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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/06 20060101AFI20221227BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20221227BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
H01L29/06 301M
H01L29/06 301F
H01L29/06 301V
H01L29/78 652P
H01L29/78 655F
H01L29/78 652A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020559662
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2018046035
(87)【国際公開番号】W WO2020121508
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小川 嘉寿子
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-032728(JP,A)
【文献】特開2008-085086(JP,A)
【文献】特開2007-123570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/06
H01L 29/739
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子領域と前記素子領域の周囲を囲む周辺領域が上面に定義された半導体基体を備え、
前記半導体基体の上面から膜厚方向に延伸する溝の内壁面に配置された絶縁膜、及び前記溝の内部で前記絶縁膜の上に配置された導電体膜をそれぞれ有する複数のトレンチが、前記素子領域の周囲を囲んで前記周辺領域に多重に配置され、
前記周辺領域は、
前記素子領域に近い内側領域と、
前記内側領域の周囲に位置する外側領域を有し、
隣接する前記トレンチに挟まれた前記半導体基体の幅は、前記外側領域よりも前記内側領域の方が広く、
隣接する前記トレンチの配置間隔をトレンチピッチP1、隣接する前記トレンチ間の前記半導体基体の上面が露出した領域の幅をトレンチピラーP2として、トレンチ比P1/P2が1.5より小さい領域が前記内側領域であり、
前記半導体基体が、第1導電型の第1半導体層の上に第2導電型の第2半導体層が積層された構造であり、
前記トレンチが、前記第2半導体層の上面から延伸して前記第1半導体層に達して形成され、
前記内側領域の前記トレンチの底部から前記第1半導体層と前記第2半導体層とのPN接合面までの距離が、前記外側領域の前記トレンチの底部から前記第1半導体層と前記第2半導体層とのPN接合面までの距離よりも小さいことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
素子領域と前記素子領域の周囲を囲む周辺領域が上面に定義された半導体基体を備え、
前記半導体基体の上面から膜厚方向に延伸する溝の内壁面に配置された絶縁膜、及び前記溝の内部で前記絶縁膜の上に配置された導電体膜をそれぞれ有する複数のトレンチが、前記素子領域の周囲を囲んで前記周辺領域に多重に配置され、
前記周辺領域は、
前記素子領域に近い内側領域と、
前記内側領域の周囲に位置する外側領域を有し、
隣接する前記トレンチに挟まれた前記半導体基体の幅は、前記外側領域よりも前記内側領域の方が広く、
隣接する前記トレンチの配置間隔をトレンチピッチP1、隣接する前記トレンチ間の前記半導体基体の上面が露出した領域の幅をトレンチピラーP2として、トレンチ比P1/P2が1.5より小さい領域が前記内側領域であり、
前記内側領域に、前記トレンチの前記導電体膜と電気的に接続し、前記トレンチの開口部から前記素子領域に向かう延在部が前記半導体基体の上面の上に配置され、
前記外側領域には、前記トレンチの開口部から前記素子領域に向かう前記延在部が配置されていない、若しくは前記外側領域に配置された前記延在部の前記半導体基体の上面に沿った距離が前記内側領域に配置された前記延在部よりも短いことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記内側領域に前記トレンチが複数配置され、
前記内側領域において、前記素子領域に近い前記トレンチほど、前記延在部の前記半導体基体の上面に沿った距離が長いことを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記外側領域において、前記半導体基体の上面の上に前記延在部が配置されていないことを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐圧向上のための構造が形成される半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の耐圧を向上させるために、半導体素子が形成される素子領域の周囲の周辺領域に耐圧を向上するための構造が形成されている。例えば、内壁面に絶縁膜を形成した溝の内部に電極が埋め込まれたトレンチを周辺領域に配置して電界の集中を緩和することにより、半導体装置の耐圧の向上が図られている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-55347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大電流のスイッチング動作を行うパワー半導体素子などには、更なる耐圧の向上が望まれている。しかしながら、電極を埋め込んだトレンチを素子領域の周囲に配置する構造によって更に耐圧を向上させるためには、素子領域の周囲を囲むトレンチの囲み数を増やすために周辺領域の幅を広げる必要がある。このため、チップサイズが増大する問題があった。
【0005】
上記問題点に鑑み、本発明は、チップサイズの増大を抑制しつつ、耐圧が向上された半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、素子領域と前記素子領域の周囲を囲む周辺領域が上面に定義された半導体基体を備え、半導体基体の上面から膜厚方向に延伸する溝の内壁面に配置された絶縁膜、及び溝の内部で絶縁膜の上に配置された導電体膜をそれぞれ有する複数のトレンチが、素子領域の周囲を囲んで周辺領域に多重に配置され、周辺領域は、素子領域に近い内側領域と、内側領域の周囲に位置する外側領域を有し、隣接するトレンチに挟まれた半導体基体の幅は、外側領域よりも内側領域の方が広く、隣接するトレンチの配置間隔をトレンチピッチP1、隣接するトレンチ間の半導体基体の上面が露出した領域の幅をトレンチピラーP2として、トレンチ比P1/P2が1.5より小さい領域が前記内側領域であり、半導体基体が、第1導電型の第1半導体層の上に第2導電型の第2半導体層が積層された構造であり、トレンチが、第2半導体層の上面から延伸して第1半導体層に達して形成され、内側領域のトレンチの底部から第1半導体層と第2半導体層とのPN接合面までの距離が、外側領域のトレンチの底部から第1半導体層と第2半導体層とのPN接合面までの距離よりも小さい半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、チップサイズの増大を抑制しつつ、耐圧が向上された半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
図2】半導体基体の等電位面と空乏層の広がりを示す模式図である。
図3】比較例の等電位面と空乏層の広がりの例を示す模式図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の等電位面の例を示す模式図である。
図5】トレンチ比と半導体装置の耐圧の関係を示すグラフである。
図6】本発明の第1の実施形態の変形例に係る半導体装置のトレンチの構成を示す模式的な断面図である。
図7】本発明の第1の実施形態の変形例に係る半導体装置のトレンチの他の構成を示す模式的な断面図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部の長さの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0010】
また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものである。この発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。
【0011】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置は、図1に示すように、素子領域110と素子領域110の周囲を囲む周辺領域120が上面に定義された半導体基体10を備える。半導体基体10は、第1導電型の第1半導体層11の上に第2導電型の第2半導体層12が積層された構成である。半導体基体10の上面には、保護膜30が形成されている。
【0012】
第1導電型と第2導電型とは互いに反対導電型である。即ち、第1導電型がn型であれば、第2導電型はp型であり、第1導電型がp型であれば、第2導電型はn型である。以下では、第1導電型がn型、第2導電型がp型の場合を説明する。つまり、半導体基体10の第1半導体層11はn型であり、第2半導体層12はp型である。
【0013】
周辺領域120には、素子領域110の周囲を囲んで複数のトレンチ20が互いに離間して多重に配置されている。即ち、平面視で、複数の環状のトレンチ20が素子領域110の周囲に配置されている。トレンチ20は、半導体基体10の上面から膜厚方向に延伸する溝の内壁面に配置された絶縁膜21、及び溝の内部で絶縁膜21の上に配置された導電体膜22を有する。トレンチ20の溝は、第2半導体層12の上面から延伸して第1半導体層11に達する。トレンチ20の底面及び側面では、絶縁膜21を介して導電体膜22と半導体基体10が対向し、絶縁膜21の底部は、溝の側面と接する第1半導体層11と第2半導体層12との接合部よりも下側に位置する。トレンチ20の内部に配置された導電体膜22は、電気的にフローティング状態である。素子領域110の第2半導体層12は、半導体装置の表面電極(不図示)と電気的に接続している。周辺領域120の第2半導体層12は、電気的にフローティング状態である。半導体基体10の上面の外縁に沿って配置されたチャネルストッパ領域40を介して、半導体基体10の端部側の上面に形成されたチャネルストッパ電極50が裏面電極60と電気的に接続している。
【0014】
図1に示すように、周辺領域120のうち素子領域110に近い一定の範囲の内側領域121においては、トレンチ20の導電体膜22の上部の一部が、絶縁膜を介して半導体基体10のトレンチ20の配置されていない領域の上面に延在する。図1では、半導体基体10の上面に延在する導電体膜22の部分を延在部221として示している(以下において同様。)。延在部221は導電体膜22と電気的に接続している。一方、周辺領域120のうち内側領域121の周囲を囲む外側領域122においては、トレンチ20の導電体膜22は半導体基体10の上面に延在していなくてもよい。なお、延在部221の半導体基体10の上面に沿った距離(図1の長さL)を、外側領域122において内側領域121よりも短くしてもよい。
【0015】
図示を省略するが、素子領域110には、例えばゲートトレンチ構造のMOSFETやIGBTなどの縦型スイッチング素子が形成される。縦型スイッチング素子が素子領域110に形成された場合、半導体基体10の裏面に裏面電極が形成される。
【0016】
半導体装置をオフ又は逆バイアス状態にした場合に、図2に等電位面Sで示すような電位分布が周辺領域120に生じる。トレンチ20の側面及び底面から空乏層が伸びることにより、周辺領域120において空乏層が横方向・下方向に広がり、電界の集中が緩和される。これにより、半導体装置の耐圧を向上させることができる。なお、素子領域110に近いほど電界が集中する。このため、内側領域121のトレンチ20間の距離(隣り合うトレンチ20で挟まれた領域の半導体基体10の平面視の幅)は、外側領域122のトレンチ20間の距離よりも長くなっている。更に内側領域121において、トレンチ20間の距離が素子領域110に近いほど広く設定されている。ちなみに、トレンチ20間の距離は素子領域110に近い程広くしてもよいし、一定であってもよい。
【0017】
トレンチ20は、例えば、以下のように形成される。即ち、周辺領域120にトレンチ20の溝を形成した後に、熱酸化法などを用いて溝の内壁面に絶縁膜21を形成する。次いで、溝の内部に導電体膜22を形成する。導電体膜22は、不純物がドープされたポリシリコン膜などである。例えば、溝が導電体膜22で埋め込まれるように、半導体基体10の上面の全面に導電体膜22を形成する。そして、フォトリソグラフィ技術などを用いて、延在部221が半導体基体10の上面に残るように、内側領域121のトレンチ20の導電体膜22をパターニングする。従来構造のような延在部221を有しない構造の場合、導電体膜22を平坦化する際、導電体膜22の上面を半導体基体10の上面より低くすることがあり、低くするほど耐圧が下がるという問題がある。第1の実施形態のように、延在部221が半導体基体10の上面に残る構造とすることで、エッチングバラツキに影響されず安定した耐圧を得られるという利点を有する。一方、外側領域122については、トレンチ20の導電体膜22の上面の位置が、半導体基体10の上面の位置よりも下方又は半導体基体10の上面とほぼ同じになるように、半導体基体10の上面の上の導電体膜22が除去される。
【0018】
なお、素子領域110にゲートトレンチ構造の半導体素子を形成する場合に、ゲートトレンチの形成と同時にトレンチ20の溝を形成してもよい。そして、ゲートトレンチの内壁面にゲート絶縁膜を形成するのと同時にトレンチ20の絶縁膜21を形成し、ゲート電極の形成と同時に導電体膜22を形成する。このとき、トレンチ20の溝の幅は、周辺領域120の全域で同一にしてもよい。
【0019】
図1に示した半導体装置では、トレンチ20の底部の素子領域110に対向するコーナー部Cに、電界が集中する。特に、素子領域110に近いトレンチ20の底部の素子領域110に対向するコーナー部Cほど電界が集中する。図1に示した半導体装置では、素子領域110に近い内側領域121において、トレンチ20の延在部221が、トレンチ20の開口部から半導体基体10の上面の上に絶縁膜を介して素子領域110側へ延在している。これにより、以下に説明するように、コーナー部Cでの電界の集中を緩和できる。
【0020】
半導体装置をオフ状態又は逆バイアス状態にした場合に、トレンチ20の側面及び底面に空乏層が生じる。ここで、トレンチ20の素子領域側の側面はトレンチ20の外側の側面よりも電界集中が生じやすい。特に、外側領域122よりも内側領域121のトレンチ20で電界集中が生じやすい。内側領域121では、延在部221の下方の半導体基体10内にも空乏層が生じるので、内側領域121においてトレンチ20の素子領域110側の側面側における等電位面の間隔が広くなり、コーナー部Cでの電界の集中が緩和される。
【0021】
図3及び図4に、半導体基体10の電位分布と空乏層の状況をシミュレーションした結果の例を示す。図3は、延在部221が形成されない比較例のトレンチ20の等電位面S1~S4と空乏層の状況を示している。図4は、延在部221を形成したトレンチ20の等電位面S1~S4と空乏層の状況の例を示している。等電位面S1は、素子領域110に近い側の等電位面であり、等電位面S2~S4は等電位面S1よりも外側の等電位面である。図3図4を比較して明らかなように、延在部221を形成したトレンチ20では、等電位面の間隔がより広くなり、電界の集中がより緩和され、トレンチ20の側面及び延在部221下方の半導体基体10の上面付近で空乏層がより広がっている。その結果、半導体装置の耐圧が向上する。
【0022】
なお、素子領域110に近いトレンチ20ほど、電界が集中しやすい。このため、素子領域110に向かう方向に延在させる延在部221の長さLを、素子領域110に近いトレンチ20ほど長くしてもよい。また、素子領域110に近いトレンチ20から延在する延在部221の長さLが、外側領域122に近いトレンチ20から延在する延在部221よりも長くなっていればよい。その中間の残りのトレンチ20から延在する延在部221の長さLは、例えば4μm、4μm、3.5μm、3μm、2.5μm、2μmと、単数又は複数のトレンチ20毎に段階的に素子領域110側のトレンチ20から順に短くなっていてもよい。また、残りのトレンチ20から延在する延在部221は一定の長さとしてもよい。
【0023】
ところで、空乏層が半導体基体10の外縁まで延伸すると、リーク電流が発生したり耐圧が低下したりするなどの問題が生じる。このため、図1に示した半導体装置では、周辺領域120の外側領域122に配置されたトレンチ20については、導電体膜22が半導体基体10の上面に配置されていないことが望ましい。これにより、外側領域122では内側領域121のようには等電位面の間隔が広くなることがない。このため、空乏層が半導体基体10の外縁まで延伸することが抑制される。
【0024】
上記のように、素子領域110に近いために電界が集中しやすい内側領域121においてのみ、トレンチ20の延在部221を形成することが好ましい。なお、周辺領域120の内側領域121と外側領域122の境界の位置は、半導体装置に要求される耐圧などに応じて設定することができる。延在部221を形成するトレンチ20の本数が増えて内側領域121が外側に広がるほど、等電位面の間隔が広い領域が外側に延伸する。それにより、リーク電流が発生したり耐圧が低下したりするなどの信頼性の問題が生じる可能性がある。
【0025】
ここで、図1に示すように、隣接するトレンチ20の配置間隔をトレンチピッチP1、隣接するトレンチ20間の半導体基体10の上面が露出した領域の幅をトレンチピラーP2と定義する。図5に、本発明者らがトレンチ比P1/P2と半導体装置の耐圧との関係を調査した結果を示す。図5に示すように、トレンチ比P1/P2が1.5を超える場合に耐圧が安定する。このため、トレンチ比P1/P2が1.5より小さい領域を内側領域121とする。これにより、内側領域121を広げすぎることなく半導体装置の耐圧を効果的に向上させることができる。
【0026】
以上に説明したように、図1に示した半導体装置では、素子領域110に近い内側領域121に配置されたトレンチ20において、導電体膜22の一部である延在部221が半導体基体10の上面の上に絶縁膜を介して延在する。これにより、半導体基体10の等電位面の間隔を広げて空乏層の伸びを制御して、周辺領域120における電界の集中が緩和される。その結果、第1の実施形態に係る半導体装置によれば、素子領域110の周囲を囲むトレンチ20の囲み数を増大させることなく、耐圧を向上できる。したがって、チップサイズの増大を抑制しつつ耐圧を向上した半導体装置を実現できる。また、内側領域121では、延在部221と延在部221下方の半導体基体10との間に容量が生じ、延在部221がない時よりもトレンチ20の内側に生じる容量が大きくなる。その結果、トレンチ20の絶縁膜21にかかる電圧を低下させることができる。これにより、半導体装置の信頼性も向上する。
【0027】
<変形例>
図1に示した半導体装置では、トレンチ20の導電体膜22の延在部221が、トレンチ20の開口部から素子領域110に近い領域に向かって延在している。しかし、例えば、図6に示すように、トレンチ20の開口部から素子領域110に近い領域に向かって延在した部分とトレンチ20の開口部から半導体基体10の外縁に近い領域に向かって延在した部分に延在部221を配置してもよい。或いは、図7に示すように、トレンチ20の開口部から半導体基体10の外縁に近い領域に向かって延在した部分のみに延在部221を配置してもよい。
【0028】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る半導体装置は、図8に示すように、外側領域122よりも内側領域121において、トレンチ20の溝の深さが浅い。つまり、内側領域121と外側領域122とでトレンチ20の溝の深さが異なることが第1の実施形態と異なる点である。その他の構成については、図1に示す第1の実施形態と同様である。
【0029】
図8に示した半導体装置によれば、内側領域121において、トレンチ20の溝の底部から、トレンチ20の溝と接する第1半導体層11と第2半導体層12とのPN接合面までの距離Tを短くできる。その結果、内側領域121のトレンチ20の底部における等電位面の間隔が広がり、電界の集中を緩和できる。このため、半導体装置の耐圧を向上できる。
【0030】
内側領域121のトレンチ20の溝の深さは、例えば4.0μm程度であり、トレンチ20の溝の底部から溝の側面と接する第1半導体層11と第2半導体層12とのPN接合面までの距離Tは0μmから0.5μmである。一方、外側領域122のトレンチ20の溝の深さは、例えば4.5μm程度であり、トレンチ20の溝の底部から溝の側面と接する第1半導体層11と第2半導体層12とのPN接合面までの距離Tは0.5μmから1.5μmである。内側領域121と外側領域122とでトレンチ20の溝の深さを異なるようにするためには、種々の方法を使用可能である。例えば、内側領域121のトレンチ20の溝の幅を、外側領域122のトレンチ20の溝の幅よりも狭くする。このような溝を形成するマスクを半導体基体10上に設けて、内側領域121と外側領域122のトレンチ20の溝を同じプロセス条件で同時に形成して、外側領域122よりも内側領域121においてトレンチ20の溝を浅く形成することができる。なお、内側領域121のトレンチ20の溝と外側領域122のトレンチ20の溝を、プロセス条件の異なる別々の工程で形成してもよい。
【0031】
また、FETやIGBTなどを形成した素子領域110の半導体基体10の上面側に形成されるベース領域などの第2導電型(p型)の半導体領域の深さと第2半導体層12の深さは、同じ深さとしてもよいし、異なる深さとしてもよい。例えば、素子領域110のベース領域などの第2導電型の半導体領域の深さがトレンチ20の深さよりも浅い場合、素子領域110のベース領域などの第2導電型の半導体領域の深さよりも第2半導体層12の深さを深くしてもよい。これにより、素子領域110の第2導電型の半導体領域の深さに依存せず、距離Tを適宜調整することができる。
【0032】
また、内側領域121のトレンチ20の溝の深さと外側領域122のトレンチ20の溝の深さをほぼ同じ深さとし、内側領域121の第2半導体層12の深さを外側領域122の第2半導体層12の深さよりも深くしてもよい。これにより、内側領域121のトレンチ20の溝の深さと外側領域122のトレンチ20の溝の深さがほぼ同じであっても、距離Tを適宜調整することができる。
【0033】
本発明の第2の実施形態に係る半導体装置によれば、チップサイズの増大を抑制しつつ耐圧を更に向上することができる。他は、第1の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。なお、より好ましい例として、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に延在部221を有する構成で説明したが、第2の実施形態においては、延在部221を有さなくても電界の集中を緩和でき、半導体装置の耐圧を向上できる。
【0034】
上記のように本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の半導体装置は、高い耐圧が要求される半導体装置を製造する製造業を含む電子機器産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
10…半導体基体
11…第1半導体層
12…第2半導体層
20…トレンチ
21…絶縁膜
22…導電体膜
221…延在部
30…保護膜
110…素子領域
120…周辺領域
121…内側領域
122…外側領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8