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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】ストッカシステム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
B65G1/00 511A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021519297
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2020013802
(87)【国際公開番号】W WO2020230463
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2019091618
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】崔 ▲イン▼
(72)【発明者】
【氏名】馬場 信彦
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-335484(JP,A)
【文献】特開2015-009952(JP,A)
【文献】特開2003-267518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収容する棚と、前記物品を移載するスタッカクレーンと、前記棚及び前記スタッカクレーンを収容する本体部とを有するストッカが、前記スタッカクレーンの走行方向において複数配列されるストッカシステムであって、
複数の前記ストッカにそれぞれ配備される前記スタッカクレーンの動作を制御する動作制御部と、
隣り合う前記ストッカの間に設けられ、隣り合う前記ストッカのそれぞれに配備された前記スタッカクレーンの両方が進入可能であり少なくとも一つの前記スタッカクレーンを収容可能なメンテナンス室と、
前記メンテナンス室に収容された前記スタッカクレーンが、隣り合う前記ストッカのどちらに配備されているスタッカクレーンであるかを特定する特定部と、
基端部が前記ストッカに設けられると共に先端部が前記スタッカクレーンに接続される第一ケーブルと、
一方の前記ストッカと前記メンテナンス室との境界である第一境界部、及び他方の前記ストッカと前記メンテナンス室との境界である第二境界部のそれぞれに配置されており、前記第一ケーブルが通過可能な開口部及び前記開口部を開口する開口状態と閉口する閉口状態とに切り替える扉部を有する仕切板と、
前記第一境界部に配置される前記仕切板の開口の有無を検知する第一検知部と、
前記第二境界部に配置される前記仕切板の開口の有無を検知する第二検知部と、を備え、
前記特定部は、前記第一検知部及び前記第二検知部の検知結果に基づいて、前記特定部によって特定された前記スタッカクレーンが、隣り合う前記ストッカのどちらに配備されているスタッカクレーンであるかを特定し、
前記動作制御部は、前記特定部によって特定された前記スタッカクレーンの動作を制限する、ストッカシステム。
【請求項2】
前記動作制御部は、前記特定部によって特定された前記スタッカクレーンを動作させることを禁止する、請求項1記載のストッカシステム。
【請求項3】
複数の前記ストッカのそれぞれの内部に前記スタッカクレーンが存在するか否かを判定する判定部を更に備える、請求項1又は2記載のストッカシステム。
【請求項4】
前記ストッカには、二台の前記スタッカクレーンが配備されており、
前記動作制御部は、前記判定部によって一方の前記スタッカクレーンの存在が確認されたストッカにおける他方の前記スタッカクレーンの全域運転を禁止する、請求項記載のストッカシステム。
【請求項5】
基端部が前記ストッカに設けられると共に先端部が前記スタッカクレーンに接続される第二ケーブルと、
複数の前記ストッカのそれぞれに設けられ、前記第二ケーブルを検知する第三検知部と、を更に備え、
前記判定部は、前記第三検知部における検知結果に基づいて、前記ストッカの内部に前記スタッカクレーンが存在するか否かを判定する、請求項又は記載のストッカシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、物品を保管するストッカを備えるストッカシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
物品を搬送するスタッカクレーンを備えるストッカ(自動倉庫)が知られている。このようなストッカにおいては、スタッカクレーンがストッカ本体に配置された複数の棚に沿って移動し、入出庫ポートと棚との間で物品を搬送する。スタッカクレーンは、有線又は無線によって通信可能に設けられたコントローラによって自動運転制御がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-124687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなストッカをスタッカクレーンの走行方向に沿って複数配列させ、隣り合うストッカの間にスタッカクレーンのメンテナンス室を備えた新たなストッカシステムを開発するにあたり、メンテナンス室においてメンテナンス作業時の作業者の安全を確保することが求められている。
【0005】
そこで、本発明の一側面の目的は、メンテナンス作業時における作業者の安全を確保することができるストッカシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るストッカシステムは、物品を収容する棚と、物品を移載するスタッカクレーンと、棚及びスタッカクレーンを収容する本体部とを有するストッカが、スタッカクレーンの走行方向において複数配列されるストッカシステムであって、複数のストッカにそれぞれ配備されるスタッカクレーンの動作を制御する動作制御部と、隣り合うストッカの間に設けられ、隣り合うストッカのそれぞれに配備されたスタッカクレーンの両方が進入可能であり少なくとも一つのスタッカクレーンを収容可能なメンテナンス室と、メンテナンス室に収容されたスタッカクレーンが、隣り合うストッカのどちらに配備されているスタッカクレーンであるかを特定する特定部と、を備え、動作制御部は、特定部によって特定されたスタッカクレーンの動作を制限する。
【0007】
この構成によれば、メンテナンス室に収容されたスタッカクレーンが隣り合うストッカのどちらに配備されていたスタッカクレーンであるかを特定することができるので、メンテナンス室において動作を制限すべきスタッカクレーンの動作を確実に制限することができる。これにより、メンテナンス室に収容されたスタッカクレーンの動作によって作業者に危険が及ぶことを防止できる。この結果、メンテナンス作業時における作業者の安全を確保することができる。
【0008】
本発明の一側面に係るストッカシステムでは、動作制御部は、特定部によって特定されたスタッカクレーンを動作させることを禁止してもよい。これにより、メンテナンス作業時における作業者の安全をより確実に確保することができる。
【0009】
本発明の一側面に係るストッカシステムは、基端部がストッカに設けられると共に先端部がスタッカクレーンに接続される第一ケーブルと、一方のストッカとメンテナンス室との境界である第一境界部、及び他方のストッカとメンテナンス室との境界である第二境界部のそれぞれに配置されており、第一ケーブルが通過可能な開口部及び開口部を開口する開口状態と閉口する閉口状態とに切り替える扉部を有する仕切板と、第一境界部に配置される仕切板の開口の有無を検知する第一検知部と、第二境界部に配置される仕切板の開口の有無を検知する第二検知部と、を更に備え、特定部は、第一検知部及び第二検知部の検知結果に基づいて、特定部によって特定されたスタッカクレーンが、隣り合うストッカのどちらに配備されているスタッカクレーンであるかを特定してもよい。
【0010】
この構成のストッカシステムでは、スタッカクレーンに接続される第一ケーブルを利用することによって、より簡易な構成でメンテナンス室に収容されたスタッカクレーンが隣り合うストッカのどちらに配備されたスタッカクレーンであるかを特定することができる。
【0011】
本発明の一側面に係るストッカシステムは、複数のストッカのそれぞれの内部にスタッカクレーンが存在するか否かを判定する判定部を更に備えてもよい。この構成では、ストッカの内部にスタッカクレーンが存在する可能性を検知できるので、スタッカクレーンがメンテナンス室に収容されているか否かをより確実に判定することが可能になる。
【0012】
本発明の一側面に係るストッカシステムでは、ストッカには、二台のスタッカクレーンが配備されており、動作制御部は、判定部によって一方のスタッカクレーンの存在が確認されたストッカにおける他方のスタッカクレーンの全域運転を禁止してもよい。この構成では、ストッカにおいて二台のスタッカクレーン同士が衝突することを防止することができる。
【0013】
本発明の一側面に係るストッカシステムは、基端部がストッカに設けられると共に先端部がスタッカクレーンに接続される第二ケーブルと、複数のストッカのそれぞれに設けられ、第二ケーブルを検知する第三検知部と、を更に備え、判定部は、第三検知部における検知結果に基づいて、ストッカの内部にスタッカクレーンが存在するか否かを判定してもよい。この構成では、スタッカクレーンに接続される第二ケーブルを利用することによって、より簡易な構成でストッカにスタッカクレーンが存在するか否かを判定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によれば、メンテナンス作業時における作業者の安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施形態のストッカシステムの正面図である。
図2図2は、図1に含まれるストッカシステムの側面図である。
図3図3は、図1に含まれるスタッカクレーンの斜視図である。
図4図4は、図1に含まれるスタッカクレーンの一部を拡大した正面図である。
図5図5は、図1に含まれるスタッカクレーンに接続される電力ケーブルのU字部近傍の斜視図である。
図6図6は、図1に含まれるスタッカクレーンに接続される電力ケーブルの先端部近傍の斜視図である。
図7図7(a)は、開口状態の第二カバー部材の側面図であり、図7(b)は、閉口状態の第二カバー部材の側面図である。
図8図8は、図1のストッカシステムの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ実施形態について詳細に説明する。なお、同一又は相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
図1に示されるように、一実施形態のストッカシステム1は、複数のストッカ2を含んで構成されている。ストッカ2は、ストッカ本体3の内部をスタッカクレーン7A,7Bが走行し、ストッカ本体3の内部に設けられた複数の棚と入出庫ポート(図示せず)との間で物品Aを搬送する。ストッカ2には、例えば、搬送装置によって搬送されてきた物品Aが保管される。物品Aは、例えば、半導体製造装置又は液晶製造装置等で処理されるウエハを収容するFOUP(Front-Opening Unified Pod)、及び半導体製造装置又は液晶製造装置等で用いられるレチクルを収容するレチクルポッド等の容器である。
【0018】
ストッカシステム1では、二つ(複数)のストッカ2(ストッカ2A及びストッカ2B)が、ストッカ2の内部を走行するスタッカクレーン7A,7Bの走行方向に配列されている。ストッカシステム1は、それぞれのストッカ2の内部に配備される二台のスタッカクレーン7A,7B等の走行を制御するコントローラ10が設けられている。ストッカ2の内部に配備される二台のスタッカクレーン7A,7Bは、当該コントローラ10による制御によって、ラック4A,4Bの棚Sに物品Aを載置したり、棚Sから物品Aを取り出したりする。ストッカ2は、ストッカ本体3、ラック4A,4B、及びスタッカクレーン7A,7Bを備えている。
【0019】
図1及び図2に示されるように、ストッカ本体3は、一方向に延在する所定の空間を囲う筐体状(例えば、中空の直方体状)に形成されている。ストッカ本体3は、フレーム3aとパネル3bとによって構成されている。ストッカ本体3には、スタッカクレーン7A,7Bが走行する走行レール31と、鉛直方向において走行レール31と対向するように配置された補助レール32が敷設されている。スタッカクレーン7A,7Bは、走行レール31及び補助レール32に沿って走行する。ストッカ本体3には、スタッカクレーン7A,7Bが走行する走行領域A1が形成されている。
【0020】
ストッカ本体3には、ラック4A,4Bが配置されている。ラック4A及びラック4Bは、走行領域A1に沿って配置されている。また、ラック4A及びラック4Bは、走行領域A1(走行レール31)の延在方向及び鉛直方向に直交する幅方向に互いに対向するように配置されている。ラック4A,4Bのそれぞれには、物品Aが収容される棚Sが複数設けられている。
【0021】
メンテナンス室11は、ストッカ2の走行領域A1の延在方向における両端に配置されている。メンテナンス室11は、ストッカ2Aの左端に配置されるメンテナンス室11Aと、ストッカ2A及びストッカ2Bの間に配置されるメンテナンス室11Bと、ストッカ2Bの右端に配置されるメンテナンス室11Cとを有している。メンテナンス室11Aは、ストッカ2Aに配備されるスタッカクレーン7Aを収容可能に構成されている。メンテナンス室11Bは、ストッカ2Aに配備されたスタッカクレーン7B及びストッカ2Bに配備されたスタッカクレーン7Aをどちらも収容可能(進入可能)に構成されている。本実施形態では、メンテナンス室11Bは、スタッカクレーン7B及びスタッカクレーン7Aの二台を同時に収容するスペースはなく、スタッカクレーン7B及びスタッカクレーン7Aの一方を収容しているときには他方は収容できない。メンテナンス室11Cは、ストッカ2Bに配備されるスタッカクレーン7Bを収容可能に構成されている。
【0022】
ストッカ2Aとメンテナンス室11Bとの境界部である第一境界部13について説明する。第一境界部13は、フレーム3aに取り付けられるパネル3bによって構成される端部33と、シャッタ35と、第一カバー部材41と、第二カバー部材(仕切板)50とによって構成されている。走行レール31の延在方向から見たときに、端部33は、走行領域A1を挟むように配置され、ストッカ本体3の上端から下端まで延びている。
【0023】
シャッタ35は、走行レール31の延在方向から見たときに、走行領域A1に重なる位置に配置されている。すなわち、シャッタ35は、端部33,33によって挟まれている。また、シャッタ35は、上下方向において、スタッカクレーン7A及びスタッカクレーン7Bの走行部71よりも上方に対応する部分に配置されている。シャッタ35は、ストッカ2Aとメンテナンス室11Bとの間をスタッカクレーン7A及びスタッカクレーン7Bが行き来できる開状態、ストッカ2Aとメンテナンス室11Bとの間を遮蔽し、ストッカ2Aとメンテナンス室11Bとの間をスタッカクレーン7A及びスタッカクレーン7Bが行き来できない閉状態との間で状態を開閉することができる。シャッタ35における開状態及び閉状態は、第一シャッタ検知部35A(図8参照)によって検知される。第一シャッタ検知部35Aによる検知結果は、コントローラ10によって取得される。
【0024】
第一カバー部材41は、シャッタ35と同様に、走行レール31の延在方向から見たときに、走行領域A1に重なる位置に配置されている。すなわち、第一カバー部材41は、端部33,33によって挟まれている。また、第一カバー部材41は、上下方向において、シャッタ35の下方かつスタッカクレーン7A及びスタッカクレーン7Bの走行部71に対応する部分に配置されている。第一カバー部材41は、フレーム3aに対して着脱自在に設けられた板状部材であり、走行レール31に対応する部分が切り欠かれている。すなわち、第一カバー部材41は、走行レール31が通過可能に形成されている。
【0025】
第一カバー部材41は、フレーム3aから取り外されることにより、ストッカ2Aとメンテナンス室11Bとの間をスタッカクレーン7A及びスタッカクレーン7Bが行き来できる開状態とすることができる。また、第一カバー部材41は、フレーム3aに取り付けられることにより、ストッカ2Aとメンテナンス室11Bとの間を遮蔽し、ストッカ2Aとメンテナンス室11Bとの間をスタッカクレーン7A及びスタッカクレーン7Bが行き来できない閉状態とすることができる。
【0026】
第二カバー部材50は、第一カバー部材41と同様に、走行レール31の延在方向から見たときに、走行領域A1に重なる位置に配置されている。すなわち、第二カバー部材50は、端部33,33によって挟まれている。また、第二カバー部材50は、上下方向において、シャッタ35の下方かつ第一カバー部材41の右方に配置され、スタッカクレーン7A及びスタッカクレーン7Bの走行部71(より詳細には電力ケーブル8)に対応する部分に配置されている。
【0027】
第二カバー部材50は、フレーム3aから取り外されることにより、ストッカ2Aとメンテナンス室11Bとの間をスタッカクレーン7A及びスタッカクレーン7Bが行き来できる開状態とすることができる。第二カバー部材50は、フレーム3aに取り付けられることにより、ストッカ2Aとメンテナンス室11Bとの間を遮蔽し、ストッカ2Aとメンテナンス室11Bとの間をスタッカクレーン7A及びスタッカクレーン7Bが行き来できない閉状態とすることができる。なお、第二カバー部材50の詳細については、後段にて詳述する。
【0028】
ストッカ2Bとメンテナンス室11Bとの境界部である第二境界部14について説明する。第二境界部14は、第一境界部13と同様に、フレーム3aに取り付けられるパネル3bによって構成される端部33と、シャッタ35と、第一カバー部材41と、第二カバー部材(仕切板)50とによって構成されている。端部33、シャッタ35、第一カバー部材41、第二カバー部材50、及び第二シャッタ検知部35B(図8参照)の構成は上述したとおりなので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0029】
図1に示されるように、スタッカクレーン7A及びスタッカクレーン7Bのそれぞれは、走行レール31に沿って走行し、棚Sと入出庫ポートとの間で物品Aを搬送し、棚Sに対して物品Aの移載(荷積み及び荷下ろし)を行う。スタッカクレーン7Bは、図1において(正面から見て)、走行レール31及び補助レール32の延在方向におけるスタッカクレーン7Aの右側に配置されている。図3に示されるように、スタッカクレーン7Aは、走行部71、マスト72、移載部75、及び補助走行部90を備えている。走行部71は、走行用モータ78、昇降用モータ82、及びハウジング85を有している。
【0030】
走行部71は、走行レール31に沿って走行する。走行部71は、走行レール31の上面に沿って転動する駆動輪を含んでいる。走行用モータ78は、走行用駆動輪76の駆動源である。昇降用モータ82は、昇降台73の駆動源である。ハウジング85(図4及び図6参照)は、走行用モータ78及び昇降用モータ82を収容する。なお、図3では、ハウジングが取り外された状態が示されている。マスト72は、後段にて詳述する走行部71の上部に鉛直方向に立設されている。移載部75は、棚Sとの間で物品Aを移載すると共に、入出庫ポートとの間で物品Aを移載する。補助走行部90は、補助レール32に沿って走行する。補助走行部90は、補助レール32を挟み込んだ状態で転動する一対の駆動輪を含んでいる。
【0031】
図4図6に示されるように、スタッカクレーン7Aの走行部71には、可撓性の電力ケーブル8の先端部8aが接続されている。電力ケーブル8の基端部8bは、ストッカ本体3の略中央部に配置されている。電力ケーブル8は、ストッカ2A(又はストッカ2B)内に設置された電源部(図示せず)と、スタッカクレーン7Aとを接続する。すなわち、スタッカクレーン7Aは、電力ケーブル8を介して電源部(図示せず)から給電される。電力ケーブル8は、先端部8aと基端部8bとの間においてU字状に折り返すU字部8cを有している。なお、本実施形態の図5及び図6では、一方がストッカ本体3(基端部8b)に固定され、他方がスタッカクレーン7A(先端部8a)に固定されるケーブル支持案内部材に電力ケーブル8が収納された状態を示しているが、ケーブル支持案内部材はなくてもよい。
【0032】
図4及び図5に示されるように、ストッカ2Bに配備されたスタッカクレーン7Aに接続される電力ケーブル8のU字部8cは、スタッカクレーン7Aが左方への移動に伴って左方へ移動する。第二ケーブル検知部(第三検知部)38Bは、電力ケーブル8を検知する。ストッカ2Bに配置される第二ケーブル検知部38Bは、スタッカクレーン7Aが左方に移動してメンテナンス室11Bに収容されたときに、電力ケーブル8を検知しなくなるような位置に配置されている。第二ケーブル検知部38Bの例は、電力ケーブル8の接触の有無によってON/OFFが切り替わるスイッチである。
【0033】
ここで、スタッカクレーン7Aの電力ケーブル8は、走行レール31の延在方向から見て走行部71の左右方向における一方に設けられており、スタッカクレーン7Bの電力ケーブル8は、走行レール31の延在方向から見て走行部71の左右方向における他方に設けられている。このような構成によって、スタッカクレーン7Aの電力ケーブル8とスタッカクレーン7Bの電力ケーブル8とが互いに干渉しないようになっている。
【0034】
なお、スタッカクレーン7Bは、スタッカクレーン7Aの構成と左右対称になるものの機能に差異はないので、以下、スタッカクレーン7Bの詳細な説明は省略する。ストッカ2Aに配置されると共に、スタッカクレーン7Bに接続される電力ケーブル8を検知する第一ケーブル検知部(第三検知部)38Aは、スタッカクレーン7Bが右方に移動してメンテナンス室11Bに収容されたときに、電力ケーブル8を検知しなくなるような位置に配置されている。
【0035】
図7(a)及び図7(b)に示されるように、第一境界部13の第二カバー部材50は、本体部51とスライド部(扉部)52と、被検知部55Aと、を有している。本体部51は、フレーム3aに対して適宜の方法によって、フレーム3aに対して着脱可能に取り付けられている。スライド部52は、本体部51に対して、上下方向にスライド可能に設けられている。例えば、スライド部52は、本体部51に設けられたスライド溝51aに係合する係合部(図示せず)が設けられている。
【0036】
図2図7(a)及び図7(b)に示されるように、第一カバー部材41及び第二カバー部材50をフレーム3aに取り付け、第二カバー部材50のスライド部52を下方にスライドさせることによって開口部53が形成され(図7(a)参照)、第二カバー部材50のスライド部52を上方にスライドさせることによって開口部53が閉口(遮蔽)される(図7(b)参照)。開口部53は、走行レール31の延在方向から見たときに、電力ケーブル8の位置と対応するように設けられている。すなわち、開口部53は、第一境界部13(又は第二境界部14)を跨ぐ電力ケーブル8が通過可能な位置に形成されている。
【0037】
第二カバー部材50が取り付けられるフレーム3aには、被検知部55Aを検知する第一カバー検知部(第一検知部)58Aが設けられている。第一カバー検知部58Aは、第一カバー検知部58Aに近接する被検知部55A又は第一カバー検知部58Aに接触する被検知部55Aを検知する。このような被検知部55A及び第一カバー検知部58Aの特性によって、スライド部52が下方に位置するとき(開口状態のとき)、第一カバー検知部58Aは被検知部55Aを検知しない。また、スライド部52が上方に位置するとき(閉口状態のとき)、第一カバー検知部58Aは被検知部55Aを検知する。第一カバー検知部58Aにおける検知結果は、コントローラ10によって取得される。
【0038】
第二境界部14の第二カバー部材50も、第一境界部13の第二カバー部材50と同様に、本体部51とスライド部(扉部)52と、被検知部55Bと、を有している。また、第二カバー部材50が取り付けられるフレーム3aには、被検知部55Bを検知する第二カバー検知部(第二検知部)58Bが設けられている。ここでも、各部の機能は上記に説明したとおりなので、詳細な説明は省略する。
【0039】
コントローラ10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等からなる電子制御ユニットである。コントローラ10は、複数のストッカ2A,2Bにそれぞれ配備されるスタッカクレーン7A,7Bの各種動作を制御する。また、コントローラ10は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成することができる。コントローラ10は、電子回路等によるハードウェアとして構成されてもよい。コントローラ10では、CPU、RAM及びROM等のハードウェアと、プログラム等のソフトウェアとが協働することによって、下記に示す動作制御部10Aと、特定部10Bと、判定部10Cとが形成される。
【0040】
動作制御部10Aは、特定部10Bによって特定されたスタッカクレーン7Aの動作を制限する。より詳細には、動作制御部10Aは、特定部10Bによって特定されたスタッカクレーン7A又はスタッカクレーン7Bを動作させることを禁止する。
【0041】
動作制御部10Aは、判定部10Cによってストッカ2Aにおけるスタッカクレーン7B(一方のスタッカクレーン)の存在が確認されると、ストッカ2Aにおけるスタッカクレーン7A(他方のスタッカクレーン)の全域運転を禁止する。また、動作制御部10Aは、判定部10Cによってストッカ2Bにおけるスタッカクレーン7A(一方のスタッカクレーン)の存在が確認されると、ストッカ2Bにおけるスタッカクレーン7B(他方のスタッカクレーン)の全域運転を禁止する。例えば、動作制御部10Aは、判定部10Cによってストッカ2Bに配備されたスタッカクレーン7Aがストッカ2Bに存在することが確認された場合、ストッカ2Bに配備されたスタッカクレーン7Bにおけるストッカ2B内の全域運転を禁止する。
【0042】
特定部10Bは、メンテナンス室11Bに収容されたスタッカクレーンが、隣り合うストッカ2A又はストッカ2Bのどちらに配備されているスタッカクレーン(スタッカクレーン7A又はスタッカクレーン7B)であるかを特定する。特定部10Bは、第一カバー検知部58A及び第二カバー検知部58Bの検知結果に基づいて、スタッカクレーンが、隣り合うストッカ2A又はストッカ2Bのどちらに配備されているスタッカクレーン(スタッカクレーン7A又はスタッカクレーン7B)であるかを特定する。
【0043】
より詳細には、特定部10Bは、第一カバー検知部58Aによって被検知部55Aが検知されない場合(すなわち、開口部53が開口している状態)のときに、ストッカ2Aのスタッカクレーン7Bがメンテナンス室11Bに収容されていると特定する。また、特定部10Bは、第二カバー検知部58Bによって被検知部55Bが検知されない場合(すなわち、開口部53が開口している状態)のときに、ストッカ2Bのスタッカクレーン7Aがメンテナンス室11Bに収容されていると特定する。
【0044】
判定部10Cは、ストッカ2Aにスタッカクレーン7Bが存在するか否かを判定すると共に、ストッカ2Bにスタッカクレーン7Aが存在するか否かを判定する。より詳細には、判定部10Cは、第一ケーブル検知部38Aの検知結果に基づいて、ストッカ2Aにスタッカクレーン7Bが存在するか否かを判定し、第二ケーブル検知部38Bの検知結果に基づいて、ストッカ2Bにスタッカクレーン7Aが存在するか否かを判定する。
【0045】
次に、第一カバー部材41及び第二カバー部材50の使用方法について説明する。ストッカ2A及びストッカ2Bは、第一カバー部材41及び第二カバー部材50をフレーム3aに取り付けた状態で、スタッカクレーン7A及びスタッカクレーン7Bを稼働させる。すなわち、第一カバー部材41及び第二カバー部材50がフレーム3aに取り付けられないと、スタッカクレーン7A及びスタッカクレーン7Bが稼働しないように構成されている。第一カバー部材41及び第二カバー部材50がフレーム3aに取り付けられていることを検知するセンサ等の検知部を設けてもよい。
【0046】
ストッカ2Bのスタッカクレーン7Aをメンテナンス室11Bに収容したい場合には、作業者は、シャッタ35を開け、第一カバー部材41及び第二カバー部材50をフレーム3aから取り外す。そして、作業者は、スタッカクレーン7Aをメンテナンス室11Bに移動させる。次に、作業者は、第一カバー部材41をフレーム3aに取り付ける。次に、作業者は、スライド部52を下方に下げた状態(すなわち、開口部53が形成され、当該開口部53にスタッカクレーン7Aに接続された電力ケーブル8が挿通された状態)にして、第二カバー部材50をフレーム3aに取り付ける。これにより、スタッカクレーン7Aのメンテナンス室11Bへの収容が完了し、ストッカ2Bにおけるスタッカクレーン7Bの稼働が可能となる。メンテナンス室11Bに収容されたスタッカクレーン7Aは、上記のとおりコントローラ10によって動作されることが禁止される。
【0047】
メンテナンス室11Bに収容されたスタッカクレーン7Aをストッカ2Bに戻す場合は、上記の手順と逆の手順を踏む。また、ストッカ2Aのスタッカクレーン7Bをメンテナンス室11Bに収容したい場合も、ストッカ2Bのスタッカクレーン7Aをメンテナンス室11Bに収容した場合と同様の手順を踏めばよいので、詳細な説明を省略する。
【0048】
次に、本実施形態のストッカシステム1の作用効果について説明する。上記実施形態のストッカシステム1によれば、メンテナンス室11Bに収容されたスタッカクレーンが隣り合うストッカ2A又はストッカ2Bのどちらに配備されたスタッカクレーン(スタッカクレーン7A又はスタッカクレーン7B)であるかを特定することができるので、メンテナンス室11Bにおいて動作を制限すべきスタッカクレーンの動作を確実に制限することができる。これにより、メンテナンス室11Bに収容されたスタッカクレーンの動作によって作業者に危険が及ぶことを防止できる。この結果、メンテナンス作業時における作業者の安全を確保することができる。
【0049】
上記実施形態のストッカシステム1によれば、動作制御部10Aは、特定部10Bによって特定されたスタッカクレーン(スタッカクレーン7A又はスタッカクレーン7B)を動作させることを禁止するので、メンテナンス作業時における作業者の安全をより確実に確保することができる。
【0050】
上記実施形態のストッカシステム1によれば、スタッカクレーン7A及びスタッカクレーン7Bに接続される電力ケーブル8を利用してメンテナンス室11Bに収容されたスタッカクレーンを特定している。すなわち、第二境界部14及び第一境界部13に取り付けられる第二カバー部材50における開口の有無に基づいて、メンテナンス室11Bに収容されたスタッカクレーンを特定している。これにより、より簡易な構成でメンテナンス室11Bに収容されたスタッカクレーンが隣り合うストッカ2B又はストッカ2Aのどちらに配備されたスタッカクレーン(スタッカクレーン7A又はスタッカクレーン7B)であるかを特定することができる。
【0051】
上記実施形態のストッカシステム1では、ストッカ2Aにスタッカクレーン7Bが存在するか否かを判定すると共に、ストッカ2Bにスタッカクレーン7Aが存在するか否かを判定する判定部10Cを備えている。この構成では、ストッカ2Aの内部にスタッカクレーン7Bが存在する可能性を検知できると共にストッカ2Bの内部にスタッカクレーン7Aが存在する可能性を検知できるので、スタッカクレーン7Bがメンテナンス室11Bに収容されているか否か、スタッカクレーン7Aがメンテナンス室11Bに収容されているか否かをより確実に判定することが可能になる。
【0052】
上記実施形態のストッカシステム1では、動作制御部10Aは、判定部10Cによって、一方のスタッカクレーン7Bの存在が確認されたストッカ2Aにおける他方のスタッカクレーン7Aの全域運転を禁止し、一方のスタッカクレーン7Aの存在が確認されたストッカ2Bにおける他方のスタッカクレーン7Bの全域運転を禁止している。これにより、ストッカ2B及びストッカ2Aにおいて二台のスタッカクレーン7A及びスタッカクレーン7B同士が衝突することを防止することができる。
【0053】
上記実施形態のストッカシステム1では、判定部10Cは、電力ケーブル8を検知する第二ケーブル検知部38Bにおける検知結果に基づいて、ストッカ2Bにスタッカクレーン7Aが存在するか否かを判定すると共に、電力ケーブル8を検知する第一ケーブル検知部38Aにおける検知結果に基づいて、ストッカ2Aにスタッカクレーン7Bが存在するか否かを判定している。この構成では、より簡易な構成でストッカ2Aにスタッカクレーン7Bが存在するか否かを判定し、ストッカ2Bにスタッカクレーン7Aが存在するか否かを判定することができる。
【0054】
上記実施形態のストッカシステム1では、メンテナンス室11Bに存在するスタッカクレーン7A又はスタッカクレーン7Bを、電力ケーブル8の有無に基づいて判定する例を挙げて説明したが、本発明の一側面はこれに限定されない。例えば、メンテナンス室11Bにスタッカクレーン7A又はスタッカクレーン7Bが存在することを、スタッカクレーン7A又はスタッカクレーン7Bのいずれかのみを直接検出する複数のセンサによって検知することで、メンテナンス室11Bに収容されたスタッカクレーンが、隣り合うストッカのどちらに配備されているスタッカクレーンであるかを特定することができる。
【0055】
上記実施形態及び変形例では、電力ケーブル8が通過可能な開口部53及び開口部53を開口する開口状態と閉口する閉口状態とに切り替える扉部を上下方向にスライド可能なスライド部52として構成した例を挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、本体部51に開口部53を覆う部材を着脱自在な構成としてもよいし、蝶番等を利用して本体部51に開口部53を覆う部材を取り付けてもよい。
【0056】
上記実施形態及び変形例では、スタッカクレーン7A及びスタッカクレーン7Bに電力ケーブルが接続されている例を挙げて説明したが、この構成に代えて又は加えて、スタッカクレーン7A及びスタッカクレーン7Bに通信ケーブルが接続されていてもよい。
【0057】
上記実施形態及び変形例では、メンテナンス室11Bは、スタッカクレーン7B及びスタッカクレーン7Aの二台を同時に収容することができない構成を例に挙げて説明したが、スタッカクレーン7B及びスタッカクレーン7Aの両方を同時に収容できる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…ストッカシステム、2A,2B…ストッカ、3…ストッカ本体、7A,7B…スタッカクレーン、8…電力ケーブル(第一ケーブル・第二ケーブル)、10…コントローラ、10A…動作制御部、10B…特定部、10C…判定部、11…メンテナンス室、13…第一境界部、14…第二境界部、38A…第一ケーブル検知部(第一検知部)、38B…第二ケーブル検知部(第二検知部)、41…第一カバー部材、50…第二カバー部材(仕切板)、58A…第一カバー検知部(第一検知部)、58B…第二カバー検知部(第二検知部)、A…物品、A1…走行領域、S…棚。
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