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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】碾茶の乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/06 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
A23F3/06 K
A23F3/06 301A
A23F3/06 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019018135
(22)【出願日】2019-02-04
(65)【公開番号】P2020124151
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-12-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000104375
【氏名又は名称】カワサキ機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 治彦
(72)【発明者】
【氏名】久米 明
(72)【発明者】
【氏名】前出 守
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-121529(JP,A)
【文献】特開2017-079690(JP,A)
【文献】特開2013-223441(JP,A)
【文献】特開2014-033651(JP,A)
【文献】特開2016-010376(JP,A)
【文献】特開昭62-022548(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108344283(CN,A)
【文献】特開2018-108033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素を失活させる工程を経た茶葉を搬送しつつ乾燥させて碾茶を得るための碾茶の乾燥装置において、
茶葉の乾燥部が煉瓦で構成されるとともに、搬送過程の茶葉に対して前記煉瓦からの輻射熱を加えて乾燥させる煉瓦碾茶炉から成り、風による乾燥よりも熱による乾燥効果が高く設定された第1乾燥装置と、
搬送過程の茶葉に対して風を当てて乾燥させ、熱による乾燥よりも風による乾燥効果が高く設定された第2乾燥装置と、
を有し、前記第1乾燥装置による乾燥後、前記第2乾燥装置による乾燥を行わせるものとされ、且つ、前記第1乾燥装置の乾燥部内には、上下方向に並行して2段形成されて1段目から2段目に茶葉を搬送する搬送路と、前記第1段目及び第2段目の搬送路に対して並行状態で延設されるとともにバーナにより加熱されて前記煉瓦に輻射熱を生じさせる煙導と、が配設され、1段目の前記搬送路の方が2段目の前記搬送路より前記煙導に近接した位置で延設されることにより1段目の前記搬送路の方が2段目の前記搬送路より温度が高く設定されたことを特徴とする碾茶の乾燥装置。
【請求項2】
前記1段目の搬送路において210~230℃、前記2段目の搬送路において120℃の温度に設定されたことを特徴とする請求項1記載の碾茶の乾燥装置。
【請求項3】
前記煉瓦碾茶炉の茶葉の投入側には、茶葉の重なりを解す解し手段が配設されたことを特徴とする請求項1記載の碾茶の乾燥装置。
【請求項4】
前記第2乾燥装置は、茶葉の乾燥部に熱風又は加湿熱風を噴出可能とされるとともに、当該熱風を搬送過程の茶葉に当てて乾燥させるネット式碾茶炉から成ることを特徴とする請求項1記載の碾茶の乾燥装置。
【請求項5】
前記第2乾燥装置は、茶葉の乾燥部に過熱蒸気を噴出可能とされるとともに、当該過熱蒸気を搬送過程の茶葉に当てて乾燥させるネット式碾茶炉から成ることを特徴とする請求項1記載の碾茶の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶葉を乾燥して碾茶を得るための碾茶の乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主に抹茶の原料とされる碾茶は、収穫前に被覆して所定期間遮光した茶葉を蒸し、揉まずに乾燥させることにより得られ、主に抹茶の原料として用いられるもので、その香気は独特の覆い香があり、適度に香ばしいものとされている。特に、碾茶は、茶葉の中でもテアニンというアミノ酸の一種(グルタミン酸の誘導体)を多く含むことから、リラックス効果及び集中力を高める効果がある。このような碾茶を連続的に加工して大量生産可能な加工装置(碾茶炉)として、従来、例えば特許文献1に開示されているものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-223441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術のようなネット式碾茶炉においては、連続的に搬送される茶葉に対して撹拌しつつ熱風を当てることにより碾茶を加工しているので、古来より用いられていた煉瓦作りの乾燥装置(煉瓦碾茶炉)にて碾茶を乾燥するものに比べ、碾茶本来の独特な香気が足りないという問題があった。一方、古来より用いられていた煉瓦碾茶炉により茶葉を乾燥させて碾茶を得る場合、碾茶本来の独特な香気を十分に得ることができるものの、風による乾燥効果がほとんどなく、熱を加える乾燥のため乾燥効率が悪いことから、ネット式碾茶炉に比べて、単位時間当たりの乾燥処理量を増加させることができない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、単位時間当たりの乾燥処理量を増加させつつ碾茶本来の独特な香気を十分に得ることができる碾茶の乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、酵素を失活させる工程を経た茶葉を搬送しつつ乾燥させて碾茶を得るための碾茶の乾燥装置において、茶葉の乾燥部が煉瓦で構成されるとともに、搬送過程の茶葉に対して前記煉瓦からの輻射熱を加えて乾燥させる煉瓦碾茶炉から成り、風による乾燥よりも熱による乾燥効果が高く設定された第1乾燥装置と、搬送過程の茶葉に対して風を当てて乾燥させ、熱による乾燥よりも風による乾燥効果が高く設定された第2乾燥装置と、を有し、前記第1乾燥装置による乾燥後、前記第2乾燥装置による乾燥を行わせるものとされ、且つ、前記第1乾燥装置の乾燥部内には、上下方向に並行して2段形成されて1段目から2段目に茶葉を搬送する搬送路と、前記第1段目及び第2段目の搬送路に対して並行状態で延設されるとともにバーナにより加熱されて前記煉瓦に輻射熱を生じさせる煙導と、が配設され、1段目の前記搬送路の方が2段目の前記搬送路より前記煙導に近接した位置で延設されることにより1段目の前記搬送路の方が2段目の前記搬送路より温度が高く設定されたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の碾茶の乾燥装置において、前記1段目の搬送路において210~230℃、前記2段目の搬送路において120℃の温度に設定されたことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項記載の碾茶の乾燥装置において、前記煉瓦碾茶炉の茶葉の投入側には、茶葉の重なりを解す解し手段が配設されたことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の碾茶の乾燥装置において、前記第2乾燥装置は、茶葉の乾燥部に熱風又は加湿熱風を噴出可能とされるとともに、当該熱風を搬送過程の茶葉に当てて乾燥させるネット式碾茶炉から成ることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の碾茶の乾燥装置において、前記第2乾燥装置は、茶葉の乾燥部に過熱蒸気を噴出可能とされるとともに、当該過熱蒸気を搬送過程の茶葉に当てて乾燥させるネット式碾茶炉から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、搬送過程の茶葉に対して熱を加えて乾燥させ、風による乾燥よりも熱による乾燥効果が高く設定された第1乾燥装置と、搬送過程の茶葉に対して風を当てて乾燥させ、熱による乾燥よりも風による乾燥効果が高く設定された第2乾燥装置とを有するので、単位時間当たりの乾燥処理量を増加させつつ碾茶本来の独特な香気を十分に得ることができる。
また、第1乾燥装置による乾燥後、第2乾燥装置による乾燥を行わせるので、含有水分が多い乾燥初期において熱を加えることにより、香り成分をより多く発生させることができるとともに、含有水分が少ない乾燥後期において風を当てることで、効率的に乾燥させることができ、色沢の劣化を抑えることができる。
【0019】
さらに、第1乾燥装置は、茶葉の乾燥部が煉瓦で構成されるとともに、当該煉瓦からの輻射熱を搬送過程の茶葉に加えて乾燥させる煉瓦碾茶炉から成るので、古来より用いられていた煉瓦碾茶炉と同等の独特な香気の碾茶を得ることができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、煉瓦碾茶炉の茶葉の投入側には、茶葉の重なりを解す解し手段が配設されたので、煉瓦碾茶炉による乾燥を確実且つ円滑に行わせることができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、第2乾燥装置は、茶葉の乾燥部に熱風又は加湿熱風を噴出可能とされるとともに、当該熱風を搬送過程の茶葉に当てて乾燥させるネット式碾茶炉から成るので、単位時間当たりの乾燥処理量を増加させることができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、第2乾燥装置は、茶葉の乾燥部に過熱蒸気を噴出可能とされるとともに、当該過熱蒸気を搬送過程の茶葉に当てて乾燥させるネット式碾茶炉から成るので、単位時間当たりの乾燥処理量を増加させつつより効率的に茶葉を乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施形態に係る碾茶の乾燥装置が適用される加工ラインを示す模式図
図2】同加工ラインの煉瓦碾茶炉(第1乾燥装置)を示す側面図
図3】同加工ラインのネット式碾茶炉(第2乾燥装置)を示す側面図
図4】同ネット式碾茶炉を示す平面図
図5】同ネット式碾茶炉の内部構成を示す模式図
図6】本発明の他の実施形態に係るネット式碾茶炉(第2乾燥装置)を示す側面図
図7】本発明の更に他の実施形態(加湿熱風による乾燥)に係るネット式碾茶炉(第2乾燥装置)の内部構成を示す模式図
図8】本発明の更に他の実施形態(過熱蒸気による乾燥)に係るネット式碾茶炉(第2乾燥装置)に適用される過熱蒸気を発生させる装置を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係る碾茶の乾燥装置が適用される加工ラインは、収穫前に被覆して所定期間遮光した茶葉を蒸し、揉まずに乾燥して碾茶を得るためのもので、図1に示すように、蒸機1と、散茶機2と、第1乾燥工程を行う煉瓦碾茶炉3(第1乾燥装置)と、第2乾燥工程を行うネット式碾茶炉4(第2乾燥装置)と、つる切り機5と、風力選別機6と、仕上げ乾燥機7とを有して構成されている。
【0026】
蒸機1は、蒸し工程(酵素を失活させる工程)を行うためのもので、給葉機から投入された茶葉を、蒸胴内で加熱軟化させて物理的変化と化学的変化を付与して蒸すことにより酵素を失活させ、その蒸葉を、ネットコンベア等で連続的に搬送する間に、冷風または温風等で冷却することができるよう構成されている。散茶機2(解し手段)は、煉瓦碾茶炉3の茶葉の投入側(投入部A側)に配設され、蒸機1で蒸し工程を経た茶葉の重なりを解した後、煉瓦碾茶炉3に投入し得るようになっている。
【0027】
煉瓦碾茶炉3(第1乾燥装置)及びネット式碾茶炉4(第2乾燥装置)は、蒸し工程を経て酵素を失活させた茶葉を搬送しつつ乾燥させて碾茶を得るもので、本実施形態においては、煉瓦碾茶炉3(第1乾燥装置)による第1乾燥工程後、ネット式碾茶炉4(第2乾燥装置)による第2乾燥工程が行われるようになっている。なお、本実施形態に係る煉瓦碾茶炉3による茶葉の乾燥処理量は、ネット式碾茶炉4による茶葉の乾燥処理量より少ないため、煉瓦碾茶炉3を2つ並行に配設させ、それらで茶葉を乾燥させた後、1つのネット式碾茶炉4にてその後の乾燥を行うようになっている。
【0028】
煉瓦碾茶炉3(第1乾燥装置)は、搬送過程の茶葉に対して熱を加えて乾燥させ、風による乾燥よりも熱による乾燥効果が高く設定されたもので、図2に示すように、茶葉の乾燥部Bが煉瓦で構成されるとともに、当該煉瓦からの輻射熱を搬送過程の茶葉に加えて乾燥させるよう構成されている。本実施形態に係る煉瓦碾茶炉3は、散茶機2で重なりが解された茶葉が投入部A1から投入された後、乾燥部Bの搬送帯W1にて搬送する過程でバーナ8からの炎により加熱された煙導Eにて蓄熱された乾燥部Bを構成する煉瓦で生じた輻射熱にて乾燥させ、排出部C1から投入部A2に移送されるとともに、再度、乾燥部Bの2段目の搬送体W2にて搬送乾燥させ排出部C2にて取り出し可能とされている。
【0029】
ここで、本実施形態に係る煉瓦碾茶炉3は、その搬送帯W1、W2が無端状に形成された部材等にて構成されるとともに、上下方向に2段の搬送路を有しており、1段目(下段)において約210~230℃で2.5~3分程度乾燥させた後、2段目(上段)において約120℃で3分程度乾燥させるよう設定されている。このような条件下で乾燥させることにより、茶葉の色沢を落とすことなく焙り香を付けることができる。
【0030】
ネット式碾茶炉4(第2乾燥装置)は、搬送過程の茶葉に対して風を当てて乾燥させ、熱による乾燥よりも風による乾燥効果が高く設定されたもので、図3~5に示すように、茶葉の乾燥部Bに熱風を噴出可能とされるとともに、当該熱風を搬送過程の茶葉に当てて乾燥させるよう構成されている。本実施形態に係るネット式碾茶炉4は、煉瓦碾茶炉3で乾燥された茶葉が、散茶機2にて解され、投入部Aから投入された後、乾燥部Bの搬送帯Wにて搬送する過程で熱風発生手段9で発生した熱風を茶葉に当てることにより乾燥させ、搬出部Cにて取り出し可能とされている。
【0031】
しかるに、煉瓦碾茶炉3(第1乾燥装置)が、搬送過程の茶葉に対して専ら熱を加えて乾燥させるのに対し、ネット式碾茶炉4(第2乾燥装置)は、熱風を当てているので熱も加えているが、風による乾燥の方が熱による乾燥より相対的に乾燥効果が高いものとされている。
【0032】
搬送帯Wは、無端状に形成された部材から成るもので、茶葉を載置しつつ搬送可能とされている。熱風発生手段9は、バーナ等の加熱手段とファン等の送風手段とを有して熱風を調整自在に発生し得るもので、流路部10を介して搬送帯Wの下方から熱風を噴出し得るよう構成されている。すなわち、ネット式碾茶炉4における搬送帯Wの下方の空間には、図5に示すように、接続部10aを介して流路部10の先端が接続されており、熱風発生手段9で発生した熱風を搬送帯Wで搬送される過程の茶葉に当てて乾燥させるようになっている。
【0033】
さらに、本実施形態に係るネット式碾茶炉4は、均し手段11及び攪拌手段12が取り付けられている。均し手段11は、投入部Aにおける茶葉の搬送経路上に取り付けられ、複数の羽根(ブレード)を回転させることによって、搬送帯W上に積層状態にて載置された搬送過程の茶葉(蒸葉)を一定の厚さに揃えるよう構成されている。攪拌手段12は、乾燥部Bにおける茶葉の搬送経路上に取り付けられ、複数の羽根(ブレード)を回転させることによって、搬送帯W上に積層状態にて載置された搬送過程の茶葉(蒸葉)を掻き上げて、茶葉を攪拌(天地返し)可能なものとされている。
【0034】
ここで、本実施形態に係るネット式碾茶炉4は、乾燥部Bが4つのボックス(区間)で構成されており、投入部Aに最も近いボックスにおいて約120~150℃、それと隣接するボックスが約100~120℃、搬出部Cに最も近いボックスとそれと隣接するボックスが約80~100℃の温度とされるとともに、乾燥部B全体において乾燥時間が7~8分とされ、茶層が50~70mm程度に設定されている。このような条件下で乾燥させることにより、茶葉の色沢の悪化を回避しつつライン能力を向上させることができる。
【0035】
そして、煉瓦碾茶炉3(第1乾燥装置)及びネット式碾茶炉4(第2乾燥装置)で乾燥された茶葉は、つる切り機5によって茎部と葉部とが分離されるとともに、風力選別機6によって茎部と葉部とが選別された後、仕上げ乾燥機7によって仕上げ乾燥が行われることとなる。かかる一連の工程を経ることにより、独特な香気を持った高品質な碾茶を得ることができる。
【0036】
上記第1の実施形態によれば、搬送過程の茶葉に対して熱を加えて乾燥させる煉瓦碾茶炉3(第1乾燥装置又は第1乾燥工程)と、搬送過程の茶葉に対して風を当てて乾燥させるネット式碾茶炉4(第2乾燥装置又は第2乾燥工程)とを有するので、単位時間当たりの乾燥処理量を増加させつつ碾茶本来の独特な香気を十分に得ることができる。また、乾燥工程を第1乾燥装置による第1乾燥工程、及び第2乾燥装置による第2乾燥工程の2つの異なる乾燥工程を経るので、茶葉の乾燥時における条件設定の幅を広げることができる。特に、第1乾燥装置による乾燥(第1乾燥工程)後、第2乾燥装置による乾燥(第2乾燥工程)を行わせるので、含有水分が多い乾燥初期において熱を加えることにより、香り成分をより多く発生させることができるとともに、含有水分が少ない乾燥後期において風を当てることにより、効率的に乾燥させることができ、色沢の劣化を抑制することができる。
【0037】
また、第1乾燥装置(第1乾燥工程)は、茶葉の乾燥部が煉瓦で構成されるとともに、当該煉瓦からの輻射熱を搬送過程の茶葉に加えて乾燥させる煉瓦碾茶炉3から成るので、古来より用いられていた煉瓦碾茶炉と同等の独特な香気の碾茶を得ることができる。さらに、煉瓦碾茶炉3の茶葉の投入側には、茶葉の重なりを解す解し手段2が配設されたので、煉瓦碾茶炉3による乾燥を確実且つ円滑に行わせることができる。またさらに、第2乾燥装置(第2乾燥工程)は、茶葉の乾燥部Bに熱風を噴出可能とされるとともに、当該熱風を搬送過程の茶葉に当てて乾燥させるネット式碾茶炉4から成るので、単位時間当たりの乾燥処理量を増加させることができる。
【0038】
以上、本実施形態に係る碾茶の乾燥装置について説明したが、本発明に係る碾茶の乾燥装置は上記のものに限定されず、例えば図6に示すように、赤外線又は遠赤外線を照射可能な照射手段13を具備したネット式碾茶炉4(第2乾燥装置)としてもよい。かかるネット式碾茶炉4は、乾燥部Bにおける茶葉の搬送方向に複数の照射手段13が配設され、搬送過程の茶葉に対して照射手段13にて赤外線又は遠赤外線を照射可能とされている。
【0039】
この場合、照射手段13は、乾燥部Bにおける搬送帯Wの上方を覆った天井部に取り付けられ、搬送帯W上の茶葉に対して赤外線又は遠赤外線を面状に照射し得るようになっている。これにより、搬送帯Wによって乾燥部Bを搬送される過程の茶葉(蒸葉)は、熱風発生手段9からの熱風に晒されて乾燥されるとともに、照射手段13からの赤外線又は遠赤外線が照射されて化学的作用が施されることとなる。なお、乾燥部Bは、同図に示すように、閉空間を任意に開放して排気可能な排気ダンパ14が形成されている。かかる排気ダンパ14は、乾燥部Bの天井部における所定部位に形成された開閉扉から成り、蝶番等を中心に揺動することにより開状態とされて、乾燥部Bの閉空間を開放して排気を上方に排出可能とされている。
【0040】
さらに、他の形態のネット式碾茶炉4(第2乾燥装置)として、図7に示すように、熱風発生手段9及び蒸気ボイラ15を有し、茶葉の乾燥部Bに加湿熱風を噴出可能とされるとともに、当該熱風を搬送過程の茶葉に当てて乾燥させるものであってもよい。この場合、蒸気ボイラ15で発生した蒸気と熱風発生手段9で発生した熱風とが混合して加湿熱風が生成され、その加湿熱風が流路部10を通過して搬送帯Wで搬送される茶葉に当たることにより乾燥させて碾茶を得ることができるようになっている。
【0041】
このように、茶葉の乾燥部Bを高温多湿状態として乾燥するようにすれば、搬送過程の茶葉を十分に乾燥させることができ、品質に悪影響が及んでしまうのを回避することができる。また、茶葉に加湿熱風を噴出して乾燥するので、温度及び湿度管理を適切に行わせることができる。よって、搬送過程の茶葉をより十分且つ安定的に乾燥させることができ、品質に悪影響が及んでしまうのを回避することができる。
【0042】
またさらに、上記の如く加湿熱風に代えて過熱蒸気を搬送される茶葉に噴出して乾燥させるようにしてもよい。かかる過熱蒸気は、例えば図8に示すように、蒸気ボイラ15及び加熱室16を有した過熱蒸気発生器にて発生されるもので、搬送帯Wにて搬送される茶葉に対して噴出して乾燥させるものとされている。
【0043】
かかる過熱蒸気発生器によれば、蒸気ボイラ15で生成された100℃程度の普通蒸気がホースH1を介して加熱室16に至り、そこで120~400℃程度まで温度上昇された後、搬送帯Wに送られるようになっている。加熱室16は、同図で示したように、吸入管16cにガンタイプバーナ17が接続され、該ガンタイプバーナ17からの熱風が加熱室16内を通過した後、排出管16bから排出され得るよう構成されている。一方、加熱室16の内部は、複数の細管16aが配設されており、かかる細管16aの一端がホースH1と、他端がホースH2とそれぞれ接続されている。
【0044】
このような構成により、蒸気ボイラ15から送られてきた普通蒸気が細管16aを通過する過程において、ガンタイプバーナ17による熱風で120~400℃程度まで加熱され、過熱蒸気が生成されることとなる。こうして生成された過熱蒸気は、搬送帯Wで搬送される茶葉に噴出されるので、茶温を効果的に上げることができ、搬送過程の茶葉を十分に乾燥させることができる。すなわち、第2乾燥装置(第2乾燥工程)は、茶葉の乾燥部に過熱蒸気を噴出可能とされるとともに、当該過熱蒸気を搬送過程の茶葉に当てて乾燥させるネット式碾茶炉4から成るので、単位時間当たりの乾燥処理量を増加させつつより効率的に茶葉を乾燥させることができる。
【0045】
加えて、ネット式碾茶炉4に投入する茶葉を均一にする散茶機2(解し手段)として、あんどん・ベルトコンベア等を設けるものとしてもよく、茶葉に打圧を与えて表面に水分を均一に浮き上がらせることができる打圧装置を加工ラインに配設するようにしてもよい。なお、乾燥工程においてバイパス経路を設けることにより、第1乾燥装置(煉瓦碾茶炉3)及び第2乾燥装置(ネット式碾茶炉4)の乾燥順序を任意に入れ替えることができるものとしてもよい。酵素を失活させる工程は、本実施形態の如く蒸機1による蒸し工程に限定されず、蒸気以外の釜炒り、炒り蒸、湯蒸し、熱風等の方法を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
茶葉の乾燥部が煉瓦で構成されるとともに、搬送過程の茶葉に対して煉瓦からの輻射熱を加えて乾燥させる煉瓦碾茶炉から成り、風による乾燥よりも熱による乾燥効果が高く設定された第1乾燥装置と、搬送過程の茶葉に対して風を当てて乾燥させ、熱による乾燥よりも風による乾燥効果が高く設定された第2乾燥装置とを有し、第1乾燥装置による乾燥後、第2乾燥装置による乾燥を行わせるものとされ、且つ、第1乾燥装置の乾燥部内には、上下方向に2段形成されて配設されて1段目から2段目に茶葉を搬送する搬送路と、バーナにより加熱されて煉瓦に輻射熱を生じさせる煙導と、が配設され、1段目の前記搬送路の方が2段目の搬送路より煙導に近接した位置で延設される碾茶の乾燥装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 蒸機
2 散茶機(解し手段)
3 煉瓦碾茶炉(第1乾燥装置)
4 ネット式碾茶炉(第2乾燥装置)
5 つる切り機
6 風力選別機
7 仕上げ乾燥機
8 バーナ
9 熱風発生手段
10 流路部
10a 接続部
11 均し手段
12 撹拌手段
13 照射手段
14 排気ダンパ
15 蒸気ボイラ
16 加熱室
17 ガンタイプバーナ
A 投入部
B 乾燥部
C 搬出部
W 搬送帯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8