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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】作業機の制御システムおよびクレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/00 20060101AFI20221227BHJP
   B66C 13/22 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
B66C23/00 C
B66C13/22 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021567641
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2020048541
(87)【国際公開番号】W WO2021132507
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2019238334
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 佳成
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-94177(JP,A)
【文献】特開2008-305064(JP,A)
【文献】国際公開第2019/177021(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/159319(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/12188(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/00
B66C 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームを有する作業機のアクチュエータを制御する作業機の制御システムであって、
入力信号から前記アクチュエータの目標作動量に関する信号を生成す信号処理部と、
前記目標作動量に関する信号とフィードバックした前記アクチュエータの作動量に関する信号との差分に基づいて前記アクチュエータを制御するフィードバック制御部と、
前記フィードバック制御部と協働しつつ前記目標作動量に関する信号に基づいて前記アクチュエータを制御し、教師信号に基づいて重み係数を調整することで前記アクチュエータの特性を学習するフィードフォワード制御部と、
前記作業機のたわみに関する情報を算出する算出部と、を備え、
前記算出部は、前記作業機の姿勢情報、前記ブームに支持されたワイヤロープの張力、及び前記ワイヤロープの方向を示す方向ベクトルに基づいて、前記たわみに関する情報である前記ブームのたわみ角に関する情報を算出し、
前記信号処理部は、前記目標作動量に関する信号の生成過程で生成される中間情報を、前記算出部から取得した前記たわみに関する情報に基づいて補正して、前記目標作動量に関する信号を生成する、
作業機の制御システム。
【請求項2】
前記算出部は、前記ブームのたわみ角に関する情報として、前記ブームの鉛直方向のたわみ角に関する情報と、前記ブームの旋回方向のたわみ角に関する情報を算出する、請求項に記載の作業機の制御システム。
【請求項3】
前記算出部は、前記たわみに関する情報として、前記作業機の車体のたわみに関する情報を算出する、請求項1に記載の作業機の制御システム。
【請求項4】
前記信号処理部は、前記目標作動量に関する信号の生成過程において、前記入力信号からパルス状成分を除去する、請求項1に記載の作業機の制御システム。
【請求項5】
前記作業機が搬送する荷物の目標速度に関する信号から、前記入力信号でありパルス状成分を有する前記荷物の目標移動位置に関する信号を生成する前側処理部を、更に備える、請求項1に記載の作業機の制御システム。
【請求項6】
前記信号処理部は、
前記入力信号から所定周波数以上の周波数成分を減衰して前記作業機が搬送する荷物の目標軌道に関する信号を生成する第一処理部と、
前記目標軌道に関する信号に基づいて前記目標作動量に関する信号を生成する第二処理部と、を有し、
前記第二処理部は、前記目標作動量に関する信号の生成過程において、前記中間情報を前記たわみに関する情報に基づいて補正する、請求項1に記載の作業機の制御システム。
【請求項7】
請求項1に記載の作業機の制御システムを搭載したクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機の制御システムおよびクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動式クレーン等において、各アクチュエータが操作端末等で操作されるクレーンが提案されている。このようなクレーンは、操作端末からの荷物を基準とした操作指令信号によって操作されるので、オペレータは、各アクチュエータの作動速度、作動量、および作動タイミング等を意識することなく直観的に操作することができる(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のクレーンは、操作端末から操作具の操作速度に関する速度信号と操作方向に関する方向信号とを取得する。このため、操作端末からの速度信号がステップ関数の態様で入力される移動開始時や停止時に不連続な加速度が生じて荷物に揺れが発生することがあった。そこで、クレーンの速度、位置、荷物の振れ角速度、および振れ角をフィードバックする最適制御とともに予見ゲインによって遅れを補償することで、クレーンの目標位置への位置決めと荷物の振れ角を最小とする速度信号によってクレーンを制御する技術が知られている(特許文献2参照)。
【0004】
特許文献2に記載のクレーンは、予め定められたクレーンの数学モデルに基づいて、クレーンの位置決め精度を向上させて荷物の振れを最小にするような制御を行う。従って、数学モデルの誤差が大きい場合、将来の予測値の誤差も大きくなり、クレーンの位置決め精度が低下し、荷物の振れが増大してしまう点で不利であった。特に、伸縮ブームを有する移動式クレーンでは、ブームのたわみ量がクレーンの位置決め精度に影響する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-228905号公報
【文献】特開平7-81876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、作業機のたわみの影響を考慮しつつアクチュエータを制御できる作業機の制御システムおよびクレーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業機の制御システムの一態様は、
ブームを有する作業機のアクチュエータを制御する制御システムであって、
入力信号からアクチュエータの目標作動量に関する信号を生成す信号処理部と、
目標作動量に関する信号とフィードバックしたアクチュエータの作動量に関する信号との差分に基づいてアクチュエータを制御するフィードバック制御部と、
フィードバック制御部と協働しつつ目標作動量に関する信号に基づいてアクチュエータを制御し、教師信号に基づいて重み係数を調整することでアクチュエータの特性を学習するフィードフォワード制御部と、
作業機のたわみに関する情報を算出する算出部と、を備え、
信号処理部は、目標作動量に関する信号の生成過程で生成される中間情報を、算出部から取得したたわみに関する情報に基づいて補正して、目標作動量に関する信号を生成する。
【0008】
本発明に係るクレーンの一態様は、上述の制御システムを搭載している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業機のたわみの影響を考慮しつつアクチュエータを制御できる作業機の制御システムおよびクレーンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、クレーンの全体構成を示す側面図である。
図2図2は、クレーンの制御構成を示すブロック図である。
図3図3は、本実施形態における制御装置の制御構成を示すブロック図である。
図4図4は、クレーンの逆動力学モデルを示す図である。
図5図5は、本実施形態における制御システムの制御構成を示すブロック図である。
図6A図6Aは、ブームの旋回方向のたわみを示す平面図である。
図6B図6Bは、ブームの起伏方向のたわみを示す側面図である。
図7図7は、クレーンの制御工程を示すフローチャートを表す図である。
図8図8は、クレーンの制御工程における目標軌道算出工程を示すフローチャートを表す図である。
図9図9は、クレーンの制御工程におけるブーム位置算出工程を示すフローチャートを表す図である。
図10図10は、クレーンの制御工程におけるブーム位置補正工程を示すフローチャートを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態]
以下に、図1図2とを用いて、本発明の一実施形態に係る作業機としてクレーン1について説明する。クレーン1は、移動式クレーン(ラフテレーンクレーン)である。なお、本実施形態においては、作業機としてクレーン1(ラフテレーンクレーン)ついて説明を行うが、作業機は、オールテレーンクレーン、トラッククレーン、または積載型トラッククレーン等でもよい。また、本発明は、ワイヤロープで荷物を吊り下げる作業装置にも適用可能である。また、作業機は、クレーンに限定されず、ブームを有する作業機(例えば、高所作業車)であってもよい。
【0012】
以下の説明において、「(n)、(n+1)、(n+2)」は、単位時間t毎に取得される情報(例えばワイヤロープの繰り出し量)のうち、n番目、n+1番目、n+2番目に取得した情報を意味する。つまり、「(n)」は、情報の取得開始からn×単位時間t経過後に取得した情報を意味する。また、「(n+1)」は、情報の取得開始から(n+1)×単位時間t経過後に取得した情報を意味する。また、「(n+2)」は、情報の取得開始から(n+2)×単位時間t経過後に取得した情報を意味する。なお、「×」は、乗算を意味する。
【0013】
図1に示すように、クレーン1は、不特定の場所に移動可能な移動式クレーンである。クレーン1は、車両2、作業装置であるクレーン装置6およびクレーン装置6を荷物W基準で操作可能な荷物移動操作具32(図2参照)を有する。
【0014】
車両2は、クレーン装置6を搬送する走行体である。車両2は、複数の車輪3を有し、エンジン4を動力源として走行する。車両2には、アウトリガ5が設けられている。アウトリガ5は、車両2の幅方向両側に油圧によって延伸可能な張り出しビームと地面に垂直な方向に延伸可能な油圧式のジャッキシリンダとから構成されている。
【0015】
車両2は、アウトリガ5を車両2の幅方向に延伸させるとともにジャッキシリンダを接地させることにより、クレーン1の作業可能範囲を広げることができる。
【0016】
クレーン装置6は、荷物Wをワイヤロープによって吊り上げる作業装置である。クレーン装置6は、旋回台7、ブーム9、ジブ9a、メインフックブロック10、サブフックブロック11、起伏用油圧シリンダ12、メインウインチ13、メインワイヤロープ14、サブウインチ15、サブワイヤロープ16およびキャビン17等を具備する。
【0017】
旋回台7は、クレーン装置6を旋回可能に構成する駆動装置である。旋回台7は、円環状の軸受を介して車両2のフレーム上に設けられる。旋回台7は、円環状の軸受の中心軸を回転中心として回転自在に構成されている。
【0018】
旋回台7には、アクチュエータである油圧式の旋回用油圧モータ8が設けられている。旋回台7は、旋回用油圧モータ8によって一方向と他方向とに旋回可能に構成されている。
【0019】
荷物位置検出部である旋回台カメラ7b(図2参照)は、旋回台7の周辺の障害物や人物等を撮影する監視装置である。旋回台カメラ7bは、旋回台7の前方の左右両側および旋回台7の後方の左右両側に設けられている。
【0020】
各旋回台カメラ7bは、それぞれの設置個所の周辺を撮影することで、旋回台7の全周囲を監視範囲としてカバーしている。また、旋回台7の前方の左右両側にそれぞれ配置されている旋回台カメラ7bは、一組のステレオカメラとして使用可能に構成されている。
【0021】
つまり、旋回台7の前方の旋回台カメラ7bは、一組のステレオカメラとして使用することで吊り下げられている荷物Wの位置情報を検出する荷物位置検出部として構成することができる。
【0022】
なお、荷物位置検出部は、後述するブームカメラ9bで構成してもよい。また、荷物位置検出部は、ミリ波レーダー、加速度センサまたはGNSS等の荷物Wの位置情報を検出できるものであればよい。
【0023】
旋回用油圧モータ8は、電磁比例切換弁である旋回用バルブ23(図2参照)によって回転操作されるアクチュエータである。旋回用バルブ23は、旋回用油圧モータ8に供給される作動油の流量を任意の流量に制御することができる。
【0024】
つまり、旋回台7は、旋回用バルブ23によって回転操作される旋回用油圧モータ8を介して任意の旋回速度に制御可能に構成されている。旋回台7には、旋回台7の旋回角度θz(図4参照)と旋回速度とを検出する旋回角度検出部である旋回用センサ27(図2参照)が設けられている。
【0025】
ブーム9は、荷物Wを吊り上げ可能な状態にワイヤロープを支持する可動支柱である。ブーム9は、複数のブーム部材から構成されている。ブーム9は、ベースブーム部材の基端が旋回台7の略中央に揺動可能に設けられている。
【0026】
ブーム9は、各ブーム部材をアクチュエータである図示しない伸縮用油圧シリンダで移動させることで軸方向に伸縮自在に構成されている。また、ブーム9には、ジブ9aが設けられている。
【0027】
図示しない伸縮用油圧シリンダは、電磁比例切換弁である伸縮用バルブ24(図2参照)によって伸縮操作されるアクチュエータである。伸縮用バルブ24は、伸縮用油圧シリンダに供給される作動油の流量を任意の流量に制御することができる。
【0028】
ブーム9には、ブーム9の長さを検出する伸縮長さ検出部である伸縮用センサ28と、ブーム9の先端を中心とする方位を検出する方位センサ29とが設けられている。
【0029】
ブームカメラ9b(図2参照)は、荷物Wおよび荷物Wの周辺の地物を撮影する検知装置である。ブームカメラ9bは、ブーム9の先端部に設けられている。ブームカメラ9bは、荷物Wの鉛直上方から荷物Wおよびクレーン1周辺の地物や地形を撮影可能に構成されている。
【0030】
メインフックブロック10とサブフックブロック11とは、荷物Wを吊る吊り具である。メインフックブロック10には、メインワイヤロープ14が巻き掛けられる複数のフックシーブと、荷物Wを吊るメインフック10aとが設けられている。サブフックブロック11には、荷物Wを吊るサブフック11aが設けられている。
【0031】
起伏用油圧シリンダ12は、ブーム9を起立および倒伏させ、ブーム9の姿勢を保持するアクチュエータである。起伏用油圧シリンダ12は、シリンダ部の端部が旋回台7に揺動自在に連結され、ロッド部の端部がブーム9のベースブーム部材に揺動自在に連結されている。
【0032】
起伏用油圧シリンダ12は、電磁比例切換弁である起伏用バルブ25(図2参照)によって伸縮操作される。起伏用バルブ25は、起伏用油圧シリンダ12に供給される作動油の流量を任意の流量に制御することができる。ブーム9には、起伏角度θx(図4参照)を検出する起伏角度検出部である起伏用センサ30(図2参照)が設けられている。
【0033】
メインウインチ13とサブウインチ15とは、メインワイヤロープ14とサブワイヤロープ16との繰り入れ(巻き上げ)および繰り出し(巻き下げ)を行う巻回装置である。
【0034】
メインウインチ13は、メインワイヤロープ14が巻きつけられたメインドラムがアクチュエータであるメイン用油圧モータ(不図示)によって回転されることで駆動する。
【0035】
また、サブウインチ15は、サブワイヤロープ16が巻きつけられたサブドラムがアクチュエータであるサブ用油圧モータ(不図示)によって回転されることで駆動する。
【0036】
メイン用油圧モータは、電磁比例切換弁であるメイン用バルブ26m(図2参照)によって回転操作される。メインウインチ13は、メイン用バルブ26mによってメイン用油圧モータを制御されることにより、任意の繰り入れ速度および任意の繰り出し速度で駆動するように構成されている。
【0037】
同様に、サブウインチ15は、電磁比例切換弁であるサブ用バルブ26s(図2参照)によってサブ用油圧モータを制御されることにより、任意の繰り入れ速度および任意の繰り出し速度で駆動するように構成されている。
【0038】
メインウインチ13とサブウインチ15とには、メインワイヤロープ14とサブワイヤロープ16の繰り出し量l(n)をそれぞれ検出する巻回用センサ33(図2参照)が設けられている。
【0039】
キャビン17は、筐体に覆われた操縦席である。キャビン17は、旋回台7に搭載されている。キャビン17には、図示しない操縦席が設けられている。操縦席には、車両2を走行操作するための操作具やクレーン装置6を操作するための旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21m、およびサブドラム操作具21s等が設けられている(図2参照)。
【0040】
旋回操作具18は、旋回用油圧モータ8を操作することができる。起伏操作具19は、起伏用油圧シリンダ12を操作することができる。伸縮操作具20は、伸縮用油圧シリンダを操作することができる。メインドラム操作具21mは、メイン用油圧モータを操作することができる。サブドラム操作具21sは、サブ用油圧モータを操作することができる。
【0041】
キャビン17には、荷物Wの移動方向と移動速さを入力する荷物移動操作部である荷物移動操作具32が設けられている。荷物移動操作具32は、水平面において荷物Wの移動方向と速さについての指示を入力する操作具である。
【0042】
荷物移動操作具32は、操作レバーおよび操作レバーの傾倒方向および傾倒量を検出する図示しないセンサから構成されている。荷物移動操作具32は、操作レバーが任意の方向に傾倒操作可能に構成されている。
【0043】
荷物移動操作具32は、操縦席の着座方向から前方向(以下、単に「前方向」と記す)をブーム9の延伸方向として図示しないセンサで検出した操作スティックの傾倒方向とその傾倒量についての操作信号を制御装置31(図2参照)に伝達するように構成されている。
【0044】
例えば、ブーム9の先端が北を向いている状態において荷物移動操作具32が前方向に対して左方向に傾倒角度45°の方向に任意の傾倒量だけ傾倒操作された場合、クレーン1は、ブーム9の延伸方向である北から傾倒角度45°の方向である北西に、荷物移動操作具32の傾倒量に応じた速さで荷物Wを移動させる。なお、荷物移動操作具32は、遠隔操作端末に設けられる構成でもよい。
【0045】
図2に示すように、制御装置31は、各操作弁を介してクレーン装置6のアクチュエータを制御する制御装置31である。制御装置31は、キャビン17内に設けられている。制御装置31は、実体的には、CPU(プロセッサー)、ROM、RAM、およびHDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI(制御回路)等からなる構成であってもよい。制御装置31は、各アクチュエータや切換えバルブ、センサ等の動作を制御するために種々のプログラムやデータが格納されている。
【0046】
制御装置31は、旋回台カメラ7b、ブームカメラ9b、旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21mおよびサブドラム操作具21sに接続されている。
【0047】
制御装置31は、旋回台カメラ7bからの映像およびブームカメラ9bからの映像を取得する。制御装置31は、旋回操作具18、起伏操作具19、メインドラム操作具21mおよびサブドラム操作具21sのそれぞれの操作量を取得することができる。
【0048】
制御装置31は、旋回用バルブ23、伸縮用バルブ24、起伏用バルブ25、メイン用バルブ26mおよびサブ用バルブ26sに接続されている。制御装置31は、旋回用バルブ23、起伏用バルブ25、メイン用バルブ26mおよびサブ用バルブ26sに各バルブの目標作動量である目標作動信号Md(不図示)または補正目標作動信号AMd(図3参照)を伝達することができる。
【0049】
制御装置31は、旋回用センサ27、伸縮用センサ28、方位センサ29、起伏用センサ30および巻回用センサ33に接続されている。
【0050】
制御装置31は、旋回台7の旋回角度θz、ブーム9の伸縮長さlb(n)、ブーム9の起伏角度θx、メインワイヤロープ14またはサブワイヤロープ16(以下、単に「ワイヤロープ」と記す。)の繰り出し量l(n)、およびブーム9の先端を中心とした方位を取得することができる。
【0051】
制御装置31は、旋回操作具18、起伏操作具19、メインドラム操作具21mおよびサブドラム操作具21sの操作量に基づいて各操作具に対応した目標作動信号Mdを生成する。尚、後述のようにブーム9のたわみ角の影響を考慮する場合、制御装置31は、各操作具に対応する補正目標作動信号AMdを生成する。
【0052】
このように構成されるクレーン1は、車両2を走行させることで任意の位置にクレーン装置6を移動させることができる。
【0053】
また、クレーン1は、起伏操作具19の操作によって起伏用油圧シリンダ12でブーム9を任意の起伏角度θxに起立させて、伸縮操作具20の操作によってブーム9を任意のブーム9長さに延伸させたりすることでクレーン装置6の揚程や作業半径を拡大することができる。
【0054】
また、クレーン1は、サブドラム操作具21s等によって荷物Wを吊り上げて、旋回操作具18の操作によって旋回台7を旋回させることで荷物Wを搬送することができる。
【0055】
制御装置31は、方位センサ29が取得したブーム9の先端の方位に基づいて、荷物Wの目標軌道信号Pdα(図3参照)を算出する。さらに、制御装置31は、目標軌道信号Pdαから荷物Wの目標位置である荷物Wの目標位置座標p(n+1)を算出する。
【0056】
制御装置31は、目標位置座標p(n+1)に荷物Wを移動させる旋回用バルブ23、伸縮用バルブ24、起伏用バルブ25、メイン用バルブ26mおよびサブ用バルブ26sの目標作動信号Md又は補正目標作動信号AMd(図3参照)を生成する。
【0057】
クレーン1は、荷物移動操作具32の傾倒方向に向けて傾倒量に応じた速さで荷物Wを移動させる。この際、クレーン1は、旋回用油圧モータ8、伸縮用油圧シリンダ、起伏用油圧シリンダ12およびメイン用油圧モータ等を目標作動信号Md又は補正目標作動信号AMdによって制御する。
【0058】
このように構成することで、クレーン1は、ブーム9の延伸方向を基準として、荷物移動操作具32の操作方向に基づいた移動方向と速さとからなる荷物Wの目標移動速度の制御信号である目標移動速度信号Vdを単位時間t毎に算出し、荷物Wの目標位置座標p(n+1)を決定する。よって、操縦者は、荷物移動操作具32の操作方向に対するクレーン装置6の作動方向の認識を喪失することがない。
【0059】
つまり、荷物移動操作具32の操作方向と荷物Wの移動方向とが共通の基準であるブーム9の延伸方向に基づいて算出されている。これにより、クレーン装置6の操作を容易かつ簡単に行うことができる。
【0060】
なお、本実施形態において、荷物移動操作具32は、キャビン17の内部に設けられているが、端末側無線機を設けてキャビン17の外部から遠隔操作可能な遠隔操作端末に設けてもよい。
【0061】
次に、図3から図9を用いて、クレーン装置6の制御装置31において実施される、目標作動信号Md(補正目標作動信号AMd)を生成するための荷物Wの目標軌道信号Pdα、およびブーム9の先端の目標位置であるブーム9の先端(ワイヤロープの繰り出し位置)の目標位置座標q(n+1)(以下、単に「ブーム9の目標位置座標q(n+1)」と記す。)を算出する制御工程の一例について説明する。
【0062】
図3に示すように、制御装置31は、目標軌道算出部31a、ブーム位置算出部31b、および作動信号生成部31cを有している。また、制御装置31は、旋回台7の前方の左右両側の一組の旋回台カメラ7bをステレオカメラとして使用し、荷物位置検出部として荷物Wの現在位置情報を取得可能に構成されている(図2参照)。
【0063】
図3に示すように、目標軌道算出部31aは、制御装置31の一部であり、荷物Wの目標移動速度信号Vdを荷物Wの目標軌道信号Pdαに変換する。目標軌道算出部31aは、荷物Wの移動方向および速さから構成されている荷物Wの目標移動速度信号Vdを荷物移動操作具32から単位時間t毎に取得することができる。標移動速度信号Vdは、荷物の目標速度に関する情報の一例に該当する。
【0064】
また、目標軌道算出部31aは、取得した目標移動速度信号Vdを積分して単位時間t毎の荷物Wのx軸方向、y軸方向およびz軸方向の目標軌道信号Pdαを算出することができる。ここで、添え字αは、x軸方向、y軸方向およびz軸方向のいずれかを表す符号である。このような目標軌道算出部31aは、後述の図5に示す積分器32a及び目標値フィルタ35の機能を有する。
【0065】
ブーム位置算出部31bは、制御装置31の一部であり、目標軌道算出部31aから目標軌道信号Pdαを取得することができる。ブーム位置算出部31bは、ブーム9の姿勢情報と荷物Wの目標軌道信号Pdαからブーム9の先端の位置座標を算出する。
【0066】
ブーム位置算出部31bは、旋回用センサ27から旋回台7の旋回角度θz(n)を取得する。ブーム位置算出部31bは、伸縮用センサ28から伸縮長さlb(n)を取得する。ブーム位置算出部31bは、起伏用センサ30から起伏角度θx(n)を取得する。
【0067】
また、ブーム位置算出部31bは、荷重検出部42(図2参照)が検出した荷重に関する情報を、荷重検出部42から取得する。荷重に関する情報は、ブーム9の先端部に作用する鉛直方向における下向きの荷重に関する情報と捉えてよい。
【0068】
荷重に関する情報は、例えば、ブーム9の先端部から繰り出されたワイヤロープの重量、および、ワイヤロープにより吊られた部材(荷物W、玉掛具、及びフック等)の重量を含む。ブーム位置算出部31bは、旋回台7の前方の左右両側にそれぞれ配置されている一組の旋回台カメラ7bが撮影した荷物Wの画像から荷物Wの現在位置情報を取得する(図2参照)。
【0069】
ブーム位置算出部31bは、例えば、取得した荷物Wの現在位置情報から荷物Wの現在位置座標p(n)を算出する。また、ブーム位置算出部31bは、取得した旋回角度θz(n)、伸縮長さlb(n)、起伏角度θx(n)からブーム9の先端の現在位置であるブーム9の先端(ワイヤロープの繰り出し位置)の現在位置座標q(n)(以下、単に「ブーム9の現在位置座標q(n)」と記す)を算出することができる。
【0070】
また、ブーム位置算出部31bは、荷物Wの現在位置座標p(n)とブーム9の現在位置座標q(n)とからワイヤロープの繰り出し量l(n)を算出することができる。また、ブーム位置算出部31bは、目標軌道信号Pdαから単位時間t経過後の荷物Wの位置である荷物Wの目標位置座標p(n+1)を算出することができる。
【0071】
さらに、ブーム位置算出部31bは、荷物Wの現在位置座標p(n)と荷物Wの目標位置座標p(n+1)とから荷物Wが吊り下げられているワイヤロープの張力f(n)、ワイヤロープの方向ベクトルe(n+1)を算出することができる。
【0072】
ブーム位置算出部31bは、逆動力学モデルを用いて荷物Wの目標位置座標p(n+1)と、ワイヤロープの方向ベクトルe(n+1)とから単位時間t経過後のブーム9の目標位置座標q(n+1)を算出するように構成されている。
【0073】
さらに、ブーム位置算出部31bは、クレーン1のたわみに関する情報を算出する。具体的には、ブーム位置算出部31bは、クレーン1の姿勢情報、逆動力学モデルにおいて算出したワイヤロープの張力f(n)およびワイヤロープの方向である方向ベクトルe(n)に基づいて、クレーン1のたわみに関する情報の一例である、ブーム9における鉛直方向のたわみ角δ(n)と旋回方向のたわみ角ε(n)を算出する(図6Aおよび図6B参照)。
【0074】
ブーム位置算出部31bは、ブーム9における鉛直方向のたわみ角δ(n)と(後述する式(7)参照)、ブーム9における旋回方向のたわみ角ε(n)と(後述する式(8)参照)に基づいてブーム9の現在位置座標q(n)およびブーム9の目標位置座標q(n+1)を補正する。
【0075】
さらに、ブーム位置算出部31bは、補正したブーム9の現在位置座標q(n)およびブーム9の目標位置座標q(n+1)から補正目標作動量である補正目標作動信号AMdを算出する。
【0076】
作動信号生成部31cは、制御装置31の一部であり、単位時間t経過後の補正したブーム9の目標位置座標q(n+1)から各アクチュエータの補正目標作動信号AMd等を生成する。
【0077】
作動信号生成部31cは、ブーム位置算出部31bから単位時間t経過後の補正したブーム9の目標位置座標q(n+1)を取得することができる。作動信号生成部31cは、補正したブーム9の現在位置座標q(n)と荷物Wの目標位置座標p(n+1)とから旋回用バルブ23、伸縮用バルブ24、起伏用バルブ25、メイン用バルブ26m、および/またはサブ用バルブ26sの補正目標作動信号AMd、後述するフィードバック作動信号AMd1およびフィードフォワード作動信号AMd2を生成するように構成されている。
【0078】
次に、図4に示すように、制御装置31は、ブーム9の目標位置座標q(n+1)を算出するためのクレーン1の逆動力学モデルを定める。逆動力学モデルは、XYZ座標系に定義され、原点Oをブーム9の旋回中心とする。
【0079】
制御装置31は、逆動力学モデルにおいて、q、p、lb、θx、θz、l、fおよびeをそれぞれ定義する。qは、例えばブーム9の現在位置座標q(n)を示す。pは、例えば荷物Wの現在位置座標p(n)を示す。lbは、例えばブーム9の伸縮長さlb(n)示す。θxは、例えば起伏角度θx(n)を示す。θzは、例えば旋回角度θz(n)を示す。lは、例えばワイヤロープの繰り出し量l(n)を示す。fはワイヤロープの張力f(n)を示す。eは、例えばワイヤロープの方向ベクトルe(n)を示す。
【0080】
このように定まる逆動力学モデルにおいてブーム9の先端の目標位置qと荷物Wの目標位置pとの関係が、荷物Wの目標位置pと荷物Wの質量mとワイヤロープのばね定数kfとから式(2)によって表される。また、ブーム9の先端の目標位置qが、荷物Wの時間の関数(時間tをnで表した関数)である式(3)によって算出される。
【0081】
【数2】
【0082】
【数3】
f:ワイヤロープの張力、kf:ばね定数、m:荷物Wの質量、q:ブーム9の先端の現在位置または目標位置、p:荷物Wの現在位置または目標位置、l:ワイヤロープの繰出し量、e:方向ベクトル、g:重力加速度
【0083】
ワイヤロープの繰り出し量l(n)は、以下の式(4)から算出される。ワイヤロープの繰り出し量l(n)は、ブーム9の先端位置であるブーム9の現在位置座標q(n)と荷物Wの位置である荷物Wの現在位置座標p(n)の距離で定義される。
【0084】
【数4】
【0085】
ワイヤロープの方向ベクトルe(n)は、以下の式(5)から算出される。ワイヤロープの方向ベクトルe(n)は、ワイヤロープの張力f(n)(式(2)参照)の単位長さのベクトルである。ワイヤロープの張力f(n)は、荷物Wの現在位置座標p(n)と単位時間t経過後の荷物Wの目標位置座標p(n+1)から算出される荷物Wの加速度から重力加速度を減算して算出される。
【0086】
【数5】
【0087】
単位時間t経過後のブーム9の先端の目標位置であるブーム9の目標位置座標q(n+1)は、式(2)をnの関数で表した式(6)から算出される。ここで、αは、ブーム9の旋回角度θz(n)を示している。
【0088】
ブーム9の目標位置座標q(n+1)は、逆動力学を用いてワイヤロープの繰り出し量l(n)と荷物Wの目標位置座標p(n+1)と方向ベクトルe(n+1)とから算出される。
【0089】
【数6】
【0090】
次に、図5図6A、および図6Bを用いて、学習型逆動力学モデルを含むクレーン1の制御システム34が、補正目標作動信号AMd(フィードバック作動信号AMd1およびフィードフォワード作動信号AMd2)を生成する処理、および、クレーン1のたわみに関する情報(具体的には、ブーム9のたわみ角)に基づいて現在位置座標q(n)および目標位置座標q(n+1)を補正する処理について説明する。
【0091】
クレーン1は、クレーン1の制御システム34として、旋回台カメラ7b、旋回用センサ27、伸縮用センサ28、起伏用センサ30、荷物移動操作具32、目標値フィルタ35、目標作動量算出部36、たわみ角算出部37、フィードバック制御部38およびフィードフォワード制御部41とを含む。
【0092】
制御システム34は、制御装置31の目標軌道算出部31a、ブーム位置算出部31bおよび作動信号生成部31cが協働することにより、目標作動量算出部36とたわみ角算出部37とフィードバック制御部38とフィードフォワード制御部41とを構成している。
【0093】
本実施形態の場合、制御システム34は、図5に示すように、クレーンのアクチュエータを制御する制御システムであって、アクチュエータの目標作動量に関する信号(補正目標作動信号AMd)を生成する信号処理部(目標値フィルタ35および目標作動量算出部36)を有する。
【0094】
また、制御システム34は、目標作動量に関する信号(補正目標作動信号AMd)とフィードバックしたアクチュエータの作動量に関する信号(実作動信号Mdr)との差分に基づいてアクチュエータを制御するフィードバック制御部38を有する。
【0095】
また、制御システム34は、フィードバック制御部38と協働しつつ目標作動量に関する信号(補正目標作動信号AMd)に基づいてアクチュエータを制御し、教師信号(補正目標作動信号AMdと実作動信号Mdrとの差分)に基づいて重み係数を調整することでアクチュエータの特性を学習するフィードフォワード制御部41を備える。
【0096】
また、制御システム34の信号処理部(目標値フィルタ35および目標作動量算出部36)は、入力信号(目標移動位置信号Pd)からパルス状成分を除去して入力信号(目標移動位置信号Pd)を目標作動量に関する信号(補正目標作動信号AMd)に変換する。
【0097】
さらに、制御システム34の信号処理部は、目標作動量に関する信号(補正目標作動信号AMd)の生成過程で生成される中間情報(後述の、ブーム9の現在位置座標q(n)およびブーム9の目標位置座標q(n+1))を、クレーンのたわみに関する情報に基づいて補正して、目標作動量に関する信号(補正目標作動信号AMd)を生成する。
【0098】
具体的には、図5に示すように、目標値フィルタ35は、荷物Wの目標移動位置の制御信号である目標移動位置信号Pdから荷物Wの目標軌道信号Pdαを算出する。目標値フィルタ35は、信号処理部および第一処理部の一例に該当し、目標移動位置信号Pdに含まれる所定の周波数以上の周波数の成分を減衰させる。
【0099】
目標値フィルタ35には、荷物移動操作具32の目標移動速度信号Vdを積分器32aによって変換した荷物Wの目標移動位置信号Pdが入力される。積分器32aは、前側処理部の一例に該当する。
【0100】
荷物Wの目標移動位置信号Pdは、信号処理部に入力される入力信号の一例に該当する。目標移動位置信号Pdは、例えば、パルス状(ステップ状)の信号である。目標移動位置信号Pdは、目標値フィルタ35が適用されることにより、パルス状成分を除去された目標軌道信号Pdαに変換される。
【0101】
換言すれば、目標移動位置信号Pdは、目標値フィルタ35が適用されることにより、目標軌道の時間変化(換言すれば、位置座標の各軸方向の速度)がパルス状(ステップ状)になるような急激な変化が抑制された目標軌道信号Pdαに変換される。
【0102】
このような目標軌道信号Pdαは、パルス状成分を含まないため、フィードフォワード制御部41における微分操作による特異点(急激な位置変動)の発生が抑制される。
【0103】
目標値フィルタ35は、例えば、式(1)の伝達関数G(s)からなる。伝達関数G(s)は、T、T、T、T、C、C、C、Cを係数、sを微分要素として部分分数分解した形式で表現している。式(1)の伝達関数G(s)は、x軸、y軸およびz軸毎に設定されている。このように、伝達関数G(s)は、1次遅れの伝達関数を重ね合わせたものとして表現することができる。目標値フィルタ35は、荷物Wの目標移動位置信号Pdに伝達関数G(s)を乗算することで、目標移動位置信号Pdを目標軌道信号Pdαに変換する。なお、目標値フィルタ35は、本実施形態の場合に限定されない。目標値フィルタ35は、入力信号から所定周波数以上の周波数成分を減衰できる種々のフィルタであってよい。例えば、目標値フィルタ35は、次数が3次以下のローパスフィルタあってもよい。
【0104】
【数1】
、T、T、T、C、C、C、C:係数、s:微分要素
【0105】
目標作動量算出部36は、信号処理部および第二処理部の一例に該当し、目標軌道信号Pdαに基づいて、補正目標作動信号AMdを生成する。
【0106】
具体的には、目標作動量算出部36は、逆動力学モデルを用いて、クレーン1の姿勢情報、荷物Wの現在位置情報および荷物Wの目標軌道信号Pdαから荷物Wの目標位置である目標位置座標p(n+1)および各アクチュエータの補正目標作動信号AMdを生成する。目標作動量算出部36は、逆動力学モデルを有する。
【0107】
目標作動量算出部36は、目標値フィルタ35に直列に接続されている。目標作動量算出部36は、目標値フィルタ35から取得した目標軌道信号Pdα、旋回台カメラ7bから取得した荷物Wの現在位置情報から算出した荷物Wの現在位置座標p(n)および各センサから取得したクレーン1の姿勢情報(旋回角度θz(n)、伸縮長さlb(n)、起伏角度θx(n))から逆動力学モデルを用いてワイヤロープの繰り出し量l(n)および単位時間t経過後のブーム9の目標位置座標q(n+1)を算出する。
【0108】
次に、目標作動量算出部36は、逆動力学モデルにおいて算出した目標位置座標q(n+1)から各アクチュエータの目標作動量を表す補正目標作動信号AMdを生成する。
【0109】
たわみ角算出部37は、クレーン1のたわみに関する情報を算出する。具体的には、たわみ角算出部37は、クレーン1の姿勢情報、目標作動量算出部36の逆動力学モデルにおいて算出したワイヤロープの張力f(n)およびワイヤロープの方向である方向ベクトルe(n)に基づいて、ブーム9における鉛直方向のたわみ角δ(n)と旋回方向のたわみ角ε(n)を算出する。
【0110】
ブーム9における鉛直方向のたわみ角δ(n)は、ブームの鉛直方向のたわみ角に関する情報の一例に該当する。ブーム9における旋回方向のたわみ角ε(n)は、ブームの旋回方向のたわみ角に関する情報の一例に該当する。
【0111】
たわみ角算出部37は、目標作動量算出部36に直列に接続されている。たわみ角算出部37は、起伏用センサ30が検出した起伏角度θx(n)と、伸縮用センサ28が検出したクレーン1の姿勢情報である伸縮長さlb(n)と、目標作動量算出部36の逆動力学モデルにおいて算出したワイヤロープの張力f(n)およびワイヤロープの方向である方向ベクトルe(n)とを取得する。
【0112】
たわみ角算出部37は、ブーム9の軸線に対して方向ベクトルe(n)がなす角度である径方向角度β(n)と、鉛直線に対して方向ベクトルe(n)がなすブーム9の旋回方向の角度である周方向角度γ(n)を算出する(図4参照)。
【0113】
さらに、たわみ角算出部37は、張力f(n)におけるブーム9の軸線に垂直な起伏方向分力fβ(n)=f(n)×SINβ(n)と、張力f(n)におけるブーム9の旋回方向分力fγ(n)=f(n)×SINγ(n)とを算出する。
【0114】
図6Aおよび図6Bに示すように、たわみ角算出部37は、起伏方向分力fβ(n)と旋回方向分力fγ(n)とからブーム9における鉛直方向のたわみ角δ(n)とブーム9における旋回方向のたわみ角ε(n)とを算出する。
【0115】
Eをブーム9に用いられている材料の縦弾性係数、Iをブーム9の断面2次モーメントとして、ブーム9における鉛直方向のたわみ角δ(n)は、以下の式(7)から算出される。
【0116】
同様に、ブーム9における旋回方向のたわみ角ε(n)は、以下の式(8)から算出される。たわみ角算出部37は、算出したブーム9における鉛直方向のたわみ角δ(n)およびブーム9における旋回方向のたわみ角ε(n)を目標作動量算出部36に送信する。
【0117】
尚、たわみ角算出部37は、たわみに関する情報として、クレーン1の車体のたわみに関する情報を算出してもよい。たわみ角算出部37は、クレーン1の車体のたわみに関する情報を目標作動量算出部36に送信する。
【0118】
【数7】
【0119】
【数8】
【0120】
図5に示すように、目標作動量算出部36は、ブーム9における鉛直方向のたわみ角δ(n)と、ブーム9における旋回方向のたわみ角ε(n)とを取得すると、鉛直方向のたわみ角δ(n)と、旋回方向のたわみ角ε(n)とに基づいてブーム9の現在位置座標q(n)およびブーム9の目標位置座標q(n+1)を補正する。
【0121】
ブーム9の現在位置座標q(n)およびブーム9の目標位置座標q(n+1)は、目標作動量算出部36における補正目標作動信号AMdの生成過程で生成される中間情報の一例に該当する。
【0122】
さらに、目標作動量算出部36は、補正したブーム9の現在位置座標q(n)およびブーム9の目標位置座標q(n+1)から補正目標作動量である補正目標作動信号AMdを算出する。補正目標作動信号AMdは、目標作動量に関する情報の一例に該当する。
【0123】
フィードバック制御部38は、補正目標作動信号AMdと補正目標作動信号AMdに対する各アクチュエータの実作動量を表す実作動信号Mdrの差分に基づいて生成した各アクチュエータのフィードバック作動量であるフィードバック作動信号AMd1を生成する。
【0124】
フィードバック制御部38は、フィードバック作動信号AMd1を生成するフィードバック制御器39を有する。フィードバック制御器39は、目標作動量算出部36に直列に接続されている。
【0125】
フィードバック制御部38は、クレーン1の各センサから実作動信号Mdrを取得することができる。フィードバック制御部38は、実作動信号Mdrを補正目標作動信号AMdにフィードバックさせるように構成されている。
【0126】
フィードバック制御部38は、目標作動量算出部36から荷物Wの補正目標作動信号AMdを取得する。また、フィードバック制御部38は、クレーン1の各センサから実作動信号Mdrを取得する。
【0127】
フィードバック制御部38は、取得した補正目標作動信号AMdに取得した実作動信号Mdrをフィードバック(ネガティブフィードバック)する。フィードバック制御部38は、補正目標作動信号AMdに対する実作動信号Mdrの差分に基づいて、フィードバック作動信号AMd1を算出する。
【0128】
フィードフォワード制御部41は、補正目標作動信号AMdに基づいて、各アクチュエータのフィードフォワード作動量であるフィードフォワード作動信号AMd2を生成する。このようなフィードフォワード制御部41は、学習型逆動力学モデル40を有する。
【0129】
フィードフォワード制御部41は、例えばクレーン1が有する複数の特性をn個のサブシステムで表した学習型逆動力学モデル40を有している。学習型逆動力学モデル40は、目標作動量算出部36に並列に接続されている。
【0130】
また、学習型逆動力学モデル40は、複数の第1サブシステムSM1、第2サブシステムSM2、第3サブシステムSM3・・・第nサブシステムSMnが並列に結合されている。つまり、学習型逆動力学モデル40の各サブシステムは、フィードバック制御器39と並列に接続されている。
【0131】
学習型逆動力学モデル40は、第1サブシステムSM1に重み係数w、第2サブシステムSM2に重み係数w、第3サブシステムSM3に重み係数w・・・および第nサブシステムSMnに重み係数wが割り当てられている。
【0132】
フィードフォワード制御部41は、補正目標作動信号AMdに対する実作動信号Mdrの差分に基づいて、各モデルの重み係数w、w、w・・・およびwを調整する。このように、フィードフォワード制御部41は、学習型逆動力学モデル40の重み係数を調整することでクレーン1の特性を有する学習型逆動力学モデル40を習得可能に構成されている。
【0133】
フィードフォワード制御部41は、目標作動量算出部36から補正目標作動信号AMdを取得する。また、フィードフォワード制御部41は、フィードバック制御部38から補正目標作動信号AMdに対する実作動信号Mdrの差分を取得する。
【0134】
フィードフォワード制御部41は、補正目標作動信号AMdに対する実作動信号Mdrの差分に基づいて、各モデルの重み係数w、w、w・・・およびwを調整する。つまり、フィードフォワード制御部41は、目標作動量に対する実作動量から学習型逆動力学モデル40の1層の重み係数を調整することで、各サブシステムの特性がクレーン1の実特性に適応する。
【0135】
フィードフォワード制御部41は、補正目標作動信号AMdに基づいて各アクチュエータのフィードフォワード作動信号AMd2を生成する。フィードフォワード制御部41は、生成したフィードフォワード作動信号AMd2をフィードバック作動信号AMd1に加算する。
【0136】
クレーン1の制御システム34は、フィードバック制御部38が算出したフィードバック作動信号AMd1と、フィードフォワード制御部41が算出したフィードフォワード作動信号AMd2とを加算した作動信号(最終作動信号)をクレーン1の各アクチュエータに送信する。
【0137】
制御システム34は、フィードバック作動信号AMd1とフィードフォワード作動信号AMd2とを各アクチュエータに送信後、クレーン1の各センサが検出した実作動信号Mdrをフィードバックして補正目標作動信号AMdから実作動信号Mdrを減算する。制御システム34は、補正目標作動信号AMdに対する実作動信号Mdrの差分に基づいて学習型逆動力学モデル40の重み係数を調整する。
【0138】
制御システム34は、フィードフォワード制御部41の学習型逆動力学モデル40の特性とクレーン1の特性との乖離度合いが小さいほど、補正目標作動信号AMdに対する実作動信号Mdrの差分が小さくなる。
【0139】
また、制御システム34は、補正目標作動信号AMdに対する実作動信号Mdrの差分が小さくなるにつれて、学習型逆動力学モデル40の重み係数の調整量が少なくなる。つまり、制御システム34は、学習型逆動力学モデル40の特性が学習によってクレーン1の特性に近似するにつれて、フィードバック制御部38が算出したフィードバック作動信号AMd1による制御の割合が減少し、フィードフォワード作動信号AMd2による制御の割合が増加する。
【0140】
次に図7から図10を用いて、制御システム34におけるクレーン1のフィードフォワード学習制御について詳細に記載する。
【0141】
図7に示すように、ステップS100において、制御システム34は、目標軌道算出工程Aを開始し、ステップをステップS101に移行させる(図8参照)。そして、目標軌道算出工程Aが終了するとステップをステップS200に移行させる(図7参照)。
【0142】
ステップS200において、制御システム34は、ブーム位置算出工程Bを開始し、ステップをステップS201に移行させる(図9参照)。そして、ブーム位置算出工程Bが終了するとステップをステップS300に移行させる(図7参照)。
【0143】
ステップS300において、制御システム34は、ブーム位置補正工程Cを開始し、ステップをステップS301に移行させる(図10参照)。そして、ブーム位置補正工程Cが終了するとステップをステップS110に移行させる(図7参照)。
【0144】
図7に示すように、ステップS110において、制御システム34は、目標作動量算出部36において、補正されたブーム9の目標位置座標q(n+1)から補正目標作動信号AMdを算出し、ステップをステップS120に移行させる。補正前のブーム9の目標位置座標q(n+1)は、単にブーム9の目標位置座標q(n+1)と称される。一方、補正後のブーム9の目標位置座標q(n+1)は、ブーム9の補正目標位置座標q(n+1)と称される。
【0145】
ステップS120において、制御システム34は、クレーン1の各センサから実作動信号Mdrを取得し、ステップをステップS130に移行させる。
【0146】
ステップS130において、制御システム34は、フィードバック制御部38において、補正目標作動信号AMdと実作動信号Mdrとの差分を算出し、ステップをステップS140に移行する。
【0147】
ステップS140において、制御システム34は、フィードバック制御器39において、補正目標作動信号AMdと実作動信号Mdrとの差分に基づいてフィードバック作動信号AMd1を生成し、ステップをステップS150に移行させる。
【0148】
ステップS131において、制御システム34は、フィードフォワード制御部41において、補正目標作動信号AMdと実作動信号Mdrとの差分に基づいて学習型逆動力学モデル40の重み係数w1、w2、w3、・・・wnを調整し、ステップをステップS400に移行させる。
【0149】
ステップS400において、制御システム34は、ブーム位置算出工程Bを開始し、ステップをステップS401に移行させる(図9参照)。そして、ブーム位置算出工程Bが終了するとステップをステップS500に移行させる(図7参照)。
【0150】
ステップS500において、制御システム34は、ブーム位置補正工程Cを開始し、ステップをステップS501に移行させる(図10参照)。そして、ブーム位置補正工程Cが終了するとステップをステップS132に移行させる(図7参照)。
【0151】
ステップS132において、制御システム34は、補正した目標位置座標q(n+1)からフィードフォワード作動信号AMd2を生成し、ステップをステップS150に移行させる。
【0152】
ステップS150において、制御システム34は、フィードバック作動信号AMd1とフィードフォワード作動信号AMd2と加算し、ステップをステップS160に移行させる。
【0153】
ステップS160において、制御システム34は、クレーン1の各アクチュエータにフィードバック作動信号AMd1とフィードフォワード作動信号AMd2とを加算した信号(最終作動信号ともいう。)を送信しステップをステップS100に移行させる。
【0154】
図8に示すように、目標軌道算出工程AのステップS101において、制御システム34は、荷物Wの目標移動速度信号Vdを取得する。荷物Wの目標移動速度信号Vdは、オペレータが荷物移動操作具32を操作することにより入力される信号である。
【0155】
次に、図8のステップS102において、制御システム34は、荷物Wの目標移動位置信号Pdを取得する。荷物Wの目標移動位置信号Pdは、積分器32aにより目標移動速度信号Vdを積分することにより生成される信号である。
【0156】
次に、図8のステップS103において、制御システム34は、目標軌道信号Pdαを取得する。目標軌道信号Pdαは、目標値フィルタ35により目標移動位置信号Pdをフィルタリングすることにより算出される信号である。そして、制御システム34は、目標軌道算出工程Aを終了させ、ステップをステップS200に移行させる(図9参照)。
【0157】
図9に示すように、ブーム位置算出工程BのステップS201、S401において、制御システム34は、目標作動量算出部36において、旋回台7の旋回角度θz(n)、伸縮長さlb(n)およびブーム9の起伏角度θx(n)からブーム9の現在位置座標q(n)を算出し、ステップをステップS202、S402に移行させる。
【0158】
ステップS202、S402において、制御システム34は、目標作動量算出部36において、荷物Wの現在位置座標p(n)とブーム9の現在位置座標q(n)から上述の式(4)を用いてワイヤロープの繰り出し量l(n)を算出し、ステップをステップS203、S403に移行させる。
【0159】
ステップS203、S403において、制御システム34は、目標作動量算出部36において、荷物Wの現在位置座標p(n)を基準として、目標軌道信号Pdαから単位時間t経過後の荷物Wの目標位置である荷物Wの目標位置座標p(n+1)を算出し、ステップをステップS204、S404に移行させる。
【0160】
ステップS204、S404において、制御システム34は、目標作動量算出部36において、荷物Wの現在位置座標p(n)と荷物Wの目標位置座標p(n+1)とから荷物Wの加速度を算出し、重力加速度を用いて上述の式(5)を用いてワイヤロープの方向ベクトルe(n+1)を算出し、ステップをステップS205、S405に移行させる。
【0161】
ステップS205、S405において、制御システム34は、目標作動量算出部36で、算出したワイヤロープの繰り出し量l(n)とワイヤロープの方向ベクトルe(n+1)とから上述の式(6)を用いてブーム9の目標位置座標q(n+1)を算出し、ブーム位置算出工程Bを終了してステップをステップS300またはステップS500に移行させる(図10参照)。
【0162】
図10に示すように、ブーム位置補正工程CのステップS301、S501において、制御システム34は、たわみ角算出部37において、ワイヤロープの張力f(n)およびワイヤロープの方向である方向ベクトルe(n)からブーム9の軸線に対して方向ベクトルe(n)がなす角度である径方向角度β(n)と、鉛直線に対して方向ベクトルe(n)がなすブーム9の旋回方向の角度である周方向角度γ(n)を算出し、ステップをステップS302、S502に移行させる。
【0163】
ステップS302、S502において、制御システム34は、たわみ角算出部37において、ワイヤロープの張力f(n)と径方向角度β(n)から張力f(n)の起伏方向分力fβ(n)を算出し、ワイヤロープの張力f(n)と周方向角度γ(n)から張力f(n)の旋回方向分力fγ(n)を算出し、ステップをステップS303、S503に移行させる。
【0164】
ステップS303、S503において、制御システム34は、たわみ角算出部37において、張力f(n)の起伏方向分力fβ(n)から上述の式(7)を用いてブーム9における鉛直方向のたわみ角δ(n)を算出し、張力f(n)の旋回方向分力fγ(n)から上述の式(8)を用いてブーム9における旋回方向のたわみ角ε(n)を算出する。そして、制御システム34は、鉛直方向のたわみ角δ(n)および旋回方向のたわみ角ε(n)を、目標作動量算出部36に送信し、ステップをステップS304、S504に移行させる。
【0165】
ステップS304、S504において、制御システム34は、目標作動量算出部36において、ブーム9の鉛直方向のたわみ角δ(n)および旋回方向のたわみ角ε(n)に基づいてブーム9の現在位置座標q(n)およびブーム9の目標位置座標q(n+1)を補正し、ブーム位置補正工程Cを終了させ、ステップをステップS110、S132に移行させる(図7参照)。ブーム9の現在位置座標q(n)およびブーム9の目標位置座標q(n+1)は、目標作動量に関する信号(補正目標作動信号AMd)の生成過程で生成される中間情報の一例に該当する。
【0166】
クレーン1の制御システム34は、目標軌道算出工程Aとブーム位置算出工程Bとを繰り返すことで、ブーム9の目標位置座標q(n+1)を算出し、単位時間t経過後に、ワイヤロープの繰り出し量l(n+1)と荷物Wの現在位置座標p(n+1)と荷物Wの目標位置座標p(n+2)とに基づいてワイヤロープの方向ベクトルe(n+2)を算出する。
【0167】
また、制御システム34は、ワイヤロープの繰り出し量l(n+1)とワイヤロープの方向ベクトルe(n+2)とに基づいて、更に単位時間t経過後のブーム9の目標位置座標q(n+2)を算出する。
【0168】
つまり、制御システム34は、ワイヤロープの方向ベクトルe(n)を算出し、逆動力学を用いて荷物Wの現在位置座標p(n+1)と荷物Wの目標位置座標p(n+2)とワイヤロープの方向ベクトルe(n+2)とに基づいて単位時間t後のブーム9の目標位置座標q(n+2)を順次算出する。
【0169】
制御システム34は、ブーム9の目標位置座標q(n+2)に基づいて補正目標作動信号AMdを生成し、各アクチュエータを制御している。
【0170】
制御システム34の学習型逆動力学モデル40は、物理的な特性が明確な複数のサブシステムから構成されている。また、学習型逆動力学モデル40は、複数のサブシステムからの出力にそれぞれ重み係数を掛けることで1層のニューラルネットワークとみなすことができる。
【0171】
学習型逆動力学モデル40は、目標作動信号Md(補正目標作動信号AMd)と実作動信号Mdrとの差分に基づいて重み係数w1、w2、w3・・・wnを独立して調整することで、第1サブシステムSM1、第2サブシステムSM2、第3サブシステムSM3・・・第nサブシステムSMnの物理的な特性をクレーン1の特性に近似させることができる。
【0172】
また、クレーン1の制御システム34は、ブーム位置補正工程Cによって、ブーム9の現在位置座標q(n)およびブーム9の目標位置座標(n+1)を、クレーン1のたわみに関する情報に基づいて補正するので、ブーム9のたわみを考慮したクレーンの各アクチュエータの補正目標作動信号AMdが生成される。これにより、クレーン1の制御システム34は、ブーム9の伸縮長さによって変化するブーム9のたわみの影響を抑制することできる。尚、クレーン1のたわみに関する情報は、ブーム9のたわみ角に関する情報とともに、クレーン1の車体のたわみに関する情報を含んでもよい。
【0173】
このように、クレーン1の制御システム34は、クレーン1の作動中に、ブーム9のたわみを考慮しつつその動特性の変化に柔軟に対応しながら学習型逆動力学モデル40の重み係数w1、w2、w3、・・・wnを同定する。
【0174】
つまり、制御システム34は、高次の伝達関数が複数の低次の第1サブシステムSM1、第2サブシステムSM2、第3サブシステムSM3・・・第nサブシステムSMn毎に調整される。
【0175】
また、制御システム34は、学習型逆動力学モデル40で算出することができないブーム9の弾性変形量(たわみに関する情報)を加味しているので、ブーム9の目標位置座標q(n+1)の算出制度が向上する。
【0176】
これにより、制御システム34は、荷物Wを基準としてアクチュエータを制御する際に、荷物Wの動きからブーム9のたわみを考慮したクレーン1の動特性を学習することで、荷物Wの揺れを抑制しつつ操縦者の意図に沿った態様で荷物Wを移動させることができる。
【0177】
なお、本実施形態において制御システム34は、学習型逆動力学モデル40を複数のサブシステムとして構成したが他の物理的な特性が明確なモデルでもよい。
【0178】
また、制御システム34は、学習型逆動力学モデル40に入力される補正目標作動信号AMdは、ローパスフィルタである目標値フィルタ35によりフィルタリングされた目標軌道信号Pdαに基づいて生成されるため、フィードフォワード制御部41における微分操作における特異点の発生が抑制されている。従って、制御システム34における学習型逆動力学モデル40の学習の収束が促進される。
【0179】
これにより、制御システム34は、荷物Wを基準としてアクチュエータを制御する際に、荷物Wの揺れを抑制しつつ操縦者の意図に沿った態様で荷物Wを移動させることができる。
【0180】
上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【0181】
2019年12月27日出願の特願2019-238334の日本出願に含まれる明細書、図面、および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【符号の説明】
【0182】
1 クレーン
2 車両
3 車輪
4 エンジン
5 アウトリガ
6 クレーン装置
7 旋回台
7b 旋回台カメラ
8 旋回用油圧モータ
9 ブーム
9a ジブ
9b ブームカメラ
10 メインフックブロック
10a メインフック
11 サブフックブロック
11a サブフック
12 起伏用油圧シリンダ
13 メインウインチ
14 メインワイヤロープ
15 サブウインチ
16 サブワイヤロープ
17 キャビン
18 旋回操作具
19 起伏操作具
20 伸縮操作具
21m メインドラム操作具
21s サブドラム操作具
23 旋回用バルブ
24 伸縮用バルブ
25 起伏用バルブ
26m メイン用バルブ
26s サブ用バルブ
27 旋回用センサ
28 伸縮用センサ
29 方位センサ
30 起伏用センサ
31 制御装置
31a 目標軌道算出部
31b ブーム位置算出部
31c 作動信号生成部
32 荷物移動操作具
32a 積分器
33 巻回用センサ
34 制御システム
35 目標値フィルタ
36 目標作動量算出部
37 たわみ角算出部
38 フィードバック制御部
39 フィードバック制御器
40 学習型逆動力学モデル
41 フィードフォワード制御部
42 荷重検出部
W 荷物
Vd 目標移動速度信号
Pd 目標移動位置信号
Pdα 目標軌道信号
、w、w、w 重み係数
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10