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  • 特許-表面処理鋼板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】表面処理鋼板
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/00 20060101AFI20221227BHJP
   C23C 2/06 20060101ALI20221227BHJP
   C23C 2/40 20060101ALI20221227BHJP
   C23C 22/05 20060101ALI20221227BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20221227BHJP
   C23C 22/80 20060101ALI20221227BHJP
   C23C 22/07 20060101ALI20221227BHJP
   C23C 22/40 20060101ALI20221227BHJP
   C23C 22/44 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
C23C22/00 Z
C23C2/06
C23C2/40
C23C22/05
C23C28/00 C
C23C22/80
C23C22/07
C23C22/40
C23C22/44
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022522280
(86)(22)【出願日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 JP2022000228
(87)【国際公開番号】W WO2022149596
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2021001011
(32)【優先日】2021-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】清水 厚雄
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼田 郁美
(72)【発明者】
【氏名】莊司 浩雅
(72)【発明者】
【氏名】秋岡 幸司
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/189769(WO,A1)
【文献】特表2018-505314(JP,A)
【文献】特開2012-077322(JP,A)
【文献】特開2014-214315(JP,A)
【文献】特開2018-062710(JP,A)
【文献】特開2004-263252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00-2/40
C23C 22/00-22/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板と、
前記鋼板の上に形成されたZn系めっき層と、
前記Zn系めっき層の上に形成された被膜と、
を有し、
前記被膜のSi濃度、P濃度、F濃度、V濃度、Zr濃度、Zn濃度、Al濃度が、質量%で、
Si:10.00~25.00%、
P:0.01~5.00%、
F:0.01~2.00%、
V:0.01~4.00%、
Zr:0.01~3.00%、
Zn:0~3.00%、
Al:0~3.00%、
であり、
前記被膜の表面に対し、XPS分析を行って得られるSi2pのナロースペクトルにおいて、102.26±0.25eVに極大値を有するピークの積算強度に対する、103.37±0.25eVに極大値を有するピークの積算強度の比が、0.04以上、0.25以下である、
表面処理鋼板。
【請求項2】
前記被膜の前記表面において、質量%で、前記Zn濃度が、0.10~3.00%である、
請求項1に記載の表面処理鋼板。
【請求項3】
前記被膜の前記表面において、質量%で、前記Al濃度が0.10~3.00%である、
請求項1または2に記載の表面処理鋼板。
【請求項4】
前記被膜が、前記鋼板の厚さ方向において、前記被膜の表面から前記被膜と前記Zn系めっき層との界面までの範囲でのPの平均濃度よりもPの濃度が高い、P濃化層を有し、
前記P濃化層が、前記Zn系めっき層との前記界面に隣り合って存在し、
厚さ方向の断面に対し、前記被膜の前記表面から前記被膜と前記Zn系めっき層との前記界面までPの濃度についてTEM-EDSの線分析を行った際、前記Pの平均濃度に対するP濃度の最大値の比が、1.20~2.00である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の表面処理鋼板。
【請求項5】
前記被膜が、前記鋼板の厚さ方向において、前記被膜の表面から前記被膜と前記Zn系めっき層との界面までの範囲でのFの平均濃度よりもFの濃度が高い、F濃化層を有し、
前記F濃化層が、前記Zn系めっき層との前記界面に隣り合って存在し、
厚さ方向の断面に対し、前記被膜の前記表面から前記被膜と前記Zn系めっき層との前記界面までFの濃度についてTEM-EDSの線分析を行った際、前記Fの平均濃度に対するF濃度の最大値の比が、1.50~2.30である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の表面処理鋼板。
【請求項6】
前記Zn系めっき層の化学組成が、質量%で、
Al:4.0%~25.0%未満、
Mg:0%~12.5%未満、
Sn:0%~20%、
Bi:0%~5.0%未満、
In:0%~2.0%未満、
Ca:0%~3.0%、
Y :0%~0.5%、
La:0%~0.5%未満、
Ce:0%~0.5%未満、
Si:0%~2.5%未満、
Cr:0%~0.25%未満、
Ti:0%~0.25%未満、
Ni:0%~0.25%未満、
Co:0%~0.25%未満、
V :0%~0.25%未満、
Nb:0%~0.25%未満、
Cu:0%~0.25%未満、
Mn:0%~0.25%未満、
Fe:0%~5.0%、
Sr:0%~0.5%未満、
Sb:0%~0.5%未満、
Pb:0%~0.5%未満、
B :0%~0.5%未満、及び
残部:Zn及び不純物からなる、
請求項1~5のいずれか一項に記載の表面処理鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面処理鋼板に関する。
本願は、2021年01月06日に、日本に出願された特願2021-001011号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼板の表面に亜鉛を主体とするめっき層が形成されためっき鋼板(亜鉛系めっき鋼板)が、自動車や建材、家電製品などの幅広い用途で使用されている。通常、めっき鋼板の表面には、塗油せずにさらなる耐食性を付与するため、クロムフリーの化成処理が施される。
この化成処理によって形成される化成処理被膜は、均一に表面を覆い、かつめっきとの密着性に優れ、耐食性にも優れることが求められる。しかしながら、亜鉛系めっき鋼板の表面は酸化被膜で覆われているので、化成処理被膜を形成しようとしても酸化被膜が障害となり化成処理被膜の密着性が低く、化成処理被膜の密着性低下による塗装不良・塗装むらが発生する、または、化成処理被膜がめっき層から剥離してしまう場合があった。
【0003】
このような課題に対し、例えば特許文献1には、亜鉛を含むめっき鋼板上に、アクリル樹脂とジルコニウムとバナジウムとリンとコバルトとを含み、皮膜の断面における表面から膜厚1/5の厚みまでの領域においてアクリル樹脂の面積率が80~100面積%であり、皮膜の膜厚中心から前記表面側に膜厚1/10の厚みまでの領域と前記膜厚中心から前記めっき層側に膜厚1/10の厚みまでの領域とからなる領域においてアクリル樹脂の面積率が5~50面積%である皮膜を形成させることで、接着剤との接着性が良好で、優れた耐食性を有する皮膜が得られることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、鋼板および樹脂系化成処理被膜を含む表面処理鋼材であって、該樹脂系化成処理被膜はマトリックス樹脂と該マトリックス樹脂中に分散した難溶性クロム酸塩のコロイド粒子を重量比50/1~1/1の範囲で有し、該コロイドは該マトリックス樹脂中に分散した粒子の平均粒径として1μm未満である、表面処理鋼材が開示されている。
特許文献2では、この表面処理鋼材は、耐クロム溶出性、SST(240hr)、加工部耐食性、処理液安定性に優れると記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、Al:0.1~22.0質量%を含むZn系めっき層を有するZn系めっき鋼板と、前記Zn系めっき層の上に配置された化成処理皮膜と、を有する化成処理鋼板であって、前記化成処理皮膜は、前記Zn系めっき層表面に配置され、V、MoおよびPを含む第1化成処理層と、前記第1化成処理層の上に配置され、4A族金属酸素酸塩を含む第2化成処理層と、を有し、前記化成処理皮膜中における、全Vに対する5価のVの比率は、0.7以上である、化成処理鋼板が開示されている。
特許文献3では、この化成処理鋼板は、Zn系めっき鋼板を原板とする化成処理鋼板であって、塗布した化成処理液を低温かつ短時間で乾燥させても製造することができ、耐食性および耐黒変性に優れると開示されている。
【0006】
特許文献4には、(1)鋼材表面に、(2)分子中にアミノ基を1つ含有するシランカップリング剤(A)と、分子中にグリシジル基を1つ含有するシランカップリング剤(B)を固形分質量比〔(A)/(B)〕で0.5~1.7の割合で配合して得られる、分子内に式-SiR1(式中、R、R及びRは互いに独立に、アルコキシ基又は水酸基を表し、少なくとも1つはアルコキシ基を表す)で表される官能基(a)を2個以上と、水酸基(官能基(a)に含まれ得るものとは別個のもの)およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の親水性官能基(b)を1個以上含有し、平均の分子量が1000~10000である有機ケイ素化合物(W)と、(3)チタン弗化水素酸またはジルコニウム弗化水素酸から選ばれる少なくとも1種のフルオロ化合物(X)と、(4)りん酸(Y)と、(5)バナジウム化合物(Z)からなる表面処理金属剤を塗布し乾燥することにより各成分を含有する複合皮膜を形成し、且つ、その複合皮膜の各成分において、(6)有機ケイ素化合物(W)とフルオロ化合物(X)の固形分質量比〔(X)/(W)〕が0.02~0.07であり、(7)有機ケイ素化合物(W)とりん酸(Y)の固形分質量比〔(Y)/(W)〕が0.03~0.12であり、(8)有機ケイ素化合物(W)とバナジウム化合物(Z)の固形分質量比〔(Z)/(W)〕が0.05~0.17であり、且つ、(9)フルオロ化合物(X)とバナジウム化合物(Z)の固形分質量比〔(Z)/(X)〕が1.3~6.0である、表面処理鋼材が開示されている。
特許文献4によれば、この表面処理鋼材は、耐食性、耐熱性、耐指紋性、導電性、塗装性および加工時の耐黒カス性の全てを満足すると開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特許第6191806号公報
【文献】国際公開第97/00337号
【文献】日本国特許第6272207号公報
【文献】日本国特許第4776458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年、化成処理被膜への品質要求の高度化により、より優れた耐食性と塗装密着性とが求められるようになっており、特許文献1~4に開示された技術では、必ずしも高度化した要求に応えられない場合があった。
そこで、本発明は、Zn系めっき層と被膜とを備え、耐食性(特に耐白錆性)と塗装密着性とに優れる、表面処理鋼板を提供することを課題とする。
【0009】
また、表面処理鋼板の表面(被膜の表面)に塗装が行われる場合、塗装前にアルカリ脱脂が行われる場合がある。しかしながら、従来の被膜(化成処理被膜)を有する表面処理鋼板の場合、アルカリ脱脂を行うと、被膜が溶解して損耗し、塗装密着性が低下する場合があった。
そのため、本発明は、耐食性と塗装密着性とに優れ、さらにアルカリ脱脂後の塗装密着性にも優れる表面処理鋼板を提供することを好ましい課題とする。
【0010】
また、従来の環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物が主体となる化成処理被膜は、屋外曝露環境下で使用される場合、有機ケイ素化合物中に含まれるC-C結合やC-H結合が紫外線によって破壊され、耐食性が低下するケースがある。
そのため、本発明は、耐食性と塗装密着性(アルカリ脱脂後の塗装密着性も含む)とに優れ、さらに、屋外曝露環境下であっても耐食性が低下しない表面処理鋼板を提供することを好ましい課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、Zn系めっき層と被膜とを備える表面処理鋼板において、耐食性と塗装密着性とを向上させる手法について検討を行った。その結果、被膜の表面において、造膜成分である有機ケイ素化合物の一部を、酸化ケイ素化合物に変化させることで、被膜のバリア性が向上し、耐食性が向上することを知見した。
また、本発明者らは、アルカリ脱脂液に対する耐性を高める手法について検討を行った。その結果、被膜の表面のZn濃度を高めることで、アルカリ脱脂液に対する耐性が向上することを知見した。
また、本発明者らは、屋外曝露環境での耐食性の低下を抑制する手法について検討を行った。その結果、被膜の表面のAl濃度を高めることで、紫外線による被膜の破壊が抑制されることを知見した。
【0012】
また、本発明者らがさらに検討を行った結果、上記のような表面の制御に加えて、被膜のマトリックスを構成する成分について、断面方向に最適成分を分布させることで、外観などの通常求められる特性は従来通りとした上で、より厳しい条件での耐食性と塗装密着性とを向上させることができることを見出した。
【0013】
本発明は、上記の知見に鑑みてなされた。本発明の要旨は以下の通りである。
[1]本発明の一態様に係る表面処理鋼板は、鋼板と、前記鋼板の上に形成されたZn系めっき層と、前記Zn系めっき層の上に形成された被膜と、を有し、前記被膜のSi濃度、P濃度、F濃度、V濃度、Zr濃度、Zn濃度、Al濃度が、質量%で、Si:10.00~25.00%、P:0.01~5.00%、F:0.01~2.00%、V:0.01~4.00%、Zr:0.01~3.00%、Zn:0~3.00%、Al:0~3.00%、であり、前記被膜の表面に対し、XPS分析を行って得られるSi2pのナロースペクトルにおいて、102.26±0.25eVに極大値を有するピークの積算強度に対する、103.37±0.25eVに極大値を有するピークの積算強度の比が、0.04以上、0.25以下である。
[2][1]に記載の表面処理鋼板では、前記被膜の前記表面において、質量%で、前記Zn濃度が、0.10~3.00%であってもよい。
[3][1]または[2]に記載の表面処理鋼板では、前記被膜の前記表面において、質量%で、前記Al濃度が0.10~3.00%であってもよい。
[4][1]~[3]のいずれかに記載の表面処理鋼板では、前記被膜が、前記鋼板の厚さ方向において、前記被膜の表面から前記被膜と前記Zn系めっき層との界面までの範囲でのPの平均濃度よりもPの濃度が高い、P濃化層を有し、前記P濃化層が、前記Zn系めっき層との前記界面に隣り合って存在し、厚さ方向の断面に対し、前記被膜の前記表面から前記被膜と前記Zn系めっき層との前記界面までPの濃度についてTEM-EDSの線分析を行った際、前記Pの平均濃度に対するP濃度の最大値の比が、1.20~2.00であってもよい。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の表面処理鋼板では、前記被膜が、前記鋼板の厚さ方向において、前記被膜の表面から前記被膜と前記Zn系めっき層との界面までの範囲でのFの平均濃度よりもFの濃度が高い、F濃化層を有し、前記F濃化層が、前記Zn系めっき層との前記界面に隣り合って存在し、厚さ方向の断面に対し、前記被膜の前記表面から前記被膜と前記Zn系めっき層との前記界面までFの濃度についてTEM-EDSの線分析を行った際、前記Fの平均濃度に対するF濃度の最大値の比が、1.50~2.30であってもよい。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の表面処理鋼板では、前記Zn系めっき層の化学組成が、質量%で、Al:4.0%~25.0%未満、Mg:0%~12.5%未満、Sn:0%~20%、Bi:0%~5.0%未満、In:0%~2.0%未満、Ca:0%~3.0%、Y:0%~0.5%、La:0%~0.5%未満、Ce:0%~0.5%未満、Si:0%~2.5%未満、Cr:0%~0.25%未満、Ti:0%~0.25%未満、Ni:0%~0.25%未満、Co:0%~0.25%未満、V:0%~0.25%未満、Nb:0%~0.25%未満、Cu:0%~0.25%未満、Mn:0%~0.25%未満、Fe:0%~5.0%、Sr:0%~0.5%未満、Sb:0%~0.5%未満、Pb:0%~0.5%未満、B:0%~0.5%未満、及び残部:Zn及び不純物からなっていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記態様によれば、耐食性と塗装密着性とに優れる表面処理鋼板を提供することができる。
また、本発明の好ましい態様によれば、耐食性と塗装密着性とに優れ、さらにアルカリ脱脂後の塗装密着性にも優れる表面処理鋼板を提供することができる。
また、本発明の別の好ましい態様によれば、耐食性と塗装密着性とに優れ、さらに、屋外曝露環境下であっても耐食性が低下しない表面処理鋼板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る表面処理鋼板の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る表面処理鋼板(本実施形態に係る表面処理鋼板)について説明する。
本実施形態に係る表面処理鋼板1は、図1に示すように、鋼板11と、鋼板11の上に形成されたZn系めっき層12と、Zn系めっき層12の上に形成された被膜13と、を有する。図1では、鋼板11の片面にのみZn系めっき層12と被膜13とがあるが、鋼板11の両面にZn系めっき層12と被膜13とがあってもよい。
また、被膜13が、Siと、Pと、Fと、Vと、Zrと、任意に、Al及び/またはZnを含む。被膜13のSi濃度、P濃度、F濃度、V濃度、Zr濃度、Zn濃度、及びAl濃度は、質量%で、それぞれ、Si:10.00~25.00%、P:0.01~5.00%、F:0.01~2.00%、V:0.01~4.00%、Zr:0.01~3.00%、Zn:0~3.00%、Al:0~3.00%である。
また、被膜13の表面に対し、XPS分析を行って得られるSi2pのナロースペクトルにおいて、102.26±0.25eVに極大値を有するピークの積算強度に対する、103.37±0.25eVに極大値を有するピークの積算強度の比が、0.04以上、0.25以下である。
【0017】
以下、鋼板11、Zn系めっき層12、被膜13についてそれぞれ説明する。
【0018】
<鋼板(母材鋼板)>
本実施形態に係る表面処理鋼板1は、Zn系めっき層12及び被膜13によって、優れた塗装密着性及び耐食性が得られる。そのため、鋼板(母材鋼板)11については、特に限定されない。鋼板11は、適用される製品や要求される強度や板厚等によって決定すればよく、例えば、JIS G3131:2018に記載された熱延鋼板やJIS G3141:2021に記載された冷延鋼板を用いることができる。
【0019】
<Zn系めっき層(亜鉛系めっき層)>
本実施形態に係る表面処理鋼板1が備えるZn系めっき層12は、鋼板11の上に形成され、且つ亜鉛を含有するめっき層である。
【0020】
Zn系めっき層12は、亜鉛を主体とするめっき層であれば、化学組成については限定されない。例えば、亜鉛だけ(つまり、Zn含有量が100%)の亜鉛めっきであってもよい。しかしながら、その化学組成が、質量%で、Al:4.0%以上、25.0%未満、Mg:0%以上、12.5%未満、Sn:0%~20%、Bi:0%以上、5.0%未満、In:0%以上、2.0%未満、Ca:0%~3.0%、Y:0%~0.5%、La:0%以上、0.5%未満、Ce:0%以上、0.5%未満、Si:0%以上、2.5%未満、Cr:0%以上、0.25%未満、Ti:0%以上、0.25%未満、Ni:0%以上、0.25%未満、Co:0%以上、0.25%未満、V:0%以上、0.25%未満、Nb:0%以上、0.25%未満、Cu:0%以上、0.25%未満、Mn:0%以上、0.25%未満、Fe:0%~5.0%、Sr:0%以上、0.5%未満、Sb:0%以上、0.5%未満、Pb:0%以上、0.5%未満、B:0%以上、0.5%未満を含み、残部がZn及び不純物からなることによって、より顕著な耐食性向上の効果があるので好ましい。
【0021】
Zn系めっき層12の好ましい化学組成の理由について説明する。以下、「~」を挟んで示される数値範囲はその両端の数値を下限値、上限値として含むことを基本とするが、数値に未満または超と記載されている場合、その数値を下限値または上限値として含まない。
また、断りがない限り、Zn系めっき層12の化学組成に関する%は質量%である。
【0022】
[Al:4.0%以上、25.0%未満]
Alは、Zn系めっき層12において、耐食性を向上させるために有効な元素である。上記効果を十分に得る場合、Al含有量を4.0%以上とする。耐食性の向上のため、必要に応じて、Al含有量の下限を5.0%、6.0%、8.0%、10.0%又は12.0%としてもよい。
一方、Al含有量が25.0%以上であると、Zn系めっき層12の切断端面の耐食性が低下する。そのため、Al含有量は25.0%未満である。必要に応じて、Al含有量の上限を24.0%、22.0%、20.0%、18.0%又は16.0%としてもよい。
【0023】
Zn系めっき層12は、Alを含み、残部がZn及び不純物からなってもよい。しかしながら、必要に応じてさらに以下の元素を含んでもよい。以下の元素は必ずしも含まなくてよいので、下限は0%である。Zn含有量は、切断端面の耐食性向上のため40%以上であることが好ましいが、必要に応じて、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は96%以上としてもよい。
【0024】
[Mg:0%以上、12.5%未満]
Mgの含有は必須ではなく、その含有量の下限は0%である。Mgは、Zn系めっき層12の耐食性を高める効果を有する元素である。上記効果を十分に得る場合、Mg含有量を0.5%以上又は1.0%超とすることが好ましい。耐食性の向上のため、必要に応じて、Mg含有量の下限を1.5%、2.0%、4.0%、5.0%又は6.0%としてもよい。
一方、Mg含有量が12.5%以上であると、耐食性向上の効果が飽和する上、めっき層の加工性が低下する場合がある。また、めっき浴のドロス発生量が増大する等、製造上の問題が生じる。そのため、Mg含有量を12.5%未満とする。必要に応じて、Mg含有量の上限を12.0%、11.0%、10.0%、9.0%又は8.0%としてもよい。
【0025】
[Sn:0%~20%]
[Bi:0%以上、5.0%未満]
[In:0%以上、2.0%未満]
これらの元素の含有は必須でなく、これらの元素の含有量の下限は0%である。これらの元素は、耐食性、犠牲防食性の向上に寄与する元素である。そのため、いずれか1種以上を含有させてもよい。上記効果を得る場合、それぞれ、含有量を0.05%以上、0.1%以上又は0.2%以上とすることが好ましい。
これらのうちでは、Snが、低融点金属で、めっき浴の性状を損なうことなく容易に含有させることができるので、好ましい。
一方、Sn含有量が20%超、Bi含有量が5.0%以上、またはIn含有量が2.0%以上であると、耐食性が低下する。そのため、それぞれ、Sn含有量を20%以下、Bi含有量を5.0%未満、In含有量を2.0%未満とする。必要に応じて、Sn含有量の上限を15.0%、10.0%、7.0%、5.0%又は3.0%としてもよく、Bi含有量の上限を4.0%、3.0%、2.0%、1.0%又は0.50%としてもよく、In含有量の上限を1.5%、1.2.0%、1.0%、0.8%又は0.5%としてもよい。
【0026】
[Ca:0%~3.0%]
Caの含有は必須ではなく、その含有量の下限は0%である。Caは、操業時に形成されやすいドロスの形成量を減少させ、めっき製造性の向上に寄与する元素である。そのため、Caを含有させてもよい。この効果を得る場合、Ca含有量を0.1%以上とすることが好ましい。必要に応じて、Ca含有量の下限を0.2%、0.3%又は0.5%としてもよい。
一方、Ca含有量が多いとZn系めっき層12の平面部の耐食性そのものが劣化する傾向にあり、溶接部周囲の耐食性も劣化することがある。そのため、Ca含有量は3.0%以下であることが好ましい。必要に応じて、Ca含有量の上限を2.5%、2.0%、1.5%、1.0%又は0.8%としてもよい。
【0027】
[Y:0%~0.5%]
[La:0%以上、0.5%未満]
[Ce:0%以上、0.5%未満]
これらの元素の含有は必須でなく、これらの元素の含有量の下限は0%である。Y、La、Ceは、耐食性の向上に寄与する元素である。この効果を得る場合、これらのうち1種以上を、それぞれ0.05%以上又は0.1%以上含有することが好ましい。
一方、これらの元素の含有量が過剰になるとめっき浴の粘性が上昇し、めっき浴の建浴そのものが困難となることが多く、めっき性状が良好な鋼材を製造できないことが懸念される。そのため、Y含有量を0.5%以下、La含有量を0.5%未満、Ce含有量を0.5%未満とすることが好ましい。必要に応じて、Y含有量の上限を0.4%、0.3%又は0.2%としてもよく、La含有量の上限を0.4%、0.3%又は0.2%としてもよく、Ce含有量の上限を0.4%、0.3%又は0.2%としてもよい。
【0028】
[Si:0%以上、2.5%未満]
Siの含有は必須ではなく、その含有量の下限は0%である。Siは、耐食性の向上に寄与する元素である。また、Siは、鋼板上にZn系めっき層12を形成するにあたり、鋼板11の表面とZn系めっき層12との間に形成される合金層が過剰に厚く形成されることを抑制して、鋼板11とZn系めっき層12との密着性を高める効果を有する元素でもある。これらの効果を得る場合、Si含有量を0.1%以上とすることが好ましい。Si含有量は、より好ましくは0.2%以上又は0.3%以上である。
一方、Si含有量が2.5%以上になると、Zn系めっき層12の中に過剰なSiが析出し、耐食性が低下するだけでなく、めっき層の加工性が低下する。従って、Si含有量を2.5%未満とすることが好ましい。Si含有量は、より好ましくは2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下又は0.8%以下である。
【0029】
[Cr:0%以上、0.25%未満]
[Ti:0%以上、0.25%未満]
[Ni:0%以上、0.25%未満]
[Co:0%以上、0.25%未満]
[V :0%以上、0.25%未満]
[Nb:0%以上、0.25%未満]
[Cu:0%以上、0.25%未満]
[Mn:0%以上、0.25%未満]
これらの元素の含有は必須でなく、これらの元素の含有量の下限は0%である。これらの元素は、耐食性の向上に寄与する元素である。この効果を得る場合、これらの元素の1種以上の含有量を0.05%以上又は0.10%以上とすることが好ましい。
一方、これらの元素の含有量が過剰になるとめっき浴の粘性が上昇し、めっき浴の建浴そのものが困難となることが多く、めっき性状が良好な鋼材を製造できないことが懸念される。そのため、各元素の含有量をそれぞれ0.25%未満とすることが好ましい。各元素の含有量の上限を、0.20%又は0.15%としてもよい。
【0030】
[Fe:0%~5.0%]
Feの含有は必須ではなく、その含有量の下限は0%である。FeはZn系めっき層12を製造する際に、不純物としてZn系めっき層12に混入する場合がある。5.0%程度まで含有されることがあるが、この範囲であれば本実施形態に係る表面処理鋼板1の効果への悪影響は小さい。そのため、Fe含有量を5.0%以下とすることが好ましい。必要に応じて、Fe含有量の上限を4.0%、3.0%、2.0%又は1.0%としてもよい。
【0031】
[Sr:0%以上、0.5%未満]
[Sb:0%以上、0.5%未満]
[Pb:0%以上、0.5%未満]
これらの元素の含有は必須でなく、これらの元素の含有量の下限は0%である。Sr、Sb、PbがZn系めっき層12の中に含有されると、Zn系めっき層12の外観が変化し、スパングルが形成されて、金属光沢の向上が確認される。この効果を得る場合、Sr、Sb、Pbの1種以上の含有量を0.05%以上又は0.08%以上とすることが好ましい。
一方、これらの元素の含有量が過剰になるとめっき浴の粘性が上昇し、めっき浴の建浴そのものが困難となることが多く、めっき性状が良好な鋼材を製造できないことが懸念される。そのため、各元素の含有量をそれぞれ0.5%未満とすることが好ましい。必要に応じて、各元素の含有量の上限を0.4%、0.3%、0.2%又は0.1%としてもよい。
【0032】
[B:0%以上、0.5%未満]
Bの含有は必須ではなく、その含有量の下限は0%である。Bは、Zn系めっき層12の中に含有させるとZn、Al、Mg等と化合し、様々な金属間化合物をつくる元素である。この金属間化合物はLMEを改善する効果がある。この効果を得る場合、B含有量を0.05%以上又は0.08以上とすることが好ましい。
一方、B含有量が過剰になるとめっきの融点が著しく上昇し、めっき操業性が悪化してめっき性状の良い表面処理鋼板が得られないことが懸念される。そのため、B含有量を0.5%未満とすることが好ましい。必要に応じて、B含有量の上限を0.4%、0.3%、0.2%又は0.1%としてもよい。
【0033】
Zn系めっき層12の付着量は限定されないが、耐食性向上のため片面当たりの付着量で10g/m以上であることが好ましい。必要に応じて、20g/m以上、30g/m以上、40g/m以上、50g/m以上又は60g/m以上としてもよい。
一方、付着量が200g/mを超えても耐食性が飽和する上、経済的に不利になる。そのため、付着量は200g/m以下であることが好ましい。必要に応じて、180g/m以下、170g/m以下、150g/m以下、140g/m以下又は120g/m以下としてもよい。
【0034】
<被膜>
[Si濃度、P濃度、F濃度、V濃度、Zr濃度、Zn濃度およびAl濃度]
本実施形態に係る表面処理鋼板1は、Zn系めっき層12の上に被膜13が形成されている。この被膜13は、造膜成分であるSi(通常ケイ素化合物として存在する)と、インヒビター成分である、P、F、V、及びZrを主に化合物の状態で含む。また、インヒビター成分としてさらにZn、Alを含む場合がある。
造膜成分であるケイ素化合物が主体となるので、被膜13のSi濃度は10.00%以上である。被膜13の元となる表面処理金属剤(処理液)に、シランカップリング剤を主として用いることで、Si濃度を10.00%以上とすることができる。一方、表面処理金属剤に樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂)を大量に含有させると(例えば、固形分で20質量%以上の樹脂を含有させると)、Si濃度は10.00%未満となるため、表面処理金属剤に樹脂を大量に含有させない(添加しない)ことが好ましい。
より具体的には、本実施形態に係る表面処理鋼板1では、被膜の、Si濃度、P濃度、F濃度、V濃度、Zr濃度、Zn濃度、Al濃度が、それぞれ、質量%で、Si:10.00~25.00%、P:0.01~5.00%、F:0.01~2.00%、V:0.01~4.00%、Zr:0.01~3.00%、Zn:0~3.00%、Al:0~3.00%である。
被膜のSi濃度が10.00%未満であると、造膜が不十分となる。このため、Si濃度は10.00%以上とする。一方、Si濃度が25.00%超であると、被膜がパウダー化し、造膜しない場合がある。このため、Si濃度は25.00%以下とする。また、P濃度、F濃度、V濃度、Zr濃度およびZn濃度が上記範囲外であると、インヒビターの不足、またはバリア性の低下によって、耐食性が低下する。
Si濃度の下限は、好ましくは11.00%、12.00%又は13.00%である。Si濃度の上限は、好ましくは23.00%、21.00%、20.00%又は18.00%である。
P濃度の下限は、好ましくは0.02%、0.05%、0.10%、0.30%、0.50%、0.80%、1.00%、1.30%又は1.60%である。P濃度の上限は、好ましくは4.50%、4.00%、3.50%、3.00%又は2.50%である。
F濃度の下限は、好ましくは0.02%、0.05%、0.08%、0.10%、0.20%、0.30%、0.50%、0.70%又は0.90%である。F濃度の上限は、好ましくは1.90%、1.80%、1.70%、1.60%又は1.50%である。
V濃度の下限は、好ましくは0.02%、0.05%、0.08%、0.10%、0.20%、0.30%、0.50%、0.80%又は1.00%である。V濃度の上限は、好ましくは3.80%、3.50%、3.00%、2.50%、2.00%又は1.50%である。
Zr濃度の下限は、好ましくは0.02%、0.05%、0.08%、0.10%、0.20%、0.30%、0.50%、0.80%又は1.00%である。Zr濃度の上限は、好ましくは2.90%、2.70%、2.50%、2.20%、2.00%又は1.50%である。
Zn濃度の下限は、好ましくは0.01%、0.05%、0.08%、0.10%、0.20%、0.30%、0.50%、0.80%又は1.00%である。Zn濃度の上限は、好ましくは2.90%、2.70%、2.50%、2.20%、2.00%又は1.50%である。
Al濃度の下限は、好ましくは0.01%、0.05%、0.08%、0.10%、0.20%、0.30%、0.50%、0.80%又は1.00%である。Al濃度の上限は、好ましくは2.80%以下、2.70%、2.50%、2.20%、2.00%又は1.50%である。
被膜13は、例えば、化成処理被膜又は塗膜ということもできる。
【0035】
被膜13のSi濃度、P濃度、F濃度、V濃度及びZr濃度は、以下の方法で測定する。
被膜を形成した表面処理鋼板から、クライオFIB加工装置に挿入可能な大きさの試料を切り出し、その試料から、厚さが80~200nmの試験片をクライオFIB(Focused Ion Beam)法にて切り出し、切り出した試験片の断面構造を、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electoron Microscope)で、観察視野中に化成処理層全体が入る倍率にて、観察する。各層の構成元素を特定するために、TEM-EDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を用いて、被膜13の中の、被膜13の膜厚の中心部において、表面処理鋼板の表面に平行な方向での100μm間隔の5点以上の点で、Si、P、F、V、Zr、の定量分析を行う。各点のそれぞれの測定結果の平均値を、Si濃度、P濃度、F濃度、V濃度、Zr濃度、として採用する。すなわち、これらの濃度は、被膜13における中心部の濃度である。
一方、Zn濃度及びAl濃度は、被膜13の表面に対し、後述するSi2pのナロースペクトルの測定と同様の条件で、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)分析によりZn濃度及びAl濃度を測定する。すなわち、Zn濃度及びAl濃度は、被膜13の表面における濃度である。なお、よく知られているが、XPS分析により、後述の特定のスペクトルのピークの積算強度の比だけでなく、試料表面に存在する元素の定量分析が可能である。
【0036】
[表面に対し、XPS分析を行って得られるSi2pのナロースペクトルにおいて、102.26±0.25eVに極大値を有するピークの積算強度に対する、103.37±0.25eVに極大値を有するピークの積算強度の比が、0.04以上、0.25以下]
従来、ケイ素化合物と、その他のインヒビター成分を含む被膜(化成処理被膜)は知られているが、従来の化成処理被膜は、シランカップリング剤及びインヒビター成分を含有する処理液を、めっき層の上に、所定の条件で塗布し、乾燥させることによって得られる。そのため、従来の被膜では、ケイ素化合物は、環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物である。この有機ケイ素化合物は各種塗料との密着性に優れるものの、水との馴染みも良いため、被膜表面に付着した水分が容易に被膜内に浸透し、最終的にはめっき表面まで浸透する場合があり、耐食性に劣る。
本発明者らが検討を行った結果、環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物をマトリックスとする被膜13の表面の一部の有機ケイ素化合物をバリア性の高い状態に変化させることで、水分の浸透を抑制でき、その結果、表面処理鋼板1の耐食性が向上することが分かった。
また、被膜13の表面がバリア性の高い状態に変化したかどうかは、XPS分析を行って得られる2種類のピークの積算強度比によって評価できることが分かった。
具体的には、被膜13の表面(表面処理鋼板1の表面でもある)に対し、XPS分析を行って得られるSi2pのナロースペクトルにおいて、102.26±0.25eVに極大値を有するピークの積算強度に対する、103.37±0.25eVに極大値を有するピークの積算強度の比が、0.04以上、0.25以下であれば、環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物をマトリックスとする被膜13に対し、塗装密着性を低下させずに、耐食性を向上させることができることが分かった。
ここで、XPS分析を行って得られるSi2pのナロースペクトルにおいて、102.26±0.25eVに極大値を有するピークは、Si-OHまたはSi-O-Si結合に由来するので、環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物のピークであると考えられる。また、103.37±0.25eVに極大値を有するピークは、酸化ケイ素化合物のピークであると考えられる。すなわち、XPS分析を行って得られるSi2pのナロースペクトルにおいて、102.26±0.25eVに極大値を有するピークの積算強度に対する、103.37±0.25eVに極大値を有するピークの積算強度の比が高くなることは、表面において、有機ケイ素化合物が酸化ケイ素化合物に変化した割合が多くなっていることを示している。酸化ケイ素化合物は、有機ケイ素化合物に対して水分の透過性が低いことから、有機ケイ素化合物が酸化ケイ素化合物に変化することで、耐食性が向上するものと推測される。
XPS分析を行って得られるSi2pのナロースペクトルにおいて、102.26±0.25eVに極大値を有するピークの積算強度に対する、103.37±0.25eVに極大値を有するピークの積算強度の比が、0.04未満であると、上記効果が十分に得られない。一方、上記積算強度の比が0.25を超えると、有機ケイ素化合物の割合が低くなりすぎ、塗装密着性が低下する。ここで「±0.25(eV)」は測定の裕度である。
【0037】
上記積算強度比は、XPSを用いて、以下の要領で分析を行うことで得られる。
すなわち、アルバック・ファイ社製Quantum2000型XPS分析装置またはこれと同等の装置を用いて、洗浄、スパッタなどの前処理を行っていない表面処理鋼板1の表面(被膜13の表面)の、800μm×300μmの領域を、例えば以下の条件で分析する。得られたSi2pスペクトルを、102.26±0.25eVに極大値を有するピークと、103.37±0.25eVに極大値を有するピークとに分離した上で、当該ピークの積算強度を求め、この積算強度に基づいて積算強度比を算出する。
ただし、分析によって得られるナロースペクトルは、測定機器や条件によって、ピーク位置が左右にずれる場合がある。そのため、まず、得られたスペクトルについて、C1sスペクトルのピーク位置(極大値を有する位置)が284.8eVになるように、位置の補正を行い、その後、Si2pスペクトルを、102.26±0.25eVに極大値を有するピークと、103.37±0.25eVに極大値を有するピークとに分離する。
測定に際し、Si2pスペクトルは96~108eVの領域を測定する。そのうち、ピーク分離をする領域は99~106eVを基本とし、スペクトルに応じてそこから延長させる。また、測定に際し、102.26±0.25eVに極大値を有するピークの半値幅は、1.46±0.2eV、103.37±0.25eVに極大値を有するピークの半値幅は、1.42±0.2eVであると想定して行う。分析に際しては、前処理を行わないことから、油や汚れなどが極力付着しない様、サンプルの取り扱いに注意する必要がある。その他の測定条件(解析条件)の詳細を下記に記す。
(測定条件)
X線源:monoAlKα(1486.6eV)
X線出力:15kV 25W
X線径:100μmφ
分析室真空度(試料導入前):2.2×10-9torr
検出角度:45°
中和:電子中和、イオン中和
データ解析ソフト:MultiPakV.8.0(アルバック・ファイ社製)
【0038】
上記XPS分析に関しては、表面処理鋼板の幅方向の端部から鋼材の幅の1/4の位置からサンプルを採取することが好ましい。
【0039】
[好ましくは、表面において、Zn濃度が、質量%で、0.10~3.00%]
前述の通り、表面処理鋼板1の表面(被膜13の表面)に塗装が行われる場合、塗装前にアルカリ脱脂が行われる場合がある。しかしながら、従来の被膜(化成処理被膜)を有する表面処理鋼板の場合、アルカリ脱脂を行うと、被膜が溶解して損耗する場合がある。そのような部位に塗装を行っても、十分な塗装密着性を得ることはできない。
本発明者らが検討を行った結果、被膜13の表面のZn濃度を高めることで、アルカリ脱脂液に対する耐性が向上することを知見した。具体的には、被膜13の表面において、Zn濃度が、0.10質量%以上、3.00質量%以下であれば、アルカリ脱脂後の塗装密着性に優れることが分かった。その理由は明らかではないが、高pH領域で安定なZnが被膜13の表面に一定量含有されることで、膜質13が強化されるためであると推定される。
そのため、本実施形態に係る表面処理鋼板1では、被膜13の表面において、Zn濃度が、質量%で、0.10%以上であることが好ましい。Zn濃度が0.10%未満では、十分な効果が得られない。必要に応じて、Zn濃度を0.20%以上、0.30%以上、0.40%以上又は0.60%以上としてもよい。
一方、被膜13の表面において、Zn濃度が、質量%で、3.00%超であると、被膜13の表面が硬質となり、塗装密着性が低下する。また、耐パウダリング性も低下する。そのため、被膜13の表面において、Zn濃度は3.00%以下である。必要に応じて、Zn濃度を2.80%以下、2.50%以下、2.20%以下又は1.90%以下としてもよい。
【0040】
[好ましくは、表面において、Al濃度が、質量%で、0.10~%3.00%]
上述したように、被膜13の表面の有機ケイ素化合物の一部を酸化ケイ素化合物に変化させることで、耐食性(耐白錆性)は向上する。しかしながら、このような被膜13を有する表面処理鋼板を、屋外曝露環境下で使用する場合、有機ケイ素化合物中に含まれるC-C結合やC-H結合が紫外線によって破壊され、耐食性が目標とするレベルに達しない場合がある。
本発明者らが検討を行った結果、被膜13の表面において、Al濃度を、質量%で、0.10%以上とすることで、屋外曝露環境下でも優れた耐食性が得られることが分かった。その理由は明らかではないが、被膜13の表面にAlが含まれる場合、Alが環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物の結合力を高めること、及びAlが紫外線を反射しやすいことで紫外線による被膜13の破壊が抑制されること、によると推定される。そのため、被膜13の表面におけるAl濃度を0.10%以上とすることが好ましい。必要に応じて、Al濃度を0.20%以上、0.30%以上、0.40%以上又は0.60%以上としてもよい。
一方、被膜13の表面におけるAl濃度が3.00%超になると、耐食性向上効果に飽和する一方、高コストとなる上、被膜13の表面が白化し外観が悪化する。そのため、被膜13の表面において、Al濃度は3.00%以下である。必要に応じて、Al濃度を2.80%以下、2.50%以下、2.20%以下又は1.90%以下としてもよい。
被膜13の表面において、AlおよびZnが含まれる場合、濃度の合計が3.00%であることが好ましい。必要に応じて、合計濃度を2.80%以下、2.60%以下、2.40%以下又は2.00%以下としてもよい。
【0041】
被膜13の表面のZn濃度及びAl濃度は、上述したSi2pのナロースペクトルの測定と同様の条件で、XPS分析を行うことで測定できる。
その際、被膜13の表面において、任意の点を起点として任意の方向に100μm間隔で5点測定し、その測定値の平均値を採用する。
【0042】
本実施形態に係る表面処理鋼板では、上記のような表面の制御に加えて、後述のように、被膜13のマトリックスを構成する成分について、断面方向(厚さ方向)に最適成分を分布させることで、より厳しい条件での耐食性を向上させるので好ましい。
【0043】
[被膜が、鋼板の厚さ方向において、被膜の表面から被膜とZn系めっき層との界面までの範囲でのPの平均濃度よりもPの濃度が高い、P濃化層を有する]
[P濃化層が、めっき層との界面に隣り合って存在する]
[被膜の表面から被膜とめっき層との界面までPの濃度についてTEM-EDSの線分析を行った際、Pの平均濃度に対するP濃度の最大値の比が、1.20~2.00である]
本発明者らが検討した結果、鋼板の厚さ方向において、被膜13の、Zn系めっき層12との界面側(Zn系めっき層12との界面に隣り合う位置)に、被膜13の表面から被膜13とZn系めっき層12との界面までの範囲でのPの平均濃度(すなわち被膜13の全体におけるPの平均濃度)よりもPの濃度が高い領域(濃化層)が存在し、被膜13の表面から被膜13とZn系めっき層12との界面までPの濃度についてEDSを用いて線分析を行った際に、Pの平均濃度に対する、濃化層におけるP濃度の最大値の比が、1.20~2.00であることで、耐食性がより向上することが分かった。
上述した濃化層が存在する場合に、耐食性が向上する理由は、以下のように考えられる。
フッ素化合物とインヒビター成分としてのP化合物とを含有する処理液を、亜鉛を含むめっき層に所定の条件で塗布し、乾燥させた場合、フッ素化合物によるエッチング反応に伴って生じるpH変動の中和のため、P化合物がZn系めっき層12側へ移動する。Zn系めっき層12側に移動したP化合物は、Zn系めっき層12から被膜13に溶出したZnと、被膜13の中の被膜13とめっき層12との界面付近で複合塩を形成し、空気や水を通しにくい被膜となる。その結果、耐食性が向上すると考えられる。
上述した濃化層を有することは、被膜13の中の、Zn系めっき層12との界面付近に、PとZnとの複合塩が形成されていることを示しているので、上述した濃化層が存在する場合に、耐食性が向上すると考えられる。
濃化層が存在しない、または、Pの濃度がZn系めっき層12との界面付近以外の位置で高くなっている場合、PとZnとの複合塩が十分形成されず、被膜13における空気や水の透過が十分に抑制されず、耐食性が十分に向上しない。
耐食性向上効果の観点から、Pの平均濃度に対するP濃度の最大値の比(濃度の最大値/平均濃度)が、1.20以上であることが好ましい。上記比は、より好ましくは1.30以上、さらに好ましくは1.50以上である。
一方、(濃度の最大値/平均濃度)が2.00超では、Zn系めっき層12と被膜13の密着性が低下し、加工部耐食性が低下するため好ましくない。この原因は明らかではないが、Zn系めっき層12と被膜13の間においてPとZnの複合塩が過剰生成したためと推定される。そのため、Pの平均濃度に対するP濃度の最大値の比は、2.00以下であることが好ましい。上記比は、1.80以下又は1.60以下であることが、より好ましい。
【0044】
P濃化層の厚みは、十分な効果を得るため、5nm以上であることが好ましい。一方、加工時の被膜追従性の観点から、濃化層の厚みは100nm以下であることが好ましい。
【0045】
[被膜が、鋼板の厚さ方向において、被膜の表面から被膜とZn系めっき層との界面までの範囲でのFの平均濃度よりもFの濃度が高い、F濃化層を有する]
[F濃化層が、Zn系めっき層との界面に隣り合って存在する]
[被膜の表面から被膜とめっき層との界面までFの濃度についてTEM-EDSの線分析を行った際、Fの平均濃度に対するF濃度の最大値の比が、1.50~2.30である]
また、本発明者らが検討した結果、鋼板の厚さ方向において、被膜13の、Zn系めっき層12との界面側(Zn系めっき層12との界面に隣り合う位置)に、被膜13の表面から被膜13とZn系めっき層12との界面までの範囲でのFの平均濃度(すなわち被膜全体におけるFの平均濃度)よりもFの濃度が高い領域(濃化層)が存在し、被膜の表面から被膜13とZn系めっき層12との界面までFの濃度についてEDSを用いて線分析を行った際に被膜13の表面から被膜13とZn系めっき層12との界面までの範囲でのFの平均濃度に対する、濃化層におけるF濃度の最大値の比が、1.50以上である場合に、より耐食性(特に加工部耐食性)がより向上することが分かった。
Fの濃化は処理液中のエッチング成分、処理液の温度、乾燥条件等によって制御される。所定の条件で処理を行うことで、処理液のエッチング成分がめっき表面と反応し、めっき表面にFが移動し、めっき表面にFが濃化する。
被膜のZn系めっき層12との界面に隣り合う位置に、F濃化層が存在することで、FとZnとが複合塩を形成し、水などの腐食因子が透過しにくい被膜13となる。その結果、耐食性が向上すると考えられる。
被膜13の表面から被膜13とZn系めっき層12との界面までの範囲でのFの平均濃度に対する、F濃度の最大値の比が、1.50以上であれば耐食性向上効果が十分に得られるので好ましい。上記比は、より好ましくは1.70以上である。
一方、Fの平均濃度に対する、F濃度の最大値の比が2.30超では、Zn系めっき層12と被膜13の密着性が低下し、加工部耐食性が低下するため好ましくない。この原因は明らかではないが、Zn系めっき層12と被膜13の間においてFとZnの複合塩が過剰生成したためと推定される。そのため、被膜13の表面から被膜13とZn系めっき層12との界面までの範囲でのFの平均濃度に対する、F濃度の最大値の比が、2.30以下であることが好ましい。上記比は、2.10以下又は1.90以下であることが、より好ましい。
【0046】
本実施形態に係る表面処理鋼板では、被膜13の、P濃化層、F濃化層の位置や厚み、及びP濃度、F濃度の平均値、P濃化層におけるP濃度の最大値、F濃化層におけるF濃度の最大値については、TEM-EDSの線分析によって求める。
具体的には、被膜13を形成した表面処理鋼板1から、クライオFIB加工装置に挿入可能な大きさの試料を切り出し、その試料から厚さが80~200nmの試験片をクライオFIB(Focused Ion Beam)法にて切り出し、切り出した試験片の断面構造を、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electoron Microscope)で、観察視野中に被膜全体が入る倍率にて、観察する。各層の構成元素を特定するために、TEM-EDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を用いて、厚さ方向に沿って線分析を行い、各場所での化学組成の定量分析を行う。線分析の手法は特に限定されないが、数nm間隔の連続点分析でも良いし、任意の領域内の元素マップを測定し面方向の平均で元素の厚さ分布を測定してもよい。定量分析する元素は、C、O、F、Si、P、Znの6元素とし、各元素の濃度の算出の分母は、該6元素の濃度を合計したものとする。使用する装置は特に限定されないが、例えば、TEM(日本電子製の電解放出型透過電子顕微鏡:JEM-2100F)、EDS(日本電子製のJED-2300T)を用いればよい。
上記したTEM-EDSの線分析結果から、P、Fの濃度分布を求め、濃化層を特定して、濃化層の厚さの測定を行う。また、その濃化層におけるP濃度、F濃度の最大値を得る。
TEMで特定した濃化層の厚さが5nm程度であるとき、空間分解能の観点から球面収差補正機能を有するTEMを用いることが好ましい。
【0047】
本実施形態に係る表面処理鋼板では、被膜13の、Zn系めっき層12との界面付近に、Pの濃度が最大となる点が存在し、Zn系めっき層12との界面から一定の厚み範囲において、Zn系めっき層12のPの平均濃度よりもPの濃度が高い領域(濃化層)が存在する。また、Fも同様に、Zn系めっき層12との界面付近において、濃度が高くなっている。
【0048】
<製造方法>
次に、本実施形態に係る表面処理鋼板1の好ましい製造方法について説明する。
本実施形態に係る表面処理鋼板1は、製造方法に関わらず上記の特徴を有していればその効果を得ることができるが、以下に示す製造方法であれば、安定して製造できるので好ましい。
すなわち、本実施形態に係る表面処理鋼板1は、以下の工程を含む製造方法によって製造できる。
(I)鋼板を、Znを含むめっき浴に浸漬して、表面にZn系めっき層を形成するめっき工程と、
(II)Zn系めっき層を有する鋼材に表面処理金属剤(処理液)を塗布する塗布工程と、
(III)表面処理金属剤が塗布された鋼板を加熱して、被膜を形成する加熱工程と、
(IV)加熱工程後の鋼板を冷却する冷却工程。
以下、各工程の好ましい条件について説明する。
【0049】
[めっき工程]
めっき工程については特に限定されない。十分なめっき密着性が得られるように通常の溶融亜鉛めっき方法で行えばよい。
また、めっき工程に供する鋼材の製造方法についても限定されない。
例えば、JIS G3302:2019に規定される亜鉛めっき鋼板の製造方法でも良いし、JIS G3323:2019に規定されるめっき鋼板の製造方法でも良い。
めっき浴の組成は、得たいZn系(亜鉛系)めっき層の組成に応じて、調整すればよい。
【0050】
[塗布工程]
塗布工程では、めっき工程後の鋼板(Zn系めっき層12を備える鋼板)に、ロールコーターなどを用いて、表面処理金属剤(処理液)を塗布する。
表面処理金属剤(処理液)として、ケイ素化合物と、りん化合物(P化合物)と、フッ素化合物(F化合物)と、バナジウム化合物(V化合物)と、ジルコニウム化合物(Zr化合物)と、亜鉛化合物(Zn化合物)と、カルボン酸と、を含む処理液を用いる。このうち、ケイ素化合物は被膜13のマトリックスとなり、りん化合物と、フッ素化合物と、バナジウム化合物と、ジルコニウム化合物はインヒビター成分となる。
一方、亜鉛化合物とカルボン酸とは、造膜成分としては必須ではないが、表面処理金属剤が、亜鉛化合物(X)およびカルボン酸(Y)を含むことで、環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物をマトリックスとする被膜13の表面の一部の有機ケイ素化合物が、バリア性の高い状態に変化する。これらの成分が環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物をマトリックスとする被膜13の表面の一部の有機ケイ素化合物を、バリア性の高い状態に変化させるメカニズムについては明らかではないが、状態を変化させるための触媒として作用しているものと推察される。
【0051】
本実施形態に係る表面処理鋼板の被膜13の化学組成に関し、以下の配合比とすることが好ましい。
【0052】
表面処理金属剤に含まれるカルボン酸(Y)としては、特に限定されないが、蟻酸、酢酸及びプロピオン酸などを使用することができる。
【0053】
表面処理金属剤におけるカルボン酸(Y)の配合量に関して、有機ケイ素化合物(S)由来のSiとカルボン酸(Y)とのmol比〔(Ymol)/(Smol)〕を0.10~10.0とする。〔(Ymol)/(Smol)〕が0.10未満であると、環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物をマトリックスとする被膜13の表面の一部の有機ケイ素化合物を、バリア性の高い状態に変化させることが困難となる。一方、〔(Ymol)/(Smol)〕が10.00を超えると、浴安定性が低下する。
【0054】
また、表面処理金属剤に含まれる亜鉛化合物としては、特に限定されないが、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、フッ化亜鉛などを使用することができる。
【0055】
表面処理金属剤における亜鉛化合物(X)の配合量に関して、有機ケイ素化合物(S)由来のSiと亜鉛化合物(X)由来のZnとの固形分質量比〔(Xs)/(Ss)〕を0.01~0.50とする。〔(Xs)/(Ss)〕が0.01未満であると、環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物をマトリックスとする被膜13の表面の一部の有機ケイ素化合物を、バリア性の高い状態に変化させることが困難となる。一方、〔(Xs)/(Ss)〕が0.50を超えると、浴安定性が低下する。
【0056】
また、表面処理金属剤に含まれる亜鉛化合物(X)は、被膜13の形成後の被膜13の表面において、耐アルカリ性を向上させる効果を有する。このような効果を得る場合、表面処理金属剤の全固形分量(NV)と亜鉛化合物(X)由来のZnとの固形分質量比〔(Xs)/(NVs)〕が0.0010以上であることが好ましい。一方、〔(Xs)/(NVs)〕0.030を超えると、耐パウダリング性が低下するので〔(Xs)/(NVs)〕は、0.030以下であることが好ましい。
【0057】
表面処理金属剤に含まれる有機ケイ素化合物は、環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物である。環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物の種類は特に限定されないが、例えば、分子中にアミノ基を1つ含有するシランカップリング剤(A)と、分子中にグリシジル基を1つ含有するシランカップリング剤(B)を配合して得られるものである。シランカップリング剤(A)とシランカップリング剤(B)の配合比としては、固形分質量比[(A)/(B)]で0.5~1.7であることが好ましい。固形分質量比[(A)/(B)]が0.5未満であると、浴安定性、耐黒カス性が著しく低下する場合がある。一方、固形分質量比[(A)/(B)]が1.7を超えると、耐水性が著しく低下する場合があるので好ましくない。
【0058】
また、表面処理金属剤が含むリン化合物(T)は、特に限定されないが、リン酸、リン酸アンモニウム塩、リン酸カリウム塩、リン酸ナトリウム塩などを例示することができる。
【0059】
リン化合物(T)の配合量に関して、有機ケイ素化合物(S)由来のSiとリン化合物(T)由来のPとの固形分質量比〔(Ts)/(Ss)〕を0.15~0.31とすることが好ましい。有機ケイ素化合物(S)由来のSiとリン化合物(T)由来のPとの固形分質量比〔(Ts)/(Ss)〕が0.15未満であると、リン化合物(T)の溶出性インヒビターとしての効果が得られなくなることが懸念される。一方、〔(Ts)/(Ss)〕が0.31を超えると、被膜の水溶化が著しくなるため、好ましくない。
【0060】
本発明の表面処理金属剤が含むフッ素化合物(U)は、特に限定されないが、フッ化チタンアンモニウム、フッ化チタン水素酸、フッ化ジルコニウムアンモニウム、フッ化ジルコニウム水素酸、フッ化水素、フッ化アンモニウムなどを例示することが出来る。
【0061】
フッ素化合物(U)の配合量に関して、有機ケイ素化合物(S)由来のSiとフッ素化合物(U)由来のFとの固形分質量比〔(Us)/(Ss)〕を0.01~0.30とすることが好ましい。有機ケイ素化合物(S)由来のSiとフッ素化合物(U)由来のFとの固形分質量比〔(Us)/(Ss)〕が0.01未満であると、耐食性向上効果が不十分となる場合がある。一方、〔(Us)/(Ss)〕が0.30を超えると、被膜13の水溶化が著しくなるため、好ましくない。
【0062】
表面処理金属剤が含むZr化合物(V)は、特に限定されないが、炭酸ジルコニウムアンモニウム、六フッ化ジルコニウム水素酸、六フッ化ジルコニウムアンモニウムなどを例示することが出来る。
【0063】
Zr化合物(V)の配合量に関して、有機ケイ素化合物(S)由来のSiとZr化合物(V)由来のZrとの固形分質量比〔(Vs)/(Ss)〕を0.06~0.15とすることが好ましい。有機ケイ素化合物(S)由来のSiとZr化合物(V)由来のZrとの固形分質量比〔(Vs)/(Ss)〕が0.06未満であると、耐食性向上効果が不十分となる場合がある。一方、〔(Vs)/(Ss)〕が0.15を超えると、耐食性向上効果が飽和する。
【0064】
本発明の表面処理金属剤が含むV化合物(W)は、特に限定されないが、五酸化バナジウムV、メタバナジン酸HVO、メタバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸ナトリウム、オキシ三塩化バナジウムVOCl、三酸化バナジウムV、二酸化バナジウムVO、オキシ硫酸バナジウムVOSO、バナジウムオキシアセチルアセトネートVO(OC(=CH)CHCOCH))、バナジウムアセチルアセトネートV(OC(=CH)CHCOCH))、三塩化バナジウムVCl、リンバナドモリブデン酸などを例示することができる。また、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、1~3級アミノ基、アミド基、リン酸基およびホスホン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する有機化合物により、5価のバナジウム化合物を4価~2価に還元したものも使用可能である。
【0065】
V化合物(W)の配合量に関して、有機ケイ素化合物(S)由来のSiとV化合物(W)由来のVとの固形分質量比〔(Ws)/(Ss)〕を0.05~0.17とすることが好ましい。有機ケイ素化合物(S)由来のSiとV化合物(W)由来のVとの固形分質量比〔(Ws)/(Ss)〕が0.05未満であると、耐食性向上効果が不十分となる場合がある。一方、〔(Ws)/(Ss)〕が0.17を超えると、浴安定性が低下するので、好ましくない。
【0066】
形成される被膜13の表面のAl濃度を高める場合、本実施形態に係る表面処理鋼板1の製造に用いる表面処理金属剤が、Al化合物(Z)を含むことが好ましい。表面処理金属剤が含むAl化合物(Z)は、特に限定されないが、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどを例示することが出来る。
【0067】
Al化合物(Z)の配合量に関して、被膜13の表面のAl濃度を0.10~3.00質量%とする場合、表面処理金属剤の全固形分量(NV)とAl化合物(Z)由来のAlとの質量比〔(Zs)/(NVs)〕が0.001~0.030であることが好ましい。表面処理金属剤の全固形分量(NV)とAl化合物(Z)由来のAlとの質量比〔(Zs)/(NVs)〕が0.001未満であると、被膜13の表面のAl濃度が高くならず、屋外曝露環境における耐食性向上効果が不十分となる場合がある。一方、〔(Zs)/(NVs)〕が0.030を超えると、被膜の外観が悪化することが懸念される。
【0068】
処理液の温度は限定されないが、処理液のエッチング成分とめっき表面の反応を促進し、F濃化層の形成を促進する場合、30℃以上であることが好ましい。一方、処理液の温度が40℃超であると、鋼板の温度が40℃を超えやすくなるため、F濃化層の形成に必要なもう一つの要件である、処理液塗布後の鋼板温度が40℃に達するまでの時間が0.5~15.0秒(s)であるという要件を、充足し難くなる。このため、処理液の温度は40℃以下が好ましい。
【0069】
[加熱工程]
加熱工程では、表面処理金属剤を塗布した鋼板を、乾燥炉などを用いて、加熱して乾燥させることで、鋼板表面に被膜13を形成する。表面処理金属剤を塗布した鋼板を加熱することで、鋼板に塗布された処理液を乾燥させて、最終的に被膜13を形成するが、(その乾燥の前に)処理液を塗布した鋼板に対し、所定の温度履歴を付与する必要がある。
加熱工程のうち、表面処理金属剤が塗布された鋼板が30℃から55℃に達する直前までの工程(ただし、塗布時の鋼板温度が30℃以上の場合、塗布直後から鋼板温度が55℃に達する直前までの工程をいう。)を予備処理といい、鋼板が55℃に達した後の工程を本処理といい予備処理と本処理の2つに分けて、以下、説明する。
【0070】
加熱工程では、環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物をマトリックスとする被膜の表面の一部の有機ケイ素化合物を、バリア性の高い状態に変化させるために、表面処理金属剤を塗布後の鋼材を、さらに、所定の温度で、所定の時間、保持する必要がある。
具体的には、環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物をマトリックスとする被膜13の表面の一部の有機ケイ素化合物を、バリア性の高い状態に変化させるために、予備処理では、表面処理金属剤を塗布された鋼板を、30℃以上、50℃未満の温度域で4.0秒以上保持(つまり、鋼板の温度が30℃以上、50℃未満の状態で4.0秒保持)する。
予備処理の後、本処理では、鋼板を、最高到達温度を55~180℃とし、55~180℃の温度域で、5~15秒保持する必要がある。
鋼板を、30℃以上、50℃未満の温度域で保持する時間(滞在時間)が4.0秒未満であると、環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物をマトリックスとする被膜の表面の一部の有機ケイ素化合物を、バリア性の高い状態に変化させる時間が不足し、被膜13の表面がバリア性の高い状態に変化できなくなる。その結果、XPS分析を行って得られるSi2pのナロースペクトルにおいて、102.26±0.25eVに極大値を有するピークの積算強度に対する、103.37±0.25eVに極大値を有するピークの積算強度の比が、0.04未満となる。
また、鋼板の55~180℃での保持時間(滞在時間)が5秒未満の場合、環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物をマトリックスとする被膜13の表面の有機ケイ素化合物が、バリア性の高い状態に変化する量が不足し、耐食性向上効果を得ることが出来ない。その結果、前記積算強度の比が、0.04未満となる。
一方、鋼板の最高到達温度が180℃超または55~180℃での保持時間が15秒超の場合、環状シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物をマトリックスとする被膜13の表面の有機ケイ素化合物が、過剰にバリア性の高い状態に変化し、前記積算強度の比が0.25超となる。その結果、塗装密着性が低下する。このため、鋼板の最高到達温度は55~180℃、且つ、55~180℃の滞在時間は15秒以下とする。
【0071】
さらに、P濃化層を得る場合、処理液を塗布後、鋼板を、40℃以上50℃未満の温度域で0.5~25.0秒保持することが好ましい。
また、F濃化層を得る場合、温度が30℃以上の処理液を塗布後、鋼板の温度が40℃に達するまでの時間を、0.5~15.0秒とすることが好ましい。
【0072】
[冷却工程]
本処理後(加熱工程後)の鋼板は、50℃未満まで冷却する。冷却方法は特に指定されず、風冷、水冷などを用いることが出来る。
【実施例
【0073】
JIS G3141:2021に記載された冷延鋼板に相当する、板厚が0.8mmの冷延鋼板を、表1に示す組成を有するめっき浴に浸漬し、表10に示す付着量(片面当たり)のめっき鋼板(O1~O7)を得た。表1において、例えばZn-0.2%Alとは、0.2質量%のAlを含有し、残部がZn及び不純物からなる組成であることを示す。
また、表2~表9に示すケイ素化合物(シランカップリング剤)、リン化合物、フッ素化合物、ジルコニウム化合物、バナジウム化合物、亜鉛化合物、カルボン酸、アルミニウム化合物を、表11-1、表11-2に示す割合で混合した水系表面処理金属剤ST1~ST19を準備した。
【0074】
めっき鋼板O1~O7にロールコーターによって、ST1~ST19の表面処理金属剤を塗布し、乾燥させて被膜を形成した。その際、被膜の付着量、めっき鋼板と表面処理金属剤との組み合わせは、表12、表13-1~表13-16の通りとした。被膜形成は、表12、表13-1~表13-16に示す温度履歴に制御した。
これにより、表面処理鋼板No.1~187を製造した。
【0075】
得られた表面処理鋼板に対し、以下の要領で、耐食性、塗装密着性、耐アルカリ性、耐パウダリング性、屋外曝露環境での耐食性、外観を評価した。
同時に、前述の方法で、被膜表面のXPS分析により、前記積算強度の比、Zn濃度およびAl濃度を測定すると共に、厚さ方向の断面のTEM-EDS分析により、Si濃度、P濃度、F濃度、V濃度、Zr濃度、Pの平均濃度に対するP濃度の最大値の比(P濃化層の位置を含む)およびFの平均濃度に対するF濃度の最大値の比(P濃化層の位置を含む)を測定した。
測定結果を表13-1~表13-16に記載した。表には記載しないが、平均濃度に対する最大値の比が1.00を超えた実施例では、P濃化層又はF濃化層はすべてめっき層との界面に隣り合って存在していた。
【0076】
<耐食性(SST)>
平板試験片を作製し、各試験片に対し、JIS Z 2371:2015に準拠する塩水噴霧試験を行い、168時間後、及び240時間後の表面の白錆の発生状況(試験片の面積における白錆が発生した面積の割合)を評価した。
<評価基準>
○:錆発生が全面積の10%未満
△:錆発生が全面積の10%以上30%未満
×:錆発生が全面積の30%以上
少なくとも168時間後の白錆発生状況が、〇であれば、耐食性に優れると判断した。
【0077】
「エリクセン加工部耐食性」
平板試験片を作製し、エリクセン試験(7mm押し出し)を行った後、JIS Z 2371:2015に準拠する塩水噴霧試験を72時間行い、白錆発生状況を観察した。
<評価基準>
○:錆発生が加工部面積の10%未満
△:錆発生が加工部面積の10%以上30%未満
×:錆発生が加工部面積の30%以上
錆発生が加工部面積の10%未満(評価が○)であれば、エリクセン加工部耐食性に優れると判断した。
【0078】
<塗装密着性>
平板試験片を作製し、白色塗料(アミラック#1000)を乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗布した。この試験片を、沸騰水に30分間浸漬させた後、1mm間隔の碁盤目にカットを入れ、密着性の評価を残個数割合(残個数/カット数:100個)にて行った。具体的には、100個の碁盤目のうち、塗装の剥離が見られない割合で評価した。
<評価基準>
○:95%以上
△:90%以上95%未満
×:90%未満
評価が〇であれば、塗装密着性に優れると判断した。
【0079】
<耐アルカリ性>
アルカリ脱脂剤(FC-E6406、日本パーカライジング社製)を水に溶解し、pH=12になるよう調整し、アルカリ脱脂液を得た。アルカリ脱脂液を55℃に加温し、100mm×100mm(×板厚)の試験板を2分間浸漬した。アルカリ脱脂液浸漬後の試験板は、十分な水洗を行った後、風で水滴を除去し、25℃の恒温槽内で30分保管することで乾燥させた。
その後の白色塗料(アミラック#1000)を乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗布した。この試験片を、沸騰水に30分間浸漬させた後、1mm間隔の碁盤目にカットを入れ、密着性の評価を残個数割合(残個数/カット数:100個)にて行った。具体的には、100個の碁盤目のうち、塗装の剥離が見られない割合で評価した。
<評価基準>
◎:100%
○:95%以上
△:90%以上95%未満
×:90%未満
【0080】
<耐パウダリング性>
平板試験片を作製し、JIS Z 2248:2006に準拠する密着曲げを行い、当該密着曲げ部のセロハンテープ剥離試験を実施した。その後、セロハンテープ剥離部を走査型電子顕微鏡により観察し、被膜の残存状況を評価した。
<評価基準>
〇:塗膜の剥離が認められない
×:塗膜の剥離が認められる
【0081】
<屋外曝露耐食性>
平板試験片を作製し、JIS K5600-7-7(ISO 11341:2004)に規定されているキセノンランプ法促進耐候性試験を300時間行い、次いで、JIS Z 2371:2015に準拠する塩水噴霧試験を行い、120時間後の表面の白錆の発生状況(試験片の面積における白錆が発生した面積の割合)を評価した。
<評価基準>
◎:錆発生が全面積の3%未満
○:錆発生が全面積の3%以上10%未満
△:錆発生が全面積の10%以上30%未満
×:錆発生が全面積の30%以上
【0082】
<外観>
平板試験片の外観を、目視によって、以下の基準により評価した。
<評価基準>
〇:局所的な白色部の存在が認められない
×:局所的な白色部の存在が認められる
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【0088】
【表6】
【0089】
【表7】
【0090】
【表8】
【0091】
【表9】
【0092】
【表10】
【0093】
【表11-1】
【0094】
【表11-2】
【0095】
【表12】
【0096】
【表13-1】
【0097】
【表13-2】
【0098】
【表13-3】
【0099】
【表13-4】
【0100】
【表13-5】
【0101】
【表13-6】
【0102】
【表13-7】
【0103】
【表13-8】
【0104】
【表13-9】
【0105】
【表13-10】
【0106】
【表13-11】
【0107】
【表13-12】
【0108】
【表13-13】
【0109】
【表13-14】
【0110】
【表13-15】
【0111】
【表13-16】
【0112】
表1~表13-16から分かるように、本発明例である表面処理鋼板No.1~21、30~44、53~67、76~90、108~113、128~154、162~187は、耐食性及び塗装密着性に優れる。そのうち、特にNo.30~44、76~90、108~113、176~187では、被膜の表面のZn濃度が高く、耐アルカリ性にも優れた。また、特にNo.53~67、76~90、176~187では、被膜の表面のAl濃度が高く、屋外曝露環境下での耐食性にも優れた。
また、特にNo.128~136、146~154、162~187では、被膜中に適度なP濃化層及び/またはF濃化層が形成されており、240時間後のSST試験でも、優れた耐食性を示した。
これに対し、比較例であるNo.21~29、45~52、68~75、91~107、114~127、155~161、では、耐食性及び塗装密着性のいずれかが劣っている、または外観が低下して使用に適さなかった。
【符号の説明】
【0113】
1 表面処理鋼板
11 鋼板
12 Zn系めっき層
13 被膜
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明によれば、耐食性と塗装密着性とに優れる表面処理鋼板を提供することができる。そのため、産業上の利用可能性が高い。
図1