心線間であってもよい。図2に示す例では、光ファイバ心線11Aと11B、11Cと11D、11Eと11F、11Gと11H、11Iと11J、11Kと11L、の各線間には非連結部13が設けられていない。
【0024】
光ファイバテープ心線10における連結部12は、例えば紫外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂等からなる連結樹脂14を、光ファイバ心線間に塗布することによって形成される。連結樹脂14が所定の光ファイバ心線間に間欠的に塗布されることにより、連結部12と非連結部13とが間欠的に設けられるとともに、各光ファイバ心線11A~11Lが並列状態で一体化される。なお、連結樹脂14は、並列された光ファイバ心線11A~11Lで形成される並列面の片面のみに塗布するようにしてもよいし、両面に塗布するようにしてもよい。また、光ファイバテープ心線10は、例えば並列された光ファイバ心線11A~11Lの片面、若しくは両面全体にテープ樹脂を塗布して、全ての光ファイバ心線11A~11Lを連結させてから、回転刃等で一部を切断して非連結部13を形成するように作製してもよい。
【0025】
各光ファイバ心線11A~11Lは、例えばコアとクラッドで構成されるガラスファイバと、ガラスファイバを被覆する被覆層とで構成されている。光ファイバ心線11A~11Lは、光ファイバ心線同士を識別できるように、例えば、それぞれ異なる色に被覆層が着色されている。
【0026】
図3は、光ファイバケーブル1に収容されるサブユニット20(20A~20C)の一例を示す。なお、図3ではサブユニット20A~20Cを並列した状態(例えば、光ファイバケーブル1に収容される前の状態)として説明する。サブユニット20は、複数の光ファイバテープ心線10を束ねて形成された集合体21(21A~21C)と、集合体21の周囲に巻かれたバンドル材30と、を備えている。
【0027】
集合体21として集められている光ファイバテープ心線10は、本例では二本の光ファイバ心線11A~11Lが一列に配列された場合よりも配列方向の長さが短くなるように、断面視で複数本の光ファイバ心線11A~11Lが集合した(例えば、丸めたように集合した)集合形態にされている。光ファイバテープ心線10同士は、例えば螺旋状に撚り合わせて集合体21とされていてもよいし、撚り合わせずに集められて集合体21とされていてもよい。
【0028】
各集合体21A~21Cには、撚り合わされた複数の光ファイバテープ心線10を束ねる二本のバンドル材30が巻き付けられている。例えば、集合体21Aにはバンドル材30A1,30A2が、集合体21Bにはバンドル材30B1,30B2が、集合体21Cにはバンドル材30C1,30C2が巻き付けられている。各集合体21A~21Cにおける二本のバンドル材30は、集合体の長手方向に螺旋状に巻き付けられている。二本のバンドル材30同士は、互いに逆向きに巻き付けられ、集合体の長手方向において所定の間隔で交差している。
【0029】
各集合体21に巻き付けられた二本のバンドル材30(30A1と30A2、30B1と30B2、30C1と30C2)が交差する箇所(交差点31)では、二本のバンドル材30同士が接着されている。バンドル材30同士は、例えば、加熱溶着により、あるいは接着剤により接着されている。バンドル材30は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のテープまたは糸で形成されている。
【0030】
前述の図1で示したように、本実施形態では、隣り合うサブユニット間のバンドル材30同士が接着箇所32で接着されることで、サブユニット同士が接続されている。
図3のサブユニット20A~20Cが並列した状態で説明すると、サブユニット20Aと20Bとの間は、バンドル材30A1と30B2との接着箇所32、及びバンドル材30A2と30B1との接着箇所32でそれぞれ接着されている。また、サブユニット20Bと20Cとの間は、バンドル材30B1と30C2との接着箇所32、及びバンドル材30B2と30C1との接着箇所32で接着されている。サブユニット20A~20Cは、図1に示すように、例えば丸めたように集合され、光ファイバケーブル1のスロット溝3に収納される。図1に示す状態では、さらに、サブユニット20Aと20Cとの間も、バンドル材30同士が接着箇所32で接着されている。
【0031】
上記サブユニット間のバンドル材30同士の接着は、例えば、加熱による溶着であっても、接着剤による接着であってもよいが、各集合体21に巻き付けられた二本のバンドル材30同士の接着強度よりは低く接着されている。加熱による溶着の場合は、ホットジェットやドライヤー等の熱風をあててバンドル材30同士を溶着させてもよい。外被6を押出成形によって形成する場合には、バンドル材30同士の接触点を溶着させる熱として、スロットコア4の周囲に押出成形される外被6の熱を用いてもよい。
【0032】
図4Aおよび図4Bは、それぞれバンドル材30の一例を示す断面図である。
図4Aに示すように、バンドル材30は、例えば、内層材41と、内層材41の周囲に設けられる外層材42とで形成される同軸二層の構造を有する。内層材41の融点は、外層材42の融点よりも高くなっている。
内層材41としては、例えば、PET等を用いることができる。外層材42としては、例えば、PE、PP等を用いることができる。
外層材42の融点は、例えば、110℃~130℃である。内層材41の融点は、例えば、230℃以上である。なお、押出成形される際の外被6の樹脂温度は、160℃~200℃程度である。
【0033】
バンドル材30は、例えば、図4Bに示すように、内層材41と、内層材41の上側に設けられる外層材42とで形成される平面二層の構造であってもよい。なお、内層材41と外層材42の材質および融点は、図4Aに示すバンドル材と同様である。
【0034】
図4Aに示す構造のバンドル材30が各集合体21の周囲に巻かれる場合、各集合体21に巻かれた二本のバンドル材30の交差点31では、バンドル材同士は、例えば外層材42と内層材41の両層材の加熱溶着によって接続されている。これに対して、隣り合うサブユニット20間におけるバンドル材30同士は、例えば外層材42のみの加熱溶着によって接続されている。このため、隣り合うサブユニット20間におけるバンドル材30同士の接着箇所32は、バンドル材30の交差点31におけるバンドル材30同士の接着強度よりも低くなっている。
【0035】
図4Bに示す構造のバンドル材30が各集合体21の周囲に巻かれる場合、各バンドル材30は、内層材41が集合体21の外周面に対向するような向きで巻かれる。すなわち、各バンドル材30の外層材42がサブユニット20の外側に向くように巻かれる。このため、各集合体21に巻かれた二本のバンドル材30の交差点31では、一方のバンドル材30の内層材41と他方のバンドル材30の外層材42とが対向した状態で重なる。また、隣り合うサブユニット20間におけるバンドル材30同士の接着箇所32では、各バンドル材の外層材42同士が対向した状態で接着される。なお、バンドル材30の交差点31における加熱溶着、接着箇所32の接着強度等については、上記図4Aのバンドル材30の場合と同様である。
【0036】
なお、スロット溝3内に収納したサブユニット20に熱風をあててバンドル材同士を溶着する場合、その熱で溶けたバンドル材30がスロット溝3の内壁に付着しないように、内壁に滑材(タルク等)を塗布しておくことが望ましい。また、バンドル材30に滑材(シリコーン等)を含めて形成するようにしてもよい。また、上述した各サブユニットには二本のバンドル材30が巻かれているが、バンドル材30の数は3本以上であってもよいし、あるいは単数であってもよい。
【0037】
以上のような構成の光ファイバケーブル1によれば、複数のサブユニット20間のバンドル材30同士が接着されているので、光ファイバテープ心線10を光ファイバケーブル1から取り出す際に、各スロット溝3に収納されている全てのサブユニット20を一纏めに取り出すことができる。このため、光ファイバテープ心線10をスロット溝3から取り出しやすい。また、取り出したスロット溝3毎に複数のサブユニット20が一体となっているので、取り出した後の、サブユニット20間および光ファイバテープ心線10間の識別性が優れている。
【0038】
また、光ファイバテープ心線10が間欠連結型であるため、スロット溝3内に光ファイバテープ心線10を高密度に収納することができる。
【0039】
また、光ファイバテープ心線10の表層に潤滑材が塗布されているので、バンドル材30を加熱溶着する際、あるいは接着剤で接着する際に、光ファイバテープ心線10がバンドル材30に接着しにくくすることができる。また、スロット溝3の内壁、あるいはバンドル材30に滑材が含まれているので、熱で溶けたバンドル材30がスロット溝3の内壁に接着しにくくすることができる。
【0040】
また、複数のサブユニット20間のバンドル材30同士が融点の比較的低い外層材42同士で接しているので、ケーブルの外被6を押出成形する際の熱を利用して、複数のサブユニット20間のバンドル材30同士を容易に溶着することができる。
【0041】
また、バンドル材30の交差点31におけるバンドル材同士の接着強度よりも、隣り合うサブユニット20間におけるバンドル材30同士の接着箇所32の接着強度の方が低くなっている。このため、交差点31におけるバンドル材30同士を接着させたまま、隣り合うサブユニット20間におけるバンドル材30同士を引き離すことが可能である。したがって、光ファイバケーブル1から取り出した後に、容易にサブユニット20を分離することができる。
【0042】
なお、上記実施形態では、光ファイバテープ心線10は上記のように間欠連結型であるが、全ての光ファイバ心線間が長手方向に連結された通常の光ファイバテープ心線の形態であってもよい。
【0043】
次に、光ファイバケーブル1の製造方法について説明する。
複数本の光ファイバテープ心線10を束ねて集合体21を形成する。形成した集合体21の周囲にバンドル材30を巻き付けてサブユニット20を作製する。各集合体21に巻き付けるバンドル材30の数は、単数であっても、複数であってもよい。例えば、複数(二本)のバンドル材30を巻き付ける場合、逆向きに螺旋状に巻き付けて、両バンドル材が交差する交差点31を接着させる。
【0044】
ケーブルの長手方向に沿って形成される複数のリブ2を有し、リブ同士の間に光ファイバテープ心線10を収納するスロット溝3が形成されたスロットコア4を用意する。複数(本例では3個)のサブユニット20A~20Cを集合させて、スロットコア4の各スロット溝3内に収納する。サブユニット20A~20Cが収納されたスロットコア4の周囲に吸水テープ5を巻く。
【0045】
サブユニット20A~20Cがスロット溝3内に収納された状態で、押出成形によりケーブルの外被6を形成する。外被6を押出成形する際の熱を用いて、サブユニット20A~20Cのバンドル材30を加熱し、サブユニット間のバンドル材30同士を加熱溶着させる。
【0046】
上記光ファイバケーブル1の製造方法によれば、ケーブルの外被6を押出成形する際の熱を用いて、サブユニット20A~20Cのバンドル材同士を加熱溶着することができるので、バンドル材同士を加熱する工程を別途設ける必要がなくなり、製造工程を簡略化することができる。
【0047】
以上、本開示を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本開示の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本開示を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【符号の説明】
【0048】
1:光ファイバケーブル
2:リブ
3:スロット溝
4:スロットコア
6:外被
10:光ファイバテープ心線
11A~11L:光ファイバ心線
12:連結部
13:非連結部
20(20A~20C):サブユニット
21(21A~21C):集合体
30(30A1,30A2,30B1,30B2,30C1,30C2):バンドル材
31:交差点
32:接着箇所
41:内層材
42:外層材
図1
図2
図3
図4A
図4B