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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】鉄道車両用ブレーキディスクユニット
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/12 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
F16D65/12 R
F16D65/12 B
F16D65/12 U
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021550526
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2020034076
(87)【国際公開番号】W WO2021065392
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2019178274
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020072438
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野上 裕
(72)【発明者】
【氏名】藤本 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 由衣子
(72)【発明者】
【氏名】西村 隆一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 充弘
(72)【発明者】
【氏名】佐野 薫平
(72)【発明者】
【氏名】宮部 成央
(72)【発明者】
【氏名】市川 雄基
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/099074(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/071169(WO,A1)
【文献】特開2007-205428(JP,A)
【文献】実開昭58-111442(JP,U)
【文献】実開昭58-102840(JP,U)
【文献】特開平10-103394(JP,A)
【文献】特開平8-4809(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3421833(EP,A1)
【文献】実開昭58-187633(JP,U)
【文献】国際公開第2019/082027(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/194203(WO,A1)
【文献】特開平5-321959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00 - 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両用のブレーキディスクユニットであって、
前記鉄道車両の車軸に取り付けられる回転部材と、
前記回転部材に対向する裏面を有する環状のディスク本体と、前記裏面上に放射状に配置される複数のフィンと、外面に形成される複数の第1凸部及び/又は複数の第1凹部と、を含むブレーキディスクと、
前記回転部材と前記複数のフィンとの間に挟まれる板状の支持部と、前記複数のフィンのうち前記ブレーキディスクの周方向において隣り合うフィンの間に少なくとも一部が配置され、前記支持部から前記ディスク本体に向かって突出する突出部と、を含み、前記隣り合うフィンの間の通気量を制御する制御部材と、
を備え、
前記突出部と前記ブレーキディスクとの間には隙間が形成され、
前記第1凸部及び/又は前記第1凹部は、前記ブレーキディスクの前記外面において、前記隙間のうち前記周方向に沿う断面の面積が最小となる部分である最小開口部よりも外周側に設けられる、ブレーキディスクユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキディスクユニットであって、
前記第1凸部及び/又は前記第1凹部は、前記ディスク本体の前記裏面に設けられる、ブレーキディスクユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のブレーキディスクユニットであって、
前記隣り合うフィンの各々には、当該フィンを前記周方向に横断する溝が形成され、
前記突出部は、前記隣り合うフィンの一方から他方にわたり、前記溝を通って前記周方向に延びている、ブレーキディスクユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のブレーキディスクユニットであって、
前記ブレーキディスクの前記外面には、前記第1凸部が設けられる、ブレーキディスクユニット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のブレーキディスクユニットであって、
前記ブレーキディスクは、さらに、前記外面に形成される複数の第2凸部及び/又は複数の第2凹部を含み、
前記第2凸部及び/又は前記第2凹部は、前記ブレーキディスクの前記外面において、前記最小開口部よりも内周側に設けられる、ブレーキディスクユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道車両用のブレーキディスクユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の制動装置として、ディスクブレーキ装置が広く使用されている。ディスクブレーキ装置は、環状のブレーキディスクと、ブレーキライニングと、を備える。ブレーキディスクは、例えば、車輪に締結され、車輪とともに回転する。ブレーキディスクには、ブレーキライニングが押し付けられる。ブレーキライニングとブレーキディスクとの摩擦により、ブレーキディスク及び車輪が制動される。
【0003】
例えば新幹線等、高速で走行する鉄道車両において、ディスクブレーキ装置のブレーキディスクには、その耐久性を確保する観点から、十分な冷却性能を有することが要求される。特に、高速鉄道車両が下り勾配区間を走行している間は、ブレーキディスクの制動が間欠的に行われる。このとき、ブレーキディスクの冷却性能が不十分であれば、ブレーキディスクが高温になり、結果としてブレーキディスクの耐久性が損なわれる。さらに、高温によりブレーキディスクが熱膨張することで、ブレーキディスクを車輪と締結するボルトへの負荷が増大する。
【0004】
一般に、ブレーキディスクの裏面には、制動時における冷却性能を確保するため、複数のフィンが放射状に形成されている。各フィンは、車輪に接触し、ブレーキディスクの裏面と車輪との間に通気路を形成する。当該通気路は、ブレーキディスクが車輪とともに回転するとき、ブレーキディスクの内周側から外周側に向かって空気を通過させ、ブレーキディスクを冷却する。しかしながら、通気路内を空気が流れることにより、空力音が発生する。特に、鉄道車両が高速で走行する場合、通気路内の通気量が増加して大きな空力音が発生する。
【0005】
近年における環境規制の強化に伴い、鉄道車両では、高速走行時における静音性が重視されるようになっている。そのため、ディスクブレーキ装置でも、鉄道車両の走行時に発生する空力音を可能な限り低減することが必要である。
【0006】
例えば、特許文献1には、ディスクブレーキ装置において、周方向に隣り合うフィン同士を連結する連結部を設ける技術が提案されている。この連結部により、隣り合うフィンによって画定される各通気路に、断面積が最小となる部分が形成される。特許文献1によれば、通気路の最小断面積の総和を18000mm以下とすることで、高速走行時における空力音を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-205428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、フィン同士を連結部で連結することにより、通気路の断面積を部分的に減少させ、通気路内の通気量を制限する。しかしながら、通気量を制限すると、ブレーキディスクの外面に沿って流れる空気の流速が小さくなるため、制動時におけるブレーキディスクの冷却性能が低下する。また、特許文献1では、ブレーキディスクの裏面側に連結部を設けているため、車輪側に通気路の断面積最小部分が形成される。よって、断面積最小部分を通過した空気は、ブレーキディスクから遠ざかり、車輪の表面に沿って流れるように誘導される。その結果、制動時におけるブレーキディスクの冷却性能がさらに低下する可能性がある。
【0009】
本開示は、鉄道車両の走行時に発生する空力音を低減しつつ、制動時におけるブレーキディスクの冷却性能を確保することができる鉄道車両用ブレーキディスクユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係るブレーキディスクユニットは、鉄道車両用のブレーキディスクユニットである。ブレーキディスクユニットは、回転部材と、ブレーキディスクと、制御部材と、を備える。回転部材は、鉄道車両の車軸に取り付けられる。ブレーキディスクは、環状のディスク本体と、複数のフィンと、複数の第1凸部及び/又は複数の第1凹部と、を含む。ディスク本体は、回転部材に対向する裏面を有する。複数のフィンは、裏面上に放射状に配置される。複数の第1凸部及び/又は複数の第1凹部は、ブレーキディスクの外面に形成される。制御部材は、板状の支持部と、突出部と、を含む。支持部は、回転部材と複数のフィンとの間に挟まれる。突出部の少なくとも一部は、複数のフィンのうちブレーキディスクの周方向において隣り合うフィンの間に配置される。突出部は、支持部からディスク本体に向かって突出する。制御部材は、隣り合うフィンの間の通気量を制御する。突出部とブレーキディスクとの間には隙間が形成される。第1凸部及び/又は第1凹部は、ブレーキディスクの外面において、最小開口部よりも外周側に設けられる。最小開口部は、上記隙間のうち、周方向に沿う断面の面積が最小となる部分である。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る鉄道車両用ブレーキディスクユニットによれば、鉄道車両の走行時に発生する空力音を低減しつつ、制動時におけるブレーキディスクの冷却性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態に係る鉄道車両用ブレーキディスクユニットの概略構成を示す縦断面図である。
図2図2は、図1に示すブレーキディスクユニットに含まれるブレーキディスク及び制御部材の裏面図である。
図3図3は、図2のIII-III断面図である。
図4図4は、図3のIV-IV断面図である。
図5図5は、第2実施形態に係るブレーキディスクユニットに含まれるブレーキディスク及び制御部材を径方向及び軸方向に沿って切断した断面図である。
図6図6は、第3実施形態に係るブレーキディスクユニットに含まれるブレーキディスク及び制御部材を径方向及び軸方向に沿って切断した断面図である。
図7図7は、図6に示すブレーキディスク及び制御部材の裏面図である。
図8図8は、第4実施形態に係るブレーキディスクユニットに含まれるブレーキディスクの裏面図である。
図9図9は、第5実施形態に係るブレーキディスクユニットに含まれるブレーキディスクの裏面図である。
図10図10は、第6実施形態に係るブレーキディスクユニットに含まれるブレーキディスク及び制御部材の裏面図である。
図11図11は、図10に示すブレーキディスク及び制御部材を径方向及び軸方向に沿って切断した断面図である。
図12図12は、第1実施形態に係るブレーキディスクユニットの変形例を説明するための図である。
図13図13は、第2実施形態に係るブレーキディスクユニットの変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態に係るブレーキディスクユニットは、鉄道車両用のブレーキディスクユニットである。ブレーキディスクユニットは、回転部材と、ブレーキディスクと、制御部材と、を備える。回転部材は、鉄道車両の車軸に取り付けられる。ブレーキディスクは、環状のディスク本体と、複数のフィンと、複数の第1凸部及び/又は複数の第1凹部と、を含む。ディスク本体は、回転部材に対向する裏面を有する。複数のフィンは、裏面上に放射状に配置される。複数の第1凸部及び/又は複数の第1凹部は、ブレーキディスクの外面に形成される。制御部材は、板状の支持部と、突出部と、を含む。支持部は、回転部材と複数のフィンとの間に挟まれる。突出部の少なくとも一部は、複数のフィンのうちブレーキディスクの周方向において隣り合うフィンの間に配置される。突出部は、支持部からディスク本体に向かって突出する。制御部材は、隣り合うフィンの間の通気量を制御する。突出部とブレーキディスクとの間には隙間が形成される。第1凸部及び/又は第1凹部は、ブレーキディスクの外面において、最小開口部よりも外周側に設けられる。最小開口部は、上記隙間のうち、周方向に沿う断面の面積が最小となる部分である(第1の構成)。
【0014】
第1の構成に係るブレーキディスクユニットによれば、制御部材により、周方向に隣り合うフィンの間の通気量を制御することができる。すなわち、第1の構成によれば、隣り合うフィンの間に制御部材の突出部の少なくとも一部が配置されているため、これらのフィンがディスク本体及び回転部材とともに形成する通気路の開口面積が部分的に小さくなる。これにより、通気路内の通気量を制限することができ、鉄道車両の走行時に発生する空力音を低減することができる。
【0015】
一方、第1の構成では、ブレーキディスクと別体の制御部材を回転部材とフィンとの間に挟み、回転部材側からディスク本体に向かって突出部を突出させている。そのため、制御部材の突出部とブレーキディスクとの隙間は、回転部材側ではなく、ディスク本体側及びフィン側に形成される。これにより、当該隙間の最小開口部を通過した空気がブレーキディスクに沿って流れるため、ブレーキディスクの外面近傍の空気の流速を高めることができる。よって、制動時におけるブレーキディスクの冷却性能の低下を抑制することができる。
【0016】
しかも、第1の構成では、ブレーキディスクの外面のうち、制御部材の突出部とブレーキディスクとの隙間の最小開口部よりも外周側に、複数の第1凸部及び/又は複数の第1凹部が設けられている。これにより、最小開口部よりも後流側の領域、つまりブレーキディスクの外面近傍の空気の流速が高い領域において、ブレーキディスクの外面に形成される温度境界層を薄くすることができ、空気とブレーキディスクとの熱伝達率を上昇させることができる。そのため、制動時におけるブレーキディスクの冷却性能を高く維持することができる。
【0017】
このように、第1の構成によれば、鉄道車両の走行時に発生する空力音を低減しながら、制動時におけるブレーキディスクの冷却性能を確保することができる。
【0018】
第1凸部及び/又は第1凹部は、好ましくは、ディスク本体の裏面に設けられる(第2の構成)。
【0019】
ブレーキディスクの周方向において隣り合うフィンの各々には、当該フィンを周方向に横断する溝が形成されていてもよい。この場合、突出部は、隣り合うフィンの一方から他方にわたり、溝を通って周方向に延びることができる(第3の構成)。
【0020】
例えば、ブレーキディスクの周方向で隣り合うフィンの間に突出部の全体が配置される場合には、ブレーキディスクと別体の制御部材を製造する際、突出部がフィンと干渉しないよう、周方向における突出部の位置や寸法等を厳密に調整する必要がある。これに対して、第3の構成では、隣り合うフィンの各々において、突出部の一部を収容することが可能な溝が形成されている。そのため、制御部材を製造する際、突出部とフィンとの干渉をあまり考慮する必要がなく、周方向における突出部の位置や寸法等の厳密な調整が不要となる。よって、制御部材の製造を比較的簡素に行うことができ、制御部材の加工に要する労力及びコストを低減することができる。
【0021】
ブレーキディスクの外面には、第1凸部が設けられることが好ましい(第4の構成)。
【0022】
ブレーキディスクは、さらに、複数の第2凸部及び/又は複数の第2凹部を含んでいてもよい。複数の第2凸部及び/又は複数の第2凹部は、ブレーキディスクの外面に形成される。これらの第2凸部及び/又は第2凹部は、ブレーキディスクの外面において、最小開口部よりも内周側に設けることができる(第5の構成)。
【0023】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。各図において同一又は相当の構成については同一符号を付し、同じ説明を繰り返さない。
【0024】
<第1実施形態>
[ブレーキディスクユニットの構成]
図1は、第1実施形態に係る鉄道車両用ブレーキディスクユニット100の概略構成を示す縦断面図である。縦断面とは、中心軸Xを含む平面でブレーキディスクユニット100を切断した断面をいう。中心軸Xは、鉄道車両の車軸200の軸心である。以下、中心軸Xが延びる方向を軸方向という。
【0025】
図1に示すように、ブレーキディスクユニット100は、回転部材10と、ブレーキディスク20と、制御部材30と、を備える。
【0026】
回転部材10は、車軸200に取り付けられ、車軸200と一体で中心軸X周りに回転する。本実施形態の例では、回転部材10は、鉄道車両の車輪である。ただし、回転部材10は、車輪以外のディスク体であってもよい。
【0027】
ブレーキディスク20は、回転部材10の両側面に設けられている。これらのブレーキディスク20は、例えば、ボルト及びナットで構成される締結部材40により、車輪である回転部材10の板部11に締結される。軸方向において各ブレーキディスク20の外側には、ブレーキライニング50が設けられる。制御部材30は、回転部材10と各ブレーキディスク20との間に配置されている。
【0028】
図2は、回転部材10の両側面に設けられたブレーキディスク20及び制御部材30のうち、一方のブレーキディスク20及び制御部材30を回転部材10側から見た図(裏面図)である。図2では、ブレーキディスク20及び制御部材30の1/4周部分を示す。以下、ブレーキディスク20及び制御部材30の周方向及び径方向を単に周方向及び径方向という。
【0029】
図2を参照して、ブレーキディスク20は、ディスク本体21と、複数のフィン22と、複数の凸部23と、を含む。
【0030】
ディスク本体21は、環状をなす。ディスク本体21は、実質的に、中心軸Xを軸心とする円環板状を有する。ディスク本体21は、摺動面(表面)211及び裏面212を有する。摺動面211は、ディスク本体21において軸方向の一方側に設けられた面である。摺動面211には、制動力を発生させるためにブレーキライニング50(図1)が押し付けられる。裏面212は、ディスク本体21において軸方向の他方側に設けられた面であり、回転部材10(図1)に対向する。
【0031】
複数のフィン22は、ディスク本体21の裏面212上に放射状に配置されている。これらのフィン22は、ディスク本体21の内周側から外周側に延びている。各フィン22は、裏面212から回転部材10(図1)側に突出する。これにより、回転部材10と、周方向において隣り合うフィン22と、ディスク本体21との間に空間が形成される。これらの空間は、ブレーキディスク20が回転部材10とともに回転する際に空気が通過する通気路となる。
【0032】
本実施形態において、一部のフィン22には、当該フィン22及びディスク本体21を貫通する締結孔24が形成されている。その他のフィン22の頂面221には、凹状のキー溝25が形成されている。各締結孔24には、締結部材40(図1)が挿入される。キー溝25には、ブレーキディスク20と回転部材10(図1)との相対回転を規制するためのキー(図示略)が嵌め込まれる。フィン22の数、締結孔24の数、及びキー溝25の数は、適宜設定することができる。本実施形態の例では、全てのフィン22に締結孔24又はキー溝25が形成されているが、締結孔24及びキー溝25が形成されていないフィン22が存在してもよい。
【0033】
周方向に隣り合うフィン22の間には、それぞれ、複数の凸部23が設けられている。複数の凸部23は、ディスク本体21の裏面212上に形成されている。凸部23の各々は、例えば、半球状、又は半回転楕円体状を有する。各凸部23は、他の凸部23と同一の形状を有していてもよいし、他の凸部23と異なる形状を有していてもよい。
【0034】
制御部材30は、ブレーキディスク20とは別の部材であり、周方向に隣り合うフィン22の間の通気量を制御する。制御部材30は、板状の支持部31と、複数の突出部32と、を含む。
【0035】
本実施形態の例では、支持部31は、概略円環板状をなし、ディスク本体21と実質的に同軸に配置されている。この支持部31は、回転部材10(図1)と複数のフィン22との間に挟まれる。例えば、フィン22の頂面221に支持部31に対応する凹みを形成し、この凹み内に支持部31を配置することができる。あるいは、非加工のフィン22の頂面221と回転部材10との間に、支持部31を配置するだけでもよい。本実施形態の例において、径方向における支持部31の長さは、フィン22の頂面221の長さよりも短い。ただし、径方向における支持部31の長さは、フィン22の頂面221の長さよりも長くてもよいし、フィン22の頂面221の長さと同程度であってもよい。
【0036】
支持部31には、締結部材40(図1)を挿通させるため、ブレーキディスク20の締結孔24に対応して、複数の開口33が形成されている。また、支持部31には、上述したキー(図示略)を挿通させるため、ブレーキディスク20のキー溝25に対応して、複数の開口34が形成されている。
【0037】
板状の支持部31の両面のうち、ブレーキディスク20側の面には、複数の突出部32が形成されている。複数の突出部32は、周方向に間隔を空けて設けられている。これにより、周方向において隣り合うフィン22の間に、突出部32が1つずつ配置される。突出部32の各々は、支持部31からディスク本体21に向かって突出する。これらの突出部32は、支持部31と一体形成されていてもよい。例えば、1.0mm~3.0mmの板厚を有する金属の薄肉材をプレス加工することにより、支持部31及び突出部32が一体化された制御部材30を成形することができる。ただし、突出部32は、支持部31と別体で形成された後、溶接等で支持部31に固定されていてもよい。
【0038】
図3は、図2に示すブレーキディスク20及び制御部材30のIII-III断面図である。すなわち、図3は、ブレーキディスク20及び制御部材30の一部を周方向及び軸方向に沿って切断した部分断面図である。図4は、図3に示すブレーキディスク20及び制御部材30のIV-IV断面図であり、ブレーキディスク20及び制御部材30を径方向及び軸方向に沿って切断した断面図である。図3及び図4では、ブレーキディスク20及び制御部材30の特徴を模式的に示している。
【0039】
図3を参照して、突出部32の各々は、支持部31からディスク本体21の裏面212に向かって突出している。突出部32の先端は、ディスク本体21の裏面212には接触しない。本実施形態の例では、突出部32の周方向の両端も、フィン22の側面222に接触していない。そのため、各突出部32とブレーキディスク20との間には、径方向視で概略U字状の隙間Gが形成されている。
【0040】
図4を参照して、隙間Gは、最小開口部Aminを有する。最小開口部Aminは、各突出部32とブレーキディスク20との間に形成される隙間Gのうち、周方向及び軸方向に沿った断面の面積が最小となる部分である。すなわち、最小開口部Aminでは、回転部材10(図1)と、周方向において隣り合うフィン22と、ディスク本体21とで画定される通気路の開口面積が最小となる。最小開口部Aminの面積の和(総面積)は、例えば、18000mm以下とすることができる。最小開口部Aminの総面積は、例えば、2500mm以上とすることができる。
【0041】
ブレーキディスク20の外面のうち、最小開口部Aminよりも外周側の領域R1には、上述した複数の凸部23が設けられている。本実施形態の例では、凸部23は、ディスク本体21の裏面212上に設けられている。
【0042】
各凸部23の大きさは、適宜決定することができる。特に限定されるものではないが、各凸部23の高さ(軸方向の寸法)は、例えば、2mm~5mmとすることができる。各凸部23が半球状、又は半回転楕円体状を有する場合、各凸部23の直径又は長径(径方向の寸法)は、例えば、4mm~50mmとすることができる。
【0043】
凸部23の数も、適宜決定することができる。例えば、周方向に隣り合うフィン22の間において、最小開口部Aminよりも外周側の領域R1には、少なくとも5個ずつの凸部23を設けることができる。
【0044】
[効果]
本実施形態に係るブレーキディスクユニット100では、周方向において隣り合う各フィン22の間に、制御部材30の突出部32が配置されている。これにより、回転部材10と、フィン22と、ディスク本体21とで画定される通気路の断面積が部分的に小さくなる。すなわち、制御部材30の突出部32が通気路内に配置されることにより、通気路において最小開口部Aminが形成される。そのため、通気路内の通気量を制限することができ、鉄道車両の走行時に発生する空力音を低減することができる。
【0045】
一方、本実施形態において、制御部材30の突出部32は、回転部材10側からディスク本体21に向かって突出し、ディスク本体21及びフィン22に沿って最小開口部Aminを形成する。これにより、図4において矢印Fで示すように、最小開口部Aminを通過した空気がブレーキディスク20に沿って流れるため、ブレーキディスク20の外面近傍の空気の流速を高めることができる。よって、制動時におけるブレーキディスク20の冷却性能の低下を抑制することができる。
【0046】
さらに、本実施形態によれば、ブレーキディスク20の外面のうち、最小開口部Aminよりも外周側(後流側)に位置し、空気の流速が高い領域R1において、複数の凸部23が設けられている。これにより、ブレーキディスク20の外面に形成される温度境界層を薄くすることができ、通気路を通過する空気とブレーキディスク20との熱伝達率を上昇させることができる。また、複数の凸部23により、ブレーキディスク20の表面積が拡大する。そのため、制動時におけるブレーキディスク20の冷却性能を高く維持することができる。よって、空力音の低減のために通気路内の通気量を制限しているにもかかわらず、ブレーキディスク20の冷却性能を確保することができる。
【0047】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係るブレーキディスクユニット100aを径方向及び軸方向に沿って切断した、模式的な断面図である。ただし、図5では、ブレーキディスク20a及び制御部材30のみを示し、回転部材10を省略している。
【0048】
図5に示すように、本実施形態では、ブレーキディスク20aの外面のうち、最小開口部Aminよりも外周側の領域R1に、複数の凹部26が設けられている。凹部26は、ディスク本体21の裏面212に形成されている。凹部26は、周方向に隣り合うフィン22の間に複数個ずつ配置されている。
【0049】
凹部26の各々は、例えば、半球状、又は半回転楕円体状を有する。各凹部26は、他の凹部26と同一の形状を有していてもよいが、他の凹部26と異なる形状を有していてもよい。凹部26の数及び大きさは、第1実施形態で説明した凸部23(図4)と同様に、適宜設定することができる。
【0050】
本実施形態のように、ディスク本体21に複数の凹部26が設けられる場合も、最小開口部Aminよりも外周側の領域R1で、ブレーキディスク20aの外面に形成される温度境界層が薄くなる。よって、通気路を通過する空気とブレーキディスク20aとの熱伝達率を上昇させることができる。また、複数の凹部26により、ブレーキディスク20aの表面積が拡大する。そのため、制動時におけるブレーキディスク20aの冷却性能を高く維持することができる。
【0051】
ただし、製造上は、第1実施形態のように、ブレーキディスクの外面に凸部23を設けることが好ましい。すなわち、例えば、ブレーキディスクを鍛造で製造する場合、ブレーキディスクの外面に凹部26を形成するとすれば、鍛造用の金型に凹部26に対応する凸部を形成する必要がある。しかしながら、この金型の凸部は、繰り返しの鍛造によって比較的早く消耗又は破損すると考えられる。一方、ブレーキディスクの外面に凸部23を設ける場合、鍛造用の金型には凸部が存在しないため、金型の消耗又は破損が生じにくい。よって、金型の寿命の観点から、ブレーキディスクの外面には、凸部23のみが設けられていることが好ましい。
【0052】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係るブレーキディスクユニット100bを径方向及び軸方向に沿って切断した、模式的な断面図である。ただし、図6では、ブレーキディスク20b及び制御部材30のみを示し、回転部材10を省略している。図7は、ブレーキディスク20b及び制御部材30の裏面図である。
【0053】
図6及び図7を参照して、本実施形態に係るブレーキディスクユニット100bは、ディスク本体21の裏面212ではなく、フィン22に複数の凸部23が設けられる点で第1実施形態と異なる。凸部23は、最小開口部Aminよりも外周側の領域R1において、各フィン22の両側面222に複数個ずつ形成されている。
【0054】
本実施形態のように、フィン22に複数の凸部23が設けられる場合も、最小開口部Aminよりも外周側の領域R1で、ブレーキディスク20bの外面に形成される温度境界層が薄くなる。よって、通気路を通過する空気とブレーキディスク20bとの熱伝達率を上昇させることができる。また、複数の凸部23により、ブレーキディスク20bの表面積が拡大する。そのため、制動時におけるブレーキディスク20bの冷却性能を高く維持することができる。
【0055】
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態に係るブレーキディスクユニット100cに含まれるブレーキディスク20cを模式的に示す裏面図である。図8では、ブレーキディスク20cの各フィン22を、軸方向に垂直な平面で切断した断面で示している。
【0056】
図8を参照して、本実施形態に係るブレーキディスクユニット100cでは、第3実施形態の複数の凸部23に代えて、複数の凹部26がフィン22に設けられている。凹部26は、最小開口部Aminよりも外周側の領域R1において、各フィン22の側面222に複数個ずつ形成されている。
【0057】
本実施形態のように、フィン22に複数の凹部26が設けられる場合も、最小開口部Aminよりも外周側の領域R1で、ブレーキディスク20cの外面に形成される温度境界層が薄くなる。よって、通気路を通過する空気とブレーキディスク20cとの熱伝達率を上昇させることができる。また、複数の凹部26により、ブレーキディスク20cの表面積が拡大する。そのため、制動時におけるブレーキディスク20cの冷却性能を高く維持することができる。
【0058】
第3及び第4実施形態では、ディスク本体21の裏面212ではなく、フィン22の各側面222に凸部23又は凹部26が形成されている。ただし、製造容易性の観点からは、第1及び第2実施形態のように、ディスク本体21の裏面212に凸部23又は凹部26が形成されることが好ましい。
【0059】
<第5実施形態>
図9は、第5実施形態に係るブレーキディスクユニット100dに含まれるブレーキディスク20dを模式的に示す裏面図である。
【0060】
図9に示すように、本実施形態に係るブレーキディスクユニット100dでは、フィン22に溝状の凹部27が形成されている。これらの凹部27は、フィン22の頂面221からディスク本体21側に凹の形状を有するとともに、フィン22を周方向に横断する。本実施形態の例では、凹部27は、締結孔24よりも外周側に配置されている。ただし、凹部27の位置は、最小開口部Aminよりも外周側であればよく、制御部材30の突出部32の位置に応じて適宜調整することができる。
【0061】
本実施形態のように、各フィン22に溝状の凹部27が形成されている場合も、最小開口部Aminよりも外周側の領域R1で、ブレーキディスク20dの外面に形成される温度境界層が薄くなる。よって、通気路を通過する空気とブレーキディスク20dとの熱伝達率を上昇させることができる。また、溝状の凹部27であれば、ブレーキディスク20dの表面積をより拡大することができる。よって、制動時におけるブレーキディスク20dの冷却性能を向上させることができる。
【0062】
<第6実施形態>
図10は、第6実施形態に係るブレーキディスクユニット100eに含まれるブレーキディスク20e及び制御部材30eを模式的に示す裏面図である。図11は、図10に示すブレーキディスク20e及び制御部材30eを径方向及び軸方向に沿って切断した、模式的な断面図である。
【0063】
図10を参照して、ブレーキディスク20eに設けられたフィン22の各々には、制御部材30eの突出部32eの一部を収容するため、溝223が形成されている。各フィン22の溝223は、当該フィン22を周方向に横断する。
【0064】
本実施形態の例において、各フィン22の溝223は、ディスク本体21の内周側に配置されている。より具体的には、各溝223は、フィン22に設けられた締結孔24又はキー溝25と重ならないよう、締結孔24又はキー溝25よりも内周側に配置されている。ただし、キー溝25を有するフィン22において、キー溝25に嵌め込まれるキー(図示略)が溝223内の突出部32eと干渉しない場合には、溝223がキー溝25と部分的に重なっていてもよい。
【0065】
制御部材30eにおいて、突出部32eは、隣り合うフィン22の一方から他方にわたり、溝223を通って周方向に延びている。本実施形態の例では、突出部32eは、全ての溝223を通り、周方向に延びている。すなわち、突出部32eは、ディスク本体21と実質的に同心の円環状を有する。突出部32eは、他の実施形態と同様、支持部31と一体形成されていてもよいし、支持部31と別体で形成された後、溶接等で支持部31に固定されていてもよい。
【0066】
図11を参照して、上述した通り、ブレーキディスク20eの各フィン22には、溝223が設けられている。溝223は、フィン22の頂面221からディスク本体21側に陥没する部分である。ただし、ディスク本体21の熱容量を確保するため、溝223は、ディスク本体21には侵入しない。すなわち、溝223の底面は、ディスク本体21の裏面212と実質的に同一平面上にあるか、軸方向において裏面212よりも内側に位置している。
【0067】
制御部材30eの突出部32eは、他の実施形態と同様、支持部31からディスク本体21の裏面212に向かって突出する。ただし、突出部32eは、他の実施形態と異なり、隣り合うフィン22に跨って周方向に延びている。突出部32eの一部は、周方向に隣り合うフィン22の間に配置される。突出部32eの他の部分は、各フィン22の溝223内に配置される。突出部32eのうち隣り合うフィン22の間に配置された部分と、ブレーキディスク20eとの間には、隙間Gが形成される。隙間Gは、周方向に隣り合うフィン22の間において、突出部32eとディスク本体21の裏面212との間に形成され、例えば、径方向視で概ね直線状を有する。隙間Gは、他の実施形態と同様、最小開口部Aminを有している。
【0068】
最小開口部Aminは、フィン22同士の間に形成された、突出部32eとディスク本体21の裏面212との隙間Gのうち、周方向及び軸方向に沿った断面が最小となる部分である。突出部32eの先端からディスク本体21の裏面212までの軸方向の距離は、例えば、0.5mm~4.5mmとなっている。ブレーキディスク20eの外面のうち、最小開口部Aminよりも外周側の領域R1には、凸部23が複数設けられている。凸部23は、第1実施形態と同様、ディスク本体21の裏面212上に配置されている。ディスク本体21の裏面212には、凸部23に代えて、第2実施形態と同様の凹部26が複数設けられていてもよい。
【0069】
本実施形態では、制御部材30eの突出部32eが周方向に隣り合うフィン22に跨って配置されているため、隣り合うフィン22の間において、ディスク本体21に沿った最小開口部Aminが形成される。この最小開口部Aminを通過して流速が増加した空気は、ディスク本体21の裏面212に沿って流れることとなる。最小開口部Aminよりも外周側(後流側)の領域R1では、ディスク本体21の裏面212に凸部23又は凹部26が形成されている。よって、ブレーキディスク20eの外面に形成される温度境界層を薄くすることができ、空気とブレーキディスク20eとの熱伝達率を上昇させることができる。また、凸部23又は凹部26によって、ブレーキディスク20eの表面積を拡大することができる。これらの結果、制動時におけるブレーキディスク20eの冷却性能を向上させることができる。
【0070】
上記第1~第5実施形態では、周方向に隣り合うフィン22の間に、制御部材30の突出部32が1つずつ配置されている。この場合、制御部材30を製造する際、突出部32が各フィン22と干渉しないように、周方向における突出部32の位置や寸法等を比較的厳密に調整する必要がある。一方、本実施形態では、周方向に隣り合うフィン22の間に、制御部材30eの突出部32eの一部が配置されている。すなわち、突出部32eは、各フィン22を通過して周方向に延びている。各フィン22には、突出部32eが各フィン22に実質的に干渉しないよう、突出部32eに対応する溝223が形成されている。そのため、制御部材30eを製造する際、周方向における突出部32eの位置や寸法等を厳密に調整する必要がない。よって、制御部材30eの製造を比較的簡素に行うことができ、制御部材30eの加工に要する労力及びコストを低減することができる。
【0071】
例えば、制御部材30eが金属の薄肉材で構成される場合、鉄道車両の高速走行中、遠心力及び気流の影響によって突出部32eがブレーキディスク20eの外周側に変形し、最小開口部Aminが拡大して、空力音の低減効果を安定して得られない可能性がある。しかしながら、本実施形態では、各フィン22の溝223内に突出部32eの一部が配置されているため、溝223によって突出部32eの変形を拘束することができる。よって、制御部材30eが薄肉材で構成されている場合であっても、鉄道車両の走行中の最小開口部Aminの変動が抑制され、安定して空力音を低減することができる。また、制御部材30eを薄肉材で構成することにより、重量の増大を防止し、良好な製作性を確保することができる。
【0072】
本実施形態において、ブレーキディスク20eの各フィン22には、突出部32eを配置するための溝223が設けられている。これにより、ブレーキディスク20eの表面積が拡大するため、ブレーキディスク20eの冷却性能を向上させることができる。さらに、突出部32eの先端と各溝223の底面との間に入り込む空気の流速は大きいため、径方向における突出部32eの先端の長さをある程度確保すれば、空気の流速が大きい領域が径方向に広がることになる。そのため、空気と各溝223の底面との熱交換量を高めることができる。すなわち、各溝223の底面から空気への抜熱量を高めることができる。よって、ブレーキディスク20eの冷却性能をより向上させることができる。径方向における突出部32eの先端の長さは、例えば、径方向におけるフィン22の長さ(ディスク本体21側)の1/20以上であることが好ましい。
【0073】
以上、本開示に係る実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0074】
例えば、上記各実施形態では、ブレーキディスクの外面のうち、最小開口部Aminよりも外周側の領域R1において、凸部23、凹部26、及び凹部27のいずれかが設けられている。しかしながら、領域R1では、凸部23、凹部26、及び凹部27のうち2種以上が混在していてもよい。
【0075】
上記第1~第4実施形態、及び第6実施形態では、ディスク本体21の裏面212及びフィン22の側面222のいずれか一方に、凸部23又は凹部26が設けられている。しかしながら、最小開口部Aminよりも外周側の領域R1において、ディスク本体21の裏面212及びフィン22の側面222の双方に、凸部23及び凹部26の少なくとも一方が設けられていてもよい。
【0076】
上記第1~第4実施形態、及び第6実施形態では、ブレーキディスクの外面のうち、最小開口部Aminよりも外周側の領域R1にのみ、凸部23又は凹部26が設けられている。しかしながら、領域R1以外の領域にも、凸部又は凹部を設けることができる。例えば、図12に示すように、ブレーキディスク20fの外面のうち、最小開口部Aminよりも内周側の領域R2において、ディスク本体21の裏面212上に複数の凸部28が設けられていてもよい。すなわち、ディスク本体21の裏面212の全体にわたり、制御部材30の突出部32と干渉しないように、凸部を形成することができる。凸部28の構成は、凸部23の構成と実質的に同一とすることができる。また、例えば、図13に示すように、ブレーキディスク20gの外面のうち、最小開口部Aminよりも内周側の領域R2において、ディスク本体21の裏面212上に複数の凹部29が設けられてもよい。すなわち、ディスク本体21の裏面212の全体にわたり、凹部を形成することができる。凹部29の構成は、凹部26の構成と実質的に同一とすることができる。
【0077】
図12及び図13に示す例では、最小開口部Aminよりも内周側の領域R2において、ディスク本体21の裏面212に凸部28又は凹部29が形成されている。しかしながら、内周側の領域R2では、ディスク本体21の裏面212に代えて又は加えて、各フィン22の側面に凸部28又は凹部29を形成することもできる。また、内周側の領域R2においても、外周側の領域R1と同様、凸部28及び凹部29が混在していてもよい。
【0078】
上記各実施形態において、制御部材30,30eの突出部32,32eの形状は、適宜変更することができる。例えば、突出部32,32eは、ディスク本体21に近づくにつれて外周側に傾倒していてもよいし、先端部分が外周側に向かって湾曲していてもよい。あるいは、突出部32,32eは、径方向及び軸方向に沿った断面で見て、概略三角形状又は概略四角形状等であってもよい。この場合、突出部32,32eは、中空に形成されていてもよいし、中実に形成されていてもよい。
【0079】
上記第1~第5実施形態では、ディスク本体21の径方向の中央付近に制御部材30の各突出部32が配置されているが、突出部32の位置はこれに限定されるものではない。突出部32は、ディスク本体21の外周側に配置されていてもよいし、ディスク本体21の内周側に配置されていてもよい。
【0080】
上記第6実施形態では、制御部材30eの突出部32eがディスク本体21の内周側に配置され、突出部32eに対応する溝223が各フィン22の頂面221に形成されている。しかしながら、突出部32e及び溝223の位置はこれに限定されるものではない。例えば、突出部32eをさらに内周側に配置する場合には、溝223の一部又は全部がフィン22の頂面221よりも内周側に位置するように、各フィン22に溝223を形成することができる。また、例えば、各フィン22において、締結孔24又はキー溝25よりも外周側に溝223を形成することにより、複数のフィン22に跨って周方向に延びる突出部32eをディスク本体21の外周側に配置することもできる。
【0081】
上記第1~第5実施形態において、制御部材30の支持部31は、実質的に円環板状をなす。しかしながら、支持部31は、周方向において複数に分割されていてもよい。すなわち、各々1つ以上の突出部32を有する複数の円弧状部品により、支持部31が構成されていてもよい。同様に、第6実施形態における制御部材30eでは、支持部31を突出部32eとともに周方向において複数に分割することにより、複数の円弧状部品を形成することができる。これらの円弧状部品は、回転部材10とブレーキディスクとの間において、互いに接触して又は間隔を空けて周方向に配列される。
【符号の説明】
【0082】
100,100a~100e:ブレーキディスクユニット
10:回転部材
20,20a~20g:ブレーキディスク
21:ディスク本体
22:フィン
223:溝
23,28:凸部
26,27,29:凹部
30,30e:制御部材
31:支持部
32,32e:突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13