(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】蓄電デバイス及び蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20221227BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20221227BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20221227BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221227BHJP
H01G 11/26 20130101ALI20221227BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20221227BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M4/131
H01M4/133
H01M10/052
H01G11/26
H01G11/84
(21)【出願番号】P 2020075842
(22)【出願日】2020-04-22
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 慈
(72)【発明者】
【氏名】奥田 匠昭
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-028899(JP,A)
【文献】特開2019-075198(JP,A)
【文献】特開2018-152230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058
H01M 4/131
H01M 4/133
H01M 10/052
H01G 11/26
H01G 11/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に所定間隔で配列され負極活物質を含む複数の柱状負極と、
正極活物質を少なくとも含み前記柱状負極の周囲に存在する正極と、
イオン伝導性及び絶縁性を有し前記柱状負極と前記正極との間に介在する分離膜と、を備え、
前記柱状負極の長手方向に直交する断面において、
前記柱状負極の中心を結ぶ線を引き、前記柱状負極の直径Dの半分の幅で、対向する前記柱状負極同士の間隔Lの間に存在する領域であって、対向する前記柱状負極の間に存在する前記正極の領域
を短辺部と
し、前記短辺部の両側にある三角形の領域であって、前記短辺部の間に存在する前記正極の領域
を長辺部としたときに、前記短辺部に比して前記長辺部の空隙率が大きい、
蓄電デバイス。
【請求項2】
前記正極は、前記柱状負極から遠いほど空隙率が大きい傾向を有する、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記正極は、前記短辺部に対する前記長辺部の空隙率比が1.05以上2.0以下の範囲である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記正極は、前記短辺部に対する前記長辺部の空隙率比が1.10以上1.6以下の範囲である、請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記柱状負極は、平均直径が10μm以上500μm以下の範囲であり、隣り合う前記柱状負極との間隔が10μm以上500μm以下の範囲である、請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
【請求項6】
前記柱状負極は、前記負極活物質として炭素質材料を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
【請求項7】
前記分離膜を介して前記正極と隣り合う状態で複数の前記柱状負極が結束された構造を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
【請求項8】
負極活物質を含む複数の柱状負極と、正極活物質を少なくとも含み前記柱状負極の周囲に存在する正極と、イオン伝導性及び絶縁性を有し前記柱状負極と前記正極との間に介在する分離膜とを有する単セルを、所定間隔で配列して結束する結束工程、を含み、
前記結束工程では、前記柱状負極の長手方向に直交する断面において、
前記柱状負極の中心を結ぶ線を引き、前記柱状負極の直径Dの半分の幅で、対向する前記柱状負極同士の間隔Lの間に存在する領域であって、対向する前記柱状負極の間に存在する前記正極の領域
を短辺部と
し、前記短辺部の両側にある三角形の領域であって、前記短辺部の間に存在する前記正極の領域
を長辺部としたときに
、前記短辺部に比して空隙率が大きい前記長辺部となるように前記単セルを結束する、
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記結束工程では、前記柱状負極から遠いほど空隙率が大きい傾向を有する前記正極となるように前記単セルを結束する、請求項8に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記結束工程では、前記短辺部に対する前記長辺部の空隙率比が1.05以上2.0以下の範囲の前記正極となるように前記単セルを結束する、請求項8又は9に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記結束工程では、前記短辺部に対する前記長辺部の空隙率比が1.10以上1.6以下の範囲の前記正極となるよう前記単セルを結束する、請求項8~10のいずれか1項に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記結束工程では、平均直径が10μm以上500μm以下の範囲である前記柱状負極を用い、隣り合う前記柱状負極との間隔が10μm以上500μm以下の範囲となるよう前記単セルを結束する、請求項8~11のいずれか1項に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記結束工程では、前記負極活物質として炭素質材料を含む前記柱状負極を用いる、請求項8~12のいずれか1項に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記結束工程では、結束圧を1MPa以上500MPa以下の範囲で前記単セルを結束する、請求項8~13のいずれか1項に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、蓄電デバイス及び蓄電デバイスの製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電デバイスに用いられる正極活物質としては、例えば、内部に複数の空隙部と、空隙部と外部との連通孔を備え、電解液および導電助剤の内部への浸入を可能とするものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この正極活物質では、容量特性、サイクル特性と共に出力特性を向上することができるとしている。また、正極活物質としては、第1リチウム複合金属酸化物を含むコアと、コアを取り囲みながら位置し第2リチウム複合金属酸化物を含むシェルと、及びコアとシェルとの間に位置し第3リチウム複合金属酸化物を含む緩衝層を含み、第2リチウム複合金属酸化物が活物質粒子の中心から表面に放射状に配向された結晶配向性を有するものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この正極活物質では、高い出力特性及び寿命特性を有する、としている。また、蓄電デバイスの負極としては、例えば、基板と、基板に固着されているナノワイヤテンプレートと、ナノワイヤテンプレートを実質的にコーティングする第1の密度を有する第1のシリコン層と、第1のシリコン層の密度より高い密度を有する第2のシリコン層とを備えるものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。また、蓄電デバイスとしては、分離膜を介して正極と隣り合う状態で複数の柱状負極が結束された構造を有し、柱状負極が6体積%以上30体積%以下の範囲の空孔率であり50μm以上300μm以下の範囲の径方向の長さで形成された柱状炭素材料であるものが提案されている(例えば、特許文献4参照)。この蓄電デバイスでは、出力特性をより向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-95505号公報
【文献】国際公開第2016/068594号パンフレット
【文献】特表2017-521812号公報
【文献】特開2019-75198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1~3では、活物質粒子の内部構造に密度が不均一な部分を有するものであるが、合成方法が複雑であり、容易に得ることはできなかった。また、特許文献4の蓄電デバイスでは、柱状負極の構造をより良好にするものであるが、正極については十分考慮されていなかった。このような蓄電デバイスでは、例えば、出力性能をより均一にすることが求められていた。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、出力性能をより均一にすることができる新規な蓄電デバイス及び蓄電デバイスの製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、柱状負極を結束して電極構造体とする際に、正極に所定の空隙率の分布を持たせると、電解液などイオンの移動の不均一性を緩和することができることを見いだし、本明細書で開示する発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本明細書で開示する蓄電デバイスは、
所定方向に所定間隔で配列され負極活物質を含む複数の柱状負極と、
正極活物質を少なくとも含み前記柱状負極の周囲に存在する正極と、
イオン伝導性及び絶縁性を有し前記柱状負極と前記正極との間に介在する分離膜と、を備え、
前記柱状負極の長手方向に直交する断面において、対向する前記柱状負極の間に存在する前記正極の領域である短辺部と前記短辺部の間に存在する前記正極の領域である長辺部としたときに、前記短辺部に比して前記長辺部の空隙率が大きいものである。
【0008】
本明細書で開示する蓄電デバイスの製造方法は、
負極活物質を含む複数の柱状負極と、正極活物質を少なくとも含み前記柱状負極の周囲に存在する正極と、イオン伝導性及び絶縁性を有し前記柱状負極と前記正極との間に介在する分離膜とを有する単セルを、所定間隔で配列して結束する結束工程、を含み、
前記結束工程では、前記柱状負極の長手方向に直交する断面において、対向する前記柱状負極の間に存在する前記正極の領域である短辺部と前記短辺部の間に存在する前記正極の領域である長辺部としたときに前記短辺部に比して空隙率が大きい前記長辺部となるように前記単セルを結束する。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、出力性能をより均一にする新規な蓄電デバイスおよび蓄電デバイスの製造方法を提供することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、複数の柱状負極を所定間隔で配列しその間に正極が介在する電極構造体は、従来のシート状の正負極を積層した電極対に比して、負極の全周囲からキャリアのイオンを吸蔵放出させることができ、イオンの吸蔵放出に必要な移動距離が小さいため、高出力化、急速充放電などの出力特性が向上する。さらに、柱状負極同士の距離が比較的短い短辺部では正極の空隙率を低減することで出力容量を向上することができ、短辺部よりも負極間の距離が長い領域を含む長辺部では、正極の空隙率が大きいことで電解液が動きやすくなるため、出力容量を向上することができる。このため、電極体全体の出力性能を向上させることができるものと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】正極16の短辺部16a及び長辺部16bの説明図。
【
図4】電極構造体の断面のSEM画像及び画像二値化の説明図。
【
図5】実験例1の短辺部及び長辺部の平均空隙率の測定結果。
【
図6】積層型の電極構造体において、密度分布を生じさせた構造の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(蓄電デバイス)
実施形態で説明する本開示の蓄電デバイスは、柱状負極と、正極と、分離膜とを備える。柱状負極は、所定方向に所定間隔で配列された第1活物質を含む複数の柱状体である。正極は、正極活物質を少なくとも含み柱状負極の周囲に存在するものである。この正極は、正極活物質と導電材とを含むものとしてもよい。分離膜は、イオン伝導性及び絶縁性を有し柱状負極と正極との間に介在するものである。ここで、この蓄電デバイスは、例えば、ハイブリッドキャパシタ、リチウム二次電池、リチウムイオン電池などとしてもよい。また、「柱状」とは、屈曲しない太さのもののほか、屈曲可能な繊維状の太さのものも含むものとする。この柱状負極は、柱状であればよく、その断面は円形であってもよいし、多角形であってもよい。また、正極は、柱状負極の周りに存在するものとしてもよいし、柱状負極の間の空間に充填されているものとしてもよい。また、この蓄電デバイスは、分離膜を介して正極と隣り合う状態で複数の負極が結束された構造を有するものとしてもよい。この蓄電デバイスは、柱状負極、正極及び分離膜のうち1以上に電解液を含むものとしてもよい。また、正極及び負極には、集電線などの集電部材が埋設されているものとしてもよいし、この集電部材を備えないものとしてもよい。ここでは、説明の便宜のため、リチウムイオンをキャリアとするリチウムイオン二次電池をその主たる一例として以下説明する。
【0012】
次に、本実施形態で開示する蓄電デバイスについて図面を用いて説明する。
図1は、蓄電デバイス10の一例を示す模式図である。
図2は、蓄電デバイス10Bの一例を示す模式図である。蓄電デバイス10は、
図1に示すように、柱状負極11と、負極集電体12と、分離膜15と、正極16と、正極集電体17とを備えている。単セル18は、柱状負極11と、分離膜15と、正極16とにより構成されており、複数の単セル18が結束されたものを電極構造体とも称する。この蓄電デバイス10は、柱状負極11の周りに分離膜15を介して形成された正極合材層からなる正極16とを備えている。この蓄電デバイス10は、分離膜15及び正極16を介した状態で複数の柱状負極11が結束された構造を有する。また、この蓄電デバイス10では、50本以上の柱状負極11が結束された構造を有しているものとしてもよい。蓄電デバイス10Bは、柱状負極11と、柱状負極11の表面に形成された分離膜15と、柱状負極11の間に分離膜15を介して正極16が充填された構造を有する。
【0013】
柱状負極11は、活物質を含む柱状の物質である。この蓄電デバイス10では、複数の柱状の負極が所定方向に配列されている。柱状負極11は、端面以外の外周が分離膜15を介して正極16に対向している。例えば、柱状負極11は、セル全体の負極容量の1/nの容量を有し、n個が負極集電体12に並列接続されているものとしてもよい。この柱状負極11は、長手方向に垂直な断面の直径Dが10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、30μm以上であるものとしてもよい。また、柱状負極11の直径Dは、800μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、400μm以下であるものとしてもよい。この直径Dが10μm以上では、電極構造体としての強度を担保することができ安定した充放電ができる。また、この直径Dが800μm以下ではキャリアイオンの移動距離が長くなりすぎず、高出力性能が得られる。また、この直径Dが10~500μmの範囲では、単位体積あたりのエネルギー密度をより高めることができる。あるいは、この範囲では、キャリアイオンの移動距離をより短くすることができ、より大きな電流で充放電を行うことができる。この柱状体の長手方向の長さは、蓄電デバイスの用途などに応じて適宜定めることができ、例えば、20mm以上200mm以下の範囲などとしてもよい。柱状体の長さが20mm以上では、電池容量をより高めることができ好ましく、200mm以下では、負極の電気抵抗をより低減することができ好ましい。この負極は、負極活物質としての炭素材料を含むものとしてもよい。炭素材料としては、例えば、グラファイト類や、コークス類、ガラス状炭素類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類のうち1以上が挙げられる。このうち、人造黒鉛、天然黒鉛などのグラファイト類が好ましい。また、グラファイト構造を有する炭素繊維としてもよい。このような炭素繊維は、例えば、繊維方向である長手方向に結晶が配向したものが好ましい。また、長手方向(繊維方向)に直交する方向に断面視したときに結晶が中心から外周面側に放射状に配向したものであることが好ましい。あるいは、柱状の負極は、キャリアのイオンを吸蔵放出可能な複合酸化物を柱状体に成形したものとしてもよい。複合酸化物としては、例えば、リチウムチタン複合酸化物やリチウムバナジウム複合酸化物などが挙げられる。この負極は、その表面の少なくとも一部に導電成分が形成されているものとしてもよい。この導電成分により、導電性をより高めることができる。この導電成分は、導電性の高い材料であれば特に限定されないが、例えば、金属としてもよい。
【0014】
負極集電体12は、導電性を有する部材であり、柱状負極11の端面が電気的に接続されている。負極集電体12には、50本以上の柱状負極11が並列接続されている。この負極集電体12は、例えば、カーボンペーパー、アルミニウム、銅、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、白金、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化(還元)性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタン、銀、白金、金などで処理したものも用いることができる。負極集電体12の形状は、複数の柱状負極11が接続できるものであれば特に限定されず、例えば、板状、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。
【0015】
分離膜15は、キャリアであるイオン(例えばリチウムイオン)のイオン伝導性を有し柱状負極11と正極16とを絶縁するものである。分離膜15は、正極16と対向する柱状負極11の外周面の全体に形成されており、柱状負極11と正極16との短絡を防止している。この分離膜15は、例えば、樹脂を含む原料溶液から自立膜を作製し、柱状負極11の表面をこの自立膜で被覆させることにより形成されてもよいし、原料溶液へ柱状負極11を浸漬させてその表面にコートすることにより形成されるものとしてもよい。この分離膜15の樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)や、PVdFとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(PVdF-HFP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、及びPMMAとアクリルポリマーとの共重合体などが挙げられる。例えば、PVdFとHFPとの共重合体では、電解液の一部がこの膜を膨潤ゲル化し、イオン伝導膜となる。この分離膜15の厚さtは、例えば、2μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、8μm以上であるものとしてもよい。厚さtが2μm以上では、絶縁性を確保する上で好ましい。特に、分離膜15の厚さが2μm以上であれば、作製しやすい。また、分離膜15の厚さtは、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。厚さtが15μm以下では、イオン伝導性の低下を抑制できる点や、セルに占める体積をより低減する上で好ましい。厚さtが2~15μmの範囲では、イオン伝導性及び絶縁性が好適である。
【0016】
分離膜15は、キャリアであるイオンを伝導する電解液を含むものとしてもよい。この電解液は、例えば、非水系溶媒などが挙げられる。電解液の溶媒としては、例えば、非水電解液の溶媒などが挙げられる。この溶媒としては、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート、エチル-n-ブチルカーボネート、メチル-t-ブチルカーボネート、ジ-i-プロピルカーボネート、t-ブチル-i-プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ-ブチルラクトン、γ-バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3-ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。この電解液には、蓄電デバイス10のキャリアであるイオンを含む支持塩を溶解したものとしてもよい。支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiClO4などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。この支持塩は、電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。
【0017】
正極16は、正極活物質と導電材と結着材とを含み、柱状負極11の外周に分離膜15を介して形成されているものとしてもよい。正極16は、単セル18の作製時において、柱状の柱状負極11を内包し断面の外形を六角形状とするものとしてもよい(
図1参照)。この形状であれば、正極活物質が外周に形成された柱状負極11を結束すると、正極16が柱状負極11の間に充填されやすく好ましい。この正極16は、複数の柱状負極11の間に存在するものとすればよく、
図1に示すように、外形が六角形状であることに限定されない。正極16は、導電材を含み、それ自体に導電性を有するものとし、集電部材などは省略されているものとしてもよい。正極16は、その端面が正極集電体17に直接接続されているものとしてもよいし、側面に正極集電体が接続されるものとしてもよい。この正極16は、例えば、柱状負極11の外周に分離膜15を形成したのち、その外周に正極16の原料を塗布して形成されたものとしてもよい。
【0018】
正極活物質は、例えば、キャリアであるリチウムを吸蔵放出可能な材料が挙げられる。正極活物質としては、例えば、リチウムと遷移金属とを有する化合物、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物や、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物などが挙げられる。具体的には、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0≦x≦1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn2O4などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoaNibMncO2(a>0、b>0、c>0、a+b+c=1)、Li(1-x)CoaNibMncO4(0<a<1、0<b<1、1≦c<2、a+b+c=2)などとするリチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV2O3などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV2O5などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。また、基本組成式をLiFePO4とするリン酸鉄リチウム化合物などを正極活物質として用いることができる。これらのうち、リチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物、例えば、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2やLiNi0.4Co0.3Mn0.3O2などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素、例えば、AlやMgなどの成分を含んでもよい趣旨である。
【0019】
正極に含まれる導電材は、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。正極や負極に用いられる導電材は、例えば、粒子状導電材と繊維状導電材とを含むことが好ましい。結着材は、活物質粒子や導電材粒子を繋ぎ止めて所定の形状を保つ役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。
【0020】
正極16において、正極活物質の含有量は、より多いことが好ましく、正極16の質量全体に対して70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。導電材の含有量は、正極16の全体の質量に対して0質量%以上20質量%以下の範囲であることが好ましく、0質量%以上10質量%以下の範囲であることがより好ましい。このような範囲では、電池容量の低下を抑制し、導電性を十分に付与することができる。また、結着材の含有量は、正極16の質量全体に対して0.1質量%以上5質量%以下の範囲であることが好ましく、0.2質量%以上3質量%以下の範囲であることがより好ましい。また、正極16は、正極活物質と導電材と結着材とを含む正極合材層の密度が2.0g/cm3以上であることが好ましく、2.5g/cm3以上であることがより好ましい。正極合材層の密度がより高いほど蓄電デバイスのエネルギー密度をより高めることができ好ましい。この密度は、作製の容易性から3.0g/cm3以下であることが好ましい。
【0021】
正極16は、
図3に示すように、柱状負極11の長手方向に直交する断面において、対向する柱状負極11の間に存在する正極16の領域である短辺部16aと短辺部16aの間に存在する正極16の領域である長辺部16bと規定することができる。正極16は、短辺部16aに比して長辺部16bの空隙率が大きいものとする。この正極16は、柱状負極11から遠いほど空隙率が大きい傾向を有するものとしてもよい。短辺部16aは、例えば、空隙率が15体積%以上であることが好ましく、20体積%以上であることがより好ましく、25体積%以上としてもよい。また、短辺部16aは、空隙率が45体積%以下であることが好ましく、40体積%以下であることがより好ましく、35体積%以下としてもよい。長辺部16bは、例えば、空隙率が30体積%以上であることが好ましく、35体積%以上であることがより好ましく、40体積%以上としてもよい。また、長辺部16bは、空隙率が60体積%以下であることが好ましく、55体積%以下であることがより好ましく、50体積%以下としてもよい。また、短辺部16aに対する長辺部16bの空隙率比は、1.05以上であることが好ましく、1.10以上であることがより好ましく、1.15以上としてもよい。また、この空隙率比は、2.0以下であることが好ましく、1.6以下であることがより好ましく、1.5以下であるものとしてもよい。また、隣り合う柱状負極11との間隔Lが10μm以上500μm以下の範囲であり、この空間に正極16が存在することが好ましい。この間隔Lは、15μm以上であることが好ましく、30μm以上としてもよい。また、この間隔Lは、400μm以下であることが好ましく、200μm以下としてもよい。
【0022】
正極集電体17は、導電性を有する部材であり、正極16に電気的に接続されている。正極集電体17には、50本以上の正極16の端面が並列接続されている。この正極集電体17は、負極集電体12で説明したいずれかの部材とするものとしてもよい。
【0023】
この蓄電デバイス10において、放電容量は、より大きいことが好ましいが、0.16mAh以上であることが好ましく、0.17mAh以上がより好ましく、0.18mAh以上が更に好ましい。このときの蓄電デバイス10の体積エネルギー密度は、より高いことがより好ましく、例えば、650Wh/L以上であることが好ましく、830Wh/L以上であることがより好ましく、900Wh/L以上であることが更に好ましい。この蓄電デバイス10において、正極活物質の容量に対する負極活物質の容量の比である正負極容量比(負極容量/正極容量)は、1.0以上1.5以下の範囲とすることが好ましく、より好ましくは1.2以下の範囲である。正極の形成厚さは、負極の直径及び正負極容量比に応じて適宜設定されるが、例えば、5μm以上50μm以下の範囲としてもよい。正極の形成厚さは、例えば、負極上に形成された部分のうち最大の厚さをいうものとする。
【0024】
(蓄電デバイスの製造方法)
本開示の蓄電デバイスは、以下の製造方法で製造されているものとしてもよい。本開示の蓄電デバイスの製造方法は、結束工程を含む。また、この製造方法は、結束工程の前に単セル形成工程を含むものとしてもよい。なお、柱状負極の表面に分離膜や正極合材層を形成した単セルを用意してこの単セル形成工程を省略してもよい。また、この製造方法において、上述した蓄電デバイスで説明した部材やサイズ、形状などを適宜適用するものとしてもよい。
【0025】
単セル形成工程では、柱状負極の表面に分離膜を形成したのち、正極合材層を形成する。この工程では、負極活物質として炭素質材料を含む柱状負極を用いることが好ましい。分離膜の形成は、上述した分離膜の原料を柱状負極に塗布するものとしてもよいし、柱状負極を分離膜の原料液中に浸漬するものとしてもよい。その後、この柱状負極を乾燥させるものとしてもよい。次に、分離膜上に正極合材層を形成する。この正極合材は、例えば、正極活物質の粒子に導電材や結着材を混合し、溶媒を加えてスラリー状にして、分離膜上に塗布、又は浸漬するものとしてもよい。
【0026】
結束工程では、正極合材層と分離膜とを有する単セルを所定間隔で配列して結束する。このとき、柱状負極の長手方向に直交する断面において、対向する柱状負極の間に存在する正極の領域である短辺部と短辺部の間に存在する正極の領域である長辺部としたときに短辺部に比して空隙率が大きい長辺部となるように単セルを結束する。この工程において、例えば、単セルの結束圧は、1MPa以上が好ましく、10MPa以上がより好ましく、100MPa以上が更に好ましい。また、単セルの結束圧は、500MPa以下が好ましく、400MPa以下がより好ましく、300MPa以下が更に好ましい。この結束圧は、柱状負極の直径Dやその間隔L、正極合材の密度などに応じて適宜設定すればよい。この結束工程では、柱状負極から遠いほど空隙率が大きい傾向を有する正極となるように単セルを結束するものとしてもよい。また、結束工程では、短辺部に対する長辺部の空隙率比が好ましくは1.05以上、より好ましくは1.10以上、あるいは1.15以上の範囲の正極となるように単セルを結束するものとしてもよい。また、結束工程では、この空隙率比が好ましくは2.0以下、より好ましくは1.6以下、あるいは1.5以下の範囲の正極となるように単セルを結束するものとしてもよい。また、柱状負極の平均直径Dが10μm以上500μm以下の範囲であるときに、隣り合う柱状負極との間隔Lが10μm以上500μm以下の範囲となるよう単セルを結束するものとしてもよい。
【0027】
以上詳述した蓄電デバイス及びその製造方法では、出力性能をより均一にする新規なものを提供することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、複数の柱状負極を所定間隔で配列しその間に正極が介在する電極構造体は、従来のシート状の正負極を積層した電極対に比して、負極の全周囲からキャリアのイオンを吸蔵放出させることができ、イオンの吸蔵放出に必要な移動距離が小さいため、高出力化、急速充放電などの出力特性が向上する。さらに、柱状負極同士の距離が比較的短い短辺部では正極の空隙率を低減することで出力容量を向上することができ、短辺部よりも負極間の距離が長い領域を含む長辺部では、正極の空隙率が大きいことで電解液などキャリアイオンが動きやすくなるため、出力容量を向上することができる。このため、電極体全体の出力性能を向上させることができるものと推察される。
【0028】
また、柱状負極の間隔Lに応じて、距離が近いところでは正極合材の密度が大きいことによってイオンの量を増して出力容量を向上させ、距離が遠いところでは正極合材の密度が小さいことによって電解液が動きやすくなることから、イオンが移動速度を増して出力容量を向上させ、セル全体の出力性能を向上させることができる。また、電極あるいは電極構造体全体でのキャリア移動の歪を緩和することができるので、局所的なキャリア濃度むらを解消して、劣化の小さい電極構造体を実現することができる。
【0029】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0030】
例えば、上述した実施形態では、蓄電デバイスにおいて、柱状負極や正極は、集電部材を内包しないものについて説明したが、特にこれに限定されず、各電極は、集電線などの集電部材を埋設していてもよい。
【0031】
また、上述した実施形態では、蓄電デバイスのキャリアをリチウムイオンとしたが、特にこれに限定されず、ナトリウムイオンやカリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの2族元素イオンとしてもよい。また、正極活物質は、キャリアのイオンを含むものとすればよい。また、電解液を非水系電解液としたが、水溶液系電解液としてもよい。
【0032】
上述した実施形態では、柱状の負極は、円柱形状である例を説明したが、特にこれに限定されず、四角柱や六角柱などの形状としてもよい。
【0033】
上述した実施形態では、正極活物質を遷移金属複合酸化物としたが、特に限定されず、例えば、キャパシタに用いられる炭素材料としてもよい。炭素材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性炭類、コークス類、ガラス状炭素類、黒鉛類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維類、カーボンナノチューブ類、ポリアセン類などが挙げられる。このうち、高比表面積を示す活性炭類が好ましい。炭素材料としての活性炭は、比表面積が1000m2/g以上であることが好ましく、1500m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が1000m2/g以上では、放電容量をより高めることができる。この活性炭の比表面積は、作製の容易性から3000m2/g以下であることが好ましく、2000m2/g以下であることがより好ましい。なお、正極では、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を吸着・脱離して蓄電するものと考えられるが、さらに、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を挿入・脱離して蓄電するものとしてもよい。
【実施例】
【0034】
以下には、上述した蓄電デバイスを具体的に作製した例を実験例として説明する。
【0035】
(実験例1)
直径160μm、長さ6.0cmの柱状体の負極としてのカーボンロッドに対し、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)をN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させた溶液をディップ法で被覆、乾燥することで、7μmの膜厚でカーボンロッドの表面に分離膜としてのポリマー膜を均一塗布した。次に、正極活物質(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2)と、導電材としてのアセチレンブラック(デンカ社製HS-100)と、導電材としての気相成長炭素繊維(昭和電工製VGCF)と、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ製PVdF7305)とを質量比で90:3:3:4となるよう配合したものにN-メチルピロリドンを加えて正極合材ペーストとした。ポリマー被覆カーボンロッドに対して正極スラリーをディップコートして、カーボンロッド単位長さあたりの正極合材の目付量で0.35mg/cmとなるように正極合材層を形成した。このように作製したカーボンロッド/ポリマー膜/正極合材層の電極構造体の19本を積層し、正極合材層の短辺部に比して長辺部の空隙率がより高いものとなるように、静水圧プレスを用いてプレスした。得られた電極構造体を実験例1とした。
【0036】
上記の電極構造体の両端をAgペーストを介してNiタブに接続し、更に正極合材層とAl箔を介してAlタブを接続して、Alラミネートセルに挿入した。このラミネートセルに非水電解液を注液して封止することにより得られた試験セルを実験例1とした。非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)を体積比で30/40/30で混合した混合溶媒に、LiPF6を1Mの濃度で溶解させたものを用いた。
【0037】
(電極構造体のSEM観察)
上記作製した電極構造体の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。SEM観察では、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製S-3600N)を用い、柱状負極の長手方向に直交する断面を観察した。SEM観察は、1000~5000倍の条件で行った。
【0038】
(空隙率分布測定)
次に、正極の空隙率分布をSEM画像を用いて求めた。正極の短辺部及び長辺部は、以下の範囲に設定した。SEM画像において、柱状負極の中心を結ぶ線を引き、柱状負極の直径Dの半分の幅で、対向する負極同士の間隔Lの間に存在する領域を短辺部とした。また、短辺部の両側にある三角形の領域を長辺部とした(
図3参照)。
【0039】
図4は、電極構造体の断面のSEM画像及び画像二値化の説明図である。
図4の左上がSEM画像であり、右上が二値化の閾値の説明図であり、左下及び右下が二値化した画像である。SEM画像において、正極合材の輝度値に対して所定のマージン(例えば256階調で20など)を閾値とし、この閾値以下の領域を空隙とした。上記短辺部及び長辺部の空隙の面積を求め、短辺部全体の面積に対する空隙の面積をその短辺部の空隙率とし、短辺部の全体で平均値を求めた。同様に、長辺部全体の面積に対する空隙の面積をその長辺部の空隙率とし、長辺部の全体で平均値を求めた。
【0040】
図5は、実験例1の電極構造体の短辺部及び長辺部の平均空隙率の測定結果である。短辺部の平均空隙率は30%であり、長辺部の平均空隙率は45%であった。実験例1の電極構造体では、正極は、柱状負極から遠いほど空隙率が大きい傾向を有することがわかり、更に、短辺部に比して長辺部の空隙率が大きく、その空隙率比は、1.5倍であった。このように、長辺部の空隙率が短辺部に比して大きい値を示す電極構造体では、柱状負極同士の距離が比較的短い短辺部では正極の空隙率を低減することで出力容量を向上することができ、短辺部よりも負極間の距離が長い領域を含む長辺部では、正極の空隙率が大きいことで電解液が動きやすくなるため、出力容量を向上することができるものと推察された。
図6は、シート状電極を積層させた電極構造体(
図6A)、及び正極に密度分布を生じさせた電極構造体(
図6B)の一例を示す説明図である。
図6Bに示すように、正極と負極との距離に分布を有する構造では、負極間の距離が短い短辺部と、負極間の距離が長い長辺部とを有する。また、この電極構造体では、更に長辺部の空隙率がより高いものであるため、電解液の存在量が多く且つ移動が円滑であるから、短辺部で短期的な容量を発揮すると共に、長辺部で長期的な容量を発揮することができ、セル全体の出力性能を向上させることができるものと推察された。
【0041】
なお、本開示は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本開示は、蓄電デバイスの実装分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
10,10B 蓄電デバイス、11 柱状負極、12 負極集電体、15 分離膜、16 正極、16a 短辺部、16b 長辺部、17 正極集電体、18 単セル。